以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明される実施形態は、本発明を実現可能な構成の一例に過ぎない。以下の実施形態は、本発明が適用される装置の構成や各種の条件に応じて適宜に修正または変更することが可能である。したがって、本発明の範囲は、以下の実施形態に記載される構成によって限定されるものではない。以下の実施形態に係る振れ補正装置は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、工業用カメラ、医療用カメラ等の種々のカメラ装置(撮像装置)であり得る他、振れが発生し得るカメラ装置以外の任意の装置であり得る。
図1を参照して、本発明の実施形態に係るカメラ(振れ補正装置)11の全体構造について説明する。図1は、カメラ11の横断面と制御ブロック図とを模式的に示す説明図である。カメラ11は、カメラボディ(筐体)11aと交換レンズ11bとを有する。
カメラボディ11aは、CPU(Central Processing Unit)12と、撮像素子(撮像手段)14と、振動検出装置15と、演算手段16と、トップカバー17と、駆動手段18と、本体構造体19と、シャッター20とを有する。撮像素子14は、カメラ11の振れ補正手段(補正手段)14aの構成要素である。交換レンズ11bは、撮影光軸10を構成する撮影光学系13を有し、カメラボディ11aに対して着脱できる。なお、本実施形態では、カメラボディ11aと交換レンズ11bとが別体として構成されているが、カメラボディ11aと交換レンズ11bとが一体として構成される構成も採用できる。
図1に示すように、カメラ11の撮影光軸10に平行な軸をZ軸(ロール軸)として規定する。また、Z軸に直交しカメラ11の水平方向に平行な軸をX軸(ピッチ軸)と、Z軸に直交しカメラ11の垂直方向に平行な軸をY軸(ヨー軸)と規定する。以上の3軸による座標系は、本実施形態における他の説明においても使用される。
CPU12は、不図示の入力手段を介して入力された撮影者からの指示等に基づいてカメラ11内の各要素を制御する制御手段である。CPU12は、不図示の記憶部に記憶されたプログラムを展開して実行することによって、上記した各要素の制御処理を実行する。
撮影光軸10に沿った被写体光束は、撮影光学系13を通して撮像素子14に入射する。撮像素子14は、入射した被写体光束に応じた信号を出力する。シャッター20は、撮影光学系13と撮像素子14との間に配置されており、撮影光学系13から撮像素子14に向かう光を遮蔽する状態と、光を透過する状態とを切り替えることができる。撮像素子14から出力された信号は、不図示の画像処理部によって画像処理される。画像処理によって取得された画像情報は、不図示の記憶部に記憶される。
振動検出装置15は、カメラ11に加えられる振れ角速度を検出するジャイロセンサ(検出手段)22を有する。振動検出装置15は、検出された振れ角速度を示す角速度信号を演算手段16に対して出力する。
駆動手段18は、撮像素子14を移動させる駆動要素である。駆動手段18は、撮像素子14をX方向およびY方向に(すなわち、撮影光軸10と直交するXY平面に沿って)平行移動させ得ると共に、撮像素子14をZ方向と平行な回転軸(ロール軸)を中心に回転移動させ得る。駆動手段18は、矢印14bで示されるXY平面に沿って撮像素子14を移動させることで、カメラ11の振れに起因して撮像素子14の撮像面にて生じる像振れを補正できる。また、駆動手段18は、撮像素子14をX方向に平行移動させることでカメラ11のヨー方向における回転による像振れを補正でき、撮像素子14をY方向に平行移動させることでカメラ11のピッチ方向における回転による像振れを補正できる。更に、駆動手段18は、撮像素子14をZ方向と平行な回転軸を中心として回転移動させることで、カメラ11のロール方向における回転による像振れを補正できる。
