JP2007296538A - 溶接部特性に優れる電縫管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電縫管を製造するに際して、電縫溶接前の板(帯材)の端部にテーパ形状を適切に付与することによって、溶接品質を良好に保持することができる溶接部特性に優れる電縫管の製造方法を提供する。
【解決手段】レベラー2とロール成形機5の間に、帯材20の上面側端部にテーパ形状を付与するための第1孔型ロール3aと、帯材20の下面側端部にテーパ形状を付与するための第2孔型ロール3bを備えている。
【選択図】図1
【解決手段】レベラー2とロール成形機5の間に、帯材20の上面側端部にテーパ形状を付与するための第1孔型ロール3aと、帯材20の下面側端部にテーパ形状を付与するための第2孔型ロール3bを備えている。
【選択図】図1
Description
本発明は、油井のラインパイプ向けなどの溶接部靭性が要求される管あるいは油井のケーシングパイプなどの溶接部強度が要求される管の製造方法に関わる。
通常、管は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、電縫鋼管を例とするように、板をロール成形等によって丸めて端部を突き合わせ溶接して製造し、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔しマンドレルミル等で圧延して製造する。溶接管の場合、一般に溶接部の特性は母材より劣ると言われ、管の適用に当たって、用途ごとに溶接部の靭性や強度の保証が常に議論されて問題となってきた。
例えば、原油や天然ガスなどを輸送するラインパイプでは、管を寒冷地に敷設されることが多いため低温靭性が重要であり、また、原油採掘の油井では採掘管を保護するためのケーシングパイプが必要とされ、管の強度が重要視される。
通常、電縫管の母材となる熱延板(帯材)は、管製造後の母材特性を考慮して成分設計や熱処理等が行われて、母材の靭性や強度等の特性は確保される。
しかし、溶接部の特性は、母材の成分設計や熱処理等以上に、電縫溶接方法によって大きく左右されるため、溶接技術の開発が重要であった。
電縫溶接の不良原因としては、ペネトレータと呼ばれる溶接板材の端面に生成する酸化物が、電縫溶接時に溶鋼とともに端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレータを原因として靭性が低下し強度不足になる例が多かった。
そこで、従来、電縫溶接不良の主原因であるペネトレータを溶接部から除くため、溶接部の板端面から積極的に溶鋼を排出する技術が鋭意検討されてきた。例えば、特許文献1や特許文献2などに、板端面の形状について検討した例が記載されている。すなわち、通常、母材となる熱延板の端面はスリットや端面研削によってほぼ矩形を呈しているが、この端面に対してロール成形の前においてテーパ加工を施し、テーパ加工した端部形状によって電縫溶接時の溶鋼排出を良好にすることを目的としている。
特開2001−170779号公報
特開2003−164909号公報
特許文献1や特許文献2においては、電縫溶接前の板端部にテーパ加工を施す手段として、孔型ロールが例示されている。その際、従来の一般的な孔型ロールを用いるとすると、図4に示すような形状の孔型に板端部を充満させて、板(帯材)の上面側端部と下面側端部を同時にテーパ加工する方式となる。
しかし、この方式では、板厚が一定の場合は問題ないが、実際の電縫管製造工程では種々の厚みの板(帯材)をロール成形して管にしており、板厚が変わるとその都度孔型ロールを交換する必要があって、生産能率を著しく低下させてしまう。また、一つの鋼帯(帯材)の中で板厚変動が大きい場合、孔型ロールの上下部分が反力に耐えられず破損する場合もある。そのため、従来の孔型ロールでは著しく使い難い状態であり、具体的に電縫管製造工程に適用するには、さらに詳細な検討が必要であった。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、電縫管を製造するに際して、電縫溶接前の板(帯材)の端部にテーパ形状を適切に付与することによって、溶接品質を良好に保持することができる溶接部特性に優れる電縫管の製造方法を提供することを目的とするものである。
前述したように、従来の孔型ロールは、板の上面側端部と下面側端部に同時にテーパ形状を付与すれば、工程を簡略化できると考えて、孔型に板を挟み込む構造を有していたため、ロール破損や能率低下などの問題が生じていた。
そこで、本発明者らは、その問題を解決するために、孔型ロールの形状を工夫するとともに、板厚に対応して孔型ロールを移動させることを着想した。
