JP5312735B2 - 溶接部特性の良好な電縫管製造方法 - Google Patents
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通常、溶接管の母材となる熱延板は、溶接管製造後の母材特性を考慮して成分設計や熱処理等が行われて、母材の靭性や強度等の特性が確保される。
電縫溶接の不良原因としては、溶接される板端面(板幅方向端面)に生成するペネトレータと呼ばれる酸化物が、電縫溶接時に溶鋼と共に端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレータが原因となって靭性が低下し強度不足になる例が多かった。
本発明は上述の難点を解決し、油井のラインパイプ向け電縫管に要求される溶接部靭性、および、油井のケーシングパイプ向け電縫管に要求される溶接部強度を達成しうる、溶接部特性の良好な電縫管製造方法を提供することを目的とする。
1.平板状の帯材(11)を成形して端部を突き合わせて電縫溶接して管とする過程の途中で、前記端部に、帯材幅方向にほぼ垂直な端面(15)の上端及び下端に、前記端面(15)からの傾斜角度が25〜50度で且つ帯材厚さ方向長さが帯材厚さの21〜40%である傾斜面(16)が連なってなるテーパ形状をフィンパス成形で付与した後、電縫溶接直前の端面(15)の突き合わせ角度(13)を±1.0度以内(ただし、零度は含まず)として電縫溶接することにより溶接部強度、靭性を向上させることを特徴とする、溶接部肉厚中心位置の−46℃での吸収エネルギーが125J以上、脆性破面率が35%以下である溶接部特性の良好なラインパイプ向けまたはケーシングパイプ向け電縫管製造方法。
ここで、「帯材幅方向にほぼ垂直な端面」とは、帯材幅方向に対する平均的な端面の角度が90度±0.2度の範囲内である端面を指す。
この原因を詳細に調査すると、電縫溶接前の板端部が加熱される過程において、溶接欠陥であるペネトレータの原因となる酸化物が板端面に形成される。その後、板端面の酸化物は電縫溶接時の溶鋼表面に浮き、一部は溶鋼と共に排出される。この際に、板端部にテーパ形状が付与されていると、溶鋼が容易に排出されて、同時にペネトレータも有効に排出できる。しかし、ペネトレータの元になる板端面の酸化物は、電縫溶接の加熱とともに順次生成してくるので、溶接条件によっては、板端部のテーパ形状のみで、溶接後の靭性または強度を充分に向上させることができない場合が生じた。
電縫溶接において、板端部の電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度が変わると、溶鋼の排出状態が異なってくる。すなわち、管外径側に開くように電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度が設定されると、テーパを付与した板端部では、管内径側が優先的に加熱されて先に溶鋼が発生し、その溶鋼が電縫溶接中の板端面の突合せとともに、管外径側に押し出されてくる。また、管内径側に開くように電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度が設定されると、テーパを付与した板端部では、管外径側が優先的に加熱されて先に溶鋼が発生し、その溶鋼が電縫溶接中の板端面の突き合せとともに、管内径側に押し出されてくる。
また、板端部に付与するテーパについてその形状の最適化を図った結果、テーパ形状をなす傾斜面の前記端面からの傾斜角度(この傾斜角度をテーパ角度と称する)を25〜50度とし、該傾斜面の帯材厚さ方向長さ(この長さをテーパ深さと称する)を帯材厚さの20〜40%とすると良いことを把握した。
また、テーパ深さが20%未満であると板厚中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、一方、テーパ深さが40%超であると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留する問題が発生しやすい。
〈フィンパス成形〉
所望のテーパ形状を得るためには、フィンパス成形を活用するのがよい。
フィンパス成形では、フィンパスロールに帯材の円周方向全周が充満しなくとも、帯材がフィンパスロールに装入される際に、帯材端部がフィンに強圧されて、帯材端部がフィンに充分に密着することを把握した。すなわち、帯材がフィンパスロールに装入される場合、フィンに接触した帯材端部とその対極(ほぼ180度反対側)に位置する帯材底部とが梁撓みの状態となって、断面を円弧形状に曲げようとする帯材の反力が大きく作用し、たとえ帯材がフィンパスロールに充満しなくとも帯材端部には円周方向に大きな圧縮力が作用し、その結果、帯材端部はフィンに強圧されてフィンの形状がそのまま帯材端部に転写される。
帯材端部の上面側(=管内径側)と下面側(=管外径側)のいずれか一方にテーパを付与する場合はフィン形状を2段階の傾斜面を有するものとすればよい。
また、帯材端部の上面側と下面側の双方にテーパを付与する場合は3段階の傾斜面を有するフィン形状とすればよい。ただし、3段階とした傾斜面のいずれかが、その傾斜面内点がフィンパスロールのロール軸から離れるほど該ロール軸のフィン中心を通る垂直二等分面から離れるものであると、帯材端部がフィンにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生することがあり、フィンパス成形時に疵を発生させるとともに、電縫溶接のスパークの原因となるので、3段階とした傾斜面のいずれも、その傾斜面内点がフィンパスロールのロール軸から離れるほど該ロール軸のフィン中心を通る垂直二等分面に近づくものとしておくとよい。
