JP7196377B2 - 梅菓子の製造方法、および、それによって製造された梅菓子 - Google Patents
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Description
一般的な甘梅は、完熟梅の1つ1つの軸を取り、竹串で突いて複数箇所に孔を開け、約3%程度の濃度とした塩水に没した状態で約3日間程度浸けた後、水気を切ってから3~4%濃度とした酢入りの熱湯に少しずつ入れて湯がき、湯がき上がった梅は、熱湯から引き上げ、ホワイトリカー、三温糖、上白糖等が混ぜ合わされた砂糖溶液中で40分間程度に渡って煮詰め、その後、ワックスペーパーで密閉して空気に触れない状態を実現し、常温にて発酵させないように保存してから、さらに、発酵を確実に阻止するために3日目~4日目に1度、全ての梅を砂糖液中から取り出して砂糖液のみを再加熱して殺菌処理し直し、煮詰められて熱い状態の砂糖液中に再び梅を戻すが、砂糖液の減少分だけ再度砂糖を煮溶かして砂糖液を作り、梅が外気に露出しない状態に没して浸けられた状態となるようにし、殺菌を兼ねた砂糖液の濃度を高める工程を3度程に分けて実施した後、砂糖液に浸けた状態で密閉し、発酵しないように注意して常温にて2週間程保存すれば、ようやく甘梅が完成するという、非常に手間と時間とを要し、工場において大量生産するにしても非常に高価な食品となってしまうものであった。
こうした状況に鑑み、本願出願人は、その打開策となるものとして、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、傷や腐敗箇所のない選果された完熟梅を、約4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、必要に応じて、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することにより、完熟梅の糖度が62以上で型崩れのない甘梅に仕上げるようにし、より効率的に、略理想的な形や色、艶風味や食感を有する甘梅の製造に最適な製造方法を既に開発し、実用化済みとしている。
上述したとおり、本願出願人は、従前までに開発済みとしてきたオレンジ色の甘梅およびオレンジ色の甘梅干しなどに加えて販売できる新たな梅菓子の商品化を模索している中、高品質のオレンジ色の甘梅を製造する過程で発生する使用済みの砂糖溶液は、その砂糖溶液の中に浸漬状とされた完熟梅から溶出した梅果汁および梅のエキスが豊富に含有されたものとなっているにも拘らず、次回生産以降のオレンジ色の甘梅の品質を一定に保つ目的から、オレンジ色の甘梅の生産には用いることができず、これまで廃棄処分せざるを得ないという事情があった。
そこで、この発明は、本願出願人が、既に開発済みとしたオレンジ色の甘梅とは色合いが異なる新たな甘梅商品の開発を実現化することができる上、オレンジ色の甘梅の生産によって発生する梅果汁および梅のエキスが豊富に含まれた熟成砂糖溶液を有効活用し、より一層経済的に生産可能とする新たな甘梅の製造技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に亘って試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な梅菓子の製造方法、および、それによって製造された新規な梅菓子を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の梅菓子の製造方法は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、選果した完熟梅を塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら完熟梅を所定の条件に保持して砂糖濃度を高める濃縮処理を継続する一方、殺菌処理を併用すると共に、交ぜ返し処理を実施するようにしてオレンジ色の甘梅としたところで、梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、新たな完熟梅を塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、これら新たな完熟梅を所定の条件に保持して砂糖濃度を高める濃縮処理を継続する一方、殺菌処理を併用すると共に、交ぜ返し処理を実施することによって褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにしてなる構成を要旨とする梅菓子の製造方法である。
上記した梅菓子の製造方法に関連し、この発明には、それによって製造された梅菓子も包含している。
