JP2010177271A - 圧粉磁心材料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度で比抵抗の低下がなく、ロータにも適用可能な圧粉磁心材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、Fe、NiおよびCoの少なくとも一種を含み、過冷却温度領域ΔTx(ここで、結晶化開始温度をTx、ガラス転移温度をTgとしたとき、ΔTx=Tx−Tgである)が20〜60Kである金属ガラス粉末と、Al、Si、Zn、BおよびBiを含むゾルで形成された、前記金属ガラス粉末表面を被覆する酸化物ガラスからなる絶縁皮膜と、が固化成形されてなり、前記絶縁皮膜が連続体として前記金属ガラス粉末に被覆されていることを特徴とする圧粉磁心材料およびその製造方法である。
【選択図】図1A

Description

本発明は、モータのコアに適した圧粉磁心材料およびその製造方法に関する。より詳しくは、強度が向上し、かつ、比抵抗が維持された圧粉磁心材料およびそのような磁心材料を製造する方法に関する。
一般的なモータのコアに使用される磁心材料には、アモルファスの一種である金属ガラスが適しており、広く使用されている。金属ガラスは、通常、粉体で準備し、これを焼結し圧縮することで固化成形して使用される。このような形態で使用される粉末材料は、圧粉材料と称される。
従来は、圧粉材料である純鉄粉末表面にSiOやAl、MgOといった無機酸化物を被覆し、その粉末を圧縮成形して磁心材料を形成していた。例えば、従来はFe基金属ガラス粉末を固化成形したものが使用されている。また下記特許文献1では、Fe基金属ガラス粉末の表面に絶縁材料を被覆して固化成形している。
特開2001−267115号公報
一方で、モータ設計では3次元的な磁気回路を活用するような研究が近年盛んとなってきている。そこで、従来の珪素鋼板の2次元的な絶縁特性に対して、3次元的な応用の可能である圧粉磁心に対するニーズは高まってきている。しかしながら、従来の圧粉磁心は強度が極端に低いため、ロータなどの回転部分に適用することは困難であり、多くの実用例ではステータを中心に適用されてきた。ロータに適用しようとした場合には、珪素鋼板積層体を通過する磁束の方向に合わせて配置・接合するような組立構造が必要となり、製造時の組立コストがかかるなどの問題が生じるためである。また、圧粉磁心材料の強度を向上させようとする従来の試みは、強度は向上するものの同時に比抵抗すなわち被覆部分の絶縁性が低下する傾向があった。上記のような圧粉磁心材料の用途のためには、強度と共に比抵抗を最適なバランスで備える特性の材料が好適である。そのため、比抵抗を維持しつつ、強度を大きく向上させた圧粉磁心材料が求められている。
上記のような実情に鑑み、本発明は、絶縁被膜を薄く均一に設けることにより、比抵抗が低下することなく強度が向上した圧粉磁心材料、およびそのような圧粉磁心材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の圧粉磁心材料は、金属ガラス粉末と、それを被覆する絶縁被膜とが固化成形されて構成される。金属ガラス粉末は、Fe、NiおよびCoの少なくとも一種を含み、アモルファス構造を有する。本発明の圧粉磁心材料では、絶縁被膜がAl、Si、Zn、BおよびBiを含む酸化物ガラスで構成されている。また、この酸化物ガラスからなる絶縁被膜が、金属ガラス粉末を、連続体として被覆している。
本発明によれば、金属粉末ガラスからなる磁性体が、絶縁被膜により薄く均一に被覆されるため、比抵抗を維持しつつも強度の向上した圧粉磁心材料を提供することができる。
本発明の圧粉磁心材料の適用により、3次元的に磁気回路を構成するモータにおいて強度の高い粉体成形した磁心を提供できる。それにより、珪素鋼板積層体を組み立てる構造よりも高い生産性を有するとともに、ヒステリシス損失の少ない金属ガラスを成形した磁心とすることでモータの鉄損を低減することが可能となる。この効果は特にモータの低回転側で効果的であり、車両とすると市街地走行などにおける低中速領域で効率(燃費)を向上する効果がある。
従来技術による圧粉磁心材料の断面のSEM観察像である。 実施例3で製造した圧粉磁心材料の断面のSEM観察像である。 比較例4で製造した圧粉磁心材料の断面のSEM観察像である。 実施例3で製造した圧粉磁心材料についてRiの求め方を説明するための図である。 比較例4で製造した圧粉磁心材料についてRiの求め方を説明するための図である。 実施例3および比較例4の試料中、図2Aおよび図2Bに示す観察像を得た個所を示す図である。 実施例で使用したSPS装置の概略図である。 実施例で用いた金属ガラスの熱分析データである。
従来技術による圧粉磁心の場合、金属同士が直接接合するようなことはなく、絶縁物を介しての結合となるため、皮膜−金属間ならびに皮膜−皮膜間の強固な結合が必要である。しかし、皮膜材料自体の強度が低かったり、空孔などの欠陥により、曲げ強度は100MPa程度と、珪素鋼板などと比較すると1/5以下程度の強度しかなかった。圧粉磁心の強度向上には、皮膜を薄くすることが有効と考えられる。一方で、薄くしすぎれば絶縁性が十分ではなくなるため、皮膜の厚さの制御が重要となる。しかし、絶縁体の微粉を機械的に投射したり、あるいは溶媒に分散して塗布したりといった従来の絶縁被覆方法では、皮膜が厚くなりすぎたり、あるいは薄すぎて被覆が切れるなどの問題があった。