演算手段16は、振動検出装置15からの角速度信号に対して演算処理(1回積分等)を実行することで角度信号に変換し、変換して得られた角度信号を振れ角度信号として駆動手段18に出力する。駆動手段18は、入力された振れ角度信号に基づいて振れ補正手段14aを駆動することによって振れ補正を実行する。すなわち、補正手段である振れ補正手段14aは、検出手段であるジャイロセンサ22からの出力に応じて、筐体であるカメラボディ11aの回転によって生じる像振れを補正可能である。
トップカバー17は、カメラボディ11aの上部を被覆する外装であって、振動検出装置15を保持している。
本体構造体19は、カメラボディ11aが有する複数のユニットを保持する要素であって、カメラボディ11aに対して一体的に固定されている。本体構造体19には、少なくとも、振れ補正手段14a、トップカバー17、およびシャッター20が固定されている。
図2は、本発明の実施形態に係る振動検出装置15の分解斜視図である。振動検出装置15は、上記したジャイロセンサ22と、ジャイロセンサホルダー(保持部材)21と、第1保持体24aと、第2保持体24bと、第1緩衝部材23aと、第2緩衝部材23bとを有する。ジャイロセンサホルダー21は、ジャイロセンサ22を保持する保持部材である。
ジャイロセンサ22は、3つの検出軸(X軸、Y軸、Z軸)にそれぞれ対応する3つのジャイロセンサ素子22a,22b,22cを有する。3つのジャイロセンサ素子22a,22b,22cは、3つの検出軸を中心とする回転を検出することができる。ジャイロセンサホルダー21は、ジャイロセンサ素子22a,22b,22cの3つの検出軸が互いに略直交するように保持する。なお、ジャイロセンサホルダー21は、複数の部品から構成されていてもよく、例えば、本体が板金部品によって補強されていてもよい。また、ジャイロセンサ22は、以上3つの検出軸を有する単一のセンサであってもよい。
ジャイロセンサ素子22a,22b,22cは、それぞれ、前述したピッチ方向、ヨー方向、ロール方向の回転を検出できる。より詳細には、図2に示すように、ジャイロセンサ素子22aはX軸(ピッチ軸)と平行な第1検出軸Sxを中心とする回転(第1回転)Rpを検出できる。同様に、ジャイロセンサ素子22bはY軸(ヨー軸)と平行な第2検出軸Syを中心とする回転(第2回転)Ryを検出でき、ジャイロセンサ素子22cはZ軸(ロール軸)と平行な第3検出軸Szを中心とする回転(第3回転)Rrを検出できる。
振れ補正手段14aが補正する対象である被写体像の入射方向、すなわち撮影光軸10は、第1検出軸Sxおよび第2検出軸Syとそれぞれ直交する。第3検出軸Szは、第1検出軸Sxおよび第2検出軸Syとそれぞれ直交する。
したがって、ジャイロセンサ22は、第1検出軸Sxを中心とする第1回転、第2検出軸Syを中心とする第2回転、および第3検出軸Szを中心とする第3回転を検出できる。振れ補正手段14aは、少なくとも、カメラ11における、第1検出軸Sxを中心とする回転および第2検出軸Syを中心とする回転による像振れを補正できる。
第1保持体24aはトップカバー17に固定されている。第1保持体24aが有する平面である面24a1は、第1緩衝部材23aが有する平面である面23a2と当接している。ジャイロセンサホルダー21が有する平面である面21aは、第1保持体24aの面24a1と当接する面23a2の反対側に位置する第1緩衝部材23aの面23a1と当接している。すなわち、第1緩衝部材23aは、第1保持体24aとジャイロセンサホルダー21とに挟まれている。
第2緩衝部材23bが有する平面である面23b1は、第1緩衝部材23aと当接するジャイロセンサホルダー21の面21aの反対側に位置する面21bと当接している。第2保持体24bはトップカバー17に固定されている。第2保持体24bが有する平面である24b1は、ジャイロセンサホルダー21と当接する第2緩衝部材23bの面23b1の反対側に位置する面23b2と当接している。すなわち、第2緩衝部材23bは、ジャイロセンサホルダー21と第2保持体24bとに挟まれている。
