(第1実施形態)
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。第1実施形態では、回転電機としてのモータ10を例示して説明する。
図1に示すモータ10は、永久磁石界磁型のものであり、具体的には3相巻線を有する永久磁石界磁型同期機である。つまり、モータ10は、ブラシレスモータである。この3相巻線は2系統有していてもよい。モータ10は、ハウジング20と、ハウジング20に固定される固定子30と、固定子30に対して回転する回転子40と、回転子40が固定される回転軸11と、を備える。以下、本実施形態において、軸方向とは、回転軸11の軸方向のことを示す(図において矢印Y1で示す)。径方向とは、回転軸11の径方向のことを示す(図において矢印Y2で示す)。周方向とは、回転軸11の周方向のことを示す(図において矢印Y3で示す)。
ハウジング20は、円筒形状に形成されており、ハウジング20内には、固定子30及び回転子40等が収容されている。ハウジング20には、軸受け23,24が設けられており、この軸受け23,24により回転軸11が回転自在に支持されている。ハウジング20の内周面の軸心は、回転軸11と同軸となっている。回転軸11の先端側には、角度センサ12が設けられている。角度センサ12は、磁気センサでもレゾルバでもよい。
固定子30は、ハウジング20の軸方向略中央において、ハウジング20の内周に沿って円筒状に設けられている。そして、固定子30は、回転軸11の軸心Oを中心にして、ハウジング20の内周面に固定されている。固定子30は、磁気回路の一部を構成するものであり、円環状をなし回転子40の外周側において径方向に対向して配置される固定子鉄心31(電機子鉄心、電機子コア、ステータコア)と、固定子鉄心31に巻回された固定子巻線32(電機子巻線、アーマチャコイル)とを有している。
図2に示すように、固定子鉄心31は、円環状のバックヨーク33と、バックヨーク33から径方向から回転軸11に向かって突出し、周方向に並べて配列された複数のティースT1~T18とを有し、隣り合うティースT1~T18の間にスロット35(ステータスロット)が形成されている。また、各々のティースT1~T18の径方向先端には、それぞれティースT1~T18の周方向幅寸法に比較して幅広となり、回転子40に対向する対向部としての鍔部70を有する。
固定子鉄心31においてスロット35は周方向に並べて設けられ、そのスロット35に固定子巻線32が巻回される。本実施形態では、ティースT1~T18の数を「18」とし、スロット35の数を「18」としている。説明の都合上、各ティースT1~T18には、周方向の配列順で反時計回りに符号T1~18を付する。固定子巻線32は、当該スロット35に収容され保持されている。そして、固定子巻線32は、電力(交流電力)が供給されることで磁束を発生する。
固定子鉄心31は、円環状をなす複数の薄板状の磁性体である鋼板(コアシート)を、固定子鉄心31の軸方向に積層して形成された一体型のものである。鋼板は、帯状の電磁鋼板材をプレス打ち抜きすることで形成される。
回転子40は、磁気回路の一部を構成するものであり、周方向に1又は複数対の磁極を有し、固定子30に対して径方向に対向するように配置される。本実施形態において、回転子40は、14個の(すなわち、磁極対数が7個となる)磁極を有する界磁部に相当する。回転子40は、磁性体からなる回転子鉄心41と、回転子鉄心41に固定される永久磁石42と、を備える。具体的には、図2に示すように、回転子40は、周方向に極性が交互となるように磁石部としての永久磁石42を14個備えており、回転子鉄心41に軸方向に沿って設けられた収容孔に永久磁石42が埋め込まれている。
回転子40は、周知の構成でよく、例えば、IPM型(Interior Permanent Magnet:埋め込み磁石型)の回転子であっても、SPM型(Surface Permanent Magnet:表面磁石側)の回転子であってもよい。また、回転子40として、界磁巻線側の回転子を採用してもよい。本実施形態では、IPM型の回転子を採用している。回転子40には、回転軸11が挿通され、回転軸11を中心にして回転軸11と一体回転するように回転軸11に固定されている。
モータ10には、制御装置50が接続されている。制御装置50は、CPU、ROM、RAM及びI/O等を備えたマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPUがROMに記憶されているプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。なお、各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。
制御装置50が備える機能としては、例えば、外部(例えばバッテリ)からの電力を変換し、モータ10に供給して駆動力を発生させる機能を有する。また、例えば、制御装置50は、角度センサ12から入力された回転角度に関する情報を利用して、モータ10の制御(電流制御など)を行う機能を備える。
また、制御装置50には、図3に示すように、第1のインバータ回路51及び第2のインバータ回路52が設けられている。第1のインバータ回路51は、それぞれ3相の相数と同数の上下アームを有するフルブリッジ回路により構成されている。制御装置50は、各アームに設けられたスイッチング素子のオンオフにより、各相における電流を制御する。
詳しく説明すると、図3に示すように、第1のインバータ回路51は、U相、V相及びW相からなる3相において、スイッチング素子としての上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの直列接続体をそれぞれ備えている。本実施形態では、各相における上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、具体的にはIGBTを用いている。なお、MOSFETを用いてもよい。各相における上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnには、それぞれフリーホイールダイオード(還流ダイオード)Dp,Dnが逆並列に接続されている。
各相の上アームスイッチSpの高電位側端子(コレクタ)は、バッテリの正極端子に接続されている。また、各相の下アームスイッチSnの低電位側端子(エミッタ)は、バッテリの負極端子(グランド)に接続されている。各相の上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの間の中間接続点は、それぞれ固定子巻線32の一端(引出線A1,B1,C1)に接続されている。なお、第2のインバータ回路52も第1のインバータ回路51と同様であるため、詳細な説明は省略する。
