JP4780619B2 - ウメ果汁、ウメ果汁含有食品、およびウメ果汁の製造方法 - Google Patents

ウメ果汁、ウメ果汁含有食品、およびウメ果汁の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はウメ果実を糖質に漬け込むことにより得られる糖抽出ウメ果汁の製造方法およびその製造方法により得られる糖抽出ウメ果汁ならびにそれを含有する食品に関するものである。
ウメを原料とする果汁の製造においては、加工法の一つにウメ果実を糖質に浸漬し、浸透圧の差を利用して、ウメ果汁を得る製造方法が挙げられる。これまで、家庭において行われてきた糖抽出法は、ウメ果実を氷砂糖やグラニュー糖等の糖質に浸漬することによって、ウメ果実内の成分を抽出し糖抽出ウメ果汁を得るという手法で、一般的に梅シロップと呼ばれるものである(非特許文献1)。
一方、果汁に含まれるポリフェノールは、優れた抗酸化能を有していることが知られている。また、体内タンパク質の変性、核酸の分解、細胞傷害をもたらすと考えられているラジカルを消去する能力に優れているという報告がある。(非特許文献2)。このことから、昨今の健康ブームともあいまって、果実由来のポリフェノールを含有する食品が数多く開発され、製造されるようになってきた(特許文献1、2)。
また、最近になってウメ果実が高い濃度のポリフェノール類を含むことが明らかにされている。ウメ果実中には、フェノールカルボン酸類、フラボノイド、リグナン類、アントシアニジン類と多くの種類のポリフェノールが比較的高濃度に含まれている。そのため、ウメ果実の抗酸化能は、果実ではイチゴ・ラズベリー・オレンジ・ブドウ、野菜では、ホウレンソウ・ブロッコリー・タマネギ・ナスビ等より高く、青果物の中ではトップレベルの抗酸化作用をもつという研究報告がある(非特許文献2)。
ところで、ウメ果実の他の利用形態である塩蔵品の梅干は、果肉が柔らかい方が風味も高く高級感もあり、商品価値の高い製品を得るために、適度に成熟した果実を梅干原料として用いる。
このような梅干の製造においては、ウメ果汁の場合とは異なり食塩を添加するが、この食塩の果肉に対する作用は、保存性を高めるだけでなく、組織を軟化させる作用もある。すなわち、果実中のペクチン鎖間をキレート結合しているカルシウム、マグネシウムなどの2価金属が食塩由来のナトリウムイオンで置換され、キレート結合の解離によりペクチンが低分子化されることによって、組織が軟化すると考えられる(特許文献3)。
特開2001−29008公報 特開2001−157567公報 特開2002−238490公報 本物の味 ウメ干し・ウメ料理 家の光協会 30項〜31項 ウメとプラム 近畿大学先端技術総合研究所記要 第11号
しかし、上記したように梅干用の原料となる果実を軟化する技術は、ウメ果実自体を梅干として食用にする目的でその低塩分化および、製造期間の短縮が図られているが、本発明における製造技術は、ウメ果実から抽出される果汁にポリフェノールや水溶性ペクチンに代表される機能性成分をより多く含ませ、さらには、抽出期間の短縮や従来抽出時に使用が困難であった糖質も使用可能とすることを目的としている。
現在、市場では機能性を重視した健康志向の食品の開発が進められている。その中でも、ポリフェノールは注目されている機能性成分の一つであり、強い抗酸化作用によって体内に摂取、蓄積された悪玉のLDLコレステロールの酸化を阻害し、高血圧、動脈硬化および脳血管障害、心臓病などを予防が期待できる。
同様に、食物繊維も注目されている機能性成分の一つである。食物繊維は保水性・粘稠性・吸着性・イオン交換性が高いため、便通の改善・体に有用な腸内細菌の増加等による腸内環境を整え、さらには、糖の吸収阻害やダイエット効果等も期待できる。
