JP7251518B2 - フレア加工性に優れる鍛接鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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Description
フレア加工とは鋼管端部を拡管してつばだしする加工であり、鋼管円周方向に過大な張力を与えて加工を行うため、優れた加工性(以下、「フレア加工性」とも記す)が要求されている。
そして、本発明者らは上記の目的を達成するために鋼帯を成形鍛接機で管状に連続成形しつつ、エッジ部を衝合・鍛接する方法において、最適な鍛接衝合部近傍のメタルフローの角度について鋭意研究した。その結果、エッジ部を衝合・鍛接する直前において酸素混合空気を吹きつける際に、吹付けを行うノズルと管状に成形される鋼帯との距離により鍛接衝合部近傍のメタルフローの角度が変化することを知見した。そして衝合時、酸素混合空気の吹付けを行うノズルの吹付け口と管状に成形される鋼帯のエッジ部との距離の適切化により鍛接衝合部のメタルフローの角度が良好になり、高いフレア加工性が実現できることを見出した。
[1]下記の鍛接鋼管を製造する方法であって、
鋼板のエッジ部を成形して加熱炉にて加熱した後に、成形鍛接機で鋼板を管状に成形し、下記の式(1)を満たす条件にて、ノズルから酸素混合空気を吹付けてエッジ部を衝合・鍛接する鍛接鋼管の製造方法。
10≦H≦20t0-10 ・・・(1)
H:ノズル吹付け口と管状に成形された鋼板のエッジ部との距離(mm)
t0:鋼板の板厚(mm)
記
鍛接鋼管の外径円と同心の半径が(do/2-t/4)である円の円周上であって鍛接衝合部から200μmの位置および鍛接鋼管の外径円と同心の半径が(di/2+t/4)である円の円周上であって鍛接衝合部から200μmの位置でのメタルフロー立ち上がり角度がいずれも30°以上であり、かつ鍛接鋼管外径円と同心の半径が(do/2-t/4)である円の円周上であって鍛接衝合部から300×tμmの位置および鍛接鋼管の外径円と同心の半径が(di/2+t/4)である円の円周上であって鍛接鋼管の鍛接衝合部から300×tμmの位置でのメタルフロー立ち上がり角度がいずれも30°未満であることを特徴とする鍛接鋼管。
ここで、doは鍛接鋼管の外径(mm)、diは鍛接鋼管の内径(mm)、tは鍛接鋼管の肉厚(mm)であり、また、メタルフロー立ち上がり角度とは、鍛接鋼管の外径円と同心の円の接線に対してメタルフローの接線が形成する角度である。
素材である鋼板は、鋼帯であることが好ましいが、薄板、厚板などの切り板でも適用できる。以下においては、鋼板が鋼帯である場合を取り上げる。
最初に、鋼帯から鍛接鋼管を製造する工程を図7に示す鍛接鋼管の製造ライン設備に基づいて説明する。
コイル15から払い出された鋼帯16をルーパー17に通し、エッジ成形機18で鋼帯のエッジ部(幅端部)を成形する。本発明では特に限定はしないが、エッジ部の成形にはアップセットロールで端部を成形する方法、切削により端部を削る方法が考えられる。その後加熱炉19で加熱し、成形鍛接機20で管状に連続成形しつつ、エッジ部を衝合・鍛接する直前において酸素混合空気をノズル21から吹付けて昇温して鍛接して結合し、さらに縮径圧延ロール22で所望の外径まで絞り圧延し、鍛接鋼管1を製造する。鍛接鋼管1には鍛接衝合部2が形成されている(図1参照)。
この設備ラインでは、衝合部を鍛接して結合した後に絞り圧延を施して鍛接鋼管を仕上げているが、絞り圧延を施さないで鍛接鋼管を仕上げる場合もある。
メタルフロー(偏析線)は、鍛接鋼管の管軸方向に垂直な断面での鍛接衝合部およびその近傍をエッチングすることにより、容易に可視化することができる(図2参照)。
まず、鍛接鋼管の素材である鋼帯の板厚t0の計測方法について説明する。
鍛接鋼管の素材である鋼帯の板厚t0は、鍛接鋼管1の製造に用いる鋼帯の左右のエッジ部および中央部の3か所の位置での肉厚をマイクロメータにより計測して得られた3つの値の平均値から求めた。
次に、鍛接鋼管1の外径3および鍛接鋼管の肉厚tの計測方法について、図1に示した鍛接鋼管1の管軸方向に垂直な断面を用いて説明する。
