JP6082916B2 - 地中鋼製壁構造および地中鋼製壁構造の施工方法 - Google Patents

地中鋼製壁構造および地中鋼製壁構造の施工方法 Download PDF

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本発明は、盛土や傾斜地盤を安定させるための地中鋼製壁構造およびその施工方法に関する。
大地震時、締まり具合の緩い砂地盤では、間隙水圧の上昇により、基礎地盤が軟化する、いわゆる液状化現象が発生し、上部構造物や地下構造物に多大な被害が発生する。このような地盤に対し、構造物の両脇や周囲を鋼矢板で締切ることにより、被害防止することが行われている。
例えば、堤防の地震対策としては、堤防法尻(法面下端部)を鋼矢板で締め切る補強工法が適用されることが多いが、鋼矢板は液状化地盤の流動化による変形抑制を抑制する目的で設置されており、堤防自体を補強するものではない。
そのため、想定外の集中豪雨などで急激に水位が上昇することによる浸透破壊や、越水による破堤を防止する目的で、堤体内に鋼矢板を設置し複合構造とする研究が行われている。
このような複合構造の一例として、堤体内の左右の法肩部(法面上端部)にそれぞれ、堤体の連続方向に沿って鋼矢板を支持層まで打設することにより、二重の鋼矢板壁を設置し、左右の鋼矢板壁の頭部をタイロッドで結合するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この構造によれば、地震時に堤体の沈下を抑制し、さらに、遮水性に優れる鋼矢板が堤体の高さを確保することにより、高水時の浸透破壊と越水による破堤を防止できるので、堤防の補強として効果的な構造である。
特開2003−13451号公報
ところで前記従来の技術では、堤体に二重の鋼矢板壁を設置し、その頭部をタイロッドで結合しているので、地震等の際に地盤に液状化現象が生じた場合、堤体内部において、当該堤体の厚さ方向への土の流動を防止できるが、堤体の連続方向においては土の流動を規制しているものがないので、液状化現象が激しい場合、堤体内部の土が堤体の連続方向に流動し、その結果、堤体が沈下(天端の沈下)するおそれがある。
また、前記従来の技術では、タイロッドの設置のために、堤防の天端に対して掘削と埋戻しが必要となり、施工面で非常に手間を要するという問題がある。
さらに、河川堤防の場合は、堤防天端を掘削することは堤防高さを低くすることであり、一時的ではあるが洪水等に対する治水機能を低下させることとなる。
加えて、鋼矢板の頭部をタイロッドで結合した構造では、地震の際等に発生する地盤の液状化現象によって、堤防の土が沈下した場合に、対向する鋼矢板どうしが外側に膨らむようにようにして変形するおそれがある。鋼矢板の変形量をさらに抑制しようとすれば、タイロッドを2段に設置することも考えられる。しかし、この場合は、既存の斜面を大きく掘削するか、斜面下端で水平方向にボーリング削孔をするなどによってタイロッドを設置する必要があり、施工面では大幅に手間がかかることになる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、液状化現象に起因する堤体等の盛土や傾斜地盤の沈下を抑制できるとともに、施工が容易な地中鋼製壁構造および地中鋼製壁構造の施工方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の地中鋼製壁構造は、盛土や傾斜地盤に、複数列の地中鋼製壁が平行に設けられた地中鋼製壁構造であって、
互いに対向する前記地中鋼製壁間に、鋼製隔壁が当該地中鋼製壁とほぼ直角に設けられ、
前記鋼製隔壁は、上下の長さが前記地中鋼製壁より短く、かつ、下端が前記地中鋼製壁の下端より上方に位置するようにして設けられていることを特徴とする。
ここで、前記地中鋼製壁は、その下端部が地盤の支持層に達するようにして設けられていてもよいし、当該支持層の上の液状化層(液状化することが懸念される層)まで達するようにして設けられてもよい。
本発明においては、互いに対向する地中鋼製壁間に、鋼製隔壁が当該地中鋼製壁とほぼ直角に設けられているので、地震等の際に地盤に液状化現象が生じて、盛土や傾斜地盤の内部において、土が地中鋼製壁の連続方向に流動しようとしても、これを鋼製隔壁によって規制できるとともに、それと直角方向への土の流動を地中鋼製壁によって規制できる。このように、盛土や傾斜地盤の内部において土の流動を規制できるので、盛土や傾斜地盤の沈下を抑制できる。
また、鋼製隔壁は、上下の長さが地中鋼製壁より短く、かつ、下端が前記地中鋼製壁の下端より上方に位置するようにして設けられているので、施工も容易である。
つまり、鋼製隔壁は盛土の上面(天端)または傾斜地盤の上面である傾斜面から打ち込むことによって設置でき、従来のタイロッド設置の場合と異なり、堤防上面や傾斜面に対する掘削と埋戻しが不必要であり、しかも鋼製隔壁は上下の長さが地中鋼製壁より短く、かつ、下端が地中鋼製壁の下端より上方に位置するので、打ち込み長さ(深さ)も短くてすむ。したがって、従来に比して施工が容易となる。
また、本発明の前記構成において、前記鋼製隔壁の下端が、前記盛土の法尻または前記傾斜地盤の傾斜面の下端より深いところに位置しているのが好ましい。
このような構成によれば、鋼製隔壁の上下の長さを抑えながら、十分な補強効果を得ることができる。
