以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
[1.第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる圧縮成型装置100を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る製造方法で用いる圧縮成型装置100は、第一型110と第二型120とを備える。これらの第一型110及び第二型120は、互いに接近することで型閉じがなされ、また、互いに離れることによって型開きがなされるように設けられている。本実施形態では、第一型110及び第二型の厚さ方向が鉛直方向と平行になるように、第一型110を下方、第二型120を上方に設けた例を示して説明する。
第一型110は、基板200を支持できるように設けられている。第一型110は、基板200を固定できる固定機構(図示せず。)を備えていてもよい。固定機構としては、例えば、基板200を吸着して固定できる吸着部、基板200を係止して固定できる係止部、などが挙げられる。ただし、粘着テープ等の固定部材(図示せず。)を用いて第一型110に基板200を固定してもよいので、第一型110は、固定機構を有していなくてもよい。
第二型120は、第一型110に対向して設けられている。そして、第一型110及び第二型120の少なくとも一方には、成型用の凹みとしてのキャビティ130が形成されている。通常は、図1に示すように、第二型120の第一型110に対向する側に、キャビティ130が形成される。このキャビティ130は、型閉じがなされた場合に、圧縮成型用の空間を形成できるように形成されている。本実施形態で示す例においては、キャビティ130は、第一型110に支持された基板200の表面200Uと第二型120との間に、キャビティ130に対応する空間が形成され、この空間内で樹脂組成物層(図1では図示せず。)を圧縮成型できるように形成されている。
前記の第一型110及び第二型120は、キャビティ130内を加圧できるように設けられている。本実施形態では、前記の加圧を実現するため、第二型120が、底部ブロック121と、この底部ブロック121の周囲を囲うように環状に設けられた側部ブロック122とを備える例を示して説明する。底部ブロック121は、キャビティ130の底部を形成する。また、側部ブロック122は、キャビティ130の側壁部を形成する。そして、底部ブロック121は、側部ブロック122に対して相対的に、移動可能に設けられている。よって、この例において、第二型120は、底部ブロック121が図中下方に押圧されることで、キャビティ130内を加圧できるように設けられている。ただし、キャビティ130内を加圧する方法は、ここに示す例に限定されない。
さらに、第一型110及び第二型120は、基板200及び樹脂組成物層の貼り付きを抑制するために、図示しないリリースフィルムを備えていてもよい。また、第一型110及び第二型120は、キャビティ130内を加熱するため、図示しないヒーター等の温度調整装置を備えていてもよい。さらに、第一型110及び第二型120には、気体が流通しうる図示しないエアベント路がキャビティ130に連通するように形成されていてもよく、このエアベント路には減圧装置(図示せず。)が接続されていてもよい。
本発明の第一実施形態に係る製造方法では、前記の圧縮成型装置100を用いて、半導体装置を製造する。この製造方法は、
基板200を用意する工程(I)と、
熱硬化性の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層と、この樹脂組成物層の一方の面に接する第一支持フィルムと、を備える樹脂シートを用意する工程(II)と、
前記第一支持フィルムを剥がして、樹脂組成物層の両方の面で、同時又は非同時に、非被覆状態を得る工程(III)と、
樹脂組成物層をキャビティ130内に収めて、第一型110と第二型120との間で、樹脂組成物層と基板200とを加圧する工程(IV)と、を含む。
[1.1.基板を用意する工程(I)]
本発明の第一実施形態に係る製造方法は、基板を用意する工程(I)を含む。基板としては、例えば、シリコンウェハー;ガラスウェハー;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等のガラスエポキシ基板;ポリエステル基板;ポリイミド基板;BTレジン基板;熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板;等が挙げられる。また、基板は、半導体チップを剥離可能に仮固定することができる仮固定フィルムを備えていてもよい。さらに、仮固定フィルム自体を基板として用いてもよい。仮固定フィルムの市販品としては、例えば、日東電工社製「リヴァアルファ」が挙げられる。また、基板は、当該基板の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基板を用いてもよい。このような基板を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。このような金属層を有する基板としては、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」が挙げられる。
また、基板は、その一方又は両方の表面に形成された導体層を備えていてもよい。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。また、導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。
さらに、基板は、一側又は両側に実装された電子部品を備えていてもよい。電子部品としては、例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗等の受動部品;半導体チップ等の能動部品;が挙げられる。
基板の面内方向の寸法は、キャビティの面内方向の寸法より小さくてもよく、大きくてもよく、同じでもよい。よって、基板の幅は、通常、キャビティの幅より小さくてもよく、大きくてもよく、同じでもよい。また、基板の面積は、キャビティの開口面積よりも小さくてもよく、大きくてもよく、同じでもよい。基板の面積とは、別に断らない限り、基板を厚さ方向から見た場合の面積を表す。また、キャビティの開口面積とは、別に断らない限り、キャビティを厚さ方向から見た場合の開口部(図1の符号130Dで示す部分)の面積を表す。例えば、キャビティより小さい基板は、キャビティ内に収まることができるので、当該基板自体を硬化体層に埋め込むことができる。また、例えば、キャビティより大きい基板は、当該基板がキャビティに蓋をできるので、当該基板上に硬化体層を形成できる。
図2は、本発明の第一実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる圧縮成型装置100に、基板200を設置した様子を模式的に示す断面図である。図2に示すように、用意された基板200は、第一型110に設置される。本実施形態では、図2に示したように、キャビティ130に蓋をできる程度に大きな基板200を用いた例を示して説明する。
[1.2.樹脂シートを用意する工程(II)]
図3は、本発明の第一実施形態に係る半導体装置の製造方法で用意される樹脂シート300を、厚さ方向に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
本発明の第一実施形態に係る製造方法は、図3に示す樹脂シート300を用意する工程(II)を含む。樹脂シート300は、熱硬化性の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層310と、樹脂組成物層310の一方の面としての第一面310Uに接する第一支持フィルム320と、を備える。樹脂組成物層310は、第一面310Uの反対側に、他方の面としての第二面310Dを有する。この第二面310Dは、他の部材に被覆されていない非被覆状態となっていてもよい。ただし、樹脂組成物層310を傷付き及びゴミ付着から保護する観点では、樹脂組成物層310の第二面310Dには、第二支持フィルム330が接していることが好ましい。よって、樹脂シート300は、樹脂組成物層310の第二面310Dに接する第二支持フィルム330を備えることが好ましい。
樹脂組成物層310は、当該樹脂組成物層310の全体をキャビティ130内に収められるように、小さく形成されている。キャビティ130内に樹脂組成物層310を収められることにより、型閉じがなされた場合に、樹脂組成物のキャビティ130の外部への流出を抑制できる。よって、樹脂組成物による第一型110及び第二型120の汚れを抑制できる。
また、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330は、樹脂組成物層310から剥がすことができるように設けられている。よって、樹脂組成物層310は、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を剥がして樹脂組成物層310単独で圧縮成型に供することができる。よって、圧縮成型時にはキャビティ130に第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330が収められないので、それら支持フィルム320及び330の食い込みが生じない。したがって、硬化体層(図3では図示せず。)における凹凸の形成を抑制できる。
以下、樹脂組成物層310の寸法について説明する。別に断らない限り、以下に説明する樹脂組成物層310の寸法は、工程(IV)での加圧より前の樹脂組成物層310の寸法を表す。樹脂組成物層310の面内方向の寸法は、当該樹脂組成物層310の全体をキャビティ130内に収められるようにする観点から、キャビティ130の面内方向の寸法よりも小さくなるように形成されている。よって、樹脂組成物層310の幅W310は、通常、キャビティ130の幅W130(図1参照)よりも小さい。
キャビティ130の幅W130に対する樹脂組成物層310の幅W310の比(W310/W130)は、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下、特に好ましくは0.97以下である。比(W310/W130)が前記範囲にある場合、樹脂組成物のキャビティ130の外部への流出を効果的に抑制できる。比(W310/W130)の下限は特段の制限は無いが、キャビティ130の隅々にまで樹脂組成物を効果的に充填する観点では、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上、特に好ましくは0.90以上である。
また、樹脂組成物層310の幅W310とキャビティ130の幅W130との差(W130-W310)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、特に好ましくは2mm以上である。差(W130-W310)が前記範囲にある場合、樹脂組成物のキャビティ130の外部への流出を効果的に抑制できる。差(W130-W310)の上限は特段の制限は無いが、キャビティ130の隅々にまで樹脂組成物を効果的に充填する観点では、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下、更に好ましくは6mm以下である。
