JP4146561B2 - 立坑の築造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、立坑の築造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
立坑の築造方法としては、例えば、地中連続壁工法、ケーソン工法、鋼矢板工法、SMW工法などが挙げられる。
しかし、地中連続壁工法、鋼矢板工法、SMW工法は、大深度の場合や適切な不透水層がない場合、ボイリングやヒービングの対策上、土留め壁の根入れ長を極めて長く設定する必要がある。
土留め壁の根入れ長を低減する方法としては、地下水位低下工法や立坑底版下の地盤改良工法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、地下水位低下工法は、周辺地盤の沈下を伴うため、都市部における採用が困難であり、また、底版の地盤改良工法は、大深度における工費が極めて高いなどの問題があった。
なお、ケーソン工法は、合理的に根入れ長を短くすることできるが、地中連続壁工法などよりも一般に高価であるという問題の他、周辺地盤を乱す、工期が長い、圧気作業となる場合は、作業員の健康を害する恐れがあるなどの問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、地中連続壁工法、鋼矢板工法、SMW工法等の立坑の築造方法で、地下水位低下工法や立坑底版下の地盤改良工法を使用することなく、土留め壁の根入れ長を短くすることで、工費・工期を低減する一方で、周辺環境の維持を可能とする立坑の築造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決すべく請求項1記載の発明は、地中に土留め壁を設けて、この土留め壁の内側を所定の深さまで水中掘削した後、該水中掘削により形成した溝部の底部に立坑の底版を設ける立坑の築造方法において、前記溝部を形成した後、該溝部内に溜めた水を排水する前に、シース管を立坑の側壁の上方まで延長した状態で、前記側壁及び前記底版に連続するように建て込み、前記シース管に挿通したPC緊張材を前記側壁の上部から緊張することで、前記立坑の側壁と前記底版とに対して連続的なプレストレスを導入した前記底版を構築し、その後、前記水の排水を行うこと、を特徴としている。
【0006】
立坑の種類としては、立坑を構築するための土留め壁が立坑の側壁として兼用される場合と、土留め壁の内側に構築した内部構造物が立坑の側壁となる場合とがある。
前者の場合、土留め壁(即ち立坑の側壁となる)は、例えば、地中連続壁工法により構築することが挙げられる。
後者の場合、土留め壁の構築方法は問わない(例えば、鋼矢板工法、SMW工法等)。底版に対してプレストレスを導入するのに支障がないものであれば、内部構造物の構築方法も問わない。
立坑の形状としては、例えば、水平断面形状が円形の円形立坑の他、水平断面形状が矩形の矩形立坑等、地盤条件等によって適宜変更可能である。
【0007】
立坑の底版は、例えば、コンクリートの打設により構成される。
底版へのプレストレスの導入は、底版中にシース管が位置するようにコンクリートの打設前に予めシース管を配設しておき、コンクリートの打設を行い、コンクリートの硬化後、シース管内の緊張材に対して、緊張力を付与して行う。
ここで、緊張材は、緊張作業前のいずれかの時点でシース管内に挿通しておくものとする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、地中に設けた土留め壁の内側を所定の深さまで水中掘削し、溝部を形成した後、該溝部内に溜めた水を排水する前に、底版を構築して溝部の底部を止水した後、前記水の排水を行うので、土留め壁の根入れ長を短くしてもボイリングやヒービングの発生を防止できる。
よって、根入れ長を短くすることで、工費・工期を低減できる。
また、一方で、底版にはプレストレスを導入するので、単位面積当たりの底版の構造的な強度を高めることができる。従って、底版に対して下方向から作用する揚圧力等に対して、底版がより好適に抗することができる。さらに、プレストレスの効果により、底版を薄く設定する等、底版そのものの寸法・形状等も、曲げモーメントやせん断力に対して合理的な設計をすることが可能となるため工費・工期をより低減できる。
加えて、地下水位低下工法を用いる必要がないため、地盤沈下などの影響が懸念される都市部においても採用できる。
【0010】
