本発明は、ガス供給方法及び装置に関し、詳しくは、プラズマスパッタリング装置、プラズマ酸化装置、プラズマ窒化装置やプラズマCVD装置、リアクティブイオンエッチング装置等の半導体製品や表示装置の製造設備から排出されるキセノン、クリプトンあるいはネオンのようなレアガスを回収して前記製造設備に循環供給するためのガス供給方法及び装置に関する。
半導体集積回路、液晶パネル、太陽電池及びそのパネル、磁気ディスク等の半導体製品を製造する工程では、不活性ガス雰囲気中でプラズマを発生させ、該プラズマによって半導体製品や表示装置の各種処理を行う製造設備が広く用いられている。
このような処理において、従来は、ヘリウムやアルゴンが不活性ガスとして用いられてきたが、近年は、より高度な処理を行うための用途として、クリプトンやキセノンあるいはネオンといったレアガスを前記不活性ガスに適当量添加した混合ガスを使用した混合ガスプラズマが注目されている。クリプトン、キセノン、ネオンは、空気中の存在比及び分離工程の複雑さから極めて高価なガスであり、このようなレアガスを使用するプロセスを経済的に成立させるためには、目的とするレアガスを高回収率で回収精製し、循環使用することが必須条件である。さらに、回収したレアガスは、不純物濃度が少なくとも100ppm以下の高純度下で使用される。
ここで、分離精製の対象となるレアガスを含む排ガスは、主として不活性ガス及びレアガスに加えて、半導体装置やプラズマ酸化では、これに数%の酸素が含まれたものとなる。また、プラズマCVDでは金属水素化物系ガスが含まれたものとなり、リアクティブイオンエッチングではハロゲン化炭化水素系ガスが含まれたものとなる。リソグラフィ光源やアニール熱源として用いられる場合は、フッ素が含まれたものになる。さらに、微量の不純物や反応副生成物として、水分、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、炭化水素等が含まれることもある。
一方、処理の対象となる基体を処理チャンバ内に送入する前には、チャンバ内に窒素を流通させながら真空排気することにより、チャンバ内を清浄な窒素雰囲気とする。その後、基体を処理チャンバ内に送入する。このとき、清浄窒素雰囲気を保持するため、窒素の通気と真空排気は継続されて行われている。したがって、基体の送入前及び送入時に排気されるガスは、そのほとんどが窒素である。
その後、流通ガスが窒素ガスからレアガスと不活性ガスとの混合ガスに切り替わり、一般的には、処理チャンバ内が混合ガス雰囲気になってから高周波放電等によりプラズマを発生させて処理を行う。すなわち、プラズマ処理が行われているとき、処理チャンバから排気されるガスは、混合ガスがそのほとんどの成分を占める。次いで、高周波の印加を停止してプラズマを停止し、流通ガスを窒素に切り替えてから基体を取り出す。プラズマ停止から基体が搬出される間に排気されるガスは窒素である。
また、真空排気システムから不純物が逆拡散することを防止するため、処理チャンバと真空排気システムとの間には、通常、窒素が通気されている。この窒素は、処理チャンバから排気されたガスと共に排気される。さらに、真空ポンプの軸受け部からの大気巻き込みを防止するため、シールガスとして窒素が軸受け部に通気され、その一部は真空排気系内部に導入されて排気される。
以上述べたように、基体の処理チャンバへの搬入及び搬出時や、処理チャンバの待機時に排気されるガスのほとんどの成分は窒素であり、一方、プラズマ処理時の排ガスは、窒素とレアガスと不活性ガスとを含むものとなる。なお、それぞれの排気時におけるガス圧力は大気圧である。
原料ガスから目的とするガスを分離回収する方法として、圧力変動吸着分離(PSA)法が知られている。例えば、空気を原料として酸素を製品として得ようとする場合、ゼオライトを吸着剤として使用し、加圧下で空気を流通させることにより、易吸着成分である窒素が吸着剤側に固定され、難吸着成分である酸素が吸着剤層から流出する。次いで、吸着剤層を空気の流通工程より十分に低い圧力条件下におけば、吸着剤に固定されていた窒素が脱離する。相対的に高い圧力での吸着操作と相対的に低い圧力での再生操作を繰り返すPSA操作は、短時間での吸着−再生の切り替えが可能なため、吸着剤当たりの製品発生量を高めやすく、装置をコンパクトにしやすいという利点を有している。
このPSA法を用いてレアガスを回収するための方法として、半導体製造装置等の雰囲気ガスとして使用されるクリプトンやキセノン等のレアガスを含む混合ガスを原料ガスとし、平衡型PSAと速度型PSAとを組み合わせたプロセスにより、レアガスと窒素とを分離し、レアガスを効率よく回収精製する方法及び装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2002−126435号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載された方法及び装置は、半導体製造装置等で使用されたレアガスと窒素との混合ガスについてのものであり、レアガスとアルゴン等の不活性ガスとの混合ガスからレアガスのみを取り出すことは対象外である。すなわち、従来の方法では、半導体製造装置等のチャンバー内を窒素によってパージし、窒素をシールガスとして用いた真空ポンプによって吸引した排ガスであるから、該混合ガスは、レアガスと不活性ガスと窒素とが混合した状態となっている。このため、平衡型PSAと速度型PSAとを組み合わせてレアガスのみを分離精製する必要があった。
