以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る希ガス回収システムを示す図である。この希ガス回収システムは、基板(例えば、ウェハ)に対してエッチング処理が行われる製造装置(例えば、半導体製造装置)のプロセスチャンバに供給された希ガスを回収して、再利用するために使用される。
図1に示すように、希ガス回収システムは、半導体製造装置のプロセスチャンバ1に連結される真空ポンプユニット3と、該真空ポンプユニット3の下流側に配置され、真空ポンプユニット3に連結される排ガス処理装置5と、排ガス処理装置5の下流側に配置され、排ガス処理装置5に連結されるガス分離ユニット7と、を備える。
真空ポンプユニット3は、プロセスチャンバ1を真空排気するために設けられる。本実施形態では、真空ポンプユニット3は、プロセスチャンバ1内に高真空を形成するためのターボ分子ポンプ10と、該ターボ分子ポンプ10に連結されるドライポンプ11とを備えている。ドライポンプ11は、例えば、容積式真空ポンプである。ターボ分子ポンプ10とドライポンプ11は直列に配列されている。ターボ分子ポンプ10の吸込管47は、プロセスチャンバ1に連結されており、ターボ分子ポンプ10の吐出管48は、ドライポンプ11の吸込口に連結される。ドライポンプ11の吐出管49は、後述する排ガス処理装置5に連結される。本実施形態では、ターボ分子ポンプ10の吸込管47は真空ポンプユニット3の吸込管として機能し、ドライポンプ11の吐出管49は真空ポンプユニット3の吐出管として機能する。
図1に示される真空ポンプユニット3のドライポンプ11は、大気圧下で動作することが可能に構成されており、ドライポンプ11は、プロセスチャンバ1から大気を排出するための粗引きポンプとしても機能する。ドライポンプ11には、プロセスチャンバ1から延びる粗引きライン28が接続されており、大気放出管29がドライポンプ11の吐出管49から分岐している。プロセスチャンバ1から大気を排出すべきとき(例えば、プロセスチャンバ1のメンテナンス後)は、真空ポンプユニット3のドライポンプ11が駆動され、プロセスチャンバ1内の大気が粗引きライン28を通してドライポンプ11に吸い込まれる。ドライポンプ11に吸い込まれた大気は、吐出管49および大気放出管29を通って、希ガス回収システムから排出される。
プロセスチャンバ1内に載置された基板(図示せず)に対してエッチング処理を行うときは、真空ポンプユニット3によってプロセスチャンバ1を真空排気し、このプロセスチャンバ1にプロセスガス、不活性ガス、および希ガスが供給される。図1に示される希ガス回収システムは、後述する希ガスタンク32を備えており、プロセスチャンバ1に供給される希ガスは、希ガスタンク32に貯蔵されている。同様に、希ガス回収システムは、後述する不活性ガスタンク52を備えており、プロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3に供給される不活性ガスは、不活性ガスタンク52に貯蔵されている。
本実施形態では、プロセスチャンバ1には、四フッ化炭素(CF4)、酸素(O2)、不活性ガスである窒素(N2)、および希ガスであるキセノン(Xe)が供給される。四フッ化炭素および酸素は、プロセスチャンバ1に接続されたプロセスガスライン2を介して該プロセスチャンバ1に供給される。キセノンは、プロセスガス(四フッ化炭素、酸素)のエッチング能力を向上させるアシストガスとして希ガスタンク32からプロセスチャンバ1に供給される。プロセスガス、希ガス、および不活性ガスが供給されたプロセスチャンバ1内にプラズマを発生させることにより、基板がエッチングされる。エッチング処理中の基板を冷却するために、希ガスタンク32からプロセスチャンバ1にキセノン(希ガス)を供給してもよい。
プロセスガスが導入されたプロセスチャンバ1で基板のエッチング処理を実行すると、プロセスチャンバ1内には複数の副生成物が生成される。図1に示されるプロセスチャンバ1内に生成される副生成物は、四フッ化珪素(SiF4)、フッ素(F2)、フッ化カルボニル(COF2)、および二酸化珪素(SiO2)が想定される。プロセスチャンバ1に供給された窒素(不活性ガス)およびキセノン(希ガス)は、エッチング処理における反応で消費されない。真空ポンプユニット3は、上記副生成物だけでなく、未反応のプロセスガス、窒素およびキセノンもプロセスチャンバ1から排出して、プロセスチャンバ1内を低圧に維持する。
真空ポンプユニット3のターボ分子ポンプ10とドライポンプ11には、軸シールのためのパージガスとして不活性ガスが供給される。本実施形態では、ターボ分子ポンプ10およびドライポンプ11に供給される不活性ガスは、後述する不活性ガスタンク52に貯蔵されている。本実施形態では、ターボ分子ポンプ10およびドライポンプ11に供給される不活性ガスは、窒素であり、プロセスチャンバ1に供給される不活性ガスと同一である。
プロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3から排出される排出流は、真空ポンプユニット3に供給されたパージガス、およびプロセスチャンバ1で生成された副生成物も含んでいる。したがって、この排出流は固体成分(例えば、二酸化珪素)を含んでいるが、本明細書では、この排出流を排ガスと称する。
図1に示されるように、排ガス処理装置5は、真空ポンプユニット3の下流側に配置されており、ドライポンプ11の吐出管49(すなわち、真空ポンプユニット3の吐出管)に連結される。排ガス処理装置5は、真空ポンプユニット3から排出された排ガスから、希ガスおよび不活性ガス以外の成分を除去するために用いられる。より具体的には、排ガス処理装置5は、排ガスに含まれる希ガスおよび不活性ガス以外のガス成分を除去するためのガス処理部5Aと、排ガスに含まれる固体成分(例えば、二酸化珪素)を除去するフィルタ部5Bを有している。排ガスに含まれる有害ガスおよび固体成分は、排ガス処理装置5によって除去される。フィルタ部5Bはガス処理部5Aの下流側に配置されているが、フィルタ部5Bをガス処理部5Aの上流側に配置してもよい。
