JP7198646B2 - 非晶質の被覆層を有する遷移金属担持体およびその製造方法 - Google Patents
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本発明の担持体は、遷移金属が担体に担持された遷移金属担持体であって、前記遷移金属のサイズが0.3nm以上、20nm以下であり、前記担体のサイズが10nm以上、100μm以下であり、前記遷移金属担持体の表面に非晶質の被覆層を有し、前記遷移金属の露出率が80%以上、100%以下である。そのイメージを図1に示した。
本発明の担持体は、前述の特許文献1~3の被覆層を有する担持体と比較して、「前記遷移金属担持体の表面に非晶質の被覆層を有し、前記遷移金属の露出率が80%以上、100%以下である」という点で少なくとも相違する。特許文献1、2には、担持体に含まれる金属粒子の露出率は記載されていないが、少なくとも本発明のような「非晶質の被覆層を有しつつ、遷移金属の露出率を高める」という技術思想は開示されていない。また、特許文献3には、金属を包接材によって包接した後、耐熱性の担体の外表面に担持する触媒が開示されている。この触媒は、まず金属粒子を包接材で被覆した後で担体の外表面に担持するものであって、本発明の担持体のように遷移金属が担体に担持された担持体を被覆しているものではないが、特許文献3には金属の露出率に関する開示がある。特許文献3では、この露出率が高いほど排ガス浄化性能が高くなることが開示されている。そして、実施例では、包接材を有さず露出率が98%である比較例1と、包接材を有し露出率が78%である実施例1が開示されており、この記載に基づけば比較例1のほうが触媒活性が高くなるものと理解できる。そして、比較例1と実施例1の熱処理(700℃×3hr焼成)を行った後の触媒活性を比較すると、露出率の高い比較例1のほうが触媒活性が低くなっていることが読み取れる。このように、露出率と触媒活性は利益相反の関係にあり、露出率が高いと触媒活性は高いが熱に弱く、露出率が低いと熱には強いが触媒活性は低くなる。しかし、本発明の担持体は、非晶質の被覆層を有しつつ、遷移金属の露出率を高める、具体的には80%以上、100%以下とすることで、これらの先行技術にない、熱に強く触媒活性が高いという従来の担持体とは異なる発明の効果が得られる。
本発明の担持体は、遷移金属が担体に担持された遷移金属担持体である。本発明の担持体における遷移金属は、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素の1種類以上を含む粒子を指すものである。遷移金属の中でも、特に、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osから選ばれる少なくとも1種の元素を含む貴金属であることが好ましい。この貴金属金属の中でも、Pt、Pd、Rh、Ruから選ばれる少なくとも1種の元素を含む粒子であることが特に好ましい。これらの元素は、例えば、炭化水素の水素化反応に用いる触媒の活性成分として好適である。なお、前記遷移金属は、金属単体であってもよく、化合物であってもよい。化合物としては、例えば、酸化物でもよく、また配位子を含む錯体であってもよい。また、前記遷移金属のサイズは、0.3nm以上、20nm以下であり、0.5nm以上、10nm以下であることが好ましく、1nm以上、5nm以下であることがより好ましい。このサイズが小さいほど、遷移金属の表面積が増加するので、これを触媒の活性成分として用いると高い活性が期待できる。
本発明の担持体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)は、あらかじめ担体を調製または準備しておき、その表面に遷移金属を担持し、その表面に非晶質層を形成する製造方法である。具体的には、非晶質の被覆層を有する遷移金属担持体の製造方法であって、担体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して表面処理担体を調製する工程(以下、「表面処理工程」ともいう。)、前記表面処理担体と遷移金属とを混合して遷移金属担持体を調製する工程(以下、「遷移金属担持工程」ともいう。)、前記遷移金属担持体の表面に非晶質の被覆層を形成する工程(以下、「非晶質層形成工程」ともいう。)、とを含む、製造方法である。
本発明の製造方法は、前述の特許文献1~3の製造方法と比較して、「担体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して表面処理担体を調製する工程、前記表面処理担体と遷移金属とを混合して遷移金属担持体を調製する工程」を含むという点で少なくとも相違する。本発明の製造方法は、このように前述の特許文献1~3の製造方法にない工程を有しており、これにより、遷移金属の表面が被覆層で覆われているにもかかわらず、その露出率が高い本発明の担持体を得ることができる。そして、このような担持体は、前述のとおり遷移金属のシンタリングを抑制することができると共に、これを触媒反応に用いた場合に触媒活性が低下しにくくなる。