さらに、樹脂組成物層310の面積は、当該樹脂組成物層310の全体をキャビティ130内に収められるようにする観点から、キャビティ130の開口面積よりも小さくなるように形成されている。樹脂組成物層310の面積とは、別に断らない限り、樹脂組成物層310を厚さ方向から見た場合の面積を表す。キャビティ130の開口面積100%に対する樹脂組成物層310の面積は、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下、特に好ましくは96%以下である。樹脂組成物層310の面積が前記範囲にある場合、樹脂組成物のキャビティ130の外部への流出を効果的に抑制できる。樹脂組成物層310の面積の下限は、特段の制限は無いが、キャビティ130の隅々にまで樹脂組成物を効果的に充填する観点では、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましは80%以上である。
樹脂組成物層310の面内方向の寸法は、基板200の面内方向の寸法より小さくてもよく、大きくてもよく、同じでもよい。よって、樹脂組成物層310の幅W310は、通常、基板200の幅W200(図2参照)より小さくてもよく、大きくてもよく、同じでもよい。圧縮成型法においては、加圧によって樹脂組成物層310が広げられて、基板200の表面200Uに硬化体層が形成されることが多いので、加圧される前の樹脂組成物層310の幅W310は、通常、基板200の幅W200よりも小さい。この場合、大面積の硬化体層を形成して歩留まりを向上させる観点では、基板200の幅W200に対する樹脂組成物層310の幅W310の比(W310/W200)は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.70以上、特に好ましくは0.80以上である。また、同様の観点から、基板200の幅W200と樹脂組成物層310の幅W310との差(W200-W310)は、好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下、特に好ましくは50mm以下である。
さらに、樹脂組成物層310の面積は、基板200の面積より小さくてもよく、大きくてもよく、同じでもよい。圧縮成型法においては、加圧によって樹脂組成物層310が広げられて、基板200の表面200Uに硬化体層が形成されることが多いので、加圧される前の樹脂組成物層310の面積は、通常、基板200の面積よりも小さい。この場合、大面積の硬化体層を形成して歩留まりを向上させる観点では、基板200の面積100%に対する樹脂組成物層310の面積は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
樹脂組成物層310は、工程(IV)において樹脂組成物層310が加圧されたときに、キャビティ130内を満たせる容量を有することが好ましい。このような容量を有する樹脂組成物層310は、工程(IV)において、キャビティ130内を隙間なく満たすことができる。例えば、本実施形態のように第一型110に支持された基板200と第二型120との間にキャビティ130が圧縮成型用の空間を形成する場合には、工程(IV)において加圧された樹脂組成物層310が、前記のキャビティ130が形成する空間を隙間なく満たすことができる。よって、樹脂組成物層310が硬化して形成される硬化体層において、未充填部及びボイドの発生を抑制できる。また、樹脂組成物層310が硬化して得られる硬化体層の、面内方向における膜厚均一性を向上できる。
樹脂組成物層310の厚さは、製造される半導体装置に応じて適切に設定しうる。例えば、樹脂組成物層310が薄い場合、薄い硬化体層を容易に形成できるので、半導体装置の薄型化を容易に実現できる。また、例えば、樹脂組成物層310が厚い場合、厚い硬化体層を容易に形成できるので、基板200が備えうる厚い部品を硬化体層が容易に封止できる。ただし、樹脂組成物層310を厚くすることによって機械的強度を高めて、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の剥がしやすさを高める観点では、樹脂組成物層310の厚さは、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上、特に好ましくは80μm以上である。上限に特段の制限は無いが、半導体装置の薄型化の観点では、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、特に好ましくは200μm以下である。
また、樹脂組成物層310の厚さは、均一であることが好ましい。樹脂組成物層310が均一な厚さを有する場合、キャビティ130内の全体にバランス良く圧力を加えることができるので、キャビティ130の端部にまで樹脂組成物を充分に充填できる。よって、未充填部及びボイドの発生を抑制できる。厚さの均一さは、厚さの最大値と最小値との差で表すことができる。具体的な範囲を示すと、樹脂組成物層310の厚さの最大値と最小値との差は、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
樹脂組成物層310に含まれる樹脂組成物は、100℃において、特定の範囲の溶融粘度ηを有することが好ましい。具体的には、前記の溶融粘度ηは、好ましくは800ポイズ以上、より好ましくは1000ポイズ以上、特に好ましくは1500ポイズ以上であり、好ましくは120000ポイズ以下、より好ましくは100000ポイズ以下、特に好ましくは90000ポイズ以下である。前記下限値以上の溶融粘度ηを有する樹脂組成物で形成された樹脂組成物層は、高い剛性を有しうる。よって、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の剥がしやすさを良好にできる。また、前記上限値以下の溶融粘度ηを有する樹脂組成物は、圧縮成型時に高い流動性を有することができるので、キャビティ130の端部にまで樹脂組成物を充分に充填できる。よって、未充填部及びボイドの発生を抑制できる。
樹脂組成物の溶融粘度は、動的粘弾性法により測定しうる。具体的な測定条件は、実施例において説明する条件を採用しうる。
樹脂組成物の溶融粘度は、例えば、樹脂組成物の組成を調整する方法により、調整できる。具体例を挙げると、樹脂組成物が含む溶剤の量を調整することにより、溶融粘度を調整できる。
第一支持フィルム320は、樹脂組成物層310の第一面310Uに、剥がすことができるように接して設けられたフィルムである。第一支持フィルム320としては、例えば、プラスチックフィルム、金属箔、離型紙が挙げられる。中でも、プラスチックフィルム及び金属箔が好ましい。
プラスチックフィルムに含まれるプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリルポリマー、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
第一支持フィルム320は、樹脂組成物層310と接する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理、離型剤処理等の表面処理が施されていてもよい。特に、離型剤処理が施されていることが好ましい。このように離型剤処理では、一般に、上述したプラスチック材料、金属材料等の材料で形成された処理前のフィルム部の表面を、離型剤によって処理する。よって、離型剤処理が施された第一支持フィルム320は、通常、前記のフィルム部と、このフィルム部上に離型剤によって形成された離型層とを備える。離型剤処理がなされることにより、樹脂組成物層310から第一支持フィルム320を剥がしやすくできる。
離型剤としては、例えば、アルキド系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、ウレタン系離型剤、及びシリコーン系離型剤からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、第一支持フィルム320の剥がしやすさを適切な範囲に収める観点から、シリコーン系離型剤が好ましい。
第一支持フィルム320の厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。第一支持フィルム320の厚さが前記範囲にある場合、第一支持フィルム320の剥がしやすさ及び樹脂シート300のハンドリング性を良好にできる。
第一支持フィルム320と樹脂組成物層310との密着力FA[gf/cm]は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
1.5[gf/cm]< FA <20[gf/cm] (1)
より詳細には、密着力FAは、好ましくは1.5[gf/cm]より大きく、より好ましくは1.7[gf/cm]より大きく、特に好ましくは1.9[gf/cm]より大きく、また、好ましくは20[gf/cm]未満、より好ましくは18[gf/cm]未満、特に好ましくは17[gf/cm]未満である。第一支持フィルム320と樹脂組成物層310との密着力FAが前記範囲の下限値より大きい場合、第一支持フィルム320に浮きが生じることを抑制できる。前記の「浮き」とは、樹脂組成物層310に接していたフィルム(具体的には、第一支持フィルム320又は第二支持フィルム330)が、意図せず、部分的な剥がれを生じることをいう。浮きを抑制できることは、例えば、樹脂シート300のロールを23℃で24時間保管した後で、ロールから樹脂シート300を引き出して観察することにより、確認できる。また、第一支持フィルム320と樹脂組成物層310との密着力FAが前記範囲の上限値未満である場合、樹脂組成物層310から第一支持フィルム320を剥がしやすい。よって、第一支持フィルム320を円滑に剥がしたり、第一支持フィルム320を剥がすことによる樹脂組成物層310の破損を抑制したりできる。
第一支持フィルム320と樹脂組成物層310との密着力FAは、下記の方法によって測定できる。
すなわち、第一支持フィルム320を、樹脂組成物層310に対して垂直方向(90度方向)に23℃において引き剥がしたときの剥離強度を、密着力FAとして測定できる。この測定は、引っ張り試験機を用いて行うことができる。
第一支持フィルム320と樹脂組成物層310との密着力FAは、例えば、樹脂組成物層310の厚さを調整する方法、樹脂組成物層310に含まれる樹脂組成物の組成を調整する方法、第一支持フィルム320が備える離型層の組成を調整する方法、第一支持フィルム320の樹脂組成物層310に接する面の粗さを調整する方法、などによって、調整できる。
第二支持フィルム330は、樹脂組成物層310の第二面310Dに、剥がすことができるように接して設けられたフィルムである。第二支持フィルム330としては、例えば、第一支持フィルム320と同じく、プラスチックフィルム、金属箔、離型紙が挙げられる。中でも、プラスチックフィルム及び金属箔が好ましい。
第二支持フィルム330は、樹脂組成物層310と接する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理、離型剤処理等の表面処理が施されていてもよい。特に、離型剤処理が施されていることが好ましい。離型剤処理が施された第二支持フィルム330は、通常、プラスチック材料、金属材料等の材料で形成されたフィルム部と、このフィルム部上に離型剤によって形成された離型層とを備える。離型剤処理がなされることにより、樹脂組成物層310から第二支持フィルム330を剥がしやすくできる。離型剤としては、第一支持フィルム320に用いうる離型剤と同じ例が挙げられる。中でも、第二支持フィルム330の剥がしやすさを適切な範囲に収める観点から、シリコーン系離型剤が好ましい。
第二支持フィルム330の厚さは、第一支持フィルム320と同じ利点を得る観点から、第一支持フィルム320の厚さと同じ範囲にあることが好ましい。第一支持フィルム320の厚さと第二支持フィルム330の厚さとは、同じでもよく、異なっていてもよい。
