以下、本発明に係る信号出力装置および撮像装置について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、1系統の入力信号を解析して3状態にそれぞれ対応する出力が可能なPWM信号出力装置を備える撮像装置の例を示す。
図1は、本実施形態の撮像装置の構成例を示す図である。図1(A)は撮像装置1を模式的に示す中央断面図である。撮像装置1の一例として、装置本体部にレンズユニット2を装着して使用する交換レンズ式カメラを説明する。
レンズユニット2は、複数のレンズや絞りからなる撮像光学系3を備える。撮像光学系3の光軸を光軸4で示す。レンズシステム制御部(以下、レンズ制御部という)12は、電気接点11を介して撮像装置1の装置本体部内の制御部と通信可能である。
撮像装置1の装置本体部は撮像素子6を備え、背面部に表示装置9aが設けられている。ユーザは電子ビューファインダ(EVF)9bによって被写体を観察可能である。装置本体部は、撮像された画像の像ブレを補正するブレ補正部14と、手振れ等による装置の振れを検出するブレ検出部15を備える。シャッタ機構部16は撮像素子6に対して被写体側に配置され、露光時間の制御に用いられる。
図1(B)は撮像システムの主要な構成部を示すブロック図である。撮像システムは撮像部、画像処理部、記録再生部、制御部を備える。撮像部は撮像光学系3、撮像素子6、シャッタ機構部16を含む。記録再生部は記憶部8、表示部9(図1(A):表示装置9a,EVF9b)を含む。制御部は、カメラシステム制御部(以下、カメラ制御部という)5、操作検出部10、レンズ制御部12、レンズ駆動部13、ブレ補正部14、およびブレ検出部15を含む。
レンズ制御部12は、レンズ駆動部13を介して、フォーカスレンズ、像ブレ補正レンズ、絞り等の駆動制御を行う。撮像素子6は、撮像光学系3、シャッタ機構部16を介して被写体からの光を受光し、光電変換により電気信号を出力する。画像処理部7は撮像素子6の出力する画像信号を取得して現像処理等を実行する。画像処理後の画像データは記憶部8に記憶される。
ブレ検出部15は光軸4を中心軸とする回転を検出可能であり、ピッチ方向、ヨー方向、ロール方向における撮像装置の回転ブレを検出する。例えばジャイロセンサ等を用いて振れ検出が行われ、振れ検出信号はカメラ制御部5に出力される。
カメラ制御部5は、操作検出部10により検出される操作信号にしたがって、撮像装置1およびレンズユニット2の制御を統括する。カメラ制御部5はCPU(中央演算処理装置)を備え、CPUは所定のプログラムを実行して撮像システムにおける各種の処理を行う。
ブレ補正部14は、カメラ制御部5からの制御指令にしたがって像ブレ補正を行う。ブレ補正部14は、光軸4に直交する平面内にて撮像素子6を並進方向に移動させるとともに、光軸4を中心軸として撮像素子6を回転させる機構部を備える。具体的な構造については図2を用いて後述する。
次に撮像装置1の動作について説明する。被写体からの光は、撮像光学系3を介して撮像素子6の撮像面に結像する。撮像素子6の出力信号からピント評価量や露光量が得られ、これらの情報に基づいて撮像光学系3の光学調整処理が実行される。すなわち、撮像素子6が適正に露光され、被写体像に対応する撮像信号が出力される。
シャッタ機構部16はシャッタ幕を走行させることで撮像素子6に対する遮光制御を行う。シャッタ機構部16は遮光部材(メカ後幕)を備えており、撮像素子6への露光の完了はシャッタ機構部16によって行われる。撮像素子6では、シャッタ機構部16の後幕走行に先だって電子先幕の処理が行われる。これは、ラインごとに電荷をリセットすることによって露光開始のタイミングを制御する処理である。電子先幕のモードでは、撮像素子6の電荷のリセット動作とシャッタ機構部16の後幕の移動とを同期させて露光制御が行われる。電子先幕の技術は公知であるため、その詳細な説明は割愛する。
画像処理部7は、A/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、補間演算回路等を有する。例えば、画像処理部7は、撮像素子6から取得したベイヤ配列の信号から色補間(デモザイキング)処理を施してカラー画像データを生成し、記録用画像データを記憶部8に出力する。また画像処理部7は静止画像、動画像、音声等のデータ圧縮を行う。記憶部8は不揮発性メモリを備え、画像データを含む各種データ等を記憶する。カメラ制御部5は記憶部8へのデータの記憶処理や、記憶部8から読み出したデータを表示部9に出力してユーザに提示する処理を行う。
