JP2008161940A - 加工性に優れた鍛接鋼管およびその製造方法、並びに製造設備列 - Google Patents
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Abstract
【課題】鍛接衝合部の接着強度を向上せしめ、安定して強加工に耐えうる加工性に優れた鍛接鋼管を提供する。
【解決手段】鍛接鋼管であって、鍛接鋼管外面の鍛接衝合部のすじ深さが0.15mm以下で、且つ、鍛接鋼管の鋼管内面の鍛接衝合部のすじ深さが0.25mm以下であり、更に、下式<1>で定義される鍛接衝合部の夾雑物占有率(A)が下記<2>及び<3>式の範囲であることを特徴とする。A=(L/t)×100…<1>但し、A:夾雑物占有率(%)L:鍛接衝合部における夾雑物の鋼管肉厚方向の長さの合計(mm)t:鋼管の肉厚(mm)A≦−33・do+5.0…<2>A≦−20・di+5.0…<3>但し、do:鍛接鋼管外面の鍛接衝合部のすじ深さdi:鍛接鋼管内面の鍛接衝合部のすじ深さ
【選択図】図2
【解決手段】鍛接鋼管であって、鍛接鋼管外面の鍛接衝合部のすじ深さが0.15mm以下で、且つ、鍛接鋼管の鋼管内面の鍛接衝合部のすじ深さが0.25mm以下であり、更に、下式<1>で定義される鍛接衝合部の夾雑物占有率(A)が下記<2>及び<3>式の範囲であることを特徴とする。A=(L/t)×100…<1>但し、A:夾雑物占有率(%)L:鍛接衝合部における夾雑物の鋼管肉厚方向の長さの合計(mm)t:鋼管の肉厚(mm)A≦−33・do+5.0…<2>A≦−20・di+5.0…<3>但し、do:鍛接鋼管外面の鍛接衝合部のすじ深さdi:鍛接鋼管内面の鍛接衝合部のすじ深さ
【選択図】図2
Description
本発明は、フレア加工、グルービング加工、あるいはねじ転造等に供される高加工性の要求される鍛接鋼管に関し、特に、鍛接衝合部の品質が優れた鍛接鋼管およびその製造方法、並びに製造設備列に関する。
近年、配管市場においては、継ぎ手部の要求品質の厳格化・多様化の観点からメカニカルな継ぎ手が普及しつつあり、フレア加工、グルービング加工、あるいは転造ねじ等の強加工に耐え得る鍛接鋼管の要求が高まっている。一般的に鍛接鋼管は、製造コストが安いものの、強加工を施すと、特に鍛接衝合部を起因とした割れが発生するため、強加工の用途には不向きとされていた。
図8は、一般的な鍛接鋼管の製造方法を示している。まず、鋼帯1のエッジ部をエッジ成形ロール2にて成形し、加熱炉3で1100〜1350℃に加熱し、加熱された鋼帯を成形ロール4により管状に連続熱間成形後、鍛接直前で管状スケルブの両エッジ部に酸素吹き付けノズル6により酸素を吹き付け、鍛接ロール5で鍛接する。このように製造された鍛接鋼管の鍛接衝合部には、鋼管の衝合部外面にすじ状の疵(以降、すじ、または外面すじと称す)が発生し、衝合部の内部に酸化物などが残留した所謂、夾雑物が存在している。これらが強加工の時に割れの大きな要因となっている。
外面すじは、鋼帯を所定の寸法幅にスリットする時にエッジ部にダレが発生し、それを衝合しきれずに残ったものと考えられる。また、夾雑物は、鋼帯の加熱中、あるいは成形中に生成されたスケールが鍛接衝合部に噛み込み残留して発生するものと考えられる。
そしてこれら外面すじや夾雑物の発生を防止する方法として、特許文献1のように鍛接ロールと絞りロールの間で鍛接衝合部の外面を切削除去し、鍛接衝合部の外面すじを防止する方法や、特許文献2のように、スケール発生量の減少、燃料原単位の低減を目的として、鍛接直前でプラズマ・アークにより管状スケルブの両エッジ部を加熱し、引き続き両エッジ部に酸素を吹き付けて鍛接して造管することを特徴とする方法が提案されている。
そしてこれら外面すじや夾雑物の発生を防止する方法として、特許文献1のように鍛接ロールと絞りロールの間で鍛接衝合部の外面を切削除去し、鍛接衝合部の外面すじを防止する方法や、特許文献2のように、スケール発生量の減少、燃料原単位の低減を目的として、鍛接直前でプラズマ・アークにより管状スケルブの両エッジ部を加熱し、引き続き両エッジ部に酸素を吹き付けて鍛接して造管することを特徴とする方法が提案されている。
