以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1から図9を参照して、パルス幅変調制御によりアクチュエータを制御する制御装置について説明する。図1は実施形態における通電方式の切り替えの判断を説明するフローチャートであり、その詳細については後述する。図2は撮像装置の構成例を示す図である。
図2(A)は撮像装置1を模式的に示す中央断面図である。撮像装置1の一例として、装置本体部にレンズユニット2を装着して使用する交換レンズ式カメラを説明する。レンズユニット2は、複数のレンズや絞りからなる撮像光学系3を備える。撮像光学系3の光軸を光軸4で示す。レンズシステム制御部(以下、レンズ制御部という)12は、電気接点11を介して撮像装置1の装置本体部内の制御部と通信可能である。
撮像装置1の装置本体部は撮像素子6を備え、背面部に表示装置9aが設けられている。ユーザは電子ビューファインダ(EVF)9bによって被写体を観察可能である。装置本体部は、撮像された画像の像ブレを補正するブレ補正部14と、手振れ等による装置の振れを検出するブレ検出部15を備える。シャッタ機構部16は撮像素子6に対して被写体側に配置され、露光時間の制御に用いられる。
図2(B)は撮像システムの主要な構成部を示すブロック図である。撮像システムは撮像部、画像処理部、記録再生部、制御部を備える。撮像部は撮像光学系3、撮像素子6、シャッタ機構部16を含む。記録再生部は記憶部8、表示部9(図2(A):表示装置9a,EVF9b)を含む。制御部は、カメラシステム制御部(以下、カメラ制御部という)5、操作検出部10、レンズ制御部12、レンズ駆動部13、ブレ補正部14、およびブレ検出部15を含む。
レンズ制御部12は、レンズ駆動部13を介して、フォーカスレンズ、像ブレ補正レンズ、絞り等の駆動制御を行う。撮像素子6は、撮像光学系3、シャッタ機構部16を介して被写体からの光を受光し、光電変換により電気信号を出力する。画像処理部7は撮像素子6の出力する画像信号を取得して現像処理等を実行する。画像処理後の画像データは記憶部8に記憶される。
ブレ検出部15は光軸4を中心軸とする回転を検出可能であり、ピッチ方向、ヨー方向、ロール方向における撮像装置の回転ブレを検出する。例えばジャイロセンサ等を用いて振れ検出が行われ、振れ検出信号はカメラ制御部5に出力される。
カメラ制御部5は、操作検出部10により検出される操作信号にしたがって、撮像装置1およびレンズユニット2の制御を統括する。カメラ制御部5はCPU(中央演算処理装置)を備え、CPUは所定のプログラムを実行して撮像システムにおける各種の処理を行う。
ブレ補正部14は、カメラ制御部5からの制御指令にしたがって像ブレ補正を行う。ブレ補正部14は、光軸4に直交する平面内にて撮像素子6を並進方向に移動させるとともに、光軸4を中心軸として撮像素子6を回転させる機構部を備える。具体的な構造については後述する。
次に撮像装置1の動作について説明する。被写体からの光は、撮像光学系3を介して撮像素子6の撮像面に結像する。撮像素子6の出力信号からピント評価量や露光量が得られ、これらの情報に基づいて撮像光学系3の光学調整処理が実行される。すなわち、撮像素子6が適正に露光され、被写体像に対応する撮像信号が撮像素子6から出力される。
シャッタ機構部16はシャッタ幕を走行させることで撮像素子6に対する遮光制御を行う。シャッタ機構部16は遮光部材(メカ後幕)を備えており、撮像素子6への露光の完了はシャッタ機構部16によって行われる。撮像素子6では、シャッタ機構部16の後幕走行に先だって電子先幕の処理が行われる。これは、ラインごとに電荷をリセットすることによって露光開始のタイミングを制御する処理である。電子先幕のモードでは、撮像素子6の電荷のリセット動作とシャッタ機構部16の後幕の移動とを同期させて露光制御が行われる。電子先幕の技術は公知であるため、その詳細な説明は割愛する。
画像処理部7は、A/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、補間演算回路等を有する。例えば、画像処理部7は、撮像素子6から取得したベイヤ配列の信号から色補間(デモザイキング)処理を施してカラー画像データを生成し、記録用画像データを記憶部8に出力する。また画像処理部7は静止画像、動画像、音声等のデータ圧縮を行う。記憶部8は不揮発性メモリを備え、画像データを含む各種データ等を記憶する。カメラ制御部5は記憶部8へのデータの記憶処理や、記憶部8から読み出したデータを表示部9に出力してユーザに提示する処理を行う。
カメラ制御部5は、ユーザ操作信号に応じて、撮像処理、画像処理、記録再生処理等の制御を行う。例えば、操作検出部10はシャッタレリーズ釦の押下を検出する。シャッタレリーズ釦の半押し操作によって第1スイッチがオンし、以下ではS1操作という。さらにシャッタレリーズ釦の全押し操作によりユーザが釦を最後まで押し切ると第2スイッチがオンし、以下ではS2操作という。カメラ制御部5は操作検出部10からS2操作による撮影指示を受け付けると、撮像素子6の駆動制御や、画像処理、圧縮処理等を行い、さらに表示部9の画面上に画像情報等を表示する制御を行う。また操作検出部10は、本体部背面の表示装置9aに設けられたタッチパネルの操作を検出して、ユーザの操作指示をカメラ制御部5に伝達する。
