JP7224253B2 - 複合型ネット材及びそれを用いた土木用籠材 - Google Patents

複合型ネット材及びそれを用いた土木用籠材 Download PDF

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本発明は複合型ネット材及びそれを用いた土木用籠材に関し,とくに亀甲網ネットとマットとを組み合わせた複合型ネット材及びそれを用いた土木用籠材に関する。
従来から,土木分野において,河川の水制工・護岸根固め工・法覆工,切土現場(例えば道路)の法面保護工・法尻押さえ工,災害復旧現場(例えば地震被災地)の応急対策工等に土木用籠材が広く用いられている。土木用籠材の一例は,竹等の植物系材質又は金属製の籠に石等を詰めた蛇籠である。蛇籠は,低価格であって施工性もよく,中詰め材(砕石,コンクリートガラ,礫等。以下同じ。)を詰めるだけの簡単な作業で適用できる利点を有している。ただし,従来の植物系材質又は金属製の籠は劣化しやすく,取り扱いにも手間がかかる問題点がある。
これに対し,図9に示すように,高耐久性の合成樹脂モノフィラメント製の線材1を亀甲網状に編み上げた平板状ネットを用いた土木用籠材が開発されている(特許文献1参照)。亀甲網状ネット10は,図9(A)に示すように複数の線材1a,1b,1c……を同一平面上に所定間隔Wで平行に(同じ線材向きで)配置し,図9(B)に示すように隣接する線材1a,1b,1c…を所定ピッチDおきに複数回(図示例では3回)ずつ撚り合わせることにより編み上げる。
図9(B)において,例えば線材1cは,所定ピッチ(=D)おきに片側の隣接線材1bと撚り合わされ,同じく所定ピッチ(=D)おきに反対側の隣接線材1dとも撚り合わされ,所定ピッチ(=D/2)おきに隣接する両側の線材1b,1dと交互に撚り合わされている。このような隣接する線材1a,1b,1c……同士の撚り合わせにより,図9(B)のように所定幅(=2W)で所定ピッチ(=D)の亀甲状の空隙部(網目)が連続的に形成された亀甲網状ネット10を編み上げることができる。線材1の材質の一例はポリエステルである。
図9(B)の合成樹脂モノフィラメント製の亀甲網状ネット10は,軽量(例えば金属性ネットの約1/5の重量)であるが弾性力・復元力が大きく,錆びないため線材相互の摩擦も少ない。また,各線材1が複数回の撚り合わせにより編み上げられているので,一部が破れても全体に裂け広がる連続破断が起こりにくく,補修も容易である。そのため,従来の籠材に比べて劣化しにくく(耐久性が高い),取り扱いも容易である。更に,図1(B)に一点鎖線Lで示すように,隣接する線材1の撚り合わせ部2の列(ネット内の線材向きLに並ぶ撚り合わせ部2の列)が回転軸として機能し,その両側を線材向きLの軸の周りに回動させて折り曲げ又は折り畳むことができる。従って,線材向きLと交差する軸の周りには湾曲するが反発力が生じて変形させにくいのに対し,線材向きLの軸の周りには変形させやすい(フレキシビリティが高い)特徴がある。
図9(C)は,図9(B)の亀甲網状ネット10を6面からなる箱型に形成して土木用籠材とする方法の一例を示す。図示例の籠材は3つの分割体ネット,すなわち左右側面10L,10R及び床面10Pからなる第1亀甲網状ネットと,頂面10C及び背後側面10Sからなる第2亀甲網状ネットと,前方側面10Fからなる第3亀甲網状ネットとにより構成されている。
図9(C)において,先ず第1亀甲網状ネットの床面10Pの線材向きLをY方向とし,所定2か所のX方向の折り曲げ線B1,B2により折り曲げて線材向きLがZ方向の左側面10L及び右側面10Rを形成する。次に,第2亀甲網状ネットの頂面10Cの線材向きLをX方向とし,所定1か所のY方向の折り曲げ線B3により折り曲げて線材向きLがZ方向の背後側面10Sを形成する。更に,第3亀甲網状ネットの前方側面10Fの線材向きLをZ方向とし,折り曲げた第1亀甲網状ネット及び第2亀甲網状ネットと箱型に連結して土木用籠材とする。各亀甲網状ネットは,例えば相互の突き合わせ部分に適当な接合部材(例えば,各ネットの亀甲状の網目を縫い合わせるような縫合部材)を介在させて連結することができる。必要に応じて,籠材の6面のうち少なくとも1面を,不織布又は織布,合成樹脂,ゴム等の土木マット乃至シート(以下,両者をまとめてマットという)で被覆してもよい(特許文献2参照)。
特開2009-019492号公報 特開2000-136517号公報
村瀬勝彦ほか「河川堤防における小動物の巣穴対策について」国土交通省国土技術研究会論文集,2013年11月,インターネット(URL:http://www.mlit.go.jp/chosahokoku/h25giken/program/kadai/pdf/ippan/anzen1_04.pdf) 吉村亜希子ほか「漏水過多な棚田畦畔法面の水移動実態とその漏水対策」農業農村工学会全国大会講演要旨集,2010年9月,インターネット(URL:http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/10/10P05-41.pdf)
図9(C)の亀甲網状ネット10を用いた土木用籠材は,取り扱いが容易で劣化しにくい利点を有しているが,中詰め材を詰めただけの構成で設置すると,頂面ネット10Cから進入した降雨等が中詰め材の間を流下して床面ネット10Pから設置面(地表面等)に浸水し,設置面に洗堀等を生じるため,設置した籠材の安定性を長期にわたり確保することが難しい問題点がある。そのため,籠材の床面ネット10Pの内側(又は外側)に土木マットを張り込むことで,洗堀を発生させるような設置面への浸水を避ける対策が施されることが多い。
しかし,本発明者の経験によると,亀甲網状ネット10の内側又は外側にマットを張り込むだけでは,土木用籠材の長期にわたる安定性を確保することは難しい。すなわち,ネット10の内側にマットを張り込んだ籠体は,中詰め材を詰めて設置する供用中に中詰め材とマットとが衝突して擦れ,その衝突によりずれ又は損傷したマットがネット10から剥がれて隙間を生じ,その隙間から降雨等が浸水して洗堀等を生じさせることが経験された。