次に、固定子巻線32の巻回方法について詳しく説明する。固定子巻線32は、3相の各相をそれぞれ表すU相、V相、及びW相の固定子巻線32に分類される。図4及び図5に示すように、U相の固定子巻線32は、8個の部分巻線+U11,+U12,-U13,-U14,-U21,+U22,+U23,-U24により構成されている。V相の固定子巻線32は、8個の部分巻線-V11,+V12,+V13,-V14,+V21,-V22,-V23,+V24により構成されている。U相の固定子巻線32は、8個の部分巻線+W11,-W12,-W13,+W14,+W21,-W22,-W23,+W24により構成されている。
また、24個の部分巻線は、図2及び図4に示すように、各ティースT1~T18に対応して、+U11、+V21、+W11/-V22、-W12、-U21、-V11/+U22、+V12、+W21、+U12/-W22、-U13、-V23、-W13/+V24、+W14、+U23、+V13/-U24、-V14、-W23、-U14/+W24の順番で配置されている。
なお、「+」及び「-」の符号は、電流の向き、すなわち、部分巻線により生じる界磁の極性を示す。例えば、本実施形態の図2において、紙面手前側から奥側への電流の流れを「+」とした場合、奥側から手前側への電流の流れが「-」となる。つまり、固定子巻線32に電流が流れた場合、「+」の部分巻線と、「-」の部分巻線とは、径方向に反対となる起磁力が生じることを意味する。「+」の部分巻線と、「-」の部分巻線とは、電気角で180度の起磁力の位相差があるといえる。「+」の部分巻線と、「-」の部分巻線とは、巻き方を反対することにより実現できる。後述するコイル体の場合も同様である。
また、「/」は同じティースT1~T18に対して、2個の部分巻線が径方向位置を異ならせて配置されていることを示している。つまり、ティースT3,T6,T9,T12,T15,T18に対して2個の部分巻線が配置されている。そして、他のティースT1,T2,T4,T5,T7,T8,T10,T11,T13,T14,T16,T17に対して1個の部分巻線が配置されている。なお、ティースT3,T6,T9,T12,T15,T18において、部分巻線の径方向位置を入れ替えてもよい。
次に、図5に基づいて、固定子巻線32の配線について説明する。本実施形態では、Y結線(スター結線)としているが、デルタ結線としてもよい。
図5に示すように、固定子巻線32は、第1の固定子巻線32aと、第2の固定子巻線32bとから構成されている。第1の固定子巻線32aでは、U相の部分巻線+U11,+U12,-U13,-U14が直列に接続され、V相の部分巻線-V11,+V12,+V13,-V14が直列に接続され、W相の部分巻線+W11,-W12,-W13,+W14が直列に接続されている。そして、これらの直列接続体は、一端が中性点Qに接続され、他端が第1のインバータ回路51に接続される引出線A1,B1,C1にそれぞれ接続されている。なお、引出線A1には、U相の部分巻線が接続され、引出線B1には、V相の部分巻線が接続され、引出線C1には、W相の部分巻線が接続される。
第2の固定子巻線32bも同様に、U相の部分巻線-U21,+U22,+U23,-U24が直列に接続され、V相の部分巻線+V21,-V22,-V23,+V24が直列に接続され、W相の部分巻線+W21,-W22,-W23,+W24が直列に接続されている。そして、これらの直列接続体は、一端が中性点Qに接続され、他端が第2のインバータ回路52に接続される引出線A2,B2,C2にそれぞれ接続されている。なお、引出線A2には、U相の部分巻線が接続され、引出線B2には、V相の部分巻線が接続され、引出線C2には、W相の部分巻線が接続される。
図6に示すように、各引出線A1,B1,C1,A2,B2,C2は、回転軸11の軸心Oを中心として点対称となるように配置されている。すなわち、引出線A1,A2は、180度間隔で配置されており、引出線B1,B2は、180度間隔で配置されており、引出線C1,C2は、180度間隔で配置されている。なお、引出線A1,B1,C1,A2,B2,C2は、軸方向に沿って直線状に設けられている。
ここで、ティースT1,T4,T7,T10,T13,T16に、第1の固定子巻線32aのみが巻回(巻装)されることにより、各相のコイル体がそれぞれ2つずつ設けられている。これらのU相のコイル体を、コイル体Uaと示し、V相のコイル体を、コイル体Vaと示し、W相のコイル体を、コイル体Waと示す。以下では、第1の固定子巻線32aのみが巻回されるティースを、第2Aのティースと示す場合がある。第1実施形態では、ティースT1,T4,T7,T10,T13,T16が第2のティースに相当し、かつ、第2Aのティースに相当する。
また、ティースT2,T5,T8,T11,T14,T17に、第2の固定子巻線32bのみが巻回されることにより、各相のコイル体がそれぞれ2つずつ設けられている。これらのU相のコイル体を、コイル体Ubと示し、V相のコイル体を、コイル体Vbと示し、W相のコイル体を、コイル体Wbと示す。以下では、第2の固定子巻線32bのみが巻回されるティースを、第2Bのティースと示す場合がある。第1実施形態では、ティースT2,T5,T8,T11,T14,T17が第2のティースに相当し、第2Bのティースに相当する。
そして、ティースT3,T6,T9,T12,T15,T18に、第1の固定子巻線32aと、第2の固定子巻線32bとが巻回されることにより、各相のコイル体がそれぞれ2つずつ設けられている。これらのU相のコイル体を、コイル体Ucと示し、V相のコイル体を、コイル体Vcと示し、W相のコイル体を、コイル体Wcと示す。以下では、第1の固定子巻線32a及び第2の固定子巻線32bが巻回されるティースを、第1のティースと示す場合がある。第1実施形態では、ティースT3,T6,T9,T12,T15,T18が第1のティースに相当する。
図2に示すように、各相のコイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcは、回転軸11の軸心を中心として、2回回転対称に配置されている。つまり、軸心を中心に、機械角で180度回転させても、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの配置順が同じとなっている。
ここで、部分巻線+U11,+U12の起磁力Fu1a、部分巻線-U13,-U14の起磁力Fu1b、部分巻線+U22,+U23の起磁力Fu2a、部分巻線-U21,-U24の起磁力Fu2bは、数式(1)~(4)により表すことができる。なお、「θ」は、固定子巻線32に流れる電流の位相(第1のインバータ回路51から供給されるU相電流の位相を基準とする)である。「β」は、第1のインバータ回路51から供給される電流と第2のインバータ回路52から供給される電流との位相差(以下、電流位相差と示す場合がある)である。また、「N」は、各部分巻線の巻回数である。
