(第1実施形態)
図1~図3を参照して、第1実施形態における光学デバイスの構成について説明する。光学デバイスは、光学デバイスに入射した光のなかから特定の波長域の光を反射、もしくは、透過することにより取り出す機能を有する。光学デバイスの選択対象の波長域は特に限定されないが、例えば、光学デバイスは、人間の肉眼で視認可能な光、すなわち、可視領域の光のなかから特定の波長域の光を取り出す。以下において、可視領域の光の波長は、400nm以上800nm以下としている。
[光学デバイスの構成]
図1を参照して、第1実施形態の光学デバイスの構成について説明する。図1は、第1実施形態における光学デバイスの断面構造と格子領域の平面構造とを示す図である。図1に示すように、光学デバイス10は、基材11と、第1低屈折率領域12と、第1格子領域13と、第2低屈折率領域14と、第2格子領域15と、第3低屈折率領域16と、反射防止部112とを備えている。第1低屈折率領域12、第1格子領域13、第2低屈折率領域14、第2格子領域15、および、第3低屈折率領域16の各々は、層状に広がっており、基材11に近い位置からこの順に並んでいる。基材11に対する第3低屈折率領域16の側が光学デバイス10の表面側であり、第3低屈折率領域16に対する基材11の側が、光学デバイス10の裏面側である。また、第3低屈折率領域16の第2格子領域15と反対側の表面(最表面)には、複数の突起状構造体111が配列されており、突起状構造体111からなる反射防止部112が形成されている。図1においては、光学デバイス10の断面構造を示すとともに、第1格子領域13の平面構造と第2格子領域15の平面構造とを、これらの領域を一部破断させて示している。以下では、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、第2低屈折率領域14、第2格子領域15、および、第3低屈折率領域16からなる構造体のことを共鳴構造部18と表現する。
(基材)
基材11は板状を有し、基材11の有する面のうち、光学デバイス10の表面側に位置する面が基材11の表面である。光学デバイス10の選択対象が可視領域の光である場合には、基材11としては、例えば、合成石英基板や、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂からなるフィルムが用いられる。
(共鳴構造部)
共鳴構造部18は、第1低屈折率領域12と、第1格子領域13と、第2低屈折率領域14と、第2格子領域15と、第3低屈折率領域16とを有する。
第1低屈折率領域12は、基材11の表面に接し、基材11の表面に沿って広がっている。
第1格子領域13は、複数の第1高屈折率部13aと複数の第1低屈折率部13bとを有する。第1高屈折率部13aと第1低屈折率部13bとの各々は、基材11の表面側から見て、第1方向に延びる帯形状を有している。第1高屈折率部13aと第1低屈折率部13bとは、第1方向と直交する第2方向に交互に並んでいる。以下の説明では、第1高屈折率部13a及び第1低屈折率部13bの延びる方向を第1方向とし、第1高屈折率部13a及び第1低屈折率部13bが交互に配置される方向を第2方向とし、各領域の積層方向を第3方向とする。第3方向は、すなわち、各領域の厚さ方向であり、光学デバイス10の厚さ方向である。第1方向と第2方向とは、基材11の表面に沿った方向であって、第1方向と第2方向との各々は、第3方向と直交する。第1格子領域13は、第3方向において、第1低屈折率領域12と第2低屈折率領域14とに挟まれており、これらの領域と接している。
第2格子領域15は、複数の第2高屈折率部15aと複数の第2低屈折率部15bとを有する。第2高屈折率部15aと第2低屈折率部15bとの各々は、第1方向に延びる帯形状を有し、かつ、第2方向に交互に並んでいる。すなわち、第1高屈折率部13aおよび第1低屈折率部13bの延びる方向と、第2高屈折率部15aおよび第2低屈折率部15bの延びる方向とは一致しており、第1高屈折率部13aおよび第1低屈折率部13bの並ぶ方向と、第2高屈折率部15aおよび第2低屈折率部15bの並ぶ方向とは一致している。そして、基材11の表面側から見て、第1高屈折率部13aと第2低屈折率部15bとが重なり、第2高屈折率部15aと第1低屈折率部13bとが重なっている。第2格子領域15は、第3方向において、第2低屈折率領域14と第3低屈折率領域16とに挟まれて、これらの領域と接している。なお、図1に示す第1格子領域13と第2格子領域15との平面構造について、第1高屈折率部13aと第2高屈折率部15aとにドットを付して示している。
第1高屈折率部13aと第2高屈折率部15aとは、同一の材料から構成されており、第1高屈折率部13aの屈折率と第2高屈折率部15aの屈折率とは互いに等しい。第1高屈折率部13aおよび第2高屈折率部15aの屈折率は、第1低屈折率部13b、および、第2低屈折率部15bの各々の屈折率よりも高い。さらに、第1高屈折率部13aおよび第2高屈折率部15aの屈折率は、第1低屈折率領域12、第2低屈折率領域14、および、第3低屈折率領域16の各々の屈折率よりも高い。
第1低屈折率領域12、第2低屈折率領域14、第3低屈折率領域16、第1低屈折率部13b、および、第2低屈折率部15bの各々は、同一の材料から構成されており、これらの屈折率はすべて等しい。第1低屈折率領域12の屈折率は、領域内の部位に依らず一定であり、第2低屈折率領域14の屈折率もまた、領域内の部位に依らず一定であり、第3低屈折率領域16の屈折率もまた、領域内の部位に依らず一定である。
第2方向における第1高屈折率部13aの幅をDh1とし、第2方向における第1低屈折率部13bの幅をDl1とする。幅Dh1と幅Dl1との合計が、第1格子領域13における第1高屈折率部13aと第1低屈折率部13bとの配列の周期である第1周期P1である。
第2方向における第2高屈折率部15aの幅をDh2とし、第2方向における第2低屈折率部15bの幅をDl2とする。幅Dh2と幅Dl2との合計が、第2格子領域15における第2高屈折率部15aと第2低屈折率部15bとの配列の周期である第2周期P2である。
幅Dh1と、幅Dl1と、幅Dh2と、幅Dl2とは、すべて等しい。そして、第1周期P1と第2周期P2とは一致している。
第1周期P1と第2周期P2とは、可視領域の光の波長よりも小さい。すなわち、第1周期P1および第2周期P2の各々は、サブ波長周期である。こうした構成において、第1格子領域13における複数の第1高屈折率部13aと第2格子領域15における複数の第2高屈折率部15aとは、それぞれの領域にて、導波モード共鳴現象を生じさせるサブ波長格子を構成している。第1高屈折率部13aが構成するサブ波長格子と第2高屈折率部15aが構成するサブ波長格子とは、同一の格子周期を有している。すなわち、本実施形態の光学デバイス10は、第3方向に間をあけて並ぶ2つのサブ波長格子がこれらのサブ波長格子を構成する材料よりも屈折率の低い材料で埋め込まれた構造を有している。
また、第1格子領域13の厚さをT1とし、第2格子領域15の厚さをT2とする。厚さT1と厚さT2とは、一致している。なお、第1低屈折率領域12、第2低屈折率領域14、および、第3低屈折率領域16の各々の厚さは特に限定されない。
上記構成において、第1格子領域13の屈折率は、第1格子領域13における第1高屈折率部13aと第1低屈折率部13bとの体積比率に応じて、第1高屈折率部13aの屈折率と第1低屈折率部13bの屈折率とを均した平均屈折率に近似される。第1格子領域13における第1高屈折率部13aと第1低屈折率部13bとの体積比率は1:1であるため、第1格子領域13の平均屈折率は、第1高屈折率部13aの屈折率と第1低屈折率部13bの屈折率との平均値である。
同様に、第2高屈折率部15aと第2低屈折率部15bとの体積比率は1:1であるため、第2格子領域15の平均屈折率は、第2高屈折率部15aの屈折率と第2低屈折率部15bの屈折率との平均値であり、第1格子領域13の平均屈折率と一致する。また、第1格子領域13における第1高屈折率部13aの体積比率と、第2格子領域15における第2高屈折率部15aの体積比率とは等しい。
ここで、第1格子領域13および第2格子領域15の各々において導波モード共鳴現象を生じさせるためには、第1格子領域13の屈折率と、第1格子領域13を挟む第1低屈折率領域12および第2低屈折率領域14の各々の屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。同様に、第2格子領域15の屈折率と、第2格子領域15を挟む第2低屈折率領域14および第3低屈折率領域16の各々の屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。
したがって、第1高屈折率部13aおよび第2高屈折率部15aを構成する高屈折率材料の屈折率と、第1低屈折率領域12、第2低屈折率領域14、第3低屈折率領域16、第1低屈折率部13b、および、第2低屈折率部15bを構成する低屈折率材料の屈折率との差は0.2より大きいことが好ましい。
光学デバイス10の選択対象が可視領域の光である場合には、低屈折率材料としては、合成石英等の無機物や、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の高分子材料を用いることが可能である。高屈折率材料としては、TiO2(酸化チタン)、Nb2O5(酸化ニオブ)、Ta2O5(酸化タンタル)、ZrO(酸化ジルコニウム)、ZnS(硫化亜鉛)等の無機誘電体材料を用いることができる。
基材11、および、各領域12~16のすべてが、光学デバイス10への入射光を透過する材料から構成されている場合、光学デバイス10は、反射光および透過光の両方について波長選択性を有する。
(反射防止部)
共鳴構造部18の少なくとも一方の表面には反射防止部112が形成されている。反射防止部112の構成の一例として、複数の突起状構造体111からなる構成が挙げられる。図2は、突起状構造体の断面形状の例を表す図である。図2(a)~(c)に示すように、突起状構造体111は第3方向に対する屈折率を段階的に変化させる構造であれば何れでもよく、突起状構造体111の縦断面形状は、釣鐘状、円錐状、逆漏斗状でもよいし、その他の形状であってもよい。このような形状とすることで、空気層と共鳴構造部18との界面での反射を効果的に抑制できる。また、図2(d)のように、突起状構造体111の大きさや高さに変化をつけたり、非周期的に配列したりするといったように、不規則に設計することが好ましい。これにより、様々な波長域を含む入射光の反射を効果的に抑制することができる。
