(第1実施形態)
図1~図13を参照して、波長選択フィルタ、および、波長選択フィルタの製造方法の第1実施形態を説明する。波長選択フィルタは、波長選択フィルタに入射した光のなかから特定の波長域の光を反射、もしくは、透過することにより取り出す機能を有する。波長選択フィルタの選択対象の波長域は特に限定されないが、例えば、波長選択フィルタは、人間の肉眼で視認可能な光、すなわち、可視領域の光のなかから特定の波長域の光を取り出す。以下において、可視領域の光の波長は、400nm以上800nm以下とする。
[波長選択フィルタの全体構成]
図1が示すように、波長選択フィルタ10は、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、および、第2低屈折率領域16を備えている。第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、および、第2低屈折率領域16の各々は、層状に広がっており、基材11に近い位置からこの順に並んでいる。各領域の並ぶ方向が第1方向であり、第1方向は、すなわち、各領域および波長選択フィルタ10の厚さ方向である。また、基材11に対して第2低屈折率領域16の位置する側が波長選択フィルタ10の表面側であり、第2低屈折率領域16に対して基材11の位置する側が、波長選択フィルタ10の裏面側である。
基材11は板状を有し、基材11が有する面のうち、波長選択フィルタ10の表面側に位置する面が基材11の表面である。波長選択フィルタ10の選択対象が可視領域の光である場合には、基材11としては、例えば、合成石英基板や、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂からなるフィルムが用いられる。
第1低屈折率領域12は、基材11の表面に接し、基材11の表面に沿って広がっている。第1格子領域13は、第1高屈折率部13aと第1低屈折率部13bとを有する。基材11の表面と対向する方向から見て、すなわち、第1方向に沿った方向から見て、複数の第1低屈折率部13bは二次元格子状に配置され、第1高屈折率部13aは複数の第1低屈折率部13bの間を埋めている。
中間領域14は、側部高屈折率部14aと孤立低屈折率部14bと外周低屈折率部14cとを有する。第1方向に沿った方向から見て、複数の孤立低屈折率部14bは二次元格子状に配置され、各孤立低屈折率部14bの周りを側部高屈折率部14aが囲んでいる。そして、複数の側部高屈折率部14aの間を外周低屈折率部14cが埋めている。孤立低屈折率部14bは、第1低屈折率部13b上に位置する。側部高屈折率部14aは、第1高屈折率部13aの幅方向における端部上に位置し、外周低屈折率部14cは、第1高屈折率部13aの幅方向における中央部上に位置する。
第2格子領域15は、第2高屈折率部15aと第2低屈折率部15bとを有する。第1方向に沿った方向から見て、複数の第2高屈折率部15aは二次元格子状に配置され、第2低屈折率部15bは複数の第2高屈折率部15aの間を埋めている。第2高屈折率部15aは、孤立低屈折率部14b上および側部高屈折率部14a上に位置し、第2低屈折率部15bは、外周低屈折率部14c上に位置する。
第2低屈折率領域16は、第2格子領域15に対して中間領域14とは反対側で第2格子領域15を覆っている。
波長選択フィルタ10を構成する上記の各領域において、第1方向に沿って互いに隣接する領域は、その一部において互いに連続している。具体的には、第1低屈折率領域12と第1低屈折率部13bとは互いに連続し、さらに、第1低屈折率部13bと孤立低屈折率部14bとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料から構成される。また、第1高屈折率部13aと側部高屈折率部14aとは互いに連続し、さらに、側部高屈折率部14aと第2高屈折率部15aとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料から構成される。また、外周低屈折率部14cと第2低屈折率部15bとは互いに連続し、さらに、第2低屈折率部15bと第2低屈折率領域16とは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料から構成される。
すなわち、波長選択フィルタ10は、基材11と、基材11上に位置し、二次元格子状に配置された複数の凸部17aが構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層17と、凹凸構造層17の表面に沿って配置されて上記凹凸構造に追従した表面形状を有する高屈折率層18と、高屈折率層18の表面における凹凸を埋める埋込層19とを備える構造体であるとも捉えられる。
凹凸構造層17は、第1低屈折率領域12と第1低屈折率部13bと孤立低屈折率部14bとから構成され、凸部17aは、第1低屈折率部13bと孤立低屈折率部14bとから構成される。
高屈折率層18は、第1高屈折率部13aと側部高屈折率部14aと第2高屈折率部15aとから構成される。第1高屈折率部13aは、複数の凸部17aの間、すなわち、凹凸構造の底部に位置する。側部高屈折率部14aは、凸部17aの側面に接し、第1方向に沿った方向から見て互いに隣り合う第1高屈折率部13aと第2高屈折率部15aとの端部間を繋ぐように、中間領域14の厚さ方向に延びている。第2高屈折率部15aは、凸部17aの頂面を覆い、すなわち、凹凸構造の頂部に位置する。
埋込層19は、外周低屈折率部14cと第2低屈折率部15bと第2低屈折率領域16とから構成され、第2低屈折率領域16から基材11に向けて外周低屈折率部14cおよび第2低屈折率部15bが突出した形状を有する。
高屈折率層18の材料の屈折率は、凹凸構造層17および埋込層19の各々の材料の屈折率よりも大きい。すなわち、第1高屈折率部13a、側部高屈折率部14a、第2高屈折率部15aの各々の屈折率は、第1低屈折率領域12、第1低屈折率部13b、孤立低屈折率部14b、外周低屈折率部14c、第2低屈折率部15b、第2低屈折率領域16の各々の屈折率よりも大きい。凹凸構造層17と埋込層19とは、同一の材料から構成されてもよいし、互いに異なる材料から構成されていてもよい。
