JP6028561B2 - Cr含有電縫鋼管の製造方法 - Google Patents

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本発明は、電縫鋼管の製造方法に関し、特に、Crを質量%で0.5〜3.0%程度含有し、造管後の径が7インチ以上の電縫鋼管の製造方法に関する。
通常、管は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、平板を丸めた後、端部を突き合せ溶接して製造するもので、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔し、マンドレルミル等で圧延して製造する。図1に電縫鋼管の製造ラインの一例を示す。図示した製造ラインは、アンコイラー1、レベラー2、ロール成形機5、電縫溶接機(コンタクトチップ6、スクイズロール7を含む)、ビード部切削機8、サイザー9、管切断機10からなり、これに帯板(端部溶接後は管)11を通して電縫鋼管を製造する。なお、3はブレークダウン第1スタンド、51はフィンパスロール(フィンパス成形)である。
溶接管の場合、一般に溶接部の強度や靭性は母材より劣ると言われ、管の適用にあたって、用途ごとに溶接部の強度や靭性の保証が常に議論され問題とされている。
例えば、原油や天然ガスなどを輸送するラインパイプの溶接部では、管を寒冷地に敷設することが多いため低温靭性が重要で、腐食性ガスを含む流体を流す場合には、耐食性が重要視される。また、原油タンカーに使用される配管では、溶接部の海水耐食性や耐摩耗性が重要となる。
電縫鋼管では電縫溶接部において、用途に応じた強度や靭性など特性が得られるように母材となる熱延板の成分組成、製造条件が調整されるが、母材の成分組成が溶接欠陥の発生に大きな影響を与える場合があり、発生した溶接欠陥が溶接部の特性を支配するため、母材の成分組成に応じた溶接技術の開発が重要である。
Cr含有電縫鋼管の場合、溶接される板端面(板幅方向端面)に生成するペネトレーターと呼ばれる酸化物が、電縫溶接時に溶鋼と共に端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレーターが原因となって溶接部の靭性、耐食性が低下する例が多い。
特に、Crを質量%で0.5〜3.0%程度含有し、造管後の径が7インチ以上の電縫鋼管を製造するのは、溶接突合せ部のCr酸化物生成の理由から困難であった。
尚、Crの含有率が上記の範囲を超えるCr含有電縫鋼管は、レーザー溶接で製造している。
そこで、従来、電縫溶接不良の主原因であるペネトレーターを溶接部から除くため、板端面から積極的に溶鋼を排出する技術として特許文献1、2などに、板端部の形状について検討した例が記載されている。特許文献1は、電縫管の製造工程におけるX型開先溶接法に関し、厚肉管の製造時における管状スケルプエッジ部肉厚方向温度むらの改善とボンド部およびHAZ部の強度靭性確保に最適なメタルフローが得られるように、成形ロールのフィンパスロール上でスケルプのエッジ部を特定のX型開先角度に成形することが記載されている。
特許文献2は、加工性の優れた電縫鋼管の製造方法に関し、帯鋼素材の両エッジ部をロール成形前に予め開先加工し、管体成形後のフィンパス成形の段階でエッジロールを使用して成形を行い、エッジ形状をもとのエッジ加工状態に保ったままで突き合わせ溶接を行うことが記載されている。
特許文献3は、溶接部靭性が要求される、油性のラインパイプ向けやケーシングパイプ向けに好適な溶接部特性に優れる電縫管の製造方法に関し、ロール成形前の帯材に対して垂直方向に移動可能であって、ほぼ垂直な板端面に平行な面およびほぼ垂直な板端面に傾斜する面を設けた特殊な形状の孔型ロールを適用し、帯板端部にテーパ形状を適切に付与することによって、溶接品質を良好に保持することが記載されている。
特開昭57−31485号公報 特開昭63−317212号公報 特開2007−296538号公報
特許文献1、2記載の発明は帯板端部に開先を設けて溶接時の溶鋼排出を良好にすることを目的としているが、実機に適用した場合、安定してその作用効果を得ることは困難である。
特許文献1の場合、フィンパス成形のフィンに帯板端部の一部分を接触させてテーパを付与することを、複数のスタンドで行って、最終的に帯板端部にX開先加工を施す方法を採用している。