例えば、磁性体の粉末を絶縁性の固体の粉末で被覆する手法としては、機械的に絶縁体の微粉を投射する、ブレードで擦りつける等の方法がある。この方法は、絶縁性が安定するという利点があるものの、絶縁性被膜の厚さの制御が難しく、適用できる材料も限られている。一方、絶縁体を液体の形態で被覆するには、絶縁体の微粉を溶媒に分散させ、分散液を吹き付ける等の方法がある。しかし、この方法でも絶縁被膜の厚さの制御は難しく、また、液体を含むために搬送に手間がかかる、乾燥すると絶縁体が脱落する等の問題点がある。
図1Aに、従来技術による圧粉磁心材料の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)による観察像の写真を示す。図1A中、白い粒は磁性体であり、その粒を隔てる黒い部分が絶縁体である。図1Aからわかるように、絶縁体部分の厚さは均一ではなく、絶縁体自身が粒を形成して固まる個所もある。このように絶縁体が厚く粒をなすと、磁心材料全体の強度低下につながり、磁性体の粒同士は強く絶縁されるため磁気的損失にもつながる。
上記のように、固体や液体の形態で製造する従来の技術では、圧粉磁心材料中に薄く均一な絶縁被膜を形成することは困難であった。本発明者らは、実験の結果、磁性体として金属ガラスおよび絶縁被膜として酸化物ガラスを使用し、かつ、この酸化物ガラスの前駆体ゾルを使用することが薄く均一な皮膜形成に非常に有効であることを見出した。この際、詳細なメカニズムは明らかではないが、酸化物ガラスの前駆体ゾルはAl、Si、Zn、BおよびBiを含むものであることが薄く均一な皮膜形成に特に好適である。このようなゾルを磁性体粉末に被覆し固化成形することにより、絶縁被膜は、磁心材料中で薄く均一になる。
本発明の圧粉磁心材料の断面をSEMによって観察した写真を図1Bに、従来技術による磁心材料の同様の写真を比較のために図1Cに示す。図1Bは、後述する実施例3で製造した圧粉磁心材料の断面であり、図1Cは、比較例4で製造した圧粉磁心材料の断面である。図1B中の本発明の磁心材料中には、途切れや塊が観察されず、絶縁被膜が薄く均一に形成されていることが分かる。これに対して図1Cでは、磁性体の粒の間に、絶縁体が厚みを大きく変えて存在し、絶縁体の層の中に粒状の塊や空隙が生じ、絶縁被膜がその部分で途切れていることが観察される。焼結時の絶縁被膜の流動性が不十分な場合、絶縁被膜は部分的に分断され、空隙の発生あるいは分離した絶縁被膜間に界面を形成する。流動性が高いことは、粒体と絶縁皮膜の密着あるいは焼結体の内部応力を緩和する効果を発揮するので、絶縁被膜の流動特性としては界面をもたないものが望ましい。
図1Bから分かるように、本発明の圧粉磁心材料では、絶縁被膜が、連続体として磁性体の金属ガラス粉末を被覆している。絶縁被膜が連続体であるとは、図1Cの従来技術の磁心材料に見られるような、絶縁体の塊や空隙によって絶縁被膜が途切れる部分、すなわち絶縁被膜中に界面が存在しないことを意味する。しかしながら、本発明は、絶縁被膜が全く界面を持たない場合に限られず、絶縁被膜が概ね界面を持たない場合も包含する。
本発明に含まれる概ね界面を持たない場合とは、次のような方法で規定される。圧粉磁心材料の試料を切断し、研磨した表面をSEMにて2000〜10000倍で観察する。倍率は固化成形する粉体の粒径に応じて、数個の粒子が含まれる倍率を適宜選定すればよい。例えば、本発明の実施例で製造した磁心材料の場合は10000倍にて観察した。この観察像に基づき、以下の方法にて空隙の面積率を定義する。まず測定対象試料のSEM像を写真などの画像とした後、その画像を20×20のメッシュで区切る。そのうち絶縁被膜にかかるメッシュの個数をNCとし、またそのうち空隙が存在するあるいは連続しない絶縁皮膜同士で形成される界面を含むメッシュの個数をNiとする。空隙の面積率、すなわち界面の発生率Riは、下式で表せる。
Ri=Ni/NC
測定箇所は、特に制限はなく適宜選定すればよい。絶縁被膜が連続体であるかどうかを直接的に判断するには、測定個所を強度が要求される応力集中部位や、焼結時に低密度となりやすい、焼結品表層近傍や形状が複雑な部位とすればよい。また、Riの求め方としては、切線法や画像解析によっておこなっても構わない。一例として、実施例3および比較例4で製造した圧粉磁心材料のRiを求めるメッシュの様子を、写真とともに図2Aおよび図2Bに示す。
本発明において、絶縁被膜が概ね界面を持たないとは、上記のRiが20%以下である場合をいう。すなわち、本発明の圧粉磁心材料は、Riが0〜20%、より好ましくは0〜2%である。
上記の方法で、実施例3および比較例4で製造した圧粉磁心材料のRiを求めるメッシュの様子を、写真とともに図2Aおよび図2Bに示す。