すなわち、孔型ロールの形状については、板を挟み込まずともテーパ形状を付与できる形状とし、一つの孔型ロールで板の上面側端部か下面側端部のいずれか片側のみにテーパ形状を付与するようにした。そして、上面側端部と下面側端部の双方ともテーパ形状を付与するには、ロール形状を上下反対にした孔型ロールを組み合わせて、2段でテーパ形状を付与するようにした。
より詳しくは、孔型ロールの形状について、ほぼ垂直な板端面に平行な面およびほぼ垂直な板端面に傾斜する面から構成されるようにする。そして、この孔型ロールを板幅方向で左右一対として、それを2対以上設置して、個々の孔型ロールごとに上下に移動可能とすれば、異なる板厚の帯材にテーパ形状を付与する場合でも、能率低下を招くことはない。また、一つの帯材で板厚が大きく変動した場合でも、孔型ロールには無理な荷重が加わらず、孔型ロールを破損させることもない。
上記の考え方に基づいて、本発明は以下の特徴を有している。
[1]帯材をロール成形し端部を突き合わせて電縫溶接して管とする電縫管の製造方法において、ロール成形前の帯材に対して、垂直方向に移動可能であって、ほぼ垂直な板端面に平行な面およびほぼ垂直な板端面に傾斜する面を備えた孔型ロールを用いて圧延することによって、板厚方向の板端部にテーパ形状を付与することを特徴とする溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
[2]ほぼ垂直な板端面に平行な面を回転胴部とし、ほぼ垂直な板端面と平行な回転軸を有する孔型ロールで圧延することを特徴とする前記[1]に記載の溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
[3]ほぼ垂直な板端面に傾斜する面を回転胴部とし、板端面に傾斜する面にほぼ平行な回転軸を有する孔型ロールで圧延することを特徴とする前記[1]に記載の溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
[4]ほぼ垂直な板端面に平行な面およびほぼ垂直な板端面に傾斜する面の双方を回転胴部とし、これら面にほぼ平行な回転軸を有する孔型ロールで圧延することを特徴とする前記[1]に記載の溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
[5]板端部に付与するテーパ形状は、テーパの板厚方向に対する角度を25°〜50°として、テーパの板厚方向の長さを板厚の20%〜40%とすることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
本発明は、著しく良好な靭性および溶接強度を有する電縫管を製造することができる。
本発明の一実施形態を以下に述べる。
本発明の一実施形態において用いる電縫管製造ラインを図1に示す。この電縫管製造ラインは、帯材20を、アンコイラ1から払い出し、レベラー2で平坦に矯正し、ロール成形機5で帯材20を徐々に丸めていき、丸めた帯材20の左右両幅端部を、誘導加熱部6とスクイズロール(電縫溶接部)7からなる電縫溶接機で電縫溶接して管30となし、管30の溶接ビード部をビード部切削機8で切削し、切削後の管30を、サイザー9にて外径調整した後、管切断機10で所定長さに切断するという基本構成を有している。なお、ロール成形機5は最後段にフィンパス成形スタンド4を備えている。
そして、この実施形態においては、上記の基本構成に加え、レベラー2とロール成形機5の間に、帯材20の端部にテーパ形状を付与するための孔型ロール群3を備えており、孔型ロール群3は、帯材20の上面側の左右両端部にテーパ形状を付与するための左右一対の第1孔型ロール3aと、帯材20の下面側の左右両端部にテーパ形状を付与するための左右一対の第2孔型ロール3bからなっている。
第1孔型ロール3aは、図2に示すように、ほぼ垂直な板端面に平行な面と、それに繋がる、ほぼ垂直な板端面に傾斜する面を備えているとともに、垂直方向に移動可能となっている。そして、その回転方法については、図2(a)に例を示すように、ほぼ垂直な板端面に平行な面を回転胴部として、ほぼ垂直な板端面に平行な回転軸を有するようにしてもよく、また、図2(b)に例を示すように、ほぼ垂直な板端面に傾斜する面を回転胴部として、板端面に傾斜する面にほぼ平行な回転軸を有するようにしてもよい。さらに、図2(c)に例を示すように、ほぼ垂直な板端面に平行な面と傾斜する面の双方を回転胴部として、これらの面にほぼ平行な回転軸を有するようにしてもよい。
このような第1孔型ロール3aによって帯材20を圧延することによって、図2に示すように、帯材20の上面側の端部に、テーパの板厚方向垂直端面からの角度(テーパの板厚方向に対する角度)がαで、片側におけるテーパ開始位置から終了位置までの垂線の長さ(テーパの板厚方向の長さ)がβとなるテーパ形状を付与することができる。
