JP7222664B2 - 圧粉磁心 - Google Patents

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Description

本発明は、圧粉磁心に関する。
形状自由度の高さと、高周波帯域への適用可能性から圧粉磁心材料の開発が盛んに行われている。圧粉磁心は、リン酸やシリカ等の絶縁性物質で被覆した軟磁性金属粒子をプレス成形したコアである。
特許文献1では、軟磁性金属粒子の粒子間を高抵抗軟磁性物質で構成した複合軟磁性材料が開示されている。この文献には、複合軟磁性材料における軟磁性金属粒子の断面積比率等を特定の範囲とすることで、実用となる磁界で十分磁束密度Bmが高くなり、コアロスPcvが良くなる旨の記載がある。
また、特許文献2には、表面にフェライト原料が付着した軟磁性金属粒子を加圧成形して成形体とし、この成形体を熱処理(焼鈍)する技術が開示されている。この文献には、熱処理により、軟磁性金属粒子の表面にフェライト膜が形成され、比抵抗及び磁束密度が向上する旨の記載がある。
また、特許文献3には、フェライト結晶粒からなるフェライト膜で被覆した軟磁性金属粒子が開示されている。この文献では、フェライト結晶粒により、フェライト膜の強度が向上するから、圧粉成形時の高い応力をかけてもフェライト膜の破損が抑制される旨の記載がある。
特開2017-45892号公報 特開2016-157753号公報 特開2017-119908号公報
ところで、低鉄損な圧粉磁心を得るためには、透磁率を向上させる必要がある。
しかし、上記のいずれの技術を適用しても、透磁率は必ずしも十分とは言えず、透磁率を向上させる新たな技術が切望されていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、圧粉磁心の透磁率を向上させることを目的とする。本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
〔1〕複数の鉄基軟磁性粒子と、前記鉄基軟磁性粒子の表面に形成されるフェライトとを有する圧粉磁心であって、
前記鉄基軟磁性粒子の平均粒子径をDaμmとした場合に、前記圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第1視野で観察した際に、
前記第1視野中に欠けることなく観察できる前記鉄基軟磁性粒子のアスペクト比は、1.15以上、3.0以下であり、
前記第1視野中に欠けることなく観察できる前記鉄基軟磁性粒子の総個数をNとし、
前記第1視野中に欠けることなく観察できる前記鉄基軟磁性粒子であって、前記圧粉磁心における磁界の発生する方向に対して、長軸の方向が±60°以内である前記鉄基軟磁性粒子の個数をnとすると、比の値n/Nが次の関係式(1)を満たすことを特徴とする圧粉磁心。

0.65≦n/N≦1.00 …(1)
〔2〕前記鉄基軟磁性粒子の平均粒子径をDaμmとした場合に、前記圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第2視野で観察した際に、気孔の面積割合は、前記第2視野の12%以下であり、
前記圧粉磁心の断面構造を5Daμm×5Daμmの正方形の第3視野で観察した際に、前記第3視野から前記気孔を除いた部分を残視野とすると、フェライトが前記残視野を占有する面積割合は、前記残視野の1%以上25%以下であることを特徴とする〔1〕に記載の圧粉磁心。
〔3〕前記圧粉磁心の断面構造を5Daμm×5Daμmの正方形の第4視野で観察した際に、角度が30度未満の鋭角部を有する特定形状気孔が存在していないことを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の圧粉磁心。
〔4〕前記鉄基軟磁性粒子の平均粒子径をDaμmとした場合に、前記圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第5視野で観察した際に、
前記第5視野中に欠けることなく観察でき、かつ長軸が最大である前記鉄基軟磁性粒子を第1粒子とし、
前記第5視野中に欠けることなく観察でき、かつ前記第1粒子の長軸の1/10以下の長軸を有する前記鉄基軟磁性粒子を第2粒子とし、
前記鉄基軟磁性粒子の総個数をNとし、前記第2粒子の個数をn2とすると、比の値n2/Nが次の関係式(2)を満たすことを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の圧粉磁心。