本発明の製造方法は、前述の表面処理工程を含む。この工程では、担体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して、表面処理担体を調製する。例えば、担体の分散液中にアミノ基を有するシランカップリング剤を適量添加して、そのまま撹拌混合することで、担体を表面処理することができる。
本発明の製造方法は、前述の遷移金属担持工程を含む。この工程では、前述の表面処理担体に遷移金属を担持して、遷移金属担持体を調製する。例えば、表面処理担体の分散液と、遷移金属の分散液を混合する方法で、遷移金属担持体を得ることができる。
本発明の製造方法は、前述の非晶質層形成工程を含む。この工程では、前述の遷移金属担持体の表面に非晶質の被覆層を形成して、本発明の担持体を得る工程である。例えば、沈殿法を用いて非晶質の被覆層を遷移金属担持体の表面に形成することができる。
<表面処理工程>
イオン交換水100gに3-アミノプロピルトリメトキシシラン1.27gを加え、室温で撹拌し、その後MFI構造を有するNH4型ゼオライト(サイズ:4.2μm、SiO2/Al2O3モル比=30)20gを加えた。これを室温で2時間撹拌して、表面処理担体の分散液を得た。
純水7240gに塩化白金酸6水和物2.39g(Ptとして0.9g)を溶解した水溶液に、錯化安定剤として濃度1.0質量%のクエン酸三ナトリウム水溶液746gと還元剤として濃度0.1質量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液62.8gとを加え、窒素雰囲気下において20℃で1時間攪拌して、白金の分散液を得た。この分散液を限外濾過膜法洗浄により精製した後濃縮し、金属換算で濃度0.04質量%の白金の分散液を得た。後述の透過型電子顕微鏡を用いた平均粒子径測定によって算出した分散液に含まれる白金のサイズは3.1nmであった。この白金の分散液20.4gを前述の表面処理担体の分散液に添加して、30分間撹拌し、遷移金属担持体の分散液を得た。
Si濃度が24.0質量%(SiO2濃度換算)のケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2/Na2Oモル比3.1)を準備し、これをイオン交換水で希釈したあと水素型陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに通過させて、Si濃度が4.6質量%(SiO2換算)、pHが2.65の酸性ケイ酸液を得た。これをさらにイオン交換水で希釈し、Si濃度0.46質量%(SiO2濃度換算)の酸性ケイ酸液を調製した。その後、この酸性ケイ酸液225gと、Al濃度が0.060質量%(Al2O3濃度換算)でありNa濃度が0.046質量%(Na2O濃度換算)であるアルミン酸ナトリウム水溶液100gとを一定速度で22.5時間かけて前述の遷移金属担持体の分散液に添加した後、室温で1.5時間攪拌した。この分散液に含まれる固形分を濾過して分離し、更にイオン交換水で洗浄後110℃で乾燥した。これを、2℃/minの昇温速度で550℃まで昇温し、空気中で4時間焼成し、非晶質の被覆層を有する遷移金属担持体を得た。
表面処理工程で3-アミノプロピルトリメトキシシランを2.00gとしたこと、遷移金属担持工程で白金の分散液を120.0gとしたこと以外は実施例1と同様にして非晶質の被覆層を有する遷移金属担持体を得た。
表面処理工程で3-アミノプロピルトリメトキシシランを2.00gとしたこと、遷移金属担持工程で白金の分散液を240.0gとしたこと以外は実施例1と同様にして非晶質の被覆層を有する遷移金属担持体を得た
実施例1で用いたNH4型ゼオライト400gに0.25Mの塩化ナトリウム水溶液4Lを加えて80℃で20分間イオン交換をし、その後濾過した。これを4回繰り返してイオン交換水で十分に洗浄した後110℃で乾燥し、Na型ゼオライトを調製した。このNa型ゼオライト5.0gに、実施例1と同様の方法で得られた白金の分散液5.1gをポアフィリング法で含浸させ、110℃で乾燥した。これを1℃/minで550℃まで昇温し、空気中で2時間焼成することで、非晶質の被覆層を有さない遷移金属担持体を得た。
透過型電子顕微鏡(HF-2200、日立ハイテクノロジーズ製)を用いて実施例1-3及び比較例1で用いた遷移金属の分散液中の遷移金属、及び、実施例1-3及び比較例1の方法で得られた担体上の遷移金属を観察した。複数の画像から、100個の遷移金属について、その粒子径dをそれぞれ測り、これを平均したものを遷移金属の平均粒子径Dとした。なお、粒子径dは,次の式(1)によって算出した。
d=(Ll/ + Ls)/2 ・・・・・・(1)
d:遷移金属の粒子径(nm)