本発明では、金属ガラス粉末に、後述するように流動状の酸化物ガラスゾルを被覆することで薄く連続的な酸化物ガラス層を成膜できる。これを固化成形したことにより、高強度でかつ比抵抗の低下のない圧粉磁心材料を提供することができる。これにより本発明の圧粉磁心は、ステータのみならず、ロータにも適用可能となり、低損失なモータを提供することが可能となる。このような用途のためには、圧粉磁心材料の抗折強度が250〜1000MPaであることが好ましく、より好ましくは400〜1000MPaであることが好ましい。抗折強度がかような範囲内の値であれば、圧粉磁心材料として十分な強度・靭性が得られ、特に400MPa以上であればロータへの適用が可能になるなどモータ設計の自由度が大きく向上する。抗折強度は、例えば後述する実施例で使用した方法で測定できる。圧粉磁心材料は同時に、比抵抗が100μΩm以上であることが好ましく、より好ましくは200〜1000μΩmを示すことが好ましい。比抵抗がかような範囲内の値であれば、損失の低い圧粉磁心材料が得られ、特に200〜1000μΩmであればさらに焼結性に優れ、かつ磁気特性の安定した圧粉磁心材料とすることができる。本発明によれば、このような強度と比抵抗のバランスのとれた物性の圧粉磁心材料が実現できる。
絶縁皮膜の厚さは、好ましくは50〜200nmであり、より好ましくは100〜200nmである。絶縁皮膜の厚さがかような範囲内の値であれば、磁性体の粒子同士を効果的にある程度絶縁し、かつ材料全体としては通電できる程度に導電性を有するようにし得る。絶縁被膜の厚さは、オージェ電子分光分析(AES)とスパッタエッチングとを併用した深さ方向分析により測定された値を採用するものとする。
(金属ガラス)
本発明の圧粉磁心材料は、磁性体として金属ガラス粉末を含む。金属ガラスの具体的な組成について特に制限はなく、磁性体に適した従来公知の知見が適宜参照されうる。
一例を挙げれば、強磁性を有する鉄(Fe)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)の少なくとも一種を金属ガラスの基材とできる。さらに、金属ガラスは、Fe、Ni、Co以外の成分として、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、リン(P)、炭素(C)、ホウ素(B)、モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)等を任意に含んでもよい。この場合の金属ガラス粉末におけるFe、NiおよびCoの含有率(合計含有率)は、好ましくは70原子%〜100原子%である。かかる範囲にある場合、本発明の圧粉磁心材料は高い飽和磁束密度を得ることができる。
金属ガラス粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは1〜75μmである。平均粒子径がかような範囲内の値であれば、粉末製造時の冷却速度が高く維持され、結晶化による磁気特性(保磁力)の低下が抑制されうる。なお、本明細書における平均粒子径の値としては、粒度分布分析装置LA−920型(株式会社堀場製作所製)によるレーザー回折法にて測定された値を採用するものとする。
本発明に使用する、アモルファス構造を有する金属ガラスは、例えば、ΔTx=Tx−Tg(ただし、Txは結晶化開始温度を示し、Tgはガラス転移温度を示す)で定義される過冷却領域の温度間隔が20〜60Kであるものを用いることができる。この温度間隔は、好ましくは30〜50Kであり、より好ましくは40〜50Kである。ΔTxを20K以上とすることで、金属ガラスがアモルファス状態を安定的に維持しやすくなり、成形加工のために加熱する時間が十分に確保でき、高密度な成形体を得ることができる。さらに、アモルファス状態を維持していることから高い磁気特性を保持することが可能となる。上限値については、汎用性や金属ガラスの製造上の限界を考慮すると、60K以下が適当である。
TxおよびTgを測定するには特に制限はなく、TG(熱重量測定)、DSC(示差走査熱量測定)、DTA(示差熱分析)、TG−DTA等従来公知の測定方法を用いることができる。典型的には、TG−DTAを使用できる。TG−DTAを用いる場合には、例えば、測定装置としては、マックサイエンス社製TG−DTA2000などを使用でき、昇温条件は5〜20℃/分、窒素雰囲気下、試料重量35g程度を使用して測定できる。通常、金属ガラスのTgはDTA曲線の変曲点として現れ、Txは発熱急増開始点として現れる。
(酸化物ガラス)
本発明の圧粉磁心材料は、絶縁被膜を形成する材料として、酸化物ガラスを用いる。本発明においては、酸化物ガラスはAl、Si、Zn、BおよびBiを含む。また、これらの元素を含むゾルを金属ガラス粉末に塗布することによって形成される。これらの元素に加えて、元素周期律表の第1族および第2族から選択された少なくとも1種の元素をさらに含むことが好ましい。より詳細には、Naおよび/またはMgを含むことが好ましい。このような組成とすることにより、Tgの低い酸化物ガラスが得られる。すると、金属ガラス粉末を固化成形するための焼結過程、特に降温過程において、金属ガラスの変形により生じた歪あるいは金属ガラス粉末間に残存する欠陥を低減させるように、酸化物ガラスが変形できる。そのため、欠陥の少ない高強度な圧粉磁心材料を実現することが可能となる。
ゾルの好ましい組成比としては、酸化物換算で、Al酸化物2〜5質量%、Si酸化物3〜6質量%、Zn酸化物6〜8質量%、B酸化物20〜30質量%およびBi酸化物45〜65質量%である。Naおよび/またはMgを含む場合には、Na10〜20質量%および/またはMg10〜20質量%であることが好ましい。これにより、特に融点の低い優れた酸化物ガラスのゾル液として、金属ガラス表面を薄く連続的に被覆することが可能となるので、磁気特性と強度に優れた圧粉磁心材料を提供することが可能となる。
