JP3197197B2 - 甘梅の製造方法 - Google Patents

甘梅の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【発明の目的】
【0001】この発明は、我が国固有の食品の一つであ
る梅干しに代表される梅の加工方法に関するものであ
り、特に、加工果実としての利用範囲が狭い梅を使っ
て、高級菓子としての分野に属す高品質の甘梅を効率的
に製造可能とする新規な製造方法を提供しようとするも
のである。
【0002】高級食品として珍重される甘梅の複雑な製
造工程と、製造工程中における梅の発酵を抑制する技術
を、従前の製法とは全く異なる新たな製法を加えること
により、確実に梅の発酵を防止すると共に、複雑な砂糖
液の加熱工程や、梅の砂糖液中からの取り出し、及び砂
糖液中への戻し作業等を簡素化して、著しく、作業工数
を削減し、製造コストの削減を計ると共に、安定した品
質の甘梅を大量に生産することのできる甘梅の製造方法
を提供することにある。
【0003】
【従来の技術】梅は、観賞用、薬用として古くから愛用
されてきたが、食用としての利用範囲は意外に狭く、特
に果実のままの加工としては、その大半が梅干しに限定
されてしまっているのが現状である。果実としての梅
は、現在60種類以上存在し、大きさによって、平均3
0〜50g以上の大粒種(大梅)、20g程度の中粒種
(中梅)、5g程度の小粒種(小梅)とに分けられ、大
粒種としては豊後、白加賀、養老等が、中粒種としては
南高、鶯宿、藤五郎等、そして、小粒種としては甲州最
小、竜峡小梅等が良く知られており、通常、球形又は楕
円形で淡い緑色をしていて、種類によっては日の当たる
部分が赤焼けしてしまうものもある。
【0004】この梅は、他の果実とは異なり、生梅の場
合、青酸を作る酵素が含まれていることから、普通、生
食することは殆ど行われず、何等かの加工を施して食し
てきた。その主な食品の大半は梅漬け(梅干し)であっ
て、他に梅酒用の素材や露煮等の素材として利用される
に止どまり、他は、果肉を乾燥させてチップ状のものと
したり、ドロドロに煮込んでペースト状のものとする
等、果実の形を崩してから他の素材に混ぜ合わせて利用
した食品、例えば、ジャムや梅シロップ、梅肉エキス、
梅ようかん、のし梅等の菓子類のような形を変えて利用
されてきた。
【0005】このように、生食用としては不向きな梅
も、その成分上からは、旧くから薬用として活用されて
きた事実が証明しているとおり、保健食品として貴重な
果実の一つであり、カリウム、カルシウム、リン等のミ
ネラルを多く含む上、カロチン、ビタミンC等も多く、
特にクエン酸の含有量においては、レモンと並んで極め
て高い果実の一つであることが既に確認されている外、
その種子には少量の青酸が含まれていて殺菌効果も認め
られ、しかも、完熟梅になると香気成分を生じて、梅独
特の芳香を発生するものになるというように、様々に有
用な価値、効能を備えている上、何よりも我が国におい
て極めて馴染みが深く、我が国を代表する果実の一つで
あるという特徴を有している。
【0006】こうした特徴は、生活の知恵として受け継
がれ、一般家庭では、長い間に渡って日常の生活の中に
生かしてきていた。梅干し以外で果実のまま利用してき
た食品、特に菓子類の代表的な食品に甘梅がある。この
伝統的な甘梅は、完熟梅の1つ1つの軸を取り、竹串で
突いて複数箇所に孔をあけ、約3%程度の濃度とした塩
水に没した状態で約3日間程度浸けた後、水気を切って
から、3〜4%濃度とした酢入りの熱湯に少しずつ入れ
て湯がき、湯がき上がった梅は、熱湯から引き上げ、ホ
ワイトリカー、三温糖、上白糖等が混ぜ合わされた砂糖
溶液中で40分間程度に渡って煮詰める。
【0007】その後、ワックスペーパーで密閉して空気
に触れない状態を実現し、常温にて発酵させないように
保存する。さらに、発酵を確実に阻止するために3日目
〜4日目に1度、全ての梅を砂糖液中から取り出し、砂
糖液のみを再加熱して殺菌処理し直し、煮詰められて熱
い状態の砂糖液中に、再び梅を戻すが、砂糖液の減少分
は再度砂糖を煮溶かして砂糖液を作り、梅が外気に露出