また、請求項1記載の発明によれば、立坑の側壁と前記底版とに対して、連続的なプレストレスを導入するので、側壁と底版とを緊密に接合することができる。よって、側壁と底版との接合部が強固に一体化される。また、側壁を側圧に対して強いものとすることができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の立坑の築造方法であって、前記底版の下に減摩手段を配設した状態で、前記プレストレスを導入すること、を特徴としている。
【0012】
減摩手段としては、例えば、表裏面にグリースを塗布した薄いゴムシートを複数枚重ねたものなどが挙げられる。原則として、底版の下には、予め、均しコンクリート等が設けられ、この均しコンクリート上に減摩手段を配設した後、底版を構成するコンクリートを打設する。この底版コンクリートの硬化後、底版に(横方向の要素を含む)プレストレスを導入する際には、底版コンクリートに歪みが生じ、底版の下の均しコンクリートと底版とに横方向の変位差が生じようとする。しかし、このときに、仮に減摩手段がない場合には、底版コンクリートと均しコンクリートとの摩擦力が極めて大きくなり、これらが互いに接する面において、プレストレス導入時に底版コンクリートが変形することができず、底版コンクリートに不均一な応力が発生する。請求項2記載の発明では、底版の下に減摩手段を配設した状態で、前記プレストレスを導入するので、底版コンクリートに生じる歪みにより生じる、底版の下の均しコンクリートと底版との横方向の変位差に対して円滑に対応できる。よって、底版に円滑にプレストレスを導入でき、底版と均しコンクリートとの摩擦によるプレストレスのロスを無くすことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、底版の下に減摩手段を配設した状態で、前記プレストレスを導入するので、底版と均しコンクリートや地盤との摩擦によるプレストレスのロスを無くすことができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の立坑の築造方法であって、前記底版に作用する上方向の揚圧力に該底版が好適に抗することができるように前記プレストレスを導入するための緊張材の経路を設定すること、を特徴としている。
【0015】
底版の周縁部は、側壁と一体になって固定されているのに対して、底版の中央部には何もないため、底版の中央部は下方向からの揚圧力に対して弱い部分である。従って、底版に作用する上方向の揚圧力に該底版が好適に抗することができるような緊張材の経路としては、例えば、底版の周縁部から底版の中央部に向けて該経路の鉛直位置が高くなるものが挙げられる。
このような経路に緊張材を配してプレストレスを導入することで、底版の中央部を下方向に抑え付けることができ、底版の中央部も下方向からの揚圧力に対して、好適に抗することができるようになる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、底版に作用する上方向の揚圧力に該底版が好適に抗することができるように前記プレストレスを導入するための緊張材の経路を設定するので、底版に作用する上方向の揚圧力に該底版が好適に抗することができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の立坑の築造方法であって、前記底版の下部になるほど大径となる一方で、前記側壁の下端部がこのような形状の底版に対応するように設定すること、を特徴としている。
【0018】
底版には、下方向からの揚圧力が作用するため、底版の下部になるほど大径となる一方で、側壁の下端部がこのような形状の底版に対応するように設定することにより、底版が下方向から側壁に対してくさびのように食い込むような状態となる(逆に言えば、側壁により底版を上から抑え付けた状態となる)。このようなくさび効果により、底版と側壁との一体性を向上させることができる。
また、一方で、側壁の下端部は下になるほど細くなる形状となるため、側壁の下端部の剛性を小さく設定できる。よって、底版と側壁とに連続的なプレストレスを導入する際に、側壁の下端部が内側に僅かに弾性変形し、底版と側壁の下端部との一体性(密着度)を高めることができる。さらに、プレストレスのロスを低減できるので、緊張材の総断面を小さく設定でき、緊張材の節約が可能となる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、底版の下部になるほど大径となる一方で、側壁の下端部がこのような形状の底版に対応するように設定するので、底版と側壁との一体性を高めることができる。また、プレストレスを与える部分の側壁の剛性が小さくなるので、側壁と底版との一体性をさらに高めることができるとともに、プレストレスのロスも少なくなる。さらに、プレストレスのロスが少なくなることで、必要な緊張材が節約できる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の立坑の築造方法であって、前記側壁の構築時に、前記プレストレスを導入するための緊張材を挿通するシース管を、前記底版の構築位置の周囲に建て込むに際して、前記シース管を二重管構造とし、内側のシース管を外側のシース管から引き出し可能としたこと、を特徴としている。