突起状構造体111の材料は、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれかが主成分であることが好ましい。複数の突起状構造体111が配列されていることで反射防止部112として機能する。突起状構造体111からなる反射防止部112は、図1に示すように第3低屈折率領域16と別層構成となっていてもよく、図3(a)に示すように第3低屈折率領域16と一体化していてもよい。換言すると、突起状構造体111の材料は、第3低屈折率領域16と同じ樹脂材料を使用してもよいし、異なる樹脂を使用してもよい。
突起状構造体111の材料の屈折率は、1.1以上2.0以下が好ましい。また、突起状構造体111の材料の屈折率は、第3低屈折率領域16の低屈折率材料の屈折率と近い値であることが好ましいため、1.4以上1.6以下がより好ましい。また、突起状構造体111の材料の屈折率と第3低屈折率領域16の低屈折率材料の屈折率との差は0.2以下が好ましい。
第1方向及び第2方向の2次元に表される平面において、突起状構造体111の周期は干渉光として色を発生しない周期であれば何れでもよく、好ましくは100nm以上2000nm以下であり、より好ましくは100nm以上400nm以下である。周期が一定の構造の場合は、その周期がサブ波長周期であることが好ましい。周期が可視領域の光の波長以上の周期でもよく、その場合は無秩序に配列されていることが好ましい。
突起状構造体111の高さは100nm以上2000nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以上600nm以下である。突起状構造体111のアスペクト比は1.0以上4.0以下が好ましい。アスペクト比が大きくなると反射防止効果が高くなるもの、突起状構造体を精度よく作製できなくなるため、突起状構造体111のアスペクト比は1.5以上2.0以下がより好ましい。突起状構造体111は、ピラーアレイ構造でもホールアレイ構造でもよく、ロール・トゥ・ロール法によって作製されることが好ましい。
[光学デバイスの作用]
光学デバイス10の表面側から光学デバイス10に光が入射すると、第2格子領域15がサブ波長格子を有すること、および、第2格子領域15が、第2格子領域15の屈折率よりも低い屈折率を有する第2低屈折率領域14と第3低屈折率領域16とに挟まれていることから、第2格子領域15では、表面側への回折光の射出が抑えられ、導波モード共鳴現象が発生する。すなわち、特定の波長域の光が第2格子領域15において多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、この特定の波長域の光が、光学デバイス10の表面側に反射光として射出される。第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域は、第2格子領域15における幅Dh2、第2周期P2、および、厚さT2によって決まる。
ここで、第2格子領域15を伝播する上記特定の波長域の光が、損失なく第2格子領域15にて多重反射することは起こりにくく、上記特定の波長域の光の一部は、第2格子領域15内での反射ごとに、第2低屈折率領域14に漏れ出る。この漏れ出た光は、第2低屈折率領域14を透過して、第1格子領域13に入る。また、上記特定の波長域以外の波長域の光は、第2格子領域15で多重反射せずに、第2低屈折率領域14を透過して、第1格子領域13に入る。
第1格子領域13に光が入射すると、第1格子領域13がサブ波長格子を有すること、および、第1格子領域13が、第1格子領域13の屈折率よりも低い屈折率を有する第1低屈折率領域12と第2低屈折率領域14とに挟まれていることから、第1格子領域13でも、導波モード共鳴現象が発生する。第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域は、第1格子領域13における幅Dh1、第1周期P1、および、厚さT1によって決まる。第1格子領域13と第2格子領域15とでは、幅Dh1と幅Dh2とは一致し、第1周期P1と第2周期P2とは一致し、厚さT1と厚さT2とは一致する。そのため、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域は、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域と同じである。
したがって、第2格子領域15にて多重反射する過程で漏れ出て第1格子領域13に入った光が、第1格子領域13において多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、光学デバイス10の表面側に反射光として射出される。そして、第1格子領域13で多重反射を起こさなかった波長域の光は、第1低屈折率領域12および基材11を透過して、光学デバイス10の裏面側に出る。
結果として、光学デバイス10の表面側には、第2格子領域15で強められた波長域の光と、第1格子領域13で強められた波長域の光とが射出される。これらの光の波長域は同じであるから、1つの格子領域のみを有する光学デバイスと比較して、光学デバイス10から反射光として射出される上記特定の波長域の光の強度は大きくなり、反射光の波長選択性を高めることができる。
そして、光学デバイス10への入射光に含まれる波長域のなかで、上記反射光として射出された上記特定の波長域を除く波長域の光が、透過光として光学デバイス10の裏面側に射出される。
なお、光学デバイス10の裏面側から光学デバイス10に光が入射した場合には、第2格子領域15で強められた波長域の反射光と、第1格子領域13で強められた波長域の反射光とが、光学デバイス10の裏面側に射出される。そして、入射光に含まれる波長域のなかで、上記反射光として射出された波長域を除く波長域の光が、透過光として光学デバイス10の表面側に射出される。
さらに、以下では共鳴構造部18の少なくとも一方の表面に反射防止部112が形成されたことによる作用について、反射防止部112が形成されていない場合と対比して説明する。
突起状構造体111からなる反射防止部112が形成されていない場合、入射光は光学デバイス10に入射する際、その一部が空気層と第3低屈折率領域16の屈折率差により反射される。ここで反射された光は、共鳴構造部18を通過していないため、導波モード共鳴現象による反射ではなく、通常の白色光(可視光が入射した場合)となっている。そのため、入射光側の観察者には、共鳴構造部18により得られた特定波長の光と、表面で反射された白色光が混ざり合った光が観測され、波長選択性の低い光が視認されることとなる。
一方、本実施形態に係る光学デバイス10では、共鳴構造部18の少なくとも一方の表面に突起状構造体111からなる反射防止部112が形成されている。このため、突起状構造体111により空気層と第3低屈折率領域16の屈折率差が段階的に変化することになり、入射光は光学デバイス10に入射する際、界面での反射が抑制される。よって、入射光側の観察者は、共鳴構造部18により強度が高められた特定波長の光を観察できることになる。換言すると、観察者は波長選択性の高い光を視認できることとなる。
さらに、反射防止部112が存在しない場合、導波モード共鳴現象により観察者側に反射された特定波長の光の一部は、入射光と同様に空気層と第3低屈折率領域16との間で再度反射され、裏面から射出する光となる。すなわち、表面側(入射光側)の観察者まで特定波長の光は届かず、光取出効率は低下する。しかし、反射防止部112が存在することで上記と同様の原理により特定波長の光は観察者に届くため、光取出効率が高まるといった効果も得られる。すなわち、反射防止部112が存在することで、導波モード共鳴現象により得られた特定波長の光のみを効率的に得ることが可能となる。
以上は反射防止部112として突起状構造体111を用いた場合について説明したが、同様の効果を備える構造であれば、反射防止部112はその他の構造でもよい。
[光学デバイスの製造方法]
図4~図6を参照して、上述した光学デバイス10の製造方法について説明する。図4は、第1実施形態における凹凸構造体の形成工程を示す図である。図4に示すように、まず、基材11の表面に、低屈折率材料からなる層を形成し、この層の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造体20を形成する。凹凸構造体20は、基材11上に沿って広がる平坦部20aと、平坦部20aから突き出た複数の凸部20bと、凸部20b間に位置する部分である複数の凹部20cとを有する。複数の凸部20bは、第2方向にサブ波長周期で等間隔に配置され、第1方向に帯状に延びる。
複数の凹部20cは、複数の凸部20bと同一のパターンで並んでおり、基材11の表面側から見て、凸部20bの第1方向の長さと凹部20cの第1方向の長さとは等しく、凸部20bの第2方向の幅と凹部20cの第2方向の幅とは等しい。
光学デバイス10によって取り出したい波長域に応じて、凸部20bと凹部20cとは、配列の周期Ptが第1周期P1かつ第2周期P2となり、凸部20bの幅Dt1が幅Dl1かつ幅Dh2となり、凹部20cの幅Dt2が幅Dh1かつ幅Dl2となるように形成される。すなわち、幅Dt1と、幅Dt2とは等しい。凸部20bの高さHtは、厚さT1よりも大きくなるように形成される。
凹凸構造の形成には、ナノインプリント法やドライエッチング法等の公知の微細加工技術が用いられる。なかでも、ナノインプリント法は、微細な凸部20bおよび凹部20cを簡便に形成できるため好ましい。
例えば、低屈折率材料として紫外線硬化性樹脂を用い、光ナノインプリント法によって凹凸構造体20を形成する場合、まず、基材11の表面に、紫外線硬化性樹脂を塗工する。次いで、紫外線硬化性樹脂からなる塗工層の表面に、形成対象の凸部20bおよび凹部20cからなる凹凸が反転された凹凸を有する凹版である合成石英モールドを押し当て、塗工層および凹版に紫外線を照射する。続いて、硬化した紫外線硬化性樹脂から凹版を離型する。これによって、凹版の有する凹凸が紫外線硬化性樹脂に転写されて凸部20bおよび凹部20cが形成されるとともに、凸部20bおよび凹部20cからなる凹凸構造と基材11との間には、紫外線硬化性樹脂からなる残膜として、平坦部20aが形成される。