0.1≦n2/N≦0.3 …(2)
〔5〕前記圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第6視野で観察した際に、
前記第6視野中に欠けることなく観察でき、かつ長軸が最大である前記鉄基軟磁性粒子を特定粒子とし、
前記鉄基軟磁性粒子のうち、前記特定粒子の隣りの前記鉄基軟磁性粒子を隣接粒子Pn(但し、nは1以上の整数)とし、
前記特定粒子の長軸を直径とした円の中心をC0とし、前記隣接粒子Pnの長軸を直径とした円の中心をCn(但し、nは1以上の整数)とした場合に、
前記C0と前記Cn(但し、nは1以上の整数)を結ぶ直線が、前記特定粒子の外縁と交わる点An(但し、nは1以上の整数)と、前記隣接粒子Pnの外縁と交わる点Bn(但し、nは1以上の整数)とを求め、前記点Anと前記点Bnとの距離を、前記特定粒子と前記隣接粒子Pnの粒子間距離と定義し、
n=1のときの前記粒子間距離が、20nm~1000nmである、又は、
前記特定粒子と各々の前記隣接粒子Pn(但し、nは2以上の整数)との前記粒子間距離を求め、それらを平均した平均粒子間距離が、20nm~1000nmであることを特徴とする〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
〔6〕前記圧粉磁心に存在するフェライトは、アルカリ金属を含有していることを特徴とする〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
上記〔1〕の発明によれば、圧粉磁心の磁界の吸収効率がよくなり、結果として圧粉磁心の透磁率が高くなる。
上記〔2〕の発明によれば、圧粉磁心の透磁率が高くなり、圧粉磁心の電気抵抗率も高い値を示す。
上記〔3〕の発明によれば、気孔に鋭角部が存在しないので、圧粉磁心の抵抗値変化率が小さくなる。
上記〔4〕の発明によれば、第1粒子の長軸の1/10以下の長軸を有する第2粒子が、10~30%存在することによって充填性が向上して圧粉磁心を高密度化できる。その結果、圧粉磁心の透磁率、及び抵抗率が向上し、抵抗値変化率がより小さくなる。
上記〔5〕の発明によれば、粒子間距離が20nm以上である、すなわち、フェライトの厚みが十分に確保されているから、圧粉磁心が絶縁破壊を起こさない。更に、粒子間距離が1000nm以下である、すなわち、フェライトの厚みが厚すぎないから、ヒステリシス損失が小さく、鉄損も小さい。
上記〔6〕の発明によれば、フェライト中にアルカリ金属が存在するので、フェライトが緻密化し、圧粉磁心の透磁率及び抵抗値変化率が小さくなる。
圧粉磁心を示す模式図である。 圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第1視野で観察した際の模式図を示す。 磁界の発生する方向に対する長軸の方向を説明するための模式図である。 複合粒子の断面を示す模式図である。 圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第2視野で観察した際の模式図を示す。 圧粉磁心の断面構造を5Daμm×5Daμmの正方形の第3視野で観察した際の模式図を示す。 圧粉磁心の断面構造を5Daμm×5Daμmの正方形の第4視野で観察した際の模式図を示す。 圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第5視野で観察した際の模式図を示す。 圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第6視野で観察した際の模式図を示す。 粒子間距離Lを説明するための模式図である。
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
1.圧粉磁心1の構成
トロイダル形状の圧粉磁心1を例として説明する。圧粉磁心1の形状は、特に限定されない。
図1に、圧粉磁心1の一例を示す。圧粉磁心1は、導線4が巻き付けられて使用される。
図1の圧粉磁心1を、その軸方向に沿って切断すると図2に模式的に示す断面構造が得られる。図2の断面構造は、図1の一点鎖線で示した領域の一部であり、後述する第1視野を示している。図2において矢印は、圧粉磁心1における磁界の発生する方向を示している。
圧粉磁心1は、図2に示すように、複数の鉄基軟磁性粒子3を有する。なお、図2におけるハッチング(平行線)は、鉄基軟磁性粒子3を示している。また、図2の点描は、フェライト6を示している。
圧粉磁心1は、図4に示す、表面にフェライト5を有する鉄基軟磁性粒子3である複合粒子7から構成されている。複数の複合粒子7をプレス成形すると、図1に示す圧粉磁心1が得られる。
本実施形態では、鉄基軟磁性粒子3の平均粒子径をDaμmとした場合に、圧粉磁心1の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第1視野で観察した際に、次の第1要件及び第2要件を満たしている。なお、第1要件及び第2要件は、圧粉磁心1の断面構造を観察した際に、10Daμm×10Daμmの正方形の視野を複数観察して、そのうちの少なくとも1つの視野において満たしていればよい。
(第1要件)
第1視野中に欠けることなく観察できる鉄基軟磁性粒子3のアスペクト比は、1.15以上、3.0以下である。
(第2要件)
第1視野中に欠けることなく観察できる鉄基軟磁性粒子3の総個数をNとする。第1視野中に欠けることなく観察できる鉄基軟磁性粒子3であって、圧粉磁心1における磁界の発生する方向に対して、長軸の方向が±60°以内である鉄基軟磁性粒子3の個数をnとする。このようにN,nを定めたときに、比の値n/Nが次の関係式(1)を満たす。

