JP7183818B2 - 堤体の補強構造 - Google Patents

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Description

本発明は、堤体の補強構造に関する。
近年、大規模な地震に伴い河川堤防やため池堤防の決壊が多数発生しており、また幾つかの大規模地震の発生が想定されていることから、堤防の耐震補強が重要性を増している。
このような背景を踏まえ、これまでに鋼矢板を用いた堤防(堤体)の補強技術が提案されている(例えば特許文献1および2参照)。
特許文献1に記載の堤体の耐震性能補強構造では、アースフィルダム又は溜池等の盛土された堤体のほぼ中央部分の長手方向に2列縦列に鋼矢板で形成された補強用板状体を埋設し、該両補強用板状体の上端部を所定間隔毎に連結部材により連結する二重締切り構造としている。
また、特許文献2に記載の堤防の補強構造では、堤防の堤外側の法肩付近に、当該堤防の延長方向に連続し、下端が地盤の支持層に達する鋼矢板で形成された鋼製壁が設けられ、堤内側の法肩付近には、離散的に配置される控え工が設けられ、前記鋼製壁と前記控え工とを前記堤防の天端付近で繋ぎ材により互いに連結している。
特開2003-321826号公報 特開2013-14962号公報
ところで、「農業土木学会論文集 TRANS. of JSIDRE No.218,
127~137 (2002. 4)の「豪雨による農業用ため池の破壊原因と被災の特徴」」に記載されているように、農業用ため池は全国に約20万~25万箇所存在するといわれており、農業のみならず地域の貴重な水資源となっている。しかし、築造年代が古く老朽化が進んでいるため池が多く、豪雨時におけるため池の被害が懸念されている。ため池の被害としては、すべり、浸食などによる堤体の損傷、堤体・基盤の漏水、付帯構造物の損傷が認められるが、被害のほとんどは豪雨によるものであり、その割合は95%以上となっている。
近年の豪雨/地震災害により、ため池の堤体の決壊に伴う被害が全国的に発生しており、全国に約20万~25万箇所所以上散在するため池の堤体補強が喫緊の課題となっている。
鋼矢板を用いた堤防補強工法としては、鋼矢板二重式仮締切工法が既に確立されており、本設構造としても海岸堤防へ採用されている。一方で、ため池堤防(堤体)においては、農業用として常時一定量貯水していることから、常時作用する堤体への偏水圧を考慮した対策が必要である。
上述した特許文献1および特許文献2に記載の従来の堤体の補強構造は、堤防(堤体)を線状に長い均一な構造物として捉え、堤体の延長方向(延在方向)に直交する2次元断面上で補強体の配置を工夫する補強工法を適用したり、線状構造物としての堤体延長方向内部の範囲内で離散的に補強体構造を設置したりすることが主体であった。
しかし、堤体内部のみに構造体を設置し、災害時などに発生する水圧等に抵抗しようとすると、補強構造体が大型となり、工費・工期が嵩んでしまうという問題がある。
また、上述した従来の堤体の補強構造では、屈曲部などを有したり、箇所によって支持地盤構成が異なったりするなど、複雑形状のため池に対しては、堤体崩壊の危険度に応じた補強対策が困難であった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、従来に比して工費・工期を短縮できるとともに、複雑形状のため池に対して、堤体崩壊の危険度に応じた補強対策を容易に行える堤体の補強構造を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の堤体の補強構造は、ため池の外周の少なくとも一部に設けられた堤体を補強する堤体の補強構造であって、
少なくとも一部が前記堤体の内部に設置された鋼製壁と、
前記ため池に設置された控え工と、
前記鋼製壁と前記控え工とを連結する連結部材と、
を備えることを特徴とする。
ここで、鋼製壁としては、鋼矢板を複数連結してなる鋼矢板壁が好適に使用されるが、これに限るものではない。例えば、鋼管矢板を複数連結してなる鋼管矢板壁、鋼矢板と鋼管矢板を複数連結してなる鋼製壁等を使用してもよい。
また、前記控え工としては、ため池の底部に上端部を突出させた設置された杭(鋼管杭やコンクリート杭)や鋼矢板が挙げられるがこれに限るものでない。