しない状態に没して浸けられた状態となるようにする。
【0008】殺菌を兼ねた砂糖液の濃度を高める工程
を、3度程に分けて実施した後、砂糖液に浸けた状態で
密閉し、発酵しないように注意して常温にて2週間程保
存すれば、ようやく甘梅が完成する。このような従前か
らの甘梅の製造方法は、発酵を防止するために砂糖液の
加熱工程や、砂糖液からの梅の取り出しおよび戻し作業
が、複数回に渡って必要なこと等から、非常な手間と時
間とを要し、工場において大量生産するにしても非常に
高価な食品となってしまい、これまでのところでは、手
軽に味わうことができるような菓子として提供すること
が難しかった。
【0009】このような情況に鑑み、本願発明者は、先
ずは、その有する成分の有効活用を図る見地からと、更
には、従前までの複雑な製造工程を極力簡素化し、品質
の安定を図りながら、大量生産を可能とするようにする
意図とから、新たな甘梅の製造方法の研究、開発に着手
し、全体工程数の改善や加熱、殺菌処理の工程上の見直
し、あるいは、殺菌処理にも係わる砂糖溶液の温度制御
の手段上の効率化等、幾多の課題の試行錯誤を長期に渡
って繰り返し、遂には、略理想的な風味と形や色艶等有
する甘梅の製造に最適な製造方法を実現化するに至った
ものである。以下、この発明に包含される甘梅の製造方
法を代表する幾つかの具体例と共に、その構成を詳述し
ていくこととする。
【0010】
【発明の構成】この発明の甘梅の製造方法は、基本的に
以下に示すとおりの構成をその要旨としている。即ち、
傷や腐敗箇所のない選果された完熟梅を、約4%濃度の
塩水中で約72時間程度の間、1〜10℃の範囲で低温
保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対し
て水0.4の重量比混合割合として溶融し、90〜10
0℃に加熱した砂糖溶液中に埋没状とした上、以降、完
熟梅を砂糖溶液中に浸漬状としたまま、約10〜15日
間程度の間、砂糖溶液温度を、毎日、少なくとも10時
間は40℃以上に保持して砂糖溶液濃度を高める濃縮処
理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に6
0〜80°Cに加温して発酵を押さえる殺菌処理を併用
すると共に、必要に応じ、均質な砂糖溶液の浸透を促す
数次の交ぜ返し処理を実施することによって、完熟梅の
糖度が62以上で型崩れのない甘梅に仕上げるようにし
た甘梅の製造方法である。
【0011】甘梅の製造に使用する梅は、大梅の品種の
もので、傷や汚れが付いていないようできるだけ厳正に
選果した完熟梅を採用するのが、その出来上がりの豪華
さ、果肉の豊かさから望ましいが、完熟した中梅、小梅
であっても勿論製造することが可能であることはいうま
でもない。4%濃度による低温、塩蔵処理は、害虫除去
と表皮上に残存する不純物処理とに欠くことができず、
また、果肉を引き締め、糖熟の進行を止める作用も果た
し、以下の処理工程を円滑且つ確実に実施することを保
証することにも繋がっていく重要な工程であり、所定個
数毎容器に並べ、大型冷蔵庫の中で、梅の組織に影響を
来すことのない1〜10℃、望ましくは5°C前後の温
度に維持して約72時間程度の時間を掛けて保管するよ
うにする。
【0012】低温、塩蔵処理工程を終えた完熟梅は、果
実に傷を付けないようにして容器から取り出し、十分に
水切りを行わなければならない。続いて、所定の割合、
即ち、水1に対して砂糖が0.4の重量混合比とした砂
糖溶液を90〜100℃で加熱して十分に溶かし、他の
容器に重なり状とならない制限された個数で並べ置いた
完熟梅にかけ、完熟梅全てが砂糖溶液中に没した状態を
実現し、次の砂糖溶液の濃縮工程に移行する。
【0013】砂糖溶液の濃縮工程で最も重要な部分は、
この過程でいかに醗酵を確実に阻止して果肉の崩れを防
止し、表皮に皺を発生させることのない加工を実現する
かに掛かっている。先ず、濃縮上からは、少なくとも毎
日1日当り40℃以上の温度に10時間以上確保される
ようにする。この処理には、加工処理場内を適宜ヒータ
ーで暖房する必要があり、主として気温の上がる日中を
当てるようにすることによって暖房経費を節約すること