0.65≦n/N≦1.00 …(1)
以下、本発明の圧粉磁心1の実施形態を詳細に説明する。
(1)鉄基軟磁性粒子3
(1.1)鉄基軟磁性粒子3の構成
鉄基軟磁性粒子3としては、軟磁性である純鉄、鉄基合金の粒子を幅広く用いることができる。鉄基合金としては、Fe-Si合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金、Ni-Fe合金、Fe-Co合金、Fe基アモルファス合金等を好適に用いることができる。特に、組成中にCrやAlを含む合金は、表面に金属酸化物層を形成しているため、より好ましい。CrやAlを含まない金属を用いる場合には、予めめっき処理等により金属表面にCrやAlの層を形成させる必要がある。
Fe-Si-Cr合金を用いる場合には、例えば、Si:0.1~10質量%、Cr:0.1~10質量%、残部:Fe及び不可避的不純物の組成の合金とすることができる。
鉄基軟磁性粒子3の平均粒子径は、特に限定されないが、2.0μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上80μm以下がより好ましく、20μm以上60μm以下が更に好ましい。鉄基軟磁性粒子3の平均粒子径は、使用する周波数帯域によって適宜変更することができる。特に100kHzを超える高周波帯域での使用を想定した場合は5μm以上60μm以下であることがより好ましい。なお、鉄基軟磁性粒子3の平均粒子径は、圧粉磁心1の断面をFE-SEM JSM-6330Fによって観察した粒子面積から面積円相当径を算出し、平均粒子径とした。
鉄基軟磁性粒子3は、表面に金属酸化物層(不動態被膜)を備えていてもよい。金属酸化物層を、表面に備えることによって、焼鈍(熱処理)を行った際、鉄基軟磁性粒子3とフェライト5間の金属原子の拡散反応を抑制することができる。
金属酸化物層を構成する金属酸化物は特に限定されない。例えば、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、及び酸化タングステンからなる群より選ばれた1種以上の金属酸化物が好ましい。特に、金属酸化物に、酸化クロム及び酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの好ましい金属酸化物を用いることで、上述の金属原子の拡散が効果的に抑制される。
なお、鉄基軟磁性粒子3として、Fe-Si-Cr合金の粒子を用いた場合には、金属原子拡散の抑制効果を有する金属酸化物層を容易に形成することができる。すなわち、Fe-Si-Cr合金中のCrが酸化することにより鉄基軟磁性粒子3の外縁部に金属酸化物層が形成される。
また、金属酸化物層の厚みは、特に限定されない。厚みは、好ましくは1nm~20nmとすることができる。なお、金属酸化物層の厚みは、XPS(X線光電子分光法)を用いて測定できる。
(1.2)第1要件について
第1要件は、既述のように、第1視野中に欠けることなく観察できる鉄基軟磁性粒子3のアスペクト比が、1.15以上、3.0以下という要件である。第1視野中に欠けることなく観察できる鉄基軟磁性粒子3のアスペクト比は、1.20以上、2.5以下であることが好ましく、1.25以上、2.0以下であることがより好ましい。
(1.3)第2要件について
第2要件は、N,nが、関係式(1)を満たすという要件である。N,nが、下記関係式(1’)を満たすことが好ましく、下記関係式(1’’)を満たすことがより好ましい。

0.70≦n/N≦1.00 …(1’)
0.75≦n/N≦1.00 …(1’’)
ここで、N,nについて説明する。
Nは、第1視野中に欠けることなく観察できる鉄基軟磁性粒子3の総個数である。よって、図2の中に観察される鉄基軟磁性粒子3であっても、一部が欠けた鉄基軟磁性粒子3の個数は、Nには含まれない。例えば、図2では、符号3Aで示された鉄基軟磁性粒子3は、Nには含まれない。但し、図2では、Nに含まれない鉄基軟磁性粒子3の一部に符号3Aが付されている。
nは、第1視野中に欠けることなく観察できる鉄基軟磁性粒子3であって、圧粉磁心1における磁界の発生する方向に対して、長軸の方向が±60°以内である鉄基軟磁性粒子3の個数である。このnに含まれる鉄基軟磁性粒子3の概念を図3にて説明する。図3において矢印は、圧粉磁心1における磁界の発生する方向を示している。また、鉄基軟磁性粒子3に示された破線は、鉄基軟磁性粒子3の長軸を示している。
図3の(A)で示される鉄基軟磁性粒子3は、長軸の方向が磁界の発生する方向と略一致している。すなわち、鉄基軟磁性粒子3は、磁界の発生する方向に対して、長軸の方向が略0°である。
図3の(B)で示される鉄基軟磁性粒子3は、磁界の発生する方向に対して、長軸の方向が0°以上+60°以下である。すなわち、この鉄基軟磁性粒子3では、図3中のθが「0°≦θ≦60°」を満たしている。
図3の(C)で示される鉄基軟磁性粒子3は、磁界の発生する方向に対して、長軸の方向が-60°以上0°以下である。すなわち、この鉄基軟磁性粒子3では、図3中のθが「-60°≦θ≦0°」を満たしている。
図3の(D)で示される鉄基軟磁性粒子3は、磁界の発生する方向に対して、長軸の方向が60°以上である。すなわち、この鉄基軟磁性粒子3では、図3中のθが60°以上であり、略90°となっている。
従って、図3の(A)(B)(C)で示される鉄基軟磁性粒子3は、nに含まれる。他方、図3の(D)で示される鉄基軟磁性粒子3は、nに含まれない。
(2)フェライト6
(2.1)フェライト6の構成
本実施形態の圧粉磁心1は、フェライト6(軟磁性フェライト)を有する。
フェライト6の材料は、特に限定されない。フェライト6の材料は、マグネタイト、Niフェライト、Znフェライト、Mnフェライト、Ni-Znフェライト、Mn-Znフェライト、及びNi-Zn-Cuフェライトからなる群より選ばれた1種以上が好ましい。更には電気抵抗率が10Ω・cm以上のフェライトを用いることが好ましい。そのため、Niフェライト、Znフェライト、Mnフェライト、Ni-Znフェライト、Mn-Znフェライト、及びNi-Zn-Cuフェライトからなる群より選ばれた1種以上がより好ましい。
フェライト6としては、例えば、下記式〔1〕又は〔2〕の軟磁性フェライトを好適に用いることができる。