また,ネット10の外側にマットを張り込んだ籠体も,供用中に設置面(地表面等)とマットとが衝突してマットのずれや損傷が発生し,やはりマットが剥がれた隙間から降雨等が浸水して洗堀等を発生させることが経験された。野外に設置する土木用籠材では,野外動物のかじりによってマット10のずれや損傷を生じることもある。更に,土木用籠体は中詰め材を詰めたまま運搬しなければならないことも多いが,ネット10の外側に張り込んだマットは運搬面(地表面等)との摩擦抵抗を大きくするので運搬作業効率の低下の原因となっており,その摩擦抵抗によってマットの損傷が大きくなることも経験された。土木用籠材の長期にわたる安定性を確保するため,ネットと組み合わせたマットのずれや損傷を小さく抑えることができる技術の開発が望まれている。
そこで本発明の目的は,ネットと組み合わせたマットのずれや損傷を小さく抑えることができる複合型ネット材及びそれを用いた土木用籠材を提供することにある。
図1及び図2の実施例を参照するに,本発明による複合型ネット材20は,平行配列の複数本の合成樹脂製線材1a,1bを隣接する線材1a,1b同士の撚り合わせにより亀甲網状に編み上げた所定形状の平板状ネット10,11(図9(B)参照)の対,重ね合わせて対向させたネット10,11の対の対向間隙全体に挟み込まれたネット10,11と同一形状の平板状マット14,及びネット10,11の対の周囲を接合することによりマット14をネット10,11の対と一体化する接合部材16を備えてなるものである。
好ましい実施例では,図1に示すように,ネット10,11の対を,各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11が揃うように重ね合わせる。他の実施例では,図2に示すように,ネット10,11の対を,各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11が交差するように重ね合わせることもできる。マット14は例えば遮水性又は難透水性のマットとすることができる。或いは,マット14を透水性の不織布又は織布製とすることも可能である。望ましくは,図8(A)に示すように,ネット10,11の対の所要部位に持ち運び用の把持部22を取り付ける。
また,本発明による複合型ネット20を用いた土木用籠材30の一態様は,図3の実施例に示すように,平行配列の複数本の合成樹脂製線材1a,1bを隣接する線材1a,1b同士の撚り合わせにより亀甲網状に編み上げた平板状ネット10を6面からなる箱型に形成した土木用籠材であって,少なくとも1面を複合型ネット材20により形成してなるものである。図3の箱型の土木用籠材30は,図1のように各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11を揃えて重ね合わせた複合型ネット20,或いは図2のように各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11を交差させて重ね合わせた複合型ネット20の何れを用いても形成することができる。
本発明による複合型ネット20を用いた土木用籠材30の他の態様は,図4及び図5の実施例に示すように,複合型ネット材20をそのネット材20内の線材1の向きLの軸O(図4(A)参照)又は線材1の向きLと交差する軸P(図5(A)参照)の周りに筒状にまるめて形成したパイプ型籠材であって,そのパイプ型籠材の両端の開口33の部位に巾着状に絞って閉鎖する絞り部材34(図4(A)~(C)参照)を設けてなるものである。図4及び図5のパイプ型の土木用籠材30は,図1のように各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11を揃えて重ね合わせた複合型ネット20を用いて形成することができる。
土木用籠材30をパイプ型とする場合は,図4(A)~(C)に示す絞り部材34に代えて,図4(D)及び図5(C)に示すように,複合型ネット材20をパイプ型籠材30の両端の開口33の形状に成形した蓋状ネット材36を設けてよい。図4(D)及び図5(C)の蓋状ネット材36は,図1のように各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11を揃えて重ね合わせた複合型ネット20,或いは図2のように各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11を交差させて重ね合わせた複合型ネット20の何れを用いても形成することができる。
本発明による複合型ネット20を用いた土木用籠材40の更に他の態様は,図8(B)に示すように,平行配列の複数本の合成樹脂製線材1a,1bを隣接する線材1a,1b同士の撚り合わせにより亀甲網状に編み上げた平板状ネット10(図9(B)参照),その平板状ネット10と線材向きが揃うように対向させた同一形状の複合型ネット材20,及び平板状ネット10及び複合型ネット材20の周囲を接合する接合部材16を備えてなるものである。図8(B)のようなシート型の土木用籠材30は,図1のように各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11を揃えて重ね合わせた複合型ネット20を用いて形成することができる。
本発明による複合型ネット材は,合成樹脂製線材1a,1bを亀甲網状に編み上げた所定形状の平板状ネット10,11の対を重ね合わせて対向させ,そのネット10,11の対の対向間隙全体にネット10,11と同一形状の平板状マット14を挟み込み,接合部材16によりネット10,11の対の周囲を接合することによりマット14をネット10,11の対と一体化するので,次の効果を奏する。
(イ)マット14がネット10,11の対に挟み込まれているので,ネット10,11で包まれたマット14に直接外圧や野外動物のかじりが加わることを防ぎ,外圧や野外動物によるマット14のずれ又は損傷を小さく抑えることができる。