また、控え工は、一つの鋼製壁に対して少なくとも一つ設置するのが好ましい。
また前記連結部材としては、タイロッドが挙げられるがこれに限るものでない。例えばPC鋼棒やPC鋼線等の所定の引張強度を有するものであればよい。
本発明においては、少なくとも一部が堤体の内部に設置された鋼製壁と、ため池に設置された控え工とが連結部材によって連結されているので、控え工と連結部材とによって鋼製壁の曲げ耐力(豪雨時等にため池側から作用する水圧に対する曲げ耐力)を確保することができる。したがって、屈曲部などを有したり、箇所によって支持地盤構成が異なったりするなど、複雑形状のため池においても、堤体全体に亘って一律の補強工法とすることなく、堤体崩壊の危険度に応じた壁体補強対策が可能となるとともに、経済的な補強が可能となり、従来に比して工費・工期を短縮できる。
また、ため池に控え工を設置するので、当該控え工および連結部材が堤体のため池反対側へ飛び出すとことがない。このため、堤体の外側に民家が近接してある場合などの土地利用上の制約を受けずに済む。
また、本発明の前記構成において、前記堤体の延在方向に沿って前記鋼製壁が複数設けられ、複数の前記鋼製壁は前記堤体の補強箇所の必要強度に応じて剛性を変化させてもよい。
ここで、鋼製壁の剛性を変化させるには、例えば鋼製壁が鋼矢板を複数連結してなる鋼矢板壁である場合、鋼矢板の型式を適宜選択して変えればよい。ハット形鋼矢板の型式には、例えば10型、25H型、45H型、50H型等があり、型式の数字が大きくなると断面二次モーメントが大きくなって剛性が高くなる。つまり、型式を適宜選択することによって、鋼製壁の剛性を変化させることができる。
また、鋼製壁が鋼管矢板壁、鋼矢板と鋼管矢板を複数連結してなる鋼製壁等の場合、鋼管板厚や鋼管間隔を変化させることで、鋼製壁の剛性を変化させることができる。
このような構成によれば、堤体に作用する水圧、堤体を支持する地盤の違いによって堤体の補強箇所の必要強度が異なる場合に、当該必要強度に応じて鋼製壁の剛性を変化させることで、必要補強強度に応じた合理的な補強構造が可能となる。
また、本発明の前記構成において、前記堤体の延在方向に沿って前記鋼製壁が非連続的に複数設けられ、
前記堤体の延在方向において隣り合う前記鋼製壁の前記延在方向における端部どうしが前記堤体の幅方向において重なっていてもよい。
ここで、「前記鋼製壁が非連続的に複数設けられ」とは、堤体の延在方向に隣り合う鋼製壁どうしが継手部等により連結されていない状態(例えば、鋼製壁どうしが互いに近接または当接した状態)で鋼製壁を連続的に複数設けることを意味する。
このような構成によれば、堤体の延在方向において隣り合う鋼製壁の前記延在方向における端部どうしが堤体の幅方向において重なっているので、堤体の延在方向全体に亘って堤体を補強できるとともに、堤体からの土砂流出を防止できる。
また、本発明の前記構成において、前記堤体の延在方向に沿って前記鋼製壁が非連続的に複数設けられ、前記控え工が共有控え工となっており、前記共有控え工と、複数の前記鋼矢板壁とが前記連結部材によって連結されていてもよい。
このような構成によれば、複数の鋼矢板壁が連結部材によって共有控え工に連結されるので、共有控え工の個数を削減でき、施工コストを減縮できる。
また、共有控え工に連結されている複数の連結部材によって、共有控え工に作用する引張力が打ち消しあうように、鋼製壁および連結部材の位置と方向を調整することによって、鋼製壁から連結部材を介して作用する共有控え工に必要な曲げ耐力を低減できる。このため、共有控え工の本数を削減でき、施工コストを縮減できる。
また、本発明の前記構成において、前記鋼製壁は前記堤体の下方に位置する支持層または岩盤に根入れされ、
前記鋼製壁の上端部と前記控え工または前記共有控え工とが前記連結部材によって連結されていてもよい。
このような構成によれば、鋼製壁は堤体の下方に位置する支持層または岩盤に根入れさているとともに、鋼製壁の上端部と控え工とが連結部材によって連結されているので、堤体の内部で鋼製壁をより強固に安定させることができ、鋼製壁に必要な剛性を低減することができる。
また、本発明の前記構成において、前記堤体の内部に前記堤体の幅方向に延在する構造物が設けられ、前記鋼製壁の下端の一部は、前記構造物まで達していなくてもよい。
ここで、堤体の内部に設けられる構造物としては底樋が挙げられるが、これに限るものではない。