〔1〕 Fe
〔2〕 M-Zn-Fe(3-x-y)
(但し、式中、Mは、Ni又はMnであり、0≦x≦1、0≦y≦1である。)
(2.2)フェライトの形成方法
圧粉磁心1のフェライト6は、既述のように複合粒子7のフェライト5に由来している。複合粒子7のフェライト5の形成方法は、特に限定されない。ここでは、その形成方法の一例を説明する。
例えば、金属酸化物層が表面に存在する鉄基軟磁性粒子3を超音波励起フェライトめっき装置を用いてめっき反応させる。この反応は、水溶液中でFe2+→Fe3+の酸化反応を利用し、めっき溶液中の金属イオンと水分子を反応させることでスピネル型フェライトを基板や粒子等の表面に堆積させる手法である。この手法では、めっき条件、めっき時間の調整により、金属酸化物層の表面をフェライト5によって被覆することができる。なお、めっき時間の調整によってフェライト5の厚さを調整することができる。
通常、被めっき物に酸化クロムや酸化アルミニウムといった金属酸化物層が存在する場合、めっきの反応速度が著しく低下するため、フェライト5を形成させることはできない。金属酸化物層の表面に徽密に(例えば金属酸化物層の表面の80%以上を)被覆するためには、めっき液のpHを細かく調整する必要がある。被覆するフェライト5のpH-酸化還元電位図において、フェライト生成条件の高pH側にめっき液のpHを調節する必要がある。この条件はめっきするフェライト5の組成によって変化するが、例えばMn-ZnフェライトではpH=10~11が好ましく、Ni-ZnフェライトではpH=11~12が好ましい。
被めっき物である鉄基軟磁性粒子3を、目的のpHに調整した緩衝液中に添加し、そこへ原料となる金属イオンを溶解させた反応液と酸化液を徐々に添加することでフェライト5が堆積した堆積部が形成される。超音波ホーンにより、鉄基軟磁性粒子3は発熱を伴いながら激しく分散され、恒温槽からの加熱と併せてフェライト生成反応は加速される。また、下の反応式から分かるように、反応の進行と共にプロトンが生成されるため、めっき槽内のpHは徐々に酸性に変化する。pHの変動はフェライト生成に大きく影響するため、めっき槽内のpHを常に一定に保つ必要がある。めっき条件の最適化により、金属酸化物層によるめっき反応の抑制を最小限に抑えることができる。

