JP7219188B2 - 伝動用vベルトおよびその製造方法 - Google Patents
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本発明のローエッジタイプVベルト(ローエッジタイプの伝動用Vベルト)は、少なくとも一部の領域が樹脂被膜で被覆された圧縮ゴム層を含むローエッジタイプVベルトであれば、特に限定されない。ローエッジタイプVベルトには、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルトが含まれる。さらに、ローエッジコグドVベルトは、ローエッジVベルトの内周側のみにコグが形成されたローエッジコグドVベルトと、ローエッジVベルトの内周側及び外周側の双方にコグが形成されたローエッジダブルコグドVベルトとに大別できる。これらのうち、コグ谷(コグ底)で発生する亀裂を効果的に抑制できる点から、ローエッジVベルトの少なくとも内周側にコグ部が形成されたローエッジコグドVベルトが好ましい。
本発明では、圧縮ゴム層の少なくとも一部の領域を樹脂被膜で被覆することにより、圧縮ゴム層における亀裂の発生を低減できるとともに、ベルトの生産性も向上できる。詳しくは、品質面では、樹脂被膜の柔軟性および伸縮性により、ローエッジタイプVベルトが繰り返し屈曲されたとしても亀裂の発生を抑制できる。また、従来の補強布のような糸角度の変化によるベルト屈曲性への影響を排除できるため、特定の箇所で屈曲性が低下するのを抑制でき、亀裂の発生を防止してローエッジタイプVベルトの寿命を向上できる。
本発明のローエッジタイプVベルトにおいて、圧縮ゴム層は、第1のゴム成分を含むゴム組成物(加硫ゴム組成物)で形成されている。
第1のゴム成分としては、加硫または架橋可能なゴムを用いてよく、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴムなど]、エチレン-α-オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
圧縮ゴム層を形成するゴム組成物は、第1の短繊維をさらに含んでいてもよい。第1の短繊維としては、ポリアミド短繊維(ポリアミド6短繊維、ポリアミド66短繊維、ポリアミド46短繊維、アラミド短繊維など)、ポリアルキレンアリレート短繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維、ポリエチレンナフタレート短繊維など)、液晶ポリエステル短繊維、ポリアリレート短繊維(非晶質全芳香族ポリエステル短繊維など)、ビニロン短繊維、ポリビニルアルコール系短繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)短繊維などの合成短繊維;綿、麻、羊毛などの天然短繊維;カーボン短繊維などの無機短繊維などが挙げられる。これら第1の短繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アラミド短繊維、PBO短繊維が好ましく、アラミド短繊維が特に好ましい。
圧縮ゴム層を形成するゴム組成物は、加硫剤または架橋剤(または架橋剤系)(硫黄系加硫剤など)、共架橋剤(ビスマレイミド類など)、加硫助剤または加硫促進剤(チウラム系促進剤など)、加硫遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、補強剤(カーボンブラックや、含水シリカなどの酸化ケイ素)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなど)、軟化剤(パラフィンオイルやナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤または加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなど)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。
本発明のローエッジタイプVベルトは、第2のゴム成分を含むゴム組成物(加硫ゴム組成物)で形成された伸張ゴム層をさらに含んでいてもよい。
本発明の伝動用Vベルトは、第3のゴム成分を含むゴム組成物(加硫ゴム組成物)で形成された接着ゴム層をさらに含んでいてもよい。
芯体としては、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)を使用できる。心線は、ベルトの長手方向に延びて配設され、通常、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に延びて配設されている。心線は、少なくともその一部が接着ゴム層と接していればよく、接着ゴム層が心線を埋設する形態、接着ゴム層と伸張ゴム層との間に心線を埋設する形態、接着ゴム層と圧縮ゴム層との間に心線を埋設する形態のいずれの形態であってもよい。これらのうち、耐久性を向上できる点から、接着ゴム層が心線を埋設する形態が好ましい。
本発明のローエッジタイプVベルトにおいて、補強布を使用する場合、伸張ゴム層の表面に補強布を積層する形態に限定されず、例えば、伸張ゴム層に補強層を埋設する形態(例えば、特開2010-230146号公報に記載の形態など)であってもよい。補強布は、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材(好ましくは織布)などで形成でき、必要であれば、前記接着処理、例えば、RFL液で処理(浸漬処理など)したり、接着ゴムを前記布材に擦り込むフリクションや、前記接着ゴムと前記布材とを積層(コーティング)した後、伸張ゴム層の表面に積層してもよい。
本発明の伝動用Vベルトの製造方法は、圧縮ゴム層の内周面の少なくとも一部の領域を樹脂被膜用前駆体で被覆した状態で加硫することにより樹脂被膜を形成する樹脂被膜形成工程を含む以外は、特に限定されず、各層の積層工程(ベルトスリーブの製造方法)に関しては、慣用の方法を利用できる。