また、鋼製壁が鋼矢板壁によって構成されている場合、当該鋼矢板壁を構成する複数の鋼矢板のうち、前記構造物の上方に位置する鋼矢板の下端部が前記構造物まで達していなくてもよい。
このような構成によれば、堤体の内部に設置された鋼製壁が堤体の内部の構造物に干渉して、当該構造物が損傷するのを防止できる。
本発明によれば、従来に比して工費・工期を短縮できるとともに、複雑形状のため池に対して、堤体崩壊の危険度に応じた補強対策を容易に行うことができる。
本発明の第1実施の形態に係る堤体の補強構造を模式的に示す概略図である。 同、堤体と地盤の横断面図である。 同、鋼矢板壁の斜視図である。 同、堤体の内部に設置されている鋼矢板壁の延在方向に沿う断面図である。 本発明の第2実施の形態に係る堤体の補強構造を模式的に示す概略図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態に係る堤体の補強構造を模式的に示す概略図、図2は堤体と地盤の横断面図である。
本実施の形態では、図1に示すように、平面視において、堤体10によってため池11の外周が囲まれているが、堤体10はため池の外周の少なくとも一部に設けられていればよい。
この場合、堤体が設けられていない部分は地山等の既設の地盤でかつ堤体またはそれ以上の高さを有する突部によって形成される。したがって、ため池の外周は、堤体および突部によって形成された土構造物によって囲まれることになる。なお、土構造物は、基本的に土を主体として形成された構造物であって、その内部や表面にコンクリート等で形成された各種施設や物品が設けられたものを含む。
本実施の形態では、平面視において、ため11は内側に食い込む異形のリング状に形成されている。具体的には、ため池11は平面視において楕円形の周方向の約1/4の部分が内側に大きく食い込んだものとなっており、この食い込んだ部分では、堤体10が平面視において2つの直線状に形成されている。したがって、平面視において堤体10は、略3/4楕円形リング状に形成された曲線部分10Kと2本の直線部分10L,10Lとによって構成されている。
図1に示すように、堤体10の内部には、複数の鋼矢板壁(鋼製壁)15が堤体10の延在方向に沿って一列で設置されている。具体的には、鋼矢板壁15は平面視において直線状に形成されているので、堤体10の曲線部分10Kでは、曲線部分10Kの内周縁に略接するか、或いは当該内周縁と所定の間隔をもって配置されている。また、曲線部分10Kにおいては、曲率が大きい部分で鋼矢板壁15の長さが短くなるとともに、設置数が多くなり、曲率が小さい部分で鋼矢板壁15の長さが長くなるとともに、設置数が少なくなっている。
また、堤体10の直線部分10Lにおいては、鋼矢板壁15は直線部分10Lの長さとほぼ等しいか、若干短くなっており、1つ設置されている。さらに、2つの直線部分10L,10Lが交わる部分においては、鋼矢板壁15は2つの直線部分10L,10Lの端部と交差するように配置されるとともに、直線部分10Lに設置されている鋼矢板壁15より短くなっている。
さらに、複数の鋼矢板壁15のうち、幾つかの鋼矢板壁15の一部(例えば、平面視における鋼矢板壁15の長手方向の端部や平面視における鋼矢板壁15の長手方向に沿う縁部)は、堤体10から突出している。このように本実施の形態では、鋼矢板壁15の少なくとも一部が堤体10の内部に設置されていればよい。
また、鋼矢板壁15は堤体10の延在方向に沿って非連続的に複数設けられている。具体的には、堤体10の延在方向に隣り合う鋼矢板壁15,15どうしは継手部等により連結されておらず、鋼矢板壁15,15どうしが互いに近接または当接した状態で連続的に複数設けられている。また、堤体10の延在方向において隣り合う鋼矢板壁15,15の端部どうしは、堤体10の幅方向において重なっているものが多い。
また、複数の鋼矢板壁15は堤体10の補強箇所の必要強度に応じて剛性を変化させている。例えば、後述するように、鋼矢板壁15がハット形の鋼矢板16を複数連結してなる鋼矢板壁15である場合(図3参照)、鋼矢板16の型式を適宜選択して変えればよい。
ハット形鋼矢板の型式には、例えば10型、25H型、45H型、50H型等があり、型式の数字が大きくなると断面二次モーメントが大きくなって剛性が高くなる。つまり、型式を適宜選択することによって、鋼矢板壁15の剛性を変化させることができる。