一方、第2孔型ロール3bは、図3に示すように、第1孔型ロール3aを上下反対にしたものである。すなわち、ほぼ垂直な板端面に平行な面と、それに繋がる、ほぼ垂直な板端面に傾斜する面を備えているとともに、垂直方向に移動可能となっている。そして、その回転方法については、図3(a)に例を示すように、ほぼ垂直な板端面に平行な面を回転胴部として、ほぼ垂直な板端面に平行な回転軸を有するようにしてもよく、また、図3(b)に例を示すように、ほぼ垂直な板端面に傾斜する面を回転胴部として、板端面に傾斜する面にほぼ平行な回転軸を有するようにしてもよい。さらに、図3(c)に例を示すように、ほぼ垂直な板端面に平行な面と傾斜する面の双方を回転胴部として、これらの面にほぼ平行な回転軸を有するようにしてもよい。
このような第2孔型ロール3bによって帯材20を圧延することによって、図3に示すように、帯材20の下面側の端部に、テーパの板厚方向垂直端面からの角度(テーパの板厚方向に対する角度)がγで、片側におけるテーパ開始位置から終了位置までの垂線の長さ(テーパの板厚方向の長さ)がδとなるテーパ形状を付与することができる。
このようにして、個別に上下に移動可能で、互いに上下反対のロール形状を有する第1孔型ロール3aと第2孔型ロール3bを組み合わせて、2段で上面側端部と下面側端部の双方にテーパ形状を付与するようにしているので、異なる板厚の帯材にテーパ形状を付与する場合でも、能率低下を招くことはない。また、一つの帯材で板厚が大きく変動した場合でも、孔型ロールには無理な荷重が加わらず、孔型ロールを破損させることもない。
なお、孔型ロール群3で付与するテーパ形状(すなわち、電縫溶接直前の板端部のテーパ形状)については、テーパの板厚方向垂直端面からの角度α、γを25°〜50°の範囲として、片側におけるテーパ開始位置から終了位置までの垂線の長さβ、δを板厚の20%〜40%とするとよい。
すなわち、テーパ角度α、γを25°未満とすると、板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留して不良となり、電縫溶接後の靭性や強度が低下し、テーパ角度α、γを50°超えとすると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。また、テーパ高さβ、δが板厚の20%未満であると、板厚中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、テーパ高さβ、δが40%を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。
このようにして、この実施形態においては、電縫溶接前の帯材の端部にテーパ形状を適切に付与することができるので、著しく良好な靭性および溶接強度を有する電縫管を製造することができる。
以下、実施例に基づいて説明する。
ここでは、板幅1920mm×19.1tmmの帯材(鋼帯)を用いて、下記に示す本発明例1、本発明例2、比較例、従来例によって、それぞれφ600の電縫管を製造した。
そして、製造した電縫管の溶接部から試験片を切り出してシャルピー試験を行い、性能を評価した。シャルピー試験片は、管長手方向の相違する10点から1本ずつ、試験片長さ方向を管円周方向に平行にし、ノッチ長さ中心を溶接部肉厚中心位置として採取し、JIS5号の2mmVノッチ衝撃試験片として、−46℃での衝撃試験を行い、吸収エネルギー、脆性破面率を測定した。なお、吸収エネルギーは125J以上、脆性破面率が35%以下を性能許容範囲とした。
(本発明例1)本発明例1として、前述の実施形態に基づいて上記の電縫管を製造した。その際に、第1孔型ロール3aとして、図2(a)に示した孔型ロールを用いて、板上面側端部に、テーパ角度αを30°としたほぼ直線上のテーパを付与するとともに、第2孔型ロール3bとして、図3(a)に示した孔型ロールを用いて、板下面側端部に、テーパ角度γを30°としたほぼ直線上のテーパを付与した。
(本発明例2)本発明例2として、前述の実施形態に基づいて上記の電縫管を製造した。その際に、第1孔型ロール3aとして、図2(b)に示した孔型ロールを用いて、板上面側端部に、テーパ角度αを45°としたほぼ直線上のテーパを付与するとともに、第2孔型ロール3bとして、図3(c)に示した孔型ロールを用いて、板下面側端部に、テーパ角度γを40°としたほぼ直線上のテーパを付与した。
(比較例)比較例として、上記の電縫管を製造するに際して、ロール成形前であるレベラー加工後において、切削工具を用いて、板上面側端部および板上面側端部の双方に、垂直端面からの角度を20°としたほぼ直線上のテーパを付与した。
(従来例)従来例として、上記の電縫管を製造するに際して、ロール成形前であるレベラー加工後において、板端部を垂直に平滑研磨した。
これらにより製造した電縫管の溶接部におけるシャルピー衝撃値と脆性破面率を測定した結果を表1に示す。