鍛接鋼管1の外径3は、図1に示すように鍛接衝合部2の位置でノギスを用いて計測して求めることができる。また、鍛接鋼管1の肉厚tは、図1に示すように鍛接衝合部2の位置と鍛接衝合部2から周方向にそれぞれ90°、180°および270°の位置での肉厚とをマイクロメータを用いて計測し、得られた4つの値の平均した値から求めることができる。
以下、鍛接鋼管の外径の値をdo、鍛接鋼管の内径の値をdiと表記する。
なお、図2では鍛接衝合部2の右側のメタルフローのみを示したが、同様のメタルフロー5が鍛接衝合部2の左側にも形成されている。
次いで、円6の円周上における、鍛接衝合部2から200μmおよび300×tμmの位置において、それぞれ接線を引き、それぞれの位置(すなわち接点)でそれぞれの接線に垂直な線(以下、単に「垂線」という)10、11を引く(図3参照)。
同様に、円7の円周上における、鍛接衝合部2から200μmおよび300×tμmの位置において、それぞれ接線を引き、それぞれの位置(接点)でそれぞれの接線に垂直な線(以下、単に「垂線」という)8、9を引く(図3参照)。
ここで、tは、mm単位で表記される鍛接鋼管の肉厚である。
円7と垂線8の交点でのメタルフロー立ち上がり角度を計測する場合の手順を図4に基づいて説明する。手順は以下のステップを経る。
(ステップ1)
鍛接衝合部の鍛接衝合部近傍に鍛接鋼管の外径円と同心の円7〔半径が(di/2+t/4)〕を描く。
(ステップ2)
円7の円周上であって、鍛接衝合部から右側へ200μm離れた位置で円7の接線14を引き、次いで垂直な線(垂線)8を引く(図4参照)。
(ステップ3)
円7と垂線8の交点(すなわち接点)において、この交点を通過するメタルフロー5の曲線の接線12を引く。
(ステップ4)
メタルフローの接線12と円7の接線14のなす角13を求める。この角度13が円7と垂線8との交点でのメタルフロー立ち上がり角度である。
(ステップ5)
ステップ4で求めたメタルフロー立ち上がり角度は、円7の円周上であって、鍛接衝合部から右側へ200μm離れた位置でのものである。同様にして、円7の円周上であって、鍛接衝合部から左側へ200μm離れた位置でのメタルフロー立ち上がり角度を求める。
(ステップ6)
ステップ4およびステップ5で求めた左右のメタルフロー立ち上がり角度を平均した値を、鍛接衝合部から200μmの位置でのメタルフロー立ち上がり角度とする。
以上のステップ1~6により、円7と垂線8の交点でのメタルフロー立ち上がり角度を計測することができる。
以上のとおり、計8個所でのメタルフロー立ち上がり角度を求めることになる。
本発明の鍛接鋼管は、鍛接衝合部から200μmの位置においてメタルフロー立ち上がり角度30°以上である。理由は以下のとおりである。
鍛接衝合部の近傍において、ノズル21からの酸素混合空気の吹付けにより昇温した部分およびメタルフローが変形した部分が狭小すぎる場合、衝合力不足によって衝合部の接着力が不足し、鍛接衝合部がフレア加工時に割れの起点となることで所望のフレア加工性を満足しない。鍛接衝合部から200μmの位置においてメタルフロー立ち上がり角度が30°以上であればフレア加工時に鍛接衝合部から割れが生じなかったため、鍛接衝合部から200μmの位置におけるメタルフロー立ち上がり角度を30°以上とした。
本発明の鍛接鋼管は、鍛接衝合部から300×tμmの位置においてメタルフロー立ち上がり角度30°未満である。理由は以下のとおりである。
鍛接衝合部の近傍において、ノズル21からの酸素混合空気の吹付けによる昇温した部分およびメタルフローが変形した部分が過大すぎる場合、衝合力過大によって衝合時にエッジ部が座屈し、外表面にすじとなって現れる。このすじがフレア加工時に割れの起点となることで、所望のフレア加工性を満足しない。この座屈は鋼帯板厚が薄いほど、メタルフローが変形した部分が狭くても発生しやすい。鍛接衝合部から300×tμmの位置においてメタルフロー立ち上がり角度が30°未満であればエッジ部の座屈を防止し、フレア加工時に割れが生じなかったため、メタルフローが鍛接衝合部から300×tμmの位置におけるメタルフロー立ち上がり角度を30°未満とした。
10≦H≦20t0-10 ・・・(1)