同様に、部分巻線+V12,+V13の起磁力Fv1a、部分巻線-V11,-V14の起磁力Fv1b、部分巻線+V21,+V24の起磁力Fv2a、部分巻線-V22,-V23の起磁力Fv2bは、数式(5)~(8)により表すことができる。
同様に、部分巻線+W11,+W14の起磁力Fw1a、部分巻線-W12,-W13の起磁力Fw1b、部分巻線+W21,+W24の起磁力Fw2a、部分巻線-W22,-W23の起磁力Fw2bは、数式(9)~(12)により表すことができる。
ところで、各相におけるトルクの6次高調波成分「Tr6」は、数式(13)により表すことができる。また、各相におけるトルクの12次高調波成分「Tr12」は、数式(14)により表すことができる。
なお、数式(13),(14)において、αは定数であり、ノイズなどにより依存する。また、第1実施形態において、数式(13),(14)の第1項は、コイル体Ua,Va,Waに基づく成分に対応し、第2項は、コイル体Ub,Vb,Wbに基づく成分に対応し、第3項は、コイル体Uc,Vc,Wcに基づく成分に対応する。
また、「λ1」は、U相においては、コイル体Uaの起磁力に対するコイル体Ubの起磁力の位相差を示す。つまり、コイル体Uaの起磁力を基準として、コイル体Ubの起磁力の位相の遅れを示す。同様に、「λ1」は、V相においては、コイル体Vaの起磁力に対するコイル体Vbの起磁力の位相差を示し、W相においては、コイル体Waの起磁力に対するコイル体Wbの起磁力の位相差を示す。同様に、「λ2」は、U相においては、コイル体Uaの起磁力に対するコイル体Ucの起磁力の位相差を示し、V相においては、コイル体Vaの起磁力に対するコイル体Vcの起磁力の位相差を示し、W相においては、コイル体Waの起磁力に対するコイル体Wcの起磁力の位相差を示す。また、数式(13),(14)において、「Ta」は、コイル体Ua,Va,Waの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。また、「Tb」は、コイル体Ub,Vb,Wbの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。また、「Tc」は、コイル体Uc,Vc,Wcの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。
ここで、「γ1」と「γ2」がそれぞれ電気角で「20度」と「40度」である場合であって、「Ta」、「Tb」及び「Tc」が同じである場合、数式(15)、(16)及び図7に示すように、トルクの各高調波成分がキャンセルされることがわかる。
そして、本実施形態において、第1のインバータ回路51と、第2のインバータ回路52との電流位相差「β」は、電気角で20度としている。つまり、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力との各位相差は、20度ということとなり、「λ1」は、20度となる。したがって、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が、40度となるようにすれば、トルクリプルを抑制することができるといえる。
つまり、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力との各位相差と、コイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差とを、それぞれ20度となるようにすればよい。なお、位相差は、20度が望ましいが、20度を含む所定の位相範囲(例えば、15~25度の範囲)としてもよく、この場合でもトルクリプルの抑制効果を得ることができる。
そこで、本実施形態では、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が40度となるように(コイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が20度となるように)、各第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との位相差が、電気角で72~88度の範囲内となるように設定されている。なお、以下では、各第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線に対して、第2の固定子巻線32bの部分巻線の起磁力の位相差を、合算位相差と示す場合がある。
合算位相差を、電気角で72~88度の範囲内としたが、80度とすることが望ましい。本実施形態では、合算位相差が、80度となるように設定している。
第1のティースであるティースT9に設けられるコイル体Ucを例示して、起磁力の合算について詳しく説明する。図2及び図4に示すように、ティースT9に設けられるコイル体Ucは、部分巻線+U12/-W22により構成されている。部分巻線+U12の起磁力Fu1aと、部分巻線-W22の起磁力Fw2bは、数式(1)(12)に示すとおりである。これらの起磁力をベクトル図で表すと、図8のようになる。そして、部分巻線+U12の起磁力Fu1aと部分巻線-W22の起磁力Fw2bとを合算すると、数式(17)に示すようになる。
なお、数式(17)では、部分巻線+U12の巻回数と、部分巻線-W22の巻回数を、共にNとしている。数式(17)に示すように、ティースT9に部分巻線+U12及び部分巻線-W22を巻回することにより、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対して位相差が40度となるコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力を実現することができる。
ところで、数式(17)に示すように、起磁力は、部分巻線の巻回数に比例している。このため、各部分巻線の巻回数を適切に設定しなければ、各コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcとの間で、起磁力の振幅が揃わなくなる。つまり、数式(13)、(14)において、定数「Ta」「Tb」「Tc」にばらつきが生じることとなる。起磁力の振幅が揃っていない場合、トルクリプルのキャンセル効果が低減してしまう。したがって、各コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力の振幅が所定の振幅範囲内となるように各巻回数を設定することが望ましい。
そこで、本実施形態では、コイル体Ua,Va,Waの起磁力と、コイル体Ub,Vb,Wbの起磁力とを揃えるため、コイル体Ua,Va,Wa及びコイル体Ub,Vb,Wbの巻回数を共に同じ巻回数「Na」とする。
また、各相のコイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力が同程度となるように、各第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数、及び第2の固定子巻線32bの巻回数が設定されている。