そこで、本発明は、雰囲気ガスとしてクリプトン、キセノン及びネオンのようなレアガスとアルゴン、ヘリウムのような不活性ガスとを混合して用いる半導体製品や表示装置の製造設備等から排出される排ガスを、平衡型、速度型いずれか1種のPSAプロセスによって不活性ガスを分離精製して排出するとともに、レアガスを不活性ガス中に濃縮することによってレアガスを高効率で回収し、前記半導体製品の製造設備等に所望の組成の混合ガスを供給することができるガス供給方法及び装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明のガス供給方法は、第1の構成として、キセノン、クリプトン、ネオンのいずれかであるレアガスと、ヘリウム、アルゴンのいずれかである不活性ガスとを含む混合ガスを使用し、使用後の排ガスを真空排気手段を介して排出する混合ガス使用設備に前記混合ガスを供給する方法であって、前記真空排気手段に前記混合ガス中の不活性ガスと同種の不活性ガスをシールガスとして導入し、該真空排気手段を介して排出された排ガスを貯留タンクに導入し、該貯留タンク内の排ガスの一部を前記混合ガス使用設備に前記混合ガスとして供給するとともに、貯留タンク内の排ガスの残部を、前記不活性ガスを難吸着成分とする吸着剤を充填した圧力変動吸着分離手段に導入して前記レアガスと前記不活性ガスとを分離し、分離後の不活性ガスの一部を前記真空排気手段のシールガスとして循環使用するとともに、残部を系外に排出することを特徴としている。
本発明のガス供給方法の第2の構成は、キセノン、クリプトン、ネオンのいずれかであるレアガスと、ヘリウム、アルゴンのいずれかである不活性ガスとを含む混合ガスを使用し、使用後の排ガスを真空排気手段を介して排出する混合ガス使用設備に前記混合ガスを供給する方法であって、前記真空排気手段に前記混合ガス中の不活性ガスと同種の不活性ガスをシールガスとして導入し、該真空排気手段を介して排出された排ガスを貯留タンクに導入し、該貯留タンク内の排ガスを、前記不活性ガスを難吸着成分とする吸着剤を充填した圧力変動吸着分離手段に導入して前記レアガスと前記不活性ガスとを分離し、該圧力変動吸着分離手段で前記レアガスを濃縮した濃縮ガスを前記混合ガス使用設備に前記混合ガスとして供給し、前記圧力変動吸着分離手段で分離した前記不活性ガスの一部を前記真空排気手段のシールガスとして循環使用するとともに、残部を系外に排出することを特徴としている。
本発明のガス供給方法の第3の構成は、キセノン、クリプトン、ネオンのいずれかであるレアガスと、ヘリウム、アルゴンのいずれかである不活性ガスとを含む混合ガスを使用し、使用後の排ガスを真空排気手段を介して排出する混合ガス使用設備に前記混合ガスを供給する方法であって、前記真空排気手段に前記混合ガス中の不活性ガスと同種の不活性ガスをシールガスとして導入する工程と、該真空排気手段を介して排出された排ガスを貯留タンクに導入して該貯留タンク内の循環ガスに混合する工程と、前記不活性ガスを難吸着成分とする吸着剤を充填した圧力変動吸着分離手段に前記貯留タンク内の循環ガスの少なくとも一部を導入して前記レアガスと前記不活性ガスとを分離する工程と、前記圧力変動吸着分離手段で前記レアガスを濃縮した濃縮ガスを前記循環ガスとして前記貯留タンクに循環導入する工程と、前記循環ガス又は前記濃縮ガスの一部を抜き出し、前記混合ガス使用設備に前記混合ガスとして供給する工程と、前記圧力変動吸着分離手段で分離した前記不活性ガスの一部を前記真空排気手段のシールガスとして循環使用工程と、残部を系外に排出する工程とを含むことを特徴としている。
また、本発明のガス供給装置は、第1の構成として、キセノン、クリプトン、ネオンのいずれかであるレアガスと、ヘリウム、アルゴンのいずれかである不活性ガスとを含む混合ガスを使用し、使用後の排ガスを真空排気手段を介して排出する混合ガス使用設備に前記混合ガスを供給するための装置であって、前記真空排気手段に前記混合ガス中の不活性ガスと同種の不活性ガスをシールガスとして導入する経路と、該真空排気手段を介して排出された排ガスが導入される貯留タンクと、該貯留タンク内の排ガスの一部を前記混合ガス使用設備に前記混合ガスとして供給する経路と、前記貯留タンク内の排ガスの残部が導入され、前記不活性ガスを難吸着成分とする吸着剤を用いて前記排ガス中の前記レアガスと前記不活性ガスとを分離する圧力変動吸着分離手段と、該圧力変動吸着分離手段で分離した不活性ガスの一部を前記真空排気手段のシールガスとして前記真空排気手段へ循環させるシールガス循環経路と、前記圧力変動吸着分離手段で分離した不活性ガスの残部を系外に排出する経路とを備えていることを特徴としている。
本発明のガス供給装置の第2の構成は、キセノン、クリプトン、ネオンのいずれかであるレアガスと、ヘリウム、アルゴンのいずれかである不活性ガスとを含む混合ガスを使用し、使用後の排ガスを真空排気手段を介して排出する混合ガス使用設備に前記混合ガスを供給するための装置であって、前記真空排気手段に前記混合ガス中の不活性ガスと同種の不活性ガスをシールガスとして導入する経路と、該真空排気手段を介して排出された排ガスが導入される貯留タンクと、該貯留タンク内の排ガスが導入され、前記不活性ガスを難吸着成分とする吸着剤を用いて前記レアガスと前記不活性ガスとを分離する圧力変動吸着分離手段と、該圧力変動吸着分離手段で前記レアガスを濃縮した濃縮ガスを前記混合ガス使用設備に前記混合ガスとして供給する経路と、前記圧力変動吸着分離手段で分離した不活性ガスの一部を前記真空排気手段のシールガスとして前記真空排気手段へ循環させるシールガス循環経路と、前記圧力変動吸着分離手段で分離した不活性ガスの残部を系外に排出する経路とを備えていることを特徴としている。
