JP5174688B2 - 既設単純桁橋梁の補強構造及び補強方法 - Google Patents

既設単純桁橋梁の補強構造及び補強方法 Download PDF

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Description

本発明は、旧道路橋示方書(日本道路協会)により設計された橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁を、現行道路橋示方書(日本道路協会)に規定されている活荷重に対応できる既設単純桁橋梁の補強構造及び補強方法に関するものである。
従来より、橋脚等の支点間に単純桁を架け渡すことにより構成された単純桁橋梁は、この単純桁橋梁は、所定間隔で立設された橋台又は橋脚間に、床版の底面に設けられたH形鋼やI形断面による鋼からなる主桁を橋軸方向に架設することにより構成される。ちなみに、この主桁は、支承を介して橋脚等に対して支持されることになる。
このような単純桁橋梁においても、構造物の劣化が進展したり、或いは走行する車両により単純桁に負荷される活荷重が時代とともに変化する場合がある。かかる場合には、既存の単純桁橋梁を一度撤去した後に新たな橋梁を建造する、いわゆるスクラップアンドビルドを行うのが通常であったが、近年ではむしろ既存の単純桁橋梁について補修、補強を行うによる長寿命化を図る方針へとシフトしつつある。
ちなみに、走行する車両により単純桁に負荷される現在の活荷重が、設計時と比較して大きい場合には、単純桁に作用する応力自体も大きくなり、予め想定していた許容応力を超えてしまう場合もある。
図13は、橋脚171間に架設された単純桁172において作用する曲げモーメント図である。この曲げモーメントは、支間中央173において最大となる。設計時においては、最も重量の大きいものと想定される走行車両による最大曲げモーメントMaが支間中央173に負荷された場合においても、これに耐えられるように設計を行っていくことになる。この設計した単純桁橋梁7における支間中央173の許容曲げモーメントをMbとする。
しかしながら、時代の変遷とともに、走行車両の最大曲げモーメントがMaを超えてしまい、図中点線で示すMcに至るまで増加してしまい、許容曲げモーメントMbに迫り、或いは超えてしまう可能性も否定できない。このため、交通の安全化を図る観点から、車両走行により負荷される最大曲げモーメントMcを図中矢印D方向に示す方向へ低減させる必要があった。
従来においては、例えば、外ケーブルとコンクリート躯体の歪みに一体的になって歪む関係を持たせることを目的とし、主桁の長手方向に架設されて該主桁にプレストレスを導入する外ケーブルを取り付ける構成が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1の開示技術によれば、該外ケーブルの中間部付近を固定手段で主桁に固定することにより、外ケーブルの両端部ばかりでなく中間部付近でも外力が伝達され、当該外ケーブルのプレストレスが有効に作用するように構成されている。その結果、主桁の歪みとほぼ同じ歪みが該外ケーブルに生じるようになり、車両走行により負荷される最大曲げモーメントMcを低減させることができ、変動荷重や衝撃荷重に対して主桁の破壊耐力を向上させることが可能となる。
なお、外ケーブルへの導入張力によって桁に生じる抵抗モーメントを支間中央で上向きのモーメントへと押し上げる技術は、例えば特許文献2においても開示されている。
また、特許文献3の開示技術では、車両走行により曲げモーメントが大きくなる箇所に対して、フランジとカバープレートを万力を用いて摩擦接合することにより、フランジとカバープレートは合成一体化する技術が提案されている。この特許文献2の開示技術は、これらを合成一体化することにより、断面二次モーメントを向上させることによる耐荷力の向上を図るものである。
更に非特許文献1では、現在の床版の上に新たにコンクリートを打設し、床版のかさ上げをすることにより床版の補強を行う方法が提案されている。
特開平07−279120号公報 特開平10−131131号公報 特開2001−64912号公報
岡田郁生監修 「道路橋補修の設計・施工」山海堂 P59〜61、昭和57年
しかしながら、上述した特許文献1、2の開示技術では、外ケーブルの固定部について補強が必要となり、施工労力の負担が増大し、また施工コストが向上してしまう。特に特許文献1の開示技術では、外ケーブルの端部が接合されるアンカープレートを既設桁に添接しなければならない。このため、既設桁にボルト用孔を数箇所に亘り穿設しなければならず、断面減少を引き起こし、機械的特性にも悪影響を及ぼすことにもなる。また、このアンカープレートの添接のためには、場合によっては支保工を用いなければならず、大掛かりな工事になり、施工労力がさらに増大してしまうという問題点もあった。
