JP7224787B2 - 特定添加剤を含んだ二次電池用非水系電解質及びこれを用いた二次電池 - Google Patents
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Description
従って、本発明の一の態様は以下の通りである。
〔1〕 二次電池用非水系電解質であって、
負極表面固体電解質被膜形成剤としてのリチウムジエチルフォスフェート(LiDEP)と、
非水系電解質添加剤としてのフルオロエチレンカーボネート(FEC)とを含んでなり、
前記負極表面固体電解質被膜形成剤は、二次電池用負極における負極活物質の表面に、固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface;SEI)被膜を形成するものである、二次電池用非水系電解質。
〔2〕 前記非水系電解質全質量に対して、
前記リチウムジエチルフォスフェートの含有量が0.01質量%以上5.0質量%以下であり、
前記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上30.0質量%以下である、〔1〕に記載の二次電池用非水系電解質。
〔3〕 二次電池であって、
正極と、負極活物質を備えた負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、二次電池用非水系電解質とを備えてなり、
前記二次電池用非水系電解質が、〔1〕又は〔2〕に記載のものである、二次電池。
〔4〕 前記負極活物質が、ケイ素系物質及び/又は炭素系物質とを含んでなる、〔3〕に記載の二次電池。
〔5〕 前記ケイ素系物質の含有量は、二次電池用負極材の全質量(100質量%)を基準にして、0質量%超過50質量%以下である、〔4〕に記載の二次電池。
〔6〕 前記ケイ素系物質は、容量密度が下限値として800mAh/g超過2000mAh/g以下である、〔3〕~〔5〕の何れか一項に記載の二次電池。
〔7〕 前記ケイ素系物質の平均粒径(MW)が、0.1μm以上10μm以下である、〔3〕~〔6〕の何れか一項に記載の二次電池。
〔8〕 前記ケイ素材料が一酸化ケイ素(SiO)である、〔3〕~〔7〕の何れか一項に記載の二次電池。
〔9〕 前記負極活物質が、ケイ素系物質及び炭素系物質とを含んでなり、
前記炭素系物質とケイ素系物質との混合比率(質量比)が98:2から50:50である、〔3〕~〔8〕の何れか一項に記載の二次電池。
本発明は、負極表面固体電解質被膜形成剤としてのリチウムジエチルフォスフェート(「LiDEP」)と、非水系電解質添加剤としてフルオロエチレンカーボネート(FEC)とを必須成分として含有してなる、非水系電解質である。
本発明は、負極表面固体電解質被膜形成剤を含有してなり、必須成分として、リチウムジエチルフォスフェートを含んでなる。
LiDEPは、少量のFECと併用することにより、負極活物質であるケイ素系物質を包含した負極表面に、SEI被膜を有意に形成させることができ、二次電池の充放電サイクル特性の向上を図り、かつ、ケイ素系物質由来の電極及び二次電池の膨張又はスウェリングといった諸問題を有意に解決することができる。また、LiDEPを採用することにより、FEC枯渇による二次電池の電池容量の急激な低減を抑制し、かつ、FECの含有量を低減させることにより、電解質の粘度上昇を抑制し、二次電池の入出力特性の低下を防止することができ、さらには、過剰のFEC含有による高温度環境下のガス発生を予め予防することができ、二次電池の安全性を向上させることが可能となる。
FECは、非水系電解質添加剤として含有され、非水系電解質に添加されることにより、出力密度、高温時/低温時の容量劣化の抑制、サイクル寿命の向上を図ることができる。よって、FECは、非水系電解質添加剤として、特に、出力密度向上剤、容量劣化抑制剤、サイクル寿命向上剤として用いられる。
本発明にあっては、その他の非水系電解質溶媒成分として、例えば、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートを含むことができる。環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ-ブチロラクトン(GBL)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられる。鎖状カーボネートの例としては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びメチルプロピルカーボネート(MPC)からなる群より選択された一種又は二種以上の混合物が好ましいが、これに限定されるものではなく、γ-ブチルラクトン(γ-BL)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル及びその誘導体、並びにイオン液体からなる群より選択された一種又は二種以上の混合物などを用いてもよい。
非水系電解質は、リチウム塩を含有することができる。リチウム塩の例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロホウ酸リチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、及びテトラフェニルホウ酸リチウムからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
本発明にあっては、非水電解質添加剤として、ビニレンカーボネート、ビフェニル、プロパンスルトン、及びジフェニルジスルフィドからなる群より選択された1種又は二種以上の混合物などを加えてもよい。
二次電池用負極材は、負極活性物質として、ケイ素系物質及び/又は炭素系物質(好ましくは両者)と、任意成分(バインダー、導電材等)とを備えてなるものである。