つまり、盛土や傾斜地盤の場合、傾斜面と平地盤の境界となる傾斜面(盛土の場合は法面)の下端付近が最も変形が大きくなる傾向にあるので、鋼製隔壁の下端を、傾斜面の下端より深いところ位置するまで挿入することによって、傾斜面の下端の水平方向の変形を抑制することができ、十分な補強効果を得ることができる。
また、本発明の前記構成において、前記鋼製隔壁は、その両側端部が対向する前記地中鋼製壁に係合しているのが好ましい。
このような構成によれば、鋼製隔壁の両側端部が、対向する地中鋼製壁に係合しているので、鋼製隔壁どうしが外側に膨らむように変形するのを鋼製隔壁によって防止できる。したがって、地震の際等に発生する地盤の液状化現象によって、盛土や傾斜地盤が沈下するのをより効果的に抑制できる。
また、鋼製隔壁の上下の長さを適宜設定することによって、タイロッドを複数段設置するのと同等またはそれ以上の補強効果を得ることができるとともに、鋼製隔壁は打ち込み(打設)によって設置でき、従来のような傾斜面等の掘削も不必要なので、施工も容易となる。
また、本発明の前記構成において、前記鋼製隔壁は、ハット形鋼矢板、U形鋼矢板、Z形鋼矢板、直線形鋼矢板、H形鋼矢板、継手構造を有する鋼板のいずれかを、複数壁状に連結して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、所定の長さおよび高さ(深さ)の鋼製隔壁を、互いに対向する地中鋼製壁間に容易に施工できる。
また、対向する地中鋼製壁の、前記鋼製隔壁が係合する部位に、ハット形鋼矢板、U形鋼矢板、Z形鋼矢板、直線形鋼矢板、H形鋼矢板、継手構造を有する鋼板と連結可能な係合部(継手)を形成しておくことによって、鋼製隔壁の両側端部を対向する地中鋼製壁に容易に係合できる。
本発明の地中鋼製壁構造の施工方法は、盛土や傾斜地盤に、複数列の地中鋼製壁を平行に設け、
次に、互いに対向する地中鋼製壁間に、上下の長さが前記地中鋼製壁より短い鋼製隔壁を、前記地中鋼製壁とほぼ直角になるように、かつ、下端が前記地中鋼製壁の下端より上方に位置するようにして、前記盛土の上面(天端)または前記傾斜地盤の傾斜面から打ち込んで設けることを特徴とする。
本発明においては、互いに対向する地中鋼製壁間に、鋼製隔壁が当該地中鋼製壁とほぼ直角に設けるので、地震等の際に地盤に液状化現象が生じて、盛土や傾斜地盤の内部において、土が地中鋼製壁の連続方向に流動しようとしても、これを鋼製隔壁によって規制できるとともに、それと直角方向への土の流動を地中鋼製壁によって規制できる。このように、盛土や傾斜地盤の内部において土の流動を規制できるので、盛土や傾斜地盤の沈下を抑制できる。
また、鋼製隔壁は、上下の長さが地中鋼製壁より短く、かつ、下端が地中鋼製壁の下端より上方に位置するようにして、盛土の上面または前記傾斜地盤の傾斜面から打ち込んで設けるので、従来のタイロッド設置の場合と異なり、堤防上面や傾斜面に対する掘削と埋戻しが不必要であり、しかも鋼製隔壁は上下の長さが地中鋼製壁より短く、かつ、下端が地中鋼製壁の下端より上方に位置するので、打ち込み長さ(深さ)も短くてすむので、施工が容易となる。
また、本発明の前記構成において、前記鋼製隔壁を前記盛土の上面または前記傾斜地盤の傾斜面から打ち込むとともに、当該鋼製隔壁の両側端部を対向する前記地中鋼製壁に係合していくのが好ましい。
このような構成によれば、鋼製隔壁の両側端部が、対向する前記地中鋼製壁に係合するので、鋼製隔壁どうしが外側に膨らむように変形するのを鋼製隔壁によって防止できる。したがって、地震の際等に発生する地盤の液状化現象によって、堤防が沈下するのをより効果的に抑制できる。
また、鋼製隔壁の上下の長さを適宜設定することによって、タイロッドを複数段設置するのと同等またはそれ以上の補強効果を得ることができるとともに、鋼製隔壁を打ち込み(打設)によって設置しているので、従来のような傾斜面等の掘削も不必要なく、施工も容易となる。
本発明によれば、液状化現象に起因する堤体等の盛土の上面や傾斜地盤の傾斜面の沈下を抑制できるとともに、地中鋼製壁構造の施工が容易となる。
本発明の第1の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すもので、(a)は横断面図、(b)は要部の平面図、(c)は変形例を示す横断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る地中鋼製壁構造の二つの例を示すもので、(a)は第1例の横断面図、(b)は第2例の横断面図である。 本発明の第3の実施の形態に係る地中鋼製壁構造の二つの例を示すもので、(a)は第1例の横断面図、(b)は第2例の横断面図である。 本発明の第4の実施の形態に係る地中鋼製壁構造の二つの例を示すもので、(a)は第1例の横断面図、(b)は第2例の横断面図である。 本発明の第5の実施の形態に係る地中鋼製壁構造の二つの例を示すもので、(a)は第1例の横断面図、(b)は第2例の横断面図である。 本発明の第6の実施の形態に係る地中鋼製壁構造の二つの例を示すもので、(a)は第1例の横断面図、(b)は第2例の横断面図である。 本発明の第7の実施の形態に係る地中鋼製壁構造の二つの例を示すもので、(a)は第1例の横断面図、(b)は第2例の横断面図である。 本発明の第8の実施の形態に係る地中鋼製壁構造の二つの例を示すもので、(a)は第1例の横断面図、(b)は第2例の横断面図である。 本発明の第9の実施の形態に係る地中鋼製壁構造の二つの例を示すもので、(a)は第1例の横断面図、(b)は第2例の横断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平面図である。