本発明のガス供給装置の第3の構成は、キセノン、クリプトン、ネオンのいずれかであるレアガスと、ヘリウム、アルゴンのいずれかである不活性ガスとを含む混合ガスを使用し、使用後の排ガスを真空排気手段を介して排出する混合ガス使用設備に前記混合ガスを供給するための装置であって、前記真空排気手段に前記混合ガス中の不活性ガスと同種の不活性ガスをシールガスとして導入する経路と、該真空排気手段を介して排出された排ガスが導入され、系内を循環する循環ガスと混合させる貯留タンクと、該貯留タンク内の循環ガスの少なくとも一部が導入され、前記不活性ガスを難吸着成分とする吸着剤を用いて前記レアガスと前記不活性ガスとを分離する圧力変動吸着分離手段と、該圧力変動吸着分離手段で前記レアガスを濃縮した濃縮ガスを前記循環ガスとして前記貯留タンクに循環導入する経路と、前記循環ガス又は前記濃縮ガスの一部を抜き出し、前記混合ガス使用設備に前記混合ガスとして供給する経路と、前記圧力変動吸着分離手段で分離した前記不活性ガスの一部を前記真空排気手段のシールガスとして前記真空排気手段へ循環させるシールガス循環経路と、前記圧力変動吸着分離手段で分離した不活性ガスの残部を系外に排出する経路とを備えていることを特徴としている。
さらに、本発明方法及び装置は、前記レアガスがキセノン又はクリプトンであり、前記不活性ガスがヘリウム又はアルゴンのいずれかであり、前記吸着剤が平衡吸着量差に基づいてレアガスと不活性ガスとを分離する吸着剤であることを特徴としている。
本発明によれば、半導体製造装置等から排出されたレアガスと不活性ガスとの混合ガスからレアガスを系外に放出することなく、高効率で回収して再利用することができる。すなわち、半導体製造装置等のチャンバー内のガスを真空ポンプのような真空排気手段で吸引することによって排出された排ガスであって、クリプトン、キセノン、ネオンのいずれか一種のレアガスとアルゴン、ヘリウムのいずれか一種の不活性ガスとが含まれている排ガスを回収し、前記レアガスを系外に放出することなく回収して半導体製造装置等に所望のレアガス濃度の混合ガスとして供給することができる。
したがって、レアガスと不活性ガスとの混合ガスを使用する設備であるプラズマスパッタリング装置、プラズマ酸化装置、プラズマ窒化装置やプラズマCVD装置、リアクティブイオンエッチング装置等の半導体製品や表示装置の製造設備と組み合わせることにより、これらの設備におけるレアガスの消費量を大幅に削減することができ、前記半導体製品や表示装置の生産コスト及び運転コストの低減が図れる。
図1は、本発明のレアガスの供給装置をレアガス使用設備であるスパッタリング装置に適用した一形態例を示す系統図である。このスパッタリング装置11は、レアガスとしてのキセノンと不活性ガスとしてのアルゴンとの混合ガスをプロセスチャンバ12に導入してプラズマを生成し、基体13の対向面に設置されたターゲット材料を基体13の表面に堆積させるものであって、プロセスチャンバ12にはプロセスガスを供給するためのプロセスガス供給装置14と、プロセスチャンバ12を真空排気するための真空排気手段としての真空ポンプ15とが設けられている。
真空ポンプ15には、大気中からの不純物混入防止と排ガスの逆流防止とを図るためのシールガスとして、スパッタリング装置11で使用する不活性ガスと同じ不活性ガス、本形態例ではアルゴンを導入するシールガス導入経路16が設けられている。この真空ポンプ15には、ガスを汚染する油等を使用しないものであればよく、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ、スクリューポンプ及びこれらの組み合わせが好適に用いられる。
前記プロセスガス供給装置14でガス組成及び圧力、流量をあらかじめ設定された値に調整されたプロセスガスは、プロセスガス供給経路17を通ってプロセスチャンバ12に供給され、プロセスチャンバ12内のガスは、真空ポンプ15によって吸引され、排気経路18を通ってスパッタリング装置11から排出される。また、プロセスチャンバ12における基体13の搬出入、パージを含め、全ての工程でプロセスチャンバ12に導入するガスは、前記混合ガス中の不活性ガスと同種の不活性ガス、すなわち、本形態例ではアルゴンが用いられる。
したがって、前記排気経路18から排出される排ガスは、前記プロセスガス、真空ポンプ15から系内に侵入したシールガス及びスパッタリング工程時に生成した反応生成物や微量不純物を含むものであって、前記プロセスガスは、前述のように、キセノンとアルゴンとの混合ガスに、必要に応じて添加されるガス成分を含むものとなっている。但し、本形態例に示すスパッタリング装置11では、他のガス成分の添加は行われず、プロセスガスはキセノンとアルゴンとの混合ガスである。
このような構成を有するスパッタリング装置11に前記混合ガスを供給するためのガス供給装置21は、前記真空ポンプ15から排気経路18に排出された排ガス中のアルゴンをキセノンから分離精製した状態で排出するとともに、キセノンをアルゴン中に濃縮し、キセノンやアルゴンを適当量補充することによって所定組成の混合ガスとし、この混合ガスを前記スパッタリング装置11に循環供給するように形成されている。
本形態例に示すガス供給装置21は、前記排気経路18に排出された排ガスが導入され、ガス供給装置21の系内を循環する循環ガスと混合させる貯留タンク22と、該貯留タンク22内の循環ガスの少なくとも一部が導入され、前記不活性ガス(アルゴン)を難吸着成分とする吸着剤を用いて前記レアガス(キセノン)と前記不活性ガス(アルゴン)とを分離する圧力変動吸着分離手段23と、該圧力変動吸着分離手段23で分離したアルゴンを系外に排出する不活性ガス排出経路24と、圧力変動吸着分離手段23でキセノンが濃縮された濃縮ガスを前記循環ガスとして前記貯留タンク22に循環導入する濃縮ガス循環経路25と、前記循環ガスの一部を抜き出して前記スパッタリング装置11に前記混合ガスとして供給する混合ガス供給経路26とを備えている。
また、前記不活性ガス排出経路24には、前記シールガス導入経路16に接続するシールガス循環経路27が設けられており、不活性ガス排出経路24に排出されたアルゴンの一部を、シールガス循環経路27により前記真空ポンプ15のシールガスとして循環使用できるようにしている。さらに、シールガス循環経路27には、不活性ガス排出経路24に排出されたアルゴンの一部を前記貯留タンク22に循環導入する不活性ガス循環経路28が設けられており、貯留タンク22内のガス組成に応じてアルゴンを循環導入することにより、貯留タンク22内のガス組成を調整できるようにしている。なお、シールガス循環経路27と不活性ガス循環経路28とは、それぞれ独立した経路として設けることもできる。