次に撮像光学系3の動作について説明する。カメラ制御部5は画像処理部7と接続され、撮像素子6からの信号に基づいて適切な焦点位置、絞り値を算出する。つまり、カメラ制御部5は撮像素子6の出力信号により、測光および焦点状態検出を行い、露光条件(F値、シャッタ速度等)を決定する。カメラ制御部5は絞り制御やシャッタ制御によって撮像素子6の露光制御を行う。カメラ制御部5は、電気接点11を介してレンズ制御部12に指令信号を送信する。レンズ制御部12は、カメラ制御部5からの指令信号にしたがってレンズ駆動部13を制御する。例えば、手振れ等を補正するモードにおいて、撮像素子6から得られた信号に基づくカメラ制御部5からレンズ制御部12への指令信号により、レンズ駆動部13は補正レンズ(シフトレンズ等)を移動させて像ブレ補正動作を行う。
ユーザ操作に応じて撮像装置1の各部の動作を制御することで、静止画および動画の撮影が可能である。ユーザが撮像装置1の操作部材を用いて静止画や動画の撮影を指示すると、カメラ制御部5は操作検出部10からの操作信号にしたがって撮影動作の制御を行う。カメラ制御部5は、ブレ検出部15からの検出信号に基づいて目標値を算出し、ブレ補正部14の駆動制御を行う。つまり、ブレ検出部15の検出信号に基づく目標値の生成およびブレ補正部14の駆動制御は、カメラ制御部5が担っている。その際にカメラ制御部5は、撮影条件や露光条件等に応じて像ブレ補正動作の制御を行う。
ブレ補正部14の駆動制御の流れを簡単に説明すると、ユーザによるS1操作が行われ、これを操作検出部10が検出して撮影準備動作が開始される。いわゆる構図を定めるエイミング動作中にユーザの構図決めを容易にするために、ブレ補正部14による像ブレ補正が行われる。すなわち、ブレ検出部15の検出信号に基づくブレ補正部14の制御により撮像素子6が駆動(移動または回転)される。その後、ユーザによるS2操作が行われ、これを操作検出部10が検出して撮影動作(画像記録動作)が開始される。この時、露光動作により取得される被写体像の像ブレを抑制するために、ブレ検出部15の検出信号に基づくブレ補正部14の制御により撮像素子6が駆動される。露光後に一定時間が経過すると像ブレ補正動作が停止される。本実施形態における通電方式の切り替えの詳細については、図1を用いて後述する。
図3を参照して、像面防振機構を有するブレ補正部14の具体例を説明する。ブレ補正部14は像ブレ補正機構部とその制御回路部を有する。図3は像ブレ補正機構部の分解斜視図である。像ブレ補正機構部の制御を行う電気的な仕組みについては図示を省略している。図3の上下方向(Z軸方向)を光軸4と平行な方向とし、Z軸方向に直交するX軸方向およびY軸方向を定義する。像ブレ補正機構部は固定部と可動部を備える。移動しない固定部には100番台の番号を付し、可動部には200番台の番号を付して示す。固定部と可動部との間で挟持されるボール301(本実施形態では3個のボール301a~c)は転動部材である。
まず固定部を構成する、上部ヨーク101、下部ヨーク108、ベース板110を説明する。上部ヨーク101には、上部磁石103a,103b,103c,103d,103e,103fが吸着した状態で接着固定される。上部磁石103aおよび103b,103cおよび103d,103eおよび103fがそれぞれ隣接している。上部ヨーク101は、ビス102a,102b,102cを用いて、ベース板110に締結固定される。
下部ヨーク108には、下部磁石107a,107b,107c,107d,107e,107fが吸着した状態で接着固定される。下部磁石107aおよび107b,107cおよび107d,107eおよび107fがそれぞれ隣接している。
ベース板110には、下部磁石107a~fを避けるように複数の穴部が設けられており、各穴部から磁石の面がそれぞれ突出するように構成される。ベース板110と下部ヨーク108は、ビス109a,109b,109cによって締結固定される。下部磁石107a~fは、ベース板110よりも厚み方向の寸法が大きいので、ベース板110の穴部から突出した状態となる。
上部ヨーク101および上部磁石103a~fと、下部ヨーク108および下部磁石107a~fは磁気回路を形成し、いわゆる閉磁路を為している。上部磁石103a~fおよび下部磁石107a~fは、それぞれ光軸方向(図3の上下方向)に着磁されており、隣接する磁石(例えば上部磁石103aと103b)が互いに異なる向きに着磁されている。また、対向する上部磁石と下部磁石(例えば上部磁石103aと下部磁石107a)は互いに同じ向きに着磁されている。このようにすることで、上部ヨーク101と下部ヨーク108との間には光軸方向に強い磁束密度が生じる。
上部ヨーク101と下部ヨーク108との間には強い吸引力が生じるので、ベース板110上ではメインスペーサ105a,105b,105cおよび補助スペーサ104a,104bによって適当な間隔を保つように構成されている。ここでいう適当な間隔とは、上部磁石103a~fと下部磁石107a~fとの間に、後述するコイル205a~cおよびフレキシブルプリント基板(以下、FPCと記す)201を配置するとともに適当な空隙を確保できる間隔である。メインスペーサ105a,105b,105cにはネジ穴が設けられている。ビス102a,102b,102cによって上部ヨーク101がメインスペーサ105a,105b,105cに固定される。各メインスペーサの胴部にはゴムが設置されており、可動部に対する機械的端部(いわゆるストッパー)を形成している。
可動枠206およびFPC201は可動部を構成する。可動枠206は、上部ヨーク101とベース板110との間に配置される。可動枠206はマグネシウムダイキャストまたはアルミニウムダイキャストで形成されており、軽量で剛性が高い。可動枠206には複数の凹部が形成されており、コイル205a,205b,205cがそれぞれ収容される。可動枠206はプリント基板203を備える。プリント基板203は不図示の撮像素子6、コイル205a,205b,205cおよび後述の位置検出素子と電気的に接続される。プリント基板203はコネクタを介して外部回路との間で信号の送受を行う。