図1(a)において、符号1は盛土からなる堤防を示す。この堤防(堤体)1は、中央の最も高い部分が水平な上面を有する天端1aになっている。この天端1aの左右には傾斜した法面1bがそれぞれ形成され、法面1bの上端部側が法肩1c、下端部側が法尻1dとされている。
また、堤防1の法肩1c,1c付近に、鋼矢板2が堤防1の延長方向(連続方向)に連結して打設されてなる2列の地中鋼製壁3,3が互いに平行に設けられている。
地中鋼製壁3は、盛土からなる堤防1の天端1aの高さ位置より少し下から基礎地盤11の下側の支持層12まで根入れされている。また、地中鋼製壁3を構成する鋼矢板2としては、地震による土圧や水圧が当該鋼矢板2に作用しても、倒壊しないだけの断面性能を有するものが適用される。
鋼矢板2としては、ハット形鋼矢板、U形鋼矢板、Z形鋼矢板、直線形鋼矢板、H形鋼矢板等が好適に使用され、これらが複数壁状に連結されることによって、地中鋼製壁3が構築されている。
図1(a)、(b)に示すように、互いに対向する地中鋼製壁3,3間に、鋼製隔壁5が前記地中鋼製壁3とほぼ直角に設けられている。この鋼製隔壁5は、上下の長さが地中鋼製壁3より短く、かつ、下端が地中鋼製壁3の下端より上方に位置するようにして設けられている。また、鋼製隔壁5は、上端を地中鋼製壁3の上端とほぼ等しいか当該上端より所定長さだけ低くして設けられている。
鋼製隔壁5を、その上端が地中鋼製壁3の上端より所定長さだけ低くして設ける場合、鋼製隔壁5の上端を堤防1の天端1aより約1m程度下げて設けるのが好ましい。このように、鋼製隔壁5の上端を堤防1の天端1aより下げて設けることによって、想定外の集中豪雨などで急激に水位が上昇して、越水により堤防の天端1aがある程度浸食されても、鋼製隔壁5が表面に現れることがないので、堤防天端の交通を妨げることがないという利点がある。
また、鋼製隔壁5は、図1(b)に示すように、堤防1の連続方向(図1(b)において上下方向)に、所定間隔(例えば10m程度)で設けられているが、この間隔は堤防1の規模等によって適宜設定される。図1(b)では、隣り合う鋼製隔壁5,5どうしの間隔は一定となっているが、堤防の部位によっては間隔を長くしたり、短くしてもよい。
また、鋼製隔壁5は、その下端が、盛土からなる堤防1の法尻1dより深いところに位置するようにして、堤防1の天端1aから打ち込まれている。鋼製隔壁5は、地中鋼製壁3および地盤11の水平変形が最も大きくなる深さまで設置することが望ましいため、本実施の形態では、鋼製隔壁5は、堤防1の法面1bと地盤11の地盤面との境界となる法尻1dより深い所定の位置まで打ち込まれているが、当該鋼製隔壁5の下端は支持層12まで達していない。
また、鋼製隔壁5の下端が、法尻1dより深い所定位置で、より法面1bの下端に近い位置とすることが、十分な補強効果を得られる中で、最も鋼製隔壁5で使用する鋼矢板2の量が少なく、経済性のうえからも好ましい。
前記鋼製隔壁5は、地中鋼製壁3と同様に、鋼矢板6を複数壁状に連結することによって構成されている。鋼矢板6としては、ハット形鋼矢板、U形鋼矢板、Z形鋼矢板、直線形鋼矢板、H形鋼矢板等が好適に使用され、これらが複数壁状に連結されることによって、鋼製隔壁5が構築されている。また、鋼製隔壁5を構成するものとしては、鋼矢板6に限らず、例えば、継手構造を有する鋼板を用いてもよい。
また、本実施の形態では、鋼製隔壁5の両側端部は、地中鋼製壁3に当接または近接しているが、鋼製隔壁5による補強効果を高めるためには、鋼製隔壁5の両側端部を対向する地中鋼製壁3,3に係合するのが好ましい。
この場合、例えば、地中鋼製壁3の鋼製隔壁5を係合すべき部位に、鋼製隔壁5を構成する鋼矢板6の継手と係合するような継手を形成しておけばよい。この継手としては、鋼矢板6を堤防1の天端1aから打ち込んで堤防1に挿入する際に、当該鋼矢板6の継手が上方から係合可能でかつ、水平方向に離れないような形状とする。例えば、鋼矢板6の継手が断面略C字形の場合、これに係合するような断面略C字形や棒状の継手とすればよい。
このようにして、鋼製隔壁5の両側端部が対向する地中鋼製壁3,3に係合することによって、当該地中鋼製壁3,3は鋼製隔壁5によって連結され、地中鋼製壁3,3が外側に膨らむのを防止している。
なお、鋼製隔壁5を地中鋼製壁3,3間に設ける場合、鋼製隔壁5の両側部を前記のように地中鋼製壁3,3に係合してもよいし、一側部のみを地中鋼製壁3に係合してもよいし、さらに、上述したように、両側部を地中鋼製壁3,3に係合しなくてもよい。
このような第1の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を施工する場合、まず、地中鋼製壁3を構成する鋼矢板2を堤防1の延長方向に順次、堤防1の天端1aの法肩1c,1cから打ち込むとともに、先に打ち込んだ鋼矢板2の継手に、後に打ち込む鋼矢板2の継手を係合していくことによって、2列の地中鋼製壁3,3を平行に施工する。鋼矢板2は、その下端が地盤11の支持層12に達するようにして打ち込まれる。