さらに、前記貯留タンク22には、前記排気経路18に排出された排ガスを所定圧力に昇圧して貯留タンク22内に導入する第1圧縮機31と、貯留タンク22内のガスを抜き出して前記圧力変動吸着分離手段23の吸着圧力に昇圧する第2圧縮機32と、貯留タンク22内のガス組成(ガス成分比)を検出するための検出装置33を備えたガス成分検出用の循環経路34と、前記検出装置33の検出値に基づいてキセノン容器35からのキセノンを流量調節して貯留タンク22に導入する流量制御器36と、不純物濃度を検出する不純物検出器37及びキセノン濃度を計測する計測器38から排出された分析用ガスを回収するための回収経路39とが設けられている。
前記圧力変動吸着分離手段23は、平衡吸着量差に基づいて易吸着成分であるキセノンと難吸着成分であるアルゴンとを分離する吸着剤、例えば、活性炭、CaA型ゼオライト、NaX型ゼオライト等の吸着剤の少なくとも一種類をそれぞれ充填した2個の吸着筒41a,41bを有するものであって、各吸着筒41a,41bには、相対的に高い圧力で行われる吸着工程において、前記第2圧縮機32で昇圧された循環ガスを吸着筒41a,41bに導入する入口経路42と、吸着筒41a,41bで分離精製したアルゴンを不活性ガス回収槽43に導出する出口径路44と、相対的に低い圧力で行われる精製工程において、不活性ガス回収槽43内のアルゴンの一部をパージガスとして吸着筒41a,41bに逆流させるための再生入口経路45と、キセノンを濃縮した濃縮ガスを吸着筒41a,41bから前記濃縮ガス循環経路25に導く再生出口径路46とがそれぞれ設けられるとともに、両吸着筒41a,41bを吸着工程と再生工程とに交互に切り替えるための開閉弁が所定位置に設けられている(図示省略)。
前記混合ガス供給経路26は、前記第2圧縮機32で昇圧された循環ガスの一部を取り出し、循環ガス中の不純物を除去するとともに、キセノンとアルゴンとをあらかじめ設定された成分比に調節してスパッタリング装置11に供給するためものであって、取り出す循環ガスの圧力を調整する圧力調節器51と、圧力調整された循環ガスを一時貯留する供給ガス貯留タンク52と、供給ガス貯留タンク52から導出した循環ガス中の不純物を除去する精製器53と、精製器53に導入する前の循環ガス中の不純物濃度を検出する前記不純物検出器37と、精製器53から導出した循環ガス中のキセノン濃度を計測する前記計測器38と、該計測器38で計測したキセノン濃度に基づいてアルゴンの不足量を演算する演算器54と、該演算器54での演算結果に基づいてアルゴン供給経路55からのアルゴン添加量を調節する流量調節器56とを備えている。
精製器53は、除去すべき不純物の種類や量に応じて適当なものを選択することができ、吸着分離方式や膜分離方式を用いることができるが、不純物の除去能力から、チタン、バナジウム、ジルコニウム、鉄、ニッケル等の金属あるいは合金を用いたゲッタ式精製器が好適である。
スパッタリング装置11から真空ポンプ15を介して略大気圧で排気経路18に排出された排ガスは、第1圧縮機31で僅かに昇圧されて貯留タンク22に導入され、濃縮ガス循環経路25を通って循環する循環ガスと混合する。この貯留タンク22は、ガス貯留圧力が常時大気圧に保持されるように容積可変式を用いることが望ましく、排ガスと循環ガスとを十分に混合してタンク内のガス成分比をある程度の範囲内に均一化できるような容積に設定することが好ましい。
排ガスと混合した貯留タンク22内の循環ガスは、第2圧縮機32によって圧力変動吸着分離手段23の吸着工程の操作圧力に昇圧され、入口経路42を通って吸着工程を行っている吸着筒、例えば吸着筒41aに導入される。吸着工程では、循環ガス中のレアガスであるキセノンが吸着筒内に充填されている吸着剤、例えば活性炭に吸着することによって不活性ガスであるアルゴンと分離し、活性炭に吸着し難いアルゴンは、出口経路44を通って不活性ガス回収槽43に回収される。この不活性ガス回収槽43に回収されたアルゴンは、吸着筒内の活性炭に循環ガス中のキセノンだけでなく、水分等の不純物成分がほとんど吸着除去された状態にあるので、極めて僅かなキセノンを含んだ高純度状態となっている。
したがって、高純度アルゴンとして各種用途に製品として供給することも可能であるが、この高純度アルゴンの一部又は全量を、前記シールガス循環経路27を通して前記シールガス導入経路16に導入することにより、シールガス導入経路16に新たに導入するアルゴン量の削減を図れるとともに、循環する高純度アルゴン中に微量に存在するキセノンを外部に放出することなく、再びガス供給装置21で処理して回収することができる。
一方、再生工程を行っている吸着筒41bにおいては、最初の減圧操作で筒内圧力が低下するのに伴って活性炭からキセノンが脱着し、再生出口径路46から濃縮ガス循環経路25を通って貯留タンク22に循環する。さらに、減圧操作後のパージ操作では、不活性ガス回収槽43から再生入口経路45を通って導入される少量のアルゴンにより筒内のガスが再生出口径路46に押し出され、濃縮ガス循環経路25を通って貯留タンク22に循環する。濃縮ガス循環経路25から貯留タンク22に循環するガスの組成は、活性炭から脱着したキセノンと、吸着工程終了時に筒内に存在していたアルゴンと、パージ操作で筒内を通過したアルゴンとを含んでおり、入口経路42から吸着筒に導入される循環ガスに比べて、不活性ガス回収槽43にアルゴンが回収された分だけキセノンが濃縮された状態となっている。