堤体10に作用する水圧、堤体10を支持する地盤の違いによって堤体10の補強箇所の必要強度が異なる場合に、当該必要強度に応じて鋼矢板壁15の剛性を変化させることで、必要補強強度に応じた合理的な補強構造が可能となる。
鋼矢板壁15は、図3に示すように、ハット形の鋼矢板16を複数連結することによって形成されている。
鋼矢板16はウェブ16aと、このウェブ16aの両端部にそれぞれ形成されたフランジ16bと、このフランジ16bのウェブ16aと逆側の端部に形成されたアーム16cとを備え、このアーム16cの先端部に継手16dが形成されている。
そして、隣り合う鋼矢板16,16どうしは継手16d,16dを互いに嵌合することによって連結され、これによって鋼矢板壁15が形成されている。
鋼矢板壁15を構成する鋼矢板はハット形の鋼矢板に限ることはなく、U形の鋼矢板、直線鋼矢板であってもよい。
また、図1および図2に示すように、堤体10の直下には軟弱層30があり、この軟弱層30の直下に支持層40または岩盤層がある。軟弱層30および支持層40はため池11の下方にも連続している。
なお、本実施の形態では、軟弱層30の上面に堤体10が設けられているが、軟弱層30がない場合、堤体10は支持層40の上面に直接設けられることになる。
また、堤体10の天端10aを挟んでため池11側(内側)を上流側、外側を下流側とすると、上流側に水が貯水されたため池11が存在している。また、堤体10は、天端10aを挟んで上流側に上流法面10b、下流側に下流法面10cを備えている。上流法面10bおよび下流法面10cの地表面(軟弱層30の上面)に対する傾斜角は等しくなっているが、上流法面10bと下流法面10cとで傾斜角を異なるものとしてもよい。
図2に示すように、ため池11には常時貯水されているが、常時満水位における水面が、堤体10の上流法面10bの高さの略1/2またはそれ以上の高さとなり、かつ、豪雨時等における設計洪水位における水面が、波の打上げ高さや水深に応じて、天端10aより1m以上、下げた高さとなるように、堤体10の高さが設定されている。
常時満水位の場合、それより上方の上流法面10bには、ため池11側から水圧は作用しないが、常時満水位を超えるとその分だけ上流法面10bに水圧が増加して作用する。つまり、堤体10に作用する水圧は、水面が常時満水位を超えると次第に増加し、豪雨等によって水面が設計洪水位となった場合に、最大となる。
また、堤体10は図示しない取水施設を備えている。この取水施設は、ため池11の貯水を取水するための斜樋または堅樋と、導水するための底樋(図4参照)とを有している。一般的には、堤体10の上流法面10bに沿って埋設された斜樋管に取水孔が設けられ、これから取り入れた用水が堤体10の底部に埋設された底樋に導かれて取水される。
前記堤体10の内部に設置されている鋼矢板壁15は、その長さ方向の中央部が基本的に堤体10の幅方向における中央部に位置するように、設置されているが、堤体10の幅方向の中央部から上流法面10b側または下流法面10c側に寄せて配置されている場合もある。
また、鋼矢板壁15の上端部は堤体10の天端10aと等しい高さ位置にあり、かつ支持層40の上部まで根入れされている。つまり、鋼矢板壁15は堤体10の下方に位置する軟弱層30を貫通して、当該軟弱層30の下方に位置する支持層40に根入れされている、すなわち、鋼矢板壁15の下端は支持層40の上面から所定深さだけ支持層40内に打設されている。
また、ため池11には控え工20が複数設置されている。この控え工20は、本実施の形態では、鋼管杭であるが、コンクリート杭であってもよい。控え工20は、図2に示すように、その上端部をため池11の水面(常時満水位の水面)より突出させて設けられるとともに、軟弱層30を貫通して、当該軟弱層30の下方に位置する支持層40に根入れされている。
また、控え工20の上端は堤体10の天端10aとほぼ等しい高さとなっているが、これに限ることはない。例えば、控え工20の上端をため池11の常時満水位と等しい位置としてもよい。このようにすると、控え工20がため池11の水中に没するので、景観が良好となる。