しかしながら、これらの方法をもってしてもメカニカルな継ぎ手用鍛接鋼管などとして要求されるフレア加工、グルービング加工、あるいは転造ねじ等に耐えうる加工性を満足できるものではなかった。特許文献1の方法では、熱間で切削するために切削用のバイト寿命が極端に短く、また、切削面も平滑ではなく、健全な衝合が困難であった。
一方、特許文献2の方法では、設備費が高くなり、また、衝合状態もまだ不安定であった。
一方、特許文献2の方法では、設備費が高くなり、また、衝合状態もまだ不安定であった。
他方、特許文献3には、鍛接鋼管の衝合部の外面すじ深さ及び夾雑物占有率を特定の範囲に制御した加工性に優れた鍛接鋼管が提案されている。即ち、鍛接鋼管の鍛接衝合部の外面すじ深さが0.25mm以下で、かつ次式<<1>>に示す夾雑物占有率A値が3.0%以下であることを特徴とする加工性に優れた鍛接鋼管である。
A=(L/t)×100(%)…<<1>>
ただし、上記式において、A:夾雑物占有率、L:鍛接衝合部の全ての夾雑物の長さを足し合わせた値(mm)、t:鍛接衝合部の肉厚(mm)を示す。
A=(L/t)×100(%)…<<1>>
ただし、上記式において、A:夾雑物占有率、L:鍛接衝合部の全ての夾雑物の長さを足し合わせた値(mm)、t:鍛接衝合部の肉厚(mm)を示す。
しかし、上記特許文献3の技術でもフレア加工、グルービング加工、あるいは転造ねじ等の強加工に十分に安定して耐えうるものではなかった。
これらの実情に鑑み、本発明は、鍛接衝合部の接着強度を向上せしめ、安定して強加工に耐えうる加工性に優れた鍛接鋼管およびその製造方法、並びに製造設備列を提供することを目的とするものである。
これらの実情に鑑み、本発明は、鍛接衝合部の接着強度を向上せしめ、安定して強加工に耐えうる加工性に優れた鍛接鋼管およびその製造方法、並びに製造設備列を提供することを目的とするものである。
本発明者らは鍛接鋼管の鍛接接合部について、特に内面ビード部の状態をある一定の範囲に制御することにより加工性に優れた鍛接鋼管が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)鍛接鋼管外面の鍛接衝合部のすじ深さ(do)が0.15mm以下で、且つ、鍛接鋼管の鋼管内面の鍛接衝合部のすじ深さ(di)が0.25mm以下であり、更に、下記<1>式で定義される鍛接衝合部の夾雑物占有率(A)が、下記<2>及び<3>式の範囲であることを特徴とする加工性に優れた鍛接鋼管。
A=(L/t)×100 …<1>
但し、A:夾雑物占有率(%)
L:鍛接衝合部における夾雑物の鋼管肉厚方向の長さの合計(mm)
t:鋼管の肉厚(mm)
A≦−33・do+5.0 …<2>
A≦−20・di+5.0 …<3>
(2)前記鍛接鋼管の鋼管内面の鍛接衝合部のビード高さ(hb)が、0.10mm以上であり、且つ、前記<1>式で定義される鍛接衝合部の夾雑物占有率(A)が5.0%以下で、且つ、下記<4>式の範囲であることを特徴とする(1)に記載の加工性に優れた鍛接鋼管。
A≦33・hb−3.3 …<4>
(3)前記鍛接鋼管の母材の材質が、Siキルド鋼あるいはAl−Siキルド鋼であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の加工性に優れた鍛接鋼管。
(4)鋼帯をエッジ成形し、加熱した後、管状に成形し、鍛接する鍛接鋼管の製造方法において、
鋼帯のエッジを切削加工し、次いでエッジ成形し、
前記加熱の際に、加熱温度を1300℃以下とし、
前記鍛接の際に、アプセット率を3.0%以上と
することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の加工性に優れた鍛接鋼管の製造方法。
(5)少なくとも、鋼帯のエッジを切削成形する切削成形設備と、エッジ成形する設備と、鋼帯を1300℃以下で加熱する加熱炉と、加熱した鋼帯を管状に成形する設備と、成形した鋼管をアプセット率3.0%以上で鍛接する設備とを、上流側から順次有する鍛接鋼管の製造設備列において、