(ロ)マット14のずれ又は損傷によって起こるネット10,11の隙間の発生を避け,ネット10,11とマット14とが一体的に組み合わされた効果を安定的に維持することができる。
(ハ)ネット10,11を介してマット14に荷重が加わるので,マット14に加わる荷重を平均化することができ,荷重の平均化によりマット14とネット10,11との密着性を強化することができる。
(ニ)ネット10,11の対を各ネット内の線材1の向きが揃うように重ね合わせることにより,その線材の向きLの軸の周りに変形しやすい複合型ネット材とすることができる一方で,ネット10,11の対を各ネット内の線材1の向きが交差するように重ね合わせることにより,湾曲するが反発力が生じて変形しにくい複合型ネットとすることもできる。
(ホ)変形しにくい複合型ネットを用いて6平面からなる箱型の土木用籠材30に成形することもできるが,変形しやすい複合型ネット材を線材向きLの軸P又は線材向きLと交差する軸Pの周りに筒状にまるめてパイプ型の土木用籠材30に成形することもできる。
(ヘ)ネット10,11とマット14とが一体化された複合型ネット材を用いて土木用籠材を形成することにより,床面部だけでなく全方向にマット14が張り込まれた土木用籠材とすることができ,全方向にマットが張り込まれた土木用籠材とすることで多様な用途への利用が期待できる。
以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
本発明の複合型ネット材の一実施例の説明図である。 本発明の複合型ネット材の他の実施例の説明図である。 本発明の複合型ネット材を用いた箱型の土木用籠材の一実施例の説明図である。 本発明の複合型ネット材を用いた円筒型の土木用籠材の実施例の説明図である。 本発明の複合型ネット材を用いたパイプ型の土木用籠材の他の実施例の説明図である。 複合型ネット材を用いた堤防保護方法,及び畦畔保護方法の実施例の説明図である。 複合型ネット材を用いた水路制水方法の実施例の説明図である。 図6及び図7の堤防保護方法,畦畔保護方法,及び水路制水方法に適した複合型ネット材及びそれを用いたシート型の土木用籠材の実施例の説明図である。 従来の亀甲網ネット及びそれを用いた土木用籠材の一例の説明図である。
図1は,本発明による複合型ネット材20の一実施例を示す。図示例の複合型ネット材20は,所定形状の亀甲網状の平板状ネット10,11の対と,そのネット10,11と同一形状の平板状マット14と,ネット10,11の対の周囲を接合する複数の接合部材16とを有する。図1(A)に示すように平板状ネット10,11の対を重ね合わせて対向させつつ,そのネット10,11の対向間隙全体に平板状マット14を挟み込み,図1(B)に示すように接合部材16によりネット10,11の対の周囲を接合してマット14をネット10,11の対と一体化する。図示例では,ネット10,11及びマット14を何れも同一形状の矩形としているが,複合型ネット材20の形状は矩形に限定されるものではなく,用途に応じて円形,多角形その他の任意の形状とすることができる。
図示例の平板状ネット10,11は何れも,図9(B)を参照して上述したように,所定間隔Wで平行配列の複数本の合成樹脂製線材1a,1b,1c……を,隣接する線材1a,1b,1c……同士の所定ピッチDおきの撚り合わせにより亀甲網状に編み上げたものである。線材1の間隔(=W)及び撚り合わせピッチ(=D)は,亀甲網の用途に応じて適宜選択可能である。合成樹脂製線材1の材質は,適当なプラスチック線,プラスチックで被覆した線材を適宜選択できるが,好ましくはポリエステルモノフィラメントとする。ポリエステルモノフィラメントには,長期間設置しておいてもほとんど劣化せず,形状保持性も高いという有利性がある。
ポリエステルモノフィラメントは,ジカルボン酸とジオールを主原料として製造される熱可塑性エンジニアリングプラスチックである。ポリエステルのジカルボン酸成分としては,例えばテレフタル酸,2,6-ナフタレンジカルボン酸,イソフタル酸,1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられ,ジオール成分としてはエチレングリコール,ブチレングリコール,プロピレングリコール,テトラメチレングリコール,1,4―シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらのジカルボン酸成分とジオール成分とを適宜組み合わせて合成されたポリエステルモノフィラメントを適宜使用することができる。この中で,ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり,ジオール成分の90モル%がエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート(PET)のポリエステルモノフィラメントが最も好適である。
図示例の平板状マット14は透水性の不織布製マットを示し,例えば厚さT1=0.5~20mm程度のポリエステル系不織布製の洗堀防止用土木マット(乃至シート)である。不織布製マットは,透水性ではあるが,供用時間の経過に応じて不織布の目詰まりによる遮水・浸水防止効果の補強(圧力ズレ防止)が期待でき,後述するように洪水,高潮,津波などの都市型浸水V(急激な水位上昇や降水状態,図3(E)参照)に対する浸水防止対策資材として利用することができる。他方で不織布マットは,保水効果と形状安定強化(陥没防止・凹凸発生防止)も期待でき,適当な方法で水分補給が行われれば乾燥状態を防いで常に湿潤状態に保持することができ,後述するように植物体の根が入り込む植栽基盤(花壇等)としての役目を果たすこともできる。
ただし,マット14は野外において長期間使用できる耐久性のものであれば足り,材質及び厚さにとくに制限はなく,例えば不織布に代えてポリエステル系織布製マットを用いることもできる。また,必要に応じてマット14を遮水性又は難透水性とすることも有効であり,例えば塩化ビニル製又はベントナイト系の土木マットを用いることもできる。もっとも,遮水性又は難透水性のマット14は厚さや重量が大きくなるので,取り扱いが多少難しくなる。マット14は1枚に限らず,複数枚のマット14を重ねて挟み込むことにより厚さ等を調整することも有効であり,例えば複数の不織布製マットを挟み込むことによって遮水性能や保水性能を調整することも可能である。