具体的には、第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数、及び第2の固定子巻線32bの巻回数を「Nb」とする場合に、1.4≦Na/Nb≦1.6の関係を満たすように、巻回数「Na」及び「Nb」が設定されている。Na/Nbが1.53に近づくような値となることが好ましく、本実施形態では、Na:Nbを3:2の比率(Na/Nbが1.5)となるように巻回数を設定している。
ところで、このように巻回数を設定する場合、第1のティースに巻回される固定子巻線32の巻回数は、第2のティース(第2Aのティース又は第2Bのティース)に巻回される固定子巻線32の巻回数に比較して、多くなる。具体的には、4:3の比率で巻回数が多くなる。
また、図2等に示すように、第2のティースは、少なくとも周方向に2つ連続して設けられており、第1のティースは、周方向において2つおきに等間隔で設けられている。つまり、周方向において、第1のティースの両隣には、第2のティースが配置されている。そして、第2Aのティースは、第1のティースと第2Bのティースの間に配置されており、第2Bのティースは、第1のティースと第2Aのティースの間に配置されている。
このため、図10の比較例に示すように、全ティースの周方向の間隔(ピッチ)を等しくし(すなわち、すべて周方向間隔θ0とし)、全スロットの大きさ(及び間隔)を等しくした場合、次のような問題が生じる。すなわち、固定子巻線32の巻回数が多い第1のティースと、巻回数の少ない第2のティースとの間に形成されるスロットS1と、巻回数の少ない第2のティース同士の間に形成されるスロットS2とでは占積率が異なる。つまり、スロットS1において固定子巻線32が配置可能な本数だけ配置した場合(限りなく隙間が小さくなるように固定子巻線32を配置した場合)であっても、スロットS2においては隙間が形成され、スロットS1に比較して、占積率が低くなる。これにより、固定子30全体としては、スロット35において、隙間が多くなり、占積率が低下することとなる。
ここで、占積率とは、スロット35の面積に占める導線(ただし、絶縁被膜などを含む絶縁材料を除く導電材料の部分)の面積の割合である。スロット35の面積とは、導線を収容可能な部分の面積のことであり、例えば、図13に示すように、径方向においては、バックヨーク33から、ティースT1~T18の先端に設けられた鍔部70の径方向内側部分までの部分L10であり、周方向においては隣り合うティースT1~T18の間の部分L20のことである。
そこで、本実施形態では、図11に示すように、第1のティースと第2のティースとの周方向における第1の間隔θ1は、第2のティース同士の周方向における第2の間隔θ2に比較して、広くしている。本実施形態においては、図10に示す比較例と比較して、各スロット35における占積率が均等に近づくように、第1の間隔θ1及び第2の間隔θ2をそれぞれ設定している。
また、上記のように、第1の間隔θ1及び第2の間隔θ2を異ならせて、それぞれ設定すると、通常、図12に示す比較例のように、周方向に隣り合う鍔部70の間の間隔も不均一となる。すなわち、第1のティースに設けられた鍔部70aと第2のティースに設けられた鍔部70bとの周方向における第3の間隔θ30は、第2のティースに設けられた鍔部70b同士の周方向における第4の間隔θ40に比較して大きくなりやすい。もしくは、図示しないが、鍔部70の周方向における幅寸法(L30)が不均一となる場合もある。この場合、図14に示すように、コギングトルクが増大することとなる。図14において、図12の比較例におけるコギングトルクを、破線f1により示す。
そこで、本実施形態では、図11の一部拡大図である図13に示すように、第1のティースに設けられた鍔部70aの周方向幅寸法L11と、第2のティースに設けられた鍔部70bの周方向幅寸法L12との比率が、第1の間隔θ1と第2の間隔θ2との比率に比較して、1に近くなるように設定されている。より具体的には、鍔部70aの周方向幅寸法L11と、鍔部70bの周方向幅寸法L12とが同一となるように設定されている。
また、図13に示すように、第1のティースに設けられた鍔部70aと第2のティースに設けられた鍔部70bとの周方向における第3の間隔θ3と、第2のティースに設けられた鍔部70bの周方向における第4の間隔θ4との比率は、第1の間隔θ1と前記第2の間隔θ2との比率に比較して、1に近く設定されている。より具体的には、第3の間隔θ3と、第4の間隔θ4とが同一となるように設定されている。本実施形態のように構成することにより、図14において、実線f2に示すように、コギングトルクを抑制することができる。
以上、第1実施形態の構成によれば、以下の効果を有する。
第1のティースと第2のティースとの周方向における第1の間隔θ1は、第2のティース同士の周方向における第2の間隔θ2に比較して、広くなるように設定した。これにより、第1のティースと第2のティースと間のスロット35における占積率を向上させつつ、第2のティース同士の間におけるスロット35における占積率を向上させることができる。これにより、固定子30における全体の占積率を向上させることができる。
また、鍔部70aの周方向幅寸法L11と、鍔部70bの周方向幅寸法L12との比率が、第1の間隔θ1と第2の間隔θ2との比率に比較して、1に近くなるように設定した。より具体的には、鍔部70aの周方向幅寸法L11と、鍔部70bの周方向幅寸法L12とが同一となるように設定した。
また、第3の間隔θ3と、第4の間隔θ4との比率が、第1の間隔θ1と前記第2の間隔θ2との比率に比較して、1に近くなるように設定した。より具体的には、第3の間隔θ3と、第4の間隔θ4とが同一となるように設定した。これにより、図14に示すように、コギングトルクを抑制することができる。
コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差、及びコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差を、20度を含む所定の位相範囲内となるようにした。具体的には、各第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力に対して、当該第1のティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力の位相差(合算位相差)が、電気角で72~88度の範囲となるように設定した。本実施形態では、合算位相差が80度となるように設定した。これにより、数式(15)~(17)に示すように、トルクの6次又は12次高調波成分を打消し、トルクリプルを抑制することが可能となる。
コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力が所定の振幅範囲内(本実施形態では同程度)となるように、各部分巻線の巻回数を設定した。具体的には、第2Aのティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数を巻回数「Na」とした場合、第2Bのティースに巻回される第2の固定子巻線32bの巻回数を「Na」とする。そして、第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数、及び第2の固定子巻線32bの巻回数をそれぞれ「Nb」とする場合に、1.4≦Na/Nb≦1.6の関係を満たすように、各巻回数を設定した。本実施形態では、Na:Nbを3:2の比率(Na/Nbが1.5)となるように巻回数を設定した。これにより、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力の振幅を同程度にすることができ、トルクリプルを抑制することができる。
モータ10は、磁極数を「14」とし、スロット35の数を「18」とした。すなわち、磁極数を(18±4)×m(mは1以上の整数)とし、かつ、スロット数を18×mとした。これにより、軸心を中心として、電磁力のバランスを取ることができる。
図9に基づいて詳しく説明する。図9(a)は、各ティースT1~T18により発生する電磁力と、モータ10の機械角との関係を示す図である。図9(b)は、回転軸11を中心とした場合において、図9(a)に示す電磁力の変動を周方向に沿って示したものである。
図4に示すように、U相のコイル体Ua,Ub,Ucが約90度間隔で配置されている。V相のコイル体Va,Vb,Vc及びW相のコイル体Wa,Wb,Wcも同様である。このため、図9に示すように、電磁力のバランスが良くなる。したがって、電磁力がどこかに偏ることがなくなり、トルク変動を抑え、振動や騒音を抑制することができる。
磁極数を「14」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と、当該第1のティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との合算位相差を、電気角で80度とした。これにより、図2及び図4に示すように、部分巻線が配置されることとなる。図2及び図4に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、第1のティースであるティースT18に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-U14は、周方向に隣接する第2AのティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、第1のティースであるティースT18に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+W24は、周方向に隣接する第2BのティースであるティースT17に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-W23と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
図6に示すように、引出線A1,B1,C1,A2,B2,C2は、回転軸11の軸心を中心として各相が対称となるように配置されている。これにより、引出線A1,B1,C1,A2,B2,C2から発生する漏れ磁束をバランスさせ、打ち消すことができるため、角度センサ12の検出誤差を抑制することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、合算位相差を80度としたが、第2実施形態では、合算位相差を40度としている。すなわち、第2実施形態では、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が40度となるように、各第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力に対して、第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力の合算位相差が、40度となるように設定されている。なお、40度とすることが好ましいが、32~48度の範囲内で変更してもよい。
このようにする場合、各相の部分巻線の配置は、図15及び図16に示すようになる。ここで、ティースT9に設けられるコイル体Ucを例示して、合算位相差が40度となることについて説明する。
図15に示すように、ティースT9に設けられるコイル体Ucは、部分巻線-W12/+U22により構成されている。部分巻線-W12の起磁力Fw1bと、部分巻線+U22の起磁力Fu2aは、数式(10)(3)に示すとおりである。これらをベクトル図で表すと、図17のようになる。そして、部分巻線-W12の起磁力Fw1bと部分巻線+U22の起磁力Fu2aとを合算すると、数式(18)に示すようになる。
なお、数式(18)では、部分巻線-W12の巻回数と、部分巻線+U22の巻回数は、共にNとしている。数式(18)に示すように、ティースT9に部分巻線-W12及び部分巻線+U22を巻回することにより、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対して位相差(合算位相差)が40度となるコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力を実現することができる。
ところで、数式(18)に示すように、起磁力は、部分巻線の巻回数に比例している。このため、各部分巻線の巻回数を適切に設定しなければ、各コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcとの間で、起磁力の振幅が揃わなくなる。
そこで、第2実施形態では、コイル体Ua,Va,Wa及びコイル体Ub,Vb,Wbの巻回数を共に同じ巻回数「Na」とし、第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数及び第2の固定子巻線32bの巻回数を「Nb」とする場合に、1.8≦Na/Nb≦2.0の関係を満たすように、巻回数「Na」及び「Nb」が設定されている。Na/Nbが1.88に近づくような値となることが好ましく、本実施形態では、Na:Nbを19:10の比率(Na/Nbが1.9)となるように巻回数を設定している。
また、この場合も第1実施形態と同様に、第1の間隔θ1を、第2の間隔θ2に比較して、広くすることが望ましい。つまり、各スロット35における占積率が均等に近づくように、第1の間隔θ1及び第2の間隔θ2をそれぞれ設定することが望ましい。これにより、占積率を向上させることができる。