排ガス処理装置5のガス処理部5Aは、排ガスに含まれる希ガスおよび不活性ガス以外のガス成分を除去するための少なくとも一つのガス処理ユニットを備える。ガス処理ユニットは、例えば、排ガスに含まれるガス成分を燃焼して酸化分解する燃焼式除害ユニット、排ガスに含まれるガス成分をヒータにより加熱して分解するヒータ式除害ユニット、触媒により排ガスに含まれるPFCs(パーフルオロコンパウンズ)ガスなどのフッ素化合物を分解する触媒式除害ユニット、およびアルカリ剤、合成ゼオライト、金属酸化物などの吸着剤に排ガスに含まれるガス成分を化学吸着または物理吸着する乾式除害ユニットである。真空ポンプユニット3から排出される排ガスに含まれるガス成分に応じて、複数のガス処理ユニットをガス処理部5Aに配置することができる。
図1に示される排ガス処理装置5のガス処理部5Aは、フッ素化合物を排ガスから除去する触媒式除害ユニット14、一酸化炭素および二酸化炭素を排ガスから除去する第1乾式除害ユニット15、および酸素を排ガスから除去する第2乾式除害ユニット16を備えている。触媒式除害ユニット14、第1乾式除害ユニット15、および第2乾式除害ユニット16は、この順に直列に配列されている。
触媒式除害ユニット14は、真空ポンプユニット3のドライポンプ11に連結されており、ドライポンプ11から吐出された(すなわち、真空ポンプユニット3から排出された)排ガスは、触媒式除害ユニット14に導入される。真空ポンプユニット3から排出された排ガスに含まれるフッ素化合物は、四フッ化炭素、四フッ化珪素、フッ素、およびフッ化カルボニルである。四フッ化炭素は、未反応のプロセスガスであり、四フッ化珪素、フッ素、およびフッ化カルボニルは、プロセスチャンバ1で基板をエッチングしたときに生成される副生成物である。
触媒式除害ユニット14は、フッ素化合物を除去するための処理剤が充填される処理槽14aを有している。処理槽14aに充填された処理剤は、カルシウム化合物などを含んでおり、高温(例えば、700℃以上)に加熱される。触媒式除害ユニット14は、高温に加熱された処理剤にフッ素化合物を接触させることにより、フッ素化合物からフッ化カルシウム(CaF2)を生成して、このフッ化カルシウムを処理剤に固定する。排ガスがこの触媒式除害ユニット14の処理槽14aを通過すると、排ガスからフッ素化合物が除去される一方で、副生成物として一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)が生成される。したがって、触媒式除害ユニット14を通過した後の排ガスは、酸素(未反応のプロセスガス)、キセノン(希ガス)、窒素(不活性ガス)、一酸化炭素、および二酸化炭素を含んでいる。
触媒式除害ユニット14から排出された排ガスに含まれる一酸化炭素および二酸化炭素を除去するために、第1乾式除害ユニット15が設けられている。第1乾式除害ユニット15は、触媒式除害ユニット14に連結されており、触媒式除害ユニット14から排出された排ガスは、第1乾式除害ユニット15に導入される。第1乾式除害ユニット15は、一酸化炭素および二酸化炭素を除去するための吸着剤が充填される吸着槽15aを有している。吸着槽15aに充填された吸着剤は、アルカリ剤および合成ゼオライトを含んでいる。排ガスがこの第1乾式除害ユニット15の吸着槽15aを通過すると、排ガスに含まれる一酸化炭素および二酸化炭素が吸着剤に化学吸着および物理吸着される。したがって、一酸化炭素および二酸化炭素が排ガスから除去されるので、第1乾式除害ユニット15を通過した後の排ガスは、酸素(未反応のプロセスガス)、キセノン(希ガス)、および窒素(不活性ガス)を含んでいる。
本実施形態では、排ガス処理装置5は、触媒式除害ユニット14と第1乾式除害ユニット15との間に配置された熱交換器17を有している。熱交換器17には、冷却液(例えば、冷却水)が供給され、この熱交換器17によって、触媒式除害ユニット14から排出された排ガスの温度を低下させることができる。図示した例では、熱交換器17は、触媒式除害ユニット14から第1乾式除害ユニット15まで延びる配管を流れる排ガスの温度を低下させる。
上述したように、触媒式除害ユニット14の処理槽14aに充填された処理剤は高温に加熱されるため、触媒式除害ユニット14から排出される排ガスの温度が上昇する。第1乾式除害ユニット15に、高温の排ガスが供給されると、第1乾式除害ユニット15の吸着槽15aで除去された一酸化炭素および二酸化炭素が吸着剤から脱離するおそれがある。さらに、高温の排ガスが後述する昇圧ポンプ27,51に到達する場合は、該昇圧ポンプ27,51が破損するおそれがある。そのため、熱交換器17を用いて、触媒式除害ユニット14から排出された排ガスの温度を低下させることが好ましい。
第1乾式除害ユニット15から排出された排ガスに含まれる酸素を除去するために、第2乾式除害ユニット16が設けられている。第2乾式除害ユニット16は、第1乾式除害ユニット15に連結されており、第1乾式除害ユニット15から排出された排ガスは、第2乾式除害ユニット16に導入される。第2乾式除害ユニット16は、酸素を除去するための脱酸素剤が充填された吸着槽16aを有している。脱酸素剤は、金属酸化物を還元処理することにより製造することができる。脱酸素剤として、ニッケル触媒(Ni触媒)を使用してもよい。排ガスがこの第2乾式除害ユニット16の吸着槽16aを通過すると、排ガスに含まれる酸素が脱酸素剤に吸着される。したがって、酸素が排ガスから除去されるので、第2乾式除害ユニットを通過した後の排ガスは、キセノン(希ガス)および窒素(不活性ガス)を含んでいる。このように、ガス処理部5Aを排ガスが通過すると、キセノン(希ガス)および窒素(不活性ガス)以外のガス成分が排ガスから除去される。