図示例の接合部材16は,マット14を挟み込んだネット10,11の周囲を両ネット側から閉じる部材であり,例えば両ネット10,11の網目を縫い合わせるような縫合部材,或いは網目に通して両ネット10,11を結束する結束部材とすることができる。例えば,ポリエステルモノフィラメント単線製の接合部材16(結束バンド)を用い,両ネット10,11の網目の目合を合わせて結束する。また,各ネット10,11の周囲にマット14から食み出す部分を設けて接合部材16とし,その両ネット10,11の食み出し部分を相互に撚り合わせてマット14をネット10,11の対と一体化することも可能である。接合部材16は,図示例のように各ネット10,11の周囲に設ければ足りるが,必要に応じて両ネット10,11の中央部分にマット14を貫通して両ネット10,11を接合する部材を設けることも有効である。
図1では,両ネット10,11を,各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11が揃うように重ね合わせてマット14と一体化している。図9を参照して上述したように,亀甲網状の平板状ネット10,11は線材1の撚り合わせ部が回転軸として機能するので,各ネット10,11内の線材向きL10,L11を揃えることにより,その線材向きLの軸の周りに折り曲げやすい(変形しやすい)複合型ネット材20とすることができる。折り曲げやすい複合型ネット材20は,例えば6面からなる箱型形状の土木用籠材30に成形することができるだけでなく(図3参照),後述するように複合型ネット材20を筒状にまるめてパイプ型の土木用籠材30に成形することが可能となる(図4及び図5参照)。また,後述するように,堤防等の凹凸又は階段のある地表面を保護するために複合型ネット材20を利用することもできる(図8参照)。図8(A)に示すように,複合型ネット材20には,ネット10,11の所要部位に持ち運び用の把持部22を取り付けることができる。
図2は,複合型ネット材20の他の実施例を示す。図示例の複合型ネット材20は,図1と同様の平板状ネット10,11の対,平板状マット14,及び接合部材16により構成されているが,両ネット10,11を,各ネット10,11内の線材1の向きL10,L11が交差するように重ね合わせてマット14と一体化している。各ネット10,11内の線材向きL10,L11を交差させることにより,様々な向きに湾曲するが反発力が生じて折り曲げにくい(変形しにくい)複合型ネット材20とすることができる。折り曲がりにくい複合型ネット材20は,例えば6面からなる箱型に成形し,その箱型形状を長期間維持すべきような土木用籠材30に利用することができる(図3参照)。
図3は,上述した図1又は図2の複合型ネット材20を6面からなる箱型に形成した土木用籠材30の一実施例を示す。図3(A)に示すように,図示例の籠材30は3つの分割体ネット,すなわち床面20Pからなる第1複合型ネットと,頂面20Cからなる第2複合型ネットと,前方側面20F,右側面20R,左側面20L及び背後側面20Sからなる第3複合型ネットとにより構成されている。第1及び第2複合型ネットはそれぞれ図2の折り曲げにくい複合型ネット20であり,第3複合型ネットは図1の折り曲げやすい複合型ネット20である。
ただし,箱型の土木用籠材30に用いる複合型ネット材20の折り曲げやすさは図示例に限定されず,すべての面を折り曲げにくい又は折り曲げやすい複合型ネット20とすることも可能である。また,箱型の土木用籠材30の全ての面を複合型ネット材20とする必要はなく,図9のように平板状ネット10を6面からなる箱型に形成した土木用籠材において,少なくとも1面を複合型ネット材20として土木用籠材30とすることも有効である(1面を複合型ネット材20Pとした図8(B)の土木用籠材30も参照)。
先ず第3複合型ネットを所定3か所の折り曲げ線で折り曲げて,線材向きLがY方向の前方側面20F及び背後側面20Sと,線材向きLがX方向の右側面20R及び左側面20Lを形成する。次に,折り曲げた第3複合型ネットの床面に第1複合型ネットを突き合わて連結すると共に,頂面に第2複合型ネットを突き合わせて連結することにより,図3(B)に示すような箱型の土木用籠材を形成する。各複合型ネットは,例えば相互の突き合わせ部分に適当な接合部材(例えばポリエステルモノフィラメント単線製の結束バンド)を介在させて連結することができる。
図3(B)の土木用籠材30は,中詰め材32を詰め込むことにより,従来の同様の水工や土木工に利用することができる。また,全方向にマット14が張り込まれているので,例えば不織布製マット14を張り込むことにより都市型浸水対策の資材として利用することも期待できる。すなわち,洪水,高潮,津波などの都市型浸水Vでは地下入口その他の建物入口からの浸水防止対策が必要とされ,従来は大小の合成樹脂製の土嚢袋を用いた防水体を用いた浸水防止対策が通常行われている。しかし,従来の土嚢袋は耐久性が乏しく,常に新規のものを用意して都市型浸水に備える必要があるために非常に手間がかかっており,繰り返し使用できる耐久性の高い浸水防止対策資材の開発が求めらていた。
図3(B)の土木用籠材30は,高耐久性の合成樹脂製ネット10,11の対により不織布製マット14を挟み込んだ複合型ネット材20を全面に配置しているので,ネット10,11で包まれた不織布製マット14に直接加わる外圧を抑え,中詰め材32との衝突や運搬時の摩擦抵抗による不織布製マット14のずれ又は損傷を防止することができる。従って,ネット10,11と一体的に組み合わされた不織布製マット14の効果を長期にわたり安定的に維持することが期待でき,耐久性の高い浸水防止対策資材として利用することができる。