前記鋼帯を加熱する加熱炉の前段に、鋼帯のエッジを切削成形する切削成形設備と、その下流側に、鋼帯をエッジ成形する設備を順次配置したことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の加工性に優れた鍛接鋼管を製造するための製造設備列。
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)鍛接鋼管外面の鍛接衝合部のすじ深さ(do)が0.15mm以下で、且つ、鍛接鋼管の鋼管内面の鍛接衝合部のすじ深さ(di)が0.25mm以下であり、更に、下記<1>式で定義される鍛接衝合部の夾雑物占有率(A)が、下記<2>及び<3>式の範囲であることを特徴とする加工性に優れた鍛接鋼管。
A=(L/t)×100 …<1>
但し、A:夾雑物占有率(%)
L:鍛接衝合部における夾雑物の鋼管肉厚方向の長さの合計(mm)
t:鋼管の肉厚(mm)
A≦−33・do+5.0 …<2>
A≦−20・di+5.0 …<3>
(2)前記鍛接鋼管の鋼管内面の鍛接衝合部のビード高さ(hb)が、0.10mm以上であり、且つ、前記<1>式で定義される鍛接衝合部の夾雑物占有率(A)が5.0%以下で、且つ、下記<4>式の範囲であることを特徴とする(1)に記載の加工性に優れた鍛接鋼管。
A≦33・hb−3.3 …<4>
(3)前記鍛接鋼管の母材の材質が、Siキルド鋼あるいはAl−Siキルド鋼であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の加工性に優れた鍛接鋼管。
(4)鋼帯をエッジ成形し、加熱した後、管状に成形し、鍛接する鍛接鋼管の製造方法において、
鋼帯のエッジを切削加工し、次いでエッジ成形し、
前記加熱の際に、加熱温度を1300℃以下とし、
前記鍛接の際に、アプセット率を3.0%以上と
することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の加工性に優れた鍛接鋼管の製造方法。
(5)少なくとも、鋼帯のエッジを切削成形する切削成形設備と、エッジ成形する設備と、鋼帯を1300℃以下で加熱する加熱炉と、加熱した鋼帯を管状に成形する設備と、成形した鋼管をアプセット率3.0%以上で鍛接する設備とを、上流側から順次有する鍛接鋼管の製造設備列において、
前記鋼帯を加熱する加熱炉の前段に、鋼帯のエッジを切削成形する切削成形設備と、その下流側に、鋼帯をエッジ成形する設備を順次配置したことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の加工性に優れた鍛接鋼管を製造するための製造設備列。
本発明の鍛接鋼管を使用することにより、加工の厳しいフレア加工、グルービング加工、ねじの転造などを行っても衝合部での割れなどが発生することなく加工ができ、製造コストの安価な鍛接鋼管を使用してメカニカルな継ぎ手等への適用が可能となり、安価でしかも短工期の配管工事等が可能となる。
以下に、本発明の加工性に優れた鍛接鋼管とその製造方法について、さらに詳細に説明する。
まず、本発明では、鍛接鋼管の鍛接衝合部の外面すじ深さ(do)が0.15mm以下で、かつ、下記<1>式に示す夾雑物占有率A値が、下記<2>式の範囲にあることを特徴とする。
A=(L/t)×100(%) …<1>
但し、A:夾雑物占有率(%)
L:鍛接衝合部における夾雑物の鋼管肉厚方向の長さの合計(mm)
t:鋼管の肉厚(mm)
A≦−33・do+5.0 …<2>
まず、本発明では、鍛接鋼管の鍛接衝合部の外面すじ深さ(do)が0.15mm以下で、かつ、下記<1>式に示す夾雑物占有率A値が、下記<2>式の範囲にあることを特徴とする。
A=(L/t)×100(%) …<1>
但し、A:夾雑物占有率(%)
L:鍛接衝合部における夾雑物の鋼管肉厚方向の長さの合計(mm)
t:鋼管の肉厚(mm)
A≦−33・do+5.0 …<2>
メカニカル継ぎ手用鋼管を製造する際、鋼管の管端部はフレア加工により、押し拡げ率で1.5以上の加工性が要求される。
押し拡げ率=D′/D
D:素管の外径
D′:押し拡げ後の鋼管の外径
