JP6830340B2 - コイル部品 - Google Patents

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Description

この発明は、コイル部品に関するもので、特に、ワイヤを巻回した巻芯部と巻芯部の各端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部とを有するドラム状コア、ならびに第1および第2の鍔部間に渡された板状コアを備える、コイル部品に関するものである。
この発明にとって興味ある技術として、たとえば特開2015−65272号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1には、小さなサイズであっても、大きなインダクタンス値を実現できる、コイル部品としてのパルストランスを提供することを目的とし、この目的を達成するため、以下のよう構成を有するパルストランスが記載されている。
すなわち、特許文献1に記載のパルストランスは、ドラム状コアおよび板状コアと、それぞれドラムコアの巻芯部に巻回されてパルストランスの一次巻線を構成する第1および第2のワイヤと、それぞれ巻芯部に巻回されてパルストランスの二次巻線を構成する第3および第4のワイヤとを備える。そして、上述の目的を達成するため、ドラムコアの第1の鍔部の上面、ドラムコアの第2の鍔部の上面、ならびに板状コアの下面のうち第1および第2の鍔部の各々の上記上面にそれぞれ対向する部分は、それぞれ研磨されていることを特徴としている。
また、特許文献1では、上記第1ないし第4のワイヤそれぞれのうち巻芯部に巻回された部分と板状コアとの間に接着剤を配置することが記載されている。この構成によれば、接着剤充填用の溝を第1および第2の鍔部や板状コアにわざわざ設けなくてもよく、その分、上述したインダクタンス値を高めることができる。
特開2015−65272号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術には、以下のような解決されるべき課題がある。
まず、ドラムコアの第1の鍔部の上面、ドラムコアの第2の鍔部の上面、ならびに板状コアの下面のうち第1および第2の鍔部の各々の上記上面にそれぞれ対向する部分は、研磨されなくてはならないが、このような研磨に際しては、研磨工程−洗浄工程−乾燥工程というように、煩雑な複数の工程を経なければならないため、生産性が非常に低い。
また、板状コアを固定する接着剤がワイヤ上にしか塗布されない構成のため、ドラム状コアに対する板状コアの固着力が低い。また、この場合、外力や熱などにより板状コアがずれてしまうと、ワイヤの巻き乱れ、変形、断線が発生する可能性がある。さらに、ドラム状コアに対する板状コアの位置精度が低いことにより、インダクタンス値のばらつきや経時変化が発生する可能性もある。
この発明の目的は、煩雑な工程を経ることなく製造することができ、ドラム状コアに対する板状コアの固着力の低下を抑制した、コイル部品を提供しようとすることである。
この発明に係るコイル部品は、
巻芯部ならびに巻芯部の各端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有する、磁性体からなるドラム状コアと、
互いに逆方向に向く第1および第2の主面を有し、第1および第2の鍔部間に渡された、磁性体からなる板状コアと、
第1の鍔部に設けられた少なくとも1つの第1の端子電極と、
第2の鍔部に設けられた少なくとも1つの第2の端子電極と、
巻芯部に巻回され、かつ第1の端子電極と第2の端子電極との間に接続された、少なくとも1本のワイヤと、
を備えている。
このような構成のコイル部品において、本件発明者らは、上記第1および第2の鍔部の各々は、板状コアの第1の主面に対向する天面を有し、板状コアの第1の主面と第1および第2の鍔部の天面との間に、粒径が50nm以上かつ1000nm以下の磁性粉を分散させた樹脂存在させることに注目した
上述した磁性粉を分散させた樹脂はドラム状コアと板状コアとの接着剤として機能し、磁性粉は接着剤中で骨材として機能するとともに、鍔部と板状コアとの間の磁気抵抗の低減に寄与する。ここで、磁性粉の粒径の下限値を50nmとしたのは、50nm未満では、磁性粉が凝集しやすく、磁性粉が凝集した場合には、磁性粉入り樹脂が接着剤として機能しなくなるためである。また、磁性粉の粒径の上限を1000nmとしたのは、1000nmを超えると、板状コアの第1の主面と第1および第2の鍔部の天面との間隔が広くなりすぎ、磁気抵抗低減効果が減殺されるためである。
述した磁性粉を分散させた樹脂は、板状コアの第1の主面と第1および第2の鍔部の天面とが対向する全域にわたって存在していることが好ましい。この構成は、鍔部と板状コアとの間の磁気抵抗の低減により大きく寄与する。