希ガス回収システムの通常運転時には、冷却液が上記熱交換器17に供給され、触媒式除害装置14から排出される排ガスの温度を低下させる。一方で、希ガス回収システムの始動時には、熱交換器17への冷却液の供給を停止するのが好ましい。これにより、触媒式除害ユニット14で加熱された排ガスが第1乾式除害ユニット15および第2乾式除害ユニット16に流れ、第1乾式除害ユニット15の吸着槽15aおよび第2乾式除害ユニット16の吸着槽16aに含まれる水分および大気を効率良く排ガス処理装置5から排出することができる。その結果、希ガス回収システムの立ち上げ時間を短縮することができる。
図示はしないが、上記触媒式除害ユニット14から排出される排ガスの温度を低下させるために、触媒式除害ユニット14に冷却水を供給してもよい。触媒式除害ユニット14に供給された冷却水は、処理槽14aから排出された排ガスに直接接触して、該排ガスの温度を低下させる。この場合、触媒式除害ユニット14から排出される排ガスには、水分が含まれるが、この水分を、第1乾式除害ユニット15の吸着槽15aに充填された吸着剤および/または第2乾式除害ユニット16の吸着槽16aに充填された吸着剤に吸着させることができる。
ガス処理部5Aで希ガスおよび不活性ガス以外のガス成分を排ガスから除去することができれば、ガス処理部5Aの構成は、上述した実施形態の構成に限定されない。例えば、触媒式除害ユニット14の代わりに、燃焼式除害ユニットまたはヒータ式除害ユニットをガス処理部5Aに配置してもよい。ガス処理部5Aが燃焼式除害ユニットを有する場合は、燃焼式除害ユニットで、フッ化水素(HF)、一酸化炭素、二酸化炭素、および窒素酸化物(NOx)が副生成物として生成される。フッ化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および窒素酸化物は、燃焼式除害ユニットの下流側に配置された第1乾式除害ユニット15の吸着剤および/または第2乾式除害ユニット16の吸着剤に化学吸着および/または物理吸着される。したがって、フッ化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および窒素酸化物を排ガスから除去することができる。
燃焼式除害ユニットから排出される排ガスの温度を低下させるために、排ガス処理装置5は、燃焼式除害ユニットと第1乾式除害ユニット15との間に配置される上記熱交換器17を有していてもよいし、冷却水を燃焼式除害ユニットに供給してもよい。燃焼式除害ユニットに冷却水が供給される場合は、燃焼式除害ユニットから排出される排ガスには、水分が含まれるが、この水分を、第1乾式除害ユニット15の吸着剤および/または第2乾式除害ユニット16の吸着剤に吸着させることができる。
ヒータ式除害ユニットが触媒式除害ユニット14の代わりにガス処理部5Aに配置される場合も、ヒータ式除害ユニットで生成された副生成物を、ヒータ式除害ユニットの下流側に配置された第1乾式除害ユニット15の吸着剤および/または第2乾式除害ユニット16の吸着剤に化学吸着および/または物理吸着させることができる。ヒータ式除害ユニットから排出される排ガスの温度を低下させるために、排ガス処理装置5は、ヒータ式除害ユニットと第1乾式除害ユニット15との間に配置される上記熱交換器17を有していてもよいし、冷却水を燃焼式除害ユニットに供給してもよい。冷却水がヒータ式除害ユニットに供給される場合は、排ガスに含まれる水分をヒータ式除害ユニットの下流側に配置された第1乾式除害ユニット15の吸着剤および/または第2乾式除害ユニット16の吸着剤に吸着させることができる。
本実施形態では、排ガス処理装置5は、排ガスに含まれる固体成分を除去するフィルタ部5Bを有しており、フィルタ部5Bはガス処理部5Aの下流側に配置されている。フィルタ部5Bは、フィルタユニット18を有しており、フィルタユニット18はガス処理部5Aの第2乾式除害ユニット16に連結されている。第2乾式除害ユニット16(すなわち、ガス処理部5A)から排出された排ガスは、フィルタ部5Bのフィルタユニット18に導入される。排ガスがフィルタユニット18を通過すると、排ガスに含まれる固体成分である二酸化珪素が排ガスから除去される。したがって、排ガス処理装置5は、真空ポンプユニット3から排出された排ガスからキセノン(希ガス)および窒素(不活性ガス)以外の成分を除去することができる。
上記フィルタ部5Bは、ガス処理部5Aの下流側で、かつ後述する昇圧ポンプ27の上流側に配置されるのが好ましい。フィルタ部5Bがガス処理部5Aを通過した排ガスに含まれる固体成分を除去することにより、昇圧ポンプ27の破損を防止することができる。
図示はしないが、排ガスから希ガスおよび不活性ガス以外のガス成分を確実に除去するために、フィルタ部5Bにガス処理ユニットを設けてもよい。このガス処理ユニットは、好ましくは、フィルタユニット18の上流側に配置される。ガス処理ユニットは、ガス処理部5Aのバックアップ用に設けられる。すなわち、ガス処理部5Aが希ガスおよび不活性ガス以外のガス成分を完全に除去できなかった場合に、フィルタ部5Bに配置されたガス処理ユニットがガス処理部5Aを通過した希ガスおよび不活性ガス以外のガス成分を除去する。ガス処理ユニットは、例えば、合成ゼオライトなどを含む吸着剤が充填された吸着槽を有している。この吸着槽に充填された吸着剤によって、ガス処理部5Aを通過した希ガスおよび不活性ガス以外のガス成分(例えば、未反応のプロセスガス、一酸化炭素、二酸化炭素、および酸素)が吸着される。