【0021】
内側のシース管は、引出し後、所定の経路に設定できるように、可撓性の材質(例えば高密度ポリエチレン製)により形成されたものであることが望ましい。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、側壁の構築時に、底版の構築位置の周囲に建て込むシース管を二重管構造とし、内側のシース管を外側のシース管から引き出し可能としたことで、底版部分へのシース管の延長が容易にできる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る実施の形態例を図1から図4に基づいて説明する。
図1は本発明に係る立坑の築造方法を説明するための断面図、図2は図1の要部拡大図、図3は地中連続壁の構築を説明するための要部拡大図、図4はシース管の接続を説明するための要部拡大図である。
【0024】
本実施の形態例では、地中連続壁工法により土留め壁を構築し、この土留め壁を即ち立坑の側壁として兼用し、底版および側壁に連続的なプレストレスを導入する場合について説明する。
本実施例での作業の流れは、大きく分けて、▲1▼地中連続壁(土留め壁兼側壁)の構築、▲2▼土留め壁の内側の掘削および底版コンクリートの打設準備、▲3▼底版コンクリートの打設、▲4▼底版および側壁へのプレストレスの導入(緊張作業)、▲5▼排水の順となる。
【0025】
<地中連続壁(土留め壁兼側壁)の構築>
先ず、地中連続壁20(土留め壁兼側壁)を1エレメント分構築すべく、掘削機を用いて、地中連続壁20を水平方向に分割した1エレメントに対応する所定深さの形状に地盤掘削する。この掘削は、ベントナイト溶液などの安定液を満たしながら行う。
地盤掘削後、前記1エレメントに対応する鉄筋籠1を建て込む(図3参照)。
【0026】
ここで、地中連続壁20の下端部20aの内側の内部領域が、下になるほど大径となるように、つまり、後にこの内部領域に打設されるコンクリートにより構成される底版30が下になるほど大径となる一方で、先に構築される地中連続壁20の下端部20aがこのような形状の底版30に対応するように、図3に示されるように、鉄筋籠1の下端部には、例えば鋼製の型枠2が傾斜して設けられている。従って、鉄筋籠1の下端部の形状も、このように型枠2を設けることができるように設定されている。
【0027】
また、このように型枠2を傾斜して設けることで、掘削により形成された領域と、型枠2との間に空隙が生じるため、この空隙を埋めるとともに、型枠2を保護するべく、この空隙に対応する形状の、例えば発泡スチロール等の保護材3が、型枠2に設けられている。
【0028】
さらに、この型枠2の、後に構築される底版30に接する面2aには、底版30を構成する底版コンクリートとの付着性能を高めるための加工が施されているのが望ましい。この加工としては、例えば、図示のように、鉄筋5,5,…を型枠2の面2aに縞状に溶接したものが挙げられる。
【0029】
また、鉄筋籠1には、緊張材40を挿通するためのシース管7を予め取り付けておき、鉄筋籠1の建て込みと同時にシース管7も建て込んでおく。シース管7の上部は、原則として地中連続壁20の上端まで延長されていることとする。
シース管7の下部は、図2、図3に示されるように、2重管構造となっており、後から底版30が構築される領域へと引き出すことができるようになっている。つまり、外側シース管7aの内側には、外側シース管7aに対して摺動可能な内側シース管7bが収納されている。また、内側シース管7bは、可撓性の材質(例えば高密度ポリエチレン製)により形成されていることが望ましい。
【0030】
さらに、型枠2には、止水板10を設けるのが望ましい。地中連続壁20の全体が構築された時点では、型枠2に設けられた止水板10が地中連続壁20の下端部20aの全周に亘って連続的に配設された状態となり、該下端部20aの全周に亘って止水が施されるようになっている。
【0031】