詳しくは後述するが、ゾル中には、酸化物ガラスの骨格の基礎となる網目構造が既に存在し、上記の金属をその中に取り込んでいると考えられる。したがって、上記のゾル中の金属の組成比はそのまま酸化物ガラス中の金属の組成比に反映されると考えてよい。逆に、最終的に得られた酸化物ガラスの金属成分を分析することによっても、ゾル中の金属の組成比を知ることができる。酸化物ガラスの組成を知るには、固化した酸化物ガラスを分析すればよく、ゾルを分析するよりも簡易で作業がしやすく好ましい。また、酸化物ガラス中で所望の網目構造が形成されたかどうかは、上記のTg測定の結果から知ることができる。網目構造が形成されていない場合は、低いTgとはならないためである。
酸化物ガラス中の金属成分を分析するには、エネルギー分散型X線分析法、試料を溶液としたICP発光分析法などを使用することができる。測定装置としては、日本データム社製EX−23000BU、日本ジャーレルアッシュ社製IRIS/AP HR Advantage等が使用できる。
上記のような組成の多元素系酸化物ガラスとすることにより、Tgの低い酸化物ガラスで、磁性体としての金属ガラスを被覆する。材料粉末を固化成形して磁心材料とするには、通電加熱により焼結しプレスする方法が通常用いられるが、一般的に金属ガラスは、高温にすると性質が劣化することが知られている。したがって、酸化物ガラスが、金属ガラスがその性質を安定に保つことのできる温度で既にある程度の流動性を示し、金属ガラスの粒子を覆って絶縁被膜を形成できることが望ましい。そのためには、酸化物ガラスのTgはより低い方が好ましく、金属ガラスのTgよりも低いことがより好ましい。このように、Tgの低い酸化物ガラスを用いると、プレスされる時には酸化物ガラスが金属ガラスより早く柔らかくなり流動性を示す。また、金属ガラスが固まる時にも酸化物ガラスはまだ柔らかいままの状態になる。そのため、プレスにより生じる内部応力を金属ガラス粒子の界面の酸化物ガラス部分が吸収することができ、焼結体が脆くなるのを防ぐことができる。すなわち、プレス時においても酸化物ガラスが自由に変形できるため、絶縁皮膜の亀裂の発生が防止され、かつ気孔が少ない絶縁被膜を形成でき、比抵抗が高く欠陥の少ない高強度な磁心材料が得られる。
酸化物ガラスのTgは、金属ガラスのTgよりも10〜50℃低いことが好ましく、10〜40℃がより好ましい。Tgの違いが10℃以上あれば上述の内部応力の吸収に十分効果的であり、50℃を超えると逆に酸化物ガラスが軟らかくなりすぎて製造上の取り扱いが困難になる。
さらに、製造方法について後述するように、本発明では酸化物ガラスの前駆体組成物をゾルとして準備することができる。ゾルを用いることにより、固体粉末や分散液を用いる従来技術によるよりも、はるかに金属ガラスの粒子をむらなくかつ薄く被覆できる。また、被覆された状態の金属ガラスの取り扱いも容易である。
(電動機)
本発明は、上述した圧粉磁心材料を適用した電動機をも提供する。電動機としては、例えば、モータ、ソレノイドなどが挙げられる。本発明により提供される圧粉磁心材料は、例えばこれらの電動機におけるロータ、ステータなどに適用されうる。本発明により提供される圧粉磁心材料は、小型電動機へ適用可能なレベルの高い強度を有する。このため、圧粉磁心材料をモータステータおよびロータのいずれかもしくは両方に使用することで、3次元的な磁気回路を有する電動機における損失を低減できる。同時に、ロータの高回転化によりモータの小型化も実現することが可能となる。
(車両)
また、本発明は、上述した電動機を搭載した車両を提供する。本発明の電動機は、電気自動車やハイブリッド車両などの駆動モータもしくは発電機として使用できる。これにより、電動機が小型であるため搭載性が高く、さらに高効率化により航続距離を伸ばすことが可能となる。
(製造方法)
本発明の圧粉磁心材料を製造するには、まず、上記の金属ガラス粉末と、上記の多元素系酸化物ガラスの組成物のゾルとを混合することにより、ゾルを金属ガラス粉末に塗布する。次いで、ゾルが塗布された金属ガラス粉末を乾燥して、多元素系酸化物ガラス組成物を被覆した金属ガラス粉末を得る。最後に、多元素系酸化物ガラス組成物を被覆した金属ガラス粉末を固化成形する工程を経る。酸化物ガラスの前駆体としてゾル液を用いたことにより、従来の、絶縁粉末を金属ガラス粉末に機械的に付着させる方法や粉末を溶媒に分散した液を塗布する方法に比べて、極めて薄く連続的に被覆することが可能となる。そのため、磁気特性と強度に優れた圧粉磁心材料を提供することが可能となる。
金属ガラスを製造するには、特に制限はなく、従来公知の方法が適宜参照される。具体的には、原料である金属を所定量秤量し、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で、誘導加熱やアーク加熱、プラズマアーク加熱などの方法により溶融金属とする。これを単ロール法やアトマイズ法に代表される液体急冷法等によって金属ガラスに製造することができる。液体急冷法は、溶融合金を、結晶核成長が起こるよりも速い速度で冷却することにより、アモルファス合金を作製する手法である。具体的には、例えば、ローラアトマイズ法、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法等の方法が知られている。金属ガラスの好ましい組成については、上述したとおりである。