また、第2圧縮機32で昇圧された循環ガスの一部は、混合ガス供給経路26と循環経路34とに分岐する。循環経路34に分岐した循環ガスは、検出装置33に導入されて循環ガスのガス成分比が検出された後、再び貯留タンク22に戻される。検出装置33は、検出したガス成分比に基づいて流量制御器36の設定流量を調節し、循環ガス中のキセノン量が規定量よりも少ない場合には、流量制御器36に増量信号が出力されてキセノン容器35から貯留タンク22に導入するキセノンの流量が増量される。逆にキセノン量が多すぎる場合には、流量制御器36の流量が絞られる。このとき、必要に応じて不活性ガス循環経路28を通して不活性ガス回収槽43内のアルゴンを貯留タンク22に導入することができる。
混合ガス供給経路26に分岐した循環ガスの一部は、圧力調節器51で規定圧力に減圧された後、供給ガス貯留タンク52内に一時的に貯留される。供給ガス貯留タンク52から導出された循環ガスは、さらにその一部が分岐して不純物検出器37に導入され、この不純物検出器37によって循環ガス中の不純物濃度が検出され、残部は精製器53に導入される。不純物検出器37から排出された循環ガスは、回収経路39を通って貯留タンク22に戻る。
ここで、精製器53にゲッタ式精製器を使用した場合、循環ガス中の不純物濃度は、前記不純物検出器37によって計測されているので、不純物濃度が既知の循環ガスが精製器53に導入されることになる。通常、ゲッタ式精製器の性能、即ち不純物除去効率は、入口不純物濃度と空塔速度とに依存するので、必要流量に応じて精製器53の最適設計を行うことが可能となる。また、精製器53の入口や出口に積算流量計を設けておくことにより、ゲッタ寿命の算出が可能となってゲッタの交換時期の予測が可能となる。
精製器53で不純物が除去された循環ガスは、その一部が計測器38に採取されて循環ガス中のキセノン濃度が計測される。この計測器38から排出された循環ガスも、前記回収経路39を通って貯留タンク22に戻される。計測器38で計測したキセノン濃度は、演算器54に送信され、スパッタリング装置11に供給する混合ガスにおけるキセノンとアルゴンとの規定のガス成分比と比較される。この演算器54の比較結果に基づいて循環ガスへのアルゴンの添加量が算出され、前記流量調節器56に信号が出力されてアルゴン供給経路55から所定量のアルゴンが循環ガスに添加される。ここで添加するアルゴンとして、前記圧力変動吸着分離手段23で分離精製された不活性ガス回収槽43内のアルゴンを用いることもできる。
これにより、混合ガス供給経路26からスパッタリング装置11に供給するガス成分比が、スパッタリング装置11で使用する混合ガスの成分比に調節され、スパッタリング装置11で使用する混合ガスとしてプロセスガス供給装置14に供給される。プロセスガス供給装置14では、プロセスチャンバ12での処理に応じて流量や圧力が調整されるとともに必要に応じて経路14aから各種ガスが添加され、プロセスガス供給経路17からプロセスチャンバ12に前記混合ガスが供給される。
このように、プロセスチャンバ12から真空ポンプ15を介して排出されるスパッタリング装置11の排ガスを回収し、該排ガス中のアルゴンを圧力変動吸着分離手段23で分離して回収し、キセノンが濃縮された状態になっている循環ガスをスパッタリング装置11に混合ガスとして供給することにより、レアガスであるキセノンの消費量を大幅に削減することができる。しかも、従来のように、キセノンを高純度に精製する必要がなく、濃縮するだけでよいため、キセノンとアルゴンとを分離する圧力変動吸着分離手段23の構成を簡素化することができ、使用する吸着剤も、本形態例のように活性炭のみとすることができるので、設備コストや運転コストの低減も図れる。
なお、前記検出装置33、不純物検出器37及び計測器38は、キセノンとアルゴンとの比率や循環ガス中の不純物濃度を計測でき、かつ、その場計測(in−situ計測)できるものであれば、その方式にこだわるものではなく、例えば、検出装置33や計測器38には、質量の違いを利用して流量変化を計測する方式、比熱を計測して成分比を求める方式等を使用できるが、一定抵抗に対して流れるガス流量からその成分比を求める方式を使用することが望ましい。そして、検出装置33、不純物検出器37及び計測器38で使用したガスを貯留タンク22に戻すことにより、キセノン、即ちレアガスの損失を防止することができる。
また、流量制御器36には、ガスの熱伝導を計測しながら質量流量を制御するものを使用することが望ましいが、前述の通り、貯留タンク22の圧力を略大気圧に設定しておくことにより、キセノン容器35から導出させるキセノンの圧力を低く、例えば、0.01MPa(ゲージ圧)程度に制御することができるので、自動開閉弁を用いることも可能である。
さらに、キセノン容器35からのキセノンの導入位置は、ガス供給装置21の系内の任意の位置に設けることが可能であるが、キセノンの導入位置を系内で圧力ができるだけ低い位置、すなわち、貯留タンク22、濃縮ガス循環経路25、第1圧縮機31の入口側等に設けることにより、キセノン容器35内のキセノンを効率よく放出させることができる。また、キセノン容器35は、ガス供給装置21の内部、特に、キセノン導入位置の近傍に設置することにより、キセノン供給配管系の容積を極小にして初期充填量を低減することができる。
また、混合ガス供給経路26のアルゴン供給経路55より下流側にバッファタンクを設けておくことにより、スパッタリング装置11における混合ガス使用量の変動に容易に対応することができる。
本形態例では、レアガス使用設備で使用する混合ガスとしてキセノンとアルゴンとの混合ガスを例示したが、他の組み合わせにも適用することが可能であり、略同一の装置構成で、キセノンとヘリウムとの混合ガス、クリプトンとヘリウム又はアルゴンとの混合ガスにも対応することができる。また、レアガスがネオンで、不活性ガスがアルゴンの混合ガスの場合は、圧力変動吸着分離手段23で使用する吸着剤を、前記活性炭やCaA型ゼオライト、NaX型ゼオライト等から、ネオンとアルゴンとを吸着速度差に基づいて分離し、アルゴンを難吸着成分として分離精製するとともに、ネオンを易吸着成分として濃縮する吸着剤、例えば、Na−A型ゼオライトやカーボンモレキュラーシーブス等に代えることによって対応可能である。