次に、互い対向する地中鋼製壁3,3間に、鋼製隔壁5を、地中鋼製壁3とほぼ直角になるように、かつ、下端が地中鋼製壁3の下端より上方に位置するようにして設ける。この場合、地中鋼製壁3,3間に、鋼製隔壁5を構成する鋼矢板6を堤防1の延長方向と直交する方向(地中鋼製壁3と直交する方向)に順次、堤防1の天端1aの法肩1c,1c間において打ち込むとともに、先に打ち込んだ鋼矢板6の継手に、後に打ち込む鋼矢板6の継手を係合していくことによって、地中鋼製壁3,3間に、鋼製隔壁5を、地中鋼製壁3とほぼ直角になるようにして施工する。
鋼矢板6を打ち込む場合、その下端が地中鋼製壁3の下端より上方に位置するようして打ち込むことによって、施工された鋼製隔壁5の下端は地中鋼製壁3の下端より上方に位置することになる。また、鋼矢板6の打ち込み長さおよび位置は、当該鋼矢板6の下端が法尻1dより深い所定位置で、より法面1bの下端(法尻1d)に近い位置とする。
また、鋼製隔壁5の側端部を地中鋼製壁3,3に係合する場合、地中鋼製壁3の鋼製隔壁を係合すべき部位に予め継手を固定しておく。そして、鋼製隔壁5の左右両側部を構成する鋼矢板6,6を堤防1の法肩1c,1cの近傍に打ち込んで堤防1に挿入する際に、当該鋼矢板6の継手を上方から地中鋼製壁3の継手に上方から係合していく。これによって、地中鋼製壁3,3は鋼製隔壁5によって連結される。
以上のように本実施の形態によれば、互いに対向する地中鋼製壁3,3間に、鋼製隔壁5が当該地中鋼製壁3とほぼ直角に設けられているので、地震等の際に地盤に液状化現象が生じて、盛土からなる堤防1の内部において、土が地中鋼製壁3の連続方向(堤防1の連続方向)に流動しようとしても、これを鋼製隔壁5によって規制できるとともに、それと直角方向への土の流動を地中鋼製壁3によって規制できる。このように、盛土(堤防1)の内部において土の流動を規制できるので、盛土(堤防1)の沈下を抑制できる。
また、鋼製隔壁5は堤防(盛土)1の天端1aから打ち込むことによって設置でき、従来のタイロッド設置の場合と異なり、堤防1の上面(天端)1aに対する掘削と埋戻しが不必要であり、しかも鋼製隔壁5は上下の長さが地中鋼製壁3より短く、かつ、下端が地中鋼製壁3の下端より上方に位置するので、打ち込み長さも短くてすむ。したがって、従来に比して施工が容易となる。
また、鋼製隔壁5の下端が、堤防1の法尻1dより深いところに位置しているので、鋼製隔壁5の上下の長さを抑えながら、十分な補強効果を得ることができる。
つまり、堤防1の場合、法面1bと平地盤の境界となる法面下端付近が最も変形が大きくなる傾向にあるので、鋼製隔壁5の下端を、法面下端(法尻1d)より深いところに位置するまで挿入することによって、傾斜面の下端の水平方向の変形を抑制することができ、十分な補強効果を得ることができる。
さらに、鋼製隔壁5の両側端部を、対向する地中鋼製壁3,3に係合した場合、地中鋼製壁3,3どうしが外側に膨らむように変形するのを鋼製隔壁5によって防止できる。したがって、地震の際等に発生する地盤の液状化現象によって、堤防(盛土)1が沈下するのをより効果的に抑制できる。
また、鋼製隔壁5の上下の長さ、つまり鋼製隔壁5を構成する鋼矢板6の上下長さを適宜設定することによって、タイロッドを複数段設置するのと同等またはそれ以上の補強効果を得ることができるとともに、鋼製隔壁5は鋼矢板6の打ち込み(打設)によって設置でき、従来のような傾斜面等の掘削も不必要なので、施工も容易となる。
また、鋼製隔壁5は鋼矢板6を複数壁状に連結して構成されているので、当該鋼製隔壁5を所定の長さおよび高さ(深さ)に調整できる。したがって、互いに対向する地中鋼製壁3,3間に容易に鋼製隔壁5を施工できる。
また、対向する地中鋼製壁3,3の鋼製隔壁5が係合する部位に、鋼矢板6と連結可能な係合部(継手)を形成しておくことによって、鋼製隔壁5の両側端部を対向する地中鋼製壁3,3に容易に係合できる。
なお、本実施の形態では、地中鋼製壁3,3を、その下端部が地盤の支持層12に達するようにして設けたが、当該支持層12の上の液状化層(液状化することが懸念される層)11まで達するようにして設けてもよい。つまり、液状化層(液状化することが懸念される層)11で地中鋼製壁3,3の根入れをとめてもよい。
従来の地中鋼製壁3,3の上端部をタイロッドで結合した構造では、地震等の際に地盤に液状化現象が生じた場合に、地中鋼製壁3,3の下端が「八」の字のように水平方向に締切り外側へ変形する挙動が見られるが、本実施の形態のように地中鋼製壁3,3間に鋼製隔壁5を設け、継手係合させる場合は地中鋼製壁3,3の水平方向の変形を抑えることができるので、従来に比して、堤防(盛土)1の沈下抑制が非常に効果的となる。
図1(c)は、第1の実施の形態の変形例を示す横断面図である。この変形例では、堤防(盛土)1が比較的固い地盤(支持層)12上に設けられているので、地中鋼製壁3の上下の長さが、図1(a)に示すものより、短くなっており、この支持層12に根入れされている。また、鋼製隔壁5は、図1(a)に示すものと同様に、下端が、盛土からなる堤防1の法尻1dより深いところに位置するようにして、堤防1の天端1aから打ち込まれている。
本変形例によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるが、地中鋼製壁3の上下の長さが短く、打ち込み長さ(深さ)も小さいので、その分施工が容易となる。