次に、酸化物ガラスの前駆体ゾルを製造する方法を説明する。しかしながら、以下は一例であって、酸化物ガラスの前駆体ゾルは他の方法によって製造されてもよい。酸化物ガラスの組成については、上記したとおりである。
前駆体ゾルを製造するためには、酸化物ガラスに含まれるAl、Si、Zn、BおよびBiの金属のアルコキシドを原料に用いることが好ましい。金属アルコキシドを使用した前駆体は、比較的低い温度で合成ができ、結果としてTgの低い酸化物ガラスとなりうる。ここで、合成とは、焼結により酸化物ガラスとなる前の段階で、金属原子と酸素原子が結合した、ガラスを構成する特有の網目構造を分散液の少なくとも一部に形成する工程を言う。詳細は明らかではないが、後述する溶媒中での攪拌や塩基または酸の添加、還流等により、少しずつ網目構造が形成されてゆくと考えられる。
金属アルコキシドに含まれるアルコキシ基としては、特に制限はないが、例えば、炭素原子数1〜5の直鎖状または分岐状のアルコキシ基を有することが好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロポキシ基、n−へキシルオキシ基、1,3−ジメチルブチルオキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1−メチルヘキシルオキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、3−メチルヘキシルオキシ基、4−メチルヘキシルオキシ基、5−メチルヘキシルオキシ基、1−エチルペンチルオキシ基、1−(n−プロピル)ブチルオキシ基、1,1−ジメチルペンチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、1,1−ジエチルプロピルオキシ基、1,3,3−トリメチルブチルオキシ基、1−エチル−2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−オクチルオキシ基などが挙げられる。
溶媒は、金属アルコキシド溶液を調製する際に使用し、金属アルコキシドをある程度溶解しうるものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコール−α−モノメチルエーテルなどのアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジメトキシプロパン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類が挙げられる。このうち、金属アルコキシドの溶解性および溶媒の沸点を考慮すると、イソプロパノールまたはプロピレングリコール−α−モノメチルエーテルを用いることが好ましい。
金属アルコキシドは、市販品を使用してもよいし、入手しにくいものについては、合成して用いてもよい。金属アルコキシドは、酸と目的とする金属の塩、例えば、金属酢酸塩を塩基性化合物、例えばアミンと反応させることで容易に合成できる。
金属アルコキシドは、溶媒との質量比が、金属アルコキシド:溶媒が1:3〜1:50、好ましくは1:5〜1:20となるように、溶媒に加える。もっとも好ましくは、1:10である。溶媒中の金属アルコキシドは、室温大気中で、3時間攪拌し、溶解させる。この際、金属ごとに別々に溶液を調製し、それらを最後に混合することが好ましい。
次いで、混合液は、塩基を加えてpH7〜9、好ましくはpH8の弱アルカリ性に調整する。塩基としては特に制限はないが、アンモニア水、水酸化アンモニウムなどを使用できる。この溶液を、溶媒の沸点近傍で1〜3時間加温還流する。その後、常温に戻し、酸を投入してpH2.5〜5.5、好ましくはpH3〜4に調整する。酸としては、特に制限はないが、硝酸、有機酸、炭酸ナトリウム等が使用でき、好ましくは硝酸、酢酸および無水酢酸が使用できる。酸を加えた後、再度溶媒の沸点近傍で1〜3時間再度加温還流する。その後、還流を停止し、液が透明となった後、蒸発分の廃液が認められなくなるまで加温濃縮する。その濃縮液に、溶媒を再度加えて希釈し、金属ガラス粒子の被覆用ゾルとして用いる。
本発明の圧粉磁心材料は、上述したように、磁性体の金属ガラス粒子を絶縁体の酸化物ガラスが薄く均一に連続体となって被覆して、高強度のものとなっている。このように酸化物ガラスが均一な皮膜を形成できるのは、以下のような理由によると考えられる。すなわち、上記のような工程を通して、酸化物ガラスの主骨格の基となる網目構造が、被覆用の前駆体ゾル中に少なくとも部分的に形成していると推測される。したがって、金属ガラス粒子をこのゾルで被覆すると、いわば酸化物ガラスの網目構造は金属ガラスに絡むようにこれを覆い、包むことができると考えられる。この点は、従来技術による、絶縁体の微粉末の分散液を金属ガラス粒子に噴霧したり、金属ガラス粒子と混合したりする方法で得られた被覆物と比較するとその効果が明らかである。このような従来の方法では、金属ガラス表面には被覆されない部分があったり、溶媒を乾燥すると絶縁体粉末が脱落したりしていた。しかし、本発明の方法により酸化物ガラス前駆体ゾルで金属粒子を被覆すると、このような問題は生じない。