また、第1実施形態と同様に、鍔部70aの周方向幅寸法L11と、鍔部70bの周方向幅寸法L12との比率が、第1の間隔θ1と第2の間隔θ2との比率に比較して、1に近くなるように設定することが望ましい。より具体的には、鍔部70aの周方向幅寸法L11と、鍔部70bの周方向幅寸法L12とが同一となるように設定することが望ましい。
同様に、第3の間隔θ3と、第4の間隔θ4との比率が、第1の間隔θ1と前記第2の間隔θ2との比率に比較して、1に近くなるように設定することが望ましい。より具体的には、第3の間隔θ3と、第4の間隔θ4とが同一となるように設定することが望ましい。これにより、コギングトルクを抑制することができる。
以上、第2実施形態の構成によれば、以下の効果を有する。
コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差、及びコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差を、20度を含む所定の位相範囲内となるようにした。具体的には、第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力に対して、当該第1のティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力の合算位相差が、40度となるように設定した。つまり、合算位相差が40度となるように設定した。これにより、数式(15)(16)(18)に示すように、トルクの6次又は12次高調波成分を打消し、トルクリプルを抑制することが可能となる。
また、1.8≦Na/Nb≦2.0の関係を満たすように、各巻回数を設定した。本実施形態では、Na:Nbを19:10の比率(Na/Nbが1.9)となるように巻回数を設定した。これにより、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力の振幅を同程度にすることができ、トルクリプルを抑制することができる。
モータ10は、磁極数を「14」とし、スロット35の数を「18」とした。すなわち、磁極数を(18±4)×m(mは1以上の整数)として、かつ、スロット数を18×mとした。これにより、第1実施形態と同様に、軸心を中心として、電磁力のバランスを取ることができる。
(第3実施形態)
第1実施形態では、第1のインバータ回路51と、第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、電気角で20度としたが、第3実施形態では、40度としている。つまり、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力との各位相差は、40度ということとなる。
このため、第3実施形態では、数式(13),(14)において、第1項は、コイル体Ua,Va,Waに基づく成分に対応し、第2項は、コイル体Uc,Vc,Wcに基づく成分に対応し、コイル体Ub,Vb,Wbに基づく成分に対応する。
そして、第3実施形態では、「λ1」は、U相においては、コイル体Uaの起磁力に対するコイル体Ucの起磁力の位相差を示し、V相においては、コイル体Vaの起磁力に対するコイル体Vcの起磁力の位相差を示し、W相においては、コイル体Waの起磁力に対するコイル体Wcの起磁力の位相差を示す。同様に、「λ2」は、U相においては、コイル体Uaの起磁力に対するコイル体Ubの起磁力の位相差を示し、V相においては、コイル体Vaの起磁力に対するコイル体Vbの起磁力の位相差を示し、W相においては、コイル体Waの起磁力に対するコイル体Wbの起磁力の位相差を示す。また、数式(13),(14)において、「Ta」は、コイル体Ua,Va,Waの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。「Tb」は、コイル体Uc,Vc,Wcの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。「Tc」は、コイル体Ub,Vb,Wbの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。
したがって、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が、20度となるようにすれば、数式(15)、(16)により、トルクリプルを抑制することができるといえる。
つまり、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力との各位相差と、コイル体Uc,Vc,Wcの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差とを、それぞれ20度となるようにすればよい。なお、位相差は、20度が望ましいが、20度を含む所定の位相範囲(例えば、15~25度の範囲)としてもよく、この場合でもトルクリプルの抑制効果を得ることができる。
そこで、第3実施形態では、各第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との位相差が、電気角で72~88度の範囲となるように設定されている。つまり、合算位相差が電気角で72~88度の範囲となるように設定されている。第3実施形態でも第1実施形態と同様に、合算位相差を80度とすることが望ましい。
具体的には、図18に示すように、各ティースT1~T18に、部分巻線を配置している。このように構成することにより、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力との各位相差と、コイル体Uc,Vc,Wcの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差とを、それぞれ20度とすることができる。また、第1実施形態と同様に、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力とを揃えるため、Na:Nbを3:2の比率(Na/Nbが1.5)となるように巻回数を設定している。
また、この場合も第1実施形態と同様に、第1の間隔θ1及び第2の間隔θ2をそれぞれ設定することが望ましい。これにより、占積率を向上させることができる。また、第1実施形態と同様に、鍔部70aの周方向幅寸法L11と、鍔部70bの周方向幅寸法L12、第3の間隔θ3、及び第4の間隔θ4を設定することが望ましい。これにより、コギングトルクを抑制することができる。
以上のように構成することにより、第3実施形態は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、インバータ回路51,52の電流位相差「β」を40度とするとともに、合算位相差を第3実施形態とは異なり、40度としている。つまり、各第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との位相差を、40度となるように設定している。なお、第2実施形態と同様に、40度とすることが好ましいが、32~48度の範囲内で変更してもよい。