また、特許文献3の開示技術では、フランジとカバープレートを万力を用いて摩擦接合する作業を行わなければならず、仮設、本工事ともに大掛かりな作業となり、施工労力の負担を解消することができない。
さらに非特許文献1の開示技術では、床版の上に新たにコンクリートを打設するためには、橋梁全体に足場を仮設する必要があり、施工労力の負担を解消することができない。
そこで、本発明は上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁について、特に大きな活荷重が負荷される場合においても耐久性を発揮させるよう補強する際において、特に施工労力、施工コストを低減することが可能な既設単純桁橋梁の補強構造及び補強方法を提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するために、少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材を設け、拡張部材上に配設した支承により既設単純桁を支持させ、上記支承による支持点には、垂直補剛材が設けられ、既設単純桁における上記支承による新たな支持点より橋軸方向端部側に位置する既存の垂直補剛材に定着ブラケットを添接し、定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルが緊張されてなることにより、支間中央の最大曲げモーメントを低減できることを見出した。
即ち、請求項1記載の既設単純桁橋梁の補強構造は、既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強構造において、少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材が設けられ、上記拡張部材上に配設された支承により上記既設単純桁を支持させ、上記支承による支持点には、垂直補剛材が設けられ、上記既設単純桁における上記支承による新たな支持点より橋軸方向端部側に位置する既存の垂直補剛材に定着ブラケットが添接され、上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルが緊張されてなることを特徴とする。
請求項2記載の既設単純桁橋梁の補強構造は、既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強構造において、少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材が設けられ、上記拡張部材上に配設された支承により上記既設単純桁を支持させ、上記支承による支持点には、垂直補剛材が設けられ、上記既設単純桁における上記支承による支持点より橋軸方向端部側に新たに設けられた垂直補剛材に定着ブラケットが添接され、上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルが緊張されてなることを特徴とする。
請求項3記載の既設単純桁橋梁の補強方法は、既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強方法において、少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材を設け、上記拡張部材上に配設した支承により上記既設単純桁を支持させ、上記既設単純桁における上記支承による新たな支持点より橋軸方向端部側に位置する既存の垂直補剛材に定着ブラケットを添接し、上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルを緊張することを特徴とする。
請求項4記載の既設単純桁橋梁の補強方法は、既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強方法において、上記既設単純桁における橋軸方向端部側に位置する既存の垂直補剛材に定着ブラケットを添接し、上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルを緊張し、少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材を設け、上記拡張部材上に配設した支承により上記既設単純桁を支持させることを特徴とする。