この発明では、前述した技術的課題を解決し、接着剤としての機能を高めるため、磁性粉の粒径は300nm以上かつ400nm以下とされる。
また、この発明では、さらに、樹脂および磁性粉の合計量に対する磁性粉の添加量は、10.9体積%以上かつ36体積%以下とされることを特徴としている
この発明において、板状コアの第1の主面と第1および第2の鍔部の天面との間隔は、2μm以上かつ50μm以下であることが好ましい。板状コアの第1の主面と第1および第2の鍔部の天面との間隔が50μm以下であれば、所望のインダクタンス値を確保することができる。また、上記間隔が2μm以上であると、板状コアの第1の主面と第1および第2の鍔部の天面との間隔を強制的に小さくするための加圧工程などが不要であるとともに、当該間隔を規定する板状コアの第1の主面ならびに第1および第2の鍔部の天面に対する設計の自由度および加工工程の自由度を高くすることができる。
この発明において、ドラム状コアおよび板状コアがフェライトのような焼結体から構成されるとき、少なくとも板状コアの第1の主面と第1および第2の鍔部の天面とには、微細な凹部が存在している。この場合、磁性粉の一部は、樹脂の一部とともに凹部内に入り込んでいることが好ましい。磁性粉の凹部内への入り込みは、アンカー効果をもたらし、そのため、板状コアのドラム状コアに対する固着力を向上させることができる。また、磁性粉の凹部内への入り込みは、ドラム状コアの鍔部と板状コアとの間の磁気抵抗をさらに低減する。
この発明によれば、研磨によらず鍔部と板状コアとの間の磁気抵抗を低減できるため、研磨工程を含む煩雑な複数の工程を経ることなく製造することができ、磁性粉が骨材として機能するため、ドラム状コアに対する板状コアの固着力の低下を抑制した、コイル部品を得ることができる。
この発明の一実施形態によるコイル部品1を示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図である。 図1に示したコイル部品1の試作品における一方の鍔部4と板状コア6との接合部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。 板状コアの鍔部に対する固着力を測定するために用いた割込みピン17を示す正面図である。
図1を参照して、この発明の一実施形態によるコイル部品1について説明する。
図1に示すように、コイル部品1は、たとえばフェライト等の磁性体からなるドラム状コア2を備える。ドラム状コア2は、巻芯部3ならびに巻芯部3の各端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部4および5を有する。
コイル部品1は、また、上記第1および第2の鍔部4および5間に渡された板状コア6を備える。板状コア6は、互いに逆方向に向く第1および第2の主面7および8を有する。ドラム状コア2の場合と同様、板状コア6も、たとえばフェライト等の磁性体からなり、それによって、板状コア6は、ドラム状コア2と協働して、閉磁路を構成する。
第1および第2の鍔部4および5は、それぞれ、実装時において実装基板(図示せず。)側に向けられる底面9および10と、底面9および10の反対側の天面11および12と、を有している。第1および第2の鍔部4および5の天面11および12は、板状コア6の第1の主面7に対向している。
第1の鍔部4の底面9側には、第1の端子電極13が設けられ、第2の鍔部5の底面10側には、第2の端子電極14が設けられる。端子電極13および14は、たとえば、Ag粉末等の導電性金属粉末を含む導電性ペーストを印刷し、次いで、これを焼き付け、さらに、NiめっきおよびSnめっきを施すことによって形成される。あるいは、端子電極13および14は、たとえば、タフピッチ銅またはリン青銅等の銅系金属からなる導電性金属片を鍔部4および5に貼り付けることによって形成されてもよい。
巻芯部3には、ワイヤ15が巻回される。ワイヤ15は、たとえば、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドのような樹脂によって絶縁被覆されたCu線からなる。ワイヤ15の一方端は第1の端子電極13に接続され、同じく他方端は第2の端子電極14に接続される。端子電極13および14とワイヤ15との接続には、たとえば熱圧着や超音波溶着、レーザ溶着などが適用される。
板状コア6の第1の主面7と第1および第2の鍔部4および5の天面11および12との間には、磁性粉を分散させた樹脂16が存在している。この磁性粉入り樹脂16は、接着剤として機能するもので、好ましくは、板状コア6の第1の主面7と第1および第2の鍔部4および5の天面11および12とが対向する全域にわたって存在している。なお、図1において、磁性粉入り樹脂16は、これを図示可能とするため、その厚みが誇張されて図示されている。磁性粉入り樹脂16の厚み、すなわち、板状コア6の第1の主面7と鍔部4および5の天面11および12との間隔の好ましい範囲については後述する。