このような強加工の下では、外面すじが残存すると、切り欠き効果により応力が集中し、割れが発生し易い。また、衝合部に夾雑物が存在すると、衝合部の接着力が低下し、衝合部に割れが発生し易くなる。
押し拡げ率=D′/D
D:素管の外径
D′:押し拡げ後の鋼管の外径
このような強加工の下では、外面すじが残存すると、切り欠き効果により応力が集中し、割れが発生し易い。また、衝合部に夾雑物が存在すると、衝合部の接着力が低下し、衝合部に割れが発生し易くなる。
上記<1>式は、鍛接鋼管が管サイズ毎に肉厚が異なることから、鍛接衝合部中の夾雑物の存在率を規定するものである。夾雑物の測定は、光学顕微鏡を用いて鍛接衝合部断面の肉厚方向に沿って夾雑物を観察し、各夾雑物の長さを測定する。測定した各夾雑物の長さを全て足し合わせた値をLとし(図1参照)、Lを鋼管の肉厚tで除したもので、夾雑物占有率と称す。
図2は、鍛接鋼管の鍛接衝合部の模式図である。
破線部が鍛接衝合部である。外面すじ深さは鍛接衝合部の外面側に発生しているすじの深さを外面すじ深さとして測定している。内面すじ深さはビード部の最も高い部分から鍛接衝合部の最も低い部分までの深さを内面すじ深さとして測定している。内面ビード部の高さ(hb)は(tB)−(t)とした。即ち、ビード部の最も高い部分の肉厚(tB)と鋼管の肉厚(t)との差である。
破線部が鍛接衝合部である。外面すじ深さは鍛接衝合部の外面側に発生しているすじの深さを外面すじ深さとして測定している。内面すじ深さはビード部の最も高い部分から鍛接衝合部の最も低い部分までの深さを内面すじ深さとして測定している。内面ビード部の高さ(hb)は(tB)−(t)とした。即ち、ビード部の最も高い部分の肉厚(tB)と鋼管の肉厚(t)との差である。
図3は、横軸に外面すじ深さ、縦軸に夾雑物占有率をとり、各水準でサンプルを製作し、押し拡げ率1.3でフレア加工を行い割れが発生するか否かにより良否を判定したものである。その結果、割れの発生は夾雑物皆無の時は、外面すじ深さが0.15mm超で割れが発生し始めており、外面すじがないサンプルでは、夾雑物占有率が5.0%超で割れが発生し始めている。また、鍛接衝合部に外面すじと夾雑物が存在するときは、上記<2>式を満足する領域以外で割れが発生している。これらの結果より本願発明では鍛接鋼管の外面すじ深さを0.15mm以下、で且つ、上記<2>式の範囲に規定した。
しかし、外面すじ深さ、及び夾雑物占有率を規定しても押し拡げ率1.5以上を安定して割れ無しで加工することはできなかった。
そこで、本発明者らは鍛接鋼管の鍛接衝合部の内面すじに着目し、加工した際の割れの有無を検討した。
そこで、本発明者らは鍛接鋼管の鍛接衝合部の内面すじに着目し、加工した際の割れの有無を検討した。
図4は、横軸に内面すじ深さ、縦軸に夾雑物占有率をとり、各水準でサンプルを製作し、押し拡げ率1.5でフレア加工を行い割れが発生するか否かにより良否を判定したものである。その結果、夾雑物皆無の時は、内面すじが0.25mm超で割れが発生し始めており、内面すじがないサンプルでは、夾雑物占有比率が、5.0%超で割れが発生し始めている。また、鍛接衝合部に内面すじと夾雑物が存在するときは下記<3>式を満足する領域以外で割れが発生している。これらの結果より本願発明では、鍛接鋼管内面すじ深さを0.25mm以下でかつ、下記<3>式の範囲を規定した。
A≦−20・di+5.0 …<3>
A≦−20・di+5.0 …<3>
そこで更に、本発明者は鍛接鋼管の鍛接衝合部の外面すじ深さおよび内面すじ深さをそれぞれ0.15mm、0.25mm以下にすることを目的に、鍛接衝合部の押し付け力を種々変化させて鍛接衝合部の外面すじ深さおよび内面すじ深さと内面ビード形状について検討した結果、以下のようなことが判明した。
図5は、鍛接衝合時の押し付け力を種々変化させ、そのときの鍛接衝合部の内面ビード部の状態を示した概念図である。
破線部が鍛接衝合部であり、押し付け力が大きい場合その鋼管内面側にビード部の盛り上がりができる。ビード部の高さ(hb)は(tB)−(t)とした。即ち、ビード部の最も高い部分の肉厚(tB)と鋼管の肉厚(t)との差である。そして、ビード部の最も高い部分から衝合部の最も低い部分までの深さを内面すじ深さとして測定している。