3Fe2++4HO→Fe+8H+2e

フェライト5により被覆された鉄基軟磁性粒子3の製造方法の一例を以下に示す。水に金属イオンが含まれた反応液を用意する。水に酸化剤が溶解した酸化液を用意する。金属酸化物層を表面に有する鉄基軟磁性粒子3を所定のpHに調製した緩衝液中に分散させる。そして、超音波を印加しながら、鉄基軟磁性粒子3が分散した緩衝溶液に、反応液及び酸化液を滴下すると、金属酸化物層の上にフェライト5が形成される。緩衝液のpHは、Ni-Znフェライトの場合には、上述のように、好ましくは11~12である。緩衝液の種類は特に限定されない。
なお、鉄基軟磁性粒子3の表面に、フェライト5が形成するメカニズムは解明されていないが以下のように推測される。具体的には、鉄基軟磁性粒子3の表面の水酸基から反応が開始し、フェライト5の形成が始まるものと推測される。
このようにして、フェライト5により被覆された鉄基軟磁性粒子3を製造することができる。この鉄基軟磁性粒子3をプレス成形し、焼鈍することによって、フェライト6を備えた圧粉磁心1が製造される。
なお、反応時間等で鉄基軟磁性粒子3に被覆するフェライト5量を制御できる。鉄基軟磁性粒子3の表面にフェライト5を形成する反応時間は、好ましくは、1分以上60分以下であり、より好ましくは1分以上25分以下である。使用する鉄基軟磁性粒子3の組成によって反応速度が異なるため、反応時間は鉄基軟磁性粒子3の種類に応じて適宜変更すればよい。
2.圧粉磁心1の製造方法
(1)プレス成形
圧粉磁心1の形状を作るためには、通常、プレス成形が用いられる。プレス成形の際の成形圧は500MPa~2000MPaが好ましく、高密度の成形体を得るためには高圧でプレスした方がよい。また、プレス成形時に50℃~200℃の範囲で金型を加熱してもよい。金型を加熱することで鉄基軟磁性粒子3が塑性変形しやすくなり、高密度の成形体を得る事ができる。他方、200℃を超える温度でのプレス成形は、鉄基軟磁性粒子3の酸化が問題となりあまり好ましくない。
なお、プレス成形の条件(圧力等)を調整することにより、鉄基軟磁性粒子3のアスペクト比、及び比の値n/Nが調整される。
(2)焼鈍
上記で得られた成形体について、プレス成形の際に加えられた歪みを開放するため、焼鈍することが好ましい。焼鈍温度は、500℃以上であることが好ましい。また、焼鈍雰囲気は、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気や、水素等の還元雰囲気が好ましく、真空中で焼鈍してもよい。焼鈍の条件は、使用する鉄基軟磁性粒子3やフェライト5の種類によって適宜変更される。
3.圧粉磁心1の気孔35の面積割合、フェライト6の面積割合
圧粉磁心1の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第2視野で観察した場合に、気孔35の面積割合は、第2視野の12%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、8%以下であることが更に好ましい。この範囲では、圧粉磁心1の透磁率が更に向上する。
図5は、第2視野を示している。図5では、鉄基軟磁性粒子3、フェライト6、及び気孔35が観察される様子が模式的に示されている。
なお、気孔35の面積割合は、画像処理等によって算出できる。
また、この欄に記載された気孔35の面積割合の要件は、圧粉磁心1の断面構造を観察した際に、10Daμm×10Daμmの正方形の視野を複数観察して、そのうちの少なくとも1つの視野において満たしていればよい。
また、圧粉磁心1の断面構造を5Daμm×5Daμmの正方形の第3視野で観察した際に、第3視野から気孔35を除いた部分を残視野とすると、フェライト6が残視野を占有する面積割合は、残視野の1%以上25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましい。この範囲では、圧粉磁心1の透磁率が更に向上する。
図6は、第3視野を示している。図6では、鉄基軟磁性粒子3、フェライト6、及び気孔35が観察される様子が模式的に示されている。
なお、フェライト6が残視野を占有する面積割合は、画像処理等によって算出できる。
また、この欄に記載されたフェライト5が残視野を占有する面積割合の要件は、圧粉磁心1の断面構造を観察した際に、5Daμm×5Daμmの正方形の視野を複数観察して、そのうちの少なくとも1つの視野において満たしていればよい。
4.鋭角部を有する特定形状気孔35A
圧粉磁心1の断面構造を5Daμm×5Daμmの正方形の第4視野で観察した際に、角度が30度未満の鋭角部を有する特定形状気孔35Aが存在していないことが好ましい。
図7は、第4視野を示している。図7では、鉄基軟磁性粒子3、フェライト6、及び鋭角部を有する特定形状気孔35Aが観察される様子が模式的に示されている。
鋭角部を有する特定形状気孔35Aが存在しない場合には、圧粉磁心1の抵抗値変化率が小さくなる。
5.比の値n2/Nに関する要件
比の値n2/Nに関する要件を説明する。鉄基軟磁性粒子3の平均粒子径をDaμmとした場合に、圧粉磁心1の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第5視野で観察する。
図8は、第5視野を示している。
第5視野中に欠けることなく観察でき、かつ長軸が最大である鉄基軟磁性粒子3を第1粒子61とする。
第5視野中に欠けることなく観察でき、かつ第1粒子61の長軸の1/10以下の長軸を有する鉄基軟磁性粒子3を第2粒子63とする。
鉄基軟磁性粒子3の総個数をNとし、第2粒子63の個数をn2とすると、比の値n2/Nが次の関係式(2)を満たすことが好ましい。N,n2が、下記関係式(2’)を満たすことがより好ましく、下記関係式(2’’)を満たすことがより好ましい。なお、鉄基軟磁性粒子3の総個数とは、第5視野中に欠けることなく観察できる鉄基軟磁性粒子3の総数である。