1組の緩衝部材23a,23bと当接するジャイロセンサホルダー21の2つの面21a,21b、第1緩衝部材23aと当接する第1保持体24aの面24a1、および第2緩衝部材23bと当接する第2保持体24bの面24b1は、互いに平行である。また、以上の互いに平行な面は、図2の1点鎖線で示される矢印Aが示す方向と直交するように形成されている。矢印Aが示す所定の方向は、1組の緩衝部材23a,23bがジャイロセンサホルダー21を挟み込む挟込み方向である。矢印Aは、例えば、第1緩衝部材23aの重心と第2緩衝部材23bの重心とを通る直線上に位置する。第1緩衝部材23aは、粘弾性を有する素材によって形成され、矢印Aが示す方向に直交する平行な面23a1,23a2において他の部材と当接する。同様に、第2緩衝部材23bは、粘弾性を有する素材によって形成され、矢印Aが示す方向に直交する平行な面23b1,23b2において他の部材と当接する。
以上から理解されるように、第1緩衝部材23aおよび第2緩衝部材23bは、カメラ11に固定された第1保持体24aおよび第2保持体24bに対して、ジャイロセンサホルダー21を矢印Aが示す所定の挟込み方向に挟み込んで支持している。
第1緩衝部材23aは、ジャイロセンサホルダー21と第1保持体24aとに挟まれて圧縮変形させられてよい。同様に、第2緩衝部材23bは、ジャイロセンサホルダー21と第2保持体24bとに挟まれて圧縮変形させられてよい。以上の場合、各要素に働く反力によって摩擦力が発生することにより、各要素の保持力を増大できる。また、各要素の寸法ばらつきが変形によって吸収されるので、寸法ばらつきが存在する場合であっても要素間の当接を維持できる。
第1緩衝部材23aおよび第2緩衝部材23bは、それぞれ、矢印Aが示す挟込み方向に直交する方向に延在する平板状(直方体状)の構造を有する。第1緩衝部材23aおよび第2緩衝部材23bの各々は、第3検出軸Szと平行な方向の長さDよりも、第3検出軸Szに垂直な方向の長さWの方が小さいように構成されている。
図3は、本発明の実施形態に係る振動検出装置15をZ軸方向から見た図である。図3は、挟込み方向、第1検出軸Sx、および第2検出軸Syの位置関係の一例を示している。本実施形態では、挟込み方向を示す矢印A、ジャイロセンサ素子22aの第1検出軸Sx、およびジャイロセンサ素子22bの第2検出軸Syは、同一平面(XY平面)上に位置するように構成されている。また、矢印Aが示す挟込み方向と第1検出軸Sxとがなす角θax(第1角)および矢印Aが示す挟込み方向と第2検出軸Syとがなす角θay(第3角)は、いずれも45°である。
一般化すると、第1検出軸Sxおよび第2検出軸Syは、いずれも矢印Aが示す挟込み方向とは異なっており平行ではない。好適には、挟込み方向と第1検出軸Sxとがなす角θaxは、第1検出軸Sxと第2検出軸Syとがなす角(θax+θay(第2角))の1/6以上かつ5/6以下の範囲である。より好適には、挟込み方向と第1検出軸Sxとがなす角θaxと、挟込み方向と第2検出軸Syとがなす角θayとが等しい。
図4に、検出軸および挟込み方向の位置関係の別の変形例を示す。振動検出装置15において、第1検出軸Sxおよび第2検出軸Syに平行な平面P1と、第1検出軸Sxおよび第2検出軸Syに直交する線L1とを想定する。第1検出軸Sxを平面P1に投影した検出軸を第1投影線Sx1とし、第2検出軸Syを平面P1に投影した検出軸を第2投影線Sy1とし、平面P1に投影した矢印Aの方向を投影方向線A1とする。本変形例では、第1検出軸Sxと第2検出軸Syとが同一平面上に位置しない。また、矢印Aが示す挟込み方向は、平面P1とは平行ではなく、第1投影線Sx1および第2投影線Sy1とは異なっており平行ではない。投影方向線A1が示す方向と第1投影線Sx1とがなす角θax1(第1角)は、第1投影線Sx1と第2投影線Sy1とがなす角(θax1+θay1(第3角))の1/6以上かつ5/6以下の範囲である。図4の変形例においても、図3と同様に後述する技術的効果が実現される。