FPC201にはホール素子等の位置検出素子が実装され、その取り付け位置202a,202b,202cを示す。複数の位置検出素子は、図3では見えない反対側の面において取り付け位置202a,202b,202cに取り付けられている。
ベース板110には固定部転動板106a,106b,106cが接着固定され、可動枠206には可動部転動板204a,204b,204cが接着固定されている。これらの転動板は互いに対向しており、ボール301a,301b,301cの転動面をそれぞれ形成する。つまり、ボール301a~cは、固定部転動板106a~cと可動部転動板204a~cとの間にそれぞれ挟持されるので、ベース板110に対して可動枠206が移動可能に支持される。固定部転動板および可動部転動板を使用せずにボール301a~cをベース板110と可動枠206との間に介在させる方法に比較して、転動板を別途設けることで表面粗さや硬さ等を好ましい状態に設計することが容易となる。
上述した構成の像ブレ補正機構部において、コイル205a~cに電流を流すことで、フレミングの左手の法則に従う力が発生し、可動部を動かすことができる。本実施形態では、前述した磁気回路を利用して位置を検出できるように、磁気検出素子を用いて可動部の位置検出が行われる。例えばホール素子は小型の素子であるため、コイル205a~cの巻き線の内側に入れ子になるように配置することができる。またホール素子の信号を用いることでフィードバック制御を行える。ホール素子の信号値に基づき、光軸4に直交する平面内で可動部の並進運動とともに光軸4を中心とする回転運動の制御を行うことができる。
像ブレ補正機構部をほぼ光軸回りに回転させる制御に関して簡単に説明すると、取り付け位置202aにあるホール素子の信号を一定に保ったまま、取り付け位置202bと202cにあるホール素子信号が逆位相となるように駆動制御が行われる。これによって、おおよそ光軸4を中心とする回転運動を発生させることができる。
位置検出素子の取り付け位置202a,202b,202cで検出されるのは光軸方向の磁束密度である。上部磁石103a~103fと下部磁石107a~107f等からなる磁気回路の特性は一般的に非線形である。そのため、位置検出素子の取り付け位置202a,202b,202cにおいて検出される磁束密度に関しては、必ずしも駆動範囲のすべてで一定の分解能となっていない。つまり、駆動範囲内において検出分解能が変化する。例えば磁束密度の変化が、急峻な位置となだらかな位置とがあり、急峻な位置ほど検出分解能が高い(移動量に対する磁束密度変化が大きい)。図3に示した磁気回路では、磁石の境界位置(例えば上部磁石103aと103bとの境界位置)にて、最も磁束密度の変化が大きく検出分解能が高い。尚、制御方法の詳細に関しては周知であるため、これ以上の説明を省略する。
図4を参照して、漏れ磁束について説明する。図4はブレ補正部14に撮像素子6が取り付けられた状態を示しており、図4(A)は光軸方向から見た場合の図である。図4(B)は、図4(A)のA-A線で示す位置での断面図である。図4において図3で使用した符号を用いて説明を行う。撮像素子6内に設けられたCMOSセンサ6a、カバーガラス6b、センサ筐体6c、センサホルダ210をそれぞれ示す。図4(B)には漏れ磁束を矢印31,32によって模式的に示す。
図4(A)に示すように、撮像素子6はセンサホルダ210に接着等の方法で固定されたのち、可動枠206に固定される。よって可動枠206が移動すると一体的に撮像素子6も移動する。磁束はコイル205cに電流が流れることにより発生する(図4ではコイル205cを例示しているが他のコイルも同様である)。多くの磁束は、軟磁性材料で形成されている上部ヨーク101、下部ヨーク108により遮断される。しかし、一部の磁束は矢印31,32で示す経路をたどってCMOSセンサ6aに到達する。CMOSセンサ6aに対し、後述するように信号読出しの際に変化する漏れ磁束が作用すると、縞状のノイズの原因となる。
コイル205cの通電は一般的にはパルス幅変調(PWM)方式で行われ、電流の向きや量が一定の周期で変動する。その結果、いわゆるリップル電流が生じて、不要な磁束が発生する。この不要磁束によりノイズが発生する。
図5を参照して、PWM方式での通電に伴うリップル電流の発生と画像に生じる縞状のノイズの関係について説明する。図5(A)は通電における電圧と電流との関係を示す図である。図5(B)はリップル電流と縞状のノイズとの関係を模式的に示す図である。
図5(A)にて上側に示す電圧波形41は矩形波状に変化し、PWM信号のDUTY(デューティー比)を切り替えるタイミング42でパルス幅が変化する。図5(A)にて下側に示す電流波形43は三角波であり、I1は切り替えタイミング42以前の平均電流値を表し、I2は切り替えタイミング42以後の平均電流値を表す。
図5(B)に示す枠44は、取得される画像の領域を示す。枠44内の複数の横線45は、縞状のノイズを模式的に表しており、矢印46は信号の読出しが順次行われることを示している。
PWM方式では、制御電圧をデジタル的に制御するとともに、一定周期(PWM周期)内の通電におけるDUTYを切り替えることで、任意の比率を表現する。例として、図5(A)では切り替えタイミング42以前に、+50%の通電を行う状態を示し、切り替えタイミング42以後に、+25%の通電を行う状態を示している。また、電圧値は+Vまたは0である。これに対して、反対方向への通電を行う場合には後述するように-Vまたは0の2値をとるように電圧値が変化するとともに、その比率が変化する。