さらに、本形態例で示すガス供給装置21の構成では除去することが困難な成分を含む排ガスがレアガス使用設備から排出される場合には、例えば、酸素、金属水素化物、ハロゲン化炭化水素、フッ素等のプロセスガス成分や、水分、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、炭化水素等の微量の不純物や反応副生成物が含まれている場合は、貯留タンク22よりも上流側、例えば排気経路18にこれらの成分を除去する精製手段を設けておき、これらの成分がガス供給装置21の系内に侵入しないようにしておくことが好ましい。
混合ガスとしてスパッタリング装置11に供給する循環ガス(混合ガス)の取り出し位置は、混合ガス及び排ガスの組成や流量等の条件に応じて適当な位置を選択することができる。例えば、図2に示すように、圧力変動吸着分離手段23で濃縮されたレアガスが通過する濃縮ガス循環経路25の循環ガスを分岐経路61に分岐させて取り出すことができる。このように濃縮ガス循環経路25を流れる循環ガスは、圧力変動吸着分離手段23の再生工程で吸着筒から導出される再生ガスであり、ガス組成が大きく変化することがあるので、分岐経路61への循環ガスの取り出しは、再生ガスのガス組成に応じて適当なタイミングで行うようにすればよい。
また、濃縮ガス循環経路25の循環ガスの圧力は、貯留タンク22の圧力(略大気圧)より僅かに高い程度であるから、分岐経路61には、分岐させた循環ガスをスパッタリング装置11に供給する混合ガスの圧力に見合った圧力に昇圧するための第3圧縮機62を設けておく。さらに、回収した排ガスの一部を、第1圧縮機31の出口側で分岐し、そのまま混合ガスの一部として供給することも可能である。なお、図2では、図1で示した構成要素と同一の構成要素には、それぞれ同一符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例1
図1に示すように、キセノンとアルゴンとからなる混合ガスをプラズマガスとして使用するスパッタリング装置11にガス供給装置21を組み合わせ、ガス供給装置21により、スパッタリング装置11から排出される排ガスを回収し、混合ガスとしてスパッタリング装置11に供給するようにした。排ガスの総流量は1.8L/分であり、その内、400cc/分のキセノンと400cc/分のアルゴンとがプロセスチャンバ12から排出されたものであり、シールガス導入経路16からシールガスとして導入された2L/分のアルゴンの内、1L/分が排ガスに混合した状態となっている。
ガス供給装置21における貯留タンク22の容積は50Lとし、圧力変動吸着分離手段(PSA装置)23の吸着筒41a,41bには、内径72mm、充填高さ530mmの吸着筒に活性炭を1.5kg充填したものを使用した。貯留タンク22内の循環ガスは、第2圧縮機32で約0.5MPaに昇圧し、約20L/分の流量でPSA装置23に導入した。なお、スパッタリング装置11及びガス供給装置21を運転する前に、系内にキセノン及びアルゴンを所定量封入して安定化させた状態とした、
両装置を運転中に各部のガス成分と流量とを計測した。その結果、検出装置33で検出した循環ガスのキセノン濃度は51〜53%、残部がアルゴン及び微量不純物で安定した状態となり、この濃度変動の周期は、PSA装置23の工程切替時間である300秒に略一致していた。また、不活性ガス回収槽43から不活性ガス排出経路24に排出されるガス(アルゴン)の流量は0.95〜1.05L/分であり、その組成はアルゴン中に約85ppmのキセノンを含む高純度アルゴンとなっていた。
循環ガスの一部を圧力調節器51で圧力を0.4MPaに調節して取り出し、供給ガス貯留タンク52を介してゲッタ方式を採用した精製器53に導入した。計測器38で計測した精製器53の出口における循環ガス中の水分濃度は5ppb以下、キセノン濃度は約52%であり、流量は約770cc/分であった。このガスにアルゴン供給経路55から所定量のアルゴンを添加してスパッタリング装置11に供給する混合ガスのキセノン濃度が約50%になるようにした。
この混合ガスをプロセスガス供給装置14を介してプロセスチャンバ12に導入し、プラズマを生成して基体13の表面にCuを堆積させ、堆積時間と堆積膜厚とから堆積速度を算出した。その結果、ガス供給装置21から供給した混合ガスを用いた場合と、高純度キセノン及び高純度アルゴンを混合して用いた場合とで、堆積速度は略同じであり、差異は見出せなかった。
すなわち、キセノンとアルゴンとの混合ガスによるプラズマを用いたスパッタリングにおいて、ガス供給装置21から供給した混合ガスを用いることにより、高純度のキセノン及びアルゴンを混合して用いた場合と同様の堆積速度が得られるとともに、キセノンの実効消費量は、85ppm×1.05L/分=0.09cc/分となり、希少資源であるキセノンの消費量を激減させることができた。このときのキセノンの回収率は、約99.98%であった。
さらに、シールガス循環経路27を経由して85ppmのキセノンを含むアルゴンを真空ポンプ15のシールガスに用いたところ、シールガス導入経路16から導入する新たなアルゴンの流量を1L/分まで低減することができた。また、前記アルゴンに含まれる85ppmのキセノンの半分が再度ガス供給装置21の系内に導入されることから、キセノンの実効消費量は、85ppm×1.05L/分×1/2=0.045cc/分となり、キセノンの回収率を約99.99%にすることができた。
実施例2