図5は、第1実施形態における高屈折率層の形成工程を示す図である。次に、図5に示すように、凹凸構造体20の表面に、高屈折率材料からなる高屈折率層21を形成する。高屈折率層21の形成方法としては、真空蒸着法等の公知の成膜技術が用いられる。高屈折率層21は、凸部20b上と凹部20c上とに形成される。すなわち、高屈折率層21は、凹部20c上に位置する第1層状部21aと、凸部20b上に位置する第2層状部21bとを含む。
凹凸構造体20における幅Dt1と幅Dt2とは等しいため、第1層状部21aの幅Ds1と第2層状部21bの幅Ds2とは等しくなる。また、幅Ds1と幅Ds2との合計が、第1層状部21aと第2層状部21bとの配列の周期Ptとなる。高屈折率層21の厚さは、第1層状部21aの厚さTs1であるとともに第2層状部の厚さTs2であり、これらの厚さは等しい。高屈折率層21の厚さは、高さHtよりも小さく、所望の厚さT1かつ厚さT2になるように形成される。すなわち、第1層状部21aと第2層状部21bとは、互いに同一のパターンを有するサブ波長格子を構成する。
図6は、第1実施形態における埋め込み層の形成工程を示す図である。次に、図6に示すように、凹凸構造体20と高屈折率層21とからなる積層体の表面を覆うように、凹凸構造体20の形成材料と同じ低屈折率材料からなる層である埋め込み層22を形成して、上記積層体の有する凹凸を第2層状部21b上まで埋める。埋め込み層22は、平坦部22aと複数の凸部22bと凸部22b間に位置する複数の凹部22cとを備える。凸部22bは、第1層状部21a上における凸部20bの間および第2層状部21aの間の空間を埋めている。平坦部22aは、第2層状部21b上を含む領域に位置し、第1方向及び第2方向に広がっている。平坦部22aの基材11側から、凸部22bが基材11に向かって突き出ている。
凸部22bの周期は、凹凸構造体20における凸部20bの周期Ptと一致し、凸部22bの幅は、幅Dt2と一致し、凹部22cの幅は、幅Dt1と一致する。凸部22bの高さは、高屈折率層21の厚さよりも大きい。
埋め込み層22の形成方法としては、各種の塗布法等を用いた公知の成膜技術が用いられる。例えば、低屈折率材料として紫外線硬化性樹脂を用いる場合、まず、上記積層体の表面に紫外線硬化性樹脂を塗工する。次いで、紫外線硬化性樹脂からなる塗工層の表面に、離型性を有する平板を押し当て、塗工層に紫外線を照射する。続いて、硬化した紫外線硬化性樹脂から平板を離型する。よって、紫外線硬化性樹脂を使用する場合は、平版は紫外線を透過する材料で構成される必要がある。
次に、共鳴構造部18の表面に突起状構造体111を形成する。突起状構造体111の形成は凹凸構造体20の形成方法と同様に、共鳴構造部18の表面に光硬化性樹脂を塗布し、突起状構造体111の構造を転写可能なモールドを押し込み、該光硬化性樹脂を硬化させる波長の光を照射することで形成が可能である。この他にも、陽極酸化ポーラスアルミナをモールドとしたナノインプリント法など公知の技術を適用してもよい。
突起状構造体111を形成する別の方法として、上述の埋め込み層22の形成時に、平板の代わりに、突起状構造体111の構造を転写可能な凹版を使用してもよい。この場合、突起状構造体111の構造を転写可能な凹版を、凹凸構造体20と高屈折率層21とからなる積層体の表面に塗工された紫外線硬化樹脂に押し当てて紫外線を照射することで、埋め込み層22と突起状構造体111を同時に形成することが可能となる。
以上の工程により、光学デバイス10が形成される。凹凸構造体20の平坦部20aが、第1低屈折率領域12である。高屈折率層21の第1層状部21aと、凹凸構造体20の凸部20bのなかで第1層状部21aに第2方向において隣接する部分とから構成される領域が、第1格子領域13である。第1層状部21aが第1高屈折率部13aであり、凸部20bのなかで第1層状部21aに第2方向において隣接する部分が第1低屈折率部13bである。凹凸構造体20の凸部20bのなかで第1層状部21aよりも光学デバイス10の表面側に位置する部分と、埋め込み層22の凸部22bのなかで凹凸構造体20の凸部20bに第2方向において隣接する部分とから構成される領域が、第2低屈折率領域14である。
高屈折率層21の第2層状部21bと、埋め込み層22の凸部22bのなかで第2層状部21bに第2方向に隣接する部分とから構成される領域が、第2格子領域15である。第2層状部21bが第2高屈折率部15aであり、凸部22bのなかで第2層状部21bに第2方向において隣接する部分が第2低屈折率部15bである。また、埋め込み層22の平坦部22aが、第3低屈折率領域16である。
こうした製造方法によって製造される光学デバイス10においては、第1低屈折率領域12と、第1格子領域13の第1低屈折率部13bとは一の材料から形成され、第1低屈折率部13bと、第2低屈折率領域14のなかで第1低屈折率部13bに第3方向において隣接する部分とは一の材料から形成され、第1低屈折率領域12と、第1低屈折率部13bと、第2低屈折率領域14のなかで第1低屈折率部13bに第3方向において隣接する部分とは1つの構造体である。また、第2低屈折率領域14のなかで第2格子領域15の第2低屈折率部15bに第3方向において隣接する部分と、第2低屈折率部15bとは一の材料から形成され、第2低屈折率部15bと第3低屈折率領域16とは一の材料から形成され、第2低屈折率領域14のなかで第2低屈折率部15bに第3方向において隣接する部分と、第2低屈折率部15bと、第3低屈折率領域16とは1つの構造体である。
上述のように、本実施形態に係る光学デバイス10では、第1格子領域13で強められた波長域の光と、第2格子領域15で強められた波長域の光とが射出されることにより、得られる反射光の強度が大きくなる。そのため、第1格子領域13や第2格子領域15に接する層の精密な膜厚の制御を要さずに、例えば、ナノインプリント法を用いて光学デバイス10を形成する場合には残膜の膜厚の精密な制御を要さずに、波長選択性の高められた光学デバイス10を容易に製造することができる。
また、光学デバイス10は、光ナノインプリント法と真空蒸着法とを組み合わせた製造方法によって形成可能であるため、ロール・トゥ・ロール法による製造に適している。したがって、光学デバイス10を大量生産することが可能となる。
図7は、第1実施形態における第2低屈折率領域の別の構成例を示す断面図である。真空蒸着法を用いて高屈折率層21を形成する場合、凹凸構造体20の凸部20bの側面にも、高屈折率材料が付着する場合がある。その結果、図7に示すように、光学デバイス10における第2低屈折率領域14が、基材11の表面側から見て互いに隣り合う第1高屈折率部13aと第2高屈折率部15aとの端部間を繋ぐように、第3方向に延びる第3高屈折率部17を含む構成となる。なお、第3高屈折率部17は、第1高屈折率部13aと第2高屈折率部15aとを完全に繋いでいなくてもよく、第3高屈折率部17と、第1高屈折率部13aまたは第2高屈折率部15aとは第3方向において離れていてもよい。
第3高屈折率部17が存在する場合であっても、第2低屈折率領域14における第3高屈折率部17の体積比率は微小であるため、第2低屈折率領域14においては、低屈折率材料によって構成される部分が支配的である。そのため、第2低屈折率領域14の屈折率は、第1低屈折率領域12および第3低屈折率領域16の各々の屈折率よりもわずかに大きくなるが、第1格子領域13および第2格子領域15の各々の屈折率よりは十分に小さい。したがって、本構成においても、第1格子領域13および第2格子領域15の各々が、これらの領域よりも屈折率の低い領域に挟まれた、導波モード共鳴現象に適した構造が実現される。
[光学デバイスの変形例]
上述の製造方法において、紫外線硬化性樹脂に代えて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いて、ナノインプリント法により凹凸構造体20を形成してもよい。熱硬化性樹脂を用いる場合、紫外線の照射を加熱に変更すればよく、熱可塑性樹脂を用いる場合、紫外線の照射を加熱および冷却に変更すればよい。
ただし、熱硬化性樹脂を用いて凹凸構造体20を形成した場合、埋め込み層22の形成に際して、凹凸構造体20が加熱されて変形することを抑えるために、熱硬化性樹脂とは異なる材料を用いて埋め込み層22を形成することが好ましい。
例えば、図8に示すように、凹凸構造体20を熱硬化性樹脂から形成し、埋め込み層22を紫外線硬化性樹脂から形成してもよい。この場合、凹凸構造体20を構成する低屈折率材料の屈折率と、埋め込み層22を構成する低屈折率材料の屈折率とは、互いに異なっていてもよく、それぞれの低屈折率材料の屈折率が高屈折率層21を構成する高屈折率材料の屈折率よりも低ければよい。
凹凸構造体20を構成する低屈折率材料の屈折率と、埋め込み層22を構成する低屈折率材料の屈折率とが互いに異なるとき、製造された光学デバイス10においては、第1低屈折率領域12、第2低屈折率領域14、および、第3低屈折率領域16の各々の屈折率は、互いに異なる。また、第2低屈折率領域14は、互いに異なる屈折率を有する材料から構成された第1方向に延びる帯状の部分が、第2方向に交互に並ぶ構造を有する。
なお、凹凸構造体20を熱硬化性樹脂から形成し、埋め込み層22を熱硬化性樹脂とは異なる材料から形成する場合に限らず、凹凸構造体20を構成する低屈折率材料の屈折率と、埋め込み層22を構成する低屈折率材料の屈折率とは、互いに異なっていてもよい。要は、凹凸構造体20および埋め込み層22の各々を構成する低屈折率材料の屈折率が、高屈折率層21を構成する高屈折率材料の屈折率よりも低ければよい。そして、製造された光学デバイス10においては、第1格子領域13および第2格子領域15の屈折率の各々よりも、第1低屈折率領域12、第2低屈折率領域14、および、第3低屈折率領域16の屈折率の各々が低ければよい。
また、図9に示すように、基材11と凹凸構造体20とが一の材料から形成された1つの構造体であってもよい。すなわち、低屈折率材料からなる基材11の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造体20を形成する。例えば、基材11として熱可塑性樹脂からなるシートを用いて、基材11の表面に凹凸構造を形成してもよいし、基材11として合成石英からなる基板を用いて、基材11の表面に凹凸構造を形成してもよい。合成石英基板に対する凹凸構造の形成には、ドライエッチング法等の公知の技術が用いられればよい。この場合、製造された光学デバイス10においては、基材11と第1低屈折率領域12とは一の材料から形成されている。
