JP7160618B2 - 五角形ベルト及びそれを用いた伝達装置 - Google Patents
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Description
そして、伝達しようとする次のプーリの平面が傾いている場合、五角形ベルトの伝達面の組み合わせを変えることにより、少ないねじりで伝達が可能になる。それにより、ねじりに起因する、ベルトの飛び出しや転覆を抑え、発熱や疲労を抑えることができる。
五角形断面は、正五角形であるものが好ましい。正五角形断面の場合、伝達面A,B,C,D,Eの長さLは、同じ長さになり、均等な伝達面とすることができる。例えば、伝達面Aと伝達面Dとの組み合わせ1は、ベルト角度36°の伝達可能なV側面を形成する。それに対して標準的なVベルトの場合、ベルト角度は40°となる。
このような伝達可能なV側面は、図1(C)に示すように、伝達面Aと伝達面Dとの組み合わせ1のほか、伝達面Bと伝達面Eとの組み合わせ2、伝達面Cと伝達面Eとの組み合わせ3、伝達面Dと伝達面Bとの組み合わせ4、伝達面Aと伝達面Cとの組み合わせ5の五つの組み合わせがある。この五つの組み合わせのベルト角度は、いずれも36°で成形される。
ゴム組成物を構成するゴム成分は、加硫又は架橋可能なゴムであって、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム等のジエン系ゴム、エチレン-α-オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素化ゴム等であり、これらの1種又は2種以上を組み合わせたものであってよい。また、ゴム組成物には、必要に応じて、加硫剤又は架橋剤、共架橋剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム等)、増強剤(カーボンブラック、含水シリカ等の酸化ケイ素等)、短繊維、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等)、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイル等のオイル類等)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン等)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲亀裂防止剤、オゾン劣化防止剤等)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤等)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤等)、難燃剤、帯電防止剤等を配合してよい。なお、金属酸化物は架橋剤として配合してもよい。
ただし、図1(a)の芯体11は、最大径の太いものを表示しており、これより小さい芯体11であってもよい。どのV断面からみても同じ所定位置にあるように、ベルト本体10の中央(同心円状)に芯体11が配置されておればよく、その太さは抗張力という観点から決まるべきものである。
また、外被布12を構成する織布は、RFL水溶液に浸漬した後に加熱し、織布表面にRFLの被膜を形成させる接着処理、及び/又は、ゴム糊に浸漬した後に乾燥させ、ゴム糊の被膜を形成させる接着処理を施したもので構成されていてもよい。
まず、芯体の成形工程では、一本の心線をベルト長手方向に幾重にも巻き付け、その外周を縛り込んで一本のエンドレスな芯体を形成する。この芯体が中心に位置するように、例えば、上下二つ割りの未加硫ゴムを挟み込み、図2(a)に図示されるように、断面が四角形であってその中央に芯体を配置した未加硫ゴムベルトを成形する。
このようなプレス金型21を用いることにより、図2(e)のように、五角形断面のベルト本体の中央に、一本の芯体を配置した加硫ベルトを得ることができる。
例えば、コンパクト化に伴い、プーリの平面の向きを90°傾ける場合は、Vベルトも同様に90°ねじられる。ただし、五面が伝達可能な五角形ベルトならば、18°のねじれで済む。
また、プーリ平面の傾きが90°以外の場合においても、Vベルトはプーリ平面の傾き角と同じ角度ねじる必要があるのに対し、五角形ベルトならば、そのねじれをプーリ平面の傾き角よりも小さくできる。