請求項5記載の既設単純桁橋梁の補強方法は、既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強方法において、少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材を設け、上記拡張部材上に配設した支承により上記既設単純桁を支持させ、上記既設単純桁における上記支承による支持点より橋軸方向端部側に新たに垂直補剛材を設け、上記垂直補剛材に定着ブラケットを添接し、上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルが緊張されてなることを特徴とする。
上述した構成からなる既設単純桁橋梁の補強構造並びに既設単純桁橋梁の補強方法によれば、単純桁橋梁を補強する際において、支持点を支間中央よりにシフトさせるとともに、橋軸方向端部の上側への曲げモーメントを抑制するために固定梁としている。その結果、支間中央の最大曲げモーメントを低く抑えることが可能となり、大きな活荷重が負荷される場合においても耐久性を発揮させるよう補強することが可能となる。また、大掛かりな支保工を用いたり、或いは橋梁全体に足場を仮設する必要も無く、上述した施工を実現することができることから、極めて簡単に作業を行うことができ、施工労力、施工コストを低減することが可能となる。
本発明を適用した既設単純桁橋梁の補強構造の構成図である。 図1のS領域の拡大斜視図である。 図1のS領域の側断面図である。 本発明を適用した既設単純桁橋梁の補強構造に用いられる支承の構成について説明するための図である。 定着ブラケットによる固定方法について説明するための図である。 PCケーブルの上端に取り付けられるジャッキの構成について説明するための図である。 定着ブラケットによる他の固定例について説明するための図である。 既設単純桁橋梁の補強構造の実際の施工手順について説明するための図である。 既設単純桁橋梁の補強構造の他の施工手順について説明するための図である。 本発明を適用した既設単純桁橋梁の補強構造の効果について説明するための図である。 既設単純桁における新たな支持点に、更に垂直補剛材を設ける例を示す図である。 既設単純桁を橋軸方向に直列に接続して連続桁として構成する例を示す図である。 従来技術の問題点について説明するための図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態として、既設単純桁橋梁の補強構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した既設単純桁橋梁の補強構造1の構成例を示している。この補強構造1は、支点間に既設単純桁29を架け渡すことにより構成された単純桁橋梁10について、特に大きな活荷重が負荷された場合においても、安全性を発揮させることを念頭において補強した後のものである。この図1に示す単純桁橋梁10は、支点としての橋台11間に単一の既設単純桁29を架設する構成としている。
既設単純桁29は、図1のS領域の拡大斜視図である図2に示すように、橋軸直角方向Aに向けて所定間隔で主桁8が複数配設され、主桁8の上部には、コンクリート製の床版30で一体化されている。また、それぞれの主桁8は、上フランジ31、下フランジ32、並びに上フランジ31と下フランジ32が連結されて一体化されたウェブ33とを有する。即ち、この主桁8は、いわゆるH形鋼やI形断面による鋼として構成される。この既設単純桁29には、垂直補剛材86が予め設けられている。この垂直補剛材86は、上フランジ31、下フランジ32、ウェブ33とを有する主桁8の内側に溶接により取り付けられている。この垂直補剛材86は、既設単純桁29に対して剛性を補う役割を果たすことが可能となる。
このような既設単純桁29を補強する補強構造1では、少なくとも橋台11の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材12が設けられ、拡張部材12上に配設された支承13により単純桁29を支持させてなる。また、この補強構造1では、既設単純桁29における支承13による支持点13aより橋軸方向端部側Bに位置する既存の垂直補剛材14に定着ブラケット15が添接され、定着ブラケット15に挿通されたPCケーブル16の下端を橋台11に定着させるとともに、当該PCケーブル16が緊張されている。
図3(a)は、図1のS領域の側断面図を示している。拡張部材12は、所定形状の型枠にコンクリートを流し込み、これを固化させて所定形状の部材に仕上げたものである。この拡張部材12には、鋼製の棒材39が埋め込まれている。この棒材39の先端39aは、拡張部材12内に強固に固定させる観点から、折り曲げられてなる。また、拡張部材12から突出された棒材39の他端39bは、橋台11の桁かかり部前面11aに開削された穴34に挿入され、当該穴34にモルタル、樹脂等といった経時固化材35が充填され、固定される。