図1に示す構成のガス供給装置を、キセノンとアルゴンとの混合ガスをプラズマガスに用いてPFC(パーフルオロコンパウンド)により酸化膜(SiO2)をエッチングするエッチング装置に組み合わせた。エッチング装置では、キセノンを200cc/分、アルゴンを800cc/分、PFCであるC4F8を50cc/分でプロセスチャンバに導入し、20Pa程度の圧力でSiO2のエッチングを行う。また、エッチング形状補正のため。適宜酸素を導入することがある。また、エッチング装置からの排ガスをガス供給装置に回収する経路には、プロセスガスとしてプロセスチャンバに導入されるPFCとその分解生成物及び反応生成物であるSiF4を除去するための反応吸着装置を設置した。
ガス供給装置に回収した排ガスの総流量は約2L/分であり、そのうち、200cc/分のキセノンと800cc/分のアルゴンとがプロセスチャンバから排出されたものであり、1L/分のアルゴンが真空ポンプに導入された2L/分のアルゴンの一部である。
ガス供給装置を実施例1と略同様に運転して各部のガス成分と流量とを計測した。その結果、循環ガスのキセノン濃度は21〜23%で安定した。この濃度変動の周期は、PSA装置の工程切替時間である200秒に略一致していた。不活性ガス排出経路に排出されたアルゴンの流量は1.1L/分であり、キセノン濃度は90〜110ppmで変動した。精製器出口における水分濃度は5ppb以下であり、キセノン濃度は約22%、流量は約910cc/分であった。計測器及び演算器からの信号に基づいてアルゴン供給経路から所定量のアルゴンを添加し、キセノン濃度を約20%に調節してエッチング装置に供給した。
エッチング装置のプロセスガス供給装置で混合ガスに所定量のC4F8や酸素を添加したプロセスガスをプロセスチャンバに導入し、プラズマを生成させてSiO2のエッチングを行った。ガス供給装置から供給した混合ガスを用いた場合と、高純度のキセノン及びアルゴンを混合して用いた場合とで、ソースドレインのダメージの有無をそれぞれ計測することにより両者を比較したが、両者とも略同様の結果であった。
このときのキセノンの実効消費量は100ppm×1.1L/分=0.11cc/分であり、キセノンの回収率は約99.95%となった。また、シールガス循環経路を経由して平均約100ppmのキセノンを含むアルゴンを真空ポンプのシールガスに用いたところ、シールガス導入経路から導入する新たなアルゴンの流量を0.9L/分まで低減することができた。また、前記アルゴンに含まれる約100ppmのキセノンの半分が再度ガス供給装置の系内に導入されることから、キセノンの実効消費量は0.05cc/分となり、キセノンの回収率は約99.98%になった。
実施例3
図1に示す構成のガス供給装置を、キセノンとアルゴンとの混合ガスをプラズマガスに用いてNH3により窒化膜を形成する窒化膜形成装置に組み合わせた。窒化膜形成装置では、キセノンを300cc/分、アルゴンを700cc/分、NH3を50cc/分でプロセスチャンバに導入し、200Pa程度の圧力でSiの窒化を行う。
窒化膜形成装置からの排ガスをガス供給装置に回収する経路には、プロセスガスとしてプロセスチャンバに導入されるNH3及び生成したH2を除去するための反応吸着装置を設置した。この反応吸着装置には、NH3及びH2を反応除去するための酸素を適宜導入した。
ガス供給装置に回収した排ガスの総流量は約2.5L/分であり、そのうち、300cc/分のキセノンと700cc/分のアルゴンとがプロセスチャンバから排出されたものであり、1.5L/分のアルゴンが真空ポンプに導入された2.5L/分のアルゴンの一部である。
ガス供給装置を実施例1と略同様に運転して各部のガス成分と流量とを計測した。その結果、循環ガスのキセノン濃度は32〜34%で安定した。不活性ガス排出経路に排出されたアルゴンの流量は1.6L/分であり、キセノン濃度は約360ppmで安定した。精製器出口における水分濃度及び窒素濃度はそれぞれ5ppb以下であり、キセノン濃度は約33%、流量は約910cc/分であった。アルゴン供給経路から所定量のアルゴンを添加し、キセノン濃度を約30%に調節して窒化膜形成装置に供給した。
窒化膜形成装置のプロセスガス供給装置でNH3を混合ガスに50cc/分で添加したプロセスガスをプロセスチャンバに導入し、プラズマを生成させてSiの直接窒化を行った。ガス供給装置から供給した混合ガスを用いた場合と、高純度のキセノン及びアルゴンを混合して用いた場合とで、生成したSi3N4の膜厚をX線光電子分光分析装置(XPS)でそれぞれ計測することによって両者を比較したが、両者とも略同様の結果であった。
このときのキセノンの実効消費量は360ppm×1.6L/分=0.58cc/分であり、キセノンの回収率は約99.8%となった。また、シールガス循環経路を経由して360ppmのキセノンを含むアルゴンを真空ポンプのシールガスに用いたところ、シールガス導入経路から導入する新たなアルゴンの流量を0.9L/分まで低減することができた。また、前記アルゴンに含まれる360ppmのキセノンの半分が再度ガス供給装置の系内に導入されることから、キセノンの実効消費量は0.37cc/分となり、キセノンの回収率は約99.88%になった。
実施例4
図1に示す構成のガス供給装置を、クリプトンとアルゴンとの混合ガスをプラズマガスに用いて酸化膜を形成する酸化膜形成装置に組み合わせた。酸化膜形成装置では、クリプトンを500cc/分、アルゴンを500cc/分、O2を50cc/分でプロセスチャンバに導入し、1000Pa程度の圧力でSiの酸化を行う。
ガス供給装置に回収した排ガスの総流量は約1.5L/分であり、そのうち、500cc/分のクリプトンと500cc/分のアルゴンとがプロセスチャンバから排出されたものであり、0.5L/分のアルゴンが真空ポンプに導入された1.5L/分のアルゴンの一部である。