が可能である。1日の間のその余の時間帯は、完熟梅果
肉内への砂糖成分の浸透、締着を図るための常温、安定
処理期間とする。この濃縮期間には、約10〜15日間
程度、その間の平均室温や完熟梅の完熟程度等を考慮し
ながら、主として表皮の変化を観察しつつ、慎重且つ十
分に時間を掛けて進行させる。
【0014】この濃縮処理を継続するための浸漬期間
中、最も注意を要するのが高温処理によって砂糖溶液に
よる醗酵現象を来たしてしまわないようにすることであ
り、所定期間毎、例えば3〜4日(期間内の平均室温や
果実の性状の違い等を考慮する)に1度程度、60〜8
0°Cに加温して発酵を押さえる殺菌処理が必ず併用さ
れなければならない。加温程度が60℃以下では、十分
な殺菌効果が期待できず、その後において醗酵現象を来
す虞があり、また、80℃以上の不必要な高温にまで加
熱してしまうと、果肉の崩れに繋がることになって適切
ではない。
【0015】また、この期間中には、必要に応じ、完熟
梅全体に均質な砂糖溶液の浸透を促す上から、数次の交
ぜ返し処理を実施することが望ましく、表皮に傷を付け
たり、果肉に割れを生じさせることのないよう注意深く
実施される。濃縮期間は、完熟梅の糖度が、均質に62
以上に達するようになるまでの期間をその目安とする。
糖度62以下では、製品後に醗酵を来すことになって風
味や形、艶の保持が難しくなり、菓子としての価値を落
とすことになる。なお、糖度が64を越すと表皮上に砂
糖の結晶化現象が起きて干し柿様の甘梅となることか
ら、極めて潤いのある甘梅としての製品化を図るか、干
し柿様の甘梅とするかによって、糖度を62〜64内に
止どめるか、64以上とするか、製品の意図に応じて吟
味した製造を必要とする。
【0016】この発明には、上記のとおり、完熟梅を用
いた甘梅の製造方法の他に、完熟梅に至らない段階、即
ち、若梅、半完熟梅、あるいは太陽光を受けてその表皮
が赤変してしまった梅等、完熟梅以外の果実から、甘梅
を製造する方法も包含されている。即ち、傷や腐敗箇所
のない選果された若梅、半完熟梅、あるいは赤焼け梅
を、約4%濃度の塩水中で約120時間程度の間、1〜
10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを
行ってから冷凍処理して果肉内部まで凍結状となし、こ
の凍結状となった梅を、砂糖1に対して水0.4の重量
比混合割合として溶融し、90〜100℃に加熱した砂
糖溶液中に埋没状とした上、以降、これらの梅を砂糖溶
液中に浸漬状としたまま、約10〜15日間程度の間、
砂糖溶液温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以
上に保持して砂糖溶液濃度を高める濃縮処理を継続する
一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60〜80°C
に加温して発酵を押さえる殺菌処理を併用すると共に、
必要に応じ、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返
し処理を実施することによって、梅糖度が62以上で型
崩れのない甘梅に仕上げるようにした甘梅の製造方法
が、それである。
【0017】この完熟梅以外の梅果実による甘梅の製造
方法では、上記した完熟梅による甘梅の製造工程の中、
低温による塩蔵処理時間が、完熟梅に比較して表皮が固
いことから塩水の浸透性が悪く、完熟梅の場合の浸漬時
間の約2倍前後の時間を要すること。そして、最も重要
には、塩蔵処理を終えて水切り後、砂糖溶液の濃縮のた
めの加温、加熱浸漬処理に移行するに先立ち、全く異な
る凍結処理工程を追加しなければならないことである。
この凍結処理工程は、−30〜−20℃という極低温で
迅速に凍結し、果肉内部までを完全に凍結してから、凍
結状のままの果実に90°C〜100°Cに加熱した砂
糖溶液を浸し、以降は、上記の完熟梅に施したと同様の
処理工程を実施することにより、これら完熟梅以外の果
実でも、略完熟梅に匹敵する程の風味と形、色艶とを備
えた甘梅の製造を可能にするものとなる。
【0018】なお、砂糖溶液の濃縮のための加温、加熱