磁性粉入り樹脂16における樹脂としては、硬化性樹脂、可塑性樹脂、ゴム、エストラマーなどを用いることができるが、耐熱性の観点からは、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などの硬化性樹脂であることが好ましく、たとえば、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂などが用いられる。また、磁性粉としては、磁性金属や磁性酸化物などを用いることができるが、使用環境の観点からは、常温で強磁性を有する金属や酸化物であることが好ましく、たとえば、ニッケル粉、コバルト粉、鉄粉、鉄−ニッケル系フェライト粉、鉄−亜鉛系フェライト粉などが用いられる。
上述した磁性粉の粒径は、50nm以上かつ1000nm以下である。ここで、粒径は、メジアン径と呼ばれるD50で表わしたものである。なお、粒径は、コイル部品1を研磨した断面をSEMにて観察して測定すればよい。具体的には、磁性粉入り樹脂16の任意の3μm×3μmの領域に相当するSEM写真内の粒子につき、SEM写真内のスケールを指標として、粒子の長手方向を測長して求めることができる。磁性粉入り樹脂16における磁性粉は骨材として機能するとともに、磁性粉入り樹脂16の透磁率向上に寄与する。上述のように、磁性粉の粒径の下限値を50nmとしたのは、50nm未満では、磁性粉が凝集しやすく、磁性粉が凝集した場合には、磁性粉入り樹脂16が接着剤として機能しなくなるためである。また、磁性粉の粒径の上限を1000nmとしたのは、1000nmを超えると、板状コア6の第1の主面7と鍔部4および5の天面11および12との間隔が広くなりすぎ、磁気抵抗低減効果が減殺されるためである。ここで、板状コア6の第1の主面7と鍔部4および5の天面11および12との間隔が広くなりすぎるのは、当該間隔の最小値が磁性粉の粒径によって支配されることに起因する。すなわち、磁性粉の粒径が大きくなると、それに応じて、当該間隔が広くなる。
なお、この発明では、上述した磁性粉の粒径は、300nm以上かつ400nm以下とされる。
樹脂および磁性粉の合計量に対する磁性粉の添加量は、磁性粉による骨材としての効果を高めるためには、最低5体積%が必要であり、他方、磁性粉の凝集を生じさせにくくするためには、40体積%以下でなければならないことが本件発明者の経験則から見出されている。
なお、この発明では、樹脂および磁性粉の合計量に対する磁性粉の添加量は、10.9体積%以上かつ36体積%以下とされる。
ここで、磁性粉の添加量は、磁性粉入り樹脂をSEM-EDAXで金属成分を定量測定して求めることができる。なお、上記SEM-EDAXで判断できない場合には、磁性粉入り樹脂をICP-AESで金属成分を定量測定することができる。
ドラム状コア2および板状コア6は、前述したように、フェライトのような焼結体から構成される。この場合、少なくとも板状コア6の第1の主面7と第1および第2の鍔部4および5の天面11および12とには、微細な凹部が存在している。図2は、コイル部品1の試作品における一方の鍔部4と板状コア6との接合部分を撮影した顕微鏡写真を示している。図2において、磁性粉入り樹脂16中に分散している磁性粉は、白っぽい粒として写っている。
図2のように、磁性粉の一部は、樹脂の一部とともに凹部内に入り込んでいることが好ましい。磁性粉の凹部内への入り込みは、アンカー効果をもたらし、そのため、板状コア6のドラム状コア2に対する固着力を向上させることができる。また、磁性粉の凹部内への入り込みは、ドラム状コア2の鍔部4および5と板状コア6との間の磁気抵抗をさらに低減する。
以下に、この発明に係る磁性粉入り樹脂16に含まれる磁性粉の粒径および添加量に関して、好ましい範囲を求めるために実施したコイル部品1の実験例について説明する。
[実験例1]
実験例1では、磁性粉の粒径について、好ましい範囲を求めた。
磁性粉として、後掲の表1の「磁性粉粒径」の欄に示すような粒径を有する東邦チタニウム社製ニッケル粉を用いた。なお、表1の試料4では、粒径140nmのニッケル粉と粒径400nmのニッケル粉とを重量比で1:2の割合で混合したものを用いた。
試料1〜4では、上記ニッケル粉を、樹脂およびニッケル粉の合計量に対するニッケル粉の添加量が32.5体積%となるように、樹脂としての一液性硬化型エポキシ樹脂中に分散させ、磁性粉入り樹脂を用いた。試料5では、磁性粉を含まず、樹脂のみを用いた。