このように、掘削により形成した領域に、鉄筋籠1とともに型枠2、保護材3、シース管7等を同時に建て込んだ後、該領域にコンクリートを打設する。このコンクリートの打設は、例えば、通常の水中コンクリートを、トレミー管を用いて打込むことで足りる。このコンクリートの硬化により、内部に鉄筋籠1およびシース管7が埋設された1エレメント分の地中連続壁20が構築される。
【0032】
上記のように地盤掘削、鉄筋籠1等の建て込み、コンクリートの打設をそれぞれ繰り返すことで、所定の地中連続壁20(土留め壁兼立坑の側壁)を構築する。
【0033】
<土留め壁の内側の掘削および底版コンクリートの打設準備>
土留め壁(地中連続壁20)を構築したら、土留め壁20の内側を所定の掘削底面まで(本実施例では、地中連続壁の下端まで)水中掘削する。このとき、前記保護材3を掘削土砂とともに取り除くことで、地中連続壁20の下端部20aが斜め状に形成される。つまり、該下端部20aの内側の内部領域が、下部になるほど大径となる。
【0034】
土留め壁20の内側を掘削したら、図4に示されるように、掘削底面に均しコンクリート35を構成するコンクリートを打ち込む。このコンクリートとしては、セルフレベリング性を有する高流動性の水中不分離性コンクリートを用いることが望ましい。このようなコンクリートを用いることで、打ち込み後、放置するだけで均しコンクリート35が平坦に形成される。
【0035】
均しコンクリート35を形成したら、均しコンクリート35の上面に、均しコンクリート35と、後に均しコンクリート35上に構築される底版30との摩擦を減じるための減摩手段45を配設する。この減摩手段45は、例えば、表裏面にグリースを塗布した薄いゴムシートを複数枚重ねたものである。
【0036】
減摩手段45を配設したら、立坑の底版位置に底版コンクリートを補強するための鉄筋籠50を配設する。
また、ダイバー(水中)作業にて、PC緊張材40とPC緊張材40を地中連続壁20から引き出して接続具より接続し、内側シース管7bと内側シース管7bも同様に接続する(図2、図4参照)。内側シース管7bの接続部は止水テープ41などを用いて十分に養生する。
ここで、PC緊張材40,40は、地中連続壁20の完成後、いずれかの時点で、予め地中連続壁20の上部からシース管7,7に挿入しておく。
【0037】
PC緊張材40,40および内側シース管7b,7bをそれぞれ接続したら、PC緊張材40,40が挿入された内側シース管7b,7bを鉄筋籠1に対して適宜固定しながら、内側シース管7b,7bおよびPC緊張材40,40を所定の経路に設定する。固定方法は、例えば立坑上部からワイヤー43等で吊り上げることが挙げられる。
ここで、内側シース管7b,7bおよびPC緊張材40,40の経路は、図示のように、底版30の周縁部から底版30の中央部に向けて該経路の鉛直位置が高くなるようにする。
以上において、底版30を構成するコンクリートの打ち込み準備が完了する。
【0038】
<底版コンクリートの打設>
次ぎに、底版30を構成するコンクリートを打設する。このコンクリートは、セルフレベリング性を有する高流動性の水中不分離性コンクリートであることが望ましい。このようなコンクリートを用いることで、打ち込み後、放置するだけで底版コンクリートが平坦に形成される。
【0039】
<底版および側壁へのプレストレスの導入緊張作業>
底版コンクリートの硬化後、PC緊張材40,40を地中連続壁20の上部から緊張する。この緊張作業は、片側を固定端として一方から緊張することとしてもよいし、両端から緊張することとしても良い。
立坑の内部掘削は水中掘削となるが、このようにシース管7,7を地中連続壁20の上方まで延長して緊張作業を行うので、緊張作業は地上又は気中で行うことができる。
【0040】
緊張作業により、底版30(底版コンクリート)が水平方向に圧縮されて歪みが生じ、均しコンクリート35と底版30とに水平方向の変位差が生じる。このとき、これら均しコンクリート35と底版30との間には、減摩手段45が配設されているため、この変位差が円滑に生じることができ、プレストレスを円滑に導入することができる。よって、底版30と均しコンクリート35との摩擦によるプレストレスのロスを無くすことができる。
また、地中連続壁(側壁)20の下端部20aは、下に向けて細くなる形状となっているため、地中連続壁20の下端部20aの剛性は他の部分より小さく設定されている。よって、底版30と地中連続壁20とに連続的なプレストレスを導入する際に、下端部20aが内側に僅かに弾性変形し、底版30と下端部20aとの一体性(密着度)を高めることができる。さらに、プレストレスのロスを低減できるので、PC緊張材40,40の節約が可能となる。