これらの健康機能性を果汁に含ませることができれば、これまで糖質が高くカロリーが高い等の先入観のために敬遠されていた果汁のイメージを一新し、ヘルシーな素材として現在のニーズに合った食品の創出が可能となる。
さらにウメ果汁製品のなかで重要な位置を占めている糖抽出ウメ果汁については、製造が夏の高温期に行われるため、果実に付着している酵母により、抽出過程でのアルコール発酵が問題となっている。これを抑制するため抽出に要する2〜3週間の期間、工程を低温に保つことが一般的に行われており、抽出期間を短縮することができれば、エネルギーコストを大きく削減することができる。
そこで本発明は、上記した問題点を解決して、健康に有用な成分をできるだけ多く含むウメ果汁、並びに、該ウメ果汁を用いた食品等、および、短期間で該ウメ果汁が得られるウメ果汁の製造方法を提供することを目的とする。
これらの課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、バラ科植物の中で機能性成分の豊富なウメ果実の果肉組織の細胞間隙に、液体を含ませ、その液体を含ませたウメ果実を糖質に漬け込むことにより、ポリフェノール高含有ウメ果汁を従来よりも短い抽出期間で製造できるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかるウメ果汁の製造方法は、ウメ果実に液体を含ませる工程(1)と、前記工程(1)を経たウメ果実を糖質に漬け込む工程(2)とを有するものである。
上記した工程を有するウメ果汁の製造方法によると、従来法を用いた場合より多くのポリフェノールを含むウメ果汁が製造でき、かつ、ポリフェノール高含有ウメ果汁を従来よりも短い抽出期間で製造できる。
また、前記ウメ果実に液体を含ませる工程(1)に、ウメ果実を密閉容器内で液体に浸漬して減圧する処理を用いると、短時間で効率よくウメ果実に液体を含ませることができる。さらに、前記減圧処理と、常圧に戻す、またはさらに高圧に加圧する処理とを繰り返すことによって、より短時間でウメ果実に液体を含ませることができる。
ここで、前記液体は、単に水であっても良い。この場合でもポリフェノール含有量の増加の効果が得られるのは後述する実施例のとおりである。また、酵素液を用いた場合は、さらにポリフェノール含有量が増加するほか、食物繊維である水溶性ペクチンの含有量が増加する効果が得られる。
さらに、本発明では、前記糖質に難消化性糖類を用いることができる。これによって、低カロリーのウメ果汁を提供できる。一般的にウメ果汁製造において難消化性糖類を用いると、果汁の抽出が不十分であり、ある程度の果汁量を得ようとしても製造期間がきわめて長くなり、実用的な製造が行えないという不具合を生じる。しかし、本発明によるウメ果汁の製造方法では、製造期間を短縮する効果が奏されるため、これまで利用できなかった難消化性糖類を用いた製造が可能となる。
次に、本発明によるウメ果汁は、先に記載したウメ果汁の製造方法によって得られたポリフェノール高含有ウメ果汁であり、本発明にかかる食品または飲料は、前記ポリフェノール高含有ウメ果汁を含有するものである。
糖抽出ウメ果汁を上記した工程で製造した場合、抽出期間が従来法の1/2〜2/3に短縮された。これにより抽出期間中にウメ果実に付着した、野生酵母によるアルコール発酵の影響が少なくなるため、品質の安定した果汁の生産が可能となる。また、抽出期間の短縮に伴って冷却設備やエネルギー、その他製造管理にかかる費用を低減させることが可能となり、製造コストを削減することができる。
また、製造に難消化性糖類を用いることで、従来よりもカロリーの低い糖抽出ウメ果汁の製造が可能になった。これにより、果実飲料が敬遠される要因の一つであるカロリーの過剰摂取の問題も解決でき、さらには、整腸作用やインシュリン上昇抑制等の効果が期待できる食品として、現代社会の消費者のニーズにあった健康志向、特に生活習慣病予防食品として、提供することが可能となる。