0.1≦n2/N≦0.3 …(2)
0.1≦n2/N≦0.28 …(2’)
0.1≦n2/N≦0.26 …(2’’)
関係式(2)を満たすことにより、すなわち、第1粒子61の長軸の1/10以下の長軸を有する第2粒子63が、10~30%存在することによって充填性が向上して圧粉磁心1を高密度化できる。その結果、圧粉磁心1の透磁率、及び抵抗率が向上し、抵抗値変化率がより小さくなる。
6.粒子間距離Lに関する要件
粒子間距離Lに関する要件を説明する。
図9に模式的に示されるように、圧粉磁心1の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第6視野で観察した場合に、第6視野中に欠けることなく観察でき、かつ長軸が最大である鉄基軟磁性粒子3を特定粒子31とする。また、鉄基軟磁性粒子3のうち、特定粒子31の隣りの鉄基軟磁性粒子3を隣接粒子Pn(図9の場合には、P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7)とする。そして、特定粒子31の長軸を直径とした円の中心をC0とし、隣接粒子Pnの長軸を直径とした円の中心をCn(C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7)として、C0とCnを結ぶ直線を引く。直線が、特定粒子31の外縁と交わる点Anと、隣接粒子Pnの外縁と交わる点Bnとを求め、点Anと点Bnとの距離を、特定粒子31と隣接粒子Pnの粒子間距離Lnと定義する。図10では、特定粒子31と隣接粒子P1の粒子間距離L1が例示されている。
この際、n=1のときの粒子間距離L1は、20nm~1000nmが好ましく、30nm~500nmがより好ましく、40nm~300nmが更に好ましい。
nが2以上の整数のときは、特定粒子31と各々の隣接粒子Pnとの粒子間距離Lnをそれぞれ求め、それらを平均した平均粒子間距離は、20nm~1000nmが好ましく、30nm~500nmがより好ましく、40nm~300nmが更に好ましい。
粒子間距離Lに関する要件を満たすと、フェライト6の厚みが十分に確保されているから、圧粉磁心1が絶縁破壊を起こさない。更に、粒子間距離Lが1000nm以下である、すなわち、フェライト6の厚みが厚すぎないから、ヒステリシス損失が小さく、鉄損も小さい。
7.アルカリ金属に関する要件
圧粉磁心1に存在するフェライト6は、アルカリ金属(Li(リチウム),Na(ナトリウム),K(カリウム)等)を含有していることが好ましい。
フェライト6中にアルカリ金属が存在すると、フェライト6が緻密化し圧粉磁心1の透磁率及び抵抗値変化率が小さくなる。
なお、アルカリ金属の確認は、TOF-SIMSによる測定で行うことができる。
8.本実施形態の圧粉磁心1の作用効果
本実施形態の圧粉磁心1は、磁界の吸収効率がよくなり、透磁率μ’が高い。
気孔35の面積割合が、第2視野の12%以下であり、かつフェライト5の残視野を占有する面積割合が、残視野の1%以上25%以下であると、圧粉磁心1の透磁率が高くなり、圧粉磁心1の電気抵抗率も高い値を示す。
気孔35に鋭角部が存在しない場合は、圧粉磁心1の抵抗値変化率が小さくなる。
第1粒子61の長軸の1/10以下の長軸を有する第2粒子63が、10~30%存在する場合には、充填性が向上して圧粉磁心1を高密度化できる。その結果、圧粉磁心1の透磁率、及び抵抗率が向上し、抵抗値変化率がより小さくなる。
粒子間距離Lが20nm以上である場合には、圧粉磁心1が絶縁破壊を起こさない。また、粒子間距離Lが1000nm以下である場合には、ヒステリシス損失が小さく、鉄損も小さい。
フェライト6中にアルカリ金属が存在する場合には、フェライト6が緻密化し、圧粉磁心1の透磁率及び抵抗値変化率が小さくなる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
なお、実験例1~22は実施例であり、実験例23~26は比較例である。
表において、実験例を「no.」を用いて示す。また、表において「23*」のように、「*」が付されている場合には、比較例であることを示している。
1.圧粉磁心の作製
(1)実験例1(no.1)
鉄基軟磁性粒子(原料粉末)には、水アトマイズ法によって作製したFe-5.5質量%Si-4.0質量%Cr粒子(平均粒子径:10μm)を使用した。
鉄基軟磁性粒子10gを100mlの酢酸カリウム水溶液に分散させ、水酸化カリウムによってpH=11に調整した。また、純水100mlに所定量の塩化ニッケル、塩化鉄(II)を添加し、十分に溶解させた後、反応液とした。同様に純水100mlに酸化剤としての亜硝酸カリウムを加えて酸化液とした。
得られためっき溶液(鉄基軟磁性粒子3が分散された溶液)に窒素を流しながら、めっき溶液を70℃に加熱した。めっき溶液を撹拌しながら、めっき溶液に反応液と酸化液を滴下してフェライト膜を形成させた。反応は25分間行い、鉄基軟磁性粒子は、純水で洗浄した後、磁石にて回収した。この後、鉄基軟磁性粒子を乾燥させ、粉砕と篩通しを行った。このようにして、フェライトにより被覆された鉄基軟磁性粒子(複合粒子)を得た。
成形は得られた複合粒子を、金型に充填し、1000MPaの圧力でトロイダル形状(外径:8mm,内径:4.5mm,高さ:1mm)にプレス成形を行った。得られたプレス体を、Ar雰囲気下にて700℃15分の熱処理を行い、実験例1に係る圧粉磁心とした。
(2)実験例2~26(no.2~26)
実験例2~26では、実験例1の「Fe-5.5質量%Si-4.0質量%Cr粒子」、「塩化ニッケル、塩化鉄(II)」、「1000MPa」に代えて、表1に記載された「鉄基軟磁性粒子」、「反応液に溶解させた塩」、及び「成形の際の圧力」とした。これら以外は、実験例1と同様にして圧粉磁心を得た。
なお、表1には、実験例1における「鉄基軟磁性粒子」、「反応液に溶解させた塩」、及び「成形の際の圧力」も記載されている。また、表において、「↑」の記号は、直上と同じであることを示している。
Figure 0007222664000001
2.評価方法
焼鈍後の圧粉磁心の断面観察を行った。圧粉磁心をダイシング装置(切断装置)で半分に切断し、エポキシ樹脂中で硬化させ、ダイシング切断面を鏡面加工することによって評価サンプルを得た。評価サンプルをFE-SEMにより観察した。