即ち、傷や腐敗箇所のない選果された完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該完熟梅を糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅としたところで、この砂糖溶液の中より該オレンジ色の甘梅を取り除き、該オレンジ色の甘梅の製造過程を経て梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、傷や腐敗箇所のない選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにした、この発明の基本をなす梅菓子の製造方法によって製造された梅菓子である。
この褐色の甘梅の生産の過程で獲得した熟成砂糖溶液を、次回以降の褐色の甘梅の生産に繰り返して利用して行くようにすることにより、熟成の度合いを次第に高め、従前までの製造方法では得ることのできない新たな外観色および香味を呈する梅菓子を永続的に提供し続けることができるものとなる。
梅菓子の製造に使用する梅は、大梅の品種のもので、傷や汚れが付いていないようできるだけ厳正に選果した完熟梅を採用するのが、その出来上がりの豪華さ、果肉の豊かさからして望ましいと言えるが、完熟した中梅、小梅であっても勿論製造することが可能であることはいうまでもない。
甘梅を製造する段階にあっては、後述する実施例にも示すように、4%濃度の塩水による低温、塩蔵処理は、害虫除去と表皮上に残存する不純物処理とに欠くことができず、また、果肉を引き締め、糖熟の進行を止める作用も果たし、以降の処理工程を円滑且つ確実に実施することを保証することにも繋がっていく重要な工程であり、所定個数毎容器に並べ、大型冷蔵庫の中で、梅の組織に影響を来すことのない1~10℃、望ましくは5℃前後の温度に維持して約72時間程度の時間を掛けて保管するようにする。
1日の間のその余の時間帯は、完熟梅果肉内への砂糖成分の浸透、定着を図るため常温、安定処理期間とするようにし、この濃縮期間には、約10~15日間程度、その間の平均室温や完熟梅の完熟程度等を考慮しながら、主として表皮の変化を観察しつつ、慎重且つ十分に時間を掛けて進行させるのが良い。
加温程度が60℃未満では、十分な殺菌効果が期待できず、その後において醗酵現象を来す虞があり、また、80℃を超えて不必要な高温にまで加熱してしまうと、果肉の崩れに繋がることになって適切ではない。
糖度62未満では、製造後に醗酵を来す虞がある上、風味や形、艶の保持などが難しくなり、菓子としての商品価値を損ねることが懸念される。
また、糖度が64を越すと表皮上に砂糖の結晶化現象が起きて干し柿様の甘梅となることから、極めて潤いのある甘梅としての製品化を図るか、干し柿様の甘梅とするかにより、糖度を62~64内に止どめるか、64を超えるものとするか、製品の意図に応じて吟味した製造を必要とするところであり、本願発明の梅菓子を効率的に製造するには、この段階において糖度64以上まで上昇させてしまうのが望ましい。
この凍結処理工程は、-30~-20℃という極低温で迅速に凍結し、果肉内部までを完全に凍結してから凍結状のままの果実に90~100℃に加熱した砂糖溶液を浸し、以降は、上記の完熟梅に施したと同様の処理工程を実施することにより、これら完熟梅以外の果実にあっても、略完熟梅に匹敵する程の風味と形、色艶とを備えた甘梅の製造を可能とし、それらの特徴を活かした梅菓子を提供、可能にするものとなる。
そして、この日光浴の効果は、上記した完熟梅の製造過程においても、完熟梅自体で発現していく明るい黄色が、鮮やかで艶のあるオレンジ色に発色していく作用を有していることも確認できており、何れの製造方法においても、この日光浴の工程を経過させ、所謂メイラード反応を伴って発色するよう導くことが、その商品価値を高める上で極めて有効な製造方法であるといえる。
また、麦芽糖粉末か麦芽糖顆粒かの何れか一方、または、それらの適宜比率による混合物を使用するのが望ましいが、麦芽糖は、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、乳糖、パラチノース、表現を変えていうとグラニュー糖、黒砂糖、三温糖、またはそれらを加えたきな粉などに置き換えることが可能である。