なお、この拡張部材12は、上述の如きコンクリート製に限定されるものではなく、例えば図3(b)に示すように鋼製のブラケット36を用いるようにしてもよい。この鋼製のブラケット36は、橋台11に対して当接可能な当接板37が取り付けられている。そして、この当接板37を橋台11に当接させた上で、アンカーボルト38によりこれを固定するようにしてもよい。
支承13は、図4の拡大図に示すように、複数の補強板41とゴム部材42とを交互に積層してなる弾性部材40を有するいわゆる弾性支承である。支承13における弾性部材40の上端並びに下端には、それぞれ第1のフランジプレート45がボルト46により取り付けられ、またこの第1のフランジプレート45から第2のフランジプレート47に向けてボルト48により固定されている。この第2のフランジプレート47は、下端側が拡張部材12にボルト49により固定されるとともに、上端側は、主桁8の下フランジ32にボルト49により取り付けられる。ボルト49は、ナット91により固定される。その結果、主桁8を構成する下側のフランジ32は、このナット91と、第2のフランジプレート47に狭持される形となる。実際にこの支承13は、ボルトによる締結作業のみにより、拡張部材12や主桁8に対して容易に取り付け可能とされている。仮に主桁8が図中矢印方向に振動した場合においても、これに応じて弾性部材40が収縮することにより、かかる振動を吸収することが可能となる。
既存の垂直補剛材14の形成位置は、このような補強構造1を施工する以前において上述した支承13が橋台11上に設けられていた位置Pに対応している。図5(a),(b),(c)は、定着ブラケット15が設けられている箇所における横断面図を示しており、図5(a)は、その橋幅方向全体に亘る横断面図を、また、図5(b)は、その部分拡大図を、さらに図5(c)は、その平面図を示している。この垂直補剛材14は、鋼板により構成されてなり、上フランジ31、下フランジ32、ウェブ33とを有する主桁8の内側に取り付けられている。この垂直補剛材14は、上フランジ31、下フランジ32、ウェブ33に対してそれぞれ溶接により固定されている。垂直補剛材14は、ウェブ33の両側においてそれぞれ設けられている。
定着ブラケット15は、図5(b),(c)に示すように、ウェブ51の上端に上フランジ52が、またその下端には下フランジ53が形成されている。このうちウェブ51は、垂直補剛材14に対してボルト101により螺着固定されている。この定着ブラケット15は、鋼板で構成されており、垂直補剛材14への取り付け側が下側に拡幅された形状とされている。上フランジ52は、垂直補剛材14への取り付け側に至るまで延長されている。また下フランジ53は、ウェブ51における下端の拡幅位置に至るまで延長されている。ちなみに、この上フランジ52並びに下フランジ53は、それぞれウェブ51に対して溶接により固着されている。
主桁8は、図5(a)に示すように、橋幅方向に所定間隔をおいて複数に亘り設けられているが、この主桁8の何れに対しても、定着ブラケット15は、橋幅方向両側においてそれぞれ取り付けられている。
定着ブラケット15には、PCケーブル16が挿通されている。具体的には、このPCケーブル16は、上フランジ52並びに下フランジ53に開削された孔52a、孔52bに挿通されている。
PCケーブル16は、上端が上フランジ52の上部から突出され、下端が橋台11の内部において埋入されている。PCケーブル16は、PC鋼線(直径8mm以下の高強度鋼)、PC鋼棒(直径10mm以上の高強度鋼)又は細いPC線を捩り合わせた棒体等により構成されている。また、PCケーブル16は、少なくともその上端並びに下端においてねじ部が形成されている。
PCケーブル16の上端にはジャッキ63が取り付けられている。このジャッキ63は、PCケーブル16に軸力を導入することにより緊張させるものである。このジャッキ63は、図6に示すように、PCケーブル16の先端に緊張ロッド65を接続し、この緊張ロッド65にラムチェアー66とセンターホールジャッキ67を装着する。そして、このセンターホールジャッキ67の後端部に緊張ロッド65を係止させる。実際に緊張ロッド65をセンターホールジャッキ67に係止させるためには、緊張ロッド65の先端部に螺着されたナット60と支圧板68とを介して行う。