鉄基軟磁性粒子3の平均粒子径を求めるに際しては、100μm×100μmの正方形の視野を用いて行った。観察された鉄基軟磁性粒子3の粒子面積から面積円相当径を算出し、平均粒子径とした。
(1)鉄基軟磁性粒子のアスペクト比
鉄基軟磁性粒子3のアスペクト比は、上記FE-SEMによる観察から求めた。観察は、鉄基軟磁性粒子3の平均粒子径をDaμmとして、10Daμm×10Daμmの正方形の視野(第1視野)で行った。例えば、鉄基軟磁性粒子の平均粒子径が10μmの場合には、100μm×100μmの正方形の視野を採用した。
アスペクト比は圧粉磁心の断面観察から算出した。断面画像にて確認できる鉄基軟磁性粒子3の最長辺と最短辺の比から計算した。これを30個の粒子に対して行い、平均値をアスペクト比とした。
(2)比の値n/N
比の値n/Nは、上記FE-SEMによる観察において、10Daμm×10Daμmの正方形の視野(第1視野)を用いて、「(1.3)第2要件について」に記載の要領で求めた。
(3)気孔の面積割合、フェライトの面積割合
気孔の面積割合は、上記FE-SEMによる観察において、10Daμm×10Daμmの正方形の視野(第2視野)を用いて、「3.圧粉磁心1の気孔35の面積割合、フェライト6の面積割合」に記載の要領で求めた。下記表2において、気孔の面積割合は、「気孔率(%)」と記載されている。
フェライトが残視野を占有する面積割合は、上記FE-SEMによる観察において、5Daμm×5Daμmの正方形の視野(第3視野)を用いて、「3.圧粉磁心1の気孔35の面積割合、フェライト6の面積割合」に記載の要領で求めた。下記表2において、フェライトが残視野を占有する面積割合は、フェライト層の「面積(%)」と記載されている。
(4)鋭角部を有する特定形状気孔
鋭角部を有する特定形状気孔の有無は、上記FE-SEMによる観察において、5Daμm×5Daμmの正方形の視野(第4視野)を用いて、「4.鋭角部を有する特定形状気孔35A」に記載の要領で判断した。
(5)比の値n2/N
比の値n2/Nは、上記FE-SEMによる観察において、10Daμm×10Daμmの正方形の視野(第5視野)を用いて、「5.比の値n2/Nに関する要件」に記載の要領で求めた。
(6)粒子間距離
粒子間距離Lは、上記FE-SEMによる観察において、10Daμm×10Daμmの正方形の視野(第6視野)を用いて、「6.粒子間距離Lに関する要件」に記載の要領で求めた。なお、表2に記載された粒子間距離Lは、いずれも平均粒子間距離を示している。
(7)アルカリ金属
上記FE-SEMによる観察において、3Daμm×3Daμmの正方形の視野(第7視野)を用いて、「7.アルカリ金属に関する要件」に記載の要領で求めた。
(8)複素透磁率
圧粉磁心の複素透磁率(単に「透磁率」ともいう)の測定は、アジレントテクノロジー製インピーダンスアナライザE-4991Aを使用し、周波数1MHz~1GHzの範囲で測定した。透磁率の値は、10MHzにおける値で比較した。
(9)抵抗率
圧粉磁心の電気抵抗率(単に「抵抗率」ともいう)について、三菱ケミカルアナリテック製ロレスターGXを用いて4端芯法にて測定した。抵抗率の変化は、印加電流1μAの条件で、印加電圧1Vと90Vにおける抵抗率から算出した。具体的には、印加電圧1Vの抵抗率を基準(100%)とし、この基準と比較した印加電圧90Vの抵抗率の変化割合を求めた。抵抗変化率は、小さい方が望ましい。
3.評価結果
評価結果を表2,3に示す。
Figure 0007222664000002
Figure 0007222664000003
実施例である実験例1~22は、上記(1.2)の欄に記載のアスペクト比に関する第1要件、上記(1.3)の欄に記載の比の値n/Nに関する第2要件をいずれも満たしている。
これに対して、比較例である実験例23~26は以下の要件を満たしていない。
実験例23では、第1要件及び第2要件を満たしてない。
実験例24では、第1要件を満たしてない。
実験例25では、第2要件を満たしてない。
実験例26では、第1要件を満たしてない。
実施例である実験例1~22は、比較例である実験例23~26と比較して、透磁率及び抵抗率が優れていた。
また、実施例である実験例1~22のうち、気孔の面積割合が、第2視野の12%以下であり、かつ、フェライトが前記残視野を占有する面積割合が、残視野の1%以上25%以下である実験例3~22は、実験例1~2と比較して、透磁率がより優れていた。
また、実施例である実験例1~22のうち、特定形状気孔が存在していない実験例6~22は、実験例1~5と比較して、透磁率及び抵抗率がバランス良く優れていた。
また、実施例である実験例1~22のうち、比の値n2/Nが、
0.1≦n2/N≦0.3
を満たす実験例9~23は、実験例1~8と比較して、抵抗率がより優れていた。
また、実施例である実験例1~22のうち、粒子間距離Lが20nm~1000nmである実験例14~22は、実験例1~13と比較して、抵抗率がより優れており、抵抗値変化率がより小さくなった。
また、実施例である実験例1~22のうち、フェライトがアルカリ金属を含有している実験例19~22は、実験例1~18と比較して、抵抗率がより優れており、抵抗値変化率がより小さくなった。
4.実施例の効果
本実施例の圧粉磁心は、透磁率が優れる。
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。
なお、本発明では、圧粉磁心の断面構造の同一場所を、第1,2,5,6の視野のうちの2以上の視野に共通して採用できる。もちろん、これらの視野毎に、互いに相違する場所を採用してもよい。
圧粉磁心の断面構造の同一場所を、第3,4の視野に共通して採用できる。もちろん、これらの視野毎に、互いに相違する場所を採用してもよい。
本発明の圧粉磁心は、モーターコア、トランス、チョークコイル、ノイズ吸収体等の用途に特に好適に使用される。
1 …圧粉磁心
3 …鉄基軟磁性粒子
4 …導線
5 …フェライト
6 …フェライト
7 …複合粒子
31 …特定粒子
35 …気孔
35A …特定形状気孔
61 …第1粒子
63 …第2粒子
Ln …粒子間距離
Pn(P1~P7)…隣接粒子