カメラ制御部5は、ユーザ操作信号に応じて、撮像処理、画像処理、記録再生処理等の制御を行う。例えば、操作検出部10はシャッタレリーズ釦の押下を検出する。シャッタレリーズ釦の半押し操作によって第1スイッチがオンし、以下ではS1操作という。さらにシャッタレリーズ釦の全押し操作によりユーザが釦を最後まで押し切ると第2スイッチがオンし、以下ではS2操作という。カメラ制御部5は操作検出部10からS2操作による撮影指示を受け付けると、撮像素子6の駆動制御や、画像処理、圧縮処理等を行い、さらに表示部9の画面上に画像情報等を表示する制御を行う。また操作検出部10は、本体部背面の表示装置9aに設けられたタッチパネルの操作を検出して、ユーザの操作指示をカメラ制御部5に伝達する。
次に撮像光学系3の動作について説明する。カメラ制御部5は画像処理部7と接続され、撮像素子6からの信号に基づいて適切な焦点位置、絞り値を算出する。つまり、カメラ制御部5は撮像素子6の出力信号により、測光および焦点状態検出を行い、露光条件(F値、シャッタ速度等)を決定する。カメラ制御部5は絞り制御やシャッタ制御によって撮像素子6の露光制御を行う。カメラ制御部5は、電気接点11を介してレンズ制御部12に指令信号を送信する。レンズ制御部12は、カメラ制御部5からの指令信号にしたがってレンズ駆動部13を制御する。例えば、手振れ等を補正するモードにおいて、撮像素子6から得られた信号に基づくカメラ制御部5からレンズ制御部12への指令信号により、レンズ駆動部13は補正レンズ(シフトレンズ等)を移動させて像ブレ補正動作を行う。
ユーザ操作に応じて撮像装置1の各部の動作を制御することで、静止画および動画の撮影が可能である。ユーザが撮像装置1の操作部材を用いて静止画や動画の撮影を指示すると、カメラ制御部5は操作検出部10からの操作信号にしたがって撮影動作の制御を行う。カメラ制御部5は、ブレ検出部15からの検出信号に基づいて目標値を算出し、ブレ補正部14の駆動制御を行う。つまり、ブレ検出部15の検出信号に基づく目標値の生成およびブレ補正部14の駆動制御は、カメラ制御部5が担っている。その際にカメラ制御部5は、撮影条件や露光条件等に応じて像ブレ補正動作の制御を行う。
ブレ補正部14の駆動制御の流れを簡単に説明すると、ユーザによるS1操作が行われ、これを操作検出部10が検出して撮影準備動作が開始される。いわゆる構図を定めるエイミング動作中にユーザの構図決めを容易にするために、ブレ補正部14による像ブレ補正が行われる。すなわち、ブレ検出部15の検出信号に基づくブレ補正部14の制御により撮像素子6が駆動(移動または回転)される。その後、ユーザによるS2操作が行われ、これを操作検出部10が検出して撮影動作(画像記録動作)が開始される。この時、露光動作により取得される被写体像の像ブレを抑制するために、ブレ検出部15の検出信号に基づくブレ補正部14の制御により撮像素子6が駆動される。露光後に一定時間が経過すると像ブレ補正動作が停止される。
図2を参照して、像面防振機構を有するブレ補正部14の具体例を説明する。ブレ補正部14は像ブレ補正機構部とその制御回路部を有する。図2は像ブレ補正機構部の分解斜視図である。像ブレ補正機構部の制御を行う電気的な仕組みについては図示を省略している。図2の上下方向(Z軸方向)を光軸4と平行な方向とし、Z軸方向に直交するX軸方向およびY軸方向を定義する。像ブレ補正機構部は固定部と可動部を備える。移動しない固定部には100番台の番号を付し、可動部には200番台の番号を付して示す。固定部と可動部との間で挟持されるボール301(本実施形態では3個のボール301a~c)は転動部材である。
まず固定部を構成する、上部ヨーク101、下部ヨーク108、ベース板110を説明する。上部ヨーク101には、上部磁石103a,103b,103c,103d,103e,103fが吸着した状態で接着固定される。上部磁石103aおよび103b、103cおよび103d,103eおよび103fがそれぞれ隣接している。上部ヨーク101は、ビス102a,102b,102cを用いて、ベース板110に締結固定される。
下部ヨーク108には、下部磁石107a,107b,107c,107d,107e,107fが吸着した状態で接着固定される。下部磁石107aおよび107b、107cおよび107d、107eおよび107fがそれぞれ隣接している。
ベース板110には、下部磁石107a~fを避けるように複数の穴部が設けられており、各穴部から磁石の面がそれぞれ突出するように構成される。ベース板110と下部ヨーク108は、ビス109a,109b,109cによって締結固定される。下部磁石107a~fは、ベース板110よりも厚み方向の寸法が大きいので、ベース板110の穴部から突出した状態となる。
