JP7198160B2 - 壁高欄の補強方法及び補強構造 - Google Patents
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このようなコンクリートの壁高欄は、経年による劣化が生じたり、コンクリート床板に生じる振動が繰り返し伝達されること等によってひび割れを生じたりすることがある。劣化が生じた壁高欄は、鋼板を添接する方法、高強度の繊維からなるシートを貼り付ける方法等によって補修又は補強することが提案されており、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されるものがある。
特許文献1に記載されているように壁高欄の側面に鋼板又は高強度繊維のシート等を貼り付ける補修では、鉄筋の腐食による劣化等に対しては有効であるが、壁高欄の下端部に作用する曲げモーメントに対しては有効な補強とすることができない。つまり、壁高欄の下端部の内側で曲げモーメントによる引張応力度が発生するときに、この引張応力度に抵抗する部材を有効に付加することが難しい。
また、この補強方法では、厚さが小さい既存の壁高欄に適用してプレストレスを導入することが可能となる。
前記横方向緊張用ブロックにコンクリート床版の側方への力を付与し、前記床版補強部材に緊張力を導入する工程と、 前記横方向緊張用ブロックを前記コンクリート床版の先端部に固定する工程と、を有するものとする。
図1は、本発明の補強方法を適用することができる壁高欄の一例を示す断面図である。
この壁高欄1は鉄道の高架橋に設けられたものであり、コンクリート床版2の両側縁部に立ち上げられ、鉄道路線の方向に連続するコンクリートの壁体となっている。上記コンクリート床版2は、鉄道路線の軸線方向に設けられた主桁3及び該主桁3とほぼ直角方向に設けられた横桁4と一体に形成されており、主桁3及び横桁4がコンクリートの支柱5によって支持されている。
この壁高欄1は、鉄筋コンクリート構造となっており、コンクリート床版2の上面に連続してコンクリートを打ち足すことによって形成され、コンクリート床板2から壁高欄1にわたって連続する鉄筋6が配置されている。コンクリート床版2から所定の高さまでは増厚部1aとなっており、所定の高さ以上の標準部1bより壁厚が増大されている。
なお、補強部材は、アラミド繊維を帯状に束ねたもの、アラミド繊維を束ねた複数のひも状体を帯状に編んだものであってもよい。
コンクリート床版2の下側では、補強部材11がモルタル又はコンクリートによって形成された緊張用ブロック12の曲面に巻き回され、上方へ方向を反転して壁高欄1の外壁面に沿って密着する位置に配置されている。
上記緊張用ブロック12は、鉄筋コンクリート、鉄筋で補強されたモルタル、短繊維を混入した繊維補強コンクリート、繊維補強モルタル等によって形成することができる。
図3(a)に示すように、壁高欄1の内壁面にある段差部にモルタル1cを詰め込み、帯状の補強部材11が連続して密着することができるように内壁面の形状を調整する。また、内壁面の直下におけるコンクリート床版2に貫通孔2aを切削する。貫通孔2aの切削には、超硬質材料による切削、打撃をともなうドリル等による機械的な切削を採用することもできるし、流体の噴流を用いた切削を採用することもできる。また、補強部材11の両端部を固定する位置には壁高欄1を水平方向に貫通するボルト孔1dを形成する。
なお、壁高欄1の下端部又はその他の位置にひび割れが生じていたり、コンクリート床板2と壁高欄1との打ち継ぎ目に目開きが生じていたりするときには、エポキシ樹脂等の注入を行う。
その後、図8に示すように緊張用ボルト16を固定ナット17から引き抜く方向に回転させる。これにより、緊張用ボルト16の先端は当接板20から離脱し、緊張用ブロック12から抜き取ることができる。緊張用ボルト16を抜き取った後のボルト孔18にはモルタルを充填する。
さらに、帯状の補強部材11が壁高欄1の内壁面又は外壁面に沿って接触している部分では、補強部材11と壁高欄1との間に未硬化の合成樹脂を含浸させ、補強部材11を壁高欄1に接着しておく。
この方法でも、緊張用ブロック12として図5に示すものと同じものを用いることができる。この緊張用ブロック12の曲面に補強部材11を巻き回し、コンクリート床版2の下側に緊張用ブロック12を支持する。そして、この方法では緊張用ブロック12にねじり合わされる緊張用ボルト16を、緊張用ブロック12の平坦な上面より突き出さないように固定ナット17にねじり合わせ、緊張用ブロック12より下方に突き出した頭部を緊張用梁23に係止する。緊張用梁23は、H形鋼23aや溝形鋼23bを用いて形成することができ、鉄道路線の方向に緊張用ブロック12より張り出す長さを有するものとする。この緊張用梁23の両側へ張り出した部分とコンクリート床版2の下面との間にそれぞれジャッキ24を介挿する。これらのジャッキ24を、緊張用梁23とコンクリート床版2の下面との間隔を拡大するように駆動することにより、補強部材11には緊張力を導入することができ、壁高欄1の下部にプレストレスを導入することができる。
この方法では、補強部材11に緊張力を導入するのに複数のジャッキ24を用いているので、補強部材11に大きな緊張力を導入することが可能となり、緊張力の管理も容易となる。
この補強構造は、図2に示す構造と同様に壁高欄1の下端部を補強部材11によって補強するのに併せて、コンクリート床版2の先端部分を曲げモーメントに対して補強するものである。
壁高欄1の下端部に作用する曲げモーメントは、片持ち状に張り出したコンクリート床版2の先端部に伝達される。したがって、コンクリート床版2の先端部は、壁高欄1の下端部と同等もしくはそれ以上の耐力を備えていることが望ましく、壁高欄1の補強にともなってコンクリート床版2の補強が必要となるときに採用することができるものである。