このように、排ガス処理装置5から排出された排ガスには、希ガスであるキセノンと不活性ガスである窒素のみが含まれる。この排ガスは、排ガス処理装置5の下流側に配置されたガス分離ユニット7に導入される。ガス分離ユニット7は、希ガス導入ライン25を介して排ガス処理装置5に連結される。希ガス導入ライン25は、排ガス処理装置5からガス分離ユニット7まで延びる。
ガス分離ユニット7は、排ガス処理装置5から排出された排ガスに含まれる希ガス(キセノン)と不活性ガス(窒素)とを互いに分離するために設けられる。本実施形態では、ガス分離ユニット7はガス分離膜22を有しており、このガス分離膜22は、希ガスの分子の大きさと不活性ガスの分子の大きさとの違いを利用して、排ガスから希ガスと不活性ガスとを互いに分離する。例えば、不活性ガスの分子の大きさが希ガス分子の大きさよりも小さい場合は、不活性ガスはガス分離膜22を透過できるが、希ガスはガス分離膜22を透過できない。
このガス分離膜22を用いて、排ガスから希ガスと不活性ガスとを互いに分離させるためには、ガス分離膜22に加圧された排ガスを供給する必要がある。そのため、希ガス導入ライン25には、排ガスの圧力を増加させるための昇圧ポンプ27が配置されている。昇圧ポンプ27は、高いシール性能を有するポンプであることが好ましい。このようなポンプの例としては、金属製の密閉式ダイヤフラムを有するベローズポンプが挙げられる。
本実施形態では、排ガス処理装置5から排出された排ガスは、キセノン(希ガス)および窒素(不活性ガス)のみを含んでいる。窒素分子の大きさは、キセノン分子の大きさよりも小さいので、排ガスに含まれる窒素は、ガス分離膜22を透過できる一方で、排ガスに含まれるキセノンは、ガス分離膜22を通過できない。したがって、昇圧ポンプ27によって圧力を増加させた排ガスをガス分離膜22に接触させると、ガス分離膜22を透過した透過ガスとして窒素が排ガスから分離される。キセノンは、ガス分離膜22を透過しない残留ガスとしてガス分離ユニット7から排出される。
ガス分離膜22を用いて、排ガスからキセノンと窒素とを互いに分離させると、ガス分離膜22を透過した透過ガスである窒素の圧力が大気圧まで減少する。一方で、ガス分離膜22を透過しないでガス分離ユニット7から排出された残留ガスであるキセノンの圧力は、ガス分離膜22に供給された排ガスの圧力(すなわち、昇圧ポンプ27によって上昇した排ガスの圧力)とほぼ同じである。ガス分離膜22に供給される排ガスの圧力とガス分離膜22の透過ガスの圧力の差が大きくなるにつれて、排ガスからキセノン(希ガス)と窒素(不活性ガス)とを互いに分離する効率が上昇する。ガス分離膜22に供給される排ガスの圧力を上昇させるために、高い圧縮能力を有する昇圧ポンプ27を用いると、昇圧ポンプ27が大型化するので希ガス回収システムの設置スペースが増大してしまう。
そこで、本実施形態では、ガス分離ユニット7は、残留ガスの流量を調整可能な流量調整器23を有している。この流量調整器23は、例えば、流量調整弁である。流量調整器23によって残留ガスの流量を調整することにより、ガス分離膜22で分離される排ガスの圧力を上昇させることができる。その結果、排ガスからキセノンと窒素とを互いに分離する効率を向上させることができる。
排ガスからキセノンと窒素とを互いに分離する効率を向上させるために、複数のガス分離膜をガス分離ユニット7に配置してもよい。図2は、図1に示されるガス分離ユニット7の変形例を示す模式図である。図2に示されるガス分離ユニット7は、並列に配列された2つのガス分離膜22a,22bを有している点で図1に示したガス分離ユニット7とは異なっている。排ガス処理装置5から排出された排ガスは、ガス分離ユニット7内で2つの排ガス流に分割され、これら排ガス流はガス分離膜22a,22bにそれぞれ供給される。
ガス分離膜22aの下流側には、流量調整器(例えば、流量調整弁)23aが配置され、この流量調整器23aによって、ガス分離膜22aを透過しない残留ガスの流量が調整される。同様に、ガス分離膜22bの下流側には、流量調整器(例えば、流量調整弁)23bが配置され、この流量調整器23bによって、ガス分離膜22bを透過しない残留ガスの流量が調整される。
図2に示されるガス分離ユニット7を用いることにより、図1に示されるガス分離ユニット7と比較して、排ガス処理装置5から排出された排ガスが接触するガス分離膜の面積を増加させることができる。その結果、キセノン(希ガス)と窒素(不活性ガス)とを互いに分離する効率を向上させることができる。ガス分離ユニット7に、3つ以上のガス分離膜を配置してもよい。
ガス分離ユニット7は、上述したガス分離膜22(またはガス分離膜22a,22b)を用いた実施形態に限定されない。例えば、ガス分離ユニット7は、圧力スイング吸着(PSA)法を用いて、希ガスと不活性ガスとを互いに分離するガス分離ユニットであってもよい。あるいは、ガス分離ユニット7は、希ガスと不活性ガスの沸点の差を利用する深冷分離法を用いて、希ガスと不活性ガスとを互いに分離するガス分離ユニットであってもよい。
図1に示されるように、希ガス回収システムは、さらに、ガス分離ユニット7によって排ガスから分離された希ガスをプロセスチャンバ1に戻す希ガスリターンライン30を備える。希ガスリターンライン30は、ガス分離ユニット7からプロセスチャンバ1まで延びる。希ガスリターンライン30には、ガス分離ユニット7によって排ガスから分離された希ガスを貯蔵する希ガスタンク32が配置されている。
希ガスタンク32には、排気ライン33が連結されており、該排気ライン33には、開閉弁34が配置される。排気ライン33には、真空ポンプ(図示せず)が連結されており、排気ライン33を通じて希ガスタンク32を真空排気することができる。開閉弁34は、通常は閉じられている。希ガスタンク32から大気を排気すべきときは、開閉弁34が開かれる。例えば、希ガスタンク32のメンテナンスが終了した後で、開閉弁34を開き、排気ライン33を通じて希ガスタンク32から大気を排出する。希ガスタンク32が真空排気されると、開閉弁34は閉じられる。