また、突起状構造体111は共鳴構造部18の最裏面、もしくは図3(b)に示すように共鳴構造部18の両面に形成してもよい。このような場合であっても入射光に対して同様の効果を得ることができる。とくに、光学デバイス10に透過光を使用する場合、裏面側に反射防止部112が形成されることが好ましい。
[光学デバイスの適用例]
上述した光学デバイス10の具体的な適用例について説明する。
<波長選択フィルタ>
光学デバイス10の第1の適用例は、光学デバイス10を波長選択フィルタに用いる形態である。図10は、第1実施形態の光学デバイスの第1の適用例である波長選択フィルタの作用を示す図である。図10に示すように、波長選択フィルタ50は、複数の波長の光を含む入射光I1を受けたとき、特定の波長域の光I2を反射し、この特定の波長域の光を除く波長域の光I3を透過する。波長選択フィルタ50には光学デバイス10の構成が適用されており、例えば光学デバイス10の表面側から光が入射するように配置されている。光I2および光I3の波長域は、上述のように、第1格子領域13および第2格子領域15が有するサブ波長格子の周期の設定によって調整可能である。
波長選択フィルタ50は、反射光である光I2を利用する形態で用いられてもよいし、透過光である光I3を利用する形態で用いられてもよいし、光I2と光I3との双方を利用する形態で用いられてもよい。例えば、波長選択フィルタ50は、色分解を要する装置や、照明等を構成する部材として用いられる。
上述のように、第1実施形態の光学デバイス10によれば、波長選択性が高められた波長選択フィルタ50を実現できる。
<表示体>
光学デバイス10の第2の適用例は、光学デバイス10を表示体に用いる形態である。表示体は、物品の偽造の困難性を高める目的で用いられてもよいし、物品の意匠性を高める目的で用いられてもよいし、これらの目的を兼ねて用いられてもよい。物品の偽造の困難性を高める目的としては、表示体は、例えば、パスポートや免許証等の認証書類、商品券や小切手等の有価証券類、クレジットカードやキャッシュカード等のカード類、紙幣等に貼り付けられる。また、物品の意匠性を高める目的としては、表示体は、例えば、身に着けられる装飾品や、使用者に携帯される物品、家具や家電等のように据え置かれる物品、壁や扉等の構造物等に取り付けられる。
図11は、第1実施形態の光学デバイスの第2の適用例である表示体の平面構造を示す図である。図11に示すように、表示体60は、表面60Fと、表面60Fとは反対側の面である裏面60Rとを有し、表面60F側から見て、第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとを含んでいる。第1表示領域61Aは、複数の第1画素62Aが配置されている領域であり、第2表示領域61Bは、複数の第2画素62Bが配置されている領域であり、第3表示領域61Cは、複数の第3画素62Cが配置されている領域である。換言すれば、第1表示領域61Aは、複数の第1画素62Aの集合から構成されており、第2表示領域61Bは、複数の第2画素62Bの集合から構成されており、第3表示領域61Cは、複数の第3画素62Cの集合から構成されている。
第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとの各々は、これらの領域単独、もしくは、これらの領域の2以上の組み合わせによって、文字、記号、図形、模様、絵柄、これらの背景等を表現する。一例として、図11に示す構成では、第1表示領域61Aによって円形の図形が表現され、第2表示領域61Bによって三角形の図形が表現され、第3表示領域61Cによって背景が表現されている。
第1画素62Aと、第2画素62Bと、第3画素62Cとの各々には、光学デバイス10の構成が適用されている。第1画素62A、第2画素62Bおよび第3画素62Cの各々は、図1に示す第1方向及び第2方向を有する面が表示体60の表面60Fと平行な面となるように、すなわち、表示体60の表面60Fと平行な方向にサブ波長格子が並ぶように配置されている。例えば、これらの画素62A、62Bおよび62Cは光学デバイス10の表面側が表示体60の表面60F側となる向きに配置されている。
第1画素62A、第2画素62Bおよび第3画素62Cは、第1格子領域13の第1周期P1および第1周期P1と等しい周期である第2格子領域15の第2周期P2について、互いに異なる周期を有している。したがって、第1画素62Aと、第2画素62Bと、第3画素62Cとでは、第1格子領域13および第2格子領域15において、導波モード共鳴現象による共鳴が起こる波長域は互いに異なる。
結果として、複数の波長の光を含む入射光を受けたとき、第1画素62Aから射出される反射光の波長域と、第2画素62Bから射出される反射光の波長域と、第3画素62Cから射出される光の波長域とは、互いに異なる。また、上記入射光を受けたとき、第1画素62Aから射出される透過光の波長域と、第2画素62Bから射出される透過光の波長域と、第3画素62Cから射出される透過光の波長域とは、互いに異なる。
すなわち、図12に示すように、表示体60の外側から表示体60の表面60Fに向けて入射光I1が照射されているとき、表示体60の表面60F側には、第1画素62Aから反射光I4が射出され、第2画素62Bから反射光I5が射出され、第3画素62Cから反射光I6が射出される。したがって、表面60F側から表示体60を見ると、第1表示領域61Aには反射光I4の波長域に応じた色相の色が視認され、第2表示領域61Bには反射光I5の波長域に応じた色相の色が視認され、第3表示領域61Cには反射光I6の波長域に応じた色相の色が視認される。反射光I4の波長域と、反射光I5の波長域と、反射光I6の波長域とは互いに異なるため、第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとは互いに異なる色相の色に見える。
したがって、表示体60の外側から表面60Fに向けて入射光I1が照射されている状態で、表面60F側から表示体60を観察する表面反射観察によれば、互いに異なる色の第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとから構成される像が視認される。
また、表示体60の外側から表示体60の表面60Fに向けて入射光I1が照射されているとき、表示体60の裏面60R側には、第1画素62Aから透過光I7が射出され、第2画素62Bから透過光I8が射出され、第3画素62Cから透過光I9が射出される。したがって、裏面60R側から表示体60を見ると、第1表示領域61Aには透過光I7の波長域に応じた色相の色が視認され、第2表示領域61Bには透過光I8の波長域に応じた色相の色が視認され、第3表示領域61Cには透過光I9の波長域に応じた色相の色が視認される。透過光I7の波長域と、透過光I8の波長域と、透過光I9の波長域とは互いに異なるため、第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとは互いに異なる色相の色に見える。
したがって、表示体60の外側から表面60Fに向けて入射光I1が照射されている状態で、裏面60R側から表示体60を観察する裏面透過観察によっても、互いに異なる色の第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとから構成される像が視認される。
さらに、反射光I4の波長域と透過光I7の波長域とは異なるため、表面60F側から表示体60を見たときと、裏面60R側から表示体60を見たときとで、第1表示領域61Aに視認される色の色相は異なる。裏面60R側から見える色は、表面60F側から見える色の補色に相当する色である。同様に、表面60F側から表示体60を見たときと、裏面60R側から表示体60を見たときとで、第2表示領域61Bに視認される色の色相も異なり、第3表示領域61Cに視認される色の色相も異なる。
したがって、表面反射観察と裏面透過観察とで、表示体60には互いに異なる色彩の像が視認される。それゆえ、表示体60を備える物品にて、偽造の困難性や意匠性をより高めることができる。また、表示体60の表裏の識別も容易である。
第1実施形態の光学デバイス10によれば、波長選択性を高めることができる。そのため、光学デバイス10の構成が各画素62A、62B、62Cに適用されることによって、各表示領域61A、61B、61Cに視認される色の鮮明さや明るさを高めることができる。その結果、表示体60が形成する像の視認性を高めることができる。また、第1実施形態の光学デバイス10によれば、樹脂フィルムのように可撓性のある基材11を用いることが可能であるため、形状の変形についての自由度が高い表示体60の実現も可能である。
また、第1画素62Aと第2画素62Bと第3画素62Cとの間で、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、第2低屈折率領域14、第2格子領域15、および、第3低屈折率領域16は、各々の領域が一の材料から形成されている。すなわち、第1画素62Aと第2画素62Bと第3画素62Cとは、共通した1つの基材11と、これらの画素間によらず一の材料から形成された凹凸構造体20と、これらの画素間によらず一の材料から形成された埋め込み層22とを有している。
第1画素62Aと第2画素62Bと第3画素62Cとの各々における凹凸構造体20は、例えば、ナノインプリント法を利用して、各画素62A、62B、62Cに対応する部分で凹凸の周期を変えた合成石英モールドを用いることによって、同時に形成することができる。また、高屈折率層21および埋め込み層22も、各画素62A、62B、62Cに対応する部分を同時に形成することができる。したがって、互いに異なる色を呈する画素62A、62B、62Cを容易に形成することができる。
また、表示体60が含む表示領域の数、すなわち、光学デバイス10の構成が適用された画素が配置されて、互いに異なる色相の色を呈する表示領域の数は特に限定されず、表示領域の数は、1つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、表示体60は、光学デバイス10の構成とは異なる構成を有する領域、例えば、基材11に低屈折率材料からなる平坦な層のみが積層された構造を有する領域等を有していてもよい。