波長選択フィルタ10の選択対象が可視領域の光である場合には、凹凸構造層17および埋込層19を構成する低屈折率材料としては、合成石英等の無機物や、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂材料を用いることが可能である。この場合、高屈折率層18を構成する高屈折率材料としては、TiO2(酸化チタン)、Nb2O5(酸化ニオブ)、Ta2O5(酸化タンタル)、ZrO(酸化ジルコニウム)、ZnS(硫化亜鉛)、ITO(酸化インジウムスズ)、AlN(窒化アルミニウム)等の無機化合物材料を用いることができる。
[波長選択フィルタの作用]
第1格子領域13における格子構造の周期、すなわち、第1低屈折率部13bの配列の周期が、第1周期P1であり、第1周期P1は、可視領域の光の波長よりも小さい。同様に、第2格子領域15における格子構造の周期、すなわち、第2高屈折率部15aの配列の周期が、第2周期P2であり、第2周期P2は、可視領域の光の波長よりも小さい。すなわち、第1周期P1および第2周期P2はサブ波長周期であり、第1格子領域13および第2格子領域15の各々はサブ波長格子を含む。
波長選択フィルタ10において、領域ごとの平均屈折率は、各領域における高屈折率部と低屈折率部との体積比率に応じて、高屈折率部の屈折率と低屈折率部の屈折率とを均した値に近似される。第1格子領域13における第1高屈折率部13aの割合、および、第2格子領域15における第2高屈折率部15aの割合の各々よりも、中間領域14における側部高屈折率部14aの割合は小さい。したがって、中間領域14の平均屈折率は、第1格子領域13の平均屈折率、および、第2格子領域15の平均屈折率の各々よりも小さい。すなわち、波長選択フィルタ10は、第1格子領域13および第2格子領域15の各々に位置するサブ波長格子が、低屈折率の領域に埋め込まれた構造を有している。
上記波長選択フィルタ10の表面側から波長選択フィルタ10に光が入射すると、第2格子領域15のサブ波長格子が低屈折率の領域に埋め込まれていることから、第2格子領域15では、表面側への回折光の射出が抑えられ、導波モード共鳴現象が発生する。すなわち、特定の波長域の光が第2格子領域15を多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、この特定の波長域の光が、波長選択フィルタ10の表面側に反射光として射出される。
第2格子領域15を透過し、さらに中間領域14を透過した光は、第1格子領域13に入る。第1格子領域13に光が入射すると、第1格子領域13のサブ波長格子が低屈折率の領域に埋め込まれていることから、第1格子領域13でも、導波モード共鳴現象が発生する。すなわち、特定の波長域の光が第1格子領域13を多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、この特定の波長域の光が、波長選択フィルタ10の表面側に反射光として射出される。
第1格子領域13を透過した光は、第1低屈折率領域12および基材11を透過して、波長選択フィルタ10の裏面側に出る。
結果として、波長選択フィルタ10の表面側には、第2格子領域15で強められた波長域の光と、第1格子領域13で強められた波長域の光とが射出される。そして、波長選択フィルタ10への入射光に含まれる波長域のなかで、上記反射光として射出された波長域を除く波長域の光が、透過光として波長選択フィルタ10の裏面側に射出される。
なお、波長選択フィルタ10の裏面側から波長選択フィルタ10に光が入射した場合には、第2格子領域15で強められた波長域の反射光と、第1格子領域13で強められた波長域の反射光とが、波長選択フィルタ10の裏面側に射出される。そして、入射光に含まれる波長域のなかで、上記反射光として射出された波長域を除く波長域の光が、透過光として波長選択フィルタ10の表面側に射出される。
[波長選択フィルタの詳細構成]
上述の波長選択フィルタ10において、波長選択性を高めるため、すなわち、反射光における特定の範囲の波長域の強度を高めるための構成について説明する。
波長選択フィルタ10において、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とが一致していれば、波長選択フィルタ10から反射光として射出される波長域の光の強度が大きくなり、反射光の波長選択性が高められる。
例えば、第2格子領域15で特定の波長域の光が共鳴を起こしたとき、第2格子領域15と中間領域14との屈折率の差が小さい場合等には、上記特定の波長域の光の一部が、第2格子領域15内での反射ごとに、中間領域14に漏れ出る。こうした場合にも、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域が一致していれば、中間領域14に漏れ出た上記特定の波長域の光が第1格子領域13に入って共鳴を起こし、反射光として射出される。したがって、1つの格子領域のみを有する波長選択フィルタと比較して、波長選択フィルタ10から反射光として射出される上記特定の波長域の光の強度は大きくなり、反射光の波長選択性が高められる。
第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域を一致させるためには、第1格子領域13と第2格子領域15とにおいて、平均屈折率と膜厚とを乗じた値として表されるパラメータである光学膜厚を一致させればよい。つまり、第1格子領域13と第2格子領域15とにおいて、光学膜厚が近いほど、共鳴を起こす光の波長域が近くなり、反射光の波長選択性が高められる。本願の発明者は、シミュレーションによって、反射光についての良好な波長選択性を得られる第1格子領域13と第2格子領域15との光学膜厚の比の範囲を見出した。以下、この内容について詳細に説明する。
図2において、(a)は第1格子領域13における第1方向と直交する断面を、波長選択フィルタ10の断面とともに示す図であり、(b)は第2格子領域15における第1方向と直交する断面を、波長選択フィルタ10の断面とともに示す図である。第2方向と第3方向とは、基材11の表面に沿った方向であって、第2方向と第3方向との各々は、第1方向と直交する。第2方向と第3方向とは、互いに直交する。
図2(a)が示すように、第1格子領域13において、複数の第1低屈折率部13bは、二次元格子状に配置されている。二次元格子の種類は特に限定されず、互いに異なる方向に延びる2つの平行線群が交差することによって構成される格子の格子点に第1低屈折率部13bが位置していればよい。例えば、第1低屈折率部13bが構成する二次元格子は、正方格子であってもよいし、六方格子であってもよい。第1格子領域13における格子構造の周期である第1周期P1は、二次元格子が延びる各方向において一致している。