さらに、底版30の周縁部から底版30の中央部に向けて内側シース管7b,7bおよびPC緊張材40,40の経路の鉛直位置が高くなるように設定したので、底版にプレストレスを導入することで、底版30の中央部も下方向に抑えつけることができ、底版30に作用する下方向からの揚圧力に対して、好適に抗することができる。
【0041】
緊張作業終了後、シース管7内にグラウト(図示省略)を注入・充填する。
このように、PC緊張材40,40を緊張することで、地中連続壁20と底版30とに対して連続的なプレストレスを導入することができる。
【0042】
<排水>
以上の各工程の終了後は、立坑の底部の止水および補強がなされているので、この状態で立坑内の水を排水(ドライアップ)する。その後、必要に応じた内部構造物(図示省略)を構築し、立坑の完成となる。
【0043】
このように、本発明に係る実施の形態例によれば、以下に示すような様々な利点が得られる。
底版30を構築し、溝部の底部を止水した後、前記水の排水を行うので、土留め壁の根入れ長を短くしてもボイリングやヒービングの発生を防止できる。よって、根入れ長を短くすることで、工費・工期を低減できるとともに、底版を合理的に設計することでも工費・工期を低減できる。
なお、ここで、図1に仮想線で示される60は、従来工法による土留め壁を示したもので、この土留め壁60は不透水層61まで達する必要があるため極めて長いものとなる。
また、底版30にはプレストレスを導入するので、底版30の構造的な強度を高めることができ、揚圧力等に対して、底版がより好適に抗することができる。よって、このことによっても、土留め壁の根入れ長を短くしてもボイリングやヒービングの発生を防止できるとともに、底版30そのものの合理的な設計をすることが可能となる。
地下水位低下工法を用いる必要がないため、地盤沈下などの影響が懸念される都市部においても採用できる。
【0044】
立坑の側壁(地中連続壁20)と底版30とに対して、連続的なプレストレスを導入するので、側壁(地中連続壁20)と底版30との接合部が強固に一体化される。また、側壁(地中連続壁20)を側圧に対して強いものとすることができる。
【0045】
底版30の下に減摩手段45を配設した状態で、前記プレストレスを導入するので、底版30と底版の下側の例えば均しコンクリート35との摩擦によるプレストレスのロスを無くすことができる。
【0046】
前記プレストレスを導入するためのPC緊張材40の経路の設定により、底版30に作用する上方向の揚圧力に該底版が好適に抗することができる。
【0047】
底版30には、下方向からの揚圧力が作用するが、底版30は下部になるほど大径となる一方で、地中連続壁(側壁)20の下端部20aがこのような形状の底版30に対応するように設定したので、底版30が下方向から地中連続壁20に対してくさびのように食い込むような状態となる(逆に言えば、地中連続壁20により底版30を上から抑え付けた状態となる)。このようなくさび効果により、底版30と地中連続壁20との一体性を向上させることができる。
地中連続壁20の下端部20aの剛性が小さくなるので、プレストレスを導入することにより下端部20aと底版30との一体性をさらに高めることができるとともに、プレストレスのロスも少なくなる。さらに、プレストレスのロスが少なくなることで、必要なPC緊張材40,40が節約できる。
【0048】
側壁(地中連続壁20)の構築時に、底版30の構築位置の周囲に建て込むシース管7を二重管構造とし、内側シース管7bを外側シース管7aから引き出し可能としたことで、底版部分への内側シース管7bの延長が容易にできる。
【0049】
なお、上記の実施の形態例では、地中連続壁20により構築した土留め壁が、そのまま立坑の側壁となる場合について示したが、立坑の側壁は、土留め壁の内側に構築した内部構造物である場合がある。従って、内部構造物を立坑の側壁とした場合には、内部構造物と、底版とに対して、連続的なプレストレスを導入すればよい。この場合の土留め壁の構築方法は問わない(例えば、鋼矢板工法、SMW工法等)。
また、PC緊張材40,40相互の接続のタイミングとシース管7,7(内側シース管7b,7b)相互の接続のタイミングを、ともに底版コンクリートの打ち込み前のタイミングとしたが、このタイミングではシース管7,7のみの接続を行い、PC緊張材40,40の挿入は底版コンクリート硬化後に地中連続壁20の上部よりプッシングマシンなどを用いて行っても良い。この場合、ダイバー作業が軽減される他、PC緊張材40,40の接続具が不要となるため、さらに経済的となる。
また、立坑の形状を円形立坑としたが、地盤条件等によっては、矩形立坑等にも適用可能である。
【0050】
【発明の効果】