PWM周波数は、機械的な応答に対応する周波数よりも十分に高い周波数に設定される。例えば、手振れに対する像ブレ補正において100Hz程度までの制御を行う場合を想定する。この場合、PWM周波数は100kHz等に設定される。これによりPWM信号の揺らぎは、実際上の制御では問題とならず平均的な応答のみが出力される。図3で説明した像ブレ補正機構部では、可動枠206の質量の効果により高周波成分が十分に遮断される。つまり、像ブレ補正機構部が機械的なLPF(ローパスフィルタ)となっていると理解すればよい。そのため、PWM周波数での揺らぎは可動枠206の移動(実際に作用しているのは駆動力)として観測されない。
一方で、図5(A)の電流波形43で示すように、平均電流値はI1からI2へ変化する。アクチュエータのコイルの抵抗をRと表記すると、I1=V×(PWMのDUTY)/Rとして、PWMのDUTYが決定される。具体的には図5(A)では、切り替えタイミング42以前にはDUTY=+50%であり、I1=V/(2R)の電流値である。切り替えタイミング42以後にはDUTY=+25%であり、I2=V/(4R)の電流値である。I1,I2のような平均的な電流が、可動枠206の駆動力に対応する電流として出力される。すなわちDUTYを変化させることで可動枠206に作用する駆動力を制御することができる。
図5(A)に示したように、電流波形43はPWM周波数に応じて変動し、三角波として変化する。電流波形43はコイルのインピーダンス(抵抗値とインダクタンス)によって変化する。一般的にはPWM周波数は十分に高いので、コイルのインピーダンスで決まるカットオフ周波数よりも高い周波数である。その場合、図5(A)で示すような三角波が応答として得られる。三角波の振幅はコイルのインピーダンスで決まる。この三角波によって生じる電流をリップル電流と呼ぶ。リップル電流はPWM周波数の成分を多く含む。リップル電流は正弦波ではなく三角波であるので、高調波成分等も含むがPWM周波数の成分も大きい。また、コイルには電流が流れるとそれに対応した磁束が発生する。リップル電流によっても磁束が発生する。結果として、PWM周波数で変化する磁束が発生する。
図5(B)の縞状のノイズは、画像の情報を読み出す際に発生する様子を模式的に示している。撮像素子6の信号は、矢印46で示すように順次読み出される。図5(B)では行方向に順次読み出す様子を示している。その読出し周期は像ブレ補正機構部を制御するためのPWM周期とは完全には同期していない。このため、読み出し行ごとに作用するリップル電流によって生じた磁束変化を、図5(B)では模式的にN,S,N,S,・・・と交互に変化するように示している。
信号読み出しの際、アンプ等の電気回路に前記磁束が作用すると、読み出しの電位が変化する場合がある。特に高感度と呼ばれる撮像素子の状態(ISO感度が高い状態)において、その影響を受けやすい。図5(B)ではNの時に暗く、Sの時に明るくなるように模式的に示しており、画像には横方向の縞状のレベル差が発生して読み出しが行われる。これを本明細書では縞状のノイズと呼ぶ。尚、図5(B)ではNの時に暗く、Sの時に明るくなる例を示したが、これは電気回路の構成等によって異なる。要するに、リップル電流によって生じたPWM周波数での磁束変化が、画像では縞状のノイズとなって観測されるということである。
図6を参照して、PWM制御を行うための電気回路の例と、電気回路を構成するスイッチ素子のON・OFF制御におけるデッドタイムについて説明する。図6に示す回路は、一般的にHブリッジと呼ばれる構成である。図6においてモータ47は、像ブレ補正機構部のコイルに対応する。矢印48,49は電流の流れる方向を示している。Hブリッジは、4つのスイッチSW1,SW2,SW3,SW4を備える。これらのスイッチはFET(Field Effect Transistor)等の半導体スイッチ素子である。図6(A)はHブリッジのスイッチをすべて開放してハイインピーダンスにした状態を示す。図6(B)はグランドに対して短絡した状態を示す。図6(C)は矢印48,49の方向、つまりTER1からTER2の方向に電流を流す状態を示す。
図6に示すHブリッジの中央にモータ47が配されるので、英文字Hのような形状の回路が形成される。一組のスイッチSW1とSW2は1つの制御信号Ctrl1により制御され、もう一組のスイッチSW3とSW4は1つの制御信号Ctrl2により制御される。それぞれの組のスイッチは択一的にしかONにならない。すなわちSW1とSW2、またはSW3とSW4が、同時にONにはならないように制御される。仮に、SW1とSW2、またはSW3とSW4が同時にONになった場合、電源電圧Vの電源端子とGNDが短絡して大電流が流れ、回路破壊の可能性がある。そのため、SW1がONでSW2がOFFの状態から、SW1がOFFでSW2がONに遷移する場合には、必ず一定時間に亘ってSW1およびSW2がOFFの状態となる時間が生じるように制御される。この時間をデッドタイムと呼び、制御的にはモータ47が反応できない時間となる。デッドタイムに伴う課題については、図8および図9を用いて後述する。
モータ47に対して通電を行わない場合、図6(A)または図6(B)に示すようにスイッチが制御される。例えば、図6(B)ではSW1とSW3がOFFで、SW2とSW4がONである。TER1はSW1とSW2との接続点とモータ47とを繋ぐ出力線であり、TER2はSW3とSW4との接続点とモータ47とを繋ぐ出力線である。図6(B)の場合、TER1とTER2が短絡した状態にある。モータ47から逆起電力が発生する場合(回転型モータであればモータが慣性負荷等で回転している場合)にはモータ47にブレーキがかかる。