上部ヨーク101および上部磁石103a~fと、下部ヨーク108および下部磁石107a~fは磁気回路を形成し、いわゆる閉磁路を為している。上部磁石103a~fおよび下部磁石107a~fは、それぞれ光軸方向(図2の上下方向)に着磁されており、隣接する磁石(例えば上部磁石103aと103b)が互いに異なる向きに着磁されている。また、対向する上部磁石と下部磁石(例えば上部磁石103aと下部磁石107a)は互いに同じ向きに着磁されている。このようにすることで、上部ヨーク101と下部ヨーク108との間には光軸方向に強い磁束密度が生じる。
上部ヨーク101と下部ヨーク108との間には強い吸引力が生じるので、ベース板110上ではメインスペーサ105a,105b,105cおよび補助スペーサ104a,104bによって適当な間隔を保つように構成されている。ここでいう適当な間隔とは、上部磁石103a~fと下部磁石107a~fとの間に、後述するコイル205a~cおよびフレキシブルプリント基板(以下、FPCと記す)201を配置するとともに適当な空隙を確保できる間隔である。メインスペーサ105a,105b,105cにはネジ穴が設けられている。ビス102a,102b,102cによって上部ヨーク101がメインスペーサ105a,105b,105cに固定される。各メインスペーサの胴部にはゴムが設置されており、可動部に対する機械的端部(いわゆるストッパー)を形成している。
可動枠206およびFPC201は可動部を構成する。可動枠206は、上部ヨーク101とベース板110との間に配置される。可動枠206はマグネシウムダイキャストまたはアルミニウムダイキャストで形成されており、軽量で剛性が高い。可動枠206には、コイル205a,205b,205cをそれぞれ収容する凹部が形成されている。可動枠206はプリント基板203を備える。プリント基板203は不図示の撮像素子6、コイル205a,205b,205cおよび後述の位置検出素子と電気的に接続される。プリント基板203はコネクタを介して外部回路との間で信号の送受を行う。
FPC201にはホール素子等の位置検出素子が実装され、その取り付け位置202a,202b,202cを示す。複数の位置検出素子は、図2では見えない反対側の面において取り付け位置202a,202b,202cに取り付けられている。
ベース板110には固定部転動板106a,106b,106cが接着固定され、可動枠206には可動部転動板204a,204b,204cが接着固定されている。これらの転動板は互いに対向しており、ボール301a,301b,301cの転動面をそれぞれ形成する。つまり、ボール301a~cは、固定部転動板106a~cと可動部転動板204a~cとの間にそれぞれ挟持されるので、ベース板110に対して可動枠206が移動可能に支持される。固定部転動板および可動部転動板を使用せずにボール301a~cをベース板110と可動枠206との間に介在させる方法に比較して、転動板を別途設けることで表面粗さや硬さ等を好ましい状態に設計することが容易となる。
上述した構成の像ブレ補正機構部において、コイル205a~cに電流を流すことで、フレミングの左手の法則に従う力が発生し、可動部を動かすことができる。本実施形態では、前述した磁気回路を利用して位置を検出できるように、磁気検出素子を用いて可動部の位置検出が行われる。例えばホール素子は小型の素子であるため、コイル205a~cの巻き線の内側に入れ子になるように配置することができる。またホール素子の信号を用いることでフィードバック制御を行える。ホール素子の信号値に基づき、光軸4に直交する平面内で可動部の並進運動とともに光軸4を中心とする回転運動の制御を行うことができる。
像ブレ補正機構部を光軸回りに回転させる制御に関して簡単に説明すると、取り付け位置202aにあるホール素子の信号を一定に保ったまま、取り付け位置202bと202cにあるホール素子信号が逆位相となるように駆動制御が行われる。これによって、おおよそ光軸4を中心とする回転運動を発生させることができる。
位置検出素子の取り付け位置202a,202b,202cで検出されるのは光軸方向の磁束密度である。上部磁石103a~103fと下部磁石107a~107f等からなる磁気回路の特性は一般的に非線形である。そのため、位置検出素子の取り付け位置202a,202b,202cにおいて検出される磁束密度に関しては、必ずしも駆動範囲のすべてで一定の分解能となっていない。つまり、駆動範囲内において検出分解能が変化する。例えば磁束密度の変化が、急峻な位置となだらかな位置とがあり、急峻な位置ほど検出分解能が高い(移動量に対する磁束密度変化が大きい)。図2に示した磁気回路では、磁石の境界位置(例えば上部磁石103aと103bとの境界位置)にて、最も磁束密度の変化が大きく検出分解能が高い。尚、制御方法の詳細に関しては周知であるため、これ以上の説明を省略する。