請求項1記載の発明に係る立坑の築造方法によれば、底版を構築して溝部の底部を止水した後、前記水の排水を行うので、土留め壁の根入れ長を短くしてもボイリングやヒービングの発生を防止できる。よって、根入れ長を短くすることで、工費・工期を低減できる。
また、一方で、底版にはプレストレスを導入するので、底版の構造的な強度を高めることができ、揚圧力等に対して、底版がより好適に抗することができる。さらに、底版そのものの寸法・形状等も、曲げモーメントやせん断力に対して合理的な設計をすることが可能となるため工費・工期をより低減できる。
加えて、地下水位低下工法を用いる必要がないため、周辺環境を維持でき、地盤沈下などの影響が懸念される都市部においても採用できる。
【0051】
また、請求項1記載の発明に係る立坑の築造方法によれば、立坑の側壁と前記底版とに対して、連続的なプレストレスを導入するので、側壁と底版とを緊密に接合することができる。よって、側壁と底版との接合部が一体化される。また、側壁を側圧に対して強いものとすることができる。
【0052】
請求項2記載の発明に係る立坑の築造方法によれば、底版の下に減摩手段を配設した状態で、前記プレストレスを導入するので、底版と、底版の下側の均しコンクリートや地盤との摩擦によるプレストレスのロスを無くすことができる。
【0053】
請求項3記載の発明に係る立坑の築造方法によれば、底版が揚圧力に好適に抗することができるように緊張材の経路を設定するので、底版が揚圧力に好適に抗することができる。
【0054】
請求項4記載の発明に係る立坑の築造方法によれば、底版の下部になるほど大径となる一方で、側壁の下端部がこのような形状の底版に対応するように設定するので、底版と側壁との一体性を高めることができる。
【0055】
請求項5記載の発明に係る立坑の築造方法によれば、側壁の構築時に、底版の構築位置の周囲に建て込むシース管を二重管構造とし、内側のシース管を外側のシース管から引き出し可能としたことで、底版部分へのシース管の延長が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る立坑の築造方法を説明するための断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】地中連続壁の構築を説明するための要部拡大図である。
【図4】シース管の接続を説明するための要部拡大図である。
【符号の説明】
7 シース管
7a 外側シース管
7b 内側シース管
20 土留め壁兼側壁(地中連続壁)
20a 下端部
30 底版
40 緊張材(PC緊張材)
45 減摩手段
Claims (5)
- 地中に土留め壁を設けて、この土留め壁の内側を所定の深さまで水中掘削した後、該水中掘削により形成した溝部の底部に立坑の底版を設ける立坑の築造方法において、前記溝部を形成した後、該溝部内に溜めた水を排水する前に、シース管を立坑の側壁の上方まで延長した状態で、前記側壁及び前記底版に連続するように建て込み、前記シース管に挿通したPC緊張材を前記側壁の上部から緊張することで、前記立坑の側壁と前記底版とに対して連続的なプレストレスを導入した前記底版を構築し、その後、前記水の排水を行うこと、を特徴とする立坑の築造方法。
- 前記底版の下に減摩手段を配設した状態で、前記プレストレスを導入すること、を特徴とする請求項1に記載の立坑の築造方法。
- 前記底版に作用する上方向の揚圧力に該底版が好適に抗することができるように前記プレストレスを導入するための緊張材の経路を設定すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の立坑の築造方法。
- 前記底版の下部になるほど大径となる一方で、前記側壁の下端部がこのような形状の底版に対応するように設定すること、を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の立坑の築造方法。
- 前記側壁の構築時に、前記プレストレスを導入するための緊張材を挿通するシース管を、前記底版の構築位置の周囲に建て込むに際して、前記シース管を二重管構造とし、内側のシース管を外側のシース管から引き出し可能としたこと、を特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の立坑の築造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP02304799A JP4146561B2 (ja) | 1999-01-29 | 1999-01-29 | 立坑の築造方法 |
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