第1方向に沿った方向から見て、第1低屈折率部13bの形状は特に限定されないが、例えば第1低屈折率部13bが正方形であると、第1格子領域13の平均屈折率を規定する体積比率の設定が容易である。
第1格子領域13の全体に対する第1高屈折率部13aの体積比率は、第1方向に沿った方向から見た平面視での第1格子領域13の全体に対する第1高屈折率部13aの面積比率に等しい。当該面積比率は、言い換えれば、第1高屈折率部13aを含みその厚さ方向と直交する断面にて第1高屈折率部13aが占める面積比率である。断面の位置によって第1高屈折率部13aの面積が変化する場合には、第1高屈折率部13aの面積が最大となる断面での第1高屈折率部13aの面積比率が採用される。
第1高屈折率部13aの上記面積比率をR1とするとき、上記断面における第1低屈折率部13bの面積比率は1-R1で表される。
高屈折率層18の材料の屈折率をn1、凹凸構造層17の材料の屈折率をn2とするとき(n1>n2)、第1格子領域13の平均屈折率NA1は、下記式(1)によって表される。
NA1=n1×R1+n2×(1-R1) ・・・(1)
そして、第1格子領域13の光学膜厚OT1は、下記式(2)によって表される。
OT1=T1×NA1
=T1×{n1×R1+n2×(1-R1)} ・・・(2)
図2(b)が示すように、第2格子領域15において、複数の第2高屈折率部15aは、第1格子領域13と一致した二次元格子状に配置されている。第2格子領域15における格子構造の周期である第2周期P2は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。
ただし、第1方向に沿った方向から見て、第2格子領域15において点在する第2高屈折率部15aは、第1格子領域13において点在する第1低屈折率部13bよりも大きい。言い換えれば、第2方向および第3方向の各々において、第2高屈折率部15aの幅は、第1低屈折率部13bの幅よりも大きい。したがって、第2低屈折率部15bの幅は、第1高屈折率部13aの幅よりも小さい。第1方向に沿った方向から見て、第2高屈折率部15aは、第1低屈折率部13bの形状に準じた形状を有する。
第2格子領域15の全体に対する第2高屈折率部15aの体積比率は、第1方向に沿った方向から見た平面視での第2格子領域15の全体に対する第2高屈折率部15aの面積比率に等しい。当該面積比率は、言い換えれば、第2高屈折率部15aを含みその厚さ方向と直交する断面にて第2高屈折率部15aが占める面積比率である。断面の位置によって第2高屈折率部15aの面積が変化する場合には、第2高屈折率部15aの面積が最大となる断面での第2高屈折率部15aの面積比率が採用される。
第2高屈折率部15aの上記面積比率をR2とするとき、上記断面における第2低屈折率部15bの面積比率は1-R2で表される。
高屈折率層18の材料の屈折率をn1、埋込層19の材料の屈折率をn3とするとき(n1>n3)、第2格子領域15の平均屈折率NA2は、下記式(3)によって表される。
NA2=n1×R2+n3×(1-R2) ・・・(3)
そして、第2格子領域15の光学膜厚OT2は、下記式(4)によって表される。
OT2=T2×NA2
=T2×{n1×R2+n3×(1-R2)} ・・・(4)
第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比(OT2/OT1)が、0.7以上1.3以下であれば、波長選択フィルタ10において、反射光についての良好な波長選択性が得られることが確認された。
特に、第1格子領域13の厚さT1と第2格子領域15の厚さT2とが等しく、凹凸構造層17の材料の屈折率n2と埋込層19の材料の屈折率n3とが等しい場合には、第1高屈折率部13aの面積比率R1と第2高屈折率部15aの面積比率R2とが等しいと、光学膜厚OT1と光学膜厚OT2とが一致するため好ましい。
上述のように、第1方向に沿った方向から見て、第2高屈折率部15aは第1低屈折率部13bよりも大きくなる。それゆえ、本実施形態では、第1高屈折率部13aの面積比率R1と第2高屈折率部15aの面積比率R2とを近づけるために、第1格子領域13にて第1低屈折率部13bの面積比率を第1高屈折率部13aの面積比率よりも小さくし、第2格子領域15にて第2高屈折率部15aの面積比率を第2低屈折率部15bの面積比率よりも大きくしている。したがって、第1高屈折率部13aの面積比率R1と第2高屈折率部15aの面積比率R2との各々は、0.5よりも大きく、R1+R2は1よりも大きくなる。
面積比率R1,R2が0.5よりも大きいことにより、面積比率R1,R2が0.5以下である形態と比較して、格子領域13,15の平均屈折率が高くなるため、各格子領域13,15と、隣接する領域12,14,16との平均屈折率の差が大きくなる、その結果、各格子領域13,15にて生じる多重反射での損失が小さくなるため、格子領域13,15から射出される反射光の強度が高められる。
図3は、中間領域14における第1方向と直交する断面を、波長選択フィルタ10の断面とともに示す図である。図3が示すように、中間領域14において、複数の孤立低屈折率部14bは、第1格子領域13と一致した二次元格子状に配置されている。中間領域14における孤立低屈折率部14bの配列の周期である第3周期P3は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。第1方向に沿った方向から見て、孤立低屈折率部14bの大きさは、第1低屈折率部13bと一致する。側部高屈折率部14aは孤立低屈折率部14bを1つずつ取り囲んでおり、互いに隣接する側部高屈折率部14aの間を外周低屈折率部14cが埋めている。
ここで、第1方向に沿った方向から見た平面視での中間領域14の全体に対する側部高屈折率部14aの面積比率は、第2高屈折率部15aの上記面積比率と第1低屈折率部13bの上記面積比率との差以下であることが好ましい。すなわち、上記側部高屈折率部14aの面積比率をR3とするとき、R3は、下記式(5)を満たすことが好ましい。なお、当該面積比率は、言い換えれば、側部高屈折率部14aを含みその厚さ方向と直交する断面にて側部高屈折率部14aが占める面積比率である。断面の位置によって側部高屈折率部14aの面積が変化する場合には、側部高屈折率部14aの面積が最大となる断面での側部高屈折率部14aの面積比率が採用される。