さらに、表示体60の表示領域には、光学デバイス10の構成が適用された表示要素が含まれればよく、表示要素は、ラスタ画像を形成するための繰返しの最小単位である画素に限らず、ベクタ画像を形成するためのアンカを結んだ領域であってもよい。
<カラーフィルタ>
光学デバイス10の第3の適用例は、光学デバイス10をカラーフィルタに用いる形態である。図13は、第1実施形態の光学デバイスの第3の適用例であるカラーフィルタの平面構造を示す図である。図13に示すように、カラーフィルタ70は、マトリックス状に並ぶ複数の画素71を備え、各画素71は、赤色用副画素71Rと、緑色用副画素71Gと、青色用副画素71Bとの3つの副画素から構成されている。
カラーフィルタ70は、反射型のカラーフィルタであって、表示装置に備えられる。カラーフィルタ70に対して、表示装置の表示面を見る観察者の位置する側が、カラーフィルタ70の表面側であり、カラーフィルタ70に対して、表面側と反対の側が、カラーフィルタ70の裏面側である。カラーフィルタ70には、表面側から、光が照射される。カラーフィルタ70に照射される光の強度は、副画素ごとに、液晶装置等によって変更可能に構成されている。
赤色用副画素71Rは、赤色用副画素71Rに入射した光を赤色の光に変換して反射する。緑色用副画素71Gは、緑色用副画素71Gに入射した光を緑色の光に変換して反射する。青色用副画素71Bは、青色用副画素71Bに入射した光を青色の光に変換して反射する。
赤色用副画素71Rと、緑色用副画素71Gと、青色用副画素71Bとの各々には、第1実施形態の光学デバイス10の構成が適用されている。赤色用副画素71Rと、緑色用副画素71Gと、青色用副画素71Bとの各々は、図1に示す第1方向及び第2方向を有する面がカラーフィルタ70の表面と平行な面となるように、すなわち、表示装置の表示面と平行な方向にサブ波長格子が並ぶように配置されている。例えば、これらの副画素71R、71G、71Bは光学デバイス10の表面側がカラーフィルタ70の表面側となる向きに配置されている。
図14は、第1実施形態の光学デバイスの第3の適用例であるカラーフィルタの作用を示す図である。図14に示すように、赤色用副画素71Rは、カラーフィルタ70の表面側から複数の波長の光を含む入射光I1を受けたとき、赤色の反射光Irを表面側に射出するように、第1格子領域13の第1周期P1および第2格子領域15の第2周期P2が設定されている。緑色用副画素71Gは、入射光I1を受けたとき、緑色の反射光Igを表面側に射出するように、第1周期P1および第2周期P2が設定されている。青色用副画素71Bは、入射光I1を受けたとき、青色の反射光Ibを表面側に射出するように、第1周期P1および第2周期P2が設定されている。副画素71R、71G、71Bごとに入射光の強度が変更されることによって、画素71として視認される色が変更され、画素71の集合によって表示装置の表示する像が形成される。
上述のように、第1実施形態の光学デバイス10によれば波長選択性を高めることができる。そのため、第1実施形態の光学デバイス10の構成が各副画素71R、71G、71Bに適用されることによって、各副画素71R、71G、71Bにおける色の鮮明さや輝度が高めることができる。
また、上述の表示体60の形態と同様に、赤色用副画素71Rと緑色用副画素71Gと青色用副画素71Bとの間で、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、第2低屈折率領域14、第2格子領域15、および、第3低屈折率領域16の各々は一の材料から形成されている。すなわち、赤色用副画素71Rと緑色用副画素71Gと青色用副画素71Bとは、共通した1つの基材11と、これらの画素間によらず一の材料から形成された凹凸構造体20と、これらの画素間によらず一の材料から形成された埋め込み層22とを有している。
赤色用副画素71Rと緑色用副画素71Gと青色用副画素71Bとの各々における凹凸構造体20は、例えば、ナノインプリント法を用いて、各副画素71R、71G、71Bに対応する部分で凹凸の周期を変えた合成石英モールドを用いることによって、同時に形成することができる。また、高屈折率層21および埋め込み層22も、各副画素71R、71G、71Bに対応する部分を同時に形成することができる。したがって、3種類の色の副画素71R、71G、71Bを有するカラーフィルタ70を容易に形成することができる。
以上、第1実施形態に係る光学デバイス、およびこの光学デバイスの製造方法によれば、少なくとも以下に列挙する効果が得られる。
(1)第1格子領域13および第2格子領域15に光が入射すると、第1格子領域13および第2格子領域15では、導波モード共鳴現象が発生する。第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とは一致する。したがって、2つの格子領域13および15の各々で強められた波長域の光が反射光として得られるため、1つの格子領域のみを有する光学デバイスと比較して、反射光として射出される光の強度は大きくなる。そのため、格子領域に接する層の精密な膜厚の制御を要さずに、波長選択性を高めることができる。
(2)低屈折率材料からなる凹凸構造体20を形成する工程と、凹凸構造体20の表面にサブ波長格子を含む高屈折率層21を形成する工程と、凹凸構造体20と高屈折率層21とからなる積層体の表面に、低屈折率材料からなる埋め込み層を形成する工程とによって、上記光学デバイス10が形成される。したがって、サブ波長格子に接する層の精密な膜厚の制御を要さずに、光学デバイス10の波長選択性を高めることができる。その結果、波長選択性の高められた光学デバイス10を容易に製造することができる。
(3)特に、低屈折率材料として樹脂を用い、樹脂からなる塗工層に凹版を押し付けて樹脂を硬化させて凹凸構造体20を形成する製法では、ナノインプリント法を用いて凹凸構造体20の形成を行うことができるため、微細な凹凸を有する凹凸構造体20を好適に、かつ、簡便に形成することができる。
(4)第1低屈折率領域12と、第1低屈折率部13bと、第2低屈折率領域14のなかで第1低屈折率部13bに第3方向において隣接する部分とが、一の材料から形成された1つの構造体であり、第3低屈折率領域16と、第2低屈折率部15bと、第2低屈折率領域14のなかで第2低屈折率部15bに第3方向において隣接する部分とが、一の材料から形成された1つの構造体である構成では、1つの構造体である部分の各々を、上述の製造方法を用いて1つの工程にて製造することができるため、光学デバイス10の容易な製造が可能である。
(5)凹凸構造体20および埋め込み層22の屈折率と、第1高屈折率部13aおよび第2高屈折率部15aの屈折率との差が0.2よりも大きい構成では、第1格子領域13および第2格子領域15において、導波モード共鳴現象が好適に生じやすく、第1格子領域13および第2格子領域15からの反射光の強度をより高めることができる。それ故に、光学デバイス10によれば、波長選択性をより高めることができる。
(6)上記低屈折率材料が、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、および、熱可塑性樹脂のいずれかであり、第1高屈折率部13aおよび第2高屈折率部15aを構成する高屈折率材料が、無機化合物を含む構成では、第1格子領域13および第2格子領域15において、導波モード共鳴現象が好適に生じやすく、第1格子領域13および第2格子領域15からの反射光の強度をより高めることができる。したがって、上記構成の光学デバイス10によれば、波長選択性をより高めることができる。また、光学デバイス10の製造に要する材料費の低減や、ナノインプリント法等の簡便な製造方法の適用が可能である。
(7)真空蒸着法を利用して高屈折率部を形成することで、第2低屈折率領域14が、基材11の表面側から見て互いに隣り合う第1高屈折率部13aと第2高屈折率部15aとの端部間で、第3方向に延びる第3高屈折率部17を備えていてもよい。この場合であっても、サブ波長格子の好適な形成が可能であり、導波モード共鳴現象を生じさせるための第2低屈折率領域14の構成が好適に実現される。
(8)共鳴構造部の少なくとも一方の面に備えられた反射防止部により、入射光や透過光、導波モード共鳴現象により発生した特定波長域の光は、空気層と共鳴構造部の界面での反射が抑制される。そのため、導波モード共鳴現象により得られた特定波長の光のみを効率的に得ることが可能となる。
(第2実施形態)
図15~図18を参照して、第2実施形態における光学デバイスの構成について説明する。以下では、第2実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
[光学デバイスの構成]
図15および図16を参照して、第2実施形態の光学デバイスの構成について説明する。図15および図16は、第2実施形態における光学デバイスの断面構造の一例を示す断面図である。図15に示すように、第2実施形態の光学デバイス30は、第1実施形態にて説明した、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、第2低屈折率領域14、第2格子領域15、および、第3低屈折率領域16からなる構造体である共鳴構造部18を、第3方向に2つ備えている。
2つの共鳴構造部18である第1共鳴構造部18Aと第2共鳴構造部18Bとは、第3方向に隣り合っており、2つの共鳴構造部18A、18Bは、2つの基材11で挟まれている。換言すれば、第2実施形態の光学デバイス30は、図1に示す第1実施形態に係る構成を有する2つの光学デバイス10における、第3低屈折率領域16同士が向かい合うように接合された構造を有する。第2実施形態の光学デバイス30は、第3方向に間をあけて並ぶ4つのサブ波長格子を有し、これらのサブ波長格子が低屈折率材料に埋め込まれた構造を有している。なお、一方の基材11に対する他方の基材11の側が光学デバイス30の表面側であり、他方の基材11に対する一方の基材11の側が光学デバイス10の裏面側である。
2つの共鳴構造部18A、18Bにおいて、それぞれの第1高屈折率部13aおよび第2高屈折率部15aの延びる方向は一致している。すなわち、光学デバイス30が含むすべての第1高屈折率部13aおよび第2高屈折率部15aは、第1方向に延び、光学デバイス30が含むすべての第1低屈折率部13bおよび第2低屈折率部15bもまた、第1方向に延びている。そして、光学デバイス30が有する4つの格子領域13、15の各々にて、高屈折率部13a、15aと低屈折率部13b、15bとは、第2方向に交互に並んでいる。すなわち、光学デバイス30が有する4つのサブ波長格子について、サブ波長格子の配列方向は同一である。