なお、図3に示される本実施形態では、第1検出軸Sxおよび第2検出軸Syは同一平面上にあり、矢印Aが示す挟込み方向と平面P1とは平行である。第1検出軸Sxと第1投影線Sx1とが一致し、第2検出軸Syと第2投影線Sy1とが一致し、矢印Aと投影方向線A1とが一致する。したがって、第1投影線Sx1と投影方向線A1がなす角θax1は、第1検出軸Sxと矢印Aが示す挟込み方向がなす角θaxと等しい。また、第1投影線Sxと第2投影線Syがなす角(θax1+θay1)は、第1検出軸Sxと第2検出軸Syとがなす角(θax+θay)と等しい。
従って、平面P1に投影した第1検出軸Sxである第1投影線Sx1と平面P1に投影した挟込み方向である投影方向線A1とがなす角θax1は、第1投影線Sx1と第2投影線Sy1とがなす角(θax1+θay1)の1/6以上かつ5/6以下の範囲である。特に、本例では、平面P1に投影した第1検出軸Sxである第1投影線Sx1と挟込み方向である矢印Aの方向とがなす角θax1と、平面P1に投影した第2検出軸Syである第2投影線Sy1と投影方向線A1とがなす角θax2(第3角)とが等しい。
図5は、シャッターショックとその影響とを示すグラフである。シャッターショックとは、シャッター20の動作に伴って生じる機械的な衝撃であって、より詳細には以下の通りである。シャッター20は、撮像素子14の遮光に用いられる先幕および後幕を有している。先幕および後幕は、撮影を指示する撮影者からの操作等に応じて動作することで、遮光状態と透光状態とを切り替える。以上の動作の際には、シャッター20内に設けられた緩衝材等の規制部材に衝突することによって先幕および後幕が停止するので、衝突による衝撃であるシャッターショックが発生する。先幕が動作を停止した後に後幕が動作を停止するまでは撮像素子14への露光が継続されている。したがって、先幕が規制部材に衝突する際のシャッターショックは、露光が行われている間に発生する。
以上のシャッターショックは、例えば、ジャイロセンサの出力に影響を及ぼす。一般に、ジャイロセンサには、駆動周波数と検出周波数との差分に相当する離調周波数という固有の周波数が存在する。所定の閾値以上の離調周波数の振動がジャイロセンサに入力されると、正しい角速度を出力しない現象である出力エラーが発生する。本実施形態のジャイロセンサ22(ジャイロセンサ素子22a,22b,22c)における離調周波数は凡そ700Hzである。本実施形態のシャッター20において発生するシャッターショックには、以上の離調周波数(700Hz付近)の成分が含まれる。
図5(a)は、本実施形態におけるシャッターショックによって発生する振動の特性を表すグラフである。角速度が縦軸に示され、周波数が横軸に示される。2点鎖線はジャイロセンサ22の離調周波数を示す。本実施形態のシャッターショックに離調周波数の振動成分が含まれていることが確認できる。
図5(b)は、図5(a)に示す振動がジャイロセンサ22に入力された際の角度信号と経過時間との関係を示すグラフである。角度信号は、ジャイロセンサ22からの角速度信号を演算手段16が1回積分することで取得される出力信号である。図5(b)では、シャッターショックによる出力エラーに起因して、特定の時間において角度信号の出力が急峻に変化している。
シャッターショックによる振動は、シャッター20から本体構造体19とトップカバー17とを介して振動検出装置15に伝達される。ジャイロセンサホルダー21が第1保持体24aと第2保持体24bとに直接的に保持されている場合、シャッターショックに含まれる離調周波数の振動成分は緩衝されずにジャイロセンサ22に入力される。その結果、所定の閾値以上の振動がジャイロセンサ22に入力されて出力エラーが発生する恐れがある。出力エラーが発生すると、手振れ補正機能が正常に機能せずに振れのある画像が撮像されてしまう。
また、ジャイロセンサ22の出力エラーは、シャッターショックに伴う離調周波数の振動だけでなく、他の外乱による特定周波数の振動に起因して発生する可能性もある。例えば、ジャイロセンサ22の検出周波数、駆動周波数、またはサンプリング周波数に相当する周波数の振動に起因して出力エラーが発生する可能性がある。後述するように、本実施形態の構成によれば、以上のようなジャイロセンサ22に固有であって手振れ補正機能に影響する周波数(エラー周波数)の振動に起因する出力誤差を抑制できる。
