JP7230389B2 - コイル装置およびパルストランス - Google Patents

Description

本発明は、たとえばパルストランスなどとして用いられるコイル装置に関する。

パルストランスなどとして用いられるコイル装置としては、特許文献１に示すコイル装置が知られている。この従来のコイル装置では、実装面を有する端子電極に対して、コイルを形成するワイヤの端部が熱圧着により継線されている。

しかしながら、特許文献１に記載の従来のコイル装置では、ワイヤを被覆している被膜の一部が熱圧着の際に被膜カスとして端子電極の実装面に残るおそれがある。その結果、コイル装置を基板に実装するとき、端子電極の実装面と基板とを接続するハンダなどの接続部材にボイドなどが発生し、ボイドからクラックが発生して接続信頼性を低下させるおそれがある。

また、熱圧着による継線時の熱の影響で、電極端子の実装面でのＳｎ層が溶けて少なくなり、その結果、ハンダなどの接続部材と端子電極との密着性が悪くなり、接合強度が低下するおそれがある。

特開２０１８－７８１５５号公報

本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、接合強度が高く、しかも接合信頼性が高いコイル装置およびパルストランスを提供することである。

上記目的を達成するため、本発明に係るコイル装置は、
巻芯部と鍔部とを有するコア部材と、
前記巻芯部に巻回され一端が前記鍔部に位置するワイヤと、
前記鍔部に具備される複数の端子電極とを有するコイル装置であって、
前記端子電極は、前記ワイヤの一端が接続される継線部と、前記鍔部の外周方向に沿って前記継線部に対して前記巻芯部の軸芯から離れる側に位置ズレして前記継線部に連続して形成される実装部とを有する。

本発明に係るコイル装置では、端子電極に、継線部と実装部とを別個に設けているため、ワイヤの一端を端子電極の継線部に熱圧着する際に、継線部で生じるおそれがある被膜カスが実装部に付着するおそれが少なくなる。その結果、コイル装置を基板に実装するとき、端子電極の実装面と基板とを接続するハンダなどの接続部材にボイドなどが発生するおそれが少なくなり、クラックの発生が抑制され、接続信頼性が向上する。

また、端子電極に実装部と継線部とを別個に設けているため、熱圧着による継線時の熱の影響が実装部に及び難くなり、実装部の表面のＳｎ層（ハンダなどの接続部材との密着性を向上させる層）が溶けるおそれが少なくなる。その結果、コイル装置を基板に実装する際に、端子電極の実装部とハンダなどの接続部材との密着性が良好となり、接合強度が向上する。

また、実装部は、鍔部の外周方向に沿って継線部に対して巻芯部の軸芯から離れる側に位置ズレして前記継線部に連続して形成されるため、継線部が巻芯部に近くなり、継線部から巻芯部までのワイヤの長さを短くすることが可能になり、コイル装置の直流内部抵抗を低くすることができる（低ＤＣＲ化）。

さらに、実装部は、鍔部の外周方向に沿って継線部に対して巻芯部の軸芯から離れる側に位置ズレして前記継線部に連続して形成されるため、継線部が、コイル装置の鍔部の外側（巻芯部の軸芯から離れる側）に飛び出すことがない。したがって、コイル装置のコンパクト化が図れると共に、コイル装置の搬送や取り扱いが容易になると共に、実装時の取り扱い性も向上する。

また、実装部は継線部に近接して形成することが好ましく、その場合には、さらに低ＤＣＲ化を図ることができる。さらに、巻芯部の軸芯を挟んで両側に位置する端子電極は、それぞれの実装部の内側（軸芯側）に継線部が位置することが好ましい。その場合には、それぞれの継線部へのワイヤの熱圧着を熱圧着用ヒータで一度に行うことが可能である。

好ましくは、前記鍔部の高さ方向に沿って、前記継線部は、前記実装部より低い位置に配置されている。このように構成することで、継線部で生じるおそれがある被膜カスが実装部に付着するおそれがさらに少なくなる。また、熱圧着による継線時の熱の影響が実装部にさらに及び難くなる。さらにコイル装置の基板などへの実装時には、端子電極の継線部ではなく、実装部が基板の接続箇所に接触するので、端子電極の実装部と基板との接続強度が向上すると共に接続信頼性も向上する。