なお、基材11の表面側から見て、第1共鳴構造部18Aの第1高屈折率部13aは、第2共鳴構造部18Bの第1高屈折率部13aと重なってもよいし、第2共鳴構造部18Bの第2高屈折率部15aと重なってもよいし、第2共鳴構造部18Bの第1高屈折率部13aの一部および第2高屈折率部15aの一部と重なってもよい。
第1共鳴構造部18Aと第2共鳴構造部18Bとは、これらの境界部分で、低屈折率領域を共有していてもよい。例えば、図15では、第1共鳴構造部18Aの備える第3低屈折率領域16と、第2共鳴構造部18Bの備える第3低屈折率領域16とは一の材料から形成されており、これらの領域の境界は存在しない。
1つの共鳴構造部18内において、第1格子領域13の第1周期P1と第2格子領域15の第2周期P2とは同一であり、この周期が当該共鳴構造部18の構造周期Pkである。
第1共鳴構造部18Aの構造周期Pkと、第2共鳴構造部18Bの構造周期Pkとは、図15に示すように同一であってもよいし、図16に示すように互いに異なっていてもよい。
2つの共鳴構造部18A、18Bが同一の構造周期Pkを有する形態においては、光学デバイス30が含む4つのサブ波長格子のパターンはすべて同一であり、共鳴構造部18A、18Bにおいて幅Dh1、Dh2はすべて等しく、厚さT1、T2はすべて等しい。また、2つの共鳴構造部18A、18Bが互いに異なる構造周期Pkを有する形態においては、光学デバイス30が含む4つのサブ波長格子のパターンは共鳴構造部18A、18Bごとに異なる。すなわち、幅Dh1、Dh2は共鳴構造部18A、18Bごとに異なる。厚さT1、T2は、共鳴構造部18A、18Bごとにすべて等しくてもよいし、異なってもよい。
[光学デバイスの作用]
2つの共鳴構造部18A、18Bが同一の構造周期Pkを有する構成では、光学デバイス30が有する4つの格子領域13、15のすべてにおいて、共鳴を起こす光の波長域は一致する。したがって、光学デバイス30の表面側から光学デバイス30に光が入射したとき、上層の格子領域にて多重反射する特定の波長域の光のうち、多重反射の過程でこの格子領域から漏れ出た光は、その下層の格子領域に入って多重反射し、こうした現象が、格子領域の数だけ繰り返される。その結果、4つの格子領域13、15の各々で強められた特定の波長域の反射光が光学デバイス30の表面側に射出される。そのため、第1実施形態の光学デバイス10と比較して、光学デバイス30から反射光として射出される上記特定の波長域の光の強度はより大きくなり、反射光の波長選択性をより高めることができる。
一方、2つの共鳴構造部18A、18Bが互いに異なる構造周期Pkを有する構成では、第1共鳴構造部18Aの有する格子領域13、15にて共鳴を起こす光の波長域と、第2共鳴構造部18Bの有する格子領域13、15にて共鳴を起こす光の波長域とは、互いに異なる。したがって、光学デバイス30の表面側から光学デバイス30に光が入射したとき、上層の共鳴構造部の各格子領域で特定の波長域の光が多重反射し、多重反射しなかった特定の波長域以外の波長域の光は、上層の共鳴構造部を透過して、下層の共鳴構造部に入り、上層の共鳴構造部とは異なる波長域の光が、下層の共鳴構造部の各格子領域で多重反射する。その結果、光学デバイス30の表面側には、第1共鳴構造部18Aの有する格子領域13、15にて強められた第1の波長域の光と、第2共鳴構造部18Bの有する格子領域13、15にて強められた第2の波長域の光とを含む反射光が射出される。
そして、光学デバイス30の裏面側には、光学デバイス30への入射光に含まれる波長域のなかで、上記反射光として射出された第1の波長域および第2の波長域を除く波長域の光が透過光として射出される。こうした構成によれば、光学デバイス30にて、反射光の強度を高めつつ反射光に含まれる波長域を拡げること、および、透過光に含まれる波長域を狭めることが可能である。したがって、共鳴構造部18A、18Bにおける構造周期Pkの設定を通じて、反射光や透過光として観察される色相の調整の自由度を高めることができる。
[光学デバイスの適用例]
第2実施形態の光学デバイス30の構成は、第1実施形態で示した適用例と同様に、波長選択フィルタ50に適用されてもよいし、表示体60が備える表示要素に適用されてもよいし、カラーフィルタ70が備える副画素に適用されてもよい。
例えば、2つの共鳴構造部18A、18Bが同一の構造周期Pkを有する構成が適用された場合、波長選択フィルタ50においては、反射光の波長選択性をより高めることができる。また、表示体60においては、表面反射観察にて各表示領域61A、61B、61Cに視認される色の鮮明さや明るさを高めることができることにより、像の視認性を高めることができる。また、カラーフィルタ70においては、各副画素71R、71G、71Bにおける色の鮮明さや輝度を高めることができ、単色性の高い反射光を射出する各副画素71R、71B、71Gを備えた反射型のカラーフィルタ70を実現できる。
また例えば、2つの共鳴構造部18A、18Bが互いに異なる構造周期Pkを有する構成が適用された場合、波長選択フィルタ50においては、反射光や透過光として観察される色相の調整の自由度を高めることができる。また、表示体60においては、表面反射観察と裏面透過観察とにおいて視認される像の色相の調整の自由度を高めることができる。また、カラーフィルタ70としては、透過型のカラーフィルタ、すなわち、カラーフィルタの裏面側からカラーフィルタに光が照射され、観察者が、カラーフィルタの表面側から、カラーフィルタを透過した透過光を見る形態で用いられるカラーフィルタの実現が可能である。
具体的には、緑色用副画素71Gにおいては、カラーフィルタ70の裏面側から照射された光が、第1共鳴構造部18Aにて赤色の波長域の光が強められて裏面側に反射光として射出され、第2共鳴構造部18Bにて青色の波長域の光が強められて裏面側に反射光として射出されるように構成される。こうした構成によれば、カラーフィルタ70の裏面側から白色の入射光を受けたとき、カラーフィルタ70の表面側には、緑色の透過光が射出されるため、カラーフィルタ70の表面側から見て、緑色用副画素71Gには、緑色が視認される。同様に、共鳴構造部18A、18Bにおける構造周期Pkの調整によって、赤色用副画素71Rは赤色の波長域の透過光を射出し、青色用副画素71Bは青色の波長域の透過光を射出するように構成される。これにより、単色性の高い透過光を射出する各副画素71R、71B、71Gを備えた透過型のカラーフィルタ70が実現される。
[光学デバイスの製造方法]
図17および図18を参照して、第2実施形態の光学デバイス30の製造方法について説明する。図17は、第2実施形態における凹凸構造体が向かい合った状態を示す図であり、図18は、第2実施形態における埋め込み層の形成工程を示す図である。なお、図17、図18では反射防止部112は省略して表記している。
まず、第2実施形態の光学デバイス30の製造に際しては、第1実施形態と同様に、基材11上に凹凸構造体20と高屈折率層21とが順に形成された積層体が、2つ形成される。
続いて、図17に示すように、基材11と凹凸構造体20と高屈折率層21とからなる積層体である2つの積層体31を、高屈折率層21同士が向かい合うように対向させ、図18に示すように、2つの積層体31の間の領域を低屈折率材料で埋めることによってこれらの積層体31を接合する。これにより、光学デバイス30が形成される。
図18に示すように、低屈折率材料による埋め込みによって2つの積層体31の間に形成される部分が埋め込み層22である。第1実施形態と同様に、埋め込み層22を構成する低屈折率材料は、高屈折率層21を構成する高屈折率材料よりも屈折率の低い材料であれば、凹凸構造体20を構成する材料とは異なる材料であってもよい。また、2つの積層体31において、凹凸構造体20を構成する低屈折率材料や高屈折率層21を構成する高屈折率材料は互いに異なっていてもよい。
突起状構造体111も、第1実施形態と同様に形成すればよい。例えば、図15に示すように、一方の基材11における他方の基材11側と反対側の面に突起状構造体111からなる反射防止部112を形成することができる。また、剥離処理を施した基材11の一方を剥離し、その上に突起状構造体111からなる反射防止部112を形成してもよい。
なお、2つの凹凸構造体31を対向させた状態において、第1層状部21a同士が向かい合ってもよいし、一方の積層体31における第1層状部21aと、他方の積層体31における第2層状部21bとが向かい合ってもよい。あるいは、一方の積層体31における第1層状部21aは、他方の積層体31における第1層状部21aの一部および第2層状部21bの一部と向かい合っていてもよい。
例えば、2つの積層体31として、凸部20bの周期Ptが同一である積層体31を接合することによって、2つの共鳴構造部18A、18Bが同一の構造周期Pkを有する光学デバイス30を形成することができる。また例えば、2つの積層体31として、凸部20bの周期Ptが互いに異なる積層体31を接合することによって、2つの共鳴構造部18A、18Bが互いに異なる構造周期Pkを有する光学デバイス30を形成することができる。
なお、光学デバイス30は、第3方向に並ぶ3以上の共鳴構造部18を備えていてもよい。光学デバイス30が複数の共鳴構造部18を備える構成において、これらの共鳴構造部18における構造周期Pkが同一であれば、共鳴構造部18の数が多いほど、反射光の強度は高められる。また、複数の共鳴構造部18に、構造周期Pkが同一である共鳴構造部18と、構造周期Pkが互いに異なる共鳴構造部18とが含まれてもよい。こうした構成によれば、光学デバイス30から出射される反射光や透過光の色の細かな調整も可能となる。
3以上の共鳴構造部18を備える光学デバイス30の製造に際しては、積層体31の基材11と凹凸構造層20とが、凹凸構造体20から基材11を剥離可能となるような材料を用いて形成される。そして、2つの積層体31が低屈折率材料によって接合されたのち、一方の基材11が剥離され、露出された凹凸構造体20と他の積層体31とがさらに低屈折率材料を挟んで接合されることが繰り返されることによって、6以上のサブ波長格子を有する光学デバイス30を形成することができる。
以上、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(8)の効果に加えて、下記の効果が得られる。