テーパ形状付与手段として、フィンパス成形の代りに、孔型ロール圧延(すなわち孔型ロールを用いた帯材幅端部圧延)を用いてもよい。孔型ロールを用いると、帯材端部の形状がその孔型に従って精度良く得られやすいことによる。特に、テーパを精度良く付与するには稼動中に帯材を拘束する必要があるのに対して、ロール成形前またはロール成形前段では帯材端部のばたつきが大きくて、テーパを付与することが難しかった。しかし、孔型ロールを活用することによって、帯材端部を拘束しつつ効率良くテーパを付与可能である。また、設備が比較的小型で良いことから、電縫溶接前において、ロール成形の前やロール成形の途中に設置することが容易である。
帯材として、板幅1920mm、板厚19.1mmの鋼帯を用いた。この鋼帯から電縫鋼管を製造するにあたり、例えば図3に示すような、造管工程の上流から下流へアンコイラー1、レベラー2、ロール成形機5、電縫溶接機(コンタクトチップ6、スクイズロール7などからなる)、ビード切削機8、サイザー9、管切断機10を順次配置した基本形態を有する造管機を用い、後述のNo.1〜No.6の各条件で、外径600mmの鋼管を製造した。なお、3はブレークダウン第1スタンド、20はフィンパス圧延機である。
本発明例として、電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度が0.5度となるようにロール成形機5を調整し、かつ、フィンパス圧延機20の第2、第3スタンドのフィンパス圧延ロールのフィン形状を工夫し、これらフィンパス圧延ロールを活用して、図1に示すような、溶接直前の端部の端面15の両側に傾斜面16が連なるテーパ形状を付与した。このテーパ形状のテーパ角度とテーパ深さを表1に示す。テーパ角度およびテーパ深さは4つの傾斜面16で同じ値とした。
参考例として、電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度が−0.7度となるようにロール成形機5を調整し、かつ、レベラー2とロール成形機5の間に配置した孔型ロール(図示省略)を活用して、図1に示すような、溶接直前の端部の端面15の両側に傾斜面16が連なるテーパ形状を付与した。このテーパ形状のテーパ角度とテーパ深さを表1に示す。テーパ角度およびテーパ深さは4つの傾斜面16で同じ値とした。
参考例として、電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度が0.3度となるようにロール成形機5を調整し、かつ、図4に示すように、ブレークダウン第1スタンド出側直近に配置した孔型ロール4を活用して、図1に示すような、溶接直前の端部の端面15の両側に傾斜面16が連なるテーパ形状を付与した。このテーパ形状のテーパ角度とテーパ深さを表1に示す。テーパ角度およびテーパ深さは4つの傾斜面16で同じ値とした。
参考例として、電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度が−0.2度となるようにロール成形機5を調整し、かつ、レベラー2とロール成形機5の間に配置した孔型ロール(図示省略)を活用して、図1に示すような、溶接直前の端部の端面15の両側に傾斜面16が連なるテーパ形状を付与した。このテーパ形状のテーパ角度とテーパ深さを表1に示す。テーパ角度およびテーパ深さは4つの傾斜面16で同じ値とした。
比較例として、電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度が1.1度となるようにロール成形機5を調整し、かつ、レベラー2とロール成形機5の間に配置した切削バイト(図示省略)を用いて、図1に示すような、溶接直前の端部の端面15の両側に傾斜面16が連なるテーパ形状を付与した。このテーパ形状のテーパ角度とテーパ深さを表1に示す。テーパ角度およびテーパ深さは4つの傾斜面16で同じ値とした。
従来例として、電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度が1.1度となるようにロール成形機5を調整し、端部には図2に示すように、テーパ形状を付与しなかった。
上述の各条件で製造した鋼管のシャルピー試験結果を表1に示す。表1より、本発明例では、溶接部の吸収エネルギーが著しく高く脆性破面率が小さくて、溶接部強度、靭性とも十分良好であって製品の信頼性が高い。これに対し、比較例および従来例では、溶接部の吸収エネルギーが低く脆性破面率が大きくて、溶接部強度、靭性とも不十分であり、製品の信頼性に乏しかった。
2 レベラー
3 ブレークダウン第1スタンド
4 孔型ロール
5 ロール成形機
6 コンタクトチップ
7 スクイズロール
8 ビード切削機
9 サイザー
10 管切断機
11 帯材(板、端部溶接後は管)
12 テーパ角度
13 電縫溶接直前の端面の突き合わせ角度
15 端面
16 傾斜面
20 フィンパス圧延機
Claims (1)
- 平板状の帯材(11)を成形して端部を突き合わせて電縫溶接して管とする過程の途中で、前記端部に、帯材幅方向にほぼ垂直な端面(15)の上端及び下端に、前記端面(15)からの傾斜角度が25〜50度で且つ帯材厚さ方向長さが帯材厚さの21〜40%である傾斜面(16)が連なってなるテーパ形状をフィンパス成形で付与した後、電縫溶接直前の端面(15)の突き合わせ角度(13)を±1.0度以内(ただし、零度は含まず)として電縫溶接することにより溶接部強度、靭性を向上させることを特徴とする、溶接部肉厚中心位置の−46℃での吸収エネルギーが125J以上、脆性破面率が35%以下である溶接部特性の良好なラインパイプ向けまたはケーシングパイプ向け電縫管製造方法。
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