これにより、コンパクト化に伴うねじれ条件下でも張力を上げることなく十分に伝達が可能となる五角形ベルトを提供できる。また、ねじれによる応力の負担を低減することが可能な五角形ベルトを提供できる。また、ねじれによる変形発熱を抑えて、発熱によるゴムの硬化に原因する耐久性の劣化を防ぐことが可能な五角形ベルトを提供できる。
しかし、ベルトはプーリで曲がると角度が狭くなる。V断面の上幅に三角断面が載るという、五角形ベルトの形状の特徴から、プーリ挿入時にベルト外周側の幅(=上幅W)の変量は小さくなる。よってベルト角度の変量も小さくなる。すなわち初期のベルト角度差(40°と36°)は縮まる傾向になる。
五角形ベルト100は、これら第1プーリ31と第2プーリ32との間に巻き掛けられる。すなわち、図示のように、五角形ベルト100は、ねじられた状態で動力を伝達する。また、五角形ベルト100は、ベルト長手方向と直交する断面が五角形に形成されたベルト本体と、ベルト本体の中央に配置された一本の芯体とを備え、ベルト本体の五側面が伝達面に形成されたものである。
それに対して、図5(c)に示すように、五角形ベルト100の場合、点線で示される伝達面は、伝達面A,Dの組み合わせ1から伝達面B,Eの組み合わせ2へと隣り合う組み合わせへと変わる。そのため、五角形ベルト100のねじりは、ベルトV角度36°の半分の18°ですむ。一方、ベルト本体の中央に配置された一本の芯体は、ねじりの程度に関係なく、プーリに対する芯体の位置は一定に保たれる。
つぎに、標準Vベルトに近似する五角形ベルトが得られるかどうかのシミュレーションを行った結果を以下に説明する。
すなわち、V部の外周側に三角断面が載る五角形ベルトの形状の特徴から、プーリ挿入時にベルト外周側の幅(=上幅W)の変量は小さい(幅が狭くなり難い)。よって、ベルト角度の変量も小さい。一方、厚みのある五角形ベルトはVベルト並みの屈曲性を求めてベルトの厚み(Th)を薄くできる。
これらのことから、標準VベルトA形に対応するものとして、五角形ベルトA3が望ましく、標準VベルトB形に対応するものとして、五角形ベルトB3が望ましいことが判る。
また、標準Vベルトに近似させようとする場合、五角形ベルトの伝達面の上幅Wを標準Vベルトの上幅と略合わせ、五角形ベルトの伝達面の高さThを標準Vベルトの高さより薄くしたものが好ましいことが判る。
以下に示す実施例である五角形ベルト、及び、比較列である標準Vベルトを、走行試験機に掛けて、耐久試験を行った。
図10(a)及び図11(a)は、走行試験機のレイアウトを示す図であり、図10(b)及び図11(b)は、試験に供する五角形ベルトを示す図であり、図10(c)及び図11(c)は、試験に供する標準Vベルトを示す図である。
図 10(b)に示すように、実施例の五角形ベルトは、ベルト本体10(圧縮ゴム層)の中央に芯体11を配置し、その外周に外被布12を設けて構成される。
芯体11は、一本がポリエステル繊維の撚りコード(平均線径0.5mm以下)である撚りコードを、長手方向に幾重にも巻き付けて束ね、芯体径3.5mmとしたもので構成されている。
外被布12は、布帛にフリクション処理によりゴム組成物を擦り込んだものである。布帛は、綿の織布であり、平織りで構成される。その繊度は20番手の経糸と20番手の緯糸とで構成される。経糸及び緯糸の糸密度は、75本/50mm、目付けは280g/m2である。布帛に対するフリクション処理には、下記表1に示すゴム組成物3が用いられる。フリクション処理は、カレンダーロールを用い表面速度の異なるロール間に未加硫ゴム(ゴム組成物3)と布帛とを同時に通過させ、布帛の繊維間にまで未加硫ゴム(ゴム組成物3)を擦り込む。フリクションの処理回数は、表裏の2回である。
図 10(c)に示すように、比較例の標準Vベルトは、心線53を埋設した接着ゴム層52の両面に、圧縮ゴム層50と伸張ゴム層51とを配置し、その外周に外被布54を設けて構成される。
これら圧縮ゴム層50と伸張ゴム層51とは、前記表1のゴム組成物1で構成される。接着ゴム層52は、前記表1のゴム組成物2で構成される。
前記心線53には、平均線径1.985mmのポリエステル繊維の撚りコードが用いられる。
なお、外被布54には、実施例の外被布12と同じものが用いられる。
上述した実施例の五角形ベルト及び比較例のVベルトについて、図10(a)の走行試験機を用いる。