図3を参照して、漏れ磁束について説明する。図3はブレ補正部14に撮像素子6が取り付けられた状態を示しており、図3(A)は光軸方向から見た場合の図である。図3(B)は、図3(A)のA-A線で示す位置での断面図である。図3において図2で使用した符号を用いて説明を行う。撮像素子6内に設けられたCMOSセンサ6a、カバーガラス6b、センサ筐体6c、センサホルダ210をそれぞれ示す。図3(B)には漏れ磁束を矢印31,32によって模式的に示す。
図3(A)に示すように、撮像素子6はセンサホルダ210に接着等の方法で固定されたのち、可動枠206に固定される。よって可動枠206が移動すると一体的に撮像素子6も移動する。磁束はコイル205cに電流が流れることにより発生する(図3ではコイル205cを例示しているが他のコイルも同様である)。多くの磁束は、軟磁性材料で形成されている上部ヨーク101、下部ヨーク108により遮断される。しかし、一部の磁束は矢印31,32で示す経路をたどってCMOSセンサ6aに到達する。その結果、CMOSセンサ6aに漏れ磁束が作用すると、画像信号にノイズが重畳する可能性があり、好ましくない。
後述するように、コイル205cの制御に伴う通電は一般的にはパルス幅変調(以下、PWMと記す)方式で行われ、電流の向きや量が一定の周期で変動する。その結果、いわゆるリップル電流が生じて、不要な磁束が発生する。この不要磁束によりノイズが発生する。
PWM周期は、機械的な応答を期待する周波数よりも十分に高い周波数に対応する値に設定される。例えば、手振れ補正において100Hz程度までの制御を想定する。この場合、PWM周波数が100kHz等に設定されることにより、PWM周波数での揺らぎは実際上の制御では問題とならず、平均的な応答のみが出力される。図2で説明した像ブレ補正機構部では、可動枠206の質量の効果により高周波成分が十分にカットされるので、機械的なLPF(ローパスフィルタ)が構成されていると理解すればよい。そのため、PWM周波数での揺らぎは可動枠206の移動(実際に作用しているのは駆動力)として観測されない。
PWM駆動によって生じる電流波形はPWM周波数やコイルのインピーダンス(抵抗値とインダクタンス)によって変化する。一般的にはPWM周波数は十分に高いので、コイルの電流波形は該コイルのインピーダンスで決まるカットオフ周波数よりも高い周波数の電流波形である。その場合には三角波が応答として得られる。三角波の振幅はコイルのインピーダンスで決まる。この三角波によって生じる電流はリップル電流と呼ばれる。リップル電流はPWM周波数の成分を多く含む(正弦波ではなく三角波であるので、高調波成分等も含まれるがPWM周波数の成分も大きい)。コイルに電流が流れると、それに対応した磁束が発生し、またリップル電流によっても磁束が発生する。結果として、PWM周波数で変化する磁束が生じる。
撮像素子6から信号を順次に読み出す場合、その読み出し周期は像ブレ補正機構部を制御するためのPWM周期と完全には同期していない。このため、読み出し時間ごとに作用するリップル電流によって生じる磁束変化が異なるので、画像信号にレベル差が生じ、ノイズが発生する可能性がある。
以下では、撮像素子にとって磁気的なノイズ源となるリップル電流と、モータ駆動におけるPWM通電方式との関係について説明する。図4(A)は正逆通電の場合の構成図である。正逆通電はVMをモータ駆動用電圧として+VMと-VMという2つの電位を用いる方式である。図4(B)はオンショート通電の場合の構成図である。オンショート通電は+VM,0,-VMという3つの電位を用いる方式である。図4(A)および(B)では、制御用マイクロコンピュータ等の制御部400と、モータドライバICと、モータコイルとの接続の様子を示す。
モータドライバICとしては、Hブリッジドライバ等が挙げられる。例えばモータドライバICにおいて、図4中のINA,INBの各端子は制御入力端子A,Bであり、制御部400からのPWM入力信号を受け付ける。OUTA,OUTBの各端子はHブリッジ出力端子A,Bであり、INA,INB端子にそれぞれ入力されるPWM信号の波形に応じた出力電圧がモータコイルに印加される。