ケイ素系物質(材料)は、例えば、ケイ素粉末、ケイ素合金、ケイ素酸化物(好ましくはSiOx〔x=0.5~4〕であり、より好ましくはSiO〔x=1〕である)、アモルファスケイ素粉末、ケイ素ナノファイバー、ケイ素ナノワイヤー;前記ケイ素系物質と、黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)又はグラフェンから選択される炭素系物質との複合体、又はリチウムを予めドープした前記ケイ素系物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物であってよい。
炭素系物質としては、無定形炭素、天然および人造黒鉛、カーボンナノチューブ等の炭素原子構造物、炭素繊維、炭素粒子等が挙げられる。炭素系物質は、比表面積が小さく、初期効率が高いもので、好ましくは黒鉛粉末が好ましい。比表面積が小さい負極材粒子を採用することにより、電極密度を向上させ、電池の容量密度を高めることができる。炭素系物質は、天然黒鉛が好ましい。天然黒鉛は、一般的に、人造黒鉛及びケイ素系物質と比べて柔らかく、固練りによってケイ素系物質とよく馴染むと共に、一部の黒鉛が劈開して導電剤としての役割を担うことができる。人造黒鉛自体の膨張率は天然黒鉛よりも低いため、人造黒鉛を用いた電極は電極全体の膨張率も小さくなるとの効果を有する。
本発明にあっては、電極活物質として、炭素系物質とケイ素系物質とを混合してなるものを使用する。炭素系物質とケイ素系物質との混合比率(質量比)は、質量比として98:2以上50:50以下であり、好ましくは95:5以上60:40以下である。上記混合比率にあることにより、炭素系物質はケイ素系物質の膨張・収縮に対する緩衝(バッファー)層としても機能し、良好なサイクル特性が得ることが可能となる。
本発明による負極は、任意成分として、バインダーを含んでなる。バインダーは、負極活物質、導電剤を接着させ、或いは、電極集電体に対する結合を促進させる成分である。バインダーとしては、水系又は溶剤系のものが挙げられ、水系のものとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン‐クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、アクリロニトリル‐スチレン‐ブタジエン共重合体、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体、ビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルとの共重合体からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物が好ましくは挙げられる。
負極は、任意成分として、増粘剤を含んでもよい。増粘剤は、負極活物質、導電剤の分散性を維持し、並びに、電極集電体に対する結合を促進させる成分として有用である。特に、負極スラリー組成物を適正な粘度に調整し、固形分の沈降を予防する役割を担う。増粘剤の例には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース化合物、上記セルロース化合物のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、ポリ(メタ)アクリル酸および改質ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸、上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリビニルアルコール、改質ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコールコポリマー等のポリビニルアルコールベースの(コ)ポリマー、(メタ)アクリル酸、マレイン酸またはフマル酸等の不飽和カルボン酸とビニルエステルとのコポリマーの鹸化生成物等の水溶性ポリマー、並びにアニオン性(メタ)アクリルポリマー増粘剤からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物が好ましくは挙げられる。
本発明による負極は、任意成分として、導電剤を含んでなる。導電剤は、ケイ素系物質を用いる負極活物質において、炭素系物質と同等の電池特性を付与することが可能となる。導電剤は、二次電池に化学的変化を誘発しないものが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維;フロロカーボン、アルミニウム、ニッケル等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー、酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物が挙げられ、好ましくは、導電性繊維である。導電性繊維は、ケイ素原子を含む粒子を負極活物質として用いた場合、充放電による膨張収縮によっても負極活物質間又は負極活物質と集電体との間における導電パスを維持し、負極活物質から脱落し難い構造を備えていることから、特に好ましい。
負極用添加剤は、負極活物質(ケイ素系物質及び黒鉛)と、導電剤とを含んでなる負極に含有されるものである。本発明にあっては、電解質(液)がフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含んでなる二次電池において、負極用添加剤として好ましくは使用されるものである。