R3≦R2-(1-R1)=R1+R2-1 ・・・(5)
上記式(5)が満たされているとき、第1方向に沿った方向から見て、第2高屈折率部15aは、孤立低屈折率部14bおよび側部高屈折率部14aの外側まで広がっている。詳細には、第1方向に沿った方向から見て、第2高屈折率部15aが位置する領域が、孤立低屈折率部14bおよび側部高屈折率部14aが位置する領域と一致するとき、側部高屈折率部14aの上記面積比率R3は、右辺と一致し、R1+R2-1となる。そして、第1方向に沿った方向から見て、第2高屈折率部15aが位置する領域が、孤立低屈折率部14bおよび側部高屈折率部14aが位置する領域よりも大きいとき、言い換えれば、側部高屈折率部14aが第2高屈折率部15aの外縁よりも内側の領域に位置するとき、上記面積比率R3は、R1+R2-1よりも小さくなる。
上述のように、導波モード共鳴現象によって格子領域13,15から射出される反射光の強度を高めるためには、各格子領域13,15について、格子領域13,15の平均屈折率と、格子領域13,15を挟む領域12,14,16の平均屈折率との差が大きいことが望ましい。したがって、中間領域14の平均屈折率は小さいほど好ましく、すなわち、側部高屈折率部14aの面積比率が小さいほど好ましい。上記式(5)が満たされている構成であれば、側部高屈折率部14aの幅が、第2高屈折率部15aよりも外側まで広がらない程度に抑えられるため、側部高屈折率部14aの面積比率が大きくなりすぎない。したがって、各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
上記反射光の強度を高めるためには、第1格子領域13の平均屈折率と、第1低屈折率領域12および中間領域14の各々の平均屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。同様に、第2格子領域15の平均屈折率と、中間領域14および第2低屈折率領域16の各々の平均屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。
なお、本実施形態においては、サブ波長格子を構成する要素が二次元格子状に並ぶが、例えば、サブ波長格子を構成する要素が、第2方向あるいは第3方向に帯状に延びる形態であっても、導波モード共鳴現象を生じさせることはできる。しかしながら、上記要素が1つの方向に延びている場合、当該要素を有する格子領域では、当該要素の配列方向に依存する特定の方向へ偏光した光のみが多重反射して共鳴を起こし、反射光として射出される。これに対し、本実施形態のように、上記要素が二次元格子状に並ぶ形態であれば、互いに異なる方向へ偏光している光をそれぞれ共鳴させることができる。したがって、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射されるため、反射光の強度がより高められる。
特に、上記要素が六方格子状に並ぶ形態であれば、上記要素が正方格子状に並ぶ形態と比較して、格子領域にて共鳴可能な偏光の方向が多くなるため、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、より効率的に反射光を出射することができる。
[波長選択フィルタの製造方法]
図4~図6を参照して、波長選択フィルタ10の製造方法について説明する。
図4が示すように、まず、基材11の表面に、低屈折率材料からなる層を形成し、この層の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層17を形成する。凹凸構造層17は、基材11に沿って広がる平坦部17cと、平坦部17cから突き出た複数の凸部17aとを有するとともに、凸部17a間に位置する部分である複数の凹部17bを有する。複数の凸部17aは互いに離間しており、凹部17bは連続する1つの凹部を構成している。
凹凸構造の形成には、ナノインプリント法やドライエッチング法等の公知の微細加工技術が用いられる。なかでも、ナノインプリント法は、微細な凸部17aおよび凹部17bを簡便に形成できるため好ましい。
例えば、低屈折率材料として紫外線硬化性樹脂を用い、光ナノインプリント法によって凹凸構造層17を形成する場合、まず、基材11の表面に、紫外線硬化性樹脂を塗工する。次いで、紫外線硬化性樹脂からなる塗工層の表面に、形成対象の凸部17aおよび凹部17bからなる凹凸の反転された凹凸を有する凹版である合成石英モールドを押し当て、塗工層および凹版に紫外線を照射する。続いて、硬化した紫外線硬化性樹脂から凹版を離型する。これによって、凹版の有する凹凸が紫外線硬化性樹脂に転写されて凸部17aおよび凹部17bが形成されるとともに、凸部17aおよび凹部17bと基材11との間には、紫外線硬化性樹脂からなる残膜として、平坦部17cが形成される。
次に、図5が示すように、凹凸構造層17の表面に、高屈折率材料からなる高屈折率層18を形成する。高屈折率層18の形成方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法等の公知の成膜技術が用いられる。高屈折率層18の厚さは、凸部17aの高さよりも小さく、所望の厚さT1および厚さT2に応じて設定される。
真空蒸着法やスパッタリング法を含む物理気相成長法を用いて高屈折率層18を形成する場合、凹凸構造層17の凸部17a上には、凸部17aよりも広がるように膜が形成される。すなわち、第2高屈折率部15aの幅が、凸部17aである第1低屈折率部13bおよび孤立低屈折率部14bの幅よりも大きく形成される。したがって、物理気相成長法が採用される場合に、凹凸構造層17の表面における凸部17aと凹部17bとの面積比率を1対1に設定したとしても、第1高屈折率部13aと第2高屈折率部15aとの面積比率にはずれが生じてしまう。
また、成膜中に第2高屈折率部15aの幅が拡大していくと、凹部17b上に蒸着材料の粒子が付着し難くなるため、第1高屈折率部13aの厚さT1と第2高屈折率部15aの厚さT2とにずれが生じる場合がある。
こうした第2高屈折率部15aの幅の拡大に起因した面積比率や厚さのずれを補填しつつ、上記光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が、0.7以上1.3以下となるように、凸部17aと凹部17bとの面積比率を設定することが望ましい。本実施形態のように、凸部17aが二次元格子状に並ぶ形態であれば、凸部17aの大きさや配置についての自由度が高いため、凸部17aと凹部17bとの面積比率の設定に際しての細かな調整が容易である。