このような控え工20は、一つの鋼矢板壁15に対して少なくとも一つ設置するのが好ましいが、本実施の形態では、基本的に平面視において長さが長い鋼矢板壁15に対して2本設置され、短い鋼矢板壁15に対して1本設置されている。
2本設置されている控え工20,20は、鋼矢板壁15の長さ方向の両端部側に鋼矢板壁15と対向して配置され、1本設置されている控え工20は鋼矢板壁15の長さ方向の中央部側に鋼矢板壁15と対向して配置されている。
なお、長さが長い鋼矢板壁15であっても、その長手方向両側に位置する鋼矢板壁15,15の端部が、前記長い鋼矢板壁15の端部にため池11側から当接して、当該長い鋼矢板壁15のため池11側への移動が規制されている場合、控え工20は鋼矢板壁15の長さ方向の中央部側に鋼矢板壁15と対向して配置されている。
また、鋼矢板壁15と控え工20とは、連結部材22によって連結されている。連結部材22は、例えばタイロッド、PC鋼棒またはPC鋼線等の所定の引張強度を有するものであればよい。
また、連結部材22は、控え工20と鋼矢板壁15の上端間に水平に配置され、当該連結部材22の一端部が鋼矢板壁15の上端部に連結され、他端部が控え工20の上端部に連結されている。なお、特に控え工20が1本のみ設置される鋼矢板壁15においては、腹起し材を鋼矢板壁15を形成する全ての鋼矢板16に亘って取り付けた上で、連結部材22の一端を、鋼矢板壁15、もしくは腹起し材に取り付けてもいい。腹起し材を用いることで、鋼矢板15壁への水圧が増した時に、鋼矢板壁15が延在方向に撓むのを抑制することができ、堤体10の補強効果を高めることができる。控え工20が2本以上設置される場合においても、腹起し材を鋼矢板壁15に取り付けて、堤体10の補強強度を高めてもよい。
なお、控え工20の上端がため池11の常時満水位と等しい位置である場合、ため池11の水中において、控え工20の上端と鋼矢板壁15の上端より下側の部位との間に連結部材22(二点鎖線で示す)が水平に配置されたうえで、当該連結部材22の一端部が控え工20の上端部に連結され、他端部が鋼矢板壁15の上端より下側の部位に連結される。この場合、ため池11の水を一時抜いたうえで、連結部材22を鋼矢板壁15と控え工20とに連結すればよい。
また、図4に示すように、堤体10の底部に、当該堤体10の延在方向と直交する幅方向(図4において紙面と直交する方向)に延在する底樋等の構造物25が設けられている場合、鋼矢板壁15の下端の一部は、構造物25まで達していない。なお、底樋には、堤体10の上流法面10bに沿って埋設された斜樋管に取水孔から取り入れた用水が導かれて取水される。
鋼矢板壁15は複数の鋼矢板16を連結することによって形成されているので、これら複数の鋼矢板16のうち、構造物25の上方に位置する鋼矢板16の下端部が構造物25まで達していない、つまり、当該鋼矢板16の下端と構造物25との間には所定の隙間が設けられている。
以上のように本実施の形態によれば、堤体10の内部に当該堤体10の延在方向に沿って複数設置された鋼矢板壁15と、ため池11に設置された控え工20とが連結部材22によって連結されているので、控え工20と連結部材22とによって鋼矢板壁15の曲げ耐力(豪雨時等にため池11側から作用する水圧に対する曲げ耐力)を確保することができる。したがって、屈曲部などを有したり、箇所によって支持地盤構成が異なったりするなど、複雑形状のため池11においても、堤体全体に亘って一律の補強工法とすることなく、堤体崩壊の危険度に応じた壁体補強対策が可能となるとともに、経済的な補強が可能となり、従来に比して工費・工期を短縮できる。つまり、堤体10の最弱部に合わせて、堤体全体に一様な補強を施す必要がなくなり、堤体全体の補強工法として、材工費を低く抑えることができる。
また、ため池11に控え工20を設置するので、当該控え工20および連結部材22が堤体のため池反対側へ飛び出すとことがない。このため、堤体10の外側に民家が近接してある場合などの土地利用上の制約を受けずに済む。
また、複雑形状の堤体10においても、堤体10の内部に複数の鋼矢板壁15を堤体10の延在方向に沿って設置したので、つまり、堤体10の延在方向に連続する鋼矢板壁を延在方向に分割した分割壁方式となるため、直線状の鋼矢板壁15の構築が可能となり、施工時の位置決めが容易となる。特に、平面視で曲率が大きい(曲率半径が小さい)堤体では、鋼矢板壁15を構成する鋼矢板16の継手どうしの回転裕度が足りなく鋼矢板壁を構成することができなくなる場合があり、また屈曲部においては、異形鋼矢板などの特殊な鋼矢板が必要となるが、分割壁方式のためこれらの問題を回避できる。
