JP7207055B2 - 圧延h形鋼及び合成梁 - Google Patents
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Description
すなわち、特許文献1の圧延H形鋼は、圧延H形鋼の外法高さをH、上フランジ及び下フランジの幅をB、ウェブの厚さをt1、上フランジ及び下フランジの厚さをt2、圧延H形鋼の内法高さをd(=H-2×t2)、鋼材の設計基準強度をF(N/mm2)とした場合に、以下の1)~3)に示す断面形状寸法及び強度を満たし、かつ引張強さが400~670N/mm2であることを特徴とする。
1) 6.0≦B/(2×t2)≦11.1
2) 75.2≦d/t1≦1.35×1100/F1/2
3) 235≦F≦385
1) 1.4×1100/F1/2<d/t1≦4.1×(E/F)1/2
2) 6.0≦B/(2×t2)≦11.1
3) 235≦F≦440
図1は、本発明の一実施形態に係る合成梁が適用された床構造40の斜視図である。
図1に示されるように、床構造40は、大梁41と、小梁42と、床スラブ30とを備える。大梁41及び小梁42は、水平方向の互いに直交する方向に延びている。小梁42は、シアプレート43を介して大梁41に接合されている。床スラブ30は、水平方向に延在しており、大梁41及び小梁42によって下側から支持されている。小梁42には、図示しない孫梁が接合される場合がある。
図2は、本発明の一実施形態に係る合成梁1の縦断面図である。
図2に示されるように、合成梁1は、材長方向の端部が支持された圧延H形鋼10と、この圧延H形鋼10の上フランジ12に設置されたシアコネクタ等の接続部材20を介して圧延H形鋼10と一体化されたコンクリートスラブ又はデッキ合成スラブである床スラブ30とを備える。圧延H形鋼10は、例えば、図1の小梁42又は孫梁に相当する。上フランジ12は、全長(略全長)に亘って床スラブ30と一体化されることにより、水平移動が拘束されている。また、圧延H形鋼10は、床スラブ30の荷重を受けることにより、おおよそ全断面(略全断面)が引張となる。
図3は、図2の圧延H形鋼10の縦断面図である。
圧延H形鋼10は、厚さが異なる上フランジ12及び下フランジ14と、ウェブ16とを有している。この圧延H形鋼10は、鉛直方向軸線及び水平方向軸線に対してそれぞれ線対称な断面である二軸対称断面を有する。図3において、Hは圧延H形鋼10の外法高さ、Bは上フランジ12及び下フランジ14の幅、t1はウェブ16の厚さ、t2は上フランジ12及び下フランジ14の厚さ、dは圧延H形鋼10の内法高さ(=H-2×t2)、rは上フランジ12及び下フランジ14とウェブ16との接続部に形成されたフィレット18の半径をそれぞれ示している。
1) 1.35×1100/F1/2<d/t1≦4.1×(E/F)1/2
2) 6.0≦B/(2×t2)≦11.1
3) 235≦F≦440
ここで、1)~3)に示す断面形状寸法及び強度の範囲を規定した理由について説明する。
図4は、本発明の圧延H形鋼と特許文献1の圧延H形鋼について、ウェブの幅厚比d/t1、及び、上フランジ及び下フランジの幅厚比B/(2×t2)を比較する図である。
下限値については、特許文献1において上限が1.35×1100/F1/2であるため、その範囲を含まないようにした。
上限値については、本発明の圧延H形鋼を小梁又は孫梁として使用した際に、性能上問題とならない範囲を解析的に検討し設定した。
具体的には、図5に示すようなヤング係数205000N/mm2、鋼材強度295N/mm2、引張強さ400N/mm2、材長を一般的な7200mmとした小梁の梁端境界条件を模擬するために、この小梁の梁端部に単純支持相当のボルト接合部を設けたものをFEM解析モデルとし、この解析モデルに対して、漸増の等分布荷重を与える弾塑性解析を実施した。
なお、前記解析モデルについては、対称性を考慮して梁中央から梁端までの2分の1モデルとし、梁中央断面には対称条件を与えた。また、床スラブによる拘束を模擬するために、上フランジ中心線は横移動を生じさせないよう拘束した。
この解析結果を図6に示す。図6のグラフにおいて、縦軸はモデルの梁中央の曲げモーメント、横軸は図7に示す部材角φである。また、図6中には、あわせて設計上の弾性剛性計算値および長期許容モーメントを示す。