この工程で製造した糖抽出ウメ果汁には、機能性成分として、ポリフェノールが従来製品の約1.5倍、水溶性ペクチンが約4倍含まれるようになっていた。これにより、後に実験結果に示すように従来果汁より抗酸化能が増加していることが確認でき、機能性を有する食品素材としての糖抽出ウメ果汁を新たに生み出した。
本発明における製造方法が適用される果実については特に限定されないが、例えばPurunus mume Sieb et Zuccの学名で知られる植物の果実であり、品種は南高梅が望ましいが、古城・白加賀・豊後・養老・曙なども挙げられる。また、ウメ果実に限らず、アンズ、スモモ、カリン、ラ・フランスに代表されるバラ科植物で食用できる果実であれば適用可能である。
本発明で用いられる液体は、水でよく、含浸させることで細胞間液の通液性を向上させ、糖質に漬け込んだ際にポリフェノールを果汁中により多く含ませることができると考えられる。さらにウメに含まれるその他の成分を溶出させたい場合は、その成分に作用する酵素溶液を使うことができる。例えば、プロトペクチナーゼを主成分とする細胞壁崩壊酵素を含む水溶液を含浸させることで、果汁中の水溶性ペクチン量を増加させることができる。また、液体自体の成分を一旦ウメ果実中に含ませ、果汁成分と共に抽出することも可能であるため、有機酸やアミノ酸溶液等、溶液の状態であれば特に限定はされない。特許文献3では、含浸する液体はペクチン質分解酵素を含み、ペクチン質の限定分解により果肉の軟化の効果を得るものであったが、本発明はペクチン質分解酵素の添加は必須ではなく、水などの液体のみで効果が得られる点が大きな差である。
本発明において、ウメ果実に液体を「含ませる手段」としては果肉組織の細胞間隙に液体を通入させることができるものであればよく、例えば、ウメ果実を密閉容器内で液体に浸漬して減圧処理するいわゆる真空含浸法が該当する。また、加圧処理によっても「含ませる」ことは可能であり、好ましくは、前記減圧処理と、常圧または高圧状態に加圧する操作とを繰り返す処理を用いる。この処理を行うことにより、効率的にウメ果実の果肉組織の細胞間隙に液体を満たし、短時間で組織内まで液体を浸透させることができる。
また、従来方法で糖質による果汁抽出を行う場合、糖質がグラニュー糖や氷砂糖、黒砂糖等であることが求められ、他の難消化性糖類を用いることは困難であったが、本発明方法を用いることにより、前記糖質に加えてオリゴ糖、難消化性デキストリンを主成分とした糖質さらには、糖アルコールでも抽出が可能となり、果実由来の機能性成分に加えて、糖質由来の機能性成分を果汁中に含ませることができる。その上、糖質の状態が固体・液体を問わず、特に限定はされない。
なお、本発明はポリフェノール高含有な果汁を提供するだけではなく、請求項1記載の果汁製造方法において、抽出期間の短縮が可能となる。すなわち、糖抽出ウメ果汁の製造方法では、ウメ果実から抽出される果汁により糖質が順次溶かされていき、可溶性固形分(Brix)が順次低下していく。Brixの値が変化しなくなった時点で抽出終了とするが、本発明方法を適用することにより、果汁の抽出速度が促進され、結果として、Brixが平衡に達するまでの期間(抽出期間)が短縮される。そのため、従来の糖抽出ウメ果汁製造方法では梅に付着した野生酵母によるアルコール発酵が問題となっていたが、本発明方法を用いることで、抽出期間が短縮されるため、エタノ−ル分が規格値以内である糖抽出ウメ果汁を容易に製造することが可能となる。なお、果実飲料のエタノール分は、日本農林規格(JAS)で規格値が定められており、原料の鮮度指標に用いられる。