負極用添加剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)であり、又は、主成分としてポリビニルピロリドン(PVP)を含んでなるものである。PVPは、物質(材料)の表面を親水化する効果があり、また、樹脂等との相溶性が高いため、電池構成成分に対する分散剤として使用される。また、PVPは、粘度が高い電解液に対する負極の濡れ性、負極材料中のケイ素系物質、導電剤、バインダーの分散性を高めることが可能となる。また、PVPは、非イオン性の水溶性ポリマーであり、低級溶剤溶解性、吸湿性、成膜性、及び耐塩性が高いものである。更に、PVPは、その水溶性及び溶剤溶解性により、水系バインダー及び溶剤系バインダーを用いる場合にも使用することが可能である。しかしながら、本発明にあっては、PVPは上記機能・作用を付与する負極用添加剤として使用するものであって、バインダー用途で使用されるものではなく、この意味において、バインダー用途とは峻別される。
よって、負極用添加剤(PVP)の含有量が上記数値範囲にあることにより、電池容量、電池間容量偏差、寿命特性、電極膨張率に対して最も優れた効果を発揮させることが可能となる。
負極は、任意成分として、充填剤を含んでもよい。充填剤は、負極の膨脹を抑制する成分であり、選択的に使用され、二次電池に化学的変化を誘発せず、繊維状の材料が好ましくは使用される。充填剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状物質からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物が好ましくは挙げられる。
本発明によるリチウム二次電池用負極材は、
炭素系物質と、ケイ素系物質と、バインダーと、導電材とを少なくとも用意し、
これらを水溶媒中で混錬し、加熱乾燥によって水を除去し、
リチウム二次電池用負極材を得ることを含んでなるものである。
「混錬」は、一般的な混合機又は剪断性を有する混合機を用いておこなうことが可能である。
本発明にあっては、負極は、負極集電体に、上記した負極構成成分(負極組成物)を付与して、構成することができる。
負極集電体は、二次電池に化学的変化を誘発せず、高い導電性を持つものであればよい。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結炭素、アルミニウムやステンレススチールの表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物などで表面処理したもの等が用いられる。負極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して負極材料の接着力を高めることができ、フィルム、シート、ホイール、ネット、多孔質体、発泡体、及び不織布体からなる群より選択される一種又は二種以上の混合体等の多様な形態が可能である。負極集電体の厚さは3μm以上50μm以下程度でよい。
負極は、一般に、負極集電体に、負極構成成分を形成し、又は、本発明による負極用組成物を塗布し乾燥させて得ることができる。
本発明の別の態様によれば、本発明にあっては、二次電池、好ましくはリチウム二次電池を提案することができ、
正極と、負極と、電解質と、セパレータとを備えてなり、
前記電解質が本発明によるものである。
電解質及び負極は、既に前記したものを使用する。
正極は、正極集電体上に、正極活性物質、導電剤、バインダー又は増粘剤、及び充填剤をさらに添加した正極組成物を形成して形成することが可能である。正極集電体、導電剤、バインダー、充填剤等は、負極で説明した材料と同様であってよい。正極集電体の厚さは3μm以上50μm以下程度である。
正極活性物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物を望ましく使用でき、例えばLixCoO2(0.5<x<1.3)、LixNiO2(0.5<x<1.3)、LixMnO2(0.5<x<1.3)、LixMn2O4(0.5<x<1.3)、Lix(NiaCobMnc)O2(0.5<x<1.3、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LixNi1-yCoyO2(0.5<x<1.3、0<y<1)、LixCo1-yMnyO2(0.5<x<1.3、0≦y<1)、LixNi1-yMnyO2(0.5<x<1.3、0≦y<1)、Lix(NiaCobMnc)O4(0.5<x<1.3、0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LixMn2-zNizO4(0.5<x<1.3、0<z<2)、LixMn2-zCozO4(0.5<x<1.3、0<z<2)、LixCoPO4(0.5<x<1.3)、及びLixFePO4(0.5<x<1.3)からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物を使用することができる。
セパレータは、正極及び負極間に介在され、高いイオン透過度及び機械的強度を持つ絶縁性の薄膜が用いられる。一般に、セパレータの気孔直径は0.01~10μmであり、厚さは5~300μmである。このようなセパレータとしては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー、ポリイミド、ガラス繊維又はポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが用いられ、さらに、安全性を高めるため、表面にアルミナ、チタニア、シリカなどの酸化物層があってもよい。電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質がセパレータを兼ねることができる。
本発明による二次電池は、通常の方法により正極及び負極間に多孔性のセパレータを挿入し、電解質を投入して製造することになる。本発明による二次電池は、円筒型、角型、パウチ型電池など、外形に関係なく用いられる。二次電池は、単一であっても、複数の二次電池として構成されてなるものであってよい。