前記解析モデルは、本発明のウェブ幅厚比d/t1の上限値よりも大きな領域に位置するが、設計値を超える範囲まで安定して耐力上昇していることから、小梁の構造性能上問題ないと考えられる。解析的にはさらにウェブの厚さt1を薄くすることも考えられるが、製造面を踏まえると、より幅厚比の大きな範囲では製造が難しくなるため、本発明においては、ウェブ幅厚比d/t1の上限値を、前記解析モデルの幅厚比よりも小さな値となる4.1×(E/F)1/2とした。
ウェブの幅厚比d/t1を1)の範囲とした場合に、上フランジ及び下フランジの幅厚比B/(2×t2)を2)にすることで、特許文献1よりも圧延H形鋼の断面積ひいては重量を低減することができる。一方で、ウェブの幅厚比d/t1を1)により、また、上フランジ及び下フランジの幅厚比B/(2×t2)を2)によりそれぞれ規定することにより、合成梁とした場合には、特許文献1の圧延H形鋼よりも断面積を低減して断面二次モーメント及び断面係数を有利にできる。
上限値については、440N/mm2より大きな高強度材を用いた場合、耐力の向上は見込めるが、剛性の向上にはつながらないため、たわみ制限による制約が支配的となり、これ以上の高強度材を用いたとしても、メリットが得られにくい。よって実用上は440N/mm2程度に抑えておく方がよい
下限値については、特許文献1の圧延H形鋼に対して同等以上の曲げ耐力を確保するため、特許文献1と同じ値に設定した。
表1は、JIS例1~8及び従来例1~32について、圧延H形鋼の断面形状寸法、断面積、及び、強度を示す表である。JIS例1~8は、JIS規格の圧延H形鋼に係る実施例であり、従来例1~32は、特許文献1の圧延H形鋼に係る実施例である。
なお、有効断面とは、「日本建築学会 鋼構造設計規準 -許容応力度設計法-」において規定されている断面であり、H形鋼フランジ及びウェブの幅厚比を超える部分の断面を無効断面とみなして算定したものである。強軸有効断面二次モーメントは、ウェブおよびフランジの無効断面を考慮した場合の強軸断面二次モーメントである。断面係数Zxcとは、上フランジ側の断面係数であり、断面係数Zxtとは、下フランジ側の断面係数である。また、断面係数Zxceとは、ウェブおよびフランジの無効断面を考慮した上フランジ側の断面係数(有効断面係数)であり、断面係数Zxteとは、ウェブおよびフランジの無効断面を考慮した下フランジ側の断面係数(有効断面係数)である。表2の値は、指数表示を含んでおり、「E+05」は「×105」、「E+06」は「×106」、「E+07」は「×107」、「E+08」は「×108」をそれぞれ示している。
従来例の圧延H形鋼の重量に対する発明例の圧延H形鋼の重量の比率を表す対従来例重量比は、下記4)で求められ、1未満であると重量的には従来例より軽くなる。
一方、従来例の圧延H形鋼の強軸有効断面二次モーメントに対する発明例の圧延H形鋼の強軸有効断面二次モーメントの比率を表す対従来例強軸有効断面二次モーメント比は、下記5)で求められ、1超となると曲げ剛性の性能が従来例より優れていることを示している。また、従来例の圧延H形鋼の有効断面係数に対する発明例の圧延H形鋼の有効断面係数の比率を表す対従来例有効断面係数比は、下記6)で求められ、1超となると曲げ耐力の性能が従来例より優れていることを示している。
対従来例有効断面係数比は、従来例と発明例との各断面係数Zxce(ウェブおよびフランジの無効断面を考慮した上フランジ側の断面係数(有効断面係数))を比較している。
4) 対従来例重量比=(発明例の圧延H形鋼の重量)/(従来例の圧延H形鋼の重量)
5) 対従来例強軸有効断面二次モーメント比=(発明例の圧延H形鋼の強軸有効断面二次モーメント)/(従来例の圧延H形鋼の強軸有効断面二次モーメント)
6) 対従来例有効断面係数比=(発明例の圧延H形鋼の有効断面係数)/(従来例の圧延H形鋼の有効断面係数)
なお、表4中の「対従来例重量比」及び「対従来例断面係数比」は、発明例1~32と従来例1~32とについて、発明例1と従来例1、発明例2と従来例2・・・発明例31と従来例31、発明例32と従来例32という具合に、それぞれ対応する発明例と従来例とをそれぞれ比較した結果を示している。表4の値は、指数表示を含んでおり、「E+05」は「×105」、「E+06」は「×106」、「E+07」は「×107」、「E+08」は「×108」をそれぞれ示している。
また、発明例13~32によれば、後述する設計条件を満足しながら、特許文献1の圧延H形鋼に係る従来例13~32に対して、対従来例重量比を大幅に低減、すなわち、重量を大幅に低減することができる。