図3(C)は,浸水防止対策資材として利用する土木用籠材30を建物8の周囲の植栽基盤(花壇等)として用いることを示す。すなわち,不織布製マット14を挟み込んだ複合型ネット材20を用いると共に,籠材30の内側に中詰め材32と共に保水材(土等)を詰め込むと共に適当な方法で水分補給を行うことにより,通常時において土木用籠材30を植栽基盤とすることができる。洪水,高潮,津波などの都市型浸水Vが懸念されるときは,図3(D)に示すように植栽基盤としていた土木用籠材30を建物8の入口9に移動させ,図3(E)に示すように従来の土嚢と同様に積み上げて浸水Vを防止する。このように土木用籠材30を移動させるため,図3(B)に示すように,土木用籠材30の所要部位には運搬用の把持部22を取り付けることができる。
図4は,上述した図1の折り曲げやすい複合型ネット20を用いて形成した土木用籠材30の他の実施例を示す。図4(A)及び図4(B)に示すように,矩形の折り曲げやすい複合型ネット材20を用い,その矩形ネット材20内の線材向きLの軸Oの周りに筒状にまるめてパイプ型の籠材を形成する。例えば,矩形の複合型ネット材20には線材向きLと平行な端縁24,24が2つ存在しているので(図3(A)の頂面及び床面の複合型ネット20C,20Pを参照),その両端縁24,24を突き合わせ又は重ね合わせることにより,筒状にまるめたパイプ型の籠材を形成することができる。図中の符号25は,両端縁24,24を突き合わせた接合部を示す。図4(B)は両端縁24,24を接合した直後の畳まれた籠材30を表し,図4(A)はパイプ型の籠材30の両端開口33,33を広げた状態を表している。
図4(A)及び図4(B)のパイプ型籠材30は,その両端の開口33の部位に沿って巾着状に絞って閉鎖する絞り部材34を設けている。図4(C)に示すように,籠材30の内部に中詰め材32を詰め込んだのち,絞り部材34を絞ってパイプ型籠材30の両端開口33を閉鎖することにより,従来の籠材と同様の水工や土木工に利用することができる。また,不織布製マット14が挟み込まれた複合型ネット20を用いることにより,図3(C)~(D)に示すような都市型浸水防止対策の資材として利用することもできる。必要に応じて,図4(C)のようにパイプ型籠材30の中心軸に沿って芯部材35を取り付けることができ,その芯部材35を利用してパイプ型籠材30を運搬することができる。
また,絞り部材34に代えて,図4(D)に示すように,複合型ネット材20をパイプ型籠材30の両端の開口33の形状に成形した蓋状ネット材36を設け,その蓋状ネット材36で一端の開口33を閉鎖したパイプ型籠材30の内部に中詰め材32を詰め込んだのち,他端の開口33に蓋状ネット材36を押し当てて閉鎖することも可能である。図示例の蓋状ネット材36は,図2の折り曲げにくい複合型ネット20を成形したものであるが,図1の折り曲げやすい複合型ネット20を成形したものとしてもよい。また,蓋状ネット材36の遮水性や保水性を必要としない場合は,マット14のない平板状ネット10(図9(B)参照)を成形して蓋状ネット材26としてもよい。パイプ型籠材30と蓋状ネット材36とは,例えば相互の突き合わせ部分に適当な接合部材(例えばポリエステルモノフィラメント単線製の結束バンド)を介在させて連結することができる。
図5は,図1に示す矩形の複合型ネット20(図1参照)を用いて形成した土木用籠材30の更に他の実施例を示す。この実施例では,図4のように矩形ネット材20をネット内の線材向きLの軸Oの周りにまるめるのではなく,線材向きLと交差(図示例では直交)する軸Pの周りに筒状にまるめてパイプ型の籠材30を形成する。矩形の複合型ネット材20には線材向きLと直交する端縁26,26が2つ存在しているので(図3(A)の複合型ネット20C,20P参照),その両端縁26,26を突き合わせ又は重ね合わせることにより,筒状にまるめたパイプ型の籠材を形成することができる。図中の符号25は,両端縁26,26を突き合わせた接合部を示す。
図5(A)のパイプ型籠材30は,その両端の開口33の形状に成形した蓋状ネット材36を有する。例えば図5(C)に示すように,一端の開口33を蓋状ネット材36で閉鎖したパイプ型籠材30の内部に中詰め材32を詰め込んだのち,他端の開口33に蓋状ネット材36を押し当て閉鎖することにより,従来の籠材と同様の水工や土木工として利用することができる。図示例の蓋状ネット材36は,図1の折り曲げやすい複合型ネット20,又は図2の折り曲げにくい複合型ネット20を用いて成形することができる。パイプ型籠材30と蓋状ネット材36とは,例えば相互の突き合わせ部分に適当な接合部材(例えばポリエステルモノフィラメント単線製の結束バンド)を介在させて連結する。
図5(A)のパイプ型籠材30は,図4(A)のパイプ型籠材30に比して変形しにくい利点を有する。すなわち,図1の複合型ネット20は線材向きLの軸Oの周りには変形しやすいのに対し,線材向きLと交差する軸Pの周りには湾曲するが反発力が生じて変形させにくい。従って,軸Oの周りに筒状にまるめた図4(A)のパイプ型籠材30は,口径を容易に小さくできる利点を有しているが,外力が加わると変形しやすい。他方,軸Pの周りに筒状にまるめた図5(A)のパイプ型籠材30は,口径を小さくすることは難しいが,外力に対して反発力を生じるので変形しにくい。従って,大きな外圧や水圧が加わる水工や土木工として用いた場合にも,長期間にわたり変形せずに安定的に利用できる。
また,不織布製マット14が挟み込まれた複合型ネット20を用いて図4(A)又は図5(A)のパイプ型籠材30とすることにより,図3(C)~(D)のような都市型浸水防止対策の資材として利用することもできる。なお,浸水防止対策の資材とする場合は,図3(E)のように複数を積み上げるだけでなく,図4(E)のように複数を直列状に並べ,隣接する籠材30の端面を相互に押し付けて浸水防止対策工とすることもできる。すなわち,洪水,高潮,津波などの都市型浸水Vが懸念されるときに,図3(E)のように複数の籠材30を建物入口9に積み上げると共に,図4(E)のように複数の籠材30の端面を相互に押し付けながら直列状に並べることにより,様々な大きさ・形状の地下入口その他の建物入口の都市型浸水対策工とすることができる。