表1より、本発明例1、2による電縫管は、溶接部の衝撃強度が高く脆性破面率が小さくて、靭性が良好であって、製品の信頼性が高い。これに比較して、比較例および従来例による電縫管は、溶接部の衝撃強度が低く脆性破面率が大きくて、靭性が低下しており、製品の信頼性に乏しかった。
1 アンコイラ
2 レベラー
3 孔型ロール群
3a 第1孔型ロール
3b 第2孔型ロール
4 フィンパス成形スタンド
5 ロール成形機
6 誘導加熱装置
7 スクイズロール(電縫溶接部)
8 ビード部切削機
9 サイザー
10 管切断機
20 帯材
30 管
2 レベラー
3 孔型ロール群
3a 第1孔型ロール
3b 第2孔型ロール
4 フィンパス成形スタンド
5 ロール成形機
6 誘導加熱装置
7 スクイズロール(電縫溶接部)
8 ビード部切削機
9 サイザー
10 管切断機
20 帯材
30 管
Claims (5)
- 帯材をロール成形し端部を突き合わせて電縫溶接して管とする電縫管の製造方法において、ロール成形前の帯材に対して、垂直方向に移動可能であって、ほぼ垂直な板端面に平行な面およびほぼ垂直な板端面に傾斜する面を備えた孔型ロールを用いて圧延することによって、板厚方向の板端部にテーパ形状を付与することを特徴とする溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
- ほぼ垂直な板端面に平行な面を回転胴部とし、ほぼ垂直な板端面と平行な回転軸を有する孔型ロールで圧延することを特徴とする請求項1に記載の溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
- ほぼ垂直な板端面に傾斜する面を回転胴部とし、板端面に傾斜する面にほぼ平行な回転軸を有する孔型ロールで圧延することを特徴とする請求項1に記載の溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
- ほぼ垂直な板端面に平行な面およびほぼ垂直な板端面に傾斜する面の双方を回転胴部とし、これら面にほぼ平行な回転軸を有する孔型ロールで圧延することを特徴とする請求項1に記載の溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
- 板端部に付与するテーパ形状は、テーパの板厚方向に対する角度を25°〜50°として、テーパの板厚方向の長さを板厚の20%〜40%とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶接部特性に優れる電縫管の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006124552A JP2007296538A (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | 溶接部特性に優れる電縫管の製造方法 |
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JP2006124552A JP2007296538A (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | 溶接部特性に優れる電縫管の製造方法 |
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JP2007296538A true JP2007296538A (ja) | 2007-11-15 |
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JP2006124552A Pending JP2007296538A (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | 溶接部特性に優れる電縫管の製造方法 |
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JP (1) | JP2007296538A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013151020A (ja) * | 2011-12-26 | 2013-08-08 | Jfe Steel Corp | 電縫鋼管の製造方法およびCr含有電縫鋼管 |
-
2006
- 2006-04-28 JP JP2006124552A patent/JP2007296538A/ja active Pending
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JP2013151020A (ja) * | 2011-12-26 | 2013-08-08 | Jfe Steel Corp | 電縫鋼管の製造方法およびCr含有電縫鋼管 |
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