金属ガラス粉末に酸化物ガラス前駆体ゾルを被覆する方法としては、特に制限はなく、例えば単に金属ガラス粉末とゾルを適宜混合すれば十分である。金属ガラス粉末をより薄く被覆するためには、吸引漏斗に金属ガラス粉末を敷き詰め、ゾルを投入し、吸引して余分な液を除去してもよい。その後、取り扱いのしやすさ等の観点から溶媒を除去するために、ゾルで被覆した金属ガラス粉末を焼成して乾燥してもよい。乾燥のためには、120〜500℃で30分〜8時間程度焼成することができる。
最後に、上記のようにして得たゾルで被覆した金属ガラス粉末を固化成形する。固化形成の具体的な手段について特に制限はなく、従来公知の方法が適宜参照されうる。典型的な例として、スパークプラズマ焼結(SPS)法が挙げられる。この方法では、金属ガラス粉末を投入した焼結型をシリンダで加圧しつつ、直流パルス電源により焼結型にパルス電流を印加する。このように通電焼結することで、金属ガラス粉末が加熱・固化成形される。
図3に、SPS装置の一例を示す。この装置は焼結型2dを本体2aに取り付けられたシリンダ2cで加圧している。その状態で直流パルス電源2eから供給されるパルス電流で焼結型2dに通電をして、その電流で加熱し、固化成形を行う装置である。焼結条件は主にプレスの圧力と、供給する電力で制御される。焼結条件は主に焼結時間、加圧圧力および焼結温度により規定される。焼結温度は焼結型2dに設けられた熱電対2fで温度を検出し電流を制御することで温度制御を行っている。また、シリンダ2cにはレコーダー(圧力計)2bが取り付けられている。この際、焼結条件の一例を挙げると、焼結時間は、1〜5分間程度であり、好ましくは3〜5分間である。また、加圧圧力は、300〜600MPa程度であり、好ましくは400〜600MPaである。さらに、焼結温度は、金属ガラスのガラス転移温度(Tg)近傍であることが必要であり、通常は(Tg−40)〜Tg℃程度が好適である。ただし、この焼結温度は焼結型のダイ部分での測定値であり、実際の焼結品内部の実温度とは20〜30℃程度の温度差が生じていることに留意すべきである。焼結温度は、焼結型の温度検出手段(例えば、熱電対など)により検出された温度に基づいて、印加される電力を調整することにより、制御されうる。 酸化物ガラス前駆体ゾルで被覆した金属ガラス粉末を固化成形して得られる圧粉磁心材料のサイズは特に制限されない。サイズは、固化成形に用いる手段や得られる磁心材料の用途などに応じて適宜決定されうる。通常磁心に用いる場合には、直径数cmから数十cmまでの様々な円筒形に成形される。このように大きさが変更されても、本発明の方法で製造された圧粉磁心材料は、絶縁被膜が連続体として金属ガラス粒子を被覆する基本的な構造が保たれる。
(金属ガラス粉末製作)
まず始めに金属ガラス粉末を以下の方法で製造した。Fe、Ga、B、Si、Fe−C合金およびFe−P合金を、合金の組成がFe77Ga9.5Si2.5となるように適宜秤量した。その後、秤量した各金属を溶融型に投入し、高周波溶解炉を用いてArガス中で溶解を行い、組成がFe77Ga9.5Si2.5であるインゴットを製作した。このインゴットをAr雰囲気中で溶解して、Arガスで噴霧してガスアトマイズを行った。アトマイズされた粉末はふるいを用いて38μm以下に分級した。この状態で粉末は急冷された金属ガラスとなっている。
製作した金属ガラス粉末の平均粒径は約20μmであった。図4は製作した金属ガラス粉末について、昇温速度40℃/分で行ったTG−DTAデータである。測定装置はマックサイエンス社製TG−DTA2000を使用した。このデータから、得られた金属ガラス粉末は、ガラス転移点Tg=477℃、結晶化開始温度Tx=528℃であることが分かった。TgとTxとの差である過冷却温度領域ΔTxについては、ΔTx=51℃という過冷却温度領域の広い安定的なアモルファス構造を有する粉末が製作できた。
(酸化物ガラスゾル製作)
酸化物ガラスゾルを構成する、B、Al、Si、Zn、BiおよびMgをそれぞれ含む以下の原料を準備した。
B、Al、Siに関しては、それぞれ、ホウ酸トリイソプロピル(ナカライテスク社製)、アルミニウムトリs−ブトキシド(ナカライテスク社製、純度95%)、オルトケイ酸テトラエチル(ナカライテスク社製、純度95%)を前駆体アルコキシドとしてそのまま用いた。Zn、BiおよびMgについては、以下のとおりの方法で合成した。
[Zn]
スクリュー瓶中、酢酸亜鉛二水和物(ナカライテスク社製、純度99%)を2.74倍の重量のイソプロパノール(純度99.5%)に懸濁させ、0.48倍の重量のジエタノールアミン(純度99%)を加え、室温、空気中で3時間攪拌させた。ジエタノールアミンは、無機物前駆体試薬1モルに対し1モル、イソプロパノールは無機物前駆体試薬1モルに対し40モルとした。
[Bi]
ビーカー中、2−エチルヘキサン酸ビスマス(III)2−エチルヘキサン酸溶液(和光純薬社製、Bi25%)を0.72倍の重量のイソプロパノールに懸濁させ、0.13倍の重量のジエタノールアミンを加え、室温、空気中で3時間攪拌させた。ジエタノールアミンは、無機物前駆体試薬1モルに対し1モル、イソプロパノールは無機物前駆体試薬1モルに対し40モルとした。
[Mg]
スクリュー瓶中、酢酸マグネシウムを5.25倍の重量のイソプロパノールに懸濁させ、0.92倍の重量のジエタノールアミンを加え、室温、空気中で3時間攪拌させた。Znと同様、ジエタノールアミンは、無機物前駆体試薬1モルに対し1モル、イソプロパノールは無機物前駆体試薬1モルに対し40モルとした。