またこれまで、糖抽出ウメ果汁の製造においては、野生酵母によるアルコール発酵を防ぐため、果汁の抽出温度の管理が必要であり、果汁の製造時期である夏期に15℃程度の温度を保つ設備が必要で、果汁の品温管理が難しかった。しかし、本発明によって抽出期間が短縮されることにより、過度のアルコール発酵の心配が少なくなり、温度保持のためのエネルギーが抑えられ、製造コストの点からみても、有用な技術であると言える。
また、本発明で得られる果汁は、飲料用果汁としてだけでなく、洋菓子、和菓子などの菓子類、肉・魚・野菜などを用いて調理した惣菜類、リキュール等のアルコール飲料、ヨーグルトやチーズなどの発酵食品、パン類、米穀などの穀物飯類などの食品に適宜配合することができ、ポリフェノールを強化するための食品素材としての利用も可能である。
以下に、本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
ステンレス製の容器内で、ペクチン質分解酵素剤プロトペクチナーゼIGA(酵母Trichosporon penicillatum由来、IGAバイオリサーチ社製)を蒸留水に溶解し、0.1%水溶液400Lを作製した。その後、ウメ果実(JA紀南産 南高梅Lサイズ)100kgをこの酵素液に完全に漬かるまで浸漬し、室温下で圧力変換機により90hPaまで減圧させた後30分間保持し、その後常圧に戻した。この操作を2回繰り返し、果実内に酵素を含浸させた。
次に、酵素を含浸したウメ果実を用いて、砂糖抽出を行った。
プラスチック製の容器内にウメ果実とグラニュー糖(新光製糖株式会社製)100kgが均一になるように混合し、室温で抽出を行った。果汁が抽出され始めた日から毎日、一日一回、全体が混ざり合うように撹拌を行った。抽出期間終了後、残ったウメ果実を取り除き、糖抽出ウメ果汁とした。
実施例1において、果汁の抽出終了までの日数は10日で115.5L回収できた。
[比較例1]
次に未処理のウメ果実(JA紀南産 南高梅Lサイズ)100kgを用いて、これ以外は実施例1と全く同じ条件で糖抽出ウメ果汁を調製した。
比較例1において、果汁の抽出終了までの日数は15日で119.4L回収できた。
実施例1と比較例1において、ポリフェノール、水溶性ペクチンの定量を行った。定量方法は、ポリフェノールはフォーリン・デニス(Folin−Denis)法、水溶性ペクチンについてはカルバゾール法を用いた。得られた果汁のポリフェノール量と水溶性ペクチン量、回収量を表1に示す。
Figure 0004780619
表1から、実施例1のポリフェノール量は果汁100gあたり52.7mg、比較例1のポリフェノール量は37.2mgであり、約1.5倍量のポリフェノールが果汁中に含まれていることが確認できた。
実施例1の水溶性ペクチン量が411.7mg、比較例1の水溶性ペクチン量は106.1mgとなり、酵素を含浸させることにより果汁として抽出される水溶性ペクチン量が約4倍得られることが確認された。ペクチンは食物繊維の一種で、整腸作用がある。その他に、コレステロールの上昇を抑え、動脈硬化や高血圧、心筋梗塞や糖尿病にもよいと一般的に知られている。酵素溶液を含浸することでポリフェノールだけでなく水溶性ペクチン量も増加させられることが明らかとなった。
さらに、果汁の回収量は実施例1が115.5Lであるのに対して、比較例1の回収量は119.4Lとほぼ差がないため、含浸を行って得られる果汁は従来の方法と回収率を変えることなく、ポリフェノール量をより多く抽出できることが明らかになった。
実施例1と比較例1の抽出期間中のBrixの変化を図1、エタノール分の変化を図2に示す。