さらに、複数の鋼矢板壁15は堤体10の補強箇所の必要強度に応じて剛性を変化させているので、堤体10に作用する水圧、堤体10を支持する地盤の違いによって堤体10の補強箇所の必要強度が異なる場合に、当該必要強度に応じて鋼矢板壁15の剛性を変化させることで、必要補強強度に応じた合理的な補強構造が可能となる。
また、堤体10の延在方向において隣り合う鋼矢板壁15の延在方向における端部どうしが堤体10の幅方向において重なっているので、堤体10の延在方向全体に亘って堤体10を補強できるとともに、堤体10からの土砂流出を防止できる。
また、鋼矢板壁15は堤体10の下方に位置する支持層40に根入れさているとともに、鋼矢板壁15の上端部と控え工20とが連結部材22によって連結されているので、堤体10の内部で鋼矢板壁15をより強固に安定させることができ、鋼矢板壁15に必要な剛性を低減することができる。
また、堤体10の内部に堤体10の幅方向に延在する底樋等の構造物25が設けられている場合、鋼矢板壁15を構成する複数の鋼矢板16のうち、構造物25の上方に位置する鋼矢板16の下端部が構造物25まで達していないので、鋼矢板壁15が構造物25に干渉して、当該構造物25が損傷するのを防止できる。
なお、本実施の形態では、各鋼矢板壁15を堤体10の幅方向の中央部において1列だけ設けたが、鋼矢板壁15を堤体10の幅方向に所定間隔離間して、2列またはそれ以上設けてもよい。この場合、堤体10の幅方向に隣り合う鋼矢板壁15,15どうしはタイロッド等の連結部材によって連結するのが好ましい。
(第2の実施の形態)
図5は第2の実施の形態に係る堤体の補強構造を模式的に示す概略図である。
第2の実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なる点は、前記控え工20が共有控え工21となっており、この共有控え工21と、複数の鋼矢板壁15とが連結部材22によって連結されている点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と共通部分には同一符号を付してその説明を省略する場合もある。
図5に示すように、本実施の形態では、ため池11の平面視における略左半分の中央部と略右半分の中央部とにそれぞれ共有控え工21が設置されている。この共有控え工21は、第1の実施の形態における控え工20より大径となっており、例えば、鋼管杭、コンクリート杭、またはケーソン等によって形成されている。
このような共有控え工21は、その上端部をため池11の水面より突出させて設けられるとともに、軟弱層30を貫通して、当該軟弱層30の下方に位置する支持層40に根入れされている。
また、共有控え工21の上端は堤体10の天端10aとほぼ等しい高さとなっているが、これに限ることはない。例えば、共有控え工21の上端をため池11の常時満水位と等しい位置としてもよい。このようにすると、共有控え工21がため池11の水中に没するので、景観が良好となる。
また、一方の共有控え工21は、平面視において堤体10の略左半分に設置されている複数の鋼矢板壁15によって囲まれるようにしてため池11に設置され、他方の共有控え工21は、平面視において堤体10の略右半分に設置されている複数の鋼矢板壁15によって囲まれるようにしてため池11に設置されている。
一方の共有控え工21と、堤体10の略左半分に設置されている複数の鋼矢板壁15とは連結部材22によって連結され、他方の共有控え工21と、堤体10の略右半分に設置されている複数の鋼矢板壁15とは連結部材22によって連結されている。
また、堤体10の略左半分と略右半分との接合部に配置されている鋼矢板壁15には、2本の連結部材22,22の一端部が結合され、一方の連結部材22の他端部は一方の共有控え工21に結合され、他方の連結部材22の他端部は他方の共有控え工21に結合されている。
各鋼矢板壁15は1本または2本の連結部材22によって共有控え工21に連結されているが、3本以上の複数本の連結部材22によって連結されていてもよい。連結部材22は、共有控え工21と鋼矢板壁15の上端間に水平に配置され、当該連結部材22の一端部が鋼矢板壁15の上端部に連結され、他端部が共有控え工20の上端部に連結されている。