PS端子はパワーセーブ端子であり、PS端子への信号をハイレベルに設定してモータ駆動をアクティブモードとし、ローレベルに設定してスタンバイモードとすることができる。PWM端子は駆動モードの切替端子である。PWM端子への信号をハイレベルに設定して、INB端子の信号のみによってOUTA,OUTB端子の出力信号の極性、即ち、モータの正転、反転を規定することができる。またPWM端子への信号をローレベルに設定して、INA端子の信号とINB端子の信号の両方を切り換えることで正転、反転を規定することができる。
VM端子はモータ電源端子であり、GND端子はグラウンド端子である。尚、Hブリッジドライバには不図示のHブリッジ回路が搭載されている。Hブリッジ回路は制御部400からのPWM信号電圧をVMに増幅して出力する増幅器である。Hブリッジ回路は4つのスイッチ素子を有し、モータの2つの端子を、正電圧で正転、負電圧で反転、短絡で停止、解放でスタンバイに切り替える。Hブリッジ回路自体は公知であるので、その詳細な説明を割愛する。
図4(A)に示す正逆通電の場合、制御部400からモータドライバICへのPWM入力信号は、INB端子のみへの1信号(INB信号)である。また図4(B)に示すオンショート通電の場合、制御部400からモータドライバICへのPWM入力信号は、INA端子およびINB端子への2信号(INA信号、INB信号)である。つまりINB信号のみによる制御では出力が+VM,-VMの2電位である。INA信号とINB信号の切り換えによる制御では出力が+VM,0,-VMの3電位である。
図5および図6を参照して、各方式における入力信号波形と出力電圧/電流波形について説明する。図5は正逆通電の場合を示し、図6はオンショート通電の場合を示す。各図において負電圧の印加状態を(A)図、ゼロ電圧の印加状態を(B)図、正電圧の印加状態を(C)図にそれぞれ示す。また上から順に入力電圧、出力電圧(Vcoil)、電流(Icoil)の時間変化をそれぞれ示す。
図5に示す正逆通電の場合、INB信号のみによってOUTA,OUTBの極性が制御される。出力電圧をゼロとする場合、INB信号のデューティ(Duty)比をHigh50%/Low50%に固定すると、+VM,-VMが50%ずつの割合で出力されるので、出力電圧は平均で0Vの状態となる(図5(B)参照)。また、Highレベル期間のDuty比を50%より大きくすると出力電圧は正電圧となる。例えば、Duty比をHigh75%/Low25%とすれば、+VMが75%、-VMが25%の割合で出力されるので、出力電圧は平均で+0.5VMとなる(図5(C)参照)。一方、Duty比をHigh25%/Low75%とすれば、+VMが25%、-VMが75%の割合で出力されるので、出力電圧は平均で-0.5VMとなる(図5(A)参照)。
図6に示すオンショート通電の場合、INA信号およびINB信号の切り換えでOUTA,OUTBの極性が制御される。出力電圧をゼロとする場合、INA,INBともにHigh状態に固定すると、OUTAとOUTBとで電位差が生じないので出力電圧は0Vとなる(図6(B)参照)。出力電圧を正電圧とする場合には、INB信号をHigh状態に固定し、INA信号をLow/High制御すればよい。例えばINA信号のDuty比をLow50%/High50%に固定すると、+VMが50%、0Vが50%の割合で出力されるので、出力電圧は平均で+0.5VMとなる(図6(C)参照)。出力電圧を負電圧とする場合には、INA信号をHigh状態に固定し、INB信号をLow/High制御すればよい。例えばINB信号のDuty比をLow50%/High50%に固定すると、-VMが50%、0Vが50%の割合で出力されるので、出力電圧は平均で-0.5VMとなる(図6(A)参照)。
正逆通電(図5)とオンショート通電(図6)とで電流挙動を比較すると、電流の変動幅(リップル)は正逆通電で大きく、オンショート通電で小さいことが分かる。コイルのインピーダンス(抵抗、インダクタンス)が一定である場合、電流は電圧に相関する。見かけの出力電圧が同じであっても、正逆通電ではオンショート通電の2倍の電圧変動を有しているため電流のリップルが大きい。特に、0Vの印加状態において、オンショート通電ではリップル電流が発生せず(図6(B)参照)、正逆通電との差が顕著となる。
磁気的なノイズの低減という観点からはオンショート通電の方が好ましい。しかし、オンショート通電の場合には入力信号の本数が正逆通電の場合の2倍となる。そのため、制御対象とするモータコイルの個数によっては、配線の複雑化や制御用マイクロコンピュータにおける制御ポート数の増加の原因となる。