図1より実施例1において、ウメ果実を漬け込んでから5日目で果汁が抽出され始め、10日目にはBrixの値が安定し抽出終了としたが、比較例1では果汁が抽出され始めたのが漬け込み開始から9日目で、終了したのが15日目であった。即ち、ウメ果実を含浸することで果汁の抽出期間の短縮化が可能となった。
図2より、実施例1と比較例1のエタノール分に大きな差が見られた。実施例1では、抽出終了時の果汁のエタノール分は2.3g/kgであったが、比較例1の抽出終了時の果汁のエタノール分は5.1g/kgと2倍以上も上回り、比較例1の場合、JASの規定値である3.0g/kg以下を越えている。即ち、ウメ果実を含浸することで、抽出期間の短縮に伴い、アルコール発酵の抑制が可能となった。
ガラス製のデシケーター内でウメ果実(JAみなべいなみ産 古城Lサイズ)8kgを蒸留水7L中に浸漬させ、60hPaまで減圧し30分間保持した後、常圧に戻して含浸させた。そのウメ果実1kg対してグラニュー糖(新光製糖株式会社製)・難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製、ファイバーソル2(登録商標))・フラクトース(松谷化学工業株式会社製、結晶フラクトース(登録商標))・乳糖果糖オリゴ糖(林原商事株式会社製、乳果オリゴ(登録商標))・氷砂糖(中日本氷糖株式会社製、ロックC(登録商標))・イソマルトオリゴ糖(日本コーンスターチ株式会社製、イソマルトN.S−100(登録商標))各1kgを用いて計6区画で糖抽出ウメ果汁を調整した。4L容量の瓶を用いて、ウメ果実と各糖質が均一になるように混合し、15℃で抽出を行った。それ以外は実施例1と同じ条件で糖抽出ウメ果汁を調製し、それぞれの果汁の抽出期間とポリフェノール量、回収量を測定した。
実施例2では、使用したすべての糖質が溶解し、14日〜28日程度で果汁のBrixが平衡に達した。
[比較例2]
未処理のウメ果実1kgと実施例2と同じ7種類の糖質を用いて糖抽出ウメ果汁の製造を行った。ウメ果実が未処理である以外は実施例2と同じ条件で糖抽出ウメ果汁を調整した。
実施例2と比較例2の各抽出果汁の抽出時間とポリフェノール量、回収量を測定した。各測定値を表2に示す。なお、比較例2の難消化性デキストリンのポリフェノール量は抽出30日目のものを測定した。
Figure 0004780619
比較例2では、難消化性デキストリンは糖質が溶けきらずに固形分として残ってしまった。その他の糖質はすべて固形分がなくなるまで溶解し、Brixが平衡に達するまで1ヶ月近く要した。難消化性デキストリンのポリフェノール量は実施例2との比較のため、抽出が未完了であるが抽出30日目の果汁を測定した。
比較例2では全体的に抽出終了まで1ヶ月程度かかっており、実施例2はその半分の抽出期間であった。実生産を考慮すると、抽出期間が延長することにより設備や管理面での負担が大きくなり、生産コストを含めた生産効率が悪くなる。また、実施例2では1ヶ月間で2バッチの製造が行えるが、比較例2では1バッチしかできないため、本発明によって一定期間における生産量の増加も見込める。抽出時間にこれ程までも差がでるのは、比較例2では、各糖質の浸透圧が低いことによって果実との浸透圧の差が小さくなり、効率よく抽出できないものと考えられる。しかし、実施例2では含浸処理を行うことで、果実中に水分が含まれ、結果として糖質との浸透圧の差が大きくなり、いずれの糖質も約15日程度で抽出が終了し、期間の短縮が可能となった。また、難消化性デキストリンにおいては、1ヶ月以上経っても固体分が残ってしまい、実施例2では固形分が完全溶解し、抽出が終了したことから、本来利用が困難な糖質も本発明を用いることで抽出可能となることが明らかとなった。