しかし、帯板端部において加工硬化している部分が少ない場合は、フィンに帯板端部の全面が接触するようになり、一部分のみを接触させて所望の角度のテーパ面を加工することは困難である。
特許文献2の場合、ロール成形途中、エッジャーロールで帯板端部全体に、板幅方向に垂直な面に対して傾斜した平滑面を付与した後、その一部のみをフィンパス成形でほぼ垂直(板幅方向にほぼ垂直)にする方法を採用している。
この方法では、エッジャーロールとして、帯板端部で管の内径側になる部位に当てるロール径を、管の外径側になる部位に当てるロール径より太くしたものを用いる必要があり、そのため帯板端部の内径側がエッジャーロールにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生する。
さらに、エッジャーロールで端部を成形する際、管状となった帯板を外側から拘束しないため、エッジャーロールの圧下による帯板端部の加工硬化が僅かで、特許文献1の場合と同様、フィンパス成形によって帯板端部の形状が損なわれる。
このように、特許文献1、2の帯板端部へのテーパ付与方法では所望のテーパ形状が得難かった。特許文献3記載の方法をCr含有電縫鋼管に適用した場合、良好なシャルピー衝撃値を得ることができても、へん平試験における亀裂発生限界高さ(亀裂発生時点での、圧縮方向における鋼管の高さ、へん平高さともいう)の低い溶接部を得ることができなかった。
さらに、本発明者らの検討によれば、Cr含有電縫鋼管の場合、所望のテーパ形状が得られた場合であっても、電縫溶接部の靭性や強度やへん平特性がさほど向上しないことが少なからずあって、特に、造管後の外径が7インチ以上の品質の安定したCr含有電縫鋼管を製造することが困難であった。
そこで、本発明は、帯板端部に所望の開先形状を加工することで電縫溶接部の靭性に優れ、強度の高い、へん平高さの低い電縫鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題は以下の手段で達成可能である。
1.帯板を複数の成形ロールで管状に成形した後、管状にした帯板端部を電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、フィンパスロールにより帯材端部を成形する前に、孔型ロールにより予め帯材端部の端面を加工硬化させ、前記帯板端部の突合せ部に不活性ガスを吹き付けて溶接することを特徴とする電縫鋼管の製造方法。
2.ブレークダウン第1スタンドの直後に配置した孔型ロールによる加工で帯材端部の端面を加工硬化させておくことを特徴とする1記載の電縫鋼管の製造方法。
3.フィンパスロールにより、帯材端部にテーパ面を加工することを特徴とする1または2記載の電縫鋼管の製造方法。
4.Crを質量%で0.5〜3.0%含有する帯板を複数の成形ロールで管状に成形した後、管状にした帯板端部を電縫溶接するCr含有電縫鋼管であって、フィンパスロールにより帯材端部を成形する前に、孔型ロールにより予め帯材端部の端面を加工硬化させ、前記帯板端部の突合せ部に不活性ガスを吹き付けて溶接することを特徴とする外径7インチ以上のCr含有電縫鋼管。
5.ブレークダウン第1スタンドの直後に配置した孔型ロールによる加工で帯材端部の端面を加工硬化させておくことを特徴とする4記載の外径7インチ以上のCr含有電縫鋼管。
6.フィンパスロールにより、帯材端部にテーパ面を加工することを特徴とする4または5記載の外径7インチ以上のCr含有電縫鋼管。
本発明によれば、帯材端部にフィンパスロールにより所望の開先角度を付与することが可能なため、溶接欠陥が発生しやすいCr含有電縫鋼管においても健全な溶接部が得られ産業上極めて有用である。
電縫鋼管の製造ラインを説明する図。 本発明の実施に用いる電縫鋼管の製造ラインの一例を説明する図。 フィンパス成形によるテーパ形状付与方法の例を示す模式図。 フィンパス成形によるテーパ形状付与方法の他の例を示す模式図。 フィンパス成形によるテーパ形状付与方法の他の例を示す模式図。 帯板端部の突合せ部への不活性ガスの吹き付けの例を示す模式図。
本発明は、フィンパス成形のフィンによって帯板端部が所望の形状に加工できるように、予め帯板端部を加工硬化させておくことを特徴とする。
図2は本発明の実施に用いる電縫鋼管の製造ラインの一例を説明する図で、図において符号4は孔型ロール、図1と同一符号は同じものとする。