なお,図4(E)の実施例では直列状に並べた籠材30の両端面を中心軸Oと直交させているが,図5(D)及び図5(E)に示すように籠材30の両端面を中心軸Pと斜めに交差させ,隣接する籠材30の接触面を大きくすることにより,直列状に並べた籠材30の間隙からの浸水を確実に防止することが期待できる。図5(D)は両端面を中心軸Pに対して同じ角度(例えば45度)で交差させて平行とした籠材30,図5(E)は両端面を正負が異なる同じ角度(例えば45度と-45度)で交差させた籠材30を示す。図5(図5(B)及び図5(C)は,両端面を中心軸Pと斜めに交差させたパイプ型籠材(斜め端面のパイプ型籠材)30を形成する手順を示す。この場合は,図1のような矩形の複合型ネット20に代えて,図5(B)のような斜め端面の円柱展開図に応じた形状の複合型ネット20を用いる。
図5(B)の複合型ネット20は,斜め端面の円柱展開図の形状に裁断した平板状ネット10,11の対を線材向きLが揃うように重ね合わせて対向させ,同じく円柱展開図の形状に裁断した平板状マット14をネット10,11の対向間隙全体に挟み込み,接合部材16によりネット10,11の対の周囲を接合してマット14をネット10,11の対と一体化することにより作成したものである。このように作成した複合型ネット20を,図5(C)に示すようにネット内の線材向きLと交差する軸Pの周りに筒状に丸めてパイプ型籠材を形成する。
次いで,軸Pの周りに筒状に丸めてパイプ型籠材30の両端の開口33を閉鎖する蓋状ネット材36を設け,一端の開口33を蓋状ネット材36で閉鎖したうえで内部に中詰め材32を詰め込んだのち,他端の開口33に蓋状ネット材36で閉鎖することにより,図5(C)に示すような斜め端面のパイプ型籠材30を形成することができる。なお,図示例ではネット内の線材向きLと交差する軸Pの周りに筒状に丸めたパイプ型籠材30を示しているが,図4(D)の場合と同様に,ネット内の線材向きLの軸Oの周りに筒状に丸めて斜め端面のパイプ型籠材30を形成することもできる。
こうして本発明の目的である「ネットと組み合わせたマットの損傷を小さく抑えることができる複合型ネット材及びそれを用いた土木用籠材」の提供を達成できる。
図6(A)~図6(D)は,複合型ネット材20を単独で護岸や土手等の法面保護又は棚田の畦畔保護に適用した実施例を示す。図1に示す複合型ネット材20は,図3~図5を参照して上述したように箱型又はパイプ型の土木用籠材30に成形し,中詰め材32を詰め込むことにより籠材30として利用することができる。もっとも,単独でネット10,11とマット14とを一体化して安定的に維持する機能を有しているので,中詰め材32を必要としない場合は,図8(A)に示すように耐久性が高く折り曲げやすい(変形しやすい)複合型ネット材20として単独で堤防保護や畦畔保護に利用することもできる。複合型ネット材20には,必要に応じて,所要部位に持ち運び用の把持部22を取り付けることができる。
また,複合型ネット材20を堤防保護や畦畔保護に適用する場合は,図3~図5のような箱型又はパイプ型の土木用籠材30に代えて,図8(B)に示すようなシート型の土木用籠材40に成形することも有効である。図8(B)のシート型籠材40は,図1のように各ネット10,11内の線材1の向きLを揃えて重ね合わせた折り曲げやすい複合型ネット20Pと,その複合型ネット20と線材向きLが揃うように対向させた同一形状の平板状ネット10C(図9(B)参照)と,その複合型ネット材20及び平板状ネット10Cの周囲を接合する接合部材16とを有する。図示例では,複合型ネット材20及び平板状ネット10Cの周囲のうち,線材向きLと交差する方向の端縁に線材向きLの平板状ネット10R,10Lを介在させ,そのネット10R,10Lを介して複合型ネット材20と平板状ネット10Cとを接合している。ただし,平板状ネット10R,10Lは省略可能であり,線材向きLと交差する方向の端縁を接合部材16で接合してもよい。
図8(B)のシート型籠材40は,複合型ネット材20と平板状ネット10Cとの間に中詰め材32を詰め込むことにより,従来の同様の水工や土木工に利用することができる(図6(D),図6(E),図7(A)も参照)。また,例えば複合型ネット材20に不織布製マット14を張り込むことにより,保水機能を備えると共に,不織布の目詰まりによる遮水・浸水防止機能を備えることができる。しかも,図8(A)の複合型ネット材20と同様の高い折り曲げやすさ(変形しやすさ)と高い耐久性を有している。従ってシート型籠材40は,保護対象の法面や凹凸面に合わせて容易に変形させながら水工又は土木工に利用することができる。
図6(C)は,図8(A)の複合型ネット材20又は図8(B)のシート型籠材40を河川,湖沼等の水域Rの堤防(土手)の表面4に敷設し,水域Rで生息する動物が堤防4に巣穴5等を掘削することを防止する方法を示す。河川,湖沼等の水域Rの堤防4では,近年になって外来生物であるヌートリア(大型ネズミ)やアナグマ等の巣穴5が数多く発見されており,その巣穴5による堤防4の損傷が懸念されている(非特許文献1参照)。
例えば図6(A)に示すように堤防4を貫通するような巣穴5が掘削されると,図6(B)に示すように水域Rの水位上昇時に巣穴5を介して岸側(陸域)に水が噴き出すおそれがあり,水の噴き出しにより巣穴5の掘削径が徐々に広がると最終的に堤防4の崩壊を招くおそれがある。このような堤防4の掘削はコンクリート張りの堤防4を構築することで解決できるが,コンクリート張りの堤防4を構築するためには膨大な費用と時間を要する。水域周辺の住民が安価に短時間で対応できる堤防4の掘削防止対策が求められている。