(9)光学デバイス30が、第3方向に並ぶ複数の共鳴構造部18を備える構成によれば、光学デバイス10が4つ以上の格子領域13、15を備えるため、光学デバイス30の波長選択性をさらに高めることや、反射光と透過光とに含まれる波長域の調整の自由度を高めることが可能である。
(10)複数の共鳴構造部18の構造周期Pkが、複数の共鳴構造部18において等しい構成によれば、各格子領域13、15で共鳴を起こす光の波長域は一致し、各格子領域13、15で強められた特定の波長域の反射光が光学デバイス30から射出されるため、反射光として射出される上記特定の波長域の光の強度はより大きくなり、反射光の波長選択性がより高められる。
(11)第1共鳴構造部18Aの構造周期Pkと、第2共鳴構造部18Bの構造周期Pkとが互いに異なる構成によれば、第1共鳴構造部18Aの各格子領域13、15にて共鳴を起こす光の波長域と、第2共鳴構造部18Bの各格子領域13、15にて共鳴を起こす光の波長域とは、互いに異なる。したがって、光学デバイス30に光が入射したとき、光学デバイス30からは、第1共鳴構造部18Aの格子領域13、15にて強められた第1の波長域の光と、第2共鳴構造部18Bの格子領域13、15にて強められた第2の波長域の光とを含む反射光が射出される。また、光学デバイス30への入射光に含まれる波長域のなかで、上記反射光として射出された第1の波長域および第2の波長域を除く波長域の光が透過光として光学デバイスから射出される。したがって、光学デバイス30にて、反射光の強度を高めつつ反射光に含まれる波長域を拡げること、および、透過光に含まれる波長域を狭めることが可能である。それゆえ、各共鳴構造部18A、18Bが有するサブ波長格子の格子周期の設定を通じて、反射光や透過光として観察される色相の調整の自由度を高めることができる。
(12)上記光学デバイス30は、2つの積層体31を、高屈折率層21同士が向かい合うように対向させ、2つの凹凸構造体31の間の領域を低屈折率材料で埋めることによって形成される。これによれば、複数の共鳴構造部18を備える光学デバイス30を容易に形成することができる。
(第3実施形態)
図19および図20を参照して、第3実施形態の光学デバイスの構成について説明する。第3実施形態は、第2実施形態と比較して、2つの共鳴構造部におけるサブ波長格子の配列方向が異なる。以下では、第3実施形態と第2実施形態との相違点を中心に説明し、第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。なお、図19および図20は、第3実施形態に係る光学デバイス40の一部分を示す図であり、光学デバイス40の構造を理解しやすくするために、高屈折率材料から構成されている部分と、低屈折率材料から構成されている部分とに、互いに異なる濃度のドットを付して示している。また、図19では、突起状構造体111を表裏面両方に形成した場合を示しているが、当然、表面のみ、あるいは裏面のみの構成でもかまわない。図20では突起状構造体111は省略して示している。
[光学デバイスの構成]
図19は、第3実施形態における光学デバイスの斜視構造を示す斜視図である。図19に示すように、第3実施形態の光学デバイス40は、第2実施形態と同様に、第3方向に隣り合う2つの共鳴構造部18A、18Bを備えている。ただし、第3実施形態においては、第1共鳴構造部18Aの格子領域13、15が有する各要素部、すなわち、高屈折率部13a、15aおよび低屈折率部13b、15bの各々の延びる方向と、第2共鳴構造部18Bの格子領域13、15が有する各要素部の延びる方向とは互いに異なる。つまり、共鳴構造部18ごとに、各格子領域13、15での各要素部の並ぶ方向が異なっている。換言すれば、第1共鳴構造部18Aが有するサブ波長格子の配列方向と、第2共鳴構造部18Bが有するサブ波長格子の配列方向とが互いに異なっている。
なお、光学デバイス40が含む4つのサブ波長格子のパターンは相互に一致しており、共鳴構造部18A、18Bにおいて周期P1、P2はすべて等しく、Dh1、Dh2はすべて等しく、T1、T2はすべて等しい。
図20は、第3実施形態における光学デバイスを領域ごとに分割して示す斜視図である。図20は、図19に示す光学デバイス40を、基材11の表面に沿った方向に広がる領域ごとに分割して示す図である。なお、図20は、2つの共鳴構造部18A、18Bにおける各要素部の配置をわかりやすく示すための図であって、図20にて分割されている各領域の境界は、光学デバイス40を構成する構造体の境界を示すものではない。
図20に示すように、第1共鳴構造部18Aの高屈折率部13a、15aおよび低屈折率部13b、15bは、第1方向に延び、かつ、第2方向に高屈折率部13aと低屈折率部13bとが交互に並び、高屈折率部15aと低屈折率部15bとが交互に並ぶ。一方、第2共鳴構造部18Bの高屈折率部13a、15aおよび低屈折率部13b、15bは、第2方向に延び、かつ、第1方向に高屈折率部13aと低屈折率部13bとが交互に並び、高屈折率部15aと低屈折率部15bとが交互に並ぶ。すなわち、基材11の表面側から見て、第1共鳴構造部18Aが有する各要素部の延びる方向と、第2共鳴構造部18Bが有する各要素部の延びる方向とは直交している。換言すれば、基材11の表面側から見て、第1共鳴構造部18Aが有するサブ波長格子の配列方向と、第2共鳴構造部18Bが有するサブ波長格子の配列方向とのなす角は90°である。
[光学デバイスの作用]
サブ波長格子が、1つの方向に帯状に延びる高屈折率部13a、15aから構成されている場合、各格子領域13、15では、特定の方向へ偏光した光が多重反射して共鳴を起こし、反射光として射出される。上記特定の方向は、サブ波長格子の配列方向に依存する。第1共鳴構造部18Aと第2共鳴構造部18Bとでサブ波長格子の配列方向が異なっていることにより、第1共鳴構造部18Aの格子領域13、15と第2共鳴構造部18Bの格子領域13、15とでは、多重反射する光の偏光方向は互いに異なっている。したがって、第3実施形態の光学デバイス40によれば、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射されるため、反射光の強度をより高めることができる。
第3実施形態の光学デバイス40の構成は、第1実施形態で示した適用例と同様に、波長選択フィルタ50に適用されてもよいし、表示体60が備える表示要素に適用されてもよいし、カラーフィルタ70が備える副画素に適用されてもよい。
ただし、一般的に、カラーフィルタ70への入射光が、偏光方向の揃った光であることに対して、表示体60への入射光は、一般的な照明や太陽光のように、様々な方向への偏光成分を含む光である場合が多い。したがって、カラーフィルタ70へは、第2実施形態の光学デバイス30の構成が適用されると効果が高く、表示体60へは、第3実施形態の光学デバイス40の構成が適用されると効果が高い。
[光学デバイスの製造方法]
第3実施形態の光学デバイス40は、第2実施形態と同様に、基材11と凹凸構造体20と高屈折率層21とからなる積層体である2つの積層体31を、高屈折率層21同士が向かい合うように対向させ、2つの積層体31の間の領域を低屈折率材料で埋めることによって形成される。ここで、第3実施形態では、一方の積層体31における高屈折率層21の延びる方向と、他方の積層体31における高屈折率層21の延びる方向とが直交するように、これらの積層体31を向かい合わせて低屈折率材料により接合する。
突起状構造体111も、第2実施形態と同様に形成すればよい。
なお、光学デバイス40は、第3方向に並ぶ3以上の共鳴構造部18を備えていてもよい。この場合、複数の共鳴構造部18において、要素部の延びる方向が互いに異なる共鳴構造部18が含まれていればよい。こうした光学デバイス40は、偶数、すなわち2n(nは3以上の整数)個のサブ波長格子を備え、一方の基材11に近い位置から2m-1番目(mは1以上n以下の整数)のサブ波長格子と2m番目のサブ波長格子とにおいて、配列方向は互いに同一であり、格子周期は互いに同一である。換言すれば、光学デバイス40は、配列方向および格子周期が同一であるサブ波長格子の対が、第3方向に並び、これらのサブ波長格子が低屈折率材料に埋め込まれた構造を有している。
こうした構成によれば、共鳴構造部18ごとのサブ波長格子の配列方向の設定や、サブ波長格子の配列方向が同一である共鳴構造部18の数の設定等によって、光学デバイス10の偏光応答性を調整することもできる。なお、複数の共鳴構造部18には、サブ波長格子のパターンが互いに異なる共鳴構造部18が含まれていてもよい。
3以上の共鳴構造部18を備える光学デバイス40の製造に際しては、積層体31の基材11と凹凸構造体20とが、凹凸構造体20から基材11を剥離可能な材料から形成される。そして、2つの積層体31が低屈折率材料によって接合されたのち、一方の基材11が剥離され、露出された凹凸構造体20と他の積層体31とがさらに低屈折率材料を挟んで接合されることが繰り返されることによって、6以上のサブ波長格子を有する光学デバイス40を形成することができる。
以上、第3実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(8)、第2実施形態の(9)、(12)の効果に加えて、下記の効果が得られる。
(13)第1共鳴構造部18A有する要素部の延びる方向と、第2共鳴構造部18Bの有する要素部の延びる方向とが、互いに異なるため、第1共鳴構造部18Aの格子領域13、15と第2共鳴構造部18Bの格子領域13、15とでは、入射光に含まれる光のうち互いに異なる方向へ偏光した光が共鳴を起こして、それぞれの共鳴構造部18から射出される。したがって、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射されるため、反射光の強度をより高めることができる。
[変形例]
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
上記各実施形態の製造方法によって製造される光学デバイスの共鳴構造部18においては、第1高屈折率部13aの上部に第2低屈折率部15bが位置し、第1低屈折率部13bの上部に第2高屈折率部15aが位置する。