図示した電縫鋼管の製造ラインにおいて、帯材11の端部(以下、帯板端部)はフィンパスロール51による成形の前に、ブレークダウン第1スタンド3の直後に配置した孔型ロール4により予め加工される。帯板端部の加工は端面全体が加工硬化し、フィンパスロール51による成形が容易な形状とする。フィンパスロール51により帯板端部をX開先に加工する場合、孔型ロール4により帯板両端部を加工硬化させておくことが好ましい。

孔型ロール4を用いると、帯板端部がその孔型によって圧下されて著しく加工硬化するので、複数のフィンパスロール51による成形後において、各フィンパスロール51による成形面が維持され、高精度な加工が容易となる。
また、ロール成形前またはロール成形前段で帯材を拘束するので、成形時の帯材端部のばたつきがなくなる。これらの効果により、帯板端部に所望の開先形状を付与することが可能になる。
尚、孔型ロール4の設備は比較的小型のため、電縫溶接前において、ロール成形の直前やロール成形の途中に設置することも可能で、その場合、より高精度な開先形状が得られる。
図3、図4、図5は、フィンパス成形によるテーパ形状付与方法の例を示す模式図である。これらの例では、図1のフィンパスロール51のいずれかのテーパ形状51Aの形状を工夫し、それにより帯材11の端部の下面側(管外径側)、上面側(管内径側)のいずれか一方または両方に、帯材幅方向にほぼ垂直な(幅方向と90度±0.4度以内の角度をなす)端面12に傾斜面13が連なってなるテーパ形状を付与する。
ここで、α、γは端面12の平均的な面に対する管外径側、管内径側の傾斜面13の角度(テーパ角度という)、β、δは管外径側、管内径側の傾斜面13の帯材厚み方向長さ(テーパ深さという)である。
本発明に係る電縫鋼管の製造方法は帯板の材質によらず、所望の開先形状を付与することが可能であるが、溶接部欠陥の発生しやすいCr含有電縫鋼管の場合において、最適な開先形状で電縫溶接することが可能となるため、効果が大きい。
Cr含有電縫鋼管の最適なテーパ形状は、帯材の幅方向にほぼ垂直な端面の平均的な面に対する傾斜面の角度(テーパ角度)α、γおよび傾斜面の帯材厚み方向長さ(テーパ深さ)β、δ(図3、図4、図5参照)とした場合、すなわちテーパ角度を25〜50度の範囲とし、テーパ深さを帯材厚みの20〜45%の範囲、より好ましくは20〜40%の範囲である。
さらに、テーパ角度を25度未満とすると帯材厚み中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留して、電縫溶接後の靭性や強度が低下しやすく、一方、テーパ角
度を50度超えとすると、電縫溶接後にそのテーパ形状が製品管の疵として残留しやすい。
また、テーパ深さを帯材厚みの20%未満とすると、帯材厚み中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、一方、テーパ深さを帯材厚みの45%超とすると、電縫溶接後にそのテーパ形状が製品管の疵として残留しやすくなる。
電縫溶接する際、図6に示すように、溶接突合せ部53に不活性ガス配管52を指向させて、不活性ガスを吹き付けることでペネトレーターの生成・残留を抑制することができ、溶接部のCr酸化物の生成を抑制できるため、安定した溶接性を得ることができるようになり、へん平高さの低いCr含有電縫鋼管の製造が可能になる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴンなどが使用可能であるが、通常工業的に使用しやすい窒素ガスを用いることができる。その際の不活性ガスの純度、流量、温度は、他の溶接条件との関係で適宜有効なものを選定することができるが、通常、純度:95mol.%以上好ましくは99mol.%以上、流量:5〜50Nm/H、好ましくは15〜20Nm/H、温度:10〜80℃、好ましくは20〜40℃のものを用いることができる。
純度や流量がこの範囲より低いとCr酸化物生成の抑制効果が充分ではなくなり、流量がこの範囲より高いと溶接部の温度制御に影響が出てしまう結果、溶接部の温度制御が正確にできなくなる。また、温度がこの範囲より外れると不活性ガスの温度制御のためのコストがかかる結果、上記範囲が好ましい。
本発明で対象とするCr含有電縫鋼管用鋼帯の、好ましい組成は、以下のようである。
説明において%は質量%とする。
・Cr:0.5〜3.0%