図5の(a)〜(c)の順に鍛接衝合時の押し付け力が小から大となっている。
(a)は、押し付け力が最も小さいケースであり、鍛接鋼管の外面および内面の鍛接衝合部にはすじが発生している。
(b)では(a)よりも押し付け力を少し大きくしたケースであり、鍛接鋼管の外面すじ深さは低減されている。鍛接鋼管の内面ではビードが発生しており、ビードの中心の内面すじ深さは低減されている。
(c)は、更に押し付け力を大きくしたケースで、鍛接鋼管の外面すじ深さは更に低減されている。鍛接鋼管の内面ではビードの高さがさらに高くなるが、ビードの中心の内面すじ深さは(b)よりもさらに低減している。
鍛接衝合時の押し付け力を大きくすることによって、内面ビード高さが高くなるが、外面すじ深さと内面すじ深さが低減できる。
図5は、鍛接衝合時の押し付け力を種々変化させ、そのときの鍛接衝合部の内面ビード部の状態を示した概念図である。
破線部が鍛接衝合部であり、押し付け力が大きい場合その鋼管内面側にビード部の盛り上がりができる。ビード部の高さ(hb)は(tB)−(t)とした。即ち、ビード部の最も高い部分の肉厚(tB)と鋼管の肉厚(t)との差である。そして、ビード部の最も高い部分から衝合部の最も低い部分までの深さを内面すじ深さとして測定している。
図5の(a)〜(c)の順に鍛接衝合時の押し付け力が小から大となっている。
(a)は、押し付け力が最も小さいケースであり、鍛接鋼管の外面および内面の鍛接衝合部にはすじが発生している。
(b)では(a)よりも押し付け力を少し大きくしたケースであり、鍛接鋼管の外面すじ深さは低減されている。鍛接鋼管の内面ではビードが発生しており、ビードの中心の内面すじ深さは低減されている。
(c)は、更に押し付け力を大きくしたケースで、鍛接鋼管の外面すじ深さは更に低減されている。鍛接鋼管の内面ではビードの高さがさらに高くなるが、ビードの中心の内面すじ深さは(b)よりもさらに低減している。
鍛接衝合時の押し付け力を大きくすることによって、内面ビード高さが高くなるが、外面すじ深さと内面すじ深さが低減できる。
そこで、さらに本発明者らは鍛接鋼管の鍛接衝合部の内面ビード高さに着目し、加工した際の割れの有無を検討した。
図6は、横軸に内面ビード高さ(hb)、縦軸に夾雑物占有率をとり、各水準でのサンプルを作成し、押し拡げ率1.5でのフレア加工を行い、割れが発生するか否かにより良否を判定したものである。その結果、夾雑物皆無の時は、内面ビード高さが0.10mm未満で割れが発生し始めている。また、夾雑物が存在する時は、下記<4>式を満足する領域以外で割れが発生している。しかしながら、夾雑物占有率が5.0%超となると、内面ビード高さをさらに高くして外面すじ深さおよび内面すじ深さが皆無になっても、図3および図4に示すように割れが発生してしまう。これらの結果より本願発明では、鍛接衝合部の内面ビード高さを0.10mm以上で、且つ夾雑物占有率が5.0%以下で、且つ、下記<4>式の範囲に規定した。
A≦33・hb−3.3 …<4>
図6は、横軸に内面ビード高さ(hb)、縦軸に夾雑物占有率をとり、各水準でのサンプルを作成し、押し拡げ率1.5でのフレア加工を行い、割れが発生するか否かにより良否を判定したものである。その結果、夾雑物皆無の時は、内面ビード高さが0.10mm未満で割れが発生し始めている。また、夾雑物が存在する時は、下記<4>式を満足する領域以外で割れが発生している。しかしながら、夾雑物占有率が5.0%超となると、内面ビード高さをさらに高くして外面すじ深さおよび内面すじ深さが皆無になっても、図3および図4に示すように割れが発生してしまう。これらの結果より本願発明では、鍛接衝合部の内面ビード高さを0.10mm以上で、且つ夾雑物占有率が5.0%以下で、且つ、下記<4>式の範囲に規定した。
A≦33・hb−3.3 …<4>
本発明者らは、上記知見に基づき、造管時の条件とその鍛接鋼管にフレア加工を施した際の割れの発生有無を検討した。
鍛接衝合部の外面すじ深さと内面すじ深さが大きいとフレア加工を施したときに切欠き効果により割れが生じる。また、鍛接衝合部に夾雑物が存在すると鍛接衝合部の接着力が低下し、鍛接衝合部で割れが発生し易くなる。