すなわち、第1高屈折率部13aの配置のパターンは、第2低屈折率部15bの配置のパターンと一致し、第1低屈折率部13bの配置のパターンは、第2高屈折率部15aの配置のパターンと一致する。そして、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とを一致させるためには、第1格子領域13と第2格子領域15とでサブ波長格子の格子周期が一致し、かつ、第1格子領域13における複数の第1高屈折率部13aの体積比率と、第2格子領域15における複数の第2高屈折率部15aの体積比率とが一致することが必要である。
こうした条件を満たすことは、上記各実施形態のように、第1高屈折率部13a、第1低屈折率部13b、第2高屈折率部15a、および、第2低屈折率部15bの各要素部が、共通する1つの方向に帯状に延びる同一の形状を有し、各格子領域13、15にて、高屈折率部13a、15aと低屈折率部13b、15bとが、これらの延びる方向と直交する方向に交互に配置されている構成とすることで、容易に実現できる。
ただし、上記条件が満たされていれば、各要素部は帯状に延びる形状とは異なる形状を有していてもよい。図21は、変形例における格子領域の平面構造を示す平面図であり、図22は、変形例における凹凸構造体の斜視構造を示す斜視図である。例えば、図21に示すように、第1高屈折率部13a、第1低屈折率部13b、第2高屈折率部15a、および、第2低屈折率部15bの各々が、正方形等の同一の矩形形状を有し、各格子領域13、15にて、高屈折率部13a、15aと低屈折率部13b、15bとが、第1方向と第2方向とのそれぞれの方向に、交互に配置されている構成であってもよい。こうした場合、図22に示すように、凹凸構造体20においては、互いに直交する2つの方向の各々に、凸部20bと凹部20cとが交互に配置され、平面視において凸部20bと凹部20cとは、正方形等の同一の矩形形状を有する。図21に示す構成によれば、1つの共鳴構造部18においても、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射されるため、反射光の強度をより高くすることができる。
[実施例]
上述した光学デバイスおよびその製造方法について、具体的な実施例を用いて説明する。
(実施例1)
実施例1は、光学デバイスが適用された波長選択フィルタであって、緑帯域の波長の光を選択的に反射する波長選択フィルタである。
<波長選択フィルタの製造>
まず、光ナノインプリント法で用いる凹版であるモールドを用意した。具体的には、光ナノインプリント法において照射する光として、365nmの波長の光を用いたため、この波長の光を透過する合成石英をモールドの材料として用いた。モールドの形成に際しては、まず、合成石英基板の表面に、Crからなる膜をスパッタリング法により成膜し、電子線リソグラフィ法によってサブ波長格子パターンの電子線レジストパターンをCr膜上に形成した。サブ波長格子パターンは、1つの方向に延びる帯状部分が等間隔で並ぶパターンである。使用したレジストはポジ型であり、膜厚は150nmとした。電子線により描画したパターンは、一辺3cmの正方形領域内に、短辺の長さを180nm、長辺の長さを3cmとした長方形を、短辺方向に周期360nmで配置したパターンであり、電子線を描画した領域は上記長方形の内側領域である。次に、塩素と酸素との混合ガスに高周波を印加して発生させたプラズマにより、レジストから露出した領域のCr膜をエッチングした。続いて、六弗化エタンガスに高周波を印加して発生させたプラズマによりレジストおよびCr膜から露出した領域の合成石英基板をエッチングした。これによりエッチングした合成石英基板の深さは200nmであった。残存したレジストおよびCr膜を除去し、離型剤としてオプツールHD-1100(ダイキン工業製)を塗布して、帯状部分が等間隔で並ぶサブ波長格子パターンが正方形領域内に形成されたモールドを得た。
次に、上記モールド上のサブ波長格子パターンが形成された正方形領域内に紫外線硬化性樹脂を塗工し、易接着処理が施されたポリエチレンテレフタラートフィルムでモールド表面を覆った。紫外線硬化性樹脂が上記正方形領域内の全面に広がるようにローラーを用いて延ばし、365nmの紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂を硬化した後、モールドからポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離した。これにより、表面にサブ波長格子パターンが形成された紫外線硬化性樹脂からなる凹凸構造体とポリエチレンテレフタラートフィルムである基材との積層体を得た。上記工程を繰り返し、凹凸構造体と基材との積層体を2つ作製した。なお、365nmの紫外線の照射量は50mJ/cm2とした。
次に、上記2つの積層体の表面に真空蒸着法を用いて膜厚100nmのTiO2膜を成膜することにより、TiO2からなる高屈折率層を形成した。続いて、2つの積層体のうちの、一方の積層体の表面のサブ波長格子パターンが位置する領域に紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工された紫外線硬化性樹脂に他方の積層体の表面(基材と反対側の面)が接し、かつ、サブ波長格子パターンが位置する領域が重なるように2つの積層体を向かい合わせた。紫外線硬化性樹脂がサブ波長格子パターンの位置する領域内の全面に広がるようにローラーを用いて延ばし、365nmの紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂を硬化して埋め込み層を形成した。次に、凹凸構造体と同様の手法で、突起状構造体111の断面形状が釣鐘状、周期が400nm、高さは200nm、アスペクト比は2.0となるモールドを作成した。最後に剥離処理を施した基材を光硬化樹脂から剥離した後、光硬化性樹脂を滴下し、モールドを光硬化性樹脂に押し込み、固めることで反射防止部112を形成した。以上により、実施例1の波長選択フィルタを得た。なお、365nmの紫外線の照射量は50mJ/cm2とした。
<波長選択フィルタの評価>
実施例1の波長選択フィルタの反射分光測定を実施したところ、530nm程度に中心波長を有する反射スペクトルが観測された。
(実施例2)
実施例2は、光学デバイスが画素に適用された表示体である。
<表示体の製造>
まず、光ナノインプリント法で用いる凹版であるモールドを用意した。具体的には、光ナノインプリント法において照射する光として、365nmの波長の光を用いたため、この波長の光を透過する合成石英をモールドの材料として用いた。モールドの形成に際しては、まず、合成石英基板の表面に、Crからなる膜をスパッタリング法により成膜し、電子線リソグラフィ法によってサブ波長格子パターンを有する電子線レジストパターンをCr膜上に形成した。サブ波長格子パターンは、1つの方向に延びる帯状部分が等間隔で並ぶパターンである。使用したレジストはポジ型であり、膜厚は150nmとした。
電子線により描画したパターンは、4種類のサブ波長格子パターンが並ぶパターンである。このパターンを図23に模式的に示す。第1のパターンSP1は、一辺3cmの正方形領域内に、帯状部分が周期360nmでX方向に並ぶパターンである。第2のパターンSP2は、一辺3cmの正方形領域内に、帯状部分が周期360nmでX方向と直交するY方向に並ぶパターンである。第3のパターンSP3は、一辺3cmの正方形領域内に、帯状部分が周期396nmでX方向に並ぶパターンである。第4のパターンSP4は、一辺3cmの正方形領域内に、帯状部分が周期396nmでY方向に並ぶパターンである。
次に、塩素と酸素との混合ガスに高周波を印加して発生させたプラズマにより、レジストから露出した領域のCr膜をエッチングした。続いて、六弗化エタンガスに高周波を印加して発生させたプラズマによりレジストおよびCr膜から露出した領域の合成石英基板をエッチングした。これによりエッチングした合成石英基板の深さは200nmであった。残存したレジストおよびCr膜を除去し、離型剤としてオプツールHD-1100(ダイキン工業製)を塗布して、上記4つのサブ波長格子パターンが形成されたモールドを得た。
次に、上記モールド上の4つのサブ波長格子パターンが形成された領域内に紫外線硬化性樹脂を塗工し、易接着処理が施されたポリエチレンテレフタラートフィルムでモールド表面を覆った。紫外線硬化性樹脂がサブ波長格子パターンの形成された領域内の全面に広がるようにローラーを用いて延ばし、365nmの紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂を硬化した後、モールドからポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離した。これにより、上記4つのサブ波長格子パターンの反転されたサブ波長格子パターンが紫外線硬化性樹脂の表面に形成され、この紫外線硬化性樹脂からなる凹凸構造体とポリエチレンテレフタラートフィルムである基材との積層体を得た。4つのサブ波長格子パターンの各々が形成されている領域が、画素部分に相当する。上記工程を繰り返し、凹凸構造体と基材との積層体を2つ作製した。なお、365nmの紫外線の照射量は50mJ/cm2とした。
次に、上記2つの積層体の表面に真空蒸着法を用いて膜厚100nmのTiO2膜を成膜することにより、TiO2からなる高屈折率層を形成した。続いて、2つの積層体のうちの、一方の積層体の表面のサブ波長格子パターンが位置する領域に紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工された紫外線硬化性樹脂に他方の積層体の表面(基材と反対側の面)が接し、かつ、同周期のサブ波長格子パターンの位置する領域が重なるように2つの積層体を向かい合わせた。紫外線硬化性樹脂がサブ波長格子パターンの位置する領域内の全面に広がるようにローラーを用いて延ばし、365nmの紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂を硬化して埋め込み層を形成した。そして、剥離処理を施した基材を光硬化樹脂から剥離した後、光硬化性樹脂を滴下し、実施例1で作成したモールドを光硬化性樹脂に押し込み、固めることで反射防止部112を形成した。これにより、実施例2の表示体を得た。なお、365nmの紫外線の照射量は50mJ/cm2とした。
<表示体の評価>
実施例2の表示体の反射分光測定を実施したところ周期360nmのサブ波長格子を有する画素は530nm程度に中心波長を有する反射スペクトルが観測され、周期396nmのサブ波長格子を有する画素は620nm程度に中心波長を有する反射スペクトルが観測された。