したがって、オレンジ色の甘梅の製造過程では、傷や腐敗箇所のない選果された若梅や半完熟梅または赤焼け梅の何れか一を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行ってから冷凍処理して果肉内部まで凍結状となし、この凍結状となった梅果実を、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、この梅果実を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間に亘り、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することにより、これら梅果実を糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅としたところで、この砂糖溶液の中からオレンジ色の甘梅を取り除き、オレンジ色のこれら甘梅の製造過程を経て梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得するようにしたものとすることができる上、さらに、このオレンジ色の甘梅を、40~50℃の範囲で一週間に亘り、陰干し乾燥させ、甘梅の糖度が75以上とした上、甘梅の表面全体に麦芽糖粉末または顆粒の少なくとも何れか一方をまぶすようにし、オレンジ色の甘梅干しとすることが可能である。
オレンジ色の甘梅に加工する完熟梅(梅果実)と、褐色の甘梅に加工する完熟梅(梅果実)とを、説明上、明らかにするため、実質的には同じ条件で選果された完熟梅(梅果実)を、オレンジ色の甘梅に加工する梅果実を完熟梅とし、褐色の甘梅に加工する梅果実を新たな完熟梅として示すこととする。
即ち、褐色の甘梅を製造する過程では、傷や腐敗箇所のない選果された若梅、半完熟梅または赤焼け梅の何れか一の新たな梅果実を、約4%濃度の塩水中で約72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行ってから冷凍処理して果肉内部まで凍結状となし、この凍結状となった新たな梅果実を砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該新たな梅果実をこの砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、この砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該新たな梅果実を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにする梅菓子の製造工程、および、それによって製造された梅菓子がそれである。
この陰干し乾燥期間に40℃未満の温度に設定してしまうと、効率的な乾燥と十分な殺菌効果とを得ることができず、また、50℃を超えるまで加熱してしまうと、果肉の崩れに繋がることになって適切ではなく、さらに、40~50℃の範囲であっても一週間未満では、十分に糖度を濃縮することができず、一週間を超えてしまうと褐色の甘梅の乾燥が進み過ぎて変色や皺、ひび割れなどを発生し、外観や食感を悪化させてしまうこととなり、さらに、この期間中、直射日光に晒してしまうと、褐色の甘梅の異常な変色や変質、食味の悪化などを招いてしまうことから、必ず陰干ししなければならず、褐色の甘梅の日光浴による表皮および果肉の発色処理に関しては、前述の通り、新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用する発色促進処理によって行うのが良い。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成について詳述することとする。
完熟梅の前処理工程(1)は、粒の大きさを揃え、外観の確認を行った完熟梅(10)の軸を取り、枝、葉等の大きなゴミを取り除いた後、移動可能な大型容器等に4%の塩水を作り、この塩水中に完熟梅を完全に没した状態とした上、大型の冷蔵室にて5℃前後の低温保存により、約3日間程度に渡る塩蔵処理(11)を行い、塩蔵処理(11)を開始してから72時間(前記約3日間程度)以上を経過した完熟梅を、冷蔵室から運び出して大型の笊に移し、暫くそのまま放置して十分に塩水を切り(12)、比較的浅めのトレイの中に、それら塩水を切った完熟梅が重なり合ってしまわない個数分だけ収容するようにする。
なお、これら砂糖溶液を注がれたトレイは、3~5段程度で作業者がトレイ内部を確認できる範囲の高さにしつらえた多段式の棚に並べ置くようにして収容効率を良くすると共に、各棚に載置したトレイに、平均して日光が注がれるようその構造を配慮したものとする。
その間、3日に1回程度の割合で砂糖溶液が60℃以上80℃以下に達するまでヒーターで室温を上昇させ、砂糖溶液による醗酵を抑えるための加温殺菌処理(21)を実施するが、併せてトレイ中の完熟梅を静かに動かす交ぜ返し処理(4)も実施するものとし、完熟梅の変形や部分的な変色を防止すると共に、砂糖溶液の浸透具合が平均化されるようにする。
なお、砂糖溶液が減少気味で完熟梅が十分に浸漬状とならず、部分的に空気に晒されてしまう虞を生じたときには、濃度を調整し、加温した同様の砂糖溶液を補充する必要がある。