以下、一般的な構成および従来例による構成に触れつつ、本発明の実施形態に係るカメラ11によって実現される技術的効果について更に説明する。
ジャイロセンサに所定の閾値以上の離調周波数の振動が入力されることによる出力エラーを回避するために、ジャイロセンサホルダーと保持体との間にゴム等の緩衝部材を設ける手法が既に知られている。緩衝部材を挟むことによって、緩衝部材の共振周波数以上の周波数の振動がジャイロセンサホルダーに伝達するのを防止できる。したがって、緩衝部材の共振周波数を離調周波数に近付けるように設計することで、閾値以上の離調周波数の振動がジャイロセンサに伝達するのを回避できる。一方で、緩衝部材の共振周波数が手振れ周波数領域(例えば、1~10Hz)まで低くなると、位相遅れによって応答性が低下するので、手振れ補正の性能が劣化してしまう。
図6を参照して、シャッターショックによる振動と緩衝部材の特性との関係について説明する。
図6(a)は、シャッターショックによって発生する振動の特性を表すグラフである。角速度が縦軸に示され、周波数が横軸に示される。周波数領域Aは手振れに相当する周波数の領域(手振れ周波数領域)を示す。縦方向の2点鎖線はジャイロセンサの離調周波数を示す。横方向の2点鎖線は出力エラーが発生する角速度の閾値を示す。
図6(b)は、3つの緩衝部材1,2,3の周波数特性を示すグラフである。緩衝部材1の周波数特性が実線で示され、緩衝部材2の周波数特性が点線で示され、緩衝部材3の周波数特性が1点鎖線で示される。緩衝部材1の共振周波数は100Hz付近であり、緩衝部材2の共振周波数は手振れ周波数領域まで低くなっており、緩衝部材3の共振周波数は離調周波数領域まで高くなっている。
図6(c-1)から図6(c-3)は、シャッターショックの振動が緩衝部材によって緩衝される様子を示すグラフである。図6(c-1)が緩衝部材1に対応し、図6(c-2)が緩衝部材2に対応し、図6(c-1)が緩衝部材3に対応する。前述したように、シャッターショックによる振動は、緩衝部材1,2,3によって緩衝され、ジャイロセンサに伝達される。各図において、入力されたシャッターショックの振動の周波数特性が破線で示され、出力されたシャッターショックの振動の周波数特性が実線で示される。
図6(c-1)に示す緩衝部材1によれば、手振れ周波数領域Aにおける振動は変化しない一方、離調周波数近傍における振動は低減され出力エラーの閾値を下回っている。図6(c-2)に示す緩衝部材2によれば、離調周波数近傍における振動は低減され出力エラーの閾値を下回っているが、共振周波数が10Hz程度まで低くなっているので位相遅れに起因する応答性低下によって手振れ補正の精度が低下してしまう。図6(c-3)に示す緩衝部材3によれば、離調周波数近傍における振動が増幅されるので、出力エラーが発生し手振れ補正の精度が劣化してしまう。
以上から理解されるように、本実施形態のジャイロセンサ22の各検出軸方向の共振周波数を手振れ周波数以上かつ離調周波数以下に設定すると、手振れ補正の精度向上の観点から好適である。
図7を参照して、従来例に係る振動検出装置15´について説明する。図7(a)に示すように、振動検出装置15´は、ジャイロセンサホルダー21´とジャイロセンサ22´と第1緩衝部材23a´と第2緩衝部材23b´と第1保持体24a´と第2保持体24b´とを有する。それぞれ平板状に形成された1組の第1緩衝部材23a´および第2緩衝部材23b´が、ジャイロセンサホルダー21´を1点鎖線で示される矢印A´の方向に挟み込んで支持している。ジャイロセンサ素子22b´の検出軸Sy´は矢印A´の方向と平行である。ジャイロセンサ素子22a´の検出軸Sx´と矢印A´の方向とがなす角θax´は90°であり、ジャイロセンサ素子22b´の検出軸Sy´と矢印A´の方向とがなす角θay´は0°である。
図7(b)は、従来のジャイロセンサホルダー21´の周波数特性を示す。図7(b)に示すように、ピッチの周波数特性とヨーの周波数特性とは互いに相違し、ヨーの共振周波数はピッチの共振周波数よりも低い。したがって、緩衝部材の形状および材質並びにジャイロセンサホルダーの重量を変更して共振周波数を設計しても、ピッチの共振周波数とヨーの共振周波数との双方を手振れ周波数以上かつ離調周波数以下に設定できない場合がある。