Ll:遷移金属の長径(nm)
Ls:遷移金属の短径(nm)
ここで、遷移金属の長径とは、遷移金属の外縁と外縁を結ぶ最も長い直線の長さとし、遷移金属の短径とは、前述の直線の中点を通り遷移金属の外縁と外縁を結ぶ最も短い直線の長さとした。
実施例1-3及び比較例1の方法で得られた担体上の遷移金属に関して、平均粒子径Dを用いて以下の式(2)、(3)で遷移金属の表面積STEMを算出した。
STEM = 4 × π × (D/2)2 × n × 10-18 ・・・・・・(2)
n = 4/3 × π × (D/2)3 ÷ (ρ×10-21) ・・・・・・(3)
D:透過型電子顕微鏡観察から求めた遷移金属の平均粒子径(nm)
STEM:平均粒子径Dから理論的に求めた遷移金属1gあたりの表面積(m2/g)
n:遷移金属1gあたりに含まれる平均粒子径D(nm)の粒子の数(個)
ρ:遷移金属の密度(g/cm3)
実施例1~3の方法で得られた担持体について、COパルス吸着法により、遷移金属の表面積を算出した。
装置名:BELCAT(日本ベル株式会社)
前処理温度:450℃
前処理時間:Heを15分流通し、その後H2を1時間流通し、更にその後Heを15分流通
前処理ガス流量:30cc/min
サンプル量:0.5~1.0g
パルス吸着:50℃、100%CO
実施例1-3の方法で得られた担体上の遷移金属の表面積SCを以下の式(4)で算出した。なお、実施例1-3では、遷移金属として白金を使用したので、白金の表面積をガス吸着で測定する際に一般的なCOを吸着ガスとして使用した。
SC= MC × A ×σ ÷ R ・・・・・・(4)
SC:COパルス吸着法から求めた遷移金属1gあたりの表面積(m2/g)
MC:遷移金属1gあたりのCO吸着量(mol)
A:アボガドロ定数(mol-1)
σ:遷移金属の原子断面積(m2)
R:遷移金属1原子に吸着するCOの分子数
露出率は、前述のCOパルス吸着法により算出した遷移金属の表面積SCと、透過型電子顕微鏡観察により求めた遷移金属の平均粒子径から理論的に算出した表面積STEMの比から式(5)によって算出したものであり、担体上に存在する遷移金属のうち、表面に露出している遷移金属の割合をいう。
露出率(%) = SC/STEM × 100 ・・・・・・(5)
透過型電子顕微鏡では、表面に露出していない遷移金属も観察することが可能である。このため、担体上の遷移金属がすべて露出している場合には、透過型電子顕微鏡観察により求めた遷移金属の粒子径から理論的に算出した表面積STEMとCO吸着により算出した遷移金属の表面積SCは等しくなり、露出率は100%となる。担体上の遷移金属が完全に被覆されている場合には、CO等のガスが遷移金属の表面に吸着できなくなり、露出率は低下する。
走査型電子顕微鏡(S-5500、日立ハイテクノロジーズ製)を用いて実施例1-3及び比較例1に用いた担体を観察した。複数の画像から、100個の担体について、その粒子径をそれぞれ測り、これを平均したものを担体のサイズとした。
更に、実施例1-3の遷移金属の露出率は93~100%の間にある。実施例1-3の担持体は、図1のような極小の非晶質粒子で構成される被覆層で遷移金属が被覆されているので、高温に晒されても遷移金属の凝集が抑制されると共に、被覆層には多数の隙間があるので遷移金属の露出率が高く、これを触媒に使用しても高い活性が期待できる。
Claims (2)
- 遷移金属が担体に担持された遷移金属担持体であって、
前記遷移金属のサイズが0.3nm以上、20nm以下であり、
前記担体のサイズが10nm以上、100μm以下であり、
前記遷移金属担持体の表面に非晶質の被覆層を有し、
前記担体および前記遷移金属の表面の全てが前記被覆層で覆われており、
前記被覆層がSi、Al、Ti、Pから選ばれる少なくとも1種類の元素を含む化合物(但し、炭化物およびイオン性液体を除く)からなり、
COパルス吸着法により算出した遷移金属の表面積S c と、透過型電子顕微鏡観察により求めた遷移金属の平均粒子径から理論的に算出した表面積S TEM とから、露出率=S c /S TEM ×100の式によって算出される前記遷移金属の露出率が80%以上、100%以下である、
非晶質の被覆層を有する遷移金属担持体。 - 非晶質の被覆層を有する遷移金属担持体の製造方法であって、
担体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して表面処理担体を調製する工程、
前記表面処理担体と遷移金属とを混合して遷移金属担持体を調製する工程、
前記遷移金属担持体の表面にSi、Al、Ti、Pから選ばれる少なくとも1種類の元素を含む化合物(但し、炭化物およびイオン性液体を除く。)からなる非晶質の被覆層を沈殿法を用いて形成する工程、とを含む、非晶質の被覆層を有する遷移金属担持体の製造方法。
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