鍛接衝合部の外面すじ深さと内面すじ深さが大きいとフレア加工を施したときに切欠き効果により割れが生じる。また、鍛接衝合部に夾雑物が存在すると鍛接衝合部の接着力が低下し、鍛接衝合部で割れが発生し易くなる。
鍛接鋼管の鍛接衝合部の内面すじ深さを小さくするためには、鍛接後にビードと共に内面すじを除去することが有効である。但し、この場合、オンラインで切削すると、熱間で切削することになり、前述のようにバイトの寿命や切削面が粗くなるなど技術的に困難であるし、造管後冷却してからの切削では、生産能率が著しく低下するし、コストも増加する。
上記問題に対し一つの対策の考え方は、内面ビードを残したままでも内面すじ深さを小さくすることである。
従来のように、鋼帯のスケルブエッジのカエリ、ダレが残っていた場合、鍛接時に大きな押し付け力を付与すれば内面ビード高さも大きくはなるが、残存したカエリ、ダレの間の溝は深く、やはり切り欠き効果により割れが発生する。従って、鍛接後の内面ビードを残存したままにする場合には、予めエッジ部のカエリ、ダレなどをきれいに除去しておく必要があり、その上で衝合時の押し付け力を大きくする必要がある。
従来のように、鋼帯のスケルブエッジのカエリ、ダレが残っていた場合、鍛接時に大きな押し付け力を付与すれば内面ビード高さも大きくはなるが、残存したカエリ、ダレの間の溝は深く、やはり切り欠き効果により割れが発生する。従って、鍛接後の内面ビードを残存したままにする場合には、予めエッジ部のカエリ、ダレなどをきれいに除去しておく必要があり、その上で衝合時の押し付け力を大きくする必要がある。
前述の図5のように鍛接時の押し付け力を大きくし、内面ビードが高くなるとそれに伴い、内面すじ深さと外面すじ深さが小さくなり、フレア加工を施したときの切欠き効果が小さくなる。従って、内面すじ深さと外面すじ深さがそれぞれ0.25mm以下、0.15mm以下となるには、内面ビード高さは、0.10mm以上であれば良い。
そのために、鋼帯の加熱前に鋼帯のエッジ部を切削成形し、更にロール成形した上で加熱し、鍛接する。
そのために、鋼帯の加熱前に鋼帯のエッジ部を切削成形し、更にロール成形した上で加熱し、鍛接する。
次に本願発明の鍛接鋼管を得るための製造方法の一例について説明する。
図7は、本発明の鍛接鋼管の製造工程の一実施例を示す図である。図8は、従来の鍛接鋼管の製造工程の一実施例を示す図である。従来の製造工程に比較して異なるのは、本発明では、鍛接衝合部の品質がポイントであり、そのために加熱前の鋼帯のエッジ成形において切削成形とその後ロール成形を施す点である。
まず、鋼帯を加熱する前に鋼帯エッジ切削設備7によりエッジ切削を行う。エッジ切削を行うことによってエッジ部の異物を完全に除去する。その後ロール2にてエッジ成形を行い、エッジの形状を整える。これらを実施することによって衝合部に残留する夾雑物を低減し、且つ、エッジ面を平滑にすることにより鍛接鋼管の外面および内面のすじの発生をできるだけ防止する。従来は、特開平04−313471号公報に開示されているように、エッジ成形としてエッジロールで成形した後、予備加熱を行い、エッジ切削を行っていたが、熱間の切削では、鋼が軟らかく正常なエッジ形状は得られないし、また、切削用工具の寿命も極端に短くなり、実用的ではない。
図7は、本発明の鍛接鋼管の製造工程の一実施例を示す図である。図8は、従来の鍛接鋼管の製造工程の一実施例を示す図である。従来の製造工程に比較して異なるのは、本発明では、鍛接衝合部の品質がポイントであり、そのために加熱前の鋼帯のエッジ成形において切削成形とその後ロール成形を施す点である。
まず、鋼帯を加熱する前に鋼帯エッジ切削設備7によりエッジ切削を行う。エッジ切削を行うことによってエッジ部の異物を完全に除去する。その後ロール2にてエッジ成形を行い、エッジの形状を整える。これらを実施することによって衝合部に残留する夾雑物を低減し、且つ、エッジ面を平滑にすることにより鍛接鋼管の外面および内面のすじの発生をできるだけ防止する。従来は、特開平04−313471号公報に開示されているように、エッジ成形としてエッジロールで成形した後、予備加熱を行い、エッジ切削を行っていたが、熱間の切削では、鋼が軟らかく正常なエッジ形状は得られないし、また、切削用工具の寿命も極端に短くなり、実用的ではない。