共振周波数fnは、以下の数式(1)で表されるように、縦弾性率Eまたは横弾性率Gの平方根に比例する。
以上の縦弾性率Eおよび横弾性率Gは、ポアソン比νを用いて以下の数式(2)で表される。
緩衝部材においては、ポアソン比νが正の値を取るので、数式(2)より、横弾性率Gの値よりも縦弾性率Eの値が大きい。したがって、共振周波数fnも、横弾性率Gよりも縦弾性率Eを用いた方がより大きい値を取る。また、圧縮方向の共振周波数は縦弾性率Eを用いて求められ、せん断方向の共振周波数は横弾性率Gを用いて求められる。したがって、せん断方向の共振周波数よりも圧縮方向の共振周波数の方がより大きい値を取る。振動検出装置15´にヨー方向の振動が入力されると、緩衝部材23´には主にせん断方向の力が加えられる。他方、振動検出装置15´にピッチ方向の振動が入力されると、緩衝部材23´には主に圧縮方向の力が加えられる。以上の理由によって、ジャイロセンサホルダー21´におけるピッチの周波数特性とヨーの周波数特性とが互いに相違する。
離調周波数feにおいては、ピッチ方向のゲインg_pitch_eとヨー方向のゲインg_yaw_eとが互いに相違する。したがって、離調周波数の振動を低減させる作用もピッチとヨーとで互いに相違する。また、前述のように共振周波数が相対的に低いヨーに関して、共振周波数におけるゲインg_yaw_pが高いと手振れ周波数への影響が大きくなる懸念がある。そのため、従来の振動検出装置15´においては、ジャイロセンサ22´の各検出軸方向の緩衝部材23´の周波数特性を近付けるように設計することが困難である。結果として、従来の振動検出装置15´を用いても、シャッターショック等の外乱による振動の出力誤差を抑制して精度良く振れ補正を実行できる振れ補正装置を実現することは困難である。
図8を参照して、本発明の実施形態に係る振動検出装置15について更に説明する。前述の通り、また図8(a)に示すように、1組の第1緩衝部材23aおよび第2緩衝部材23は、ジャイロセンサホルダー21を矢印Aの方向に挟み込んで支持している。矢印Aの方向とジャイロセンサ素子22aの第1検出軸Sxとがなす角θax、および矢印Aの方向とジャイロセンサ素子22bの第2検出軸Syとがなす角θayは、それぞれ45°である。そのため、振動検出装置15にヨー方向の振動が入力されると、第1緩衝部材23aと第2緩衝部材23bとにせん断方向の力と圧縮方向の力とが同程度加えられる。ピッチ方向の振動についても同様である。結果として、図8(b)に示すように、ジャイロセンサホルダー21において、ピッチの周波数特性とヨーの周波数特性とが実質的に一致する。同様に、ピッチの共振周波数とヨーの共振周波数とも実質的に一致する。そのため、緩衝部材の形状および材質並びにジャイロセンサホルダーの重量を変更して共振周波数を設計することで、ピッチの共振周波数とヨーの共振周波数との双方を手振れ周波数以上かつ離調周波数以下に設定することができる。
また、図8(b)に示すように、本実施形態のジャイロセンサホルダー21(ジャイロセンサ22)について、ピッチおよびヨーの各々の周波数特性におけるゲインのピークは2つ存在する。これら2つのピークは、それぞれ、従来例のジャイロセンサホルダー21´のピッチの周波数特性におけるゲインのピークおよびヨーの周波数特性におけるゲインのピークに対応している。すなわち、本実施形態のジャイロセンサホルダー21(ジャイロセンサ22)の周波数特性は、緩衝部材23が、せん断方向に変形する際の周波数特性と圧縮方向に変形する際の周波数特性とを足し合わせたような特性を示す。