具体的には、図19に示すように、各ティースT1~T18に、部分巻線を配置している。このように構成することにより、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力との各位相差と、コイル体Uc,Vc,Wcの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差とを、それぞれ20度とすることができる。また、第2実施形態と同様の理由から、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力とを揃えるため、Na:Nbを19:10の比率(Na/Nbが1.9)となるように巻回数を設定している。
また、この場合も第1実施形態と同様に、第1の間隔θ1及び第2の間隔θ2をそれぞれ設定することが望ましい。これにより、占積率を向上させることができる。また、第1実施形態と同様に、鍔部70aの周方向幅寸法L11と、鍔部70bの周方向幅寸法L12、第3の間隔θ3、及び第4の間隔θ4を設定することが望ましい。これにより、コギングトルクを抑制することができる。
以上により、第4実施形態は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
(他の実施形態)
上記各実施形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、磁極数を「22」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図20に示す。
この場合、図20に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-U12は、周方向に隣接する第2AのティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+W21は、周方向に隣接する第2BのティースであるティースT3に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-W22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を「22」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図20に示す。
・上記実施形態において、磁極数を「22」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図20に示す。
この場合、図20に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+V11は、周方向に隣接する第2AのティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線-V12と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+U22は、周方向に隣接する第2BのティースであるティースT2に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-U21と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を「22」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図20に示す。
・上記実施形態において、磁極数を「16」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図21に示す。
この場合、図21に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+V11は、周方向に2つ隣の第2AのティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+V12と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線-U21は、周方向に2つ隣の第2BのティースであるティースT18に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-U24と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を「16」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図21に示す。
この場合、図21に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-U12は、周方向に隣接する第2AのティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+V21は、周方向に隣接する第2BのティースであるティースT3に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-V22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を「16」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図21に示す。
この場合、図21に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+U12は、周方向に2つ隣の第2AのティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+W21は、周方向に2つ隣の第2BのティースであるティースT5に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線+W22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を「16」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図21に示す。