ガス供給装置を実施例1と略同様に運転して各部のガス成分と流量とを計測した。その結果、循環ガスのクリプトン濃度は50〜52%で安定した。不活性ガス排出経路に排出されたアルゴンの流量は0.52L/分であり、クリプトン濃度は約190ppmであった。精製器出口における水分濃度は5ppb以下であり、クリプトン濃度は約51%、流量は約980cc/分であった。アルゴン供給経路から所定量のアルゴンを添加し、クリプトン濃度を約50%に調節して酸化膜形成装置に供給した。
酸化膜形成装置のプロセスガス供給装置で混合ガスに酸素を50cc/分で添加したプロセスガスをプロセスチャンバに導入し、プラズマを生成させてSiの直接酸化を行なった。ガス供給装置から供給した混合ガスを用いた場合と、高純度のクリプトン及びアルゴンを混合して用いた場合とで、生成したSiO2の膜厚をXPSでそれぞれ計測することによって両者を比較したが、両者とも略同様の結果であった。
このときのクリプトンの実効消費量は190ppm×0.52L/分=0.1cc/分であり、キセノンの回収率は約99.98%となった。
実施例5
図2に示す構成のガス供給装置を、実施例2で使用したエッチング装置に組み合わせた。使用したガス供給装置は、貯留タンク22の容積が40Lであり、PSA装置23の吸着筒41a,41bには、内径約85mm、充填高さ550mmの吸着筒に活性炭を1.5kg充填したものを使用した。貯留タンク22内の循環ガスは、第2圧縮機32で約0.5MPaに昇圧し、約10L/分の流量でPSA装置23に導入した。エッチング装置に供給するために取り出す循環ガスは、濃縮ガス循環経路25の循環ガスの一部を経路61に分岐させて取り出し、第3圧縮機62によって0.4MPaに昇圧した。
ガス供給装置に回収した排ガスの総流量は約2L/分であり、実施例2と略同様であるが、反応吸着装置を設置していないので、回収した排ガス中には、C4F8やその分解生成物であるCF4等が含まれた状態となっている。
ガス供給装置を実施例1と略同様に運転して各部のガス成分と流量とを計測した。その結果、循環ガスのキセノン濃度は約20%で安定した。また、不活性ガス排出経路に排出されたアルゴンの流量は約1.1L/分であり、キセノン濃度は9ppmであったが、このガス中には、C4F8やその分解生成物であるCF4等が合計で約5%の濃度で含まれていた。これは、吸着剤として使用した活性炭には、PFCやその分解生成物(PFC系ガス)が吸着しないため、アルゴンと同時に吸着筒から不活性ガス回収槽43に流出したためである。このときのPFC系ガスは、エッチング装置から排出される排ガス中の濃度に比べて少なくとも20倍の濃度に濃縮されているので、PFC除害装置の小型化にも有効である。
濃縮ガス循環経路25から経路61への循環ガスの取り出しは、吸着筒のパージ段階から再生工程終了までの時間とした。このとき、精製器出口における水分濃度及びPFC系ガス濃度はそれぞれ5ppb以下であり、キセノン濃度は約20%、流量は約1L/分であった。このガスにアルゴン供給経路からアルゴンを間欠的に少量添加し、キセノン濃度を20%に調節してエッチング装置に供給した。
エッチング装置のプロセスガス供給装置で所定量のC4F8や酸素を混合ガスに添加したプロセスガスをプロセスチャンバに導入し、プラズマを生成させてSiO2のエッチングを行い、ガス供給装置から供給した混合ガスを用いた場合と、高純度のキセノン及びアルゴンを混合して用いた場合とで、ソースドレインのダメージの有無をそれぞれ計測することによって両者を比較したが、両者とも略同様の結果であった。このときのキセノンの実効消費量は9ppm×1.1L/分=0.01cc/分であり、キセノンの回収率は約99.995%であった。
さらに、エッチング装置からの排ガスをガス供給装置に回収する経路に、実施例2と同じ反応吸着装置を設置して同様の操作を行った。その結果、不活性ガス排出経路に排出されたガスの流量は約1.0L/分であり、キセノン濃度は10ppmであった。また、C4F8やその分解生成物であるCF4等の濃度は、いずれもppmオーダーであった。また、不活性ガス排出経路に排出されたガスをシールガス循環経路を経由して真空ポンプのシールガスに用いたところ、その流量が最大900cc/分までの範囲で安定に制御できることがわかった。これにより、シールガス導入経路から導入する新たなアルゴンの流量を0.9L/分まで低減することができる。
さらに、実施例2と同様にし、ガス供給装置から供給した混合ガスを用いた場合と、高純度のキセノン及びアルゴンを混合して用いた場合とで、ソースドレインのダメージの有無をそれぞれ計測することによって両者を比較したが、両者とも略同様の結果であった。
本発明は、クリプトン、キセノン、ネオンのいずれか一種のレアガスとアルゴン、ヘリウムのいずれか一種の不活性ガスとの混合ガスを使用するガス使用設備における前記混合ガスの供給装置として有効に利用できる。
本発明のレアガスの供給装置をレアガス使用設備であるスパッタリング装置に適用した一形態例を示す系統図である。
同じく他の形態例を示す系統図である。
符号の説明
11…スパッタリング装置、12…プロセスチャンバ、13…基体、14…プロセスガス供給装置、15…真空ポンプ、16…シールガス導入経路、17…プロセスガス供給経路、18…排気経路、21…ガス供給装置、22…貯留タンク、23…圧力変動吸着分離手段、24…不活性ガス排出経路、25…濃縮ガス循環経路、26…混合ガス供給経路、27…シールガス循環経路、28…不活性ガス循環経路、31…第1圧縮機、32…第2圧縮機、33…検出装置、34…循環経路、35…キセノン容器、36…流量制御器、37…不純物検出器、38…計測器、39…回収経路、41a,41b…吸着筒、42…入口経路、43…不活性ガス回収槽、44…出口径路、45…再生入口経路、46…再生出口径路、51…圧力調節器、52…供給ガス貯留タンク、53…精製器、54…演算器、55…アルゴン供給経路、56…流量調節器、61…分岐経路、62…第3圧縮機