本実施形態では、離調周波数feにおけるピッチ方向のゲインg_pitch_eとヨー方向のゲインg_yaw_eとが実質的に一致するので、離調周波数の振動を低減させる効果がピッチとヨーとで実質的に一致する。更に、共振周波数fnにおけるピッチ方向のゲインg_pitch_pとヨー方向のゲインg_yaw_pが従来例と比較して低いので、手振れ周波数に対する影響が低減される。したがって、本実施形態の構成によれば、ジャイロセンサ22の各検出軸方向の緩衝部材23の周波数特性を互いに近付けるように設定することができる。ひいては、本実施形態のように構成することで、シャッターショック等の外乱による振動の出力誤差を抑制して精度良く振れ補正を実行できる振れ補正装置を実現することができる。
図9は、挟込み方向(矢印Aの方向)とヨー方向の第2検出軸Syとがなす角θayの変化に伴う周波数特性の変化を示すグラフである。
図9(a)は、手振れ周波数の近傍である20Hzにおけるゲインの変化を示すグラフである。従来の振動検出装置15´(図7)においてはθay´=0°である。本実施形態の振動検出装置15では、15°≦θay≦45°の範囲において、角θayが大きくなるほどヨーのゲインg_yaw_20が小さくなる。θay=45°において、ヨーのゲインg_yaw_20とピッチのゲインg_pitch_20とが実質的に一致する。振動検出装置15は対称的に形成されているので、45°≦θay≦75°(=90°-15°)の範囲において、角θayが小さくなるほどヨーのゲインg_yaw_20が小さくなる。前述したように、角θaxと角θayとの和は90°である(θax+θay=90°)。そのため、角θaxおよび角θayの各々が、15°以上かつ75°以下の範囲、すなわち、θax+θay(=90°)の1/6以上かつ5/6以下の範囲において、ヨーのゲインが低減され、ひいては手振れ周波数に対する影響が低減される。
図9(b)は、離調周波数の近傍である700Hzにおけるピッチのゲインとヨーのゲインとの差分(ゲイン差)を示すグラフである。従来の振動検出装置15´(図7)においてはθay´=0°である。本実施形態の振動検出装置15では、15°≦θay≦45°の範囲において、角θayが大きくなるほどゲイン差(g_yaw_e - g_pitch_e)が小さくなる。θay=45°において、ゲイン差が実質的にゼロになる。したがって、角θaxと角θayとが等しいときに、ピッチ方向とヨー方向とで離調周波数の振動を低減させる効果を実質的に一致させることができる。振動検出装置15は対称的に形成されているので、45°≦θay≦75°(=90°-15°)の範囲において、角θayが小さくなるほどゲイン差(g_yaw_e - g_pitch_e)が小さくなる。前述したように、角θaxと角θayとの和は90°である(θax+θay=90°)。そのため、角θaxおよび角θayの各々が、15°以上かつ75°以下の範囲、すなわち、θax+θay(=90°)の1/6以上かつ5/6以下の範囲において、ゲイン差が低減される。ひいては、ピッチ方向とヨー方向とで離調周波数の振動を低減させる効果を互いに近付けることができる。
以上のように、角θaxおよび角θayの各々を、θax+θayの1/6以上かつ5/6以下の範囲になるように設定することで、ジャイロセンサ22の各検出軸方向の緩衝部材23の周波数特性を互いに近付けることができる。ひいては、本実施形態のように構成することで、シャッターショック等の外乱による振動の出力誤差を抑制して精度良く振れ補正を実行できる振れ補正装置を実現することができる。
以上の技術的効果は、図4を参照して説明された変形例においても同様に奏される。前述のように、第1投影線Sx1および第2投影線Sy1は、いずれも投影方向線A1の方向と平行ではない。第1検出軸Sxを中心とする回転方向の振動が入力されても、第2検出軸Syを中心とする回転方向の振動が入力されても、第1緩衝部材23aと第2緩衝部材23bとの双方にせん断方向の力と圧縮方向の力とが加えられる。そのため、本変形例のジャイロセンサホルダー21(ジャイロセンサ22)の周波数特性は、緩衝部材23が、せん断方向に変形する際の周波数特性と圧縮方向に変形する際の周波数特性とを足し合わせたような特性を示す。したがって、本変形例においても、ジャイロセンサ22の各検出軸方向の緩衝部材23の周波数特性を互いに近付けることができる。また、本変形例では、平面P1に投影した第1検出軸Sxである第1投影線Sx1と投影方向線A1とがなす角θax1は、平面P1にそれぞれ投影した第1検出軸Sxである第1投影線Sx1と第2検出軸Syである第2投影線Sy1とがなす角(θax1+θay1)の1/6以上かつ5/6以下の範囲である。したがって、本実施形態と同様に、上記した効果がより顕著に奏される。