Crは耐食性を向上させる重要な元素である。このような効果を得るためには0.5%以上含有する必要があり、3.0%を超える添加では電縫溶接時の酸化物生成が著しくなり溶接欠陥が多発し、靭性が低下する。
・C:0.03〜0.08%
Cは鋼の強度を増加させる元素である。0.03%未満の添加では鋼管としての十分な強度が得られにくく、また、耐食性向上元素であるCr等と共に添加した場合、0.08%を超えると溶接時の低温割れが生じやすくなり溶接性が劣化する。従って、Cの範囲を0.03%以上0.08%以下に限定した。
・Si:≦0.55%
Siは脱酸剤として作用するとともに、固溶して鋼の強度を増加させる元素である。0.55%を超える添加は、電縫溶接時に酸化物の生成が著しくなり、溶接欠陥が多発し、鋼材の靭性、溶接HAZ靭性を劣化させる。このためSi量は0.55%以下に限定するのが好ましい。
・Mn:0.40〜2.00%
Mnは鋼の強度を確保するため、必要な元素である。0.40%未満の添加では強度が不足するだけでなく、多量の合金元素の添加が必要となり、経済性の点で不利である。また、2.0%を超える添加では電縫溶接時の酸化物の生成が著しくなり溶接欠陥が多発する。このため、Mnは0.40〜2.00%とすることが好ましい。
・P:≦0.030%、S:≦0.005%
P、Sはいずれも不純物として不可避的に含有され、いずれも低温靭性に悪影響を及ぼす元素であり、できるだけ低減することが望ましい。しかし、過度の低減は製造コストの高騰を招く。このため、製造コストが高騰しない範囲のP:≦0.030%、S:≦0.005%程度に限定することが好ましい。
上記した成分が基本成分で残部Fe及び不可避的不純物であるが、さらに、Cu:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.15%、Ni:0.01〜0.15%、Nb:0.001〜0.050%、V:0.001〜0.050%、Ti:0.001〜0.050%のうちいずれか1種以上を選択して含有できる。
・Cu:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.15%、Ni:0.01〜0.15%
Cu、Mo、Niはいずれも固溶強化を介して鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、Cu:0.01%以上、Mo:0.01%以上、Ni:0.01%、それぞれ含有すると良いが、過剰な添加は電縫溶接性が低下するとともに、経済的に不利となるため、含有する場合はそれぞれCu:0.20%以下、Mo:0.15%以下、Ni:0.15%以下に限定することが好ましい。
・Nb:0.001〜0.050%、V:0.001〜0.050%、Ti:0.001〜0.050%
Nb、V、Tiはいずれも析出強化を介して鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、Nb:0.001%以上、V:0.001%以上、Ti:0.001%以上、それぞれ含有することが必要となるが、過剰な添加は電縫溶接製や溶接部靭性が低下するため、Nb:0.050%以下、V:0.050%以下、Ti:0.050%以下にぞれぞれ限定することが好ましい。
また、本発明が対象とする造管後の径は、7インチ以上である。
表1に示す化学組成(鋼種A〜F)の熱延鋼帯を素材とした。ここで、いずれの鋼帯も熱間圧延にて12.0mmの板厚に圧延した後、巻き取ってホットコイルとした。
これら熱延鋼帯を、図2に示す製造ラインを用い、孔型ロールにより帯板両端部を加工硬化させ、表2、表4に示す条件で、ロール成形過程のフィンパス成形中に、鋼帯端部(帯板端部とも言う)に厚さ方向の外径側、内径側の両端面にそれぞれ繋がる傾斜面を有するテーパ形状を付与し、鋼帯端部を加工硬化させて電縫溶接を行い、外径16インチの電縫鋼管を製造した。
No.1〜10、No.11〜16の鋼管は、溶接時に溶接突合せ部に不活性ガスとして、窒素ガス(純度99mol.%、流量:15〜20Nm/H、温度:27℃)を吹き付けて製造した。No.17〜26の鋼管は、溶接時に溶接突合せ部に不活性ガスを吹き付けないで製造した。 また、No.27〜38の鋼管は、溶接時に溶接突合せ部に不活性ガスとして、窒素ガス(純度99mol.%、流量:15〜20Nm/H、温度:27℃)を吹き付けて製造した。