また、物理気相成長法を用いて高屈折率層18を形成する場合、凹凸構造層17の凸部17aの側面にも高屈折率材料が付着する場合が多く、側部高屈折率部14aの形成は避け難い。そこで、上述のように、上記式(5)が満たされるように、側部高屈折率部14aの幅を制御することで、側部高屈折率部14aが形成される製造方法を採用しながらも、各格子領域13,15からの反射光の強度を良好に得ることができる。
側部高屈折率部14aの幅は、成膜方法や成膜の条件によって制御することが可能である。例えば、真空蒸着法とスパッタリング法とでは、粒子の飛来方向についての角度依存性が異なるため、いずれの方法を用いるかによって、側部高屈折率部14aの幅を変えることができる。また、高屈折率層18の形成後にエッチングを行うことによって、側部高屈折率部14aの幅を縮小させてもよい。
次に、図6が示すように、凹凸構造層17と高屈折率層18とからなる構造体の表面を覆うように、低屈折率材料からなる埋込層19を形成して、高屈折率層18の表面の凹凸を第2高屈折率部15a上まで埋める。
埋込層19の形成方法としては、各種の塗布法等の公知の成膜技術が用いられる。例えば、低屈折率材料として紫外線硬化性樹脂を用いる場合、まず、高屈折率層18の表面に紫外線硬化性樹脂を塗工する。次いで、紫外線硬化性樹脂からなる塗工層の表面に、紫外線を透過する材料で構成された平板を押し当て、塗工層に紫外線を照射する。続いて、硬化した紫外線硬化性樹脂から平板を離型する。
上述のように、波長選択フィルタ10では、第1格子領域13で強められた波長域の光と、第2格子領域15で強められた波長域の光とが射出されることにより、得られる反射光の強度が大きくなる。そのため、第1格子領域13や第2格子領域15に接する層の精密な膜厚の制御を要さずに、具体的には、ナノインプリント法を用いて波長選択フィルタ10を形成する場合には、残膜の膜厚の精密な制御を要さずに、波長選択性の高められた波長選択フィルタ10を製造することができる。したがって、波長選択フィルタ10の製造が容易である。
また、波長選択フィルタ10は、光ナノインプリント法と真空蒸着法等とを組み合わせた製造方法によって形成可能であるため、ロール・トゥ・ロール法による製造に適している。したがって、波長選択フィルタ10の構成は、大量生産にも適している。
なお、上述の製造方法において、紫外線硬化性樹脂に代えて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いて、ナノインプリント法により凹凸構造層17を形成してもよい。熱硬化性樹脂を用いる場合、紫外線の照射を加熱に変更すればよく、熱可塑性樹脂を用いる場合、紫外線の照射を、加熱および冷却に変更すればよい。
ただし、熱可塑性樹脂を用いて凹凸構造層17を形成した場合、埋込層19の形成に際して、凹凸構造層17が加熱されて変形することを抑えるために、熱可塑性樹脂とは異なる材料を用いて埋込層19を形成することが好ましい。例えば、凹凸構造層17を熱可塑性樹脂から形成し、埋込層19を紫外線硬化性樹脂から形成してもよい。
また、図7が示すように、波長選択フィルタ10は、基材11を備えていなくてもよい。この場合、低屈折率材料からなる基材の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層17を形成する。例えば、熱可塑性樹脂からなるシートを用いて、当該シートの表面に凹凸構造を形成してもよいし、合成石英からなる基板を用いて、当該基板の表面に凹凸構造を形成してもよい。合成石英基板に対する凹凸構造の形成には、ドライエッチング法等の公知の技術が用いられればよい。
[波長選択フィルタの適用例]
上述した波長選択フィルタ10の具体的な適用例について説明する。
<波長選択デバイス>
波長選択フィルタ10の第1の適用例は、波長選択フィルタ10を波長選択デバイスに用いる形態である。図8が示すように、波長選択デバイスに50は、複数の波長の光を含む入射光I1を受けたとき、特定の波長域の光I2を反射し、この特定の波長域の光を除く波長域の光I3を透過する。波長選択デバイス50には波長選択フィルタ10の構成が適用されており、例えば波長選択フィルタ10の表面側から光が入射するように配置されている。光I2および光I3の波長域は、第1格子領域13および第2格子領域15が有するサブ波長格子の周期および厚さの設定によって調整可能である。
波長選択デバイス50は、反射光である光I2を利用する形態で用いられてもよいし、透過光である光I3を利用する形態で用いられてもよいし、光I2と光I3との双方を利用する形態で用いられてもよい。例えば、波長選択デバイス50は、色分解を要する装置や、照明等を構成する部材として用いられる。
上述のように、第1実施形態の波長選択フィルタ10によれば波長選択性が高められるため、波長選択フィルタ10の構成が適用されることによって、波長選択性の高められた波長選択デバイス50が実現できる。
一例として、波長選択デバイス50は、光源からの青色光の変換によって各色を表示する表示装置に用いられてもよい。この表示装置は、赤、緑、青の三色の副画素を備え、赤と緑の各副画素においては、例えば量子ドットを利用して光源からの青色光を赤色光と緑色光との各々に変換する。波長選択デバイス50は、表示装置の表面側、すなわち、副画素を有する層に対して光源と反対側に配置される。波長選択デバイス50において、赤と緑の各副画素に対向する領域に波長選択フィルタ10の構成が適用され、当該領域では、青色の光を反射し、赤色と緑色の光を透過するように、波長選択デバイス50が構成される。こうした構成によれば、光源からの青色光の一部が、赤と緑の各副画素を透過した場合であっても、この副画素から漏れ出た青色光が波長選択デバイス50によって反射されるため、赤と緑の各副画素に対応する領域で青色光が表示装置の表面側に漏れ出ることが抑えられる。したがって、各副画素が呈する色の鮮明さを高めることが可能であり、鮮やかな像の表示が可能となる。
<表示体>
波長選択フィルタ10の第2の適用例は、波長選択フィルタ10を表示体に用いる形態である。表示体は、物品の偽造の困難性を高める目的で用いられてもよいし、物品の意匠性を高める目的で用いられてもよいし、これらの目的を兼ねて用いられてもよい。物品の偽造の困難性を高める目的としては、表示体は、例えば、パスポートや免許証等の認証書類、商品券や小切手等の有価証券類、クレジットカードやキャッシュカード等のカード類、紙幣等に貼り付けられる。また、物品の意匠性を高める目的としては、表示体は、例えば、身に着けられる装飾品や、使用者に携帯される物品、家具や家電等のように据え置かれる物品、壁や扉等の構造物等に取り付けられる。