浸漬処理期間中の、醗酵を阻止する殺菌処理段階で、6
0〜80℃の加熱段階に、太陽熱の利用による加熱費の
節約を兼ね、果実を日光浴させることによって、黄色っ
ぽく変色していく表皮の色艶を、好ましいオレンジ色に
発色させる効果があることを知見している。そして、こ
の日光浴の効果は、上記した完熟梅の製造過程において
も、完熟梅自体で発現していく明るい黄色が、鮮やかで
艶のあるオレンジ色に発色していく作用を有しているこ
とも確認できており、何れの製造方法においても、この
日光浴の工程を経過させることが、その商品価値を高め
る上で極めて有効な製造方法となるといえる。以下、完
熟梅と、それ以外の梅の場合の具体的な製造方法につい
て説明していくことにする。
【0019】
【実施例1】この実施例は、完熟梅の最も代表的な甘梅
の製造方法である。先ず、粒の大きさを揃え、外観の確
認を行った完熟梅の軸を取り、枝、葉等の大きなゴミを
取り除いた後、移動可能な大型容器等に4%の塩水を作
り、この塩水中に完熟梅を完全に没した状態とした上、
大型の冷蔵室にて略5℃前後の低温保存により、約3日
間程度に渡る塩蔵処理を行う。
【0020】次に、72時間以上を経過した完熟梅を冷
蔵室から運び出し、大型のざるに移して暫くそのまま放
置して十分に塩水を切り、比較的浅めトレイの中に、そ
れら塩水を切った完熟梅が、重なりあってしまわない個
数分だけ収容し、日光を通すビニルハウスかガラス張り
の温室内に並べ置き、夫々の容器内に、加熱された砂糖
溶液を注ぎ、容器内の完熟梅全体が、完全に砂糖溶液中
に沈んでしまうようにし、完熟梅全体が空気中に露出し
ないで砂糖溶液中に完全に没する状態とする。この際に
使用する砂糖溶液は、砂糖を1、水を0.4の重量混合
割合にして十分に混合、撹拌し、90°C〜100°C
にまで加熱して煮溶かしたものとする。 なお、これ
ら砂糖溶液を注がれたトレイは、3〜5段程度で作業者
がトレイ内部を確認できる範囲の高さにしつらえた多段
式の棚に並べ置くようにして収容効率を良くすると共
に、各棚に載置したトレイに平均して日光が注がれるよ
うその構造を配慮したものとする。
【0021】また、このハウス内には、灯油ヒーターが
配されていて、毎日、10時間は、少なくとも40℃を
切ることのない室温に維持できるよう、日照具合を考慮
しながら該ヒーターを作動させるよう、注意深く管理を
していく。そして、完熟梅のでき不出来や、日毎の平均
室温等にも左右されるが、少なくとも10日間程度、最
適には12〜13日程度に渡る砂糖溶液の濃縮処理工程
を継続する。その間、略3日に1回程度の割合で砂糖溶
液が60℃以上80℃以下に達するまで室温をヒーター
で上昇させ、砂糖溶液による醗酵を押さえるための殺菌
処理を実施するが、併せてトレイ中の完熟梅を静かに動
かす交ぜ返し処理も実施するものとし、完熟梅の変形や
部分的な変色を防止すると共に、砂糖溶液の浸透具合が
平均化されるようにする。なお、砂糖溶液が減少気味で
完熟梅が十分に浸漬状とならず、部分的に空気に晒され
てしまう虞を生じたときには、濃度を調整し、加温した
同様の砂糖溶液を補充する必要がある。
【0022】こうして、濃縮処理を継続しながら、トレ
イ内の要所要所の完熟梅の糖度を検出し、その糖度が6
2に達した頃合を見計らって、この濃縮処理工程を終了
する。その間、陽射しを透過させるハウス内に特別な配
置で並べ置くようにしたことから、日中の太陽光を受け
た完熟梅は、砂糖漬けによる色合いがより進んで、極め
て鮮やかなオレンジ色に発色し、日光浴をさせていない
ものでは到達し得ない色合いと色艶とを有する見事な甘
梅に造り上げられる。その後、トレイ毎、加工場内に移
動して自然冷却し、常温になったところで、トレイ中の
完熟梅を、濃縮された砂糖溶液と共に、注意深く所定個
数毎パック詰め、あるいは瓶詰めとして加工すれば、表
皮に皺がなく、形崩れもしていない極めてふくよかな形
で、色艶の良い甘梅が製品化される。
【0023】
【実施例2】次に、完熟していない若梅からの甘梅の製
造方法について、詳細な説明をしてみることとする。先
ず、粒の大きさを揃え、1粒ずつ傷等が無いか確認した
若梅の軸および葉等を取り、更に、混在するゴミ等を取