そこで本実施形態では1つの入力信号を規則性にしたがって解析し、2つの信号に分離する入力信号解析部を設けることによって上記課題を解決する。図7から図10を参照して具体例を説明する。
図7は本実施形態のPWM信号出力装置408の構成を示すブロック図である。PWM信号出力装置408は、所定の方法で制御部400から指定されたPWM信号を出力する装置である。PWM信号出力装置408は入力信号解析部402、信号入力部403、信号増幅部404、信号出力部405、駆動用電圧入力部406、PWM周期決定部409を備える。
制御部400からの信号を入力信号解析部402が解析して、信号入力部403がHigh(ハイ)レベルとLow(ロー)レベルの2値の検知を行う。入力信号解析部402による、入力信号の解析結果に基づいて信号増幅部404に対する指令を切り替える処理が行われる。駆動用電圧入力部406から信号増幅部404へ駆動用電圧が供給され、信号増幅部404から信号出力部405を介してモータ407に駆動電圧が印加される。
信号出力部405は2本分の出力部を有する。これらの出力部の電位の論理組合せに相当する状態は、以下の5状態である。
(1)HighとLow。
(2)LowとHigh。
(3)HighとHigh。
(4)LowとLow。
(5)ハイ・インピーダンス(z)とハイ・インピーダンス(z)。
例えば、Highは予め決められた所定の電圧値に相当し、LowはGNDレベルに相当する。上記5状態から、予め決められた3状態での制御が行われる。
まず入力信号解析部402には制御部400から、1系統のPWM入力信号が入力される。入力信号解析部402は入力信号を規則性にしたがって解析し、2つの信号に分離して信号入力部403へ伝達する。具体的には、信号入力部403は図4に示すINA端子とINB端子に相当する。駆動用電圧入力部406は図4に示すVM端子に相当し、信号増幅部404は不図示のHブリッジ回路に相当する。信号出力部405はOUTA端子とOUTB端子に相当する。信号出力部405はモータ407のコイルに接続され、出力電圧を印加する。信号入力部403、信号増幅部404、信号出力部405、駆動用電圧入力部406は前述したモータドライバIC(Hブリッジドライバ)の構成要素であり、これらを一体でモータドライバ401として扱かってもよい。
図1(B)に示す構成と図7の各構成部との関連について説明すると、制御部400はカメラ制御部5に相当し、モータ407はブレ補正部14のアクチュエータに相当する。PWM信号出力装置408はカメラ制御部5とブレ補正部14のアクチュエータとの間に介在し、カメラ制御部5からの1つのPWM入力信号の解析、および信号増幅を行ってブレ補正部14をオンショート通電で制御する。
PWM信号出力装置408は、入力信号解析部402とモータドライバ401を組合せた構成を有するが、このような構成に限定されない。入力信号解析部402をモータドライバ401に組み込んでパッケージとして一体化した構成であってもよい。
PWM信号出力装置408は、信号増幅部404の入出力論理の定義に基づき、信号出力部405が有する2本分の出力部の電位の論理組合せを決定する。例えば、出力電圧をゼロとする場合、各出力部の電位の論理組合せはHigh/High、またはLow/Low、またはハイ・インピーダンス(z)/ハイ・インピーダンス(z)となる。z/zは、いわゆる開回路状態であり、残電力の消費を伴うデバイスにおいては異なる制御性を有する。また、出力電圧を正電圧とする場合、各出力部の電位の論理組合せはHigh/Lowである。出力電圧を負電圧にする場合、各出力部の電位の論理組合せはLow/Highである。但し、信号増幅部404の入出力論理の定義によっては、正電圧とする場合の論理組合せをLow/Highとし、負電圧とする場合の論理組合せをHigh/Lowとしてもよい。
PWM信号出力装置408では、上記した5つの論理組合せから3つの論理組合せが選択される。例えば、High/Low、Low/Low、z/zの3つを選択する等のように、その組合せは自由である。一般には、High/Low、Low/High、Low/Low(またはz/z)の3つの論理組合せが選択される。
図8を参照して、入力信号解析部402の具体的な解析方法の一例を説明する。図8は、信号出力部405における2本分の出力部の電位に関する3つの論理組合せの例を説明する図である。
図8(A)は制御部400からの1つのPWM入力信号を示しており、横軸は時間軸、縦軸は入力電圧を表す。図中のTFはPWM周期時間を表し、THは入力電圧がHighレベルであるHigh区間を表す。PWM周期時間TFに対する区間THの長さ(時間)の比率がHigh区間のデューティ(Duty)比に相当する。またTLは入力電圧がLowレベルであるLow区間を表し、PWM周期時間TFに対する区間TLの長さ(時間)の比率がLow区間のDuty比に相当する。