本発明の鍛接鋼管の製造方法においては、上記の距離Hが式(1)を満たす。以下、このことについて説明する。
Hが過大(H>20t0-10)である場合、管状に成形された鋼帯の外表面において酸素混合空気が広範囲で接触し、昇温領域が周方向に広がる。そうすると、鍛接衝合部近傍の広い範囲で鋼帯が昇温、変形し、上述の条件、すなわち「鍛接衝合部から200μmの位置においてメタルフロー立ち上がり角度30°以上」および「鍛接衝合部から300×tμm(tは鍛接鋼管の肉厚)の位置で30°未満」を満たさない。
Hは鋼帯の板厚t0によって範囲が決定され、H≦20t0-10であると内外面でのメタルフロー範囲が上述の条件、すなわち「メタルフローが鍛接衝合部から200μmの位置において30°以上」および「鍛接衝合部から300×tμm〔tは鍛接鋼管の肉厚(mm)〕の位置で30°未満」を満たした。そのため、H≦20t0-10であることを必須とした。
なお、以上の説明において鍛接鋼管の素材が鋼帯である発明について説明したが、鍛接鋼管の素材が鋼帯以外の鋼板である発明についても同様である。
10≦H≦20t0-10 ・・・(1)
t0:鋼帯板厚(mm)
鋼帯板厚t0は1.79~6.02mmであり、製造した鍛接鋼管は、外径が48.6mm~114.3mm、鋼管肉厚tが1.74mm~6.12mm、引張強度(TS)が296N/mm2~489N/mm2、伸び率が23%~88%である。
鍛接鋼管の外径と肉厚の計測を行い、その後、フレア加工機を用いてフレア加工を行った。
表1に実施例を示す。
これに対して、比較例のNo.9~11は、いずれもHが式(1)を満たしておらず、また、メタルフロー立ち上がり角度もいずれかが適正な範囲に収まっていない。その結果、フレア加工時に割れが発生し、フレア加工性が不良(×)であった。
2:鍛接衝合部
3:鍛接鋼管(フレア加工前)の外径
4:鍛接鋼管の肉厚
5:メタルフロー(偏析線)
6:鍛接鋼管の外径円と同心の半径が(鍛接鋼管の外径/2-t/4)の円
7:鍛接鋼管の外径円と同心の半径が(鍛接鋼管の内径/2+t/4)の円
8:円7の円周上の鍛接衝合部から200μmの位置での垂線
9:円7の円周上の鍛接衝合部から300×tμm位置での垂線
10:円6の円周上の鍛接衝合部から200μm位置での垂線
11:円6の円周上の鍛接衝合部から300×tμm位置での垂線
12:メタルフローの接線
13:メタルフロー立ち上がり角度
14:円周7の接線
15:コイル
16:鋼帯
17:ルーパー
18:エッジ成形機
19:加熱炉
20:成形鍛接機
21:(酸素混合空気吹付け)ノズル
22:縮径ロール
23:ノズル吹付け口と鋼帯エッジ部との距離H
24:フレア加工後の鍛接鋼管の鍔部の外径
Claims (1)
- 下記の鍛接鋼管を製造する方法であって、
鋼板のエッジ部を成形して加熱炉にて加熱した後に、成形鍛接機で鋼板を管状に成形し、下記の式(1)を満たす条件にて、ノズルから酸素混合空気を吹付けてエッジ部を衝合・鍛接する鍛接鋼管の製造方法。
10≦H≦20t0-10 ・・・(1)
H:ノズル吹付け口と管状に成形された鋼板のエッジ部との距離(mm)
t0:鋼板の板厚(mm)
記
鍛接鋼管の外径円と同心の半径が(do/2-t/4)である円の円周上であって鍛接衝合部から200μmの位置および鍛接鋼管の外径円と同心の半径が(di/2+t/4)である円の円周上であって鍛接衝合部から200μmの位置でのメタルフロー立ち上がり角度がいずれも30°以上であり、かつ鍛接鋼管外径円と同心の半径が(do/2-t/4)である円の円周上であって鍛接衝合部から300×tμmの位置および鍛接鋼管の外径円と同心の半径が(di/2+t/4)である円の円周上であって鍛接鋼管の鍛接衝合部から300×tμmの位置でのメタルフロー立ち上がり角度がいずれも30°未満であることを特徴とする鍛接鋼管。
ここで、doは鍛接鋼管の外径(mm)、diは鍛接鋼管の内径(mm)、tは鍛接鋼管の肉厚(mm)であり、また、メタルフロー立ち上がり角度とは、鍛接鋼管の外径円と同心の円の接線に対してメタルフローの接線が形成する角度である。
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