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すもので、(a)は盛土の両側の地盤の高さが等しい場合、(b)は盛土の両側の地盤の高さが異なる場合の横断面図である。
図2(a)および(b)に示すように、本実施の形態では、鋼製隔壁5の上下の長さが第1の実施の形態における鋼製隔壁5に比して短くなっていおり、その他の構成は第1の実施の形態と同様であるので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
鋼製隔壁5は、第1の実施の形態における鋼矢板6より上下の長さが短い鋼矢板6を壁状に連結することによって構成され、その下端は盛土からなる堤防1の法尻1dより上方に位置するようにして、堤防1の天端1aから打ち込まれている。また、鋼製隔壁5の両側端部は、対向する地中鋼製壁3,3に、第1の実施の形態の場合と同様にして係合されている。また、鋼製隔壁5は前記第1の実施の形態と同様にして施工する。
本実施の形態によれば、鋼製隔壁5の下端が堤防1の法尻1dより浅いところに位置(上方に位置)しているので、第1の実施の形態に比して、鋼製隔壁5による補強効果は小さくなるが、従来のタイロッドを設置するのと同等の補強効果を得ることができるとともに、堤防上面に対する掘削と埋戻しが不必要であり、しかも鋼製隔壁5は上下の長さが第1の実施の形態における鋼製隔壁5より十分に短いので、第1の実施の形態に比して施工が容易となる。
(第3の実施の形態)
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すもので、(a)は盛土の両側の地盤の高さが等しい場合、(b)は盛土の両側の地盤の高さが異なる場合の横断面図である。
図3(a)および(b)に示すように、本実施の形態では、鋼製隔壁5の上下の長さが第1の実施の形態における鋼製隔壁5に比して長くなっていおり、その他の構成は第1の実施の形態と同様であるので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
鋼製隔壁5は、第1の実施の形態における鋼矢板6より上下の長さが長い鋼矢板6を壁状に連結することによって構成され、その下端は地盤11の下側の支持層12まで根入れされている。また、鋼製隔壁5は前記第1の実施の形態と同様にして施工する。
本実施の形態によれば、鋼製隔壁5の下端が地中鋼製壁3と同様に支持層12に位置しているので、第1の実施の形態に比して施工は手間がかかるが、鋼製隔壁5による補強効果が大きくなり、地震の際等に発生する地盤の液状化現象によって、堤防(盛土)1が沈下するのをより確実に抑制できる。
(第4の実施の形態)
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すものであり、当該実施の形態では盛土の両側の地盤の高さが異なっている。
図4(a)に示す例では、堤防(盛土)1の両側の法尻1d,1dを結ぶ線分(破線で示す)に沿って、鋼製隔壁5の下端が揃えられている。したがって、鋼製隔壁5を構成する鋼矢板6は、図4(a)において、一方(左方)の法尻1dから他方(右方)の法尻1dに向かうにしたがって上下の長さが徐々に短くなっている。
図4(b)に示す例では、図4(a)に示すものと同様に、堤防(盛土)1の両側の法尻1d,1dを結ぶ線分(破線で示す)は水平に対して傾斜しているが、鋼製隔壁5を構成する鋼矢板6は全て上下の長さが等しくなっている。また、これら鋼矢板6は全てその下端が、盛土からなる堤防1の法尻1dより深いところに位置するようにして、堤防1の天端1aから打ち込まれている。なお、他の構成は第1の実施の形態と同様であるので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
鋼製隔壁5は、地中鋼製壁3および地盤11の水平変形が最も大きくなる深さまで設置することが望ましいため、図4(a)に示す実施の形態では、鋼製隔壁5の下端が堤防(盛土)1の両側の法尻1d,1dを結ぶ線分(破線で示す)に沿って揃えれている。したがって、鋼製隔壁5の材料の量を最低限に抑えながらも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、図4(b)に示す実施の形態では、鋼製隔壁5の下端が低い方の法尻1dより深いところに位置しているので、図4(a)に示すものに比して、若干施工費用がかかるものの、補強効果が高いという利点がある。
(第5の実施の形態)
図5は、本発明の第5の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すものである。前記第1〜第4の実施の形態では、2列の地中鋼製壁3,3間に鋼製隔壁5を設ける例について説明したが、本実施の形態では3列の地中鋼製壁3・・・間に鋼製隔壁5を設けている。なお、図1に示すものと共通の構成には同一符号を付してその説明を省略する。
図5(a)に示すように、本実施の形態では、第1〜第4の実施の形態に比して、堤防(盛土)1の左右の幅が長くなっている。このため、地中鋼製壁3,3が堤防1の法肩1c,1c付近から打ち込まれるとともに、法肩1c,1cの間の中央部の天端1aから地中鋼製壁3が打ち込まれている。これによって、堤防(盛土)1に、3列の地中鋼製壁3・・・が平行にかつ、かつ下端が地盤の支持層12に達するようにして設けられている。