CR(クロロプレンゴム):DENKA(株)製「PM-40」
EPDM:ダウ・デュポン社製「NORDEL(登録商標)IP4640」、エチレン含有量55質量%、エチリデンノルボルネン含有量4.9質量%
アラミド短繊維:帝人(株)製「トワロン(登録商標)」、モジュラス88cN、繊度2.2dtex、繊維長3mm
ナフテン系オイル:出光興産(株)製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルNS-90S」
カーボンブラックHAF:東海カーボン(株)製「シースト(登録商標)3」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック(登録商標)AD-F」
加硫促進剤DM:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)DM」
加硫促進剤TT:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)TT」
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)CZ」
シリカ:エボニックジャパン(株)製、「ULTRASIL(登録商標)VN3」、BET比表面積175m2/g
心線:1100dtexのアラミド繊維を2×3の撚り構成で、上撚り係数3.0、下撚り係数3.0で諸撚りした総繊度6600dtexの撚りコードに接着処理を施した処理コード
帆布:PET繊維とアラミド繊維からなる平織り帆布に120度の広角処理および接着処理を施した処理帆布
無延伸PP1:サントックス(株)製「LU02」、無延伸ポリプロピレン、厚み50μm、引張弾性率720MPa、引張伸度610%
無延伸PP2:サントックス(株)製「LU02」、無延伸ポリプロピレン、厚み30μm、引張弾性率750MPa、引張伸度550%
無延伸PP3:サントックス(株)製「LU02」、無延伸ポリプロピレン、厚み20μm、引張弾性率840MPa、引張伸度490%
延伸PP:東レ(株)製「トレファンBO」、引張伸度60%
綿短繊維:繊維径15μm、長さ0.5mm。
[ゴム層の形成]
表1(圧縮ゴム層、伸張ゴム層)および表2(接着ゴム層)のゴム組成物は、それぞれ、バンバリーミキサーなどの公知の方法を用いてゴム練りを行い、この練りゴムをカレンダーロールに通して圧延ゴムシート(圧縮ゴム層用シート、伸張ゴム層用シート、接着ゴム層用シート)を作製した。なお、短繊維は、RFL液(レゾルシン及びホルムアルデヒドと、ラテックスとしてのビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックスとを含有)で接着処理し、固形分の付着率6質量%の短繊維を用いた。RFL液として、レゾルシン2.6質量部、37%ホルマリン1.4質量部、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス17.2質量部、水78.8質量部を用いた。
実施例1~2および4~5では、圧入によってコグパッドを製造した。すなわち、表3に示す樹脂被膜用前駆体(無延伸PP1~3)と表3に示す圧縮ゴム層用シート(未加硫ゴム)との積層体を、樹脂被膜用前駆体を下にして歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、75℃でプレス加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にある)を作製した。
耐久走行試験は、図6に示すように、直径120mmの駆動プーリ22、直径120mmの従動プーリ23、直径75mmの背面アイドラプーリ24を備える走行試験機を用いて行った。各プーリにローエッジコグドVベルト21を掛架し、アイドラプーリ24へのベルト巻きかけ角度が160度となるように調節し、駆動プーリ22の回転数を3600rpm、軸荷重付加機構25によって発生させる軸荷重(デッドウェイト)を115kgfとし、雰囲気温度70℃にてベルト21を走行させ、コグ谷に亀裂が発生するまでの時間を測定した。試験は同じスリーブから切り出したベルト3本について連続して試験を行い、亀裂が発生したコグ谷位置No.を記録した。
2…補強布
3…伸張ゴム層
4…接着ゴム層
4a…芯体
5…圧縮ゴム層
6…樹脂被膜
Claims (7)
- 圧縮ゴム層と、この圧縮ゴム層の内周面の少なくとも一部の領域を被覆する樹脂被膜とを含む、ローエッジタイプVベルトであって、
前記樹脂被膜がポリプロピレン系樹脂を含み、
前記樹脂被膜の平均厚みが10~30μmであり、かつ
ローエッジコグドVベルトまたはローエッジダブルコグドVベルトであるローエッジタイプVベルト。 - ポリプロピレン系樹脂の融点がベルトの加硫温度よりも低く、かつベルト使用時の温度よりも高い請求項1記載のローエッジタイプVベルト。
- 圧縮ゴム層がコグ部を有し、かつ樹脂被膜が少なくとも前記コグ部のコグ谷を被覆する請求項1または2記載のローエッジタイプVベルト。
- 樹脂被膜が圧縮ゴム層の内周面全体を被覆する請求項1~3のいずれか一項に記載のローエッジタイプVベルト。
- 圧縮ゴム層の内周面の少なくとも一部の領域を、ポリプロピレン系樹脂を含む樹脂被膜用前駆体で被覆した状態で加硫することにより樹脂被膜を形成する樹脂被膜形成工程を含む請求項1~4のいずれか一項に記載のローエッジタイプVベルトの製造方法。
- 樹脂被膜形成工程において、圧縮ゴム層用シートの一方の面を樹脂被膜用前駆体で被覆し、コグ付き型に圧入してコグ部前駆体を形成した後、加硫することによりローエッジコグドVベルトを製造する請求項5記載の製造方法。
- ポリプロピレン系樹脂の引張弾性率が1000MPa以下であり、かつ引張伸度が300%以上である請求項5または6記載の製造方法。
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