り除くことにより、若梅の品質を整え、移動可能な大型
容器等に満たした4%濃度の塩水中に、それら若梅を完
全に浸漬状となし、大型の冷蔵室内において5℃前後の
低温による塩蔵処理を実施する。この塩蔵処理時間は、
上記した完熟梅の場合と違って、若梅は、果肉、果皮と
も堅い構造をしていることから、処理効果を得るため
に、完熟梅よりも長い約120時間程度に渡る低温保存
を実施しなければならない。
【0024】次に、塩蔵処理を終えた若梅を、容器毎、
冷蔵室から運び出して大型のざるに移し、暫くそのまま
放置させて十分に塩水を切る水切り処理を済ませる。こ
の後、記述した完熟梅の場合であれば、所定濃度とした
砂糖溶液中に浸漬して濃縮処理に入ることとなるが、こ
の若梅の場合には、その濃縮処理に入る前処理として、
水気の切れた若い梅を、次の濃縮工程において必要とな
るトレイ中に収容した上、−30〜−20℃という極低
温に維持できる冷凍室内に移し、効率良く凍結処理を実
施してしまわなければならない。この工程を実施しする
ことにより、以降の濃縮処理による果皮の皺寄りと、果
肉崩れとを確実に防止することが初めて可能となるもの
であって、極めて重要な工程となる。
【0025】冷凍室から取り出した若梅は、完全に凍結
状としたまま、トレイ毎、ビニルハウス内の多段式棚に
移し変えられ、以下、上述した完熟梅の製造工程と同じ
ように、所定濃度で90〜100℃まで加熱して煮溶か
した砂糖溶液中に浸漬し、所定の濃縮処理をハウス内で
実施する。その際に、完熟梅の場合と異なり、日光浴を
確実に実施するようにしないと、黄変自体も不十分で、
まして奇麗なオレンジ色への発色を促すことが不可能と
なる。
【0026】
【作用効果】以上のとおりのこの発明の甘梅の製造方法
によれば、従前に行われていた甘梅の製造方法に比較し
て、確実にその製造工程を簡素化することができ、人件
費等を削減して製造コストの大幅な削減が可能となる
上、品質を安定させた大量生産が可能となる。
【0027】特に、実施例に示した製造方法のように、
陽射しを透過させ得るビニルハウス等の施設内に、しか
も日光浴可能な配置とした多段式の棚内に並べ置く製造
を実施した場合には、砂糖溶液の濃縮処理過程で必要と
なる加温のための熱源としても、また、その過程で発生
する危険性が極めて高く、製品価値をなくしてしまう虞
のある醗酵現象を阻止するための加熱殺菌用の熱源とし
ても、この透過による太陽熱を有効活用して製造原価の
高騰を抑制し、高熱費の削減を図ることも可能となっ
て、それだけ経済的に甘梅を製造することが可能にな
り、全体として、安定した品質の甘梅を、極めて効率的
且つ経済的に大量生産することが保証されるという秀れ
た特徴を発揮することになる。
【0028】しかも、この日光浴は、梅果実の奇麗なオ
レンジ色への発色作用に極めて有効であり、製品価値を
高める上で極めて特徴ある製造方法となっている。この
ように、この発明の、製造方法は、従前までの製造方法
のような複数回に渡る砂糖溶液からの梅果実の取り出
し、分離して、砂糖溶液を殺菌温度まで再加熱し、再度
梅に戻すといった繁雑な工程を必要とせず、ハウス内に
並べ置いたまま、室温調整を所定の期間と温度とに制御
しながら繰り返し作業を実施するだけで、果実はもとよ
りのこと、トレイや砂糖溶液等といった器具、素材の移
し代えといった人手を煩わす部分の工程が大幅に削減さ
れて省力化される秀れた製造方法となっていることか
ら、上記したような人件費の面の利益に加え、製品を痛
めたり、雑菌混入の機会が大幅に少なくなって、高品質
の甘梅の製造が極めて容易に実現可能になるという実用
価値の高い製造方法となっている。
【0029】また、この発明の製造方法には、完熟した
梅果実だけではなく、それ以外の若取り梅果実、半完熟
の梅果実、そして、商品価値の極めて劣る赤変した梅果
実に至っても、同様に甘梅に製品化を可能とする極めて
効果的且つ新規な製造方法を確立し得たものであり、あ
らゆる成長過程の梅であっても、傷や病気に冒されてい
ない限り、果実のままで価値ある甘梅としての商品化が
でき、梅栽培農家の収入を安定させる上で大いに役立つ
だけではなく、消費者にとっても、効能のある秀れた自