希ガスタンク32には、希ガス供給ライン36が連結されており、該希ガス供給ライン36の末端には、希ガス供給源37が接続されている。希ガス供給源37は、例えば、希ガス(本実施形態では、キセノン)が充填されたガスボンベである。さらに、希ガス供給ライン36には、開閉弁38が配置されている。希ガス供給ライン36に配置された開閉弁38を開くことにより、希ガスが希ガス供給源37から希ガスタンク32に供給される。開閉弁38は、通常は閉じられている。希ガスタンク32に希ガスを充填すべきときは、開閉弁38が開かれる。例えば、排気ライン33を通じて希ガスタンク32を真空排気し、開閉弁34を閉じた後で、開閉弁38を開く。これにより、希ガスと大気とが混合されることなく、希ガスを希ガスタンク32に充填することができる。希ガスが所定の圧力まで希ガスタンク32に充填されると、開閉弁38が閉じられる。
希ガスタンク32に充填されたキセノンは、基板のエッチング処理時にプロセスチャンバ1に供給される。図1に示されるように、ガスボックス40を希ガスリターンライン30に配置してもよい。ガスボックス40は、希ガスタンク32の下流側に配置される。このガスボックス40は、例えば、プロセスチャンバ1に供給されるキセノン(希ガス)の流量を調整する流量調整ユニットとして用いられる。この場合、ガスボックス40は、例えば、減圧弁、流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)などを備える。プロセスチャンバ1で基板をエッチングするときは、ガスボックス40内で流量が調整されたキセノンをプロセスチャンバ1に供給する。
プロセスチャンバ1に供給された希ガスは、真空ポンプユニット3によりプロセスチャンバ1から排出され、さらに、排ガス処理装置5を通ってガス分離ユニット7に供給される。ガス分離ユニット7で排ガスから分離された希ガスは、希ガスリターンライン30を通って、希ガスタンク32に貯蔵される。希ガスタンク32に貯蔵された希ガスは、ガスボックス40を介してプロセスチャンバ1に戻され、基板のエッチング処理に再利用される。
一実施形態では、酸素検知器(図示せず)を、希ガス導入ライン25または希ガスリターンライン30に(すなわち、排ガス処理装置5とプロセスチャンバ1との間に)配置してもよい。酸素検知器は、排ガス処理装置5から排出される排ガスに含まれる酸素の濃度をモニタする装置として機能する。この酸素検知器で、希ガス導入ライン25または希ガスリターンライン30を流れる排ガス中の酸素濃度をモニタすることにより、プロセスチャンバ1に所定濃度以上の酸素が混入することを防止することができる。
このように、本実施形態に係る希ガス回収システムは、プロセスチャンバ1から排出された排ガスに含まれる希ガスを該排ガスから分離し、この分離された希ガスを再度プロセスチャンバ1に戻す希ガス循環システムとして構成される。したがって、プロセスチャンバ1に供給された希ガスを回収して、製造処理に再利用することができるので、製造装置のランニングコストの上昇を防止することができる。
本実施形態では、希ガス回収システムは、さらに、ガス分離ユニット7によって排ガスから分離された不活性ガスをプロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3に戻す不活性ガスリターンライン50を備えている。不活性ガスリターンライン50は、ガス分離ユニット7から延びる主管50aと、主管50aからそれぞれ分岐する3つの分岐管50b,50c,50dを備えている。以下、これらの分岐管50b,50c,50dを第1分岐管50b、第2分岐管50c、および第3分岐管50dとそれぞれ称する。
第1分岐管50bは、主管50aから分岐してプロセスチャンバ1に連結される。第2分岐管50cは、主管50aから分岐してターボ分子ポンプ10に連結される。第3分岐管50dは、主管50aから分岐してドライポンプ11に連結される。不活性ガスリターンライン50の主管50aには、ガス分離ユニット7によって排ガスから分離された不活性ガスを貯蔵する不活性ガスタンク52が配置されている。第1分岐管50b、第2分岐管50c、および第3分岐管50dは、それぞれ、不活性ガスタンク52の下流側で主管50aから分岐される。
上述したように、ガス分離ユニット7で排ガスから分離された窒素の圧力は、大気圧まで減少している。そこで、不活性ガスリターンライン50の主管50aには、昇圧ポンプ51が配置されている。昇圧ポンプ51は、ガス分離ユニット7と不活性ガスタンク52との間に配置されている。昇圧ポンプ51によって圧力が上昇された不活性ガス(窒素)が不活性ガスタンク52に送られ、該不活性ガスタンク52に貯蔵される。昇圧ポンプ51は、高いシール性能を有するポンプであることが好ましい。このようなポンプの例としては、金属製の密閉式ダイヤフラムを有するベローズポンプが挙げられる。
不活性ガスタンク52には、該不活性ガスタンク52を真空排気するための排気ライン53が連結されており、該排気ライン53には、開閉弁54が配置される。排気ライン53には、真空ポンプ(図示せず)が連結されており、この真空ポンプによって、排気ライン53を通じて不活性ガスタンク52を真空排気することができる。開閉弁54は、通常は閉じられている。不活性ガスタンク52から大気を排気すべきときは、開閉弁54が開かれる。例えば、不活性ガスタンク52のメンテナンスが終了した後で、開閉弁54を開き、排気ライン53を通じて不活性ガスタンク52から大気を排出する。不活性ガスタンク52が真空排気されると、開閉弁54は閉じられる。