図9が示すように、表示体60は、表面60Fと、表面60Fとは反対側の面である裏面60Rとを有し、表面60Fと対向する方向から見て、表示体60は、第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとを含んでいる。第1表示領域61Aは、複数の第1画素62Aが配置されている領域であり、第2表示領域61Bは、複数の第2画素62Bが配置されている領域であり、第3表示領域61Cは、複数の第3画素62Cが配置されている領域である。換言すれば、第1表示領域61Aは、複数の第1画素62Aの集合から構成されており、第2表示領域61Bは、複数の第2画素62Bの集合から構成されており、第3表示領域61Cは、複数の第3画素62Cの集合から構成されている。
第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとの各々は、これらの領域単独、もしくは、これらの領域の2以上の組み合わせによって、文字、記号、図形、模様、絵柄、これらの背景等を表現する。一例として、図9に示す構成では、第1表示領域61Aによって円形の図形が表現され、第2表示領域61Bによって三角形の図形が表現され、第3表示領域61Cによって背景が表現されている。
第1画素62Aと、第2画素62Bと、第3画素62Cとの各々には、波長選択フィルタ10の構成が適用されている。第1画素62Aと、第2画素62Bと、第3画素62Cとの各々は、第2方向と第3方向とが表示体60の表面60Fに沿った方向になるように配置されている。例えば、これらの画素62A,62B,62Cは、波長選択フィルタ10の表面側が表示体60の表面側となる向きに配置されている。
第1画素62Aと、第2画素62Bと、第3画素62Cとにおいて、導波モード共鳴現象による共鳴が起こる波長域は互いに異なる。各画素62A,62B,62Cにおける共鳴が起こる波長域は、画素62A,62B,62Cごとに、第1格子領域13および第2格子領域15が有するサブ波長格子の周期の調整等によって、所望の波長域に設定されている。したがって、複数の波長の光を含む入射光を受けたとき、第1画素62Aから射出される反射光の波長域と、第2画素62Bから射出される反射光の波長域と、第3画素62Cから射出される光の波長域とは、互いに異なる。また、上記入射光を受けたとき、第1画素62Aから射出される透過光の波長域と、第2画素62Bから射出される透過光の波長域と、第3画素62Cから射出される透過光の波長域とは、互いに異なる。
すなわち、図10が示すように、表示体60の外側から表示体60の表面60Fに向けて入射光I1が照射されているとき、表示体60の表面側には、第1画素62Aから反射光I4が射出され、第2画素62Bから反射光I5が射出され、第3画素62Cから反射光I6が射出される。したがって、表面側から表示体60の表面60Fを見ると、第1表示領域61Aには反射光I4の波長域に応じた色相の色が視認され、第2表示領域61Bには反射光I5の波長域に応じた色相の色が視認され、第3表示領域61Cには反射光I6の波長域に応じた色相の色が視認される。反射光I4の波長域と、反射光I5の波長域と、反射光I6の波長域とは互いに異なるため、第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとは互いに異なる色相の色に見える。
その結果、表示体60の外側から表面60Fに向けて入射光I1が照射されている状態で、表示体60の表面側から表面60Fを観察する表面反射観察によれば、互いに異なる色の第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとから構成される像が視認される。
また、表示体60の外側から表示体60の表面60Fに向けて入射光I1が照射されているとき、表示体60の裏面側には、第1画素62Aから透過光I7が射出され、第2画素62Bから透過光I8が射出され、第3画素62Cから透過光I9が射出される。したがって、裏面側から表示体60の裏面60Rを見ると、第1表示領域61Aには透過光I7の波長域に応じた色相の色が視認され、第2表示領域61Bには透過光I8の波長域に応じた色相の色が視認され、第3表示領域61Cには透過光I9の波長域に応じた色相の色が視認される。透過光I7の波長域と、透過光I8の波長域と、透過光I9の波長域とは互いに異なるため、第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとは互いに異なる色相の色に見える。
その結果、表示体60の外側から表面60Fに向けて入射光I1が照射されている状態で、表示体60の裏面側から裏面60Rを観察する裏面透過観察によっても、互いに異なる色の第1表示領域61Aと第2表示領域61Bと第3表示領域61Cとから構成される像が視認される。
さらに、反射光I4の波長域と透過光I7の波長域とは異なるため、表面側から表示体60を見たときと、裏面側から表示体60を見たときとで、第1表示領域61Aに視認される色の色相は異なる。裏面側から見える色は、表面側から見える色の補色に相当する色である。同様に、表面側から表示体60を見たときと、裏面側から表示体60を見たときとで、第2表示領域61Bに視認される色の色相は異なり、第3表示領域61Cに視認される色の色相も異なる。
したがって、表面反射観察と裏面透過観察とで、表示体60には互いに異なる色彩の像が視認される。それゆえ、表示体60を備える物品にて、偽造の困難性や意匠性がより高められる。また、表示体60の表裏の識別も容易である。
そして、上述のように、第1実施形態の波長選択フィルタ10によれば波長選択性が高められるため、波長選択フィルタ10の構成が各画素62A,62B,62Cに適用されることによって、各表示領域61A,61B,61Cに視認される色の鮮明さや明るさが高められる。それゆえ、表示体60が形成する像の視認性が高められる。また、第1実施形態の波長選択フィルタ10では、樹脂フィルムのように可撓性のある基材11を用いることが可能であるため、形状の変形についての自由度が高い表示体60の実現も可能である。