第二支持フィルム330と樹脂組成物層310との密着力FB[gf/cm]は、下記式(2)を満たすことが好ましい。より詳細には、密着力FBは、第一支持フィルム320と樹脂組成物層310との密着力FAと同じ範囲にあることが好ましい。密着力FAと密着力FBとは、同じでもよく、異なっていてもよい。
1.5[gf/cm]< FB <20[gf/cm] (2)
第二支持フィルム330と樹脂組成物層310との密着力FBが前記範囲の下限値より大きい場合、第二支持フィルム330に浮きが生じることを抑制できる。また、第二支持フィルム330と樹脂組成物層310との密着力FBが前記範囲の上限値未満である場合、樹脂組成物層310から第二支持フィルム330を剥がしやすい。よって、第二支持フィルム330を円滑に剥がしたり、第二支持フィルム330を剥がすことによる樹脂組成物層310の破損を抑制したりできる。
第二支持フィルム330と樹脂組成物層310との密着力FBは、第一支持フィルム320と樹脂組成物層310との密着力FAと同じ方法によって測定できる。
第二支持フィルム330と樹脂組成物層310との密着力FBは、例えば、樹脂組成物層310の厚さを調整する方法、樹脂組成物層310に含まれる樹脂組成物の組成を調整する方法、第二支持フィルム330が備える離型層の組成を調整する方法、第二支持フィルム330の樹脂組成物層310に接する面の粗さを調整する方法、などによって、調整できる。
第一支持フィルム320と樹脂組成物層310との密着力FA[gf/cm]、第二支持フィルム330と樹脂組成物層310との密着力FB[gf/cm]、及び、樹脂組成物層310に含まれる樹脂組成物の100℃における溶融粘度η[poise]は、式(3)を満たすことが好ましい。
0.00005< (FA+FB)/η <0.03 (3)
詳細には、前記のパラメータ「(FA+FB)/η」は、好ましくは0.00005[gf/(cm・poise)]より大きく、より好ましくは0.0001[gf/(cm・poise)]より大きく、特に好ましくは0.0002[gf/(cm・poise)]より大きく、また、好ましくは0.030[gf/(cm・poise)]未満、より好ましくは0.025[gf/(cm・poise)]未満、特に好ましくは0.020[gf/(cm・poise)]未満である。パラメータ「(FA+FB)/η」が、前記範囲の下限値より大きい場合、第一支持フィルム320又は第二支持フィルム330が浮きを生じることを抑制できる。また、パラメータ「(FA+FB)/η」が、前記範囲の上限値未満である場合、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を樹脂組成物層310から剥がしやすくできる。
樹脂シート300は、樹脂組成物層310、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330に組み合わせて、更に任意の部材を備えていてもよい。例えば、樹脂シート300は、保護フィルムを更に備えていてもよい。
上述した樹脂シート300の製造方法は、特段の制限は無い。例えば、樹脂シート300は、樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて第一支持フィルム320上に塗布することを含む方法により、製造できる。また、例えば、樹脂シート300は、樹脂組成物及び溶剤を含む樹脂ワニスを第一支持フィルム320上に塗布することを含む方法により、製造してもよい。樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層310を形成する。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等の有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施しうる。乾燥条件は、樹脂組成物層310に含まれる溶剤の量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように行うことが好ましい。樹脂ワニス中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば、30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層310を形成してもよい。
前記の乾燥により、樹脂組成物層310と、この樹脂組成物層310の第一面310Uに接した第一支持フィルム320とを備えるシートが得られる。こうして得られるシートを樹脂シートとして用いてもよいが、樹脂組成物層310の第二面310Dに第二支持フィルム330を設けて、樹脂シート300を得てもよい。例えば、樹脂組成物層310の第二面310Dに第二支持フィルム330を貼り合わせることで、第二支持フィルム330、樹脂組成物層310及び第一支持フィルム320を厚さ方向でこの順に備える樹脂シート300を得ることができる。
又は、第二支持フィルム330に樹脂ワニスを塗布し、乾燥して樹脂組成物層310を形成した後で、その樹脂組成物層に接するように第一支持フィルム320を設けて、樹脂シート300を製造してもよい。
製造効率の向上の観点から、樹脂シート300は、長尺の第一支持フィルム320又は第二支持フィルム330を用いて製造することが好ましい。「長尺」のフィルムとは、幅に対して通常10倍以上の長さを有するフィルムを表し、好ましくはロール状に巻き取ることが可能な程度に長いフィルムを表す。このように長尺の第一支持フィルム320又は第二支持フィルム330を用いる場合、長尺の樹脂シート300を得ることができる。この長尺の樹脂シート300は、必要に応じて適切な寸法にカットして、圧縮成型に使用できる。
[1.3.支持フィルムを剥がす工程(III)]
本発明の第一実施形態に係る製造方法は、用意された樹脂シート300の第一支持フィルム320を剥がして、樹脂組成物層310の両方の面(即ち、第一面310U及び第二面310D)で非被覆状態を得る工程(III)を含む。「非被覆状態」とは、面が第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330等の部材によって覆われていない状態をいう。よって、ある面で非被覆状態を得るとは、その面が部材によって覆われていない状態を得ることをいう。
工程(III)では、樹脂組成物層310の第一面310U及び第二面310Dで非被覆状態を得るのであるから、第二支持フィルム330を備える樹脂シート300では、第一支持フィルム320だけでなく第二支持フィルム330も剥がされる。よって、樹脂組成物層310と、樹脂組成物層310の第一面310Uに接する第一支持フィルム320と、樹脂組成物層310の第二面310Dに接する第二支持フィルム330と、を備える樹脂シート300を工程(II)において用意した場合には、工程(III)は、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を剥がすことを含む。
工程(III)では、樹脂組成物層310の第一面310U及び第二面310Dで同時に非被覆状態を得てもよい。第一面310U及び第二面310Dで「同時に」非被覆状態を得る、とは、第一面310Uで非被覆状態を得ている期間と、第二面310Dで非被覆状態を得ている期間とが、時間的に重なり合うことをいう。また、工程(III)では、樹脂組成物層310の第一面310U及び第二面310Dで非同時に非被覆状態を得てもよい。第一面310U及び第二面310Dで「非同時に」非被覆状態を得る、とは、第一面310Uで非被覆状態を得ている期間と、第二面310Dで非被覆状態を得ている期間とが、時間的に重なり合わないこという。よって、工程(II)で樹脂シート300が用意された後、工程(IV)で圧縮成型がなされる前に、ある期間で樹脂組成物層310の第一面310Uで非被覆状態を得ており、且つ、前記期間と同じか又は異なる期間に樹脂組成物層310の第二面310Dで非被覆状態を得ている場合、工程(III)が行われたといえる。
第一面310U及び第二面310Dで同時に非被覆状態を得る例としては、下記のような場合が挙げられる。
例えば、樹脂組成物層310と、樹脂組成物層310の第一面310Uに接する第一支持フィルム320と、樹脂組成物層310の第二面310Dに接する第二支持フィルム330とを備える樹脂シート300を用意する。ある時点で、用意された樹脂組成物層310の第一面310Uに接していた第一支持フィルム320を剥がして、その第一面310Uで非被覆状態を得る。また、樹脂組成物層310の第二面310Dに接していた第二支持フィルム330を剥がして、その第二面310Dで非被覆状態を得る。その後、第一面310U及び第二面310Dの両方で非被覆状態を得た樹脂組成物層310を、第一面310U及び第二面310Dの一方が基板200に接するように、基板200上に設置する。この場合、第一面310Uで非被覆状態を得ている期間と、第二面310Dで非被覆状態を得ている期間とが、時間的に重なり合う。よって、第一面310U及び第二面310Dで同時に非被覆状態を得る工程(III)が行われたといえる。
また、例えば、樹脂組成物層310と、樹脂組成物層310の第一面310Uに接する第一支持フィルム320とを備える樹脂シート300を用意する。この例に係る樹脂組成物層310の第二面310Dは、特段の操作を行わなくても、他の部材に被覆されていない非被覆状態が得られている。ある時点で、用意された樹脂組成物層310の第一面310Uに接していた第一支持フィルム320を剥がして、その第一面310Uで非被覆状態を得る。その後、第一面310U及び第二面310Dの両方で非被覆状態を得た樹脂組成物層310を、第一面310U及び第二面310Dの一方が基板200に接するように、基板200上に設置する。この場合も、第一面310Uで非被覆状態を得ている期間と、第二面310Dで非被覆状態を得ている期間とが、時間的に重なり合う。よって、第一面310U及び第二面310Dで同時に非被覆状態を得る工程(III)が行われたといえる。
他方、第一面310U及び第二面310Dで非同時に非被覆状態を得ている工程(III)の例としては、下記のような場合が挙げられる。
例えば、樹脂組成物層310と、樹脂組成物層310の第一面310Uに接する第一支持フィルム320と、樹脂組成物層310の第二面310Dに接する第二支持フィルム330とを備える樹脂シート300を用意する。ある時点で、用意された樹脂組成物層310の第二面310Dに接していた第二支持フィルム330を剥がして、その第二面310Dで非被覆状態を得る。その後、非被覆状態の第二面310Dが基板200に接するように、樹脂組成物層310を基板200上に設置する。更にその後、樹脂組成物層310の第一面310Uに接していた第一支持フィルム320を剥がして、その第一面310Uで非被覆状態を得る。この場合、第一面310Uで非被覆状態を得ている期間と、第二面310Dで非被覆状態を得ている期間とが、時間的に重なり合わない。よって、第一面310U及び第二面310Dで非同時に非被覆状態を得る工程(III)が行われたといえる。
また、例えば、樹脂組成物層310と、樹脂組成物層310の第一面310Uに接する第一支持フィルム320とを備える樹脂シート300を用意する。この例に係る樹脂組成物層310の第二面310Dは、特段の操作を行わなくても、他の部材に被覆されていない非被覆状態が得られている。この非被覆状態の第二面310Dが基板200に接するように、樹脂組成物層310を基板200上に設置する。その後、樹脂組成物層310の第一面310Uに接していた第一支持フィルム320を剥がして、その第一面310Uで非被覆状態を得る。この場合も、第一面310Uで非被覆状態を得ている期間と、第二面310Dで非被覆状態を得ている期間とが、時間的に重なり合わない。よって、第一面310U及び第二面310Dで非同時に非被覆状態を得る工程(III)が行われたといえる。