表5-1、表5-2は、発明例13~32、従来例13~32について、たわみ比(施工時)、たわみ比(常用時)、曲げ応力比(施工時)、曲げ応力比(常用時)、せん断応力比(施工時)、及び、せん断応力比(常用時)を比較する表である。なお、表中のδmaxは、後述する設計条件に対して生じる施工時および常用時の梁の材長方向中央のたわみ量であり、δaは後述する設計条件から算出される許容たわみ量である。また表中のσおよびτは、後述する設計条件に対して生じる施工時および常用時の曲げ応力およびせん断応力であり、fbおよびfsは長期許容曲げ応力度および長期許容せん断応力度である。 施工時では、床コンクリートが硬化していないため、鉄骨単体の性能が要求される。常用時は、施工完了後、指定の用途として建物が使用されている段階であり、このときには床コンクリートが硬化後であるため、合成梁としての性能が要求される。
したがって、本発明例の圧延H形鋼は、設計上要求されている性能を確保しながらも、従来の圧延H形鋼に比べて重量を低減することができる。
なお、前述の設計条件は、圧延H形鋼を小梁として用いる場合についての検討を行う上でのものであって、前提条件として、材長7.2m、ピッチ3.0m、コンクリートスラブ150mm厚(コンクリート強度21N/mm2)とし、また荷重条件として、小梁および床の自重、施工時荷重4.5kN/m、仕上げ・設備荷重2.4kN/m、積載荷重15kN/m、許容たわみ量として施工時L/300、常用時L/500(ここで、Lは材長)とした場合の一例である。設計方法は各種合成構造設計指針・同解説(日本建築学会)に準拠して実施した。
従来例の圧延H形鋼を用いた合成梁の有効等価断面二次モーメントに対する発明例の圧延H形鋼を用いた合成梁の有効等価断面二次モーメントの比率を表す対従来例有効等価断面二次モーメント比は、下記6)で求められ、1を超えると曲げ剛性や曲げ耐力等の性能が従来例の圧延H形鋼を用いた場合よりも優れていることを示している。
また、従来例の圧延H形鋼を用いた合成梁の有効等価断面二次モーメントに対する発明例の圧延H形鋼を用いた合成梁の有効等価断面係数の比率を表す対従来例有効等価断面係数比は、下記7)で求められ、1を超えると曲げ剛性や曲げ耐力等の性能が従来例の圧延H形鋼を用いた場合よりも優れていることを示している。
6) 対従来例有効等価断面二次モーメント比=(発明例の圧延H形鋼を用いた場合の有効等価断面二次モーメント)/(従来例の圧延H形鋼を用いた場合の有効等価断面二次モーメント)
7) 対従来例有効等価断面係数比=(発明例の圧延H形鋼を用いた場合の有効等価断面係数)/(従来例の圧延H形鋼を用いた場合の有効等価断面係数)
なお、表7中の「対従来例有効等価断面二次モーメント比」、「対従来例有効等価断面係数比」は、発明例1~32と従来例1~32とについて、発明例1と従来例1、発明例2と従来例2・・・発明例31と従来例31、発明例32と従来例32という具合に、それぞれ対応する発明例と従来例とをそれぞれ比較した結果を示している。また、本発明例の圧延H形鋼に取り付けた合成梁において、考慮した床スラブは従来例の場合と同様、一般的なコンクリートスラブ(スラブ厚150mm、強度21N/mm2)である。
10 圧延H形鋼
12 上フランジ
14 下フランジ
16 ウェブ
18 フィレット
20 接続部材
30 床スラブ
Claims (2)
- 上フランジ、下フランジ、及び、ウェブを有する二軸対称断面の圧延H形鋼であって、
前記圧延H形鋼の外法高さをH、前記上フランジ及び前記下フランジの幅をB、前記ウェブの厚さをt1、前記上フランジ及び前記下フランジの厚さをt2、前記圧延H形鋼の内法高さをd(=H-2×t2)、鋼材の設計基準強度をF(N/mm2)、鋼材のヤング係数をE(N/mm2)とした場合に、以下の1)~3)に示す断面形状寸法及び強度を満たし、かつ引張強さが400~670N/mm2であることを特徴とする圧延H形鋼。
1) 1.4×1100/F1/2<d/t1≦4.1×(E/F)1/2
2) 6.0≦B/(2×t2)≦11.1
3) 235≦F≦440 - 材長方向の端部が支持された小梁又は孫梁である請求項1に記載の圧延H形鋼と、
前記上フランジに設置された接続部材を介して前記圧延H形鋼と一体化されたコンクリートスラブ又はデッキ合成スラブである床スラブと、
を備え、
前記上フランジは、全長に亘って前記床スラブと一体化されることにより、水平移動が拘束されていることを特徴とする合成梁。
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