上記エッジの成形後、鋼帯を所定温度まで加熱し、管状に成形し、鍛接する。重要なのは、鍛接する際のスケルブの押し付け力を大きくするということである。その理由は、前述したように押し付け力が小さいと鍛接鋼管の鍛接衝合部の内外面にすじができ、それが切欠き効果で割れの起因となるからである。また、もう一つの目安として内面ビード高さを押し付け力の目安としても良く、内面ビード高さが0.10mm以上であれば良い。いずれにしても外面すじ深さが0.15mm以下、内面すじ深さが0.25mm以下であれば良く、そのためには内面ビード高さが0.10mm以上必要であり、その程度までスケルブエッジの押し付け力を増大させる。また、押し付け力を大きくすることは、鍛接衝合時に生成されるスケールに起因する衝合部の夾雑物を排出する点でも有利である。押し付け力を増大するためには、単純にアプセット量を大きくしてスケルブの押し付け力を高めても良いが、スケルブ自体の加熱温度を低めにして衝合部の押し付け力を強めても良い。いずれにしても鍛接部の押し付け力が、鍛接鋼管の外面すじ深さ、内面すじ深さ、あるいは、内面ビード高さが本発明の範囲に入るような鍛接部の押し付け条件が得られればその手段はどのような方法でも良い。
更に、このような継ぎ手は、水道管など耐食性を必要とする用途に適用されることが多く、鋼管にめっき被覆をした状態で加工することが多い。従ってこのような場合、強加工に耐えうるめっき被覆が必要である。母材となる鋼がSiを含有していると耐めっき剥離性が向上する。従って鋼管の母材としてSiを含有したSiキルド鋼(Al≦0.010%、Si≧0.010%)や、Al−Siキルド鋼(Al>0.010%、Si≧0.010%)を採用することが望ましい。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
鍛接鋼管を図7に示す製造工程に従って製造した。すなわち、鋼帯1を鋼帯エッジ切削設備7でエッジ切削加工し、続いて鋼帯エッジ成形ロール2でエッジ成形を施し、その後、加熱炉3で加熱し、成形ロール4で管状に成形し、成形ロール4と鍛接ロール5との間で酸素または空気吹付ノズル6により酸素を吹き付け、その後衝合鍛接を行うことを基本として鍛接鋼管を製造した。
上記製造の際の条件、及び、その結果製造された鍛接鋼管の夾雑物占有率、外面すじ深さ、内面すじ深さ、内面ビード高さ及び、その鋼管を押し拡げ率1.5の条件でフレア加工を施した際の割れの発生有無による割れの発生率を表1に列記した。なお、割れの発生率は、鍛接鋼管製造時の同一製造条件毎に30個ずつサンプルを採取してフレア加工を施し、その結果を記載した。
鍛接鋼管を図7に示す製造工程に従って製造した。すなわち、鋼帯1を鋼帯エッジ切削設備7でエッジ切削加工し、続いて鋼帯エッジ成形ロール2でエッジ成形を施し、その後、加熱炉3で加熱し、成形ロール4で管状に成形し、成形ロール4と鍛接ロール5との間で酸素または空気吹付ノズル6により酸素を吹き付け、その後衝合鍛接を行うことを基本として鍛接鋼管を製造した。
上記製造の際の条件、及び、その結果製造された鍛接鋼管の夾雑物占有率、外面すじ深さ、内面すじ深さ、内面ビード高さ及び、その鋼管を押し拡げ率1.5の条件でフレア加工を施した際の割れの発生有無による割れの発生率を表1に列記した。なお、割れの発生率は、鍛接鋼管製造時の同一製造条件毎に30個ずつサンプルを採取してフレア加工を施し、その結果を記載した。
No.1〜9は、本発明で規定している範囲の鍛接鋼管であり、割れの発生率はすべて0%である。No.11,12は、アプセット率が小さく、鍛接時の押し付け力が不十分で外面すじ深さが大きく、かつ内面すじ深さも大きく、割れが発生している。No.13,14は、アプセット率は十分であるが、スケルブの加熱温度が高すぎ、結果的に鍛接時の押し付け力が小さく、特に内面ビード高さが低く、内面すじ深さが大きく、割れが発生している。No.15,16は、鋼帯エッジを切削加工していないため、特に鍛接衝合部の夾雑物占有率が高く、割れが発生している。