一方、モータ47に対して通電を行う場合、例えば図6(C)に示すようにSW1がONで、SW4がONとなる。前述したように、組となっているスイッチは択一的にしかONにならないので、SW2とSW3はOFFとなる。図6(C)の場合、TER1からTER2の方向に矢印48,49で示すように電流が流れる。これとは反対方向に電流を流す場合には、SW2およびSW3をONとし、SW1およびSW4をOFFとすればよい。
図6からわかるように、モータ47の両端にかかる電圧値は+V、0、-Vの3状態である。Ctrl1,Ctrl2の制御により、Hブリッジ回路を用いて容易にPWM制御を行うことができる。
図7を参照して、通電方式とリップル電流との関係について説明する。PWM方式には以下のように、複数の通電方式がある。
・+Vと-Vという、2つの電位を用いる方式(以下、正逆通電と呼ぶ)。
・+V,0,-Vという、3つの電位を用いる方式(以下、オンショート通電と呼ぶ)。
図7(A)は正逆通電の場合の、電圧と電流との関係を示す図であり、図7(B)はオンショート通電の場合の、電圧と電流との関係を示す図である。各図の上側に電圧の時間変化を示し、下側に電流の時間変化を示す。図7(A)、(B)とも左から順番に、フル通電(DC的にVの電圧をかけた場合)に対して、0%、+50%、+100%、-50%の電流が流れるようにした場合の、電圧と電流の定常的な様子を、PWMの1周期の期間について示している。ここでいう「定常的な」とは、過渡応答ではなく安定した状態であることを意味する。また、電流波形においてリップル電流は実際には小さいが、理解を容易にするために、リップル電流に関して縦軸を拡大して表示している。
図7(A)において、正逆通電でDC的な電流が0%,+50%,+100%,-50%となるときの電圧波形51a,51b,51c,51dをそれぞれ示す。また正逆通電でDC的な電流が0%,+50%,+100%,-50%となるときの電流波形52a,52b,52c,52dをそれぞれ示す。矢印53a,53b,53dはそれぞれ、正逆通電でDC的な電流が0%,+50%,-50%のときに生じるリップル電流の大きさを示している。
図7(A)にて、正逆通電でDC的に電流を流さない場合、波形51aで示すように+Vと-Vの電圧が50%の比率でモータに印加される。こうすることで、平均的には電流が流れない。電流波形52aは電流値0を中心に揺れ、三角波(リップル電流の大きさ:矢印53a参照)が生じる。+V,-Vの電圧がモータに印加されるので、リップル電流という意味では振幅が最大の状態となる。すなわち、矢印53aで示すリップル電流の振幅は、ほかのどの状態よりも大きく、画像に生じる縞状のノイズは大きくなる。
正逆通電でDC的な電流を+50%とする場合には、PWM周期の75%の時間で電圧値を+Vとし、PWM周期の25%の時間で電圧値を-Vとして通電が行われる(電圧波形51b)。正逆通電ではDC的に流れる電流を正方向(+方向)に増やすと+Vの比率が大きくなり、波形51bから波形51cのように変化する。反対に、負方向(-方向)に増やすと-Vの比率が大きくなり、-50%では電圧波形51dのようになる。それにしたがってリップル電流は減少していき、+50%,-50%のときには振幅がそれぞれ、矢印53b,53dで示す量となる。+100%で通電が行われるときには、電圧が+Vで一定であるので、PWM周期中の電圧と電流に変動がなくリップル電流は発生しない。尚、-100%での通電は図示されていないが、電圧が-Vで一定であるので、PWM周期中の電圧と電流に変動がなくリップル電流は発生しない。
一方、図7(B)において、オンショート通電でDC的な電流が0%,+50%,+100%,-50%となるときの電圧波形54a,54b,54c,54dをそれぞれ示す。また、オンショート通電でDC的な電流が0%,+50%,+100%,-50%となるときの電流波形55a,55b,55c,55dをそれぞれ示す。矢印56b,56dはそれぞれオンショート通電でDC的な電流が+50%,-50%のときに生じるリップル電流の大きさを示している。
図7(B)にて、オンショート通電でDC的に電流を流さない場合、電圧波形54aで示すように、いわゆるショートの状態にある。すなわち電圧は0Vから変化しない。電流波形55aに示すように平均的には電流が流れない。電圧値はゼロで一定であるのでPWM周期中の電圧と電流に変動がなくリップル電流は生じない。
オンショート通電では、DC的に流れる電流を+方向に増やすと+Vの比率が大きくなる。+50%ではPWM周期の50%の時間で電圧値が+Vとなり、50%の時間で電圧値がゼロとなる。+方向の電流を増やしていくと+Vの比率がさらに大きくなり、波形54bから波形54cのように変化する。反対に、-方向に増やすと-Vの比率が大きくなり、-50%では波形54dのようになる。リップル電流は、オンショート通電では50%の通電状態が最大となり、+50%,-50%において振幅がそれぞれ、矢印56b,56dで示す量となる。+100%での通電のときには、電圧値は+Vで一定であるのでPWM周期中の電圧と電流に変動がなくリップル電流は生じない。尚、-100%での通電は図示されていないが、電圧値は-Vで一定であるのでPWM周期中の電圧と電流に変動がなくリップル電流は生じない。