Claims (5)

  1. 複数の鉄基軟磁性粒子と、前記鉄基軟磁性粒子の表面に形成されるフェライトとを有する圧粉磁心であって、
    前記鉄基軟磁性粒子の平均粒子径をDaμmとした場合に、前記圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第1視野で観察した際に、
    前記第1視野中に欠けることなく観察できる前記鉄基軟磁性粒子のアスペクト比は、1.15以上、3.0以下であり、
    前記第1視野中に欠けることなく観察できる前記鉄基軟磁性粒子の総個数をNとし、
    前記第1視野中に欠けることなく観察できる前記鉄基軟磁性粒子であって、前記圧粉磁心における磁界の発生する方向に対して、長軸の方向が±60°以内である前記鉄基軟磁性粒子の個数をnとすると、比の値n/Nが次の関係式(1)を満たし、
    前記鉄基軟磁性粒子の平均粒子径をDaμmとした場合に、前記圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第2視野で観察した際に、気孔の面積割合は、前記第2視野の12%以下であり、
    前記圧粉磁心の断面構造を5Daμm×5Daμmの正方形の第3視野で観察した際に、前記第3視野から前記気孔を除いた部分を残視野とすると、フェライトが前記残視野を占有する面積割合は、前記残視野の1%以上25%以下であることを特徴とする圧粉磁心。

    0.65≦n/N≦1.00 …(1)
  2. 複数の鉄基軟磁性粒子と、前記鉄基軟磁性粒子の表面に形成されるフェライトとを有する圧粉磁心であって、
    前記鉄基軟磁性粒子の平均粒子径をDaμmとした場合に、前記圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第1視野で観察した際に、
    前記第1視野中に欠けることなく観察できる前記鉄基軟磁性粒子のアスペクト比は、1.15以上、3.0以下であり、
    前記第1視野中に欠けることなく観察できる前記鉄基軟磁性粒子の総個数をNとし、
    前記第1視野中に欠けることなく観察できる前記鉄基軟磁性粒子であって、前記圧粉磁心における磁界の発生する方向に対して、長軸の方向が±60°以内である前記鉄基軟磁性粒子の個数をnとすると、比の値n/Nが次の関係式(1)を満たし、
    前記圧粉磁心の断面構造を5Daμm×5Daμmの正方形の第4視野で観察した際に、角度が30度未満の鋭角部を有する特定形状気孔が存在していないことを特徴とする圧粉磁心。

    0.65≦n/N≦1.00 …(1)
  3. 前記鉄基軟磁性粒子の平均粒子径をDaμmとした場合に、前記圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第5視野で観察した際に、
    前記第5視野中に欠けることなく観察でき、かつ長軸が最大である前記鉄基軟磁性粒子を第1粒子とし、
    前記第5視野中に欠けることなく観察でき、かつ前記第1粒子の長軸の1/10以下の長軸を有する前記鉄基軟磁性粒子を第2粒子とし、
    前記鉄基軟磁性粒子の総個数をNとし、前記第2粒子の個数をn2とすると、比の値n2/Nが次の関係式(2)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧粉磁心。

    0.1≦n2/N≦0.3 …(2)
  4. 前記圧粉磁心の断面構造を10Daμm×10Daμmの正方形の第6視野で観察した際に、
    前記第6視野中に欠けることなく観察でき、かつ長軸が最大である前記鉄基軟磁性粒子を特定粒子とし、
    前記鉄基軟磁性粒子のうち、前記特定粒子の隣りの前記鉄基軟磁性粒子を隣接粒子Pn(但し、nは1以上の整数)とし、
    前記特定粒子の長軸を直径とした円の中心をC0とし、前記隣接粒子Pnの長軸を直径とした円の中心をCn(但し、nは1以上の整数)とした場合に、
    前記C0と前記Cn(但し、nは1以上の整数)を結ぶ直線が、前記特定粒子の外縁と交わる点An(但し、nは1以上の整数)と、前記隣接粒子Pnの外縁と交わる点Bn(但し、nは1以上の整数)とを求め、前記点Anと前記点Bnとの距離を、前記特定粒子と前記隣接粒子Pnの粒子間距離と定義し、
    n=1のときの前記粒子間距離が、20nm~1000nmである、又は、
    前記特定粒子と各々の前記隣接粒子Pn(但し、nは2以上の整数)との前記粒子間距離を求め、それらを平均した平均粒子間距離が、20nm~1000nmであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  5. 前記圧粉磁心に存在するフェライトは、アルカリ金属を含有していることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
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