図6(C)の実施例は,例えば透水性の不織布製マット14が挟み込まれた図8(A)の折り曲げやすい複合型ネット20(又はその複合型ネット材20を用いた図8(B)のシート型籠材40)を用い,堤防4の表面に凹凸又は階段に合わせて折り曲げやすい複合型ネット20を敷設することにより,動物による巣穴5の掘削を防止している。堤防4の表面に不織布製マット14を直接敷設する方法では,動物のかじりによってマット14のずれや損傷を生じ,マット敷設の効果が短期間で失われる可能性が高い。複合型ネット20(又はその複合型ネット材20を用いたシート型籠材40)は,マット14がネット10,11の対に挟み込まれており,動物のかじりによるマット14の損傷を防ぐことができるので,マット敷設の効果を長期間安定的に維持することができるので,動物による堤防4の掘削を効果的に防ぐことが期待できる。
なお,図6(C)の実施例は動物の掘削による堤防4の決壊防止や形態の変形防止を目的とするものであるが,図8(A)の複合型ネット材20(又はその複合型ネット材20を用いた図8(B)のシート型籠材40)で堤防4を被覆する目的はこれに限定されない。堤防供用時の防災上の対策を目的として,図6(D)に示すように堤防4の堤外地側堤体4a(堤防に挟まれて水の流れている側の堤体表面)と対向するように複合型ネット20(又はシート型籠材40)を設置すること,或いは堤外地側堤体4a及び堤内地側堤体4b(堤防によって洪水氾濫から守られている住居や農地のある側の堤体表面)に対向するように複合型ネット20(又はシート型籠材40)を設置することも有効である。
図6(D)及び図6(E)の実施例では,堤防4の堤外地側堤体4a(又は堤外地側堤体4a及び堤内地側堤体4b)に単層又は複数層のシート型籠材40(又は複合型ネット20)を覆うように被せ,地中アンカー,杭,鋼矢板等の固定部材41によってシート型籠材40(又は複合型ネット20)を堤防4に対して固定している。堤防4をシート型籠材40(又は複合型ネット20)で被覆することにより,堤防4を貫通するような浸透水の発生を防止し,堤防4の防災機能を長期にわたって維持することができる。この場合に,水と接するシート型籠材40(又は複合型ネット20)の端部は,水量増加時に水の流下エネルギーによって堤防4に洗掘の発生することを防止するため,水の流れる水中に必要な長さを延出させて(できれば水底に到達するまで延出させて)設置することが望ましい。
図6(D)は,図8(A)の複合型ネット材20又は図8(B)のシート型籠材40を傾斜地の棚田6の畦畔7の表面に敷設し,上段圃場6c(6b)から下段圃場6b(6a)への浸透水による畦畔7の崩壊を防止する方法を示す。傾斜地の棚田6では,各圃場6a,6b,6cの段差が大きくなり,畦畔7の法面も大きくなっているため,畦畔7が崩壊するおそれが常に存在する。とくに休耕地が増えた棚田6では,畦畔7の手入れも不十分となっているため,崩壊するおそれが高まっている。畦畔7の崩壊の1つの原因は上段圃場6c(6b)から下段圃場6b(6a)への浸透水であることが判明しており,そのような浸透水の水量を減少できれば畦畔7の崩壊を抑制することができる(非特許文献2参照)。
図6(D)の実施例は,例えば不透水性マット14が挟み込まれた図8(A)の複合型ネット20(又は図8(B)のシート型籠材40)を用い,棚田6の畦畔7の表面に凹凸に合わせて折り曲げやすい複合型ネット20を敷設することにより,浸透水の水量を減少させている。不透水性マット14を直接敷設する方法では,動物のかじり等によってマット14のずれや損傷を生じ,マット敷設の効果が短期間で失われる可能性が高い。複合型ネット20は動物のかじりによるマット14の損傷を防ぐことができるので,マット敷設の効果を長期間安定的に維持することができ,浸透水による畦畔7の崩壊を効果的に防ぐことが期待できる。
図7(A)は,図8(B)のシート型籠材40をコンクリート三面張り水路の制水に適用した実施例を示す。従来から,中小規模の河川支流,雨水路,下水路,用水路,排水路等として水底及び両岸をコンクリート張りとした三面張り水路50が用いられている。三面張り水路では様々な理由で流水を制御すること(制水)が求められるが,コンクリート構造物の強度に影響を与える金具等の打ち込むは避けられる傾向にあり,三面張り水路50の簡易な制水方法の開発が求められていた。図7(A)のように,シート型籠材40をコンクリート三面張り水路50の内面(両岸及び底面)に沿って敷設することにより,三面張り水路50の制水に利用することができる。
図7(A)の実施例では,図8(B)のシート型籠材40を,その内部の複合型ネット材20及び平板状ネット10の線材向きLを水路方向Qと一致させたうえで,水路50を幅方向に横断するように内面両岸及び内側底面に敷設している。それと共に,図4及び図5のパイプ型籠材30を,その中心軸O(又はP)を水路方向Qと交差させたうえで,水路方向Qに所要間隔で設置している。例えばシート型籠材40の線材向きLの幅Gを5m程度とし,その幅=5mのシート型籠材30を水路方向Qに10~20m間隔で水路50を横断するように敷設して制水工とする。パイプ型籠材30は,水流の溜まり(溜水)を形成するものであり,溜水を形成すべき所要間隔でシート型籠材40と重なるように水路方向Qと交差させて設置する。
図7(B)及び図7(C)はシート型籠材40を敷設した図7(A)の水路50の断面図を示し,同図(B)はパイプ型籠材30と重ならない部分の断面図,同図(C)はパイプ型籠材30と重なる部分の断面図を表している。図7(B)に示すように,水路50を幅方向に横断させて敷設したシート型籠材40は,その両端をアンカー杭等の固定部材41を用いて水路50の両岸Eに固定することができる。また図7(C)に示すように,パイプ型籠材30はシート型籠材40の上方に設置し,接合部材16(例えばポリエステルモノフィラメント単線製の結束バンド)でシート型籠材40と結合することより水路50に固定することができる。このように図6(E)の実施例は,シート型籠材40及びパイプ型籠材30を水路50の両岸Eに固定するので,コンクリート構造物に金具等を打ち込む必要がなく,水路50の制水に際してコンクリート構造物の強度に影響を避けることができる。