緊張ロッド65がセンターホールジャッキ67の後端部に係止されると、センターホールジャッキ67を駆動し、支圧板68を介して定着ブラケット15に反力を負荷することにより、PCケーブル16を定着ブラケット15から引き出すように引張力を付与する。そして、PCケーブル16が定着ブラケット15から引き出されるのにしたがって、ラムチェアー66の側方からナット69を回転させて締め込む。そして、このナット69が締め込まれるにつれて、センターホールジャッキ67の駆動を停止し、緊張ロッド65の牽引を解除してナット69を支圧板70に係止する。これにより、PCケーブル16は引張力が導入された状態で定着され、PCケーブル16の反力が定着ブラケット15に作用して緊張力が導入される。
PCケーブル16の下端には、テーパーナット71が取り付けられる。このテーパーナット71は、橋台11内部に埋め込まれて構成されており、ねじ孔72が中央に形成されている。そして、PCケーブル16の下端には図示しないスリーブが装着されており、その図示しないスリーブの外周に形成された雄ねじ部がこのテーパーナット71におけるねじ孔72に螺着固定される。このような橋台11内部に埋め込まれたテーパーナット71にPCケーブル16を固定させることにより、上述した緊張力に対して抵抗することが可能となる。なお、このテーパーナット71の代替として、例えばメカニカルアンカー又は樹脂アンカーにより固定するようにしてもよい。
更にこのPCケーブル16の橋台11表面近傍には偏向具73が取り付けられている。この偏向具73も同様にねじ孔74が形成され、テーパーナット71との間でPCケーブル16下端を固定する際に利用される。
偏向具73は、ポリエチレン製で構成され、PCケーブル16を挿通可能な貫通孔が上方に向けて拡径された状態で形成されてなり、この挿通させたPCケーブル16の位置決めを自在に行うことが可能とされている。この偏向具73は、PCケーブル16の位置を調整した後、橋台11の表面に取り付け固定可能とされている。
なお、上述した定着ブラケット15は、図5に示すように互いに主桁8間で隣接する定着ブラケット15間で離間している場合に限定されるものではなく、例えば図7に示すように、定着ブラケット151を介して主桁8が連結されている構成を採用するようにしてもよい。これにより、橋幅方向の応力伝達性能を向上させることが可能となる。 このような構成からなる既設単純桁橋梁の補強構造1の実際の施工手順について、以下説明をする。
図8(a)に示すように、支点間に既設単純桁29を架け渡すことにより構成された補強前の単純桁橋梁10を実際に補強する場合について説明する。この補強前の既設単純桁29は、橋台11の位置Pにおいて支承83により支持されている。また、この位置Pに対応する箇所において既存の垂直補剛材14が形成されている。この状態では、図10(a)に示すように、曲げモーメントが支間中央において非常に大きくなってしまうのが分かる。
このような状態から、実際に補強のための施工を開始する。先ず、図8(b)に示すように、橋台11に拡張部材12を取り付ける。この拡張部材12の取り付けは、上述したように、橋台11における桁かかり部前面11aにおいて開削された穴34に拡張部材12から突出された棒材33を挿入し、経時固化材35をその穴34に充填することにより固定する。ちなみに、この段階において、既設単純桁29は、まだ位置P上において設けられた支承83により支持されている。
次に図8(b)に示すように、補剛材14に対して定着ブラケット15を設ける。このとき、定着ブラケット15におけるウェブ51に対して、ボルト51により螺着固定を行う。ちなみに、この拡張部材12の取り付けや、定着ブラケット15の配設は、何れを先に実行するようにしてもよいし、同時に実行するようにしてもよい。
次に図8(c)に示すように、拡張部材12における支持点13aにおいて、支承13を設け、この支承13を介して既設単純桁29を支持させる。なお、最初に位置Pにおいて支持していた支承83はそのままの状態で放置しておいてもよいし、撤去するようにしてもよい。
次に図8(d)に示すように、橋台11における位置Pを削孔することにより、テーパーナット71を埋め込み、更に定着ブラケット15にPCケーブル16を挿通させ、その下端を、雄ねじが外周の形成された図示しない装着用スリーブを介してテーパーナット71に固定させる。また、PCケーブル16の上端には上述したジャッキ63を取り付け、更に偏向具73を取り付ける。そして、PCケーブル16の上端に取り付けられたジャッキ63について、上述の如き操作を行うことにより、かかるPCケーブル16に軸力を導入することにより緊張させる。その結果、PCケーブル16の緊張による応力が、定着ブラケット15、垂直補剛材14へと伝達され、さらにはこの垂直補剛材14に接続されている既設単純桁29へと伝達され、当該既設単純桁29の橋軸方向端部について下方向へ荷重を負荷することが可能となる。