実験例1では、ドラム状コアと板状コアとの接合に上記磁性粉入り樹脂または樹脂を用いた。ここで、樹脂の硬化のため、温度160℃で7分間の硬化条件を適用した。また、実験例1では、ドラム状コアの鍔部の天面と板状コアの第1の主面との間隔を4μmに設定した。
得られた試料1〜5につき、表1に示すように、「固着力」および「L値」を評価した。
「固着力」は以下のように測定した。ワイヤを巻く前の状態で、巻芯部と板状コアとの隙間の間隔は0.5mmであった。他方、図3に示すような形状の割込みピン17を用意した。割込みピン17は、先端が0.2mmの径を有し、基部が1mmの径を有するものである。上記隙間に割込みピン17を5mm/分の速度で押し込み、力が解放された時点、すなわち破壊が生じた時点での数値を「固着力」として読み取り、その数値が車載部品の信頼性を規定するAEC−Q200の強度下限値(17.7N)に対して十分なマージンを得られているかを確認した。なお、表1の「固着力」に記載した括弧内の数値は、試料1〜4では、試料数10の平均値であり、試料5では、試料数5の平均値である。
「L値」は、周波数:100kHz、重畳条件:DC8mA、使用設備:インピーダンスアナライザ(アジレントテクノロジー社製、型式:4294A)の測定条件の下で測定したインダクタンス値である。表1に示した「L値」は、試料数5の平均値である。
Figure 0006830340
表1に記載したように、「磁性粉粒径」が140nm以上であるとき、AEC−Q200規格を満足することが確認できている。このことから、「磁性粉粒径」が140nm以上であれば、接着剤としての機能を十分に果たし得ることがわかる。
なお、「磁性粉粒径」を試料2〜4のように300nm以上かつ400nm以下とすれば、磁性粉を含まない、言わば従来例に相当する試料5の「固着力」である82.4Nを超える「固着力」を実現できることがわかる。
「L値」についても、上記「固着力」と同様の傾向を示している。すなわち、「磁性粉粒径」を試料2〜4のように300nm以上かつ400nm以下とすれば、磁性粉を含まない、言わば従来例に相当する試料5の「L値」である182.1μHを超える「L値」を実現できることがわかる。
なお、表1では示していないが、上記試料1〜5において、「固着力」の測定のために生じさせた破壊は、磁性粉入り樹脂の部分ではなく、すべてドラム状コアまたは板状コアの部分で生じていた。このことからも、試料1〜5において、強い「固着力」が得られていることがわかる。
また、試料1〜5につき、信頼性確認試験を実施した。より具体的には、高温保存(150℃で2000時間、および175℃で2000時間)、高温高湿保存(85℃、85%で2000時間)、ならびに熱衝撃(−40℃/+125℃を2000サイクル、および−55℃/+150℃を2000サイクル)の各試験を実施した。その結果、試料1〜5のいずれについても、良好な結果が得られ、磁性粉の添加による信頼性低下は認められなかった。
[実験例2]
実験例2では、磁性粉の添加量について、好ましい範囲を求めた。
磁性粉として、300nmの粒径を有する東邦チタニウム社製ニッケル粉を用いた。これを、後掲の表2の「磁性粉添加量」の欄に示す添加量をもって、樹脂としての一液性硬化型エポキシ樹脂中に分散させ、磁性粉入り樹脂を作製した。なお、試料10では、磁性粉を含まず、樹脂のみを用いた。なお、「磁性粉添加量」は、樹脂および磁性粉の合計量に対する磁性粉の添加量を体積%で示したものである。
実験例2では、ドラム状コアと板状コアとの接合に上記磁性粉入り樹脂または樹脂を用いた。ここで、樹脂の硬化条件は、実験例1の場合と同様とした。また、実験例2では、ドラム状コアの鍔部の天面と板状コアの第1の主面との間隔を4μmに設定した。
得られた試料6〜10につき、表2に示すように、「固着力」、「L値」および「破壊モード」を評価した。「固着力」および「L値」の各々の測定条件は、実験例1の場合と同様とした。「破壊モード」の評価は、「固着力」の測定のために生じさせた破壊がどの部分で生じているかを評価したものであり、ドラム状コアまたは板状コアの部分で生じていた場合には「A」とし、磁性粉入り樹脂または樹脂の部分で生じていた場合には「B」とし、表2では、全試料数10について、[Aの試料数]/[Bの試料数]の比率を「A/B」として表示した。
Figure 0006830340
表2から、試料6〜9のように、「磁性粉添加量」が10.9体積%以上かつ36体積%以下であるとき、113.9N以上の「固着力」が得られ、264.7μH以上の「L値」が得られることが確認できる。
また、試料6〜10間の比較から、「磁性粉添加量」が多くなるに従い、「A/B」が大きくなり、破壊がドラム状コアまたは板状コアの部分で生じる割合が高くなることがわかる。