得られた鋼管の母材部の90°位置よりJIS5号試験片を切り出し、引張試験を実施し、TS(引張り強度)を求めた。また、溶接部から試験片を切り出し、へん平試験、シャルピー試験、海水腐食試験、及び、海水腐食摩耗試験、溶接部外観観察を実施し性能を評価した。
へん平試験では、JIS G 3445規定の電縫部を圧縮方向に直角においたときの亀裂発生限界高さ(亀裂発生時点での、圧縮方向における鋼管の高さ)を測定した。次式で計算される値(H)(外径16インチの場合、118.3mm)を許容可能な上限値(性能許容亀裂発生限界高さ(mm))とし、亀裂発生限界高さが、この値以下の時を合格とした。
Figure 0006028561
ここに、H:性能許容亀裂発生限界高さ(mm)、t:管の厚さ(mm)、D:管の外径、e:定数0.08
溶接部シャルピー試験は、JIS10mmVノッチ衝撃試験片に該当するものを、溶接部の管長手方向位置が相違する10点から1本ずつ採取した。この試験片に対し0℃での衝撃試験を行い吸収エネルギーを測定した。また吸収エネルギー27J以上を性能許容範囲とした。
海水腐食試験は、電縫溶接部より管長手方向に試験片を切り出し試験に供した。この試験片に対し、50℃の人工海水中で試験片を周速1m/secで300時間回転させ腐食量を測定した。腐食速度は1.0mm/yearを性能許容範囲とした。
海水腐食摩耗試験は、電縫溶接部より管長手方向に試験片を切り出し試験に供した。この試験片に対し、50℃の珪砂を加えた人工海水中で試験片を周速1m/secで24時間回転させ摩耗量を測定した。腐食摩耗量は0.5gを許容範囲とした。
溶接部外観観察は、製造された鋼管から任意に3m長さ切り出し、この部分の溶接部の内外面の外観を目視にて観察し、疵の有無を評価した。
これらの結果を表3、表5に示す。本発明の実施に好ましい成分組成、条件で行った本発明例の電縫鋼管No.1〜10は、帯板端部に適正なテーパ形状を付与したため、いずれも、母材引張試験で400MPa以上であり、溶接部へん平試験で118.3mm以内になり、溶接部シャルピー試験で27J以上、溶接部海水腐食試験で1.0mm/y以内、溶接部海水腐食摩耗試験で0.5g以下で、溶接部の特性が良好であった。
No.11〜16は本発明の実施に好ましい成分組成であるが帯板端部にテーパ形状を付与しないで、製造したため、所望の溶接部特性を得られなかった比較例である。No.17〜26は本発明の実施に好ましい成分組成とし、帯板端部にテーパ形状を付与したものの、溶接時に溶接突合せ部に不活性ガスを吹き付けないで製造したため、へん平試験の結果が性能許容範囲外であった比較例である。
No.27〜38は本発明の実施に好ましい成分組成であるが帯板端部に適正でないテーパ形状を付与して、製造したため、所望の特性が得られなかった比較例である。
Figure 0006028561
Figure 0006028561
Figure 0006028561
Figure 0006028561
Figure 0006028561
1 アンコイラー
2 レベラー
3 ブレークダウン第1スタンド
4 孔型ロール
5 ロール成形機
6 コンタクトチップ
7 スクイズロール
8 ビード部切削機
9 サイザー
10 管切断機
11 帯材
12 端面
13 傾斜面
51 フィンパスロール
51A テーパ形状
52 不活性ガス配管
53 溶接突合せ部

Claims (3)

  1. 帯板を複数の成形ロールで管状に成形した後、管状にした帯板端部を電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、フィンパスロールにより帯材端部を成形する前に、孔型ロールにより予め帯材端部の両端面全体を加工硬化させ、その後、前記フィンパスロールにより前記帯板端部に開先形状を付与し、前記帯板端部の突合せ部に不活性ガスを、純度:95mol.%以上、流量:5〜50Nm3/H、温度:10〜80℃で吹き付けて溶接することを特徴とするCr含有電縫鋼管の製造方法。
  2. ブレークダウン第1スタンドの直後に配置した孔型ロールによる加工で帯材端部の端面を加工硬化させておくことを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管の製造方法。
  3. フィンパスロールにより、帯材端部にテーパ面を加工することを特徴とする請求項1または2記載の電縫鋼管の製造方法。
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