なお、本発明を適用した既設単純桁橋梁の補強方法は、上述した順序で実行する場合に限定されるものではなく、例えば、下記に説明する順序に基づいて実行するようにしてもよい。
最初に図9(a)に示すように、補剛材14に対して定着ブラケット15を設ける。
次に図9(b)に示すように、橋台11における位置Pを削孔することにより、テーパーナット71を埋め込むとともに、更に定着ブラケット15にPCケーブル16を挿通させ、その下端をテーパーナット71に固定させる。また、PCケーブル16の上端には上述したジャッキ63を取り付け、PCケーブル16に軸力を導入することにより緊張させる。
次に図9(c)に示すように、補剛材14に対して定着ブラケット15を設ける。このとき、定着ブラケット15におけるウェブ51に対して、ボルト51により螺着固定を行う。次に橋台11に拡張部材12を取り付ける。
次に図9(d)に示すように、拡張部材12における支持点13aにおいて、支承13を設け、この支承13を介して既設単純桁29を支持させる。
図10(b)は、既設単純桁橋梁の補強構造1の実際の施工後における、曲げモーメント図を示している。施工を通じて、支承13による支持点13aを、当初の位置Pから支間中央側にシフトさせている。その結果、支間中央の最大曲げモーメントは、施工前と比較して小さく抑えることができる。しかしながら、この支持点13aを位置Pから支間中央側にシフトさせることにより、既設単純桁29の橋軸方向端部は、図10(b)に示すように上側に曲げモーメントが発生してしまう。この上側への曲げモーメントを抑えるために、PCケーブル16に軸力を導入することにより緊張させる。その結果、既設単純桁29の橋軸方向端部の上側への曲げモーメントが、図中点線で示される部分まで低減されることになる。また、いわゆる固定梁の状態となり、曲げモーメントを大幅に低減可能となる。実際に、この橋軸方向端部に発生した曲げモーメントをいかなる量に亘って低減させるかについては、PCケーブル16に導入する軸力を通じて自在に調整することが可能となる。
このように本発明によれば、単純桁橋梁10を補強する際において、支持点13aを支間中央よりにシフトさせるとともに、橋軸方向端部の上側への曲げモーメントを抑制するために固定梁としている。その結果、支間中央の最大曲げモーメントを低く抑えることが可能となり、大きな活荷重が負荷される場合においても耐久性を発揮させるよう補強することが可能となる。
また、本発明によれば、大掛かりな支保工を用いたり、或いは橋梁全体に足場を仮設する必要も無く、上述した施工を実現することができることから、極めて簡単に作業を行うことができ、施工労力、施工コストを低減することが可能となる。
また本発明は、図11に示すように、既存の垂直補剛材14に対して定着ブラケット15を直接設ける場合に限定されるものではなく、この垂直補剛材14の代替として新たな垂直補剛材95を支持点13aより橋軸方向端部側において設けるようにしてもよい。この図11の例では、この垂直補剛材95の配設位置を垂直補剛材14よりも支間中央方向にシフトさせている。これにより、実際に既設単純桁29に対してPCケーブル16により緊張する位置を自在に調整することが可能となり、所望の曲げモーメントの分布に容易に調整可能となる。
また上述した実施の形態では、あくまで支点としての橋台11間に単一の既設単純桁29を架設する単純桁橋梁10を例に挙げて説明をしたが、図12に示すように、既設単純桁29を橋軸方向に直列に接続して連続桁91として構成するようにしてもよい。この図12において、上述した図1〜図11と同一の構成要素、部材に関しては、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
単純桁橋梁10が橋台11間において、橋脚92が1又は複数に亘って所定間隔で設けられている。そして、互いに隣接する橋台11、橋脚92間において、既設単純桁29が跨るようにして架設され、それぞれの既設単純桁29は互いに定着具93を介して連結されている。
このような単純桁橋梁10においても同様に、橋台11に対しては拡張部材12を設け、当該拡張部材12において支承13を介して既設単純桁29を支持するとともに、橋脚92に対しても同様に拡張部材12を設け、当該拡張部材12において支承13を介して既設単純桁29を支持する。また、この橋脚92においても同様に、定着ブラケット15に挿通させたPCケーブル16の下端を固定する。これにより、連続桁91として構成する場合においても、支間中央の最大曲げモーメントを低く抑えることが可能となり、大きな活荷重が負荷される場合においても安全性を発揮させるよう補強することが可能となる。