数値計算を行うとわかるように、正逆通電のリップル電流は、DC(直流)的な電流量によらず、常にオンショート通電のリップル電流よりも大きい。例えば、+50%の場合、図7(A)の矢印53bに示す振幅は、図7(B)の矢印56bに示す振幅よりも大きい。また、その差はDC的な電流量が減少するほど大きくなる。例えば、0%の場合、リップル電流の振幅は、図7(A)の矢印53aで示す量に対して、図7(B)ではゼロであり、その差は非常に大きい。一方で、図3で説明した像ブレ補正機構部については、像ブレ補正のためのパワーの確保、自重保持時の電力の削減等が要請される。そのため、自重保持(像ブレ補正機構部の状態として最も時間的に長くなる)の電力は小さく抑えられている。すなわちDC的な電流が小さくて済むように設計されている。よって、正逆通電ではノイズが大きく、オンショート通電ではノイズが小さく抑えられる。
次に、図8および図9を参照して、正逆通電とオンショート通電について波形の歪について説明する。図8は正逆通電の場合を示し、図9はオンショート通電の場合を示す。図8(A)はDC的な電流量がゼロである場合の指令電圧を示しており、1PWM周期での電圧波形71を示す。図8(B)は、図8(A)の指令電圧を受けたときのアクチュエータ(コイル)両端の電圧を示しており、1PWM周期での電圧波形72を示す。図8(C)はDC的な電流量をわずかに正値にした場合の指令電圧を示しており、1PWM周期での電圧波形73を示す。図8(D)は、図8(C)の指令電圧を受けたときのアクチュエータ両端の電圧を示しており、1PWM周期での電圧波形74を示す。
図8(A)から(D)において横軸は時間軸であり、縦軸は電圧軸である。時間軸に示す各タイミング61~67は以下の通りである。
・タイミング61はPWM周期の開始タイミングである。図8ではPWM開始タイミングを(A),(B),(C),(D)で揃えて示している。
・タイミング62は、タイミング61に対してデッドタイムによって遅れるタイミングである。
・タイミング63はPWM周期の中間点に対応するタイミングである。
・タイミング64は、タイミング63に対してデッドタイムによって遅れるタイミングである。
・タイミング65はDC的な電流を流すために+Vの時間を長くしたのちの、電圧切り替えのタイミングである。
・タイミング66は、タイミング65に対してデッドタイムによって遅れるタイミングである。
・タイミング67はPWM周期の終了のタイミングである。
図8(A)から(D)ではPWMの1周期の波形を示すが、実際にはこの波形が繰り返される。図8(E)は横軸にDC的な駆動電流の目標量をとり、縦軸に通電方式で得られる応答量をとって両者の関係を示す。
図8(A)の電圧波形71は、正逆通電においてDC的な電流量がゼロである場合の指令電圧を示している。この場合、図7(A)に示した電圧波形51aと同様に、PWM周期内の50%の時間で電圧値を+Vとし、残りの50%の時間で電圧値を-Vとして指令が与えられる。そのため、タイミング61からタイミング63までの間には+Vが指示され、タイミング63からタイミング67までの間には-Vが指示される。
電圧波形71として図示した指令電圧のときの、アクチュエータの両端電圧は図8(B)に示すとおりである。この場合、図6を用いて説明したように、PWM駆動制御を行う一般的な回路では、短絡の状態を防ぐためにスイッチ素子のOFF時間、つまりデッドタイムが設けられる。図8(B)の電圧波形72は、デッドタイムを考慮したときの、アクチュエータの両端電圧を模式的に示す。すなわち、タイミング61で+Vが指示されるが、コイル両端電圧はデッドタイムがあるために信号の立ち上がりが遅れるので、タイミング62で+Vとなる。同様にタイミング63で+Vから-Vの電圧の変更が指示された際、アクチュエータの両端電圧はデッドタイムがあるために信号の切り替わりが遅れるので、タイミング64で-Vとなる。結果として波形72に示す応答が得られる。
次に、DC的な駆動電流量を少し正側に変化させる場合を想定する。正逆通電でDC的な電流を正値にするためには、+Vの時間を長くすればよい。図8(C)に示すように、タイミング61からタイミング65の間には+Vが指示され、タイミング65からタイミング67の間には-Vが指示される。すなわち、図8(A)の電圧波形71に比べて、電圧波形73では+Vの時間が長くなっている。図8(D)に示すアクチュエータの両端電圧は電圧波形74に示すとおりである。この場合、デッドタイムがあるために、タイミング62で+Vとなり、タイミング65からタイミング66までの間では短絡を防ぐためのOFF(0V)となる。タイミング66からタイミング67までの間では-Vとなる。この時、DC的な電流の目標量と、アクチュエータの両端電圧として得られた応答量との関係を図8(E)のグラフ線75で示す。正逆通電では、電圧の切り替わりでOFF(0V)の区間が生じるが、これは+V、-V両方の時間が減少するので歪は小さい。ここでいう歪とは目標量と応答量に違いがあることを指している。図8(E)のグラフ線75は原点を通るほぼ直線であり、歪が小さいという結果となる。つまり、アクチュエータの駆動電流の目標量に対するアクチュエータの両端電圧の応答に関して相対的にリニアリティが高い。
次に図9を参照し、オンショート通電の場合を説明する。図9(A)から(E)は、通電方式は異なるが、図8(A)から(E)に対応する図である。軸設定等の説明は割愛する。図9(A),(B),(C),(D)は1PWM周期での電圧波形91,92,93,94をそれぞれ示している。時間軸に示す各タイミング81~85は以下の通りである。
・タイミング81はPWM周期の開始タイミングである。図9ではPWM開始タイミングを(A),(B),(C),(D)で揃えて示している。
・タイミング82は、タイミング81に対してデッドタイムによって遅れるタイミングである。
・タイミング83はDC的な電流を流すために、+Vの時間を長くしたのちの、電圧切り替えのタイミングである。