好ましくは、前記継線部と前記実装部との間には、段差部が形成されている。段差部は、巻芯部へのワイヤの巻始めまたは巻き終わり時のワイヤの端部（リード）の横ずれ防止機能を果たし、ワイヤの端部を適切に継線部に接続することができる。また、段差部があることで、継線部で生じるおそれがある被膜カスが実装部に付着するおそれがさらに少なくなる。

前記鍔部は、前記継線部が配置される第１領域と、前記実装部が配置される第２領域とを有していても良い。第１領域と第２領域との間には、端子電極に形成してある段差部に合わせた形状の段差部が形成してあっても良い。あるいは、端子電極の実装部と第２領域との間には、端子電極の継線部と第１領域との間の隙間よりも大きな隙間空間が形成してあっても良い。なお、第１領域と継線部とは、接着されていないことが好ましく、第２領域と実装部とも接着されていないことが好ましい。

好ましくは、端子電極は、継線部と実装部との連結部とは別の位置で実装部に連続して形成される設置部をさらに有することが好ましく、設置部が鍔部の外側面に接着剤などで固定してある。このように構成することで、端子電極の継線部と実装部とは、鍔部に対して固定する必要がなくなり、実装後のコイル装置の耐熱衝撃特性などが向上する。

好ましくは、前記端子電極において、前記継線部の面積は、前記実装部の面積より小さい。このような構成とすることで、継線部の熱容量を相対的に小さくすることができ、ワイヤの熱圧着時の熱が実装部に与える影響を小さくできる。

前記巻芯部の軸心方向に沿って、前記継線部の幅は、前記実装部の幅より狭くてもよい。このように構成することで、継線部の面積を、実装部の面積より小さくすることができる。好ましくは、前記継線部は、前記実装部の前記巻芯部側の縁部に連続して形成してある。このように構成することで、継線部が巻芯部に近くなり、継線部から巻芯部までのワイヤの長さを短くすることが可能になり、さらに低ＤＣＲ化を図ることができる。

好ましくは、前記継線部の前記巻芯部側の縁部と、前記鍔部の前記巻芯部側の内側面との間には、前記鍔部の外周面が露出している露出面が形成してある。さらに好ましくは、前記露出面は、面取りしてある。このように構成することで、ワイヤの端部が継線部の巻芯部側の縁部に当接する角度を大きくすることが可能になり、ワイヤの端部に対するダメージを低減することができる。

前記鍔部に具備される複数の前記端子電極の内の一つは、他の端子電極の継線部の幅よりも広い幅の幅広継線部を有し、当該幅広継線部には、二本以上のワイヤの端が、前記鍔部の外周方向に並んで接続されてもよい。

本発明に係るパルストランスは、上記したいずれかのコイル装置を有する。

図１は本発明の一実施形態に係るコイル装置の斜視図である。 図２は図１に示すコイル装置の部分斜視図であって、図１のIIの部分の拡大図である。 図３は図１に示すコイル装置の平面図である。 図４は図１に示すコイル装置の断面図であって、図１のIV―IVにおける断面図である。 図５Ａは図１に示すコイル装置の第１端子部材を示す斜視図である。 図５Ｂは図１に示すコイル装置の第２端子部材を示す斜視図である。 図６Ａは図１に示すコイル装置においてワイヤ端部を熱圧着する状態を示す第１の図である。 図６Ｂは図１に示すコイル装置においてワイヤ端部を熱圧着する状態を示す第２の図である。

以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。

図１に示すように、コイル装置１は、たとえばパルストランスとして用いられる表面実装型のコイル部品である。コイル装置１は、ドラム型のコア部材としてドラムコア１０と、コイル部３０と、端子電極５１～５６とを有する。

コイル装置１は、図１においてＺ軸方向の上面が、コイル装置１を基板などに実装するときの実装面となる。なお、以下の説明では、コイル装置１のコイル部３０の巻軸と平行な軸をＸ軸、コイル装置1の高さ方向に平行な軸をＺ軸、Ｘ軸およびＺ軸に略垂直な軸をＹ軸とする。

コイル装置１は、その外形寸法は特に限定されないが、たとえばＸ軸長さが３．０～６．０ｍｍで、Ｙ軸幅が３．０～６．０ｍｍで、Ｚ軸高さが１．５～４．０ｍｍである。

ドラムコア１０は、コイル部３０が巻回されている棒状部分（図４に示す巻芯部１１）と、巻芯部１１の軸方向の両端に設けられる１対の鍔部１２，１２とを有する。図４に示すように、巻芯部１１の断面形状は、本実施形態では略四角形であるが、その他の多角形あるいは円形または楕円形でも良く特に限定されない。図１に示すように、２個の鍔部１２，１２の外形形状は、ともに同一形状の略直方体であるが、これらは相互に形状またはサイズが異なっていてもよい。