然食品を比較的手軽に食味できるようにして、その独特
の風味を楽しみながら健康維持管理にも役立てることが
可能になるという一石二鳥の恩恵を受けることができる
ことになる。
【0030】叙上の如く、この発明の甘梅の製造方法
は、従前までに伝統的に受け継がれてきていた甘梅の製
造方法に対し、その製造効率上からも、コスト上からも
遥かに有利なものとなっていて、高品質の甘梅の製造が
比較的安価にして大量生産することが可能となり、梅栽
培農家の収入安定、甘梅製造者にとっては規模拡大によ
る高収益の保証、延いては、消費者にとっては、手間隙
を掛けて自家製造するまでもなく、高品質の甘梅の手軽
な入手が可能になるという、三者三様に秀れた効果がも
たらされる結果、我が国を代表する果実でありながら、
生食に不向きな性状故に、その有効利用の道がなかなか
開けてこなかった梅果実が、この発明の製造方法の確立
により、大いに期待できるものになるという効果は、高
く評価されて然るべきであるといえよう。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 傷や腐敗箇所のない選果された完熟梅
    を、約4%濃度の塩水中で約72時間程度の間、1〜1
    0℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行
    い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶
    融し、90〜100℃に加熱した砂糖溶液中に埋没状と
    した上、以降、完熟梅を砂糖溶液中に浸漬状としたま
    ま、約10〜15日間程度の間、砂糖溶液温度を、毎
    日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶
    液濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間
    中に、所定期間毎に60〜80°Cに加温して発酵を押
    さえる殺菌処理を併用すると共に、必要に応じ、均質な
    砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施するこ
    とによって、完熟梅の糖度が62以上で型崩れのない甘
    梅に仕上げるようにした甘梅の製造方法。
  2. 【請求項2】 傷や腐敗箇所のない選果された若梅、半
    完熟梅、あるいは赤焼け梅を、約4%濃度の塩水中で約
    120時間程度の間、1〜10℃の範囲で低温保管して
    塩蔵処理した後、水切りを行ってから冷凍処理して果肉
    内部まで凍結状となし、この凍結状となった梅を、砂糖
    1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、9
    0〜100℃に加熱した砂糖溶液中に埋没状とした上、
    以降、これらの梅を砂糖溶液中に浸漬状としたまま、約
    10〜15日間程度の間、砂糖溶液温度を、毎日、少な
    くとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液濃度を
    高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所
    定期間毎に60〜80°Cに加温して発酵を押さえる殺
    菌処理を併用すると共に、必要に応じ、均質な砂糖溶液
    の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによっ
    て、梅糖度が62以上で型崩れのない甘梅に仕上げるよ
    うにした甘梅の製造方法。
  3. 【請求項3】 約10〜15日間程度の間の浸漬期間中
    において実施される殺菌処理のための加温の際に、太陽
    光照射処理を併用して梅表皮をオレンジ色側へ色付かせ
    る発色処理を施すようにした請求項1または2何れか記
    載の甘梅の製造方法。
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