第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を備える樹脂シート300では、第一支持フィルム320を剥がすことと、第二支持フィルム330を剥がすこととは、同時に行ってもよく、非同時に行ってもよい。よって、第一支持フィルム320を先に剥がしてもよく、第二支持フィルム330を先に剥がしてもよく、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を同時に剥がしてもよい。通常は、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330のうち、樹脂組成物層310との密着力が小さい方を先に剥がすことが、工程(III)を円滑に行う観点から好ましい。
図4は、本発明の第一実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる圧縮成型装置100に、基板200及び樹脂組成物層310を設置した様子を模式的に示す断面図である。図4に示すように、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を剥がして得られた樹脂組成物層310は、型閉じがなされた場合にキャビティ130に収まるように、基板200上に設置される。本実施形態では、図4に示したように、第一型110に基板200を設置した後で当該基板200上に樹脂組成物層310を設置した例を示したが、第一型110に基板200を設置する前に基板200上に樹脂組成物層310を設置しても構わない。この際、例えば、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を剥がして得た樹脂組成物層310を単独で基板200に設置してもよい。また、例えば、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の一方を剥がして第一面310U及び第二面310Dの一方で非被覆状態を得て、その非被覆状態の面が基板200に接するように樹脂組成物層310を設置し、その後、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の他方を剥がしてもよい。また、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の他方を剥がす前に、必要に応じて、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の他方をローラー等の押圧具で押圧して、樹脂組成物層310を基板200に密着させてもよい。
[1.4.圧縮成型工程(IV)]
図5は、本発明の第一実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる圧縮成型装置100を用いて、圧縮成型を行っている様子を模式的に示す断面図である。
本発明の第一実施形態に係る製造方法は、上述した工程(I)から工程(III)の後で、図5に示すように、樹脂組成物層310をキャビティ130内に収めて、第一型110と第二型120との間で、樹脂組成物層310と基板200とを加圧する工程(IV)を含む。この工程(IV)により、樹脂組成物層310を圧縮成型して、樹脂組成物の硬化体で形成された硬化体層340を得ることができる。
詳細には、工程(IV)では、第一型110及び第二型120を型閉じする。型閉じすることにより、第一型110と第二型120との間に樹脂組成物層310及び基板200が配置される。この際、基板200は、キャビティ130の開口部130Dの全体を塞ぐ。よって、キャビティ130内には、基板200と第二型120とに囲まれた閉空間が形成される。樹脂組成物層310は、その全体が、前記の閉空間内に収められる。このように樹脂組成物層310がキャビティ130内の閉空間に収められた状態で、第二型120の底部ブロック121を押し込むことにより、樹脂組成物層310及び基板200を加圧する。加圧により、樹脂組成物層310が基板200に接合させられるとともに、樹脂組成物層310が圧縮成型される。
前記の加圧により、樹脂組成物層310は、前記閉空間の全体に充填される。この際、第二型120及び基板200は密着している。よって、樹脂組成物層310に含まれる樹脂組成物は、閉空間の外へと流出しない。したがって、樹脂組成物による第一型110及び第二型120の汚れを抑制できる。
通常、前記のように樹脂組成物層310が閉空間に充填された状態で、加熱を行う。加熱により、樹脂組成物層310が硬化されて、樹脂組成物の硬化体を含む硬化体層340が形成される。よって、前記の閉空間を形成するキャビティ130の形状を高い精度で写し取った硬化体層340を得ることができる。
この際、工程(II)で用意された樹脂シート300が備える要素のうちでは、樹脂組成物層310のみがキャビティ130内にあり、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330はキャビティ130内に無い。よって、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の樹脂組成物層310への食い込みが生じないので、硬化体層340における凹凸の形成を抑制できる。
上述した圧縮成型の条件は、樹脂組成物の組成により異なり、良好な硬化体層340が得られるように適切な条件を採用できる。
例えば、成型時の型の温度は、樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。
また、例えば、成型時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。
さらに、例えば、キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。
[1.5.任意の工程]
本発明の第一実施形態に係る製造方法は、上述した工程(I)、工程(II)、工程(III)及び工程(IV)に組み合わせて、任意の工程を含みうる。
通常、本実施形態に係る製造方法は、工程(IV)の後で、型開きする工程を含む。このように型開きすることにより、基板200及び硬化体層340を圧縮成型装置100から取り外すことができる。このように取り外すことにより、基板200及び硬化体層340を備える成型体を得ることができる。
図6は、本発明の第一実施形態に係る製造方法で製造できる成型体350を模式的に示す断面図である。図6に示すように、第一実施形態に係る製造方法によれば、基板200と、この基板200上に樹脂組成物の硬化体によって形成された硬化体層340とを備える成型体350を得ることができる。このような成型体350を、半導体装置として得てもよい。例えば、硬化体層340側に半導体チップ(図示せず)を備える実装基板を基板200として用いた場合には、その実装基板としての基板200と、この基板200が備える半導体チップを封止する封止層としての硬化体層340とを備える成型体350を、半導体装置としての半導体チップパッケージとして得ることができる。
また、上述した成型体350には、更に配線層、絶縁層、ソルダーレジスト層、半導体チップ等の任意の要素を設けてもよい。よって、本実施形態に係る製造方法は、それら任意の要素を設ける工程を含んでいてもよい。
さらに、本実施形態に係る製造方法は、成型体350から基板200を剥離する工程を含んでいてもよい。この場合、硬化体層340を備えるが基板200を備えない半導体装置を得ることができる。例えば、基板200として、半導体チップを剥離可能に仮固定することができる仮固定フィルムを用いた場合に、基板200を備えない半導体装置を得ることができる。
さらに、本実施形態に係る製造方法は、任意の要素を含みうる成型体350又は硬化体層340を個片化するダイシング工程を含んでいてもよい。
また、本実施形態に係る製造方法は、型開きの後で、得られた硬化体層340の熱硬化を更に進行させる工程を含んでいてもよい。具体的には、型開きの後で、硬化体層340を更に加熱する工程を行ってもよい。
上述した製造方法において、各工程を行う順は、所望の半導体装置が得られる範囲で制限は無い。また、複数の工程を同時に行ってもよい。
[1.6.本実施形態に係る製造方法の主な利点]
第一実施形態に係る製造方法によれば、硬化体層340における凹凸の形成を抑制できる。以下、この利点について、別の製造方法と対比させて説明する。
図7は、樹脂組成物層310及び支持フィルム910を備えた樹脂シート900を用いて圧縮成型を行うときの圧縮成型装置920を模式的に示す断面図である。この図7において、上述した第一実施形態で説明したのと同じ部位には、図1~図6と同じ符号を付して説明する。
図7に示すように、樹脂組成物層310及び支持フィルム910を備えた樹脂シート900を用いて圧縮成型を行う場合を仮定する。この場合、樹脂組成物層310だけでなく支持フィルム910もキャビティ130内に収められる。よって、支持フィルム910の端部910Eが樹脂組成物層310に食い込む。そうすると、支持フィルム910の端部910Eが食い込んだ樹脂組成物層310の部分930には、前記の食い込みによる凹凸が形成される。また、このように端部910Eの組み込みが生じると、支持フィルム910を剥離することが困難になる。
これに対し、第一実施形態に係る製造方法では、図5に示すように、樹脂組成物層310はキャビティ130内に収められるが、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330はキャビティ130内に無い。よって、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の樹脂組成物層310への食い込みが抑制される。したがって、図6に示すように、硬化体層340における凹凸の形成を抑制できる。また、硬化体層340から第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を剥離する操作が不要であるから、通常、成型体35の効率的な製造が可能である。
さらに、第一実施形態に係る製造方法によれば、樹脂組成物の流出による第一型110及び第二型120の汚れを抑制できる。以下、この利点について、別の製造方法と対比させて説明する。
キャビティより大きい樹脂シートを用いて圧縮成型を行う場合を仮定する。この場合、支持フィルムの端部がキャビティの外に配置されるので、支持フィルムの樹脂組成物層への組み込みを抑制できるが、樹脂組成物層の一部がキャビティの外にはみ出る。よって、そのはみ出た樹脂組成物層が第一型及び第二型に接触することにより、第一型及び第二型に樹脂組成物が付着し、汚れが生じる。
これに対し、第一実施形態に係る製造方法では、図5に示すように、樹脂組成物層310の全体をキャビティ130内に収めた状態で、圧縮成型を実施できる。よって、キャビティ130の外では第一型110及び第二型120に樹脂組成物層310が接触しないので、樹脂組成物の付着による汚れを抑制できる。