隣り合う地中鋼製壁3,3間には、第1の実施の形態と同様にして、鋼製隔壁5が設けられている。
また、図5(b)に示すように、本実施の形態では、基礎地盤11とその下側の支持層12との境界が水平面に対して傾いている。このため、3列の地中鋼製壁3・・・のうち、右側の法肩1c近傍から打ち込まれた地中鋼製壁3の上下の長さが最も短く、左側の法肩1c近傍から打ち込まれた地中鋼製壁3の上下の長さが最も長くなっている。これら3列の地中鋼製壁3・・・は平行にかつ、かつ下端が地盤の支持層12に達するようにして設けられている。また、図5(b)において、左側に位置する地中鋼製壁3と中央に位置する地中鋼製壁3との間に設けられる鋼製隔壁5の方が、右側の位置する地中鋼製壁3と中央に位置する地中鋼製壁3との間に設けられる鋼製隔壁5より上下の長さが長くなっている。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる他、堤防(盛土)1の左右の幅が大きくなった場合でも、盛土(堤防1)の内部において土の流動を規制できるので、盛土(堤防1)の沈下を抑制できる。
また、基礎地盤11とその下側の支持層12との境界が水平面に対して傾いている場合、支持層12に近い側の地中鋼製壁3および鋼製隔壁5の上下の長さを短くできるので、その分、地中鋼製壁3および鋼製隔壁5の材料費および施工費を軽減できる。
(第6の実施の形態)
図6は、本発明の第6の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すものである。第1〜第5の形態では、堤防(盛土)1を地中鋼製壁構造によって補強する場合を例にとって説明したが、本実施の形態では、傾斜地盤を地中鋼製壁構造によって補強する場合の例である。
図6(a)に示すように、傾斜地盤10の崩壊を防止するために、当該傾斜地盤10に第6の実施の形態に係る地中鋼製壁構造が擁壁として施工されている。
すなわちまず、傾斜地盤10の上面は水平面に対して傾斜する傾斜面10aとなっており、この傾斜面10aの下端部近傍に、鋼矢板2が傾斜面10aの傾斜方向と平面視において直交する方向に連続して打設されてなる2列の地中鋼製壁13,13が互いに平行に設けられている。
地中鋼製壁13,13は、傾斜面10aの傾斜方向に離間して設けられ、当該傾斜面10aの傾斜方向上側に位置する地中鋼製壁13を構成する鋼矢板2は、その上端を傾斜面10aとほぼ等しくなるようにして、基礎地盤11の下側の支持層12まで根入れされている。
また、傾斜面10aの傾斜方向下側に位置する地中鋼製壁3を構成する鋼矢板2は、傾斜面10aより上方に突出するようにして基礎地盤11の下側の支持層12まで根入れされている。
また、地中鋼製壁13を構成する鋼矢板2としては、第1〜第5の実施の形態と同様に、地震による土圧や水圧が当該鋼矢板2に作用しても、倒壊しないだけの断面性能を有するものが適用される。
鋼矢板2としては、ハット形鋼矢板、U形鋼矢板、Z形鋼矢板、直線形鋼矢板、H形鋼矢板等が好適に使用され、これらが複数壁状に連結されることによって、地中鋼製壁13が構築されている。
図6(a)に示すように、互いに対向する地中鋼製壁13,13間に、鋼製隔壁15が地中鋼製壁13とほぼ直角に設けられている。この鋼製隔壁15は、上下の長さが地中鋼製壁13より短く、かつ、下端が地中鋼製壁13の下端より上方に位置するようにして設けられている。さらに、鋼製隔壁15の下端は、傾斜地盤10の傾斜面10aの下端より深いところ(下方)に位置している。
また、鋼製隔壁15は、上端を傾斜面10aの傾斜方向上側に位置する地中鋼製壁13の上端とほぼ等しくして設けられている。鋼製隔壁15は第1の実施の形態と同様に、複数の鋼矢板6を壁状に連結することによって構成されている。
また、図6(b)に示すように、互いに対向する地中鋼製壁13,13間に、鋼製隔壁15が地中鋼製壁13とほぼ直角に設けられている。この鋼製隔壁15は、上下の長さが地中鋼製壁13より短く、かつ、下端が地中鋼製壁13の下端より上方に位置するようにして設けられている。さらに、鋼製隔壁15の下端は、傾斜地盤10の傾斜面10aの下端より深いところ(下方)に位置している。
また、鋼製隔壁15は、上端を傾斜面10aの上面に揃えて設けられている。鋼製隔壁15は図6(a)に示すものと同様に、複数の鋼矢板6を壁状に連結することによって構成されているが、当該鋼矢板6はその上端が水平に揃えられておらず、傾斜面10aに揃えられている。
このような第6の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を施工する場合、まず、地中鋼製壁13を構成する鋼矢板2を傾斜地盤10の傾斜面10aと平面視において直交する方向(図6において紙面と直交する方向)に順次、傾斜面10aから打ち込むとともに、先に打ち込んだ鋼矢板2の継手に、後に打ち込む鋼矢板2の継手を係合していくことによって、2列の地中鋼製壁13,13を平行に施工する。鋼矢板2は、その下端が地盤11の支持層12に達するようにして打ち込まれる。
次に、互い対向する地中鋼製壁13,13間に、鋼製隔壁15を、地中鋼製壁13とほぼ直角になるように、かつ、下端が地中鋼製壁13の下端より上方でさらに傾斜面10aの下端より下方に位置するようにして設ける。この場合、地中鋼製壁13,13間に、鋼製隔壁15を構成する鋼矢板6を地中鋼製壁13と直交する方向に順次打ち込むとともに、先に打ち込んだ鋼矢板6の継手に、後に打ち込む鋼矢板6の継手を係合していくことによって、地中鋼製壁13,13間に、鋼製隔壁15を、地中鋼製壁13とほぼ直角になるようにして施工する。鋼矢板6を打ち込む場合、その下端が地中鋼製壁13の下端より上方でかつ傾斜面10aの下端より下方に位置するようして打ち込むことによって、施工された鋼製隔壁15の下端は地中鋼製壁3の下端より上方で傾斜面10aの下端より下方に位置することになる。
また、鋼製隔壁15の側端部を地中鋼製壁13,13に係合する場合、地中鋼製壁13の鋼製隔壁を係合すべき部位に予め継手を固定しておく。そして、鋼製隔壁15の左右両側部を構成する鋼矢板6,6を傾斜面10aに打ち込んで傾斜地盤10挿入する際に、当該鋼矢板6の継手を上方から地中鋼製壁13の継手に上方から係合していく。これによって、地中鋼製壁13,13は鋼製隔壁15によって連結される。
本実施の形態によれば、互いに対向する地中鋼製壁13,13間に、鋼製隔壁15が当該地中鋼製壁13とほぼ直角に設けられているので、地震等の際に地盤に液状化現象が生じて、傾斜地盤10の内部において、土が地中鋼製壁13の連続方向に流動しようとしても、これを鋼製隔壁15によって規制できるとともに、それと直角方向への土の流動を地中鋼製壁13によって規制できる。このように、傾斜地盤10の内部において土の流動を規制できるので、傾斜地盤の沈下を抑制できる。
また、鋼製隔壁15は傾斜地盤10の傾斜面10aから打ち込むことによって設置でき、従来のタイロッド設置の場合と異なり、傾斜面に対する掘削と埋戻しが不必要であり、しかも鋼製隔壁15は上下の長さが地中鋼製壁13より短く、かつ、下端が地中鋼製壁13の下端より上方に位置するので、打ち込み長さも短くてすむ。したがって、従来に比して施工が容易となる。
また、鋼製隔壁15の下端が、傾斜地盤10の傾斜面10aの下端より深いところに位置しているので、鋼製隔壁15の上下の長さを抑えながら、十分な補強効果を得ることができる。
つまり、傾斜地盤10の場合、傾斜面10aと平地盤の境界となる法面下端付近が最も変形が大きくなる傾向にあるので、鋼製隔壁15の下端を、法面下端(傾斜面10aの下端)より深いところ位置するまで挿入することによって、傾斜面10aの下端の水平方向の変形を抑制することができ、十分な補強効果を得ることができる。
さらに、鋼製隔壁15の両側端部を、対向する地中鋼製壁13,13に係合した場合、地中鋼製壁13,13どうしが外側に膨らむように変形するのを鋼製隔壁15によって防止できる。したがって、地震の際等に発生する地盤の液状化現象によって、傾斜地盤10が沈下するのをより効果的に抑制できる。
また、鋼製隔壁15の上下の長さ、つまり鋼製隔壁15を構成する鋼矢板6の上下長さを適宜設定することによって、タイロッドを複数段設置するのと同等またはそれ以上の補強効果を得ることができるとともに、鋼製隔壁15は鋼矢板6の打ち込み(打設)によって設置でき、従来のような傾斜面等の掘削も不必要なので、施工も容易となる。
また、鋼製隔壁15は鋼矢板6を複数壁状に連結して構成されているので、当該鋼製隔壁15を所定の長さおよび高さ(深さ)に調整できる。したがって、互いに対向する地中鋼製壁13,13間に容易に鋼製隔壁5を施工できる。
また、対向する地中鋼製壁13,13の鋼製隔壁15が係合する部位に、鋼矢板6と連結可能な係合部(継手)を形成しておくことによって、鋼製隔壁15の両側端部を対向する地中鋼製壁13,13に容易に係合できる。
(第7の実施の形態)
図7は、本発明の第7の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すものである。図7(a)および(b)に示すように、本実施の形態では、鋼製隔壁15の上下の長さが第6の実施の形態における鋼製隔壁15に比して短くなっていおり、その他の構成は第6の実施の形態と同様であるので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
鋼製隔壁15は、第6の実施の形態における鋼矢板6より上下の長さが短い鋼矢板6を壁状に連結することによって構成され、その下端は傾斜地盤10の傾斜面10aの下端より上方に位置するようにして、傾斜面10aから打ち込まれている。また、鋼製隔壁15の両側端部は、対向する地中鋼製壁13,13に、第6の実施の形態の場合と同様にして係合されている。また、鋼製隔壁15は前記第1の実施の形態と同様にして施工する。
本実施の形態によれば、鋼製隔壁15の下端が傾斜地盤10の傾斜面10aの下端より浅いところに位置しているので、第6の実施の形態に比して、鋼製隔壁15による補強効果は小さくなるが、従来のタイロッドを設置するのと同等の補強効果を得ることができるとともに、傾斜面10aに対する掘削と埋戻しが不必要であり、しかも鋼製隔壁15は上下の長さが第6の実施の形態における鋼製隔壁15より十分に短いので、第6の実施の形態に比して施工が容易となる。
(第8の実施の形態)
図8は本発明の第8の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すものである。図8(a)および(b)に示すように、本実施の形態では、鋼製隔壁15の上下の長さが第6の実施の形態における鋼製隔壁15に比して長くなっていおり、その他の構成は第6の実施の形態と同様であるので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
鋼製隔壁15は、第6の実施の形態における鋼矢板6より上下の長さが長い鋼矢板6を壁状に連結することによって構成され、その下端は地盤11の下側の支持層12まで根入れされている。また、鋼製隔壁15は前記第6の実施の形態と同様にして施工する。
本実施の形態によれば、鋼製隔壁15の下端が地中鋼製壁13と同様に支持層12に位置しているので、第6の実施の形態に比して施工は手間がかかるが、鋼製隔壁15による補強効果が大きくなり、地震の際等に発生する地盤の液状化現象による、傾斜地盤10が沈下するのをより確実に抑制できる。
(第9の実施の形態)
図9は本発明の第9の実施の形態に係る地中鋼製壁構造を示すものである。図9(a)および(b)に示すように、3列の地中鋼製壁13・・・が平行にかつ、かつ下端が地盤の支持層12に達するようにして設けられている。
隣り合う地中鋼製壁13,13には、第6の実施の形態と同様にして、鋼製隔壁15が設けられている。
また、図9(b)に示すように、本実施の形態では、基礎地盤11とその下側の支持層12との境界が水平面に対して傾いている。このため、3列の地中鋼製壁13・・・のうち、傾斜面10aの傾斜方向下側から打ち込まれた地中鋼製壁13の上下の長さが最も短く、傾斜面10aの傾斜方向上側から打ち込まれた地中鋼製壁13の上下の長さが最も長くなっている。これら3列の地中鋼製壁13・・・は平行にかつ、かつ下端が地盤の支持層12に達するようにして設けられている。また、図9(b)において、左側に位置する地中鋼製壁13と中央に位置する地中鋼製壁13との間に設けられる鋼製隔壁15の方が、右側の位置する地中鋼製壁13と中央に位置する地中鋼製壁13との間に設けられる鋼製隔壁15より上下の長さが長くなっている。
本実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様の効果が得られる他、傾斜地盤10の補強幅が大きくなった場合でも、傾斜地盤10の内部において土の流動を規制できるので、傾斜地盤10の沈下を抑制できる。
また、基礎地盤11とその下側の支持層12との境界が水平面に対して傾いている場合、支持層12に近い側の地中鋼製壁13および鋼製隔壁15の上下の長さを短くできるので、その分、地中鋼製壁13および鋼製隔壁15の材料費および施工費を軽減できる。
なお、第1〜第9の実施の形態において、対向する地中鋼製壁3,3(13,13)に鋼製隔壁5(15)を設けるとともに、これら地中鋼製壁3,3(13,13)をタイロッドによって結合してもよい。この場合、従来と同様に、堤防1の天端や傾斜地盤10の傾斜面10aに対して掘削と埋戻しが必要となり、手間を要することになるが、鋼製隔壁5(15)を設けることによって、タイロッドの本数を減らすことができるので、その分、手間を削減できる。
1 堤防(盛土)
1d 法尻
2 鋼矢板
3,13 地中鋼製壁
5,15 鋼製隔壁
6 鋼矢板
10 傾斜地盤
10a 傾斜面

Claims (6)

  1. 土に、複数列の地中鋼製壁が平行に設けられた地中鋼製壁構造であって、
    互いに対向する前記地中鋼製壁間に、鋼製隔壁が当該地中鋼製壁とほぼ直角に設けられ、
    前記地中鋼製壁の上端は前記盛土の天端より低く、
    前記鋼製隔壁は、上下の長さが前記地中鋼製壁より短く、かつ、下端が前記地中鋼製壁の下端より上方に位置するようにして設けられ、
    前記鋼製隔壁の上端は前記盛土の天端より低く、かつ前記地中鋼製壁の上端より低くなっていることを特徴とする地中鋼製壁構造。
  2. 傾斜地盤に、複数列の地中鋼製壁が平行に設けられた地中鋼製壁構造であって、
    互いに対向する前記地中鋼製壁間に、鋼製隔壁が当該地中鋼製壁とほぼ直角に設けられ、
    前記鋼製隔壁は、上下の長さが前記地中鋼製壁より短く、かつ、下端が前記地中鋼製壁の下端より上方に位置するようにして設けられ、
    前記鋼製隔壁の上端は、前記傾斜地盤の傾斜面の上面に揃えられていることを特徴とする地中鋼製壁構造。
  3. 前記鋼製隔壁の下端が、前記盛土の法尻または前記傾斜地盤の傾斜面の下端より深いところに位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の地中鋼製壁構造。
  4. 前記鋼製隔壁は、その両側端部が対向する前記地中鋼製壁に係合していることを特徴とする請求項1から3のずれれか1項に記載の地中鋼製壁構造。
  5. 土に、複数列の地中鋼製壁を平行に、かつ、前記地中鋼製壁の上端が前記盛土の天端より低くなるように設け、
    次に、互いに対向する地中鋼製壁間に、上下の長さが前記地中鋼製壁より短い鋼製隔壁を、前記地中鋼製壁とほぼ直角になるように、かつ、下端が前記地中鋼製壁の下端より上方に位置するように、さらに、前記鋼製隔壁の上端が前記盛土の天端より低く、かつ前記地中鋼製壁の上端より低くなるようにして、前記盛土の上面から打ち込んで設けることを特徴とする地中鋼製壁構造の施工方法。
  6. 前記鋼製隔壁を前記盛土の上面から打ち込むとともに、当該鋼製隔壁の両側端部を対向する前記地中鋼製壁に係合していくことを特徴とする請求項5に記載の地中鋼製壁構造の施工方法。
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