入力信号解析部402は、入力信号がLowからHighへ切り替わるタイミング、および入力信号がHighからLowへ切り替わるタイミングでのエッジ検知が可能である。入力信号解析部402は、1回目のLowからHighへ切り替わるタイミングから、2回目のLowからHighへ切り替わるタイミングまでの時間を算出し、TFとして設定する。あるいは入力信号解析部402は、1回目のHighからLowへ切り替わるタイミングから、2回目のHighからLowへ切り替わるタイミングまでの時間を算出し、TFとして設定する。
また入力信号解析部402はTFの算出と同時期にTH、TLの設定を行う。入力信号解析部402は、1回目のLowからHighへ切り替わる第1のタイミングから、次にHighからLowへ切り替わる第2のタイミングまでの時間を算出し、THとして設定する。入力信号解析部402は、この第2のタイミングから、2回目のLowからHighへ切り替わる第3のタイミングまでの時間を算出し、TLとして設定する。
続いて、入力信号解析部402はTHからTLを減算し、THとTLとの差分(Δと表記する。Δ=TH-TL)を算出する。入力信号解析部402はΔ値に応じて下記(i)から(iii)について判断する。
(i)Δ = 0の場合
INAをHighに固定し、INBをHighに固定する処理が行われる。これはオンショート通電における出力電圧が0Vの場合に相当し、信号出力部405が有する2本分の出力部の電位の組合せがLow/Lowとなる。
(ii)Δ > 0の場合
INBをHighに固定し、INAをLow/High制御とする処理が行われる。INAのLow区間長はΔに設定され、High区間長は「TF-Δ」に設定される。これはオンショート通電における出力電圧が正電圧の場合に相当する。信号出力部405が有する2本分の出力部の電位の組合せに関し、INAのLow区間ではHigh/Lowとなり、INAのHigh区間ではLow/Lowとなる。
(iii)Δ < 0の場合
INAをHighに固定し、INBをLow/High制御とする処理が行われる。INBのLow区間長は「-Δ」に設定され、High区間長は「TF+Δ」に設定される。これはオンショート通電における出力電圧が負電圧の場合に相当する。信号出力部405が有する2本分の出力部の電位の組合せに関し、INBのLow区間ではLow/Highとなり、INBのHigh区間ではLow/Lowとなる。
尚、(i)~(iii)におけるLow/Lowについては、High/Highあるいはz/zであっても構わない。
入力信号解析部402は上記の規則性にしたがって入力信号を2つの信号に分離して信号入力部403(INA,INB)へ伝達する。信号入力部403が取得した2つの信号に基づいて出力電圧が決定される。
入力信号の解析はPWM信号の1周期ごとに連続して行われる。つまり入力信号解析部402が信号増幅部404に対して行う制御は、入力信号に係るPWM周期時間が継続する期間ごとに行われる。入力信号の解析によって駆動パターンを変更する方法については、シリアル通信によるコマンド送信を用いたモータ制御用ドライバが知られている。この場合、コマンド送信に時間がかかると、モータ出力制御が不連続となる。本実施形態では、入力信号の解析に規則性を持たせているため、入力信号をPWM周期ごとに連続的に解析可能である。よって入力信号の変動に対して精度よく柔軟に対応することが可能である。尚、信号解析によって分離された2つの信号は入力信号の1パルス分の時間だけ遅れて信号入力部403に伝達されるが、その遅れ時間は、モータの制御性において、ほとんど無視できる時間である。
図8(B)は入力信号のΔ値を正側から徐々に小さくしてゼロに移行させる制御例を示すタイミングチャートであり、上述の(ii)から(i)への動作に該当する。上側に入力電圧の時間変化を示し、下側に出力電圧の時間変化を示す。入力信号のHigh区間のDuty比が75%で、Low区間のDuty比が25%である場合、信号解析の結果から、+VMを50%、0Vを50%の割合とする処理により、出力電圧は平均して+0.5VMとなる。入力信号のHigh区間のDuty比が70%で、Low区間のDuty比が30%である場合、+VMを40%、0Vを60%の割合とする処理により、出力電圧は平均して+0.4VMとなる。入力信号のHigh区間のDuty比が50%で、Low区間のDuty比が50%である場合、+VMを0%、0Vを100%の割合とする処理により、出力電圧は0Vとなる。