・タイミング84は、タイミング83に対してデッドタイムによって遅れるタイミングである。
・タイミング85はPWM周期の終了タイミングである。
図9(A)はオンショート通電において、DC的な電流量がゼロである場合の指令電圧を示している。電圧波形91は図7(B)に示した電圧波形54aと同様であり、常にゼロが指示される。図9(B)は、このときのアクチュエータの両端電圧を示し、常にゼロとなる電圧波形92として示されている。
次に、DC的な駆動電流量を少し正側に変化させる場合を想定する。オンショート通電でDC的な電流を正値にするためには、+Vの時間を一定量設定すればよい。図9(C)に示すように、タイミング81からタイミング83までの間には+Vが指示され、タイミング83からタイミング85までの間にはゼロが指示される。すなわち電圧波形93に示すように、+Vの時間が一定量与えられる。図9(D)に示すアクチュエータの両端電圧は、デッドタイムがあるために、タイミング82で+Vとなる。一方で、アクチュエータの両端電圧がゼロに移行するタイミングはタイミング83となる。タイミング84からは積極的に(デッドタイムで短絡を防ぐという意味とは関係なく)、アクチュエータに対して0Vが指示される。
オンショート通電では、+Vと0、または-Vと0の組み合わせが使用され、片方が0である。そのため、+V(または-V)である時間と0Vである時間が非線形に変化することになる。例えば、極端に+Vの時間が短くデッドタイムよりも短い時間が指示されると、+Vになることなく、0のままとなってしまう。オンショート通電において、DC的な駆動電流の目標量と、アクチュエータ両端電圧として得られた応答量との関係を図9(E)に示す。グラフ線95は折れ線であり、原点付近で不感帯96を持つので、図8(E)に比べて歪が大きい。つまり、アクチュエータの駆動電流の目標量に対するアクチュエータの両端電圧の応答に関して相対的にリニアリティが低い。
以上のように、図8で説明した正逆通電と図9で説明したオンショート通電とでは、波形の歪に違いがあるので、制御性に違いがある。すなわち制御性の観点では、歪の小さい正逆通電のほうが優れている。
図7から図9を用いた説明から理解されるように、通電方式によって歪やリップル電流に違いがある。正逆通電とオンショート通電という2つの通電方式に着目した場合、以下の特徴がある。
・正逆通電:相対的に歪が小さく、相対的にリップル電流が大きい。
・オンショート通電:相対的に歪が大きく、相対的にリップル電流が小さい。
ただし、ここで説明した通電方式は例示であって、相対的な差異があれば、これらの通電方式に限定するものではない。
図1を参照して、通電方式の判断処理について説明する。S400では静止状態からの駆動指令の発生により、PWM制御が開始される。S401にてカメラ制御部5は、発生した駆動指令が静止指令であるか否かを判定する。静止指令と判定された場合、S411の処理へ進み、静止指令でないと判定された場合、S402の処理へ進む。
S402にてカメラ制御部5は、駆動指令が微小駆動の指令であるか否かを判定する。微小駆動の指令とは、指令値に対応する目標駆動量が図9(E)に示した原点付近の不感帯96に相当する範囲内の駆動量の駆動指令である。微小駆動の指令であると判定された場合、S403の処理に進み、微小駆動の指令でないと判定された場合にはS404の処理に進む。
S403でカメラ制御部5は、制御性の良い正逆通電方式を選択して微小駆動のためのPWM制御を行う。またS404でカメラ制御部5は、ノイズ抑制に優れているオンショート通電方式を選択して通常駆動のためのPWM制御を行う。通常駆動とは静止駆動や微小駆動とは異なり、原点付近の不感帯ではない大きい駆動量を目標とする駆動である。つまり、指令値に対応する目標電流値の大きさ(絶対値)は不感帯の範囲外である。またPWM制御ではそれぞれの通電方式を用いて目標とする駆動量に基づいて駆動信号のデューティー比や周波数や駆動電圧が制御される。
S403、S404の次にS405へ進み、カメラ制御部5はアクチュエータの駆動状態を検出する。駆動状態の検出では、例えばホールセンサによる位置検出、またはセンスアンプやシャント抵抗器によるコイルの電流検出等が行われる。状態検出後、S406へ処理を進める。
S406にてカメラ制御部5は駆動状態が目標の状態へ到達しているか否かを判断する。例えば位置検出の場合、目標位置への到達の是非が判断される。目標の状態への到達が判断された場合、カメラ制御部5はアクチュエータを静止させてよいと判断して、S407の処理に進む。一方、目標の状態への到達と判断されない場合、カメラ制御部5は駆動制御を続行させることを判断してS408の処理に進む。
S407にてカメラ制御部5は、駆動指令を微小駆動または通常駆動の指令から静止駆動の指令に変更する。つまり駆動指令として静止指令が決定される。またS408にてカメラ制御部5は検出結果に対する目標までの差を判断する。カメラ制御部5は、目標までの差が前述した原点付近の不感帯96の範囲内であると判断した場合、S409へ処理を進めるが、原点付近の不感帯96の範囲内でないと判断した場合にはS410へ処理を進める。
S409、S410では駆動指令が決定される。S409にてカメラ制御部5は駆動指令として微小駆動の指令を決定する。またS410にてカメラ制御部5は通常駆動の指令を決定する。S407、S409、S410においてそれぞれの駆動指令が決定され後にS401へ戻る。その後には、S407、S409、S410にて新たに決定された駆動指令に基づき、S401で静止駆動の指令と判断されるまで前述の処理が繰り返し実行される。