例えば、上記実施の形態では、鉄道の高架橋に設けられた壁高欄を補強するものであるが、道路橋に設けられた壁高欄についても適用することができる。また、鉄筋コンクリートの高架橋に限定されるものではなく、プレストレストコンクリートからなる長支間の橋梁に設けられた壁高欄、鋼桁上にコンクリート床版を支持した橋梁の壁高欄等についても適用することができる。
また、上記実施の形態で補強部材は壁高欄の下端部から内壁面又は外壁面に沿って鉛直上方に配置するものとなっているが、適宜に傾斜するように沿わせて配置することもできる。例えば、壁高欄には分電盤やスイッチボックスが取り付けられていることがあり、補強部材はこれらを回避するように傾斜して配置することができる。
その他、補強部材に緊張力を導入する手段、形態、寸法等についても状況に応じて適切なものを採用することができる。
11:補強部材, 11a:補強部材の内壁面に当接される部分, 11b:補強部材の外壁面に当接される部分, 11c:補強部材の緊張用ブロックに当接される部分, 12:緊張用ブロック, 12a:凹部, 13:鋼板, 14:ボルト, 15:無収縮モルタル, 16:緊張用ボルト, 17:固定ナット, 18:ボルト孔, 20:当接板, 21:シース, 22:型枠, 23:緊張用梁, 24:ジャッキ,
31:床版補強部材, 32:貫通孔, 33:床版緊張用ブロック, 34:無収縮モルタル
Claims (7)
- コンクリート床版の側部が片持ち状に張り出した橋梁又は高架橋に設けられ、前記コンクリート床版の側縁に沿って立ち上げられた鉄筋コンクリートからなる壁高欄の補強方法であって、
前記壁高欄の内壁面の直下に、前記コンクリート床版を上下方向に貫通し、帯状又は綱状の補強部材が挿通される貫通孔を形成するする工程と、
前記補強部材を、前記壁高欄の内壁面に沿った位置から前記貫通孔を通過し、前記コンクリート床版の下側で反転して前記壁高欄の外壁面に沿った位置にまで連続するように配置する工程と、
前記補強部材の両端部を前記壁高欄の内壁面及び外壁面にそれぞれ固定する工程と、
前記コンクリート床版の下側で、緊張用ブロックが有する曲面に前記補強部材を巻き回して前記緊張用ブロックを該補強部材に係止する工程と、
前記緊張用ブロックに下方への力を付与して前記補強部材に緊張力を導入する工程と、
前記緊張用ブロックを前記コンクリート床版に対して位置を固定する工程と、を有することを特徴とする壁高欄の補強方法。 - 前記補強部材は、軸線方向に連続する複数のアラミド繊維、炭素繊維、鉱物繊維又はガラス繊維を主材料とする帯状の部材であることを特徴とする請求項1に記載の壁高欄の補強方法。
- 前記帯状の部材の、前記壁高欄の内壁面及び外壁面に沿わせる範囲には、該帯状の部材の繊維間にあらかじめ合成樹脂を含浸し、前記緊張用ブロックに巻き回される範囲は柔軟に変形が可能な状態としておき、
該帯状の部材を前記壁高欄の内壁面に沿った位置から外壁面に沿った位置に配置し、緊張力を導入した後に、前記緊張用ブロックに巻き回した範囲に合成樹脂を含浸させることを特徴とする請求項2に記載の壁高欄の補強方法。 - 前記補強部材の両端部を前記壁高欄に固定する工程は、
前記補強部材の両端部を、それぞれ2枚の鋼板の間に挟み込んで該鋼板に接着する工程と、
該鋼板は、前記壁高欄を貫通するボルトによって該壁高欄に固定する工程と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の壁高欄の補強方法。 - 前記緊張用ブロックを固定する工程は、
前記緊張用ブロックと前記コンクリート床版との間にコンクリート又はモルタルを充填し、硬化させる工程を含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の壁高欄の補強方法。 - 前記壁高欄の下端部に、前記コンクリート床版の上面に沿った方向の横方向貫通孔を形成する工程と、
前記コンクリート床版の上面に沿った位置から前記横方向貫通孔を通過し、該コンクリート床版の先端を囲むように反転して、該コンクリート床版の下面に沿った位置にまで連続する帯状又は綱状の床版補強部材を配置する工程と、
前記床版補強部材の両端部を前記コンクリート床版の上面及び下面にそれぞれ固定する工程と、
前記床版補強部材が前記コンクリート床版の先端より側方に引き出された部分で、反転する該床版補強部材が巻き回されるように横方向緊張用ブロックを該床版補強部材に係止する工程と、
前記横方向緊張用ブロックにコンクリート床版の側方への力を付与し、前記床版補強部材に緊張力を導入する工程と、
前記横方向緊張用ブロックを前記コンクリート床版の先端部に固定する工程と、を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の壁高欄の補強方法。 - コンクリート床版の側部が片持ち状に張り出した橋梁又は高架橋に設けられ、前記コンクリート床版の側縁に沿って立ち上げられた鉄筋コンクリートからなる壁高欄の補強構造であって、
前記壁高欄の内壁面の直下に、前記コンクリート床版を上下方向に貫通する貫通孔が設けられ、
帯状又は線状の補強部材が、内壁面に沿った位置から前記貫通孔を通過し、前記コンクリート床版の下側で反転して前記壁高欄の外壁面に沿った位置にまで連続するように配置され、
前記補強部材の両端部が前記壁高欄の内壁面及び外壁面にそれぞれ固定されるとともに、前記コンクリート床版の下側に設けられた緊張用ブロックの曲面に該補強部材が巻き回わされており、
前記補強部材に緊張力が導入された状態で前記緊張用ブロックが前記コンクリート床版に固定されていることを特徴とする壁高欄の補強構造。
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