ドラムコア１０は、磁性体で構成され、たとえば、比較的透磁率の高い磁性材料、たとえばＮｉ－Ｚｎ系フェライトや、Ｍｎ－Ｚｎ系フェライト、あるいは金属磁性体などの磁性粉体を含む。

図３に示すように、２個の鍔部１２，１２は、Ｘ軸方向に所定の間隔を空けて、互いに略平行になるように配置されている。巻芯部１１のＸ軸方向の両端は、一対の鍔部１２，１２の対向する内側面１３，１３の各Ｙ軸方向の中央部に接続している。

鍔部１２，１２のそれぞれにおいて、一方の鍔部１２の実装側面２０には、３つの第１～第３端子電極５１～５３が形成されており、他方の実装側面２０には、３つの第４～第６端子電極５４～５６が配置してある。

ドラムコア１０の巻芯部１１には、コイル部３０が形成されている。本実施形態において、コイル部３０は、巻芯部１１に巻回された４本のワイヤ３１～３４により構成されており、第１ワイヤ３１と第２ワイヤ３２とがパルストランスとしての一次コイルを構成し、第３ワイヤ３３と第４ワイヤ３４とが二次コイルを構成している。一次コイルを形成する第１ワイヤ３１と第２ワイヤ３２とは逆方向に巻回してあり、二次コイルを形成する第３ワイヤ３３と第４ワイヤ３４とは逆方向に巻回してある。

図３に示すように、このように巻回された４本のワイヤ３１～３４の各端部３１ａ～３４ａ，３１ｂ～３４ｂは、ドラムコア１０の鍔部１２，１２に配置された端子電極５１～５６に、それぞれ熱圧着などにより継線されている。

具体的には、第１ワイヤ３１の一方の端部３１ａは第１端子電極５１に継線され、第２ワイヤ３２の一方の端部３２ａは第２端子電極５２に継線され、第３ワイヤ３３と第４ワイヤ３４の一方の端部３３ａ，３４ａはともに第３端子電極５３に継線される。

また、第１ワイヤ３１と第２ワイヤ３２の他方の端部３１ｂ，３２ｂはともに第６端子電極５６に継線され、第３ワイヤ３３の他方の端部３３ｂは第５端子電極５５に継線され、第４ワイヤ３４の他方の端部３４ｂは第４端子電極５４に継線される。

ワイヤ３１～３４を、このような構成で巻回し、端子電極５１～５６に継線することにより、第１端子電極５１と第２端子電極５２とが一次コイル側端子（入力側端子）となり、第４端子電極５４と第５端子電極５５とが二次コイル側端子（出力側端子）となる。また、第３端子電極５３および第６端子電極５６は、それぞれ、一次コイル側（入力側）および二次コイル側（出力側）の中間タップとなる。

各ワイヤ３１～３４は、被覆導線で構成してあり、たとえば、銅（Ｃｕ）などの良導体からなる芯材を、イミド変成ポリウレタンなどからなる絶縁材で覆い、さらに最表面をポリエステルなどの薄い樹脂膜で覆っている。ただし、ワイヤ３１～３４の芯材や被膜材の材質はこれに限られない。

また、各ワイヤ３１～３４の線径、巻回数、巻線方法、コイル部３０における巻回されるワイヤの層数などは、求められるコイル装置１の特性に応じてワイヤごとに決定してよい。本実施形態においては、各ワイヤ３１～３４の線径および巻回数は同じであり、同じ方向に巻かれる一対のワイヤ３１および３３（または３２および３４）毎に巻回してあり、たとえば図４に示すように、コイル部３０においては４本のワイヤが２層に巻回されている。

図５Ａおよび図５Ｂに示すように、端子電極５１～５６は、それぞれ金属板状の端子部材６１または６２を折曲成形で一体に成形してある。端子部材６１，６２は、たとえば銅、銅合金などの金属、あるいはその他の導電板で構成してある。

図５Ａに示すように、端子電極５１，５２，５４，５５は、それぞれ同じサイズと形状を有し、継線部６３ａと、実装部６５と、設置部６６とを有する。継線部６３ａは、実装部６５のＸ軸方向の一端部に段差部６４を介してＹ軸方向に延びるように連続的に近接して形成してある。設置部６６は、継線部６３ａとは異なる位置で、実装部６５のＸ軸方向の他端部からＺ軸の下方に折り曲げられるように連続的に形成してある。