こうして、濃縮処理(20)を継続しながら、トレイ内の要所々々の完熟梅の糖度を検出し、その糖度が62に達した頃合を見計らって、この濃縮処理工程(2),(20),(21)を終了(5)し、トレイ毎、加工場内に移動して自然冷却するか、または、加温状態を維持したままかの何れかの状態にあるオレンジ色の甘梅を、トレイ内から取り出し、別のトレイ上に、互いに接触しないよう配列、載置して、元のトレイ内に残された梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得する(6)。
前記砂糖溶液よりオレンジ色の甘梅を取り出し(6)、獲得した梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液は、褐色の甘梅の製造に用いる場合(7),(B)に、図3に示すように、褐色の甘梅干しの製造工程に従って利用することとなる。
この際に使用する熟成砂糖溶液が、必要量に達していない場合には、同じ製造工程の別ロットで獲得し、同様に裏漉し処理(A)が施された熟成砂糖溶液と混合するのが望ましいが、新たに、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として十分に混合、撹拌し、90℃~100℃にまで加熱して煮溶かした砂糖溶液を該熟成砂糖溶液に追加、混合し充分に撹拌して混ぜ合わせ、必要量を満たした上、新たな完熟梅を浸漬するようにすることができる。
なお、これら熟成砂糖溶液を注がれたトレイは、3~5段程度で作業者がトレイ内部を確認できる範囲の高さにしつらえた多段式の棚に並べ置くようにして収容効率を良くすると共に、各棚に載置したトレイに平均して日光が注がれるようその構造を配慮したものとする。
その間、3日に1回程度の割合で熟成砂糖溶液が60℃以上80℃以下に達するまで室温をヒーターで上昇させ、熟成砂糖溶液による醗酵を抑えるための加温殺菌処理(B1)を実施するが、併せてトレイ中の新たな完熟梅を静かに動かす交ぜ返し処理(D)も実施するものとし、新たな完熟梅の変形や部分的な変色を防止すると共に、熟成砂糖溶液の浸透具合が平均化されるようにする。
こうして、濃縮処理(B0)を継続しながら、トレイ内の要所々々の新たな完熟梅の糖度を検出し、その糖度が62に達した頃合を見計らって、この濃縮処理工程(B),(B0),(B1)を終了(E)し、トレイ毎、加工場内に移動して自然冷却するか、または、加温状態を維持したままかの何れかの状態にある褐色の甘梅を、トレイ内より取り出し、別のトレイ上に、互いに接触しないよう配列、載置して、元のトレイ内に残された梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得(F)し、この褐色の甘梅の製造で獲得(F)した梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液は、別ロットの褐色の甘梅の製造に使用(G)することができ、同様に使用し続けて熟成砂糖溶液の熟成度をさらに高めながら使い続けることができる。
以上のとおりのこの発明の梅菓子の製造方法、およびそれによって製造された梅菓子によれば、その製造過程における甘梅の製造が、従前に行われていた甘梅の製造方法に比較して、確実にその製造工程を簡素化することができ、人件費等を削減して製造コストの大幅な削減が可能となる上、品質を安定させた大量生産が可能となり、しかも実施例1の図1および図2に示したように、甘梅を所定温度範囲の下、陰干し乾燥処理(8)することによって糖度を75以上に調整し、褐色の甘梅干しとし、該褐色の甘梅干しの表面に麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方をまぶす(9)ことにより、麦芽糖の溶解を確実に防止して、表面の乾燥状態を保つと共に、褐色の甘梅干し内部の乾燥を防ぎ、果肉の柔らかさを保つことが可能となる。
このように、この実施例の製造方法は、従前までの製造方法を単に応用しただけでは、複数回に渡り、熟成砂糖溶液か新たな梅果実を取り出し、分離して、熟成砂糖溶液を殺菌温度まで再加熱し、再度新たな梅に戻すといった繁雑な工程が必要であったが、ハウス内に並べ置いたまま、室温調整を所定の期間と温度とに制御しながら繰り返し作業を実施するだけで、新たな梅果実はもとよりのこと、トレイや熟成砂糖溶液等といった器具、素材の移し代えのように人手を煩わす作業が大幅に削減されて省力化される秀でた褐色の甘梅干しの製造工程となっており、また、図1に示すように、梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液の獲得する過程で行うレンジ色の甘梅の製造工程も同様に、製造工数を大幅に削減できるものとなる。