不活性ガスタンク52には、不活性ガス供給ライン56が連結されており、該不活性ガス供給ライン56の末端には、不活性ガス供給源57が接続されている。不活性ガス供給源57は、例えば、不活性ガス(本実施形態では、窒素)が充填されたガスボンベである。さらに、不活性ガス供給ライン56には、開閉弁58が配置されている。不活性ガス供給ライン56に配置された開閉弁58を開くことにより、不活性ガスが不活性ガス供給源57から不活性ガス供給ライン56を通じて不活性ガスタンク52に供給される。開閉弁58は、通常は閉じられている。不活性ガスタンク52に不活性ガスを充填すべきときは、開閉弁58が開かれる。例えば、排気ライン53を通じて不活性ガスタンク52を真空排気し、開閉弁54を閉じた後で、開閉弁58を開く。これにより、不活性ガスと大気とが混合されることなく、不活性ガスを不活性ガスタンク52に充填することができる。不活性ガスが所定の圧力まで不活性ガスタンク52に充填されると、開閉弁58が閉じられる。
本実施形態では、窒素が不活性ガス供給源57から不活性ガス供給ライン56を通じて、真空排気された不活性ガスタンク52に充填される。不活性ガスタンク52に充填された窒素は、基板のエッチング処理時に不活性ガスリターンライン50の主管50aおよび第1分岐管50bを介してプロセスチャンバ1に供給される。さらに、不活性ガスタンク52に充填された窒素は、真空ポンプユニット3の運転時に不活性ガスリターンライン50の主管50aおよび分岐管50cを介してターボ分子ポンプ10に供給され、不活性ガスリターンライン50の主管50aおよび分岐管50dを介してドライポンプ11に供給される。ターボ分子ポンプ10およびドライポンプ11に供給される各窒素は、軸シールのためのパージガスとして用いられる。
図示はしないが、不活性ガスリターンライン50の分岐管50bに流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)を配置してもよい。同様に、不活性ガスリターンライン50の分岐管50c,50dに流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)をそれぞれ配置してもよい。これら流量調整器は、プロセスチャンバ1に供給される窒素の流量、ターボ分子ポンプ10に供給される窒素の流量、およびドライポンプ11に供給される窒素の流量をそれぞれ調整する。
プロセスチャンバ1に供給された不活性ガス、並びにターボ分子ポンプ10およびドライポンプ11にパージガスとして供給された不活性ガスは、真空ポンプユニット3から排出される。真空ポンプユニット3から排出された排ガスに含まれる不活性ガスは、排ガス処理装置5を通ってガス分離ユニット7に供給され、ガス分離ユニット7で排ガスから分離される。ガス分離ユニット7から排出された不活性ガスは、不活性ガスリターンライン50に配置された不活性ガスタンク52に貯蔵され、不活性ガスタンク52からプロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3に戻される。
このように、本実施形態に係る希ガス回収システムは、プロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3から排出された排ガスに含まれる不活性ガスを排ガスから分離し、この分離された不活性ガスを再度プロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3に戻す不活性ガス循環システムとして構成される。したがって、プロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3に供給された不活性ガスを回収して、製造処理およびパージガスに再利用することができるので、製造装置のランニングコストの上昇を防止することができる。
一般に、プロセスチャンバ1に供給される希ガス分子の大きさがプロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3に供給される不活性ガス分子の大きさに近い場合は、ガス分離膜22で希ガスと不活性ガスとを互いに効率的に分離できないおそれがある。より具体的には、不活性ガスがガス分離ユニット7から排出される希ガスに比較的高い濃度で含まれるおそれがある。上述した実施形態では、プロセスチャンバ1に供給される希ガスはキセノンであり、真空ポンプユニット3に供給される不活性ガスは、ポンプのパージガスとして一般的に用いられる窒素ガスである。この場合、窒素分子の大きさ(3.798[10-10m])がキセノン分子の大きさ(4.047[10-10m])に近いために、ガス分離ユニット7から排出されるキセノンに窒素が比較的高い濃度で含まれてしまうおそれがある。
ガス分離ユニット7から排出される希ガスに含まれる不活性ガスの濃度を低下させるためには、高い圧縮能力を有する昇圧ポンプ27を用いるか、または複数のガス分離膜22を直列に配置する必要がある。この場合、希ガス回収システムの設置スペースが増加してしまう。
したがって、プロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3に供給される不活性ガスの分子の大きさは、プロセスチャンバ1に供給される希ガスの分子の大きさとできるだけ異なっていることが好ましい。この観点から、アルゴン(Ar)またはヘリウム(He)を、プロセスチャンバ1および/または真空ポンプユニット3に供給される不活性ガスとして用いてもよい。アルゴン分子の大きさは、3.547[10-10m]であり、ヘリウム分子の大きさは、2.551[10-10m]であり、これらは、キセノン分子の大きさ(4.047[10-10m])よりも小さい。特に、ヘリウム分子の大きさは、キセノン分子の大きさとは大きく異なるため、ガス分離膜22を用いて、キセノンとヘリウムを互いに効率的に分離することができる。