設置部６６のＺ軸方向の高さｚ１は、図４に示す鍔部１２のＺ軸方向の高さｚ０と同等またはそれより短いことが好ましく、ｚ１／ｚ０は、好ましくは、０．１～１である。図５Ａに示すように、設置部６６のＹ軸方向の幅は、本実施形態では、実装部６５の軸方向の幅ｙ２と同じであるか大きいことが好ましいが、小さくてもよい。継線部６３ａのＹ軸方向の幅ｙ１は、実装部６５のＹ軸方向の幅ｙ２と同程度であり、好ましくは、ｙ１／ｙ２は、０．１～１．５の範囲内である。

また、継線部６３ａのＸ軸方向の幅ｘ２は、実装部６５のＸ軸方向の幅ｘ１よりも短いことが好ましく、ｘ２／ｘ１は、好ましくは１／４～３／４であり、さらに好ましくは１／３～２／３である。しかも、継線部６３ａの面積ｓ１（図示省略）は、実装部６５の面積ｓ２（図示省略）よりも小さく、ｓ１／ｓ２は、好ましくは１／４～３／４であり、さらに好ましくは１／３～２／３である。

実装部６５のＸ軸方向長さｘ１は、図３に示すように、鍔部１２の実装側面２０のＸ軸方向幅ｘ０と同程度以下が好ましく、少し短い程度が好ましい。端子電極の継線部６３ａ，６３ｂの巻芯部側の縁部６７と、鍔部１２の巻芯部側の内側面１３との間に、実装側面２０の一部（鍔部１２の外周面の一部）が露出している露出面２３ａ～２３ｂが形成されるようにするためである。なお、露出面２３ａ～２３ｂは、内側面１３と実装側面２０との交差部において、面取り加工（Ｒ加工含む）されていることが好ましい。

図５Ａに示すように、段差部６４のＹ軸方向の幅は、金属板状の端子部材６１の板厚ｔ１と同程度か、板厚ｔ１の１．０倍～２倍程度であることが好ましい。段差部６４が継線部６３ａと実装部６５との間に形成されることで、段差部６４のＺ軸方向の段差高さｚ２で、実装部６５は、継線部６３ａよりもＺ軸方向に高い位置に配置される。段差部６４のＺ軸方向の段差高さｚ２は、端子部材６１の板厚ｔ１と同程度か、板厚ｔ１の１．０倍～３．０倍程度であることが好ましい。板厚ｔ１は特に限定されないが、好ましくは、５０～１５０μｍである。

図５Ｂに示すように、端子電極５３，５６は、それぞれ同じサイズと形状を有し、継線部６３ｂと、実装部６５と、設置部６６とを有する。継線部６３ｂは、実装部６５のＸ軸方向の一端部に段差部６４を介してＹ軸方向に延びるように連続的に近接して形成してある。設置部６６は、継線部６３ｂとは異なる位置で、実装部６５のＸ軸方向の他端部からＺ軸の下方に折り曲げられるように連続的に形成してある。

図５Ｂに示す設置部６６のＺ軸方向の高さｚ１は、図５Ａに示す設置部６６のＺ軸方向の高さｚ１と同様であることが好ましいが、異なっていてもよい。また、図５Ｂに示す設置部６６のＹ軸方向の幅は、図５Ａに示す設置部６６のＹ軸方向の幅と同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。さらに、図５Ｂに示す実装部６５および段差部６４に関しても、図５Ａに示す実装部６５および段差部６４と同様であることが好ましいが、異なっていてもよい。段差部６４が継線部６３ｂと実装部６５との間に形成されることで、実装部６５は、段差部６４のＺ軸方向の段差高さｚ２で、継線部６３ｂよりもＺ軸方向に高い位置に配置される。

図５Ｂに示す継線部６３ｂのＸ軸方向の幅ｘ２に関しては、図５Ａに示す継線部６３ａのＸ軸方向の幅ｘ２と同様であることが好ましいが、異なっていてもよい。本実施形態では、図５Ｂに示す継線部（幅広の継線部）６３ｂのＹ軸方向の幅ｙ１ａは、図５Ａに示す継線部６３ａのＹ軸方向の幅ｙ１よりも大きい。好ましくは、ｙ１ａ／ｙ１は、好ましくは１．２～３、さらに好ましくは１．５～２．５である。幅広の継線部６３ｂには、図１に示すように、二本以上のワイヤの端が、鍔部１２の外周方向に並んで接続してある。