上記の各元素を含む原料を用いて、その後、混合ゾル溶液を以下の手順で調製した。市販のアルコキシドをそのまま用いたB、AlおよびSiについては、スクリュー瓶に、前駆体アルコキシド及び溶媒のイソプロパノールを混合、室温、空気中で3時間攪拌した。各前駆体アルコキシドは、酸化物ガラスが後掲の表1に記載した組成となるように混合量を調整した。一方、上記のように調製したZn、Bi、Mgアルコキシドの溶液には、3重量%の水を加えたイソプロパノールを添加、室温、空気中で1時間攪拌した。各前駆体アルコキシドは、酸化物ガラスが後掲の表1に記載した組成となるように混合量を調整した。その後、これらの溶液を混合した後、以下のように加水分解し、ゾル液を得た。すなわち、70℃にて攪拌しながら、混合液にアンモニア水を滴下して加え、pH8の弱アルカリに調整した。この液を70℃にて加温還流を1時間程行った。その後、即座に60%硝酸を滴下して加え、pH5に調整し、再度加温還流2.5時間を実施した。その後、還流を停止し、液が透明となった後、蒸発分の廃液が認められなくなるまで加温濃縮した。濃縮液にイソプロパノール100mLを加えて希釈し、酸化物ガラス前駆体ゾル液を得た。
得られたゾル液10gと、金属ガラス粉末20gと混ぜることにより金属ガラス粉末に塗布し、その後250℃×30分の焼成を行なって溶媒を除去した。
(SPS焼結)
上記のように被覆した金属ガラス粉末を固化成形するために、図3に示すスパークプラズマ焼結装置を用いて焼結を行った。超硬製の焼結型を使用し、得られた焼結体は10mm×10mmであった。焼結体の厚さは投入する粉末の量で決まるが、本実施例では3mm厚となるように粉末の量を調整した。焼結圧力は500MPa、焼結温度は金型温度440℃、保持時間は3分とした。
(実施例2〜4)
実施例2〜4では、実施例1と同様の前駆体アルコキシドを使用して、酸化物ガラスが後掲の表1に示すような組成となるように各前駆体アルコキシドを混合した以外は、実施例1と同様にして圧粉磁心材料を得た。
(比較例1および2)
比較例1および2では、実施例1と同様の前駆体アルコキシドを使用して、酸化物ガラスが後掲の表1に示すような組成となるように各前駆体アルコキシドを混合した以外は、実施例1と同様にして圧粉磁心材料を得た。表1に示すように、比較例1の酸化物ガラスはBを含んでおらず、比較例2の酸化物ガラスはBiを含んでいない。
(比較例3)
比較のため、酸化物ガラス前駆体ゾルの代わりに、旭ガラス社製ガラスフリットBNL115BB(カタログのガラス転移点355℃)を用いた。このガラスフリットを粒子投射機(奈良機械社製ハイブリダイゼーションシステム)で金属ガラス粉末に機械的に被覆させる乾式コートを行なった。金属ガラス粉末および固化成形工程は、実施例1と同様とした。
(比較例4)
比較のため、酸化物ガラス前駆体ゾルの代わりに、旭ガラス社製ガラスフリットBNL115BB(カタログのガラス転移点355℃)を用いた。このガラスフリットを回転ブレード(ホソカワミクロン社製AMS−MINI)で金属ガラス粉末に機械的に被覆させる乾式コートを行なった。金属ガラス粉末および固化成形工程は、実施例1と同様とした。
(比較例5)
比較のため、酸化物ガラス前駆体ゾルの代わりに、旭ガラス社製ガラスフリットBNL115BB(カタログのガラス転移点355℃)を用いた。このガラスフリット2gを溶媒蒸留水5mLに懸濁させ、スラリーとして金属ガラス粉末に塗布した。この金属ガラス粉末を、120℃×30分の焼成を行って溶媒を除去して被覆粉末を得た。金属ガラス粉末および固化成形工程は、実施例1と同様とした。
(ガラス転移点の測定)
酸化物ガラスのガラス転移点は、マックサイエンス社製TG−DTA2000を使用して測定した。昇温条件は20℃/min、窒素雰囲気下で測定した。作製した酸化物ガラスの転移点を表1に示す。表1から明らかな通り、本発明の実施例1〜4は、いずれも金属ガラスのガラス転移点477℃よりも低いものが得られた。特にアルミニウム酸化物として2〜5重量%、シリコン酸化物として3〜6重量%、亜鉛酸化物として6〜8重量%、ホウ素酸化物として20〜30重量%、ビスマス酸化物として45〜65重量%の範囲にある実施例3及び4では特に低いガラス転移点を示すことがわかる。
(酸化物ガラス組成)
各実施例および比較例で製造した酸化物ガラスの組成を測定した。まず、FE−SEMにより試料を200倍で観察し、視野を選定した後、日本電子データム社製EX−23000BUを使用して表面のEDS分析を行った。結果を下記表1に示す。
(焼結組織)
各実施例および比較例の焼結後に試料を切断し、SEMにて10000倍で組織を観察した。その結果、実施例においては、いずれも絶縁被膜が均一で連続体として金属ガラス粉末を被覆している様子が観察された。特に実施例3の結果を図1Bに示す。本発明の実施例3では酸化物ガラスを液状として塗布したことにより、極めて薄く、連続的な被膜が形成されていることがわかる。実施例3では、上記した界面発生率Riは1.5%であった。これに対して比較例4では、酸化物ガラス粉末を用いているために、基材である金属ガラスの表面を均等に被覆することは困難であった。比較例4での界面発生率Riは81.3%であった。酸化物ガラスの付着量が多すぎれば図1Cのように皮膜が厚くなった。逆に薄くしようとすると部分的に酸化物ガラス粒の密度が少ない部位ができ、図1Cに示すように絶縁皮膜は分断されてしまった。他の比較例についても同様であった。酸化物ガラスを十分高い温度として応力を付与すれば、ある程度の流動は可能となるが、金属ガラスへの被覆においては金属ガラスの結晶化や脆化が発生する恐れがあり、実施は困難である。