上述した第一実施形態に係る半導体装置の製造方法を実施するためには、工程(III)において、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を円滑に剥がすことが好ましい。よって、上述した第一実施形態に係る製造方法の利点を得るためには、樹脂組成物層310から剥がしやすい第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を備える樹脂シート300を用いることが好ましい。そのような樹脂シート300としては、上述した特定の厚さの樹脂組成物層を有し、且つ、第一支持フィルム320と樹脂組成物層310との密着力FA[gf/cm]、第二支持フィルム330と樹脂組成物層310との密着力FB[gf/cm]、及び、100℃における樹脂組成物の溶融粘度η[poise]が、上述した式(1)、式(2)及び式(3)を満たすものが、特に好ましい。
[2.第二実施形態]
第一実施形態では、第一型110及び第二型120の一方に基板200及び樹脂組成物層310の両方を設置して、圧縮成型を実施した例を用いて、半導体装置の製造方法を説明した。しかし、基板200及び樹脂組成物層310の設置態様は第一実施形態に限定されない。例えば、第一型110に基板200を設置し、第二型120に樹脂組成物層310を設置した後で、圧縮成型を実施してもよい。以下、その方法を、第二実施形態を示して説明する。
図8は、本発明の第二実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる圧縮成型装置400に、基板200及び樹脂組成物層310を設置した様子を模式的に示す断面図である。第二実施形態においては、第一実施形態で説明したのと同じ部位には、第一実施形態と同じ符号を付して説明する。
図8に示すように、本発明の第二実施形態に係る製造方法で用いる圧縮成型装置400は、第一型110が上方、第二型120が下方に設けられていること以外は、第一実施形態で説明した圧縮成型装置100と同じに設けられている。よって、圧縮成型装置400は、基板200を支持できる第一型110と、第一型110に対向して設けられた第二型120とを、第一型110及び第二型120の厚さ方向が鉛直方向と平行になるように備える。
本発明の第二実施形態に係る製造方法では、前記の圧縮成型装置400を用いて、半導体装置を製造する。この製造方法は、第一実施形態と同じく、
基板200を用意する工程(I)と、
樹脂シート300(図3参照)を用意する工程(II)と、
第一支持フィルム320を剥がして、樹脂組成物層310の両方の面310U及び310Dで非被覆状態を得る工程(III)と、
樹脂組成物層310をキャビティ130内に収めて、第一型110と第二型120との間で、樹脂組成物層310と基板200とを加圧する工程(IV)と、を含む。
工程(I)で用意される基板200は、第一実施形態で説明したものと同じである。第二実施形態では、用意した基板200を、図8に示すように第一型110に設置する。
工程(II)で用意される樹脂シート300は、第一実施形態で説明したものと同じである。このように用意した樹脂シート300は、第一実施形態と同じく、工程(III)において、第一支持フィルム320を剥がされる。また、樹脂シート300が第二支持フィルム330を備える場合には、当該第二支持フィルム330も剥がされる。そして、第一面310U及び第二面310Dで同時又は非同時に非被覆状態を得た樹脂組成物層310を、図8に示すように、キャビティ130に収まるように第二型120に設置する。樹脂組成物層310は、第一型110に基板200を設置した後で第二型120に設置してもよく、第一型110に基板200を設置する前に第二型120に設置してもよい。この際、例えば、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を剥がして得た樹脂組成物層310を単独で第二型120に設置してもよい。また、例えば、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の一方を剥がして第一面310U及び第二面310Dの一方で非被覆状態を得て、その非被覆状態の面が第二型120に接するように樹脂組成物層310を設置し、その後、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の他方を剥がしてもよい。
図9は、本発明の第二実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる圧縮成型装置400を用いて、圧縮成型を行っている様子を模式的に示す断面図である。
本発明の第二実施形態に係る製造方法は、上述した工程(I)~工程(III)の後で、図9に示すように、樹脂組成物層310をキャビティ130内に収めて、第一型110と第二型120との間で、樹脂組成物層310と基板200とを加圧する工程(IV)を含む。この工程(IV)は、第一実施形態と同じく行いうる。よって、具体的には、工程(IV)では、第一型110及び第二型120が型閉じされ、樹脂組成物層310の全体が、基板200と第二型120とに囲まれたキャビティ130内の閉空間に収められる。そして、この状態で、樹脂組成物層310及び基板200が加圧されて、樹脂組成物層310が基板200に接合されるとともに、樹脂組成物層310が圧縮成型される。したがって、必要に応じて加熱して樹脂組成物層310を硬化させることにより、硬化体層340を得ることができる。
その後、通常は、型開きがなされて、基板200及び硬化体層340を圧縮成型装置400から取り外す。このようにして、第一実施形態と同じく、基板200及び硬化体層340を備える成型体350を得ることができる。
上述した第二実施形態に係る製造方法によれば、第一実施形態に係る製造方法と同じ利点を得ることができる。
第二実施形態に係る製造方法は、第一実施形態に係る製造方法と同じく、任意の工程を含んでいてもよい。
[3.変形例]
本発明の半導体装置の製造方法は、上述した実施形態から更に変更して実施してもよい。例えば、基板を収納できるキャビティが形成された型を備える圧縮成型装置を用いて、半導体装置の製造を行ってもよい。以下、その方法の例を、図面を参照して説明する。
図10は、本発明の第三実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる圧縮成型装置500に、基板200及び樹脂組成物層310を設置した様子を模式的に示す断面図である。第三実施形態においては、第一実施形態で説明したのと同じ部位には、第一実施形態と同じ符号を付して説明する。
図10に示すように、本発明の第三実施形態に係る製造方法で用いる圧縮成型装置500は、基板200を支持する第一型510にキャビティ530が設けられていること、及び、キャビティ530が樹脂組成物層310だけでなく基板200も収納できるように形成されていること以外は、第一実施形態で説明した圧縮成型装置100と同じに設けられている。
本実施形態で示す例においては、キャビティ530は、基板200及び樹脂組成物層310を収納できるように大きく形成されている。よって、この圧縮成型装置500では、第一型510と第二型520との間に、キャビティ530に対応する空間が形成され、この空間内で樹脂組成物層310を圧縮成型できる。
また、キャビティ530内を加圧できるようにする観点から、第一型510は、底部ブロック511と、この底部ブロック511の周囲を囲うように環状に設けられた側部ブロック512とを備える。底部ブロック511は、側部ブロック512に対して相対的に、移動可能に設けられている。よって、この例において、第一型510は、底部ブロック511が図中上方に押圧されることで、キャビティ530内を加圧できるように設けられている。
本発明の第三実施形態に係る製造方法では、前記の圧縮成型装置500を用いて、半導体装置を製造する。この製造方法は、第一実施形態と同じく、
基板200を用意する工程(I)と、
樹脂シート300(図3参照)を用意する工程(II)と、
第一支持フィルム320を剥がして、樹脂組成物層310の両方の面310U及び310Dで非被覆状態を得る工程(III)と、
樹脂組成物層310をキャビティ530内に収めて、第一型510と第二型520との間で、樹脂組成物層310と基板200とを加圧する工程(IV)と、を含む。
工程(I)で用意される基板200は、第一実施形態で説明したものと同じである。第三実施形態では、用意した基板200を、図10に示すように第一型510のキャビティ530内に設置する。
工程(II)で用意される樹脂シート300は、第一実施形態で説明したものと同じである。このように用意した樹脂シート300は、第一実施形態と同じく、工程(III)において、第一支持フィルム320を剥がされる。また、樹脂シート300が第二支持フィルム330を備える場合には、当該第二支持フィルム330も剥がされる。そして、第一面310U及び第二面310Dで同時又は非同時に非被覆状態を得た樹脂組成物層310を、図10に示すように、キャビティ530に収まるように基板200上に設置する。樹脂組成物層310は、第一型510に基板200を設置した後で基板200上に設置してもよく、第一型510に基板200を設置する前に基板200上に設置してもよい。この際、例えば、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330を剥がして得た樹脂組成物層310を単独で基板200上に設置してもよい。また、例えば、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の一方を剥がして第一面310U及び第二面310Dの一方で非被覆状態を得て、その非被覆状態の面が基板200に接するように樹脂組成物層310を設置し、その後、第一支持フィルム320及び第二支持フィルム330の他方を剥がしてもよい。
図11は、本発明の第三実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる圧縮成型装置500を用いて、圧縮成型を行っている様子を模式的に示す断面図である。
本発明の第三実施形態に係る製造方法は、上述した工程(I)~工程(III)の後で、図11に示すように、樹脂組成物層310をキャビティ530内に収めて、第一型510と第二型520との間で、樹脂組成物層310と基板200とを加圧する工程(IV)を含む。この工程(IV)は、第一実施形態と同じく行いうる。よって、具体的には、工程(IV)では、第一型510及び第二型520が型閉じされ、樹脂組成物層310の全体が、第一型510、基板200及び第二型520に囲まれたキャビティ530内の閉空間に収められる。そして、この状態で、樹脂組成物層310及び基板200が加圧されて、樹脂組成物層310が基板200に接合されるとともに、樹脂組成物層310が圧縮成型される。したがって、必要に応じて加熱して樹脂組成物層310を硬化させることにより、硬化体層340を得ることができる。
その後、通常は、型開きがなされて、基板200及び硬化体層340を圧縮成型装置500から取り外す。このようにして、第一実施形態と同じく、基板200及び硬化体層340を備える成型体350を得ることができる。
上述した第三実施形態に係る製造方法によれば、第一実施形態に係る製造方法と同じ利点を得ることができる。
第三実施形態に係る製造方法は、第一実施形態に係る製造方法と同じく、任意の工程を含んでいてもよい。
[4.樹脂組成物層の組成]
樹脂組成物の組成は、当該樹脂組成物が熱硬化性を有する範囲であれば、特段の制限は無い。