図５Ａに示す継線部６３ａは、図４に示すように、鍔部１２の実装側面２０に形成してある第１領域２１ａ，２１ｂの上に密着して配置してあるが、接着されている必要は無く、多少隙間があってもよい。また、図５Ａに示す実装部６５は、図４に示すように、鍔部１２の実装側面２０に形成してある第２領域２２ａ，２２ｂの上に密着して配置してあるが、接着されている必要は無く、隙間があってもよい。

本実施形態では、鍔部１２の実装側面２０に形成してある第１領域２１ａ（２１ｂ）と第２領域２２ａ（２２ｂ）との間には、コア段差部が形成してあり、第２領域２２ａ（２２ｂ）が、第１領域２１ａ（２１ｂ）よりもＺ軸方向に高い位置に配置される。コア段差部の上には、端子部材６１の段差部６４が配置され、コア段差部の段差高さは、図５Ａに示す段差部６４の段差高さｚ２と略同一、またはそれより小さいことが好ましい。

すなわち、継線部６３ａと第１領域２１ａ（２１ｂ）との間の隙間よりも、実装部６５と第２領域２２ａ（２２ｂ）との間の隙間が大きいことが好ましい。後工程で継線部６３ａにワイヤ３２（３１）の端部を熱圧着することから、継線部６３ａと第１領域２１ａ（２１ｂ）とは密着してあることが好ましいが、実装部６５と第２領域２２ａ（２２ｂ）との間には、隙間があっても何ら問題は無い。むしろ隙間があることで、実装部６５の弾性変形範囲が大きくなり、コイル装置１の基板などへの実装後の耐熱衝撃特性がなど向上する可能性がある。

また、図５Ｂに示す継線部６３ｂは、図４に示すように、鍔部１２の実装側面２０に形成してある第１領域２１ｃの上に密着して配置してあるが、接着されている必要は無く、多少隙間があってもよい。また、図５Ｂに示す実装部６５は、図４に示すように、鍔部１２の実装側面２０に形成してある第２領域２２ｃの上に密着して配置してあるが、接着されている必要は無く、隙間があってもよい。

本実施形態では、鍔部１２の実装側面２０に形成してある第１領域２１ｃと第２領域２２ｃとの間には、コア段差部が形成してあり、第２領域２ｃが、第１領域２１ｃよりもＺ軸方向に高い位置に配置される。コア段差部の上には、端子部材６２の段差部６４が配置され、コア段差部の段差高さは、図５Ｂに示す段差部６４の段差高さｚ２と略同一、またはそれより小さいことが好ましい。

すなわち、図４に示す継線部６３ｂと第１領域２１ｃとの間の隙間よりも、実装部６５と第２領域２２ｃとの間の隙間が大きいことが好ましい。後工程で継線部６３ｂに二本のワイヤ３３，３４の端部を熱圧着することから、継線部６３ｂと第１領域２１ｃとは密着してあることが好ましいが、実装部６５と第２領域２２ｃとの間には、隙間があっても何ら問題は無い。むしろ隙間があることで、実装部６５の弾性変形範囲が大きくなり、コイル装置１の基板などへの実装後の耐熱衝撃特性などが向上する可能性がある。

図５Ａおよび図５Ｂに示す端子部材６１および６２の設置部６６は、図１に示すように、鍔部１２，１２の外側面１４，１４にそれぞれ接着などの手段で接合してある。図５Ａおよび図５Ｂに示す端子部材６１および６２の実装部６５、段差部６４および継線部６３ａは、図１に示す鍔部１２のＺ軸方向の上面である実装側面２０に対して接着されずに自由に移動可能であることが好ましい。

各端子電極５１～５６の継線部６３ａ，６３ｂおよび実装部６５を鍔部１２，１２の実装側面２０，２０に接着固定しないことにより、コイル装置１の実装面のコプラナリティ（平面度）を向上させることができる。また、コイル装置１を基板などに実装した時の基板の歪みや振動などに対する耐性が向上し、実装信頼性を向上させることができる。

図３に示すように、端子部材６１および６２が、鍔部１２に取り付けられると、継線部６３ａ（６３ｂ）と実装部６５とは、鍔部１２の外周方向（本実施形態ではＹ軸方向）に位置ズレして配置されると共に、継線部６３ａ（６３ｂ）が実装部６５より巻芯部１１の軸心Ａ側となる位置関係に配置される。特に、巻芯部１１の軸芯Ａを挟んで両側に位置する端子電極５２，５３（５５，５６）は、それぞれの実装部６５の内側（軸芯Ａ側）に継線部６３ａ，６３ｂが位置する。