この後、記述した完熟梅(または新たな完熟梅)の場合であれば、所定濃度とした砂糖溶液(または熟成砂糖溶液)中に浸漬して濃縮処理(29),(B0)に入ることとなるが、この若梅の場合には、その濃縮処理(29),(B0)に入る前処理として、水気の切れた若い梅を、次の濃縮工程において必要となるトレイ中に収容した上-30~―20℃という極低温に維持できる冷凍室内に移し、効率良く凍結処理(13)を実施して果肉内部まで凍結状としてしまわなければならない。この工程を実施することにより、以降の濃縮処理(29),(B0)による果皮の皺寄りと、果肉崩れとを確実に防止することが初めて可能となるものであって、極めて重要な工程となる。
実施例2の梅菓子の製造方法によれば、図4に示すように、完熟した梅果実だけではなく、それ以外の若取り梅果実、半完熟の梅果実、そして、商品価値の極めて劣る赤変した梅果実に至っても、同様に梅菓子への製品化を可能とする極めて効果的且つ新規な製造方法を確立し得たものであり、あらゆる成長過程の梅であっても、傷や病気に冒されていない限り、価値ある梅菓子としての商品化が可能となる。
叙述の如く、この発明の梅菓子の製造方法、および、それによって製造された梅菓子は、従前までに伝統的に受け継がれてきていた甘梅の製造方法に対し、その製造効率上からも、コスト上からも遥かに有利なものとなっていて、高品質な梅菓子の製造が比較的安価にして大量生産することが可能となり、梅栽培農家の収入安定、梅菓子製造者にとっては規模拡大による高収益の保証、延いては、消費者にとっては手間隙を掛けて自家製造するまでもなく、高品質の梅菓子の手軽な入手が可能になるという、三者三様に秀でた効果がもたらされる結果、我が国を代表する果実でありながら、生食に不向きな性状故に、その有効利用の道がなかなか開けてこなかった梅果実が、この発明の梅菓子、およびその製造方法の確立により、大いに期待できるものになるという効果は、高く評価されて然るべきであるといえよう。
10 同 完熟梅の選果作業
11 同 完熟梅の塩蔵処理
12 同 完熟梅の水切り処理
13 同 完熟梅以外の梅果実の冷凍処理
2 完熟梅の加熱砂糖溶液中への浸漬処理
20 同 砂糖溶液の濃縮処理
21 同 砂糖溶液の加熱殺菌処理
3 太陽光照射を併用した発色促進処理
4 砂糖溶液の混ぜ返し処理
5 オレンジ色の甘梅への仕上げ
6 オレンジ色の甘梅を取り出し熟成砂糖溶液を得る工程
7 熟成砂糖溶液の使用の判断
8 オレンジ色の甘梅の陰干し乾燥処理
9 麦芽糖粒子をまぶしてオレンジ色の甘梅干しを完成する工程
A 熟成砂糖溶液の裏漉し処理
B 熟成砂糖溶液に新たな完熟梅を浸漬する工程
B0 同 熟成砂糖溶液の濃縮処理
B1 同 熟成砂糖溶液の加熱殺菌処理
C 太陽光照射を併用した発色促進処理
D 熟成砂糖溶液の混ぜ返し処理
E 褐色の甘梅への仕上げ
F 褐色の甘梅を取り出し熟成砂糖溶液を得る工程
G 熟成砂糖溶液の使用の判断
H 褐色の甘梅の陰干し乾燥処理
J 麦芽糖粒子をまぶして褐色の甘梅を完成する工程
Claims (6)
- 選果した完熟梅を塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら完熟梅を所定の条件に保持して砂糖濃度を高める濃縮処理を継続する一方、完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際か、または、新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際かの、少なくとも新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用して梅表皮にメイラード反応による発色促進処理を施すと共に、交ぜ返し処理を実施するようにしてオレンジ色の甘梅としたところで、梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、新たな完熟梅を塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、これら新たな完熟梅を所定の条件に保持して砂糖濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この新しい完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用した発色促進処理を施し、太陽光の照射のメイラード反応を促進させる作用によって新しい完熟梅の果皮および果肉が、好ましい艶をもった深みのある褐色に発色し、前記オレンジ色の甘梅の鮮明なオレンジ色とは大きく異なる、より味わい深い熟成を表現させると共に、交ぜ返し処理を実施することによって褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにしてなることを特徴とする梅菓子の製造方法。