難消化性デキストリンは、ビフィズス菌増殖効果、血糖値上昇抑制効果、脂質代謝改善効果を持つことが知られている。他の糖質も低う蝕性や腸内環境改善効果があり、グラニュー糖以外の糖質を用いることで、果汁に糖質由来の機能性成分を更に付加させることが可能となった。その他にも、乳糖果糖オリゴ糖は、難消化性デキストリンと同様のビフィズス菌増殖効果や便通改善、血糖値の上昇抑制に加えて、グラニュー糖と比較して甘味、熱や酸に対する安定性もほぼ変化がないため、従来の風味を保ったまま機能性成分の向上が可能である。このように、糖質で難消化性等の糖質を選択することで、従来の果汁より低カロリーの糖抽出ウメ果汁を提供することも可能となる。
ガラス製のデシケーター内でウメ果実(JAみなべいなみ産 南高Lサイズ)7kgを蒸留水8L中に浸漬させ、50hPaまで減圧し30分間保持した後、常圧に戻して含浸させた。そのウメ果実1kgにグラニュー糖1kgを4L容量の瓶内に均一になるように混合して糖抽出ウメ果汁を調製し、得られた果汁のポリフェノールの定量と抗酸化能の測定を行った。ポリフェノールはフォーリン・デニス(Folin−Denis)法、抗酸化能の測定方法はDPPHラジカル消去活性能の測定方法を用いた。抗酸化能の測定では、果汁の濃度が4%になるように希釈して使用した。
[比較例3]
次に未処理のウメ果実(JAみなべいなみ産 南高Lサイズ)1kgを用いて、これ以外は実施例3と全く同じ条件で糖抽出ウメ果汁を調製した後、ポリフェノールの定量と抗酸化能の測定を行った。
抗酸化能の測定に用いる試薬DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)は、それ自体安定なラジカルであり、ラジカル消去物質が存在すると非ラジカル体に変化する。DPPHラジカル消去能の測定原理は、その際に生じる溶液の紫色が次第に退色していくため、分光光度計で波長520nmの吸光度を測定し、吸光度の減少と抗酸化能力が比例することにより測定できる。未処理の梅と含浸処理したウメからの各抽出果汁中の抗酸化能を比較するため、試薬DPPHのラジカル活性を50%消去できるだけ必要な抗酸化能(50%DPPH消去能)を有する果汁の添加量で比較を行った。
実施例3、比較例3のポリフェノール量の測定結果を表3に示す。各ポリフェノール量は、比較例3では100gあたり18.8mgであるのに対し、実施例3では100gあたり28.8mgであり、約1.5倍の増加が確認できた。
Figure 0004780619
抗酸化能の測定結果を図2に示す。抗酸化能は、50%DPPH消去能の測定結果より、比較例3で得られた果汁の添加量が432μlであったのに対して、実施例2で得られた果汁の添加量は132μlであった。つまり、3.3倍の抗酸化能を示すことがわかった。
実施例3により、本発明の製造方法から得られる果汁は、ポリフェノールの増加以上に抗酸化能の増加があることが明らかとなった。つまり、ポリフェノールの量的な変化だけではなく、より高い抗酸化能を示すポリフェノールへの質的な変化も起こっていることが考えられる。
実施例1と比較例1の可溶性固形分濃度の経時変化を示す図 実施例1と比較例1のアルコール濃度の経時変化を示す図 実施例3と比較例3の抗酸化能力を示す図

Claims (4)

  1. ウメ果実を密閉容器内で液体に浸漬して減圧することによって、ウメ果実に液体を含ませる工程(1)と、前記工程(1)を経たウメ果実を糖質に漬け込む工程(2)とを有するウメ果汁の製造方法。
  2. 前記液体が、水または酵素含有水である請求項1記載のウメ果汁の製造方法。
  3. 前記糖質が、難消化性糖類である請求項1、または請求項2記載のウメ果汁の製造方法。
  4. 請求項1ないしのうち、いずれか一項記載の方法により製造されたウメ果汁、または、これを含有する食品、もしくは飲料。
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