なお、共有控え工21の上端がため池11の常時満水位と等しい位置である場合、ため池11の水中において、共有控え工21の上端と鋼矢板壁15の上端より下側の部位との間に連結部材22が水平に配置されたうえで、当該連結部材22の一端部が共有控え工21の上端部に連結され、他端部が鋼矢板壁15の上端より下側の部位に連結される。この場合、ため池11の水を一時抜いたうえで、連結部材22を鋼矢板壁15と共有控え工21とに連結すればよい。
また、各共有控え工21において、複数の連結部材22は平面視において周方向に所定間隔(好ましくは等間隔)で略放射状に配置されているが、共有控え工21を挟んで略一直線状に配置するのが好ましい。つまり、共有控え工21に360°方向から連結部材22によって作用する引張力が打ち消しあうように、対象とする鋼矢板壁15や連結部材22の位置と方向を調整する。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと以下のような効果を得ることができる。
すなわち、複数の鋼矢板壁15が連結部材22によって共有控え工21に連結されるので、共有控え工21の個数を削減でき、施工コストを減縮できる。
また、共有控え工21に連結されている複数の連結部材22によって共有控え工21に作用する引張力が打ち消しあうように、鋼矢板壁15および連結部材22の位置と方向を調整することによって、鋼矢板壁15から連結部材22を介して作用する共有控え工21に必要な曲げ耐力を低減できる。このため、共有控え工21の本数を削減でき、施工コストを縮減できる。
なお、本実施の形態では、各鋼矢板壁15を堤体10の幅方向の中央部において1列だけ設けたが、鋼矢板壁15を堤体10の幅方向に所定間隔離間して、2列またはそれ以上設けてもよい。この場合、堤体10の幅方向に隣り合う鋼矢板壁15,15どうしはタイロッド等の連結部材によって連結するのが好ましい。
10 堤体
10a 天端
11 ため池
15 鋼矢板壁(鋼製壁)
20 控え工
21 共有控え工
22 連結部材
25 構造物
30 軟弱層
40 支持層

Claims (6)

  1. ため池の外周の少なくとも一部に設けられた堤体を補強する堤体の補強構造であって、
    平面視において、全体が前記堤体の内部に設置されるか、または一部を前記堤体から突出させて前記堤体の内部に設置された鋼製壁と、
    前記ため池に前記堤体から離間して設置された控え工と、
    前記鋼製壁と前記控え工とを連結する連結部材と、
    を備えることを特徴とする堤体の補強構造。
  2. 前記堤体の延在方向に沿って前記鋼製壁が複数設けられ、
    複数の前記鋼製壁は前記堤体の補強箇所の必要強度に応じて剛性を変化させていることを特徴とする請求項1に記載の堤体の補強構造。
  3. 前記堤体の延在方向に沿って前記鋼製壁が非連続的に複数設けられ、
    前記堤体の延在方向において隣り合う前記鋼製壁の前記延在方向における端部どうしが前記堤体の幅方向において重なっていることを特徴とする請求項1または2に記載の堤体の補強構造。
  4. 前記堤体の延在方向に沿って前記鋼製壁が非連続的に複数設けられ、
    前記控え工が共有控え工となっており、
    前記共有控え工と、複数の前記鋼矢板壁とが前記連結部材によって連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の堤体の補強構造。
  5. 前記鋼製壁は前記堤体の下方に位置する支持層または岩盤に根入れされ、
    前記鋼製壁の上端部と前記控え工または前記共有控え工とが前記連結部材によって連結されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の堤体の補強構造。
  6. 前記堤体の内部に前記堤体の幅方向に延在する構造物が設けられ、
    前記鋼製壁の下端の一部は、前記構造物まで達していないことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の堤体の補強構造。
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