第1画素62Aと第2画素62Bと第3画素62Cとの間で、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、および、第2低屈折率領域16の各々は連続している。すなわち、第1画素62Aと第2画素62Bと第3画素62Cとは、共通した1つの基材11と、これらの画素間で相互に連続した凹凸構造層17と、これらの画素間で相互に連続した高屈折率層18と、これらの画素間で相互に連続した埋込層19とを有している。
第1画素62Aと第2画素62Bと第3画素62Cとの各々における凹凸構造層17は、例えば、ナノインプリント法を利用して、各画素62A,62B,62Cに対応する部分で凹凸の周期を変えた合成石英モールドを用いることによって、同時に形成することができる。また、高屈折率層18および埋込層19も、各画素62A,62B,62Cに対応する部分を同時に形成することができる。したがって、互いに異なる色を呈する画素62A,62B,62Cを容易に形成することができる。
なお、表示体60が含む表示領域の数、すなわち、波長選択フィルタ10の構成が適用された画素が配置されて、互いに異なる色相の色を呈する表示領域の数は特に限定されず、表示領域の数は、1つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、表示体60は、波長選択フィルタ10の構成とは異なる構成を有する領域、例えば、基材11に低屈折率材料からなる平坦な層のみが積層された構造を有する領域等を有していてもよい。
さらに、表示領域には、波長選択フィルタ10の構成が適用された表示要素が含まれればよく、表示要素は、ラスタ画像を形成するための繰返しの最小単位である画素に限らず、ベクタ画像を形成するためのアンカを結んだ領域であってもよい。
<カラーフィルタ>
波長選択フィルタ10の第3の適用例は、波長選択フィルタ10をカラーフィルタに用いる形態である。
図11が示すように、カラーフィルタ70は、マトリックス状に並ぶ複数の画素71を備え、各画素71は、赤色用副画素71Rと、緑色用副画素71Gと、青色用副画素71Bとの3つの副画素から構成されている。
カラーフィルタ70は、反射型のカラーフィルタであって、表示装置に備えられる。カラーフィルタ70に対して、表示装置の表示面を見る観察者の位置する側が、カラーフィルタ70の表面側であり、カラーフィルタ70に対して、表面側と反対の側が、カラーフィルタ70の裏面側である。カラーフィルタ70には、表面側から、光が照射される。カラーフィルタ70に照射される光の強度は、副画素ごとに、液晶装置等によって変更可能に構成されている。
赤色用副画素71Rは、赤色用副画素71Rに入射した光を赤色の光に変換して反射する。緑色用副画素71Gは、緑色用副画素71Gに入射した光を緑色の光に変換して反射する。青色用副画素71Bは、青色用副画素71Bに入射した光を青色の光に変換して反射する。
赤色用副画素71Rと、緑色用副画素71Gと、青色用副画素71Bとの各々には、波長選択フィルタ10の構成が適用されている。赤色用副画素71Rと、緑色用副画素71Gと、青色用副画素71Bとの各々は、第2方向と第3方向とがカラーフィルタ70の表面に沿った方向になるように配置されている。例えば、これらの副画素71R,71G,71Bは波長選択フィルタ10の表面側がカラーフィルタ70の表面側となる向きに配置されている。
図12が示すように、赤色用副画素71Rは、カラーフィルタ70の表面側から複数の波長の光を含む入射光I1を受けたとき、赤色の反射光Irを表面側に射出するように、サブ波長格子の周期等が設定されている。緑色用副画素71Gは、入射光I1を受けたとき、緑色の反射光Igを表面側に射出するように、サブ波長格子の周期等が設定されている。青色用副画素71Bは、入射光I1を受けたとき、青色の反射光Ibを表面側に射出するように、サブ波長格子の周期等が設定されている。副画素71R,71G,71Bごとに入射光の強度が変更されることによって、画素71として視認される色が変更され、画素71の集合によって表示装置の表示する像が形成される。
上述のように、第1実施形態の波長選択フィルタ10によれば波長選択性が高められるため、波長選択フィルタ10の構成が各副画素71R,71G,71Bに適用されることによって、各副画素71R,71G,71Bにおける色の鮮明さや輝度が高められる。
また、上述の表示体60の形態と同様に、赤色用副画素71Rと緑色用副画素71Gと青色用副画素71Bとの間で、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、および、第2低屈折率領域16の各々は連続している。すなわち、赤色用副画素71Rと緑色用副画素71Gと青色用副画素71Bとは、共通した1つの基材11と、これらの副画素間で相互に連続した凹凸構造層17と、これらの副画素間で相互に連続した高屈折率層18と、これらの副画素間で相互に連続した埋込層19とを有している。
赤色用副画素71Rと緑色用副画素71Gと青色用副画素71Bとの各々における凹凸構造層17は、例えば、ナノインプリント法を用いて、各副画素71R,71G,71Bに対応する部分で凹凸の周期を変えた合成石英モールドを用いることによって、同時に形成することができる。また、高屈折率層18および埋込層19も、各副画素71R,71G,71Bに対応する部分を同時に形成することができる。したがって、3種類の色の副画素71R,71G,71Bを有するカラーフィルタ70を容易に形成することができる。
以上、第1実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比が、0.7以上1.3以下であることにより、2つの格子領域13,15の各々で強められた近しい波長域の光が反射光として得られる。それゆえ、1つの格子領域のみを有する波長選択フィルタと比較して、反射光として取り出される光の強度が大きくなり、波長選択性が高められる。
(2)中間領域14における側部高屈折率部14aの面積比率R3について、R3≦R1+R2-1が満たされることにより、側部高屈折率部14aの幅が小さく抑えられるため、中間領域14の平均屈折率が過度に大きくなることが抑えられる。したがって、格子領域13,15とその隣接領域との平均屈折率の差が良好に確保されるため、導波モード共鳴現象によって得られる各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