(実施例2)
鍛接鋼管の母材材質が表2に示すようなSiキルド、Al−Siキルド、Alキルド鋼を用いて、鍛接後の状態が、本発明範囲内に入るような条件で鍛接鋼管を製造し、溶融亜鉛めっきを施し、実施例1と同じ条件でフレア加工を施し、その結果を、めっきが剥離したか否かにより評価した。その結果を表3に示す。
鍛接鋼管の母材材質が表2に示すようなSiキルド、Al−Siキルド、Alキルド鋼を用いて、鍛接後の状態が、本発明範囲内に入るような条件で鍛接鋼管を製造し、溶融亜鉛めっきを施し、実施例1と同じ条件でフレア加工を施し、その結果を、めっきが剥離したか否かにより評価した。その結果を表3に示す。
フレア加工の結果、Siキルド、及びAl−Siキルド鋼ではフレア加工後のめっき剥離は見られなかったが、Alキルドではめっき剥離が見られた。
本発明法により製造された鍛接鋼管は、鍛接衝合部の外面すじ深さが0.15mm以下、鍛接衝合部の内面すじ深さが0.25mm以下、さらに内面ビード高さが0.10mm以上で、且つ、夾雑物占有率が5.0%以下であることを特徴とし、加工性に優れている。今後、メカニカル継ぎ手用鋼管として過酷な加工に耐え得る鍛接鋼管の要求がますます増えてくる。従って、本発明により製造された鍛接鋼管の効果は極めて大きいものである。
1 鋼帯
2 鋼帯エッジ成形ロール
3 加熱炉
4 成形ロール
5 鍛接ロール
6 酸素又は空気吹付ノズル
7 鋼帯エッジ切削設備
2 鋼帯エッジ成形ロール
3 加熱炉
4 成形ロール
5 鍛接ロール
6 酸素又は空気吹付ノズル
7 鋼帯エッジ切削設備
Claims (5)
- 鍛接鋼管外面の鍛接衝合部のすじ深さ(do)が0.15mm以下で、且つ、鍛接鋼管の鋼管内面の鍛接衝合部のすじ深さ(di)が0.25mm以下であり、更に、下記<1>式で定義される鍛接衝合部の夾雑物占有率(A)が、下記<2>及び<3>式の範囲であることを特徴とする加工性に優れた鍛接鋼管。
A=(L/t)×100 …<1>
但し、A:夾雑物占有率(%)
L:鍛接衝合部における夾雑物の鋼管肉厚方向の長さの合計(mm)
t:鋼管の肉厚(mm)
A≦−33・do+5.0 …<2>
A≦−20・di+5.0 …<3> - 前記鍛接鋼管の鋼管内面の鍛接衝合部のビード高さ(hb)が、0.10mm以上であり、且つ、前記<1>式で定義される鍛接衝合部の夾雑物占有率(A)が5.0%以下で、且つ、下記<4>式の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた鍛接鋼管。
A≦33・hb−3.3 …<4> - 前記鍛接鋼管の母材の材質が、Siキルド鋼あるいはAl−Siキルド鋼であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工性に優れた鍛接鋼管。
- 鋼帯をエッジ成形し、加熱した後、管状に成形し、鍛接する鍛接鋼管の製造方法において、
鋼帯のエッジを切削加工し、次いでエッジ成形し、
前記加熱の際に、加熱温度を1300℃以下とし、
前記鍛接の際に、アプセット率を3.0%以上と
することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工性に優れた鍛接鋼管の製造方法。 - 少なくとも、鋼帯のエッジを切削成形する切削成形設備と、エッジ成形する設備と、鋼帯を1300℃以下で加熱する加熱炉と、加熱した鋼帯を管状に成形する設備と、成形した鋼管をアプセット率3.0%以上で鍛接する設備とを、上流側から順次有する鍛接鋼管の製造設備列において、
前記鋼帯を加熱する加熱炉の前段に、鋼帯のエッジを切削成形する切削成形設備と、その下流側に、鋼帯をエッジ成形する設備を順次配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工性に優れた鍛接鋼管を製造するための製造設備列。
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