熱硬化性を発揮できるようにする観点から、樹脂組成物は、通常、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、高い封止能力を有する硬化体層を得易いことから、エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。全てのエポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂を含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂を含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP-4032」、「HP-4032D」、「HP-4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「CELド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、ADEKA社製の「EP3950L」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP-4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP-6000」、「HP-6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.01~1:20、より好ましくは1:0.05~1:10、特に好ましくは1:0.1~1:2である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が前記の範囲にある場合、通常は、適度な粘着性が得られる。また、通常は、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化体を得ることができる。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq~5000g/eq、より好ましくは50g/eq~3000g/eq、さらに好ましくは80g/eq~2000g/eq、さらにより好ましくは110g/eq~1000g/eqである。エポキシ当量がこの範囲とある場合、樹脂組成物の硬化体の架橋密度を高めることができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
エポキシ樹脂の量は、良好な機械強度及び絶縁信頼性を示す硬化体層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは12質量%以下である。なお、本明細書において、樹脂組成物中の各成分の量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値を表す。
エポキシ樹脂の量は、良好な機械強度及び絶縁信頼性を示す硬化体層を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは13質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。「樹脂成分」とは、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、無機充填材を除いた成分をいう。
樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、その樹脂組成物は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して、樹脂組成物を硬化させる機能を有する。硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アミン系硬化剤などが挙げられる。中でも、高い封止性能を有する硬化体層を得やすいことから、活性エステル系硬化剤及びフェノール系硬化剤が好ましく、フェノール系硬化剤が特に好ましい。また、硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「EXB-9416-70BK」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、硬化体層と導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「MH-700」等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218g/eq.)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218g/eq.)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218g/eq.);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217g/eq.)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217g/eq.);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432g/eq.)等が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216g/eq.)、V-05(カルボジイミド基当量:262g/eq.)、V-07(カルボジイミド基当量:200g/eq.);V-09(カルボジイミド基当量:200g/eq.);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302g/eq.)が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:10の範囲が好ましく、1:0.05~1:5がより好ましく、1:0.1~1:3がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化体の耐熱性がより向上する。
硬化剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填材を含んでいてもよい。無機充填材の材料としては、無機化合物を用いうる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填材の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
無機充填材の比表面積としては、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定しうる。
無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
無機充填材の量(体積%)は、樹脂組成物の硬化体の誘電正接を低くする観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100体積%に対して、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上である。また、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下、さらに好ましくは60体積%以下である。
無機充填材の量(質量%)は、樹脂組成物の硬化体の誘電正接を低くする観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは86質量%以下である。
樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」、四国化成工業社製の「1B2PZ」(1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)、等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
硬化促進剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
樹脂組成物は、必要に応じて、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは38000以上、より好ましくは40000以上、さらに好ましくは42000以上である。上限は、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下である。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
樹脂組成物は、必要に応じて、エラストマーを含んでいてもよい。エラストマーを含む樹脂組成物を用いる場合、硬化体層の反りを効果的に抑制できる。エラストマーは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
エラストマーとしては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂が好ましい。中でも、ポリブタジエン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、またはポリカーボネート構造から選択される1種または2種以上の構造を有する樹脂がより好ましい。更には、ポリブタジエン構造、及びポリアルキレンオキシ構造から選択される1以上の構造を有する樹脂が更に好ましく、ポリブタジエン構造を有する樹脂が特に好ましい。「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレート並びにそれらの組み合わせを包含する用語である。これらの構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
エラストマーは、硬化体層の反りを低下させる観点から、高分子量であることが好ましい。エラストマーの数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは3000以上、5000以上である。上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下である。数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
エラストマーは、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させて剥離強度を高めるという観点から、エポキシ樹脂と反応し得る官能基を有することが好ましい。エポキシ樹脂と反応し得る官能基には、加熱によって現れる官能基が包含される。
好適な一実施形態において、エポキシ樹脂と反応し得る官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。中でも、当該官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基がより好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。ただし、官能基としてエポキシ基を含む場合、数平均分子量(Mn)は、5,000以上であることが好ましい。
エラストマーの好適な実施形態は、ポリブタジエン構造を含有する樹脂であり、ポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂をポリブタジエン樹脂という。
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。一実施形態として、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)、フェノール性水酸基含有ブタジエン等が挙げられる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