また、第1方向に沿った方向から見て、第2高屈折率部15aが側部高屈折率部14aの外側まで広がる構成であれば、側部高屈折率部14aの幅が小さく抑えられるため、上記と同様に、各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
(3)第1格子領域13の厚さT1と第2格子領域15の厚さT2とが等しく、凹凸構造層17の材料の屈折率n2と埋込層19の材料の屈折率n3とが等しい場合において、第1高屈折率部13aの面積比率R1と第2高屈折率部15aの面積比率R2とが等しい構成であると、光学膜厚OT1と光学膜厚OT2とが一致するため、波長選択性が特に高められる。
(4)低屈折率材料からなる凹凸構造層17を形成する工程と、凹凸構造層17の表面に高屈折率層18を形成する工程と、高屈折率層18の表面に、低屈折率材料からなる埋込層19を形成する工程とによって、上記波長選択フィルタ10が形成される。したがって、サブ波長格子に接する層の精密な膜厚の制御を要さずに、波長選択フィルタ10の波長選択性が高められるため、波長選択フィルタ10を容易に製造することができる。
特に、低屈折率材料として樹脂を用い、樹脂からなる塗工層に凹版を押し付けて樹脂の硬化によって凹凸構造層17を形成する製法では、ナノインプリント法を用いて凹凸構造層17の形成が行われるため、微細な凹凸を有する凹凸構造層17を好適に、かつ、簡便に形成することができる。
(5)高屈折率層18の形成に真空蒸着法を用いる場合において、第1方向に沿った方向から見て第2高屈折率部15aが側部高屈折率部14aの外側まで広がるように、高屈折率層18を形成する。こうした製法によれば、凸部17aの側面に側部高屈折率部14aが形成される方法を採用しながらも、側部高屈折率部14aの幅が小さく抑えられるため、各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
(第2実施形態)
図13~図16を参照して、波長選択フィルタ、および、波長選択フィルタの製造方法の第2実施形態を説明する。以下では、第2実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
[波長選択フィルタの構成]
図13および図14を参照して、第2実施形態の波長選択フィルタの構成について説明する。図13が示すように、第2実施形態の波長選択フィルタ20は、第1実施形態にて説明した第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、および、第2低屈折率領域16からなる構造体である共鳴構造部21を、2つ備えている。
2つの共鳴構造部21である第1共鳴構造部21Aと第2共鳴構造部21Bとは、第1方向に隣り合っており、2つの共鳴構造部21A,21Bは、2つの基材11で挟まれている。換言すれば、第2実施形態の波長選択フィルタ20は、第1実施形態の構成を有する2つの波長選択フィルタ10が、第2低屈折率領域16同士が向かい合うように接合された構造を有する。すなわち、第2実施形態の波長選択フィルタ20は、第1方向に間をあけて並ぶ4つのサブ波長格子を有し、これらのサブ波長格子が低屈折率材料に埋め込まれた構造を有している。なお、一方の基材11に対する他方の基材11の側が波長選択フィルタ20の表面側であり、他方の基材11に対する一方の基材11の側が波長選択フィルタ20の裏面側である。
第1共鳴構造部21Aと第2共鳴構造部21Bとは、これらの境界部分で、低屈折率領域を共有していてもよい。例えば、図13が示す例では、第1共鳴構造部21Aの備える第2低屈折率領域16と、第2共鳴構造部21Bの備える第2低屈折率領域16とは連続しており、これらの領域の境界は存在しない。
第1共鳴構造部21Aにおける凸部17aの配列の周期である構造周期Pkと、第2共鳴構造部21Bにおける凸部17aの配列の周期である構造周期Pkとは、図13が示すように同一であってもよいし、図14が示すように互いに異なっていてもよい。構造周期Pkは、第1格子領域13における第1周期P1と一致する。
第1共鳴構造部21Aと第2共鳴構造部21Bとの各々において、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比は、0.7以上1.3以下である。2つの共鳴構造部21A,21Bが同一の構造周期Pkを有する形態においては、第1共鳴構造部21Aと第2共鳴構造部21Bとで、上記比が一致していることが好ましい。
なお、2つの共鳴構造部21A,21Bにおいて、サブ波長格子を構成する要素が並ぶ方向、言い換えれば、二次元格子の延びる方向は、一致していてもよいし、異なっていてもよい。2つの共鳴構造部21A,21Bにおける二次元格子の延びる方向が異なる構成では、偏光に関し、より多くの方向に対応して反射光を射出することができる。
[波長選択フィルタの作用]
2つの共鳴構造部21A,21Bが同一の構造周期Pkを有する構成では、波長選択フィルタ20が有する4つの格子領域13,15において、共鳴を起こす光の波長域が近くなる。4つの格子領域13,15の各々で強められた波長域の反射光が波長選択フィルタ20の表面側に射出されることにより、第1実施形態の波長選択フィルタ10と比較して、波長選択フィルタ20からの反射光において、特定の範囲の波長域の強度がより大きくなり、反射光の波長選択性がより高められる。このとき、上述のように、第1共鳴構造部21Aと第2共鳴構造部21Bとで、光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が一致している構成であれば、4つの格子領域13,15における光学膜厚のばらつきが小さくなり、各格子領域13,15で共鳴を起こす光の波長域がより近くなるため好ましい。
一方、2つの共鳴構造部21A,21Bが互いに異なる構造周期Pkを有する構成では、第1共鳴構造部21Aの格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域と、第2共鳴構造部21Bの格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域とは、互いに異なる。その結果、波長選択フィルタ20の表面側には、第1共鳴構造部21Aの格子領域13,15にて強められた波長域の光と、第2共鳴構造部21Bの格子領域13,15にて強められた波長域の光とを含む反射光が射出される。
そして、波長選択フィルタ20の裏面側には、波長選択フィルタ20への入射光に含まれる波長域のなかで、上記反射光として射出された波長域を