なお、表2に示した試料6〜9は、すべて「磁性粉粒径」が300nmであるので、表2の試料8は、「磁性粉添加量」が32.5体積%であり、「磁性粉粒径」が300nmである。他方、表1に示した試料1〜4は、すべて「磁性粉添加量」が32.5体積%であるので、表1の試料2は、表2の試料8と同様、「磁性粉添加量」が32.5体積%であり、「磁性粉粒径」が300nmということになる。すなわち、磁性粉入り樹脂に関する条件については、表1の試料2と表2の試料8とは同じである。
他方、表1の試料2と表2の試料8とについて、「固着力」、「L値」および「破壊モード」を比較すると、試料2と試料8間で異なる結果が得られている。
まず、「L値」については、実験例1と実験例2とにおいてコイル部品1の構成、具体的にはドラム状コア、板状コア、ワイヤの巻芯部への巻回態様を変えているためである。
次に、「固着力」については、試料2と試料8間で異なる結果が得られているが、差異は小さく、これはばらつきの範囲であると考えられる。逆に、このことから、実験例1や実験例2のように、コイル部品1の具体的な構成が異なる場合であっても、ドラム状コアに対する板状コアの固着力の低下を抑制できていることから、本発明では、コイル部品1の具体的な構成によらずに効果が発揮されることが示される。
[実験例3]
実験例3では、前述の試料6〜8および10に係る磁性粉入り樹脂または樹脂を用いて、板状コアの第1の主面と第1および第2の鍔部の天面との間隔を2μmおよび50μmにそれぞれ設定したときのコモンモードチョークコイルのL値を調査した。その結果が表3に示されている。
Figure 0006830340
表3から、間隔が2μmと小さい場合には、磁性粉添加量の違いがL値にあまり影響を及ぼさないが、間隔が50μmと大きくなると、磁性粉添加量の違いがL値に比較的大きな影響を及ぼすことがわかる。
また、表3においてL値を表わす数値を破線で囲んだ、試料8の間隔「50μm」と試料10の間隔「2μm」とを比較すれば、試料8のように、間隔が50μmと大きい場合であっても、磁性粉の添加により、無添加の試料10を超えるL値を確保できることがわかる。
以上説明した実験例では、磁性粉としてニッケル粉を用い、また、樹脂として一液性硬化型エポキシ樹脂を用いたが、他の磁性粉および他の樹脂でも同様の結果が得られることが確認されている。
また、この発明において、コイル部品は、単一のコイルを構成するものであっても、パルストランスやコモンモードチョークコイルなどの複数のコイルによって構成されるものであってもよい。したがって、ワイヤの数も任意であり、それに応じて、各鍔部に設けられる端子電極の数も任意である。
1 コイル部品
2 ドラム状コア
3 巻芯部
4,5 鍔部
6 板状コア
7 第1の主面
8 第2の主面
11,12 天面
13,14 端子電極
15 ワイヤ
16 磁性粉入り樹脂

Claims (4)

  1. 巻芯部ならびに前記巻芯部の各端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有する、磁性体からなるドラム状コアと、
    互いに逆方向に向く第1および第2の主面を有し、前記第1および第2の鍔部間に渡された、磁性体からなる板状コアと、
    前記第1の鍔部に設けられた少なくとも1つの第1の端子電極と、
    前記第2の鍔部に設けられた少なくとも1つの第2の端子電極と、
    前記巻芯部に巻回され、かつ前記第1の端子電極と前記第2の端子電極との間に接続された、少なくとも1本のワイヤと、
    を備え、
    前記第1および第2の鍔部の各々は、前記板状コアの前記第1の主面に対向する天面を有し、
    前記板状コアの前記第1の主面と前記第1および第2の鍔部の前記天面との間には、粒径が300nm以上かつ400nm以下の磁性粉を分散させた樹脂が存在していて、
    前記樹脂および前記磁性粉の合計量に対する前記磁性粉の添加量は、10.9体積%以上かつ36体積%以下である、
    コイル部品。
  2. 前記磁性粉を分散させた樹脂は、前記板状コアの前記第1の主面と前記第1および第2の鍔部の前記天面とが対向する全域にわたって存在している、請求項1に記載のコイル部品。
  3. 前記板状コアの前記第1の主面と前記第1および第2の鍔部の前記天面との間隔は、2μm以上かつ50μm以下である、請求項1または2に記載のコイル部品。
  4. 少なくとも前記板状コアの前記第1の主面と前記第1および第2の鍔部の前記天面とには、微細な凹部が存在していて、前記磁性粉の一部は、前記樹脂の一部とともに前記凹部内に入り込んでいる、請求項1ないしのいずれかに記載のコイル部品。
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