- 選果した完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま10~15日間程度の間、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のため、60~80℃に加温して発酵を抑える際か、または、新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のため、60~80℃に加温して発酵を抑える際かの、少なくとも新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用して梅表皮にメイラード反応による発色促進処理を施すと共に、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該完熟梅を糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅としたところで、この砂糖溶液の中からこれらオレンジ色の甘梅を取り除き、該オレンジ色の甘梅の製造過程を経て梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この新しい完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用した発色促進処理を施し、太陽光の照射のメイラード反応を促進させる作用によって新しい完熟梅の果皮および果肉が、好ましい艶をもった深みのある褐色に発色し、前記オレンジ色の甘梅の鮮明なオレンジ色とは大きく異なる、より味わい深い熟成を表現させると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施し、これら新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにしてなることを特徴とする梅菓子の製造方法。
- 熟成砂糖溶液は、使用前に裏漉し処理を施し、不足分を補充する場合には、同じ製造工程の別ロットで獲得し、裏漉し処理が施された熟成砂糖溶液と混合するか、または、新たに、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合としてて溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液を追加、混合するかの少なくとも何れか一方を行い、必要量を満たした上、新たな完熟梅を浸漬する工程に用いるようにした、請求項1または請求項2何れか一記載の梅菓子の製造方法。
- 選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、請求項1ないし請求項4何れか一の梅菓子の製造方法に記載の最後の褐色の甘梅を取り出した後の熟成砂糖溶液を用い、この熟成砂糖溶液の中に該新たな完熟梅を埋没状とした上、以降、該新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することにより、これら新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出した上、該褐色の甘梅の製造過程を経た熟成砂糖溶液は、新たな完熟梅から褐色の甘梅を造る工程に繰り返して使用するようにした、請求項1ないし請求項3何れか一記載の梅菓子の製造方法に記載の最後の褐色の甘梅を取り出し、獲得した熟成砂糖溶液を、別ロットの褐色の甘梅の製造工程に、熟成砂糖溶液として用いるようにした、請求項1ないし請求項3何れか一記載の梅菓子の製造方法。
- 熟成砂糖溶液から取り出した褐色の甘梅を、40~50℃の範囲で一週間に亘って陰干しして乾燥させ、糖度75以上の褐色の甘梅干しとし、該褐色の甘梅干しの表面全体に麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方をまぶすようにした、請求項1ないし請求項4何れか一記載の梅菓子の製造方法。
- 請求項1ないし請求項5何れか一記載の梅菓子の製造方法における、完熟梅または新たな完熟梅の少なくとも何れか一方が、完熟梅に至らない段階の若梅、半完熟梅または赤焼け梅の少なくとも何れか一に置き換えられ、これら完熟梅に至らない段階の選果された梅果実を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行ってから冷凍処理して果肉内部まで凍結状となし、この凍結状となった上、熟成砂糖溶液の中に浸漬状とするようにした、請求項1ないし請求項5何れか一記載の梅菓子の製造方法。
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