図7(A)~(C)の実施例において,水路50の流水はシート型籠材40及びパイプ型籠材30の重なる重畳部分(図7(C)参照)において一旦堰き止められて溜水となり,溜水した水が重畳部分を越流して下流側に流出する。すなわち,重畳部分により流水水面の較差が形成され,溜水の利用が可能となる。図示例ではパイプ型籠材30を一層としているが,図3(E)のように複数のパイプ型籠材30を積み上げて大きな較差を形成することも可能である。また,水路50に形成された溜水を魚類,甲殻類,水生昆虫等の生物の住処とすることができると共に,溜水の周囲のシート型籠材40に詰め込んだ中詰め材32の隙間も生物の住処とすることができ,水路5における生物の生息を促進することができる。しかも,複合型ネット材20に不織布製マット14を張り込むことにより,保水機能を備えた制水工とすることができ,中詰め材32に保水材(土等)を含めることにより植栽機能を備えた制水工とすることもできる。
なお,図7(A)~(C)の実施例では水路50の内側底面にシート型籠材40を敷設しているが,図7(D)及び(E)に示すように水路50の内側底面のシート型籠材40は省略可能である。すなわち,図7(D)に示すように,一対のシート型籠材40を水路50の両岸Eに沿ってそれぞれ配置し,各籠材40のネット材20,10の線材向きLを水路方向Qと一致させたうえで,各籠材40の一端を岸Eに固定しつつ水路50の岸側内面を覆うように他端を垂れ下げて敷設してもよい。
この場合は,図7(E)に示すように,パイプ型籠材30を中心軸O(又はP)が水路50の水路方向Qと交差するように内側底面に設置し,接合部材16(例えばポリエステルモノフィラメント単線製の結束バンド)で両岸のシート型籠材40と結合することよりパイプ型籠材30を水路50に固定することができる。図7(D)及び(E)のように水路50の内側底面のシート型籠材40を省略した場合においても,パイプ型籠材30の設置部分において流水が一旦堰き止められて溜水となるので,図7(A)~(C)の場合と同様に溜水の利用が可能である。また,水路50に形成された溜水を生物の住処とすることができ,両岸の複合型ネット材20に植栽機能を付与することができる。
1,1a,1b…合成樹脂製線材 2…撚り合わせ部
4…堤防 4a…堤外地側堤体
4b…堤内地側堤体 5…巣穴
6…棚田(圃場) 7…畦畔
8…ビル(建築物) 9a,9b…出入口
10,11…平板状ネット 14…マット
16…接合部材
20…複合型ネット材 22…把持部
24,26…端縁 25…端縁接合部
30…土木用籠材(箱型,パイプ型) 32…中詰め材(石等)
33…開口 33…開口周縁
34…絞り部材 35…芯部材
36…蓋状ネット
40…土木用籠材(シート型) 41…固定部材
50…三面張り水路
D…撚り合わせピッチ
L…線材向き(折り畳み線)
B…折り曲げ部
W…線材間隔
V…洪水(高潮,津波)
R…水域
O,P…筒の中心軸
T1…マットの厚さ
E…岸
Q…水路方向
G…敷設長さ

Claims (13)

  1. 平行配列の複数本の合成樹脂製線材を隣接する線材同士の撚り合わせにより亀甲網状に編み上げた所定形状の平板状ネットの対,重ね合わせて対向させた前記ネットの対の対向間隙全体に挟み込まれた前記ネットと同一形状の平板状マット,及び前記ネットの対の周囲を接合することによりマットをネットの対と一体化する接合部材を備えてなる複合型ネット材。
  2. 請求項1の複合型ネット材において,前記ネットの対を,前記各ネット内の線材の向きが交差するように重ね合わせてなる複合型ネット材。
  3. 請求項1の複合型ネット材において,前記ネットの対を,前記各ネット内の線材の向きが揃うように重ね合わせてなる複合型ネット材。
  4. 請求項1から3の何れかの複合型ネット材において,前記マットを遮水性又は難透水性マットとしてなる複合型ネット材。
  5. 請求項1から3の何れかの複合型ネット材において,前記マットを透水性の不織布又は織布製としてなる複合型ネット材。
  6. 請求項1から5の何れかの複合型ネット材において,前記ネットの対の所要部位に持ち運び用の把持部を取り付けてなる複合型ネット材。
  7. 平行配列の複数本の合成樹脂製線材を隣接する線材同士の撚り合わせにより亀甲網状に編み上げた平板状ネットを6面からなるに形成した土木用籠材であって,少なくとも1面を請求項1から6の何れかの複合型ネット材により形成してなる複合型ネットを用いた土木用籠材。
  8. 請求項3又は請求項3に従属する請求項4から6の何れかの複合型ネット材を当該ネット材内の線材向きの軸又は当該線材向きと交差する軸の周りに筒状にまるめて形成したパイプ型籠材であって,当該パイプ型籠材の両端の開口部位に巾着状に絞って閉鎖する絞り部材を設けてなる複合型ネットを用いた土木用籠材。
  9. 請求項8の土木用籠材において,前記絞り部材に代えて,請求項1から6の何れかの複合型ネット材を前記パイプ型籠材の両端の開口形状に成形した蓋状ネット材を設けてなる複合型ネットを用いた土木用籠材。
  10. 平行配列の複数本の合成樹脂製線材を隣接する線材同士の撚り合わせにより亀甲網状に編み上げた平板状ネット,当該平板状ネットと線材向きが揃うように対向させた同一形状の請求項3又は請求項3に従属する請求項4から6の何れかの複合型ネット材,及び前記平板状ネット及び複合型ネット材の周囲を接合する接合部材を備えてなる土木用籠材。
  11. 請求項3若しくは請求項3に従属する請求項4から6の何れかの複合型ネット材又は請求項10の土木用籠材を水域の堤防の表面に敷設して当該堤防の動物による掘削又は崩壊を防止してなる堤防保護方法。
  12. 請求項3若しくは請求項3に従属する請求項4から6の何れかの複合型ネット材又は請求項10の土木用籠材を傾斜地の棚田の畦畔の表面に敷設して上段圃場から下段圃場への浸透水による畦畔の崩壊を防止してなる畦畔保護方法。
  13. 請求項10の土木用籠材をコンクリート三面張り水路の内面両岸に沿って敷設すると共に,請求項8又は請求項9の土木用籠材を前記水路の内側底面に水路方向と交差させて所要間隔で設置してなる水路制水方法。
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