エラストマーの好適な実施形態は、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂である。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂をポリ(メタ)アクリル樹脂という。ポリ(メタ)アクリル樹脂としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
エラストマーの好適な実施形態は、ポリカーボネート構造を含有する樹脂である。ポリカーボネート構造を含有する樹脂をポリカーボネート樹脂という。ポリカーボネート樹脂としては、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、エラストマーの他の実施形態としては、シロキサン構造を含有する樹脂である。シロキサン構造を含有する樹脂をシロキサン樹脂という。シロキサン樹脂としては、例えば、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
エラストマーの他の実施形態としては、アルキレン構造、アルキレンオキシ構造を含有する樹脂である。アルキレン構造を含有する樹脂をアルキレン樹脂といい、アルキレンオキシ構造を含有する樹脂をアルキレンオキシ樹脂という。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造がさらに好ましい。アルキレン樹脂、アルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
エラストマーの他の実施形態としては、イソプレン構造を含有する樹脂である。イソプレン構造を含有する樹脂をイソプレン樹脂という。イソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
エラストマーの他の実施形態としては、イソブチレン構造を含有する樹脂である。イソブチレン構造を含有する樹脂をイソブチレン樹脂という。イソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
エラストマーの量は、最低溶融粘度が低い樹脂組成物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは21質量%以下である。また、エラストマーの量が前記範囲にある場合、通常は、誘電正接及び導体層に対しての密着性に優れ、反りを抑制可能な硬化体層が得られる。
エラストマーの量は、最低溶融粘度が低い樹脂組成物を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは62質量%以下である。また、エラストマーの量が前記範囲にある場合、通常は、誘電正接及び導体層に対しての密着性に優れ、反りを抑制可能な硬化体層が得られる。
樹脂組成物は、上述した成分以外に、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、難燃剤;ゴム粒子等の有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;顔料等の着色剤;特開2019-044128号公報に記載のマレイミド化合物;特開2018-168354号公報に記載の両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー;が挙げられる。任意の成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよいが、その量は少ないことが好ましい。樹脂組成物に含まれる溶剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。中でも、樹脂組成物は、溶剤を含まないことが特に好ましい。
[5.半導体装置の用途]
上述した製造方法によれば、硬化体層を含む半導体装置を製造できる。このように硬化体層を含む半導体装置としては、例えば、プリント配線板、半導体チップパッケージ、マルチチップパッケージ、パッケージオンパッケージ、ウェハレベルパッケージ、パネルレベルパッケージ、システムインパッケージ等が挙げられる。これらの半導体装置において、硬化体層は、例えば、絶縁層又は封止層として機能できる。
こうして製造された半導体装置は、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)、及び、乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)などの用途に好適に用いうる。
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
[評価方法]
(樹脂組成物層の溶融粘度の測定方法)
樹脂組成物の溶融粘度は、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を使用して測定した。具体的には、試料である樹脂組成物1gについて、直径18mmの円形のパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ5degの条件にて溶融粘度を測定した。こうして得られた測定結果から、目的とする測定温度(100℃)での溶融粘度を読み取った。
(支持フィルムの密着力FA及びFBの測定方法)
実施例及び比較例で製造した樹脂シートの樹脂組成物層と第一支持フィルムとの間の密着力FAは、下記の方法で測定した。
実施例又は比較例で製造した樹脂シートから、第二支持フィルムを剥がし、第一支持フィルム及び樹脂組成物層を備える複層フィルムを得た。
FR4銅張積層板から銅箔を除去して、基材(厚さ0.8mm、伸和プリント工業社製)を用意した。この基材の片面全面に、両面テープ(ニチバン社製「ナイスタック」)を貼り付けた。この両面テープと、複層フィルムの樹脂組成物層とを、ボイドなく均一な圧力で接着して、積層基材を得た。得られた積層基材を、幅27mm、長さ100mmにカットして、測定試料を得た。第一支持フィルムの一端を剥がして、つかみ具で掴んだ。そして、室温(23℃)下、50mm/分の速度で、つかみ具で垂直方向に引っ張って支持体を30mm引き剥がした時の平均荷重を測定し、密着力FAを求めた。測定には、引っ張り試験機(TSE社製「AC-50C-SL」)を使用した。
実施例及び比較例で製造した樹脂シートの樹脂組成物層と第二支持フィルムとの間の密着力FBは、第一支持フィルムと第二支持フィルムとを入れ替えたこと以外は、上述した樹脂組成物層と第一支持フィルムとの間の密着力FAの測定方法と同じ方法により、測定した。
(保管後の支持フィルムの浮きの評価方法)
実施例及び比較例で製造した長尺の樹脂シートをロール状に巻き取り、23℃で24時間保管した。保管後にロールから樹脂シートを33cm引き出し、カットして、正方形(縦33cm×横33cm)の評価用シートを用意した。評価用シートを観察して、第一支持フィルム又は第二支持フィルムが樹脂組成物層から離隔する浮きが前記のカットによって生じたかどうかを、下記の基準で評価した。
「A」:浮きが生じない。
「B」:評価用シートの端部のみに、第一支持フィルム又は第二支持フィルムの浮きが、僅かに生じる。
「C」:評価用シートの全体で、第一支持フィルム又は第二支持フィルムの浮きが、著しく生じる。
(支持フィルムの剥がしやすさの評価方法)
実施例及び比較例で製造した長尺の樹脂シートをカットして、正方形(縦33cm×横33cm)の評価用シートを得た。この評価用シートの第一支持フィルム及び第二支持フィルムを剥がして、樹脂組成物層のみのシートを得ることを試みた。この際、第一支持フィルム及び第二支持フィルムの剥がしやすさを下記の基準で評価した。
「良」:樹脂組成物層から、第一支持フィルム及び第二支持フィルムの両方を剥がせる。
「不良」:第一支持フィルム及び第二支持フィルムの少なくとも一方が、剥がせない。
(硬化体層の凹凸の評価)
実施例及び比較例で得られた成型体(即ち、評価基板、及び、樹脂組成物の硬化体で形成された硬化体層を備える成型体)の硬化体層の表面を観察して、凹凸の有無を調べた。凹凸がない場合は「良」と判定し、凹凸がある場合は「不良」と判定した。
(金型の汚れの評価)
圧縮成型後、金型を観察して、キャビティ外の部分での樹脂組成物の付着の有無を調べた。樹脂組成物の付着がない場合は「良」と判定し、樹脂組成物の付着がある場合は「不良」と判定した。
[製造例1.エラストマーAの製造]
反応容器に、2官能性ヒドロキシ基末端ポリブタジエン(日本曹達社製「G-3000」、数平均分子量=3000、ヒドロキシ基当量=1800g/eq.)69gと、芳香族炭化水素系混合溶剤(出光石油化学社製「イプゾール150」)40gと、ジブチル錫ラウレート0.005gとを入れ、混合して均一に溶解させた。均一になったところで60℃に昇温し、更に撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製「IPDI」、イソシアネート基当量=113g/eq.)8gを添加し、約3時間反応を行った。
次いで反応物に、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、水酸基当量=117g/eq.)23gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)60gとを添加し、攪拌しながら150℃まで昇温し、約10時間反応を行った。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温した。そして、反応物を100メッシュの濾布で濾過して、ブタジエン構造及びフェノール性水酸基を有するエラストマー(フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂:不揮発成分50質量%)を得た。エラストマーAの数平均分子量は5900、ガラス転移温度は-7℃であった。
[実施例1]
(1-1.樹脂ワニスの製造)
エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品(質量比)、エポキシ当量:169g/eq.)21部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000L」、エポキシ当量215g/eq.)30部、両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー(Dow Chemical Co.製「Fortegra100」)3部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理した球形シリカ(平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g、アドマテックス社製「SO-C2」)380部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105g/eq.、DIC社製「TD2090-60M」、固形分60質量%のMEK溶液)8.3部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)16.6部、メチルエチルケトン30部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」)0.3部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂ワニス1を調製した。
(1-2.樹脂シートの製造及び評価)