図10および図11を参照して、ジャイロセンサ22の周波数特性について説明する。図10は、従来例に係る振動検出装置15´を矢印A´の方向から見た図であり、図11は、本実施形態に係る振動検出装置15を矢印Aの方向から見た図である。
図10に示すように、従来例において、第1緩衝部材23a´および第2緩衝部材23b´の各々は、第3検出軸Szと平行な方向の長さD´と、第3検出軸Szに垂直な方向の長さW´とが実質的に一致するように構成されている。なお、従来例における長さD´は、本実施形態における長さDに等しいと想定する。以上の構成では、ピッチ方向の慣性モーメントとロール方向の慣性モーメントとが実質的に等しい。そのため、振動検出装置15´のジャイロセンサホルダー21´(ジャイロセンサ22´)において、ロールの周波数特性は、図7(b)に示すピッチの周波数特性と実質的に一致する。
他方、前述のように、また、図11に示すように、本実施形態において、第1緩衝部材23aおよび第2緩衝部材23bの各々は、第3検出軸Szと平行な方向の長さDよりも、第3検出軸Szに垂直な方向の長さWの方が小さいように構成されている。以上の構成では、本実施形態に係るロール方向の慣性モーメントが、従来例に係るピッチ方向の慣性モーメントに対して相対的に小さくなる。そのため、振動検出装置15のジャイロセンサホルダー21(ジャイロセンサ22)においては、ロールの共振周波数が従来例のピッチの共振周波数よりも低くなるので、ロールの周波数特性がヨーの周波数特性に近付く。離調周波数feにおけるロール方向のゲインg_roll_eを低くすることで、ヨー方向のゲインg_yaw_eに近付けることができる。したがって、ロール方向とヨー方向とで離調周波数の振動を低減させる効果を互いに近付けることができる。
上記したように、本実施形態においては、ジャイロセンサ22の各検出軸方向の緩衝部材23の周波数特性を互いに近付けるように設定することができる。ひいては、本実施形態のように構成することで、シャッターショック等の外乱による振動の出力誤差を抑制して精度良く振れ補正を実行できる振れ補正装置を実現することができる。
なお、上記した実施形態においては、角θaxと角θayとが45°で一致するときにピッチの周波数特性とヨーの周波数特性とが実質的に一致する構成を例示している。上記記載では、ジャイロセンサホルダー21の重心の偏り等について考慮されていない。しかしながら、ジャイロセンサホルダー21の形状に基づくジャイロセンサ22の各検出軸方向の慣性モーメントの差異や緩衝部材23の特性等の差異によっては、緩衝部材23の各検出軸方向の共振周波数に偏りが生じる可能性がある。偏りが生じると、角θaxと角θayとが45°である際にピッチの周波数特性とヨーの周波数特性とが実質的に一致しない可能性がある。そのような場合であっても、角θaxを適宜に調整することによって、ピッチの周波数特性とヨーの周波数特性とを実質的に一致させることができる。また、緩衝部材23の長さDと長さWとの比を適宜に調整することによって、ロールの周波数特性とヨーの周波数特性とを実質的に一致させることができる。
また、上記した実施形態においては、挟込み方向と第1検出軸Sxとがなす角θaxは、第1検出軸Sxと第2検出軸Syとがなす角(θax+θay)の1/6以上かつ5/6以下の範囲に設定されている。しかしながら、角θaxが、単に角(θax+θay)よりも小さく設定されていてもよい。同様に、上記した変形例においては、第1投影線Sx1と投影方向線A1とがなす角θax1は、第1投影線Sx1と第2投影線Sy1とがなす角(θax1+θay1)の1/6以上かつ5/6以下の範囲に設定されている。しかしながら、角θax1が、単に角(θax1+θay1)よりも小さく設定されていてもよい。