1 既設単純桁橋梁の補強構造
8 主桁
10 単純桁橋梁
11 橋台
12 拡張部材
13 支承
14 垂直補剛材
15 定着ブラケット
16 PCケーブル
29 既設単純桁
30 床版
31 上フランジ
32 下フランジ
33 ウェブ
34 穴
35 経時固化材
36 ブラケット
37 当接板
38 アンカーボルト
39 棒材
40 弾性部材
41 補強板
42 ゴム部材
45 第1のフランジプレート
46、48、49、101 ボルト
47 第2のフランジプレート
51 ウェブ
52 上フランジ
53 下フランジ
60 ナット
61 PCケーブル
63 ジャッキ
65 緊張ロッド
66 ラムチェアー
67 センターホールジャッキ
68 支圧板
71 テーパーナット
72 ねじ孔
73 偏向具
83 支承
92 橋脚

Claims (5)

  1. 既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強構造において、
    少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材が設けられ、
    上記拡張部材上に配設された支承により上記既設単純桁を支持させ、上記支承による支持点には、垂直補剛材が設けられ、
    上記既設単純桁における上記支承による新たな支持点より橋軸方向端部側に位置する既存の垂直補剛材に定着ブラケットが添接され、
    上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルが緊張されてなること
    を特徴とする既設単純桁橋梁の補強構造。
  2. 既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強構造において、
    少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材が設けられ、
    上記拡張部材上に配設された支承により上記既設単純桁を支持させ、上記支承による支持点には、垂直補剛材が設けられ、
    上記既設単純桁における上記支承による支持点より橋軸方向端部側に新たに設けられた垂直補剛材に定着ブラケットが添接され、
    上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルが緊張されてなること
    を特徴とする既設単純桁橋梁の補強構造。
  3. 既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強方法において、
    少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材を設け、
    上記拡張部材上に配設した支承により上記既設単純桁を支持させ、
    上記既設単純桁における上記支承による新たな支持点より橋軸方向端部側に位置する既存の垂直補剛材に定着ブラケットを添接し、
    上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルを緊張すること
    を特徴とする既設単純桁橋梁の補強方法。
  4. 既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強方法において、
    上記既設単純桁における橋軸方向端部側に位置する既存の垂直補剛材に定着ブラケットを添接し、
    上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルを緊張し、
    少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材を設け、
    上記拡張部材上に配設した支承により上記既設単純桁を支持させること
    を特徴とする既設単純桁橋梁の補強方法。
  5. 既設単純桁が橋台又は橋脚間に架設された既設単純桁橋梁の補強方法において、
    少なくとも上記橋台又は上記橋脚の縁端から支間中央へ張り出すように拡張部材を設け、
    上記拡張部材上に配設した支承により上記既設単純桁を支持させ、
    上記既設単純桁における上記支承による支持点より橋軸方向端部側に新たに垂直補剛材を設け、
    上記垂直補剛材に定着ブラケットを添接し、
    上記定着ブラケットに挿通されたPCケーブルの下端を上記橋台又は上記橋脚に定着させるとともに、当該PCケーブルが緊張されてなること
    を特徴とする既設単純桁橋梁の補強方法。
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