この場合、図21に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-V11は、周方向に隣接する第2AのティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+V12と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線-V22は、周方向に隣接する第2BのティースであるティースT2に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線+V21と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を「20」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図22に示す。
この場合、図22に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+U12は、周方向に2つ隣の第2AのティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線-W21は、周方向に2つ隣の第2BのティースであるティースT5に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-W22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を「20」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図22に示す。
この場合、図22に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-W11は、周方向に隣接する第2AのティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+W12と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+U22は、周方向に隣接する第2BのティースであるティースT2に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-U21と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を「20」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図22に示す。
この場合、図22に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+W11は、周方向に2つ隣の第2AのティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+W12と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+V21は、周方向に2つ隣の第2BのティースであるティースT18に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線+V24と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を「20」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図22に示す。
この場合、図22に示すように、第1のティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-U12は、周方向に隣接する第2AのティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
同様に、第1のティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第1のティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線-U21は、周方向に隣接する第2BのティースであるティースT3に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線+U22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
・上記実施形態において、磁極数を(18±4)×m(mは1以上の整数)とし、かつ、スロット数が18×mとしてもよい。また、磁極数を(18±2)×n(nは1以上の整数)とし、かつ、スロット数を18×nとしてもよい。なお、磁極数を(18±4)×m(mは1以上の整数)とし、かつ、スロット数が18×mとした場合、図9において前述したように、90度間隔毎に、電磁力が大きくなるため、バランスを取ることができ、騒音、振動を抑制することができる。
・上記実施形態において、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」は、「20度」又は「40度」であることが好ましいが、それぞれ15~25度の範囲、及び35~45度の範囲内で変更してもよい。
・上記実施形態において、第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aと、第2の固定子巻線32bの合算位相差は、「40度」又は「80度」であることが好ましいが、それぞれ32~48度の範囲、及び72~88度の範囲内で変更してもよい。
・上記実施形態において、モータ10は、ラジアルギャップモータに限らず、例えば、アキシャルギャップモータでもよい。また、モータ10は、リラクタンスモータ、誘導モータであってもよい。
・上記実施形態及び上記変形例では、第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と当該第1のティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との合算位相差(起磁力合算位相差)が所定の範囲内となるように設定することにより、トルクリプルを抑制した。この起磁力合算位相差の代わりに、第1のティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線に流れる電流と当該第1のティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線に流れる電流との合算位相差(電流合算位相差)を用いてもよい。
なお、部分巻線に流れる電流の位相は、部分巻線の巻回方向により、位相が180度ずれることに留意する必要がある。つまり、同じU相の部分巻線であっても、「+」の部分巻線に流れる電流と、「-」の部分巻線に流れる電流とは位相を180度ずらして、合算する電流の位相差を考える必要がある。
例えば、インバータの電流位相差「β」が20度であり、U相の部分巻線であって、かつ、「+」の部分巻線に流れる電流の位相を基準の位相「θ」とする場合、V相の部分巻線であって、「-」の部分巻線に流れる電流の位相は、「θ-120(V相による位相のずれ)-20(電流位相差βに基づくずれ)-180(巻回方向による位相のずれ)」=「θ-320」となる。