第一支持フィルムとして、表面に離型層を備えた長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この第一支持フィルムの離型層上に、前記の樹脂ワニス1を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが200μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂ワニス1を80℃~120℃(平均100℃)で乾燥して、第一支持フィルム上に樹脂組成物層を得た。前記の乾燥は、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の100℃における溶融粘度が10000poiseとなるように行った。具体的には、乾燥の程度を調整することによって、乾燥後に樹脂組成物層に残留する溶剤の量を調整して、当該樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の溶融粘度を調整した。これ以降に説明する実施例及び比較例でも同様である。
得られた樹脂組成物層に、第二支持フィルムとして、表面に離型層を備えた長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「E7007」、厚さ50μm)を貼り合わせて、第一支持フィルム、樹脂組成物層及び第二支持フィルムをこの順で備える長尺の樹脂シートを得た。この樹脂シートについて、上述した方法により、支持フィルムの密着力、支持フィルムの保管後の浮き、及び、支持フィルムの剥がしやすさを評価した。
(1-3.圧縮成型)
縦320mm、横320mmの主面を有する、厚さ1.1mmのガラスパネルを用意した。このガラスパネルの主面全体に、前記主面と同じサイズの熱剥離シート(日東電工社製「リバアルファNo.3195V」)を、仮固定材として貼り合わせた。その後、熱剥離シート上に、縦20mm×横20mmのシリコンチップを搭載し、評価基板を得た(工程(I))。
前記の樹脂シートを四角形に切り出した(工程(II))。切り出された樹脂シートの第二支持フィルムを剥がして、樹脂組成物層の片面で非被覆状態を得た。この樹脂組成物層を、評価基板上に配置して、評価基板、樹脂組成物層及び第一支持フィルムをこの順に備える積層体を得た。前記の配置は、樹脂組成物層の非被覆状態の面が、評価基板のシリコンチップが搭載された面に接するように、行った。その後、ハンドローラーで、積層体の第一支持フィルム側の面を押圧して、樹脂組成物層と評価基板とを仮付けした。第一支持フィルムを剥離して、樹脂組成物層のもう片面で、非被覆状態を得た。これにより、評価基板上に、四角形の樹脂組成物層(縦292mm×横292mm)が設けられた(工程(III))。
図1に示すように、金型としての第一型110及び第二型120を備える圧縮成型装置100を用意した。第二型120の第一型110に対向する側には、正方形の開口部(縦300mm、横300mm、面積90000mm2)を有するキャビティ130が形成されていた。図4に示すように、樹脂組成物層310が配置された評価基板200を、型閉じされた場合に樹脂組成物層310をキャビティ130に収められるように、第一型110に設置した。その後、第一型110及び第二型120を型閉じし、キャビティ130内を加圧して、圧縮成型を実施した。前記の圧縮成型は、金型温度120℃、圧力8MPa、キュアタイム8分の条件で行った。
圧縮成型後、型開きして、評価基板、及び、樹脂組成物の硬化体で形成された硬化体層を備える成型体を得た。得られた成型体の硬化体層の凹凸、及び、金型の汚れを、上述した方法によって評価した。
[実施例2]
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」、エポキシ当量276g/eq.)1部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169g/eq.)5部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g、アドマテックス社製「SO-C2」)65部、エラストマーAを20部、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-689」)4部、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq)3部、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.05部、及びメチルエチルケトン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス2を作製した。
こうして得られた樹脂ワニス2、樹脂ワニス1の代わりに用いた。
また、第一支持フィルム上に塗布された樹脂ワニス2の乾燥の程度を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の100℃における溶融粘度が80000poiseとなるように変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、樹脂シートの製造及び評価、並びに、圧縮成型による成型体の製造及び評価を行った。
[実施例3]
第一支持フィルム上に塗布された樹脂ワニス1の乾燥の程度を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の100℃における溶融粘度が3000poiseとなるように変更した。
また、第二支持フィルムを、粗化処理を施された粗面と粗化処理を施されていない平滑面とを有する長尺のポリプロピレンカバーフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚さ15μm)に変更した。実施例3では、樹脂組成物層と前記の平滑な面とが接するように、樹脂組成物層及び前記ポリプロピレンカバーフィルムの貼り合わせを行った。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、樹脂シートの製造及び評価、並びに、圧縮成型による成型体の製造及び評価を行った。
[実施例4]
第一支持フィルムを、粗化処理を施された粗面と粗化処理を施されていない平滑面とを有する長尺のポリプロピレンカバーフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚さ15μm)に変更した。実施例4では、前記ポリプロピレンカバーフィルムの粗面上に樹脂ワニス1の塗布を行った。
また、第一支持フィルム上に塗布された樹脂ワニス1の乾燥の程度を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の100℃における溶融粘度が2000poiseとなるように変更した。
さらに、第二支持フィルムを、表面にシリコーン系離型層を備えた長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「E7006」、厚さ50μm)に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、樹脂シートの製造及び評価、並びに、圧縮成型による成型体の製造及び評価を行った。
[実施例5]
第一支持フィルム上に塗布された樹脂ワニス1の乾燥の程度を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の100℃における溶融粘度が2000poiseとなるように変更した。
また、第二支持フィルムを、表面に離型層を備えた長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、樹脂シートの製造及び評価、並びに、圧縮成型による成型体の製造及び評価を行った。
[実施例6]
第一支持フィルムを、表面にシリコーン系離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「E7006」、厚さ50μm)に変更した。
また、第二支持フィルムを、表面に離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業社製「フィルムバイナKF」、厚さ38μm)に変更した。
以上の事項以外は、実施例2と同じ方法により、樹脂シートの製造及び評価、並びに、圧縮成型による成型体の製造及び評価を行った。
[比較例1]
第一支持フィルムを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚さ38μm)に変更した。
また、第一支持フィルム上に塗布された樹脂ワニス2の乾燥の程度を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の100℃における溶融粘度が50000poiseとなるように変更した。
さらに、第二支持フィルムを、表面にシリコーン系離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「E7006」、厚さ50μm)に変更した。
以上の事項以外は、実施例2と同じ方法により、樹脂シートの製造及び評価を行った。さらに、製造された樹脂シートを用いて圧縮成型による成型体の製造を行おうとしたが、第一支持フィルムを剥がす際に樹脂組成物層が破損したので、圧縮成型を実施できなかった。
[比較例2]
第一支持フィルム上に塗布された樹脂ワニス1の乾燥の程度を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の100℃における溶融粘度が500poiseとなるように変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、樹脂シートの製造及び評価を行った。さらに、製造された樹脂シートを用いて圧縮成型による成型体の製造を行おうとしたが、第一支持フィルムを剥がす際に樹脂組成物層が破損したので、圧縮成型を実施できなかった。
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
[検討]
比較例1では、第一支持フィルムと樹脂組成物層との密着力FAが強すぎた。そのため、第一支持フィルムを剥がしたところ、剥がれた第一支持フィルムに樹脂組成物層の一部が付着し、樹脂組成物層が破損した。したがって、圧縮成型法による成型体の製造が行えなかった。
比較例2では、樹脂組成物層が柔らかく、コシが弱かった。すなわち、樹脂組成物層の剛性が不十分であった。よって、樹脂組成物層の機械的強度が低いので、第一支持フィルムを剥がしたところ、剥がれた第一支持フィルムに樹脂組成物層の一部が付着し、樹脂組成物層が破損した。したがって、圧縮成型法による成型体の製造が行えなかった。
これに対し、実施例では、いずれも、樹脂シートから第一支持フィルム及び第二支持フィルムを剥がして樹脂組成物層が得られたので、その樹脂組成物層を用いた圧縮成型法により成型体の製造が可能であった。得られた成型体の硬化体層には、第一支持フィルム及び第二支持フィルムの食い込みが生じないので、凹凸の形成は無かった。また、前記の圧縮成型では、金型のキャビティ外に樹脂組成物層が接触しないので、樹脂組成物の付着による金型の汚れは生じなかった。よって、本発明の半導体装置の製造方法によれば、硬化体層における凹凸の形成を抑制でき、且つ、樹脂組成物の流出による型の汚れを抑制できることが確認された。
ただし、実施例6では、樹脂シートを保存した場合に、樹脂シートの全体において、第二支持フィルムと樹脂組成物層とが部分的に離隔して浮きを生じることが観察された。よって、実施例6の結果から、本発明の製造方法に適用するための樹脂シートには、支持フィルムと樹脂組成物層との密着力、及び、それら密着力と樹脂組成物層の溶融粘度との関係に、式(1)~式(3)に示される好適な条件が存在することが確認できる。