この走行試験機は、外径が300mmの駆動プーリDrと、プーリ平面が90°傾いており、外径が130mmの従動プーリDnとの間に、実施例又は比較例のベルトを巻き掛けて構成される。駆動プーリDr及び従動プーリDnは、V溝を有するVプーリである。
駆動プーリDr及び従動プーリDn間の軸荷重は2000Nとし、駆動プーリDrの負荷は12psとした。また、駆動プーリDrの回転数は、843rpmとした。
実施例及び比較例には、前述したB形105inchのベルトを用い、掛け本数は1本とした。
図10(b)に示すように、実施例の五角形ベルトは、18°だけひねらせ、両プーリ間で伝達面A,Dから伝達面B,Eと掛け替えた。
図10(c)に示すように、比較例のVベルトは、90°ひねらせ、両プーリ間で伝達面A,Bは変わらない。
なお、前記ベルト温度は、ベルト側面(図10(b)の伝達面A,DあるいはB,E及び図10(c)の伝達面A,B)の発熱を測定して得られたものである。
上述した実施例の五角形ベルト及び比較例のVベルトについて、さらにねじりが大きくなる、反転レイアウトでの耐久試験を行った。具体的には、図11(a)の走行試験機を用いる。
この走行試験における、駆動プーリDr及び従動プーリDnの外径、プーリの種類、プーリ間の軸荷重、駆動プーリDrの負荷及び回転数は、先に説明した、ねじり走行耐久試験のものと同じである。実施例及び比較例には、前述したB形100inchのベルトを用い、掛け本数は1本とした。
なお、前記ベルト温度は、ベルト側面(図11(b)の伝達面A,DあるいはA,C及び図11(c)の伝達面A,B)の発熱を測定して得られたものである。
すなわち、プーリ平面が36°傾いている場合、2つのプーリに巻き掛ける面を異ならせ、伝達面を変更したとしても、ねじりは36°であるが、
例えば、プーリ平面が37°傾いている場合、ねじりは35°となる。
プーリ平面が72°傾いている場合、ねじりは0°となる。
ここで、プーリ平面の傾きとは、第1プーリ中心と第2プーリ中心を結ぶ直線を回転軸としたときの、第1プーリと第2プーリのプーリ平面の回転方向の傾きを指す。
11 芯体
15 心線
31 第1プーリ
32 第2プーリ
100 五角形ベルト
200 伝達装置
A,B,C,D,E 伝達面
Claims (5)
- ベルト長手方向と直交する断面が五角形に形成されたベルト本体と、前記ベルト本体の中央に配置された一本の芯体とを備えてなり、前記ベルト本体の五側面が伝達面に形成され、
前記伝達面は、初期のベルト角度差36°を形成する二側面の五つの組み合わせから形成される五角形ベルト。 - 前記芯体は、一本の心線をベルト長手方向に幾重にも巻き付け、その外周を縛り込んで形成される請求項1に記載の五角形ベルト。
- 前記五角形ベルトの伝達面の上幅Wを標準Vベルトの上幅と略合わせ、前記五角形ベルトの伝達面の高さThを標準Vベルトの高さより薄くした請求項1又は2に記載の五角形ベルト。
- 第1プーリと、プーリ平面が90°傾いている第2プーリと、前記第1プーリと前記第2プーリに巻き掛けられ、ベルト長手方向に直交する断面が五角形に形成された五角形ベルトとからなり、前記五角形ベルトのねじれは18°であって、
前記五角形ベルトは、ベルト長手方向と直交する断面が五角形に形成されたベルト本体と、前記ベルト本体の中央に配置された一本の芯体とを備えてなり、前記ベルト本体の五側面が伝達面に形成され、
前記伝達面は、初期のベルト角度差36°を形成する二側面の五つの組み合わせから形成されることを特徴とする、前記五角形ベルトを用いた伝達装置。 - 第1プーリと、プーリ平面が傾いている第2プーリと、前記第1プーリと前記第2プーリに巻き掛けられ、ベルト長手方向に直交する断面が五角形に形成された五角形ベルトとからなり、前記五角形ベルトの、前記第1プーリに掛けられる伝達面と前記第2プーリに掛けられる伝達面が異なることにより、前記五角形ベルトのねじれはプーリ平面の傾き角よりも小さくなり、
前記五角形ベルトは、ベルト長手方向と直交する断面が五角形に形成されたベルト本体と、前記ベルト本体の中央に配置された一本の芯体とを備えてなり、前記ベルト本体の五側面が伝達面に形成され、
前記伝達面は、初期のベルト角度差36°を形成する二側面の五つの組み合わせから形成されることを特徴とする、前記五角形ベルトを用いた伝達装置。
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