アルゴンおよびヘリウムは、窒素よりも高価なガスである。しかしながら、上述した実施形態では、プロセスチャンバ1および真空ポンプユニット3に供給された不活性ガスを再利用することができる。その結果、アルゴンまたはヘリウムを不活性ガスとして使用する場合でも、製造装置のランニングコストの上昇を防止することができる。
図3は、別の実施形態に係る希ガス回収システムを示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図1および図2を参照して説明された実施形態の構成と同様であるので、その重複する説明を省略する。図3に示される希ガス回収システムは、複数のプロセスチャンバに供給された希ガスを回収して、再利用するために使用される。
図3に示される希ガス回収システムでは、真空ポンプユニット3は、複数の(図3では2つの)プロセスチャンバ1a,1bにそれぞれ連結された複数の(図3では2つの)ターボ分子ポンプ10a,10bと、一つのドライポンプ11とを備えている。2つのターボ分子ポンプ10a,10bは、それらの下流側に配置されたドライポンプ11に連結される。一方のプロセスチャンバ1aには、プロセスガスライン2aを介してプロセスガスが導入され、他方のプロセスチャンバ1bには、プロセスガスライン2bを介してプロセスガスが導入される。
本実施形態では、希ガスリターンライン30は、ガス分離ユニット7からガスボックス40まで延びる主管30aと、主管30aからガスボックス40内の分岐点で分岐する2つの分岐管30b,30cとを含んでいる。一方の分岐管30bは、一方のプロセスチャンバ1aに希ガスを供給するために設けられている。他方の分岐管30cは、他方のプロセスチャンバ1bに希ガスを供給するために設けられている。このように、ガスボックス40を、複数のプロセスチャンバ(本実施形態では、2つのプロセスチャンバ1a,1b)に希ガスをそれぞれ供給するためのガス分岐ボックスとして用いてもよい。さらに、ガスボックス40を、プロセスチャンバ1a,1bにそれぞれ供給される希ガスの流量を調整する流量調整ユニットとして用いてもよい。この場合、ガスボックス40は、分岐管30b,30cのそれぞれに配置された減圧弁、流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)などを備えるのが好ましい。一方のプロセスチャンバ1aで基板をエッチングするときは、ガスボックス40内で流量が調整された希ガスを一方の分岐管30bを介してプロセスチャンバ1aに供給する。他方のプロセスチャンバ1bで基板をエッチングするときは、ガスボックス40内で流量が調整された希ガスを他方の分岐管30cを介してプロセスチャンバ1bに供給する。
不活性ガスリターンライン50は、主管50aから分岐した分岐管(第4分岐管)50eをさらに有する。第4分岐管50eは、主管50aから分岐してプロセスチャンバ1bに連結される。不活性ガスタンク52に貯蔵された不活性ガスは、主管50aおよび第4分岐管50eを介してプロセスチャンバ1bに供給される。図示はしないが、第4分岐管50eに、流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)を配置してもよい。この流量調整器は、プロセスチャンバ1bに供給される不活性ガスの流量を調整する。
さらに、不活性ガスリターンライン50は、主管50aから分岐した分岐管(第5分岐管)50fを有する。第5分岐管50fは、主管50aから分岐してターボ分子ポンプ10bに連結される。不活性ガスタンク52に貯蔵された不活性ガスは、主管50aおよび第5分岐管50fを介してターボ分子ポンプ10bに供給される。ターボ分子ポンプ10bに供給される不活性ガスは、ターボ分子ポンプ10bのパージガスとして用いられる。図示はしないが、第5分岐管50fに、流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)を配置してもよい。この流量調整器は、ターボ分子ポンプ10bに供給される不活性ガスの流量を調整する。
ドライポンプ11は、他方のプロセスチャンバ1bから大気を排出するための粗引きポンプとしても機能する。ドライポンプ11には、プロセスチャンバ1bから延びる粗引きライン28bが接続されている。プロセスチャンバ1bから大気を排出すべきとき(例えば、プロセスチャンバ1bのメンテナンス後)は、真空ポンプユニット3のドライポンプ11が駆動され、プロセスチャンバ1b内の大気が粗引きライン28bを通してドライポンプ11に吸い込まれる。ドライポンプ11に吸い込まれた大気は、吐出管49および大気放出管29を通って、希ガス回収システムから排出される。
本実施形態でも、プロセスチャンバ1a,1bに供給された希ガスは、真空ポンプユニット3によりプロセスチャンバ1a,1bから排出され、さらに、排ガス処理装置5を通ってガス分離ユニット7に供給される。ガス分離ユニット7で排ガスから分離された希ガスは、希ガスリターンライン30を通って、希ガスタンク32に貯蔵される。希ガスタンク32に貯蔵された希ガスは、ガスボックス40を介してプロセスチャンバ1a,1bにそれぞれ戻されて、各プロセスチャンバ1a,1bで基板のエッチング処理に再利用される。
プロセスチャンバ1a,1b、ターボ分子ポンプ10a,10b、およびドライポンプ11に供給された不活性ガスは、真空ポンプユニット3によりプロセスチャンバ1a,1b、ターボ分子ポンプ10a,10b、およびドライポンプ11から排出され、さらに、排ガス処理装置5を通ってガス分離ユニット7に供給される。ガス分離ユニット7で排ガスから分離された不活性ガスは、不活性ガスリターンライン50を通って、不活性ガスタンク52に貯蔵される。不活性ガスタンク52に貯蔵された不活性ガスは、プロセスチャンバ1a,1b、ターボ分子ポンプ10a,10b、およびドライポンプ11に戻される。