図8(C)は入力信号のΔ値の大きさをゼロから徐々に負側へ大きくする制御例を示すタイミングチャートであり、上述の(i)から(iii)への動作に該当する。上側に入力電圧の時間変化を示し、下側に出力電圧の時間変化を示す。入力信号のHigh区間のDuty比が50%で、Low区間のDuty比が50%である場合、信号解析の結果から、+VMを0%、0Vを100%の割合とする処理により、出力電圧は0Vとなる。入力信号のHigh区間のDuty比が30%で、Low区間のDuty比が70%である場合、-VMを40%、0Vを60%の割合とする処理により、出力電圧は平均して-0.4VMとなる。入力信号のHigh区間のDuty比が25%で、Low区間のDuty比が75%である場合、-VMを50%、0Vを50%の割合とする処理により、出力電圧は平均して-0.5VMとなる。
次に、出力信号のPWM周期を決定する処理および制御について説明する。PWM信号出力装置408は、出力信号のPWM周期を決定するPWM周期決定部409をさらに有する。PWM周期決定部409は、入力信号解析部402が算出したTF,TH,TLに対して、任意であって同一の比率でスケーリング(拡大、縮小)を与えることが可能である。
図9は入力信号に対して出力電圧のPWM周期時間を、例えば1/10にスケーリング処理した場合のタイミングチャートである。上側に入力電圧の時間変化を示し、下側に出力電圧の時間変化を示す。入力信号解析部402は、入力信号の1パルス分の解析に対して、出力信号のPWM周期を1/10の周期として、信号入力部403へ伝達する。その結果、信号出力部405からは、1/10のPWM周期をもつパルスが出力される。入力信号解析部402は、次の入力信号の1パルス分の解析を行うが、その間には1/10のPWM周期をもつパルスとして同一波形で10発が出力される。このように入力信号と出力電圧とのパルス数の比を制御することが可能である。
また、PWM信号出力装置408は、入力信号におけるΔ値のゼロ近傍に不感帯を設けて制御を行う。例えば、入力信号のHigh区間のDuty比を50%とし、Low区間のDuty比を50%(つまり、Δ=0)と設定した場合でも、入力信号の誤差やノイズによってΔ値がゼロからわずかにずれる可能性がある。この場合、入力信号として出力電圧0Vに対応する停止命令が出されているにもかかわらず、誤差やノイズによってモータコイルに出力電圧が印加され、モータのわずかな動作が発生する可能性がある。そこで、誤差やノイズに起因する動作を抑制するために、Δの絶対値が0から所定値Nまでの間、不感帯として、一律に「Δ=0」と設定される。
図10は、入力信号におけるΔ値のゼロ近傍に不感帯を設けた例を示すタイミングチャートである。上側に入力電圧の時間変化を示し、下側に出力電圧の時間変化を示す。この場合、PWM信号出力装置408は、High区間のDuty比とLow区間のDuty比との差の絶対値が所定の閾値(例えば6%)未満の範囲を不感帯とする。つまり当該差の絶対値が6%以上となったときから0V以上の出力電圧が出力される。不感帯の数値については任意の値に設定可能である。例えば、High区間のDuty比とLow区間のDuty比との差の絶対値が10%よりも大きい場合には、十分に誤動作等を防ぐことができるので、10%以下の数値から閾値を任意に選択できるように設定しても構わない。
PWM信号出力装置408は、制御部400からモータドライバ401への入力信号を正逆通電と同様に1つの信号としつつ、モータドライバ401からモータ407への出力電圧についてはオンショート通電と同様に+VM,0,-VMの3電位を用いる。したがって、オンショート通電での課題であった、配線の複雑化や制御部での制御ポート数の増加を抑制する効果が得られる。
PWM信号出力装置408は、例えば撮像装置における像面防振機構を有するブレ補正部14に対して適用できる。PWM信号出力装置408はカメラ制御部5とブレ補正部14のアクチュエータとの間に介在される。カメラ制御部5が出力する1つのPWM信号を解析してオンショート通電でブレ補正部14のアクチュエータを制御できるので、リップル電流による磁気的なノイズを抑制する効果を奏する。またカメラ制御部5で必要となる制御ポート数の増加を抑制する効果が得られる。
前記実施形態では撮像素子を駆動するブレ補正部14への適用例を示したが、PWM信号出力装置408は、レンズ等の光学部材の駆動部(レンズ駆動部13)やPWM制御される各種のアクチュエータ類に対して広範に適用可能である。