S401からS411へ進む場合、つまり静止駆動の指令である場合には、S411にてカメラ制御部5はオンショート通電方式を選択する。つまり、静止駆動の場合には、相対的にノイズ抑制に優れているオンショート通電方式により、静止駆動のためのPWM制御が行われる。次のS412にてカメラ制御部5は、アクチュエータが静止状態になっているので、駆動制御を終了する。
本実施形態によれば、制御指令値に応じてコイルへの通電方式を切り替えることによって、ノイズ抑制と制御性に好適なアクチュエータの動作が可能である。尚、駆動状態の検出方法として、位置検出の例を説明したが、これに限定されない。例えばセンスアンプやシャント抵抗器によるコイルの電流検出の場合には、検出結果から得られる駆動電流値によって通電方式を選択することでアクチュエータの駆動制御が可能となる。具体的には、検出結果が目標とする駆動電流値に到達していない場合、制御性に優れた正逆通電が選択され、駆動電流値を目標電流値に到達させる制御が行われる。検出された駆動電流値が目標電流値に到達している場合には駆動電流値の振幅を抑えるためにオンショート通電が選択される。この方法では電流検出結果に応じてコイルへの通電方式を切り替えることによって、ノイズ抑制と制御性に好適なアクチュエータの動作が可能となる。
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、通電方式の切り替えの判断処理が第1実施形態とは異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、重複する説明を省略し、第1実施形態との相違点を説明する。
図10は、本実施形態における通電方式の切り替えの判断処理を説明するフローチャートである。図11は、図4(A)の像ブレ補正機構部が光軸回り方向に回転した様子を示す。像ブレ補正機構部に搭載されている全てのアクチュエータの駆動方向は、地面に対して斜めの方向になっている。
図10を参照して、PWM制御の際に通電方式を選択する処理について説明する。S1400で駆動制御が開始し、S1401にて撮像装置1の姿勢検出が行われる。撮像装置1の姿勢検出はブレ検出部15を用いて行われる。
S1402にてカメラ制御部5は、S1401で検出された撮像装置1の姿勢検出情報に基づき、アクチュエータの駆動方向が地面に対して水平方向であるか否かを判断する。図4(A)に示す状態の場合、コイル205aの駆動方向は地面に対して垂直方向であるので、S1404の処理へ進む、また図11に示す状態の場合には、コイル205aの駆動方向は地面に対して斜め方向であるので、S1404の処理へ進む。仮に図4(A)に示す状態に対して撮像装置1が光軸を中心として90度回転した場合には、コイル205aの駆動方向が地面に対して水平方向になる。この場合、S1403の処理へ進む。
S1403にてカメラ制御部5は、コイル205aのPWM駆動信号に係る通電方式として、オンショート通電を選択する。その理由は、駆動方向が水平方向である場合、抗重力成分の対応が不要になるので、ノイズを小さく抑えられるからである。
一方、S1404でカメラ制御部5はコイル205aの位置検出を行う。位置検出の方法は図3を用いて前述した通りである。ここで位置検出を行う理由は、地面に対して駆動方向が水平方向ではないアクチュエータは、抗重力成分の対応のために、所望の位置まで駆動させる必要があることによる。次にS1405の処理へ進む。
S1405にてカメラ制御部5はコイル205aを目標位置まで駆動できたか否かについて判定する。目標位置への駆動が行われたと判定された場合、S1406の処理に進む。またアクチュエータの位置(撮像素子の位置に相当する)が目標位置に到達していないと判定された場合にはS1407の処理に進む。
S1406にてカメラ制御部5は通電方式としてオンショート通電を選択する。その理由は、目標位置まで駆動できている場合には通電電流を大きく変化させる必要がないので、ノイズを小さく抑えられる方式を選択すればよいからである。
S1407にてカメラ制御部5は通電方式として正逆通電を選択する。この場合、アクチュエータの位置が目標位置に到達していないので、アクチュエータを駆動させる必要があり、制御性の良い正逆通電が選択される。
S1403、S1406、S1407の後、S1408の処理に進む。S1408にてカメラ制御部5は全てのアクチュエータに対して通電方式を選択したか否かを判断する。例えば、コイル205aに対してだけ通電方向の選択が完了している場合にはS1402へ戻り、さらにコイル205bおよびコイル205cに対して順番に通電方式が選択される。全てのアクチュエータ(コイル)に対して通電方式を選択し終えた場合、S1409の処理へ進む。
S1409でカメラ制御部5はPWM制御を行う。選択された通電方式でコイル205a、コイル205b、およびコイル205cに対してPWM制御信号が出力される。次のS1410にてカメラ制御部5は、S1401からS1409に示す制御を終了するか否かを判断する。この判断については、特に各部材の状態によって決める必要はなく、例えばユーザによる撮像装置1の撮像終了操作が行われたか否かによって行ってもよい。カメラ制御部5は制御を続行する場合、S1401の処理へ戻す。またカメラ制御部5は制御を終了する場合にS1411へ進み、通電方式の選択およびPWM制御を終了する。
本実施形態によれば、撮像装置の姿勢およびアクチュエータの駆動制御状態に応じて通電方式を切り替えることにより、ノイズ抑制と制御性に好適な、複数のアクチュエータを連携させた制御が可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。