このように、本実施形態に係る希ガス回収システムは、複数のプロセスチャンバ1a,1bから排出された排ガスに含まれる希ガスを該排ガスから分離し、この分離された希ガスを再度プロセスチャンバ1に戻す希ガス循環システムとして構成される。したがって、プロセスチャンバ1に供給された希ガスを回収して、製造処理に再利用することができるので、製造装置のランニングコストの上昇を防止することができる。
さらに、本実施形態に係る希ガス回収システムは、複数のプロセスチャンバ1a,1b、および複数のターボ分子ポンプ10a,10bを有する真空ポンプユニット3から排出された排ガスに含まれる不活性ガスを排ガスから分離して、この分離された不活性ガスを再利用することができる。したがって、窒素よりも高価なアルゴンまたはヘリウムをポンプのパージガスとして用いても、製造装置のランニングコストが上昇しない。
図4は、さらに別の実施形態に係る希ガス回収システムを示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図3を参照して説明された実施形態の構成と同様であるので、その重複する説明を省略する。図4に示される希ガス回収システムも、複数のプロセスチャンバに供給された希ガスを回収して、再利用するために使用される。
図4に示される希ガス回収システムでは、真空ポンプユニット3は、複数の(図4では2つの)プロセスチャンバ1a,1bにそれぞれ連結された複数の(図4では2つの)ターボ分子ポンプ10a,10bと、これらターボ分子ポンプ10a,10bにそれぞれ連結された複数の(図4では2つの)ドライポンプ11a,11bとを備えている。本実施形態では、不活性ガスリターンライン50は、主管50aから分岐した分岐管(第7分岐管)50gをさらに有する。上記第3分岐管50dは、一方のドライポンプ10aに連結され、第7分岐管50gは、主管50aから分岐して他方のドライポンプ11bに連結される。不活性ガスタンク52に貯蔵された不活性ガスは、主管50aおよび第7分岐管50gを介してドライポンプ11bに供給される。図示はしないが、第7分岐管50gに、流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)を配置してもよい。この流量調整器は、ドライポンプ11bに供給される不活性ガスの流量を調整する。
ドライポンプ11aは、一方のプロセスチャンバ1aから大気を排出するための粗引きポンプとしても機能する。ドライポンプ11aには、プロセスチャンバ1aから延びる粗引きライン28aが接続されている。同様に、ドライポンプ11bは、他方のプロセスチャンバ1bから大気を排出するための粗引きポンプとしても機能する。ドライポンプ11bには、プロセスチャンバ1bから延びる粗引きライン28bが接続されている。
図4に示されるように、各プロセスチャンバに、1台のターボ分子ポンプと1台のドライポンプをそれぞれ連結してもよい。
図5は、さらに別の実施形態に係る希ガス回収システムを示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図1および図2を参照して説明された実施形態の構成と同様であるので、その重複する説明を省略する。図5に示される希ガス回収システムは、排ガス処理装置5が2つのガス処理部5A,5A’を有している点が図1に示される希ガス回収システムと相違する。
触媒式除害ユニット14の処理槽14aに充填された処理剤は、排ガスが通過するにしたがって劣化する。同様に、第1乾式除害ユニット15の吸着槽15aに充填された吸着剤、および第2乾式除害ユニット16の吸着槽16aに充填された吸着剤は、排ガスが通過するにしたがって劣化する。触媒式除害ユニット14は、処理剤の破過を検知するセンサ(以下、第1センサと称する)14bを有しており、第1乾式除害ユニット15は、吸着剤の破過を検知するセンサ(以下、第2センサと称する)15b有しており、第2乾式除害ユニット16は、吸着剤の破過を検知するセンサ(以下、第3センサと称する)16bを有している。第1センサ14は、例えば、処理槽14aをフッ素化合物が通過したことを検出可能なセンサであり、第2センサ15bおよび第3センサ16bは、例えば、積算流量計である。
排ガス処理装置5は、一方のガス処理部5Aの上流側および下流側に配置された開閉弁65,66と、他方のガス処理部5A’の上流側および下流側に配置された開閉弁68,69を有する。一方のガス処理部5Aで排ガスを処理しているときは、開閉弁65,66が開いており、開閉弁68,69は閉じている。一方のガス処理部5Aに配置された触媒式除害ユニット14の第1センサ14b、第1乾式除害ユニット15の第2センサ15b、および第2乾式除害ユニット16の第2センサ16bのいずれか一つが破過を検知すると、開閉弁65,66が閉じられて、開閉弁68,69が開かれる。開閉弁65,66の開閉動作と開閉弁68,69の開閉動作は、好ましくは、自動で行われる。これら開閉動作によって、排ガスに含まれる希ガスおよび不活性ガス以外のガス成分の除去処理が、自動で一方のガス処理部5Aから他方のガス処理部5A’に切り替えられる。その結果、プロセスチャンバ1での基板の処理を中断することなく、希ガスおよび不活性ガスをプロセスチャンバ1に戻すことができる。
上述した実施形態は、基板(例えば、ウェハ)に対してエッチング処理が行われる製造装置(例えば、半導体製造装置)のプロセスチャンバに供給された希ガスを回収して、再利用するために使用される。しかしながら、上述した希ガス回収システムを、基板に対してCVD処理が行われる製造装置のプロセスチャンバに供給された希ガスを回収して再利用するために使用してもよい。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。