このような構成のコイル部品１を製造する際は、まず、ドラムコア１０に端子部５１～５６を設置する。各端子電極５１～５６は、対応する第１端子部材６１または第２端子部材６２について、継線部６３ａ，６３ｂを鍔部１２，１２の実装側面２０，２０の第１領域２１ａ～２１ｃ上に配置し、実装部６５を第２領域２２ａ～２２ｃ上に配置し、設置部６６を接着剤により鍔部１２，１２の外側面１４，１４に接着することにより形成される。

なお、端子電極５１～５６の形成方法は、端子部材６１，６２を設置する方法に限定されず、印刷または塗布された導電膜の焼付け処理、メッキ処理などにより形成してもよい。そのような方法でも、本実施形態と同様の継線部６３ａ，６３ｂ、段差部６４、実装部６５を有する端子電極を実装側面２０，２０に形成可能であると共に、実装側面２０，２０に露出面２３ａ～２３ｃを形成することも可能である。

ドラムコア１０の鍔部のそれぞれに端子電極５１～５３および５４～５６を装着した後、次に、ドラムコア１０を巻線機にセットし、ワイヤ３１～３４を所定の順序でドラムコア１０の巻芯部１１に巻回する。

次に、巻回されたワイヤ３１～３４の端部３１ａ～３４ａおよび３１ｂ～３４ｂを、端子電極５１～５６の継線部６３ａ，６３ｂに熱圧着により固定する。たとえば、第３端子電極５３の継線部６３ｂへの第３ワイヤ３３および第４ワイヤ３４の端部３３ａ，３４ａの継線においては、図６Ａに示すように、図示せぬ巻線機により引っ張られたワイヤ３３，３４の途中が第３端子電極５３の継線部６３ｂに配置された状態で、上方よりヒータＨをワイヤ３３，３４および継線部６３ｂに圧接させて加熱する。なお、ワイヤ３３の継線部６３ｂに対する熱圧着と、ワイヤ３４の継線部６３ｂに対するワイヤの熱圧着は、別々の工程で行ってもよい。

熱圧着により、ワイヤ３３または３４の被膜材は溶融あるいは剥離され、導体であるワイヤ３３，３４の芯材が露出し、ワイヤ３３，３４は端子電極５３の継線部６３ｂに圧着されて電気的に接続される。

本実施形態のコイル装置１においては、各端子電極５１～５６の継線部６３ａ，６３ｂが実装部６５よりコイル部３０の軸心Ａ側に配置されている。それぞれ３個の端子電極５１～５３または５４～５６が配置される鍔部１２，１２においては、図６Ｂに示すように、一方の鍔部１２について、それぞれ２つのヒータＨ１，Ｈ２を用いて熱圧着してもよいし、単一のヒータで、熱圧着する位置を変えて４本のワイヤ３１～３４の熱圧着を行ってもよい。

本実施形態では、たとえば第２端子電極５２の継線部６３ａと第３端子電極５３の継線部６３ｂとがともに内側に配置されているため、これらを幅広の１つのヒーターＨ２により、同じ方向に巻回してあるワイヤ３２および３４の端部を、同時的に熱圧着することもできる。したがって、コイル装置１においては、ワイヤ３１～３４の端部３１ａ～３４ａ，３１ｂ～３４ｂを端子電極５１～５６に熱圧着する製造工程を容易にすることもできると共に、製造装置を簡単にすることも可能である。

ワイヤ３１～３４の両端部３１ａ～３４ａ，３１ｂ～３４ｂの端子電極５１～５６への熱圧着が終了した後、ワイヤ端部３１ａ～３４ａ，３１ｂ～３４ｂの継線部分から先を切断する。

本実施形態のコイル装置１においては、端子電極５１～５６に、継線部６３ａ（６３ｂ）と実装部６５とを別個に設けているため、ワイヤ３１～３４の一端を端子電極５１～５６の継線部６３ａ（６３ｂ）に熱圧着する際に、継線部６３ａ（６３ｂ）で生じるおそれがある被膜カスが実装部６５に付着するおそれが少なくなる。その結果、コイル装置１を回路基板（図示省略）などに実装するとき、端子電極５１～５６の実装面６３ａ（６３ｂ）と基板などとを接続するハンダなどの接続部材にボイドなどが発生するおそれが少なくなり、クラックの発生が抑制され、接続信頼性が向上する。