Riを求める際は、実施例3および比較例4で製造した圧粉磁心材料の10mm×10mm×厚み3mmの試験片について、図2Cに示すように、コーナーから各3mm位置の板厚センターを観察した。上述のように、実施例3および比較例4で製造した圧粉磁心材料のRiを求めるメッシュの様子は、写真とともに図2Aおよび図2Bに示した。実施例3および比較例4と同様にして、その他の各実施例および比較例でRiを求めた結果を表1に示す。
この結果によれば、実施例1〜4の界面発生率は比較例に比べて極めて小さく、本発明の圧粉磁心材料中では、絶縁性の皮膜が連続体として薄く均一に形成されていることが分かる。
(抗折試験)
各実施例および比較例で得られた磁心材料は、以下のように強度の評価を行った。得られた焼結体はそれぞれ、ワイヤカット放電加工機により切断し、2×3×10mmの試験片を3本得た。この試験片について、支持スパン6mmで3点曲げ試験を行った。ヘッドの速度は0.1mm/分とした。
試験の結果を表1に併せて示す。実施例の結果を比較例の従来の圧粉磁心材料の強度と比較すると、曲げ強度は1.4〜7.0倍程度向上していることが分かる(比較例と実施例とで、もっとも差の小さい測定値同士の倍率ともっとも差の大きい測定値同士の倍率を計算した幅を示した)。このように、本発明の酸化物ガラス皮膜を有する磁心材料が高強度であることが明らかとなった。
(比抵抗測定)
各実施例および比較例で得られた磁心材料の比抵抗測定を行った。その結果を下記表1に示す。
上記の抗折強度と比抵抗の測定結果を参照すると、酸化物ガラスの組成が本発明の組成とは異なる比較例1および2は、実施例に比較して抗折強度が劣るのみならず、比抵抗も一桁を示し低下している。また、酸化物ガラス材料を付着させる際に従来の方法を使用した比較例3〜5では、比抵抗が実施例よりも大きい値を示しているが、抗折強度は大きく劣っている。これら比較例の結果と比較すると、本発明の圧粉磁心材料は比抵抗が低下することなく、抗折強度の大幅な向上が実現できていることが分かる。
2a 本体、
2b レコーダー(圧力計)、
2c シリンダ、
2d 焼結型、
2e 直流パルス電源、
2f 熱電対。

Claims (12)

  1. Fe、NiおよびCoの少なくとも一種を含み、アモルファス構造を有する金属ガラス粉末と、
    Al、Si、Zn、BおよびBiを含む酸化物ガラスからなる絶縁皮膜とを有し、
    前記絶縁被膜が連続体として前記金属ガラス粉末を被覆することを特徴とする圧粉磁心材料。
  2. 前記酸化物ガラスが、元素周期律表の第1族および第2族から選択された少なくとも1種の元素をさらに含む請求項1に記載の圧粉磁心材料。
  3. 前記第1族および第2族から選択された少なくとも1種の元素が、Naおよび/またはMgである請求項2に記載の圧粉磁心材料。
  4. 前記酸化物ガラスが、酸化物換算で、Al酸化物2〜5質量%、Si酸化物3〜6質量%、Zn酸化物6〜8質量%、B酸化物20〜30質量%およびBi酸化物45〜65質量%を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧粉磁心材料。
  5. 前記酸化物ガラスがNa10〜20質量%および/またはMg10〜20質量%をさらに含む請求項3または4に記載の圧粉磁心材料。
  6. Al、Si、Zn、BおよびBiを含む多元素系酸化物ガラス組成物のゾルと、
    Fe、NiおよびCoの少なくとも一種を含み、アモルファス構造を有する金属ガラス粉末とを混合することにより、ゾルを金属ガラス粉末に塗布する工程と、
    前記ゾルが塗布された金属ガラス粉末を乾燥して、多元素系酸化物ガラス組成物により被覆されてなる金属ガラス粉末を得る工程と、
    前記金属ガラス粉末を固化成形する工程と、
    を含む圧粉磁心材料の製造方法。
  7. 前記ゾルが、元素周期律表の第1族および第2族から選択された少なくとも1種の元素をさらに含む請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記第1族および第2族から選択された少なくとも一種の元素が、Naおよび/またはMgである請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記ゾルが、酸化物換算で、Al酸化物2〜5質量%、Si酸化物3〜6質量%、Zn酸化物6〜8質量%、B酸化物20〜30質量%およびBi酸化物45〜65質量%を含む請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 前記ゾルがNa10〜20質量%および/またはMg10〜20質量%をさらに含む請求項8または9に記載の製造方法。
  11. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧粉磁心材料または請求項6〜10のいずれか一項に記載の製造方法により得られた圧粉磁心材料を、ロータまたはステータの少なくとも一部に使用した電動機。
  12. 請求項11に記載の電動機を搭載した車両。
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