実施例1
非水溶媒として、30質量%の環状カーボネート(EC)と、50質量%の鎖状カーボネート(EMC)とを混合して攪拌した後に、LiPF6を塩濃度が1.2Mになるように添加溶解して、基本電解質とした。この基本電解質に、0.4質量%の「LiDEP」と、4質量%の「FEC」を混合し電解質を得た。
「LiDEP」を添加しない以外は実施例1と同様にして電解質を得た。
実施例1の基本電解質、即ち、「LiDEP」及び「FEC」を添加しない以外は実施例1と同様にして電解質を得た。
「FEC」を添加しない以外は実施例1と同様にして電解質を得た。
(負極の作製)
負極活物質として、炭素系物質(天然黒鉛)と、ケイ素系物質としてのSiOとをそれぞれ70%、30%混合したものを92重量部と、導電性炭素系物質を3重量部と、接着剤としてSBRとCMCを5重量部、水中に分散させ、負極スラリーを調製した。調製した負極スラリーをCu箔上に均一に塗布し、加熱真空乾燥後、プレスし所定の膜厚と合剤密度にすることにより、負極を得た。
(正極の作製)
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を95重量部と、導電性炭素系物質(アセチレンブラック)を3重量部と、接着剤としてPVdFを2重量部とを、N-メチル-2-ピロリドン溶媒中に分散させ、正極スラリーを調整した。正極スラリーをAl箔上に均一に塗布し、加熱真空乾燥後、プレスし所定の膜厚と合剤密度にすることにより、正極を得た。
(二次電池の作製)
得られた、正極、負極、電解質と、セパレータとしてポリオレフィン製フィルムを用いて、2016型コインセルを作製した。
実施例および比較例の電池について以下の評価を行った。
実施例及び比較例の二次電池を用いて、
電圧(V)に対するdQ/dVをプロットしたdQ/dV解析法により、二次電池のSEI被膜の形成過程を測定した。その結果は、図1に記載した通りであった。
〔評価結果1〕
図1において、比較例1の2.75V付近のピークはFECがSEI被膜形成のために消費されていることを示している。一方、LiDEPが添加された実施例においてはこのピークが減衰しており、FECの消費が少なくなったことを示している。
実施例と比較例のコインセル(二次電池)について、100サイクル毎に0.1C電流レート、その他のサイクルでは0.5C電流レートで400サイクル充放電を繰り返した。その結果は、下記図2に記載した通りであった。
〔評価結果2〕
図2において、LiDEPとFECを併用した実施例については明確なサイクル特性の向上が確認できる(比較例1との比較)。一方、FECを含まない電解質を用いた比較例2と比較例3では、LiDEPによるサイクル特性の向上が僅かにみられるものの、その効果は明らかに小さかった。評価試験1及び評価試験2の結果を併せて考察すると、LiDEPとFECを併用することにより電池の初期充電時にケイ素系物質の膨張・収縮に対応できる良好なSEI被膜が形成され、その後の充放電サイクル時のFECの消費も抑制されていることが明らかに認められた。
本発明によれば、LiDEPがFECと共に負極のケイ素系物質上に特異なSEI被膜形成をする。それによって、電池の初期効率および容量が向上する。また、充放電サイクル時のFECの消費量が抑制され、サイクル寿命が向上する。所定のサイクル寿命を満足するのに必要な非水系電解質中のFEC混合量を低減させることができるため、高温での充放電や保存時に問題であったFECを原因とするガス発生の抑制も期待できる。そのため非水系電解質二次電池が用いられる電子機器等の様々な分野において好適に利用できる。
Claims (6)
- 二次電池であって、
正極と、負極活物質を備えた負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、二次電池用非水系電解質とを備えてなり、
前記二次電池用非水系電解質が、
負極表面固体電解質被膜形成剤としてのリチウムジエチルフォスフェート(LiDEP)と、
非水系電解質添加剤としてのフルオロエチレンカーボネート(FEC)とを含んでなり、
前記負極表面固体電解質被膜形成剤は、二次電池用負極における負極活物質の表面に、固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface;SEI)被膜を形成するものであり、
前記非水系電解質全質量に対して、
前記リチウムジエチルフォスフェートの含有量が0.01質量%以上5.0質量%以下であり、
前記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上10.0質量%以下であり、
前記負極活物質が、ケイ素系物質を含み、
前記ケイ素系物質の含有量は、二次電池用負極材の全質量(100質量%)を基準にして、3質量%超過50質量%以下である、二次電池。 - 前記負極活物質が、炭素系物質を含み、請求項1に記載の二次電池。
- 前記ケイ素系物質は、容量密度が下限値として800mAh/g超過2000mAh/g以下である、請求項1又は2に記載の二次電池。
- 前記ケイ素系物質の平均粒径(MW)が、0.1μm以上10μm以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の二次電池。
- 前記ケイ素系物質が一酸化ケイ素(SiO)である、請求項1~4の何れか一項に記載の二次電池。
- 前記負極活物質が、炭素系物質を含み、
前記炭素系物質とケイ素系物質との混合比率(質量比)が97:3から50:50である、請求項1~5の何れか一項に記載の二次電池。
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