また、端子電極５１～５６に、継線部６３ａ（６３ｂ）と実装部６５とを別個に設けているため、熱圧着による継線時の熱の影響が実装部６５に及び難くなり、実装部６５の表面のＳｎ層（ハンダなどの接続部材との密着性を向上させる層）が溶けるおそれが少なくなる。その結果、コイル装置１を基板などに実装する際に、端子電極５１～５６の実装部とハンダなどの接続部材との密着性が良好となり、接合強度が向上する。

また、実装部６５は、鍔部１２の外周方向（本実施形態ではＹ軸方向）に沿って継線部６３ａ（６３ｂ）に対して巻芯部１１の軸芯Ａから離れる側に位置ズレして継線部６３ａ（６３ｂ）に連続して形成されるため、継線部６３ａ（６３ｂ）が巻芯部１１に近くなり、継線部６３ａ（６３ｂ）から巻芯部１１までのワイヤの引出長さを短くすることが可能になり、コイル装置１の直流内部抵抗を低くすることができる（低ＤＣＲ化）。

しかも本実施形態では、継線部６３ａ（６３ｂ）は、実装部６５の巻芯部１１側の縁部に連続して形成してあるので、継線部６３ａ（６３ｂ）がさらに巻芯部１１に近くなり、継線部６３ａ（６３ｂ）から巻芯部１１までのワイヤ３１～３４の引出長さを短くすることが可能になり、さらに低ＤＣＲ化を図ることができる。

さらに、実装部６５は、鍔部１２の外周方向に沿って継線部６３ａ（６３ｂ）に対して巻芯部１１の軸芯Ａから離れる側に位置ズレして継線部６３ａ（６３ｂ）に連続して形成されるため、継線部６３ａ（６３ｂ）が、コイル装置１の鍔部１２の外側（巻芯部１１の軸芯Ａから離れる側）に飛び出すことがない。したがって、コイル装置１のコンパクト化が図れると共に、コイル装置１の搬送や取り扱いが容易になると共に、実装時の取り扱い性も向上する。

また、実装部６５は段差部６４を介して継線部６３ａ（６３ｂ）に近接して形成してあるため、さらに低ＤＣＲ化を図ることができる。さらに、鍔部１２の高さ方向（Ｚ軸方向）に沿って、継線部６３ａ（６３ｂ）は、実装部６５より低い位置に配置されている。このため、継線部６３ａ（６３ｂ）で生じるおそれがある被膜カスが実装部６５に付着するおそれがさらに少なくなる。また、熱圧着による継線時の熱の影響が実装部６５にさらに及び難くなる。さらにコイル装置１の基板などへの実装時には、端子電極の継線部６３ａ（６３ｂ）ではなく、実装部６５が基板の接続箇所に最初に接触するので、端子電極５１～５６の実装部６５と基板との接続強度が向上すると共に接続信頼性も向上する。

また、継線部６３ａ（６３ｂ）と実装部６５との間には、段差部６４が形成されているため、段差部６４は、巻芯部１１へのワイヤ３１～３４の巻始めまたは巻き終わり時のワイヤ３１～３４の端部（リード）の横ずれ防止機能を果たし、ワイヤ３１～３４の端部を適切に継線部６３ａ（６３ｂ）に接続することができる。また、段差部６４があることで、継線部６３ａ（６３ｂ）で生じるおそれがある被膜カスが実装部６５に付着するおそれがさらに少なくなる。

さらに本実施形態では、端子電極５１～５６において、継線部６３ａ（６３ｂ）の面積は、実装部６５の面積より小さい。このような構成とすることで、継線部６３ａ（６３ｂ）の熱容量を相対的に小さくすることができ、ワイヤ３１～３４の熱圧着時の熱が実装部６５に与える影響を小さくできる。

しかも本実施形態では、継線部６３ａ（６３ｂ）の巻芯部１１側の縁部６７と、鍔部１２の巻芯部１１側の内側面１３との間には、鍔部１２の外周面が露出している露出面２３ａ～２３ｃが形成してあり、露出面２３ａ～２３ｃは、面取りしてある。このように構成することで、ワイヤ３１～３４の端部が継線部６３ａ（６３ｂ）の巻芯部１１側の縁部６７に当接する角度を大きくすることが可能になり（たとえば図２参照）、ワイヤ３１～３４の引出端部（リード）に対するダメージを低減することができる。

なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。

たとえば、上述した実施形態において、実装側面２０，２０は、凹凸の無い平らな面に構成してもよい。すなわち、実装側面２０，２０に、第１領域２１ａ～２１ｃより高い第２領域２２ａ～２２ｃを形成しなくてもよい。第２領域２２ａ～２２ｃが形成されない場合、端子電極５１～５６それぞれの実装部６５と実装側面２０との間は空間となる。しかし、この場合も、端子部材６１，６２は、図５Ａおよび図５Ｂに示す形状に維持される。

さらに、上述した実施形態では、一対の鍔部１２，１２の実装側面２０と反対側の面には、これらの鍔部１２，１２を磁気的に連絡する板状のコアが接合されていないが、板状のコアを接着などの手段で接合してもよい。

また、上述した実施形態では、入力側および出力側それぞれの中間タップとして第３端子電極５３および第６端子電極５６を形成しているが、用途によっては中間タップを省略してもよい。その場合には、第３端子電極５３および第６端子電極５６は不要となると共に、２本のワイヤによりコイル装置（パルストランス）を構成可能になる。

また、上述した実施形態では、ＬＡＮケーブルなどを介したパルス信号の伝送に使用するパルストランスとして好適な装置として本発明を説明したが、本発明の用途はこれに限られない。本発明は、たとえばコモンモードフィルタなど他のコイル装置にも適用可能であると共に、熱圧着または熱圧着以外の方法によりワイヤのリードを端子電極に継線する全ての電子部品に適用可能である。

１…コイル装置
１０…ドラムコア（コア部材）
１１…巻芯部
１２…鍔部
１３…内側面
１４…外側面
２０…実装側面
２１ａ～２１ｃ…第１領域
２２ａ～２２ｃ…第２領域
２３ａ～２３ｃ…露出面
３０…コイル部
３１～３４…ワイヤ
３１ａ～３４ａ，３１ｂ～３４ｂ…端部（リード）
５１～５６…端子電極
６１，６２…端子部材
６３ａ，６３ｂ…継線部
６４…段差部
６５…実装部
６６…設置部
６７…継線部の縁部

Claims (11)

1. 巻芯部と鍔部とを有するコア部材と、
   前記巻芯部に巻回され一端が前記鍔部に位置するワイヤと、
   前記鍔部に具備される複数の端子電極とを有するコイル装置であって、
   前記端子電極は、導電性の板状部材で構成され、
   前記端子電極は、前記ワイヤの一端が接続される継線部と、前記鍔部の外周方向に沿って前記継線部に対して前記巻芯部の軸芯から離れる側に位置ズレして前記継線部に近接して連続して形成される実装部と、前記実装部に連続して形成され前記鍔部の外側面に固定される設置部とを有し、
   前記実装部は、前記実装部が配置される前記鍔部の実装側の外面に対して移動可能であるコイル装置。
2. 前記鍔部の高さ方向に沿って、前記継線部は、前記実装部より低い位置に配置されている請求項１に記載のコイル装置。
3. 前記継線部と前記実装部との間には、段差部が形成されている請求項２に記載のコイル装置。
4. 前記鍔部は、前記継線部が配置される第１領域と、前記実装部が配置される第２領域とを有する請求項１～３のいずれかに記載のコイル装置。
5. 前記端子電極において、前記継線部の面積は、前記実装部の面積より小さい請求項１～４のいずれかに記載のコイル装置。
6. 前記巻芯部の軸心方向に沿って、前記継線部の幅は、前記実装部の幅より狭い請求項５に記載のコイル装置。
7. 前記継線部は、前記実装部の前記巻芯部側の縁部に連続して形成してある請求項５または６に記載のコイル装置。
8. 前記継線部の前記巻芯部側の縁部と、前記鍔部の前記巻芯部側の内側面との間には、前記鍔部の外周面が露出している露出面が形成してある請求項１～７のいずれかに記載のコイル装置。
9. 前記露出面が面取りしてある請求項８に記載のコイル装置。
10. 前記鍔部に具備される複数の前記端子電極の内の一つは、他の端子電極の継線部の幅よりも広い幅の幅広継線部を有し、当該幅広継線部には、二本以上のワイヤの端が、前記鍔部の外周方向に並んで接続される請求項１～９のいずれかに記載のコイル装置。
11. 請求項１～１０のいずれかに記載のコイル装置を有するパルストランス。
    

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