JP2020117960A - 堤体の補強構造 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に記載の堤体の耐震性能補強構造では、アースフィルダム又は溜池等の盛土された堤体のほぼ中央部分の長手方向に2列縦列に鋼矢板で形成された補強用板状体を埋設し、該両補強用板状体の上端部を所定間隔毎に連結部材により連結する二重締切り構造としている。
127〜137 (2002. 4)の「豪雨による農業用ため池の破壊原因と被災の特徴」」に記載されているように、農業用ため池は全国に約20万〜25万箇所存在するといわれており、農業のみならず地域の貴重な水資源となっている。しかし、築造年代が古く老朽化が進んでいるため池が多く、豪雨時におけるため池の被害が懸念されている。ため池の被害としては、すべり、浸食などによる堤体の損傷、堤体・基盤の漏水、付帯構造物の損傷が認められるが、被害のほとんどは豪雨によるものであり、その割合は95%以上となっている。
近年の豪雨/地震災害により、ため池の堤体の決壊に伴う被害が全国的に発生しており、全国に約20万〜25万箇所所以上散在するため池の堤体補強が喫緊の課題となっている。
鋼矢板を用いた堤防補強工法としては、鋼矢板二重式仮締切工法が既に確立されており、本設構造としても海岸堤防へ採用されている。一方で、ため池堤防(堤体)においては、農業用として常時一定量貯水していることから、常時作用する堤体への偏水圧を考慮した対策が必要である。
しかし、堤体内部のみに構造体を設置し、災害時などに発生する水圧等に抵抗しようとすると、補強構造体が大型となり、工費・工期が嵩んでしまうという問題がある。
また、補強体においては堤防延長(延在)方向の端部間は繋がっておらず、側面直交方向から受ける土支圧に対して、単体の壁体として抵抗するため、補強体が大型となり、この点においても、工費・工期が嵩んでしまう。
さらに、皿池など、周辺地盤が比較的柔らかい地層で構成されている場合、水圧に抵抗できるよう堤体剛性を確保するために、支持層内に鋼製壁体を打設する必要があり、工期が長くなってしまう。
鋼製壁が前記皿池の周囲を囲むようにして連続的に設置されるとともに、前記鋼製壁の少なくとも一部は前記堤体の内部に設置されていることを特徴とする。
また、「鋼製壁が前記皿池の周囲を囲むようにして連続的に設置される」とは、皿池に沿って当該皿池を囲むように鋼製壁が連続的に設置されるのは勿論のこと、皿池が平面視において内側に食い込むような形状である場合、この食い込んだ部分に沿って鋼製壁が設置されず、食い込んだ部分の外周側に沿って鋼製壁が設置されることを含むものである。
また、鋼製壁としては、鋼矢板を複数連結してなる鋼矢板壁が好適に使用されるが、これに限るものではない。例えば、鋼管矢板を複数連結してなる鋼管矢板壁、鋼矢板と鋼管矢板を複数連結してなる鋼製壁等を使用してもよい。
また、平面視において皿池の堤体が内側に食い込まないリング状に形成されている場合、当該堤体の内部に設置される鋼製壁も内側に食い込まないリング状に形成される。このため、当該リング状に形成された鋼製壁のフープテンションにより、上述した水圧に抵抗できるため、鋼製壁に大きな剛性を付与する必要はなく、鋼製壁を施工に難渋する支持層内まで打設する必要がない。このため、従来に比して工費・工期を短縮できる。
前記堤体の内部に設置されている前記鋼製壁は、上端が前記堤体の天端と等しい高さ位置にあり、かつ前記堤体の下方に位置する支持層または岩盤層の上面まで根入れされていてもよい。
また、支持層もしくは岩盤層まで鋼製壁を打込む(根入れする)場合は、地盤を打ち砕くクラッシュパイラーなどの特殊な施工機械が必要になるが、支持層または岩盤の上面で鋼製壁を打ち止めることで、通常の施工機で施工が可能であり、施工費の抑制が可能となる。
前記鋼製壁は前記堤体の下方に位置する支持層または岩盤に根入れされていてもよい。
また、鋼製壁が鋼矢板壁によって構成されている場合、当該鋼矢板壁を構成する複数の鋼矢板のうち、前記構造物の上方に位置する鋼矢板の下端部が前記構造物まで達していなくてもよい。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態に係る堤体の補強構造を示すもので、(a)は模式的に示す概略図、(b)は変形例を示す平面図、図2は堤体と地盤の横断面図である。
本実施の形態では、図1(a)に示すように、堤体10のみによって土構造物10Aが形成されている。なお、土構造物10Aとは、基本的に土を主体として形成された構造物であって、その内部や表面にコンクリート等で形成された各種施設や物品が設けられたものを含む。
なお、土構造物10Aは堤体10のみによって形成される他、図1(b)に示すように、堤体10dと地山等の突部10eとの双方によって形成されていてもよい。この場合、堤体10dは連続したリング状とはなっておらず、一部が突部10eによって形成されているが、堤体10dと突部10eによって形成された土構造物10Aは平面視において連続したリング状に形成されている。
図1(a)および図2に示すように、堤体10は、横断面台形状に形成されており、皿池11を囲むようにして平面視おいて楕円形リング状に設置されている。
また、堤体10の直下には軟弱層30があり、この軟弱層30の直下に支持層40または岩盤層がある。軟弱層30および支持層40は皿池11の下方にも連続している。
なお、本実施の形態では、軟弱層30の上面に堤体10が設けられているが、軟弱層30がない場合、堤体10は支持層40の上面に直接設けられることになる。
常時満水位の場合、それより上方の上流法面10bには、皿池11側から水圧は作用しないが、常時満水位を超えるとその分だけ上流法面10bに水圧が増加して作用する。つまり、堤体10に作用する水圧は、水面が常時満水位を超えると次第に増加し、豪雨等によって水面が設計洪水位となった場合に、最大となる。
さらに、鋼矢板壁15は、堤体10の幅方向における中央部に設置され、その上端部は堤体10の天端10aと等しい高さ位置にあり、かつ支持層40の上面まで根入れされている。つまり、鋼矢板壁15は軟弱層30を上下に貫通するとともに鋼矢板壁15の下端が支持層40の上面に当接または近接されている。但し、鋼矢板壁15の堤体幅方向の設置位置は中央部に限るものではなく、皿池側の法肩付近や、皿池11とは反対側の法肩付近に鋼矢板壁15を設置してもよい。支持層40の上面が傾斜している場合など、堤体10の天端10aから支持層40上面までの距離が最も短くなる位置に鋼矢板壁15を設置することで、鋼矢板壁15の上下方向の長さを短くでき、経済的となる。
鋼矢板16はウェブ16aと、このウェブ16aの両端部にそれぞれ形成されたフランジ16bと、このフランジ16bのウェブ16aと逆側の端部に形成されたアーム16cとを備え、このアーム16cの先端部に継手16dが形成されている。
そして、隣り合う鋼矢板16,16どうしは継手16d,16dを互いに嵌合することによって連結され、これによって鋼矢板壁15が形成されている。
鋼矢板壁15を構成する鋼矢板はハット形の鋼矢板に限ることはなく、U形の鋼矢板、直線鋼矢板であってもよい。
鋼矢板壁15は複数の鋼矢板16を連結することによって形成されているので、これら複数の鋼矢板16のうち、構造物25の上方に位置する鋼矢板16の下端部が構造物25まで達していない、つまり、当該鋼矢板16の下端と構造物25との間には所定の隙間が設けられている。
さらに、支持層40まで鋼矢板壁15を打込む(根入れする)場合は、地盤を打ち砕くクラッシュパイラーなどの特殊な施工機械が必要になるが、支持層40の上面で鋼矢板壁15を打ち止めることで、通常の施工機で施工が可能であり、施工費の抑制が可能となる。
加えて、本実施の形態ではフープテンションを利用するため、鋼矢板壁15は面外への曲げに抵抗する擁壁としてではなく、セル構造として、面内の引張荷重に抵抗する構造形式となるため、堤体10の内部に設置される鋼矢板壁15の曲げ剛性を、従来構造よりも小さくできる。このため、直線鋼矢板によって鋼矢板壁15を形成することができ、材料費の削減を図ることができる。
図5は第2の実施の形態に係る堤体の補強構造を模式的に示す概略図である。
第2の実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なる点は、平面視において皿池11が内側に食い込む異形のリング状に形成され、それに伴って鋼矢板壁15が内側に食い込む異形のリング状に形成されている点および鋼矢板壁15は堤体10の下方に位置する支持層40に根入れされている点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と共通部分には同一符号を付してその説明を省略する場合もある。
さらに、2列の鋼矢板壁15,15の上端部どうしは堤体10の延在方向に所定間隔で複数設けられたタイロッド等の連結部材18によって連結されている。
また、鋼矢板壁15は堤体10の下方に位置する支持層40に根入れさているので、堤体10の内部で鋼矢板壁15をより強固に安定させることができる。
10a 天端
11 皿池
15 鋼矢板壁(鋼製壁)
25 構造物
30 軟弱層
40 支持層
Claims (5)
- 少なくとも堤体を含む土構造物によって周囲が囲まれた皿池の前記堤体を補強する堤体の補強構造であって、
鋼製壁が前記皿池の周囲を囲むようにして連続的に設置されるとともに、前記鋼製壁の少なくとも一部は前記堤体の内部に設置されていることを特徴とする堤体の補強構造。 - 平面視において前記鋼製壁は内側に食い込まないリング状に形成され、
前記堤体の内部に設置されている前記鋼製壁は、上端が前記堤体の天端と等しい高さ位置にあり、かつ前記堤体の下方に位置する支持層または岩盤層の上面まで根入れされていることを特徴とする請求項1に記載の堤体の補強構造。 - 前記鋼製壁は、直線鋼矢板を複数連結することによって形成されていることを特徴とする請求項2に記載の堤体の補強構造。
- 平面視において前記鋼製壁は内側に食い込む異形のリング状に形成され、
前記鋼製壁は前記堤体の下方に位置する支持層または岩盤に根入れされていることを特徴とする請求項1に記載の堤体の補強構造。 - 前記堤体の内部に前記堤体の幅方向に延在する構造物が設けられ、
前記鋼製壁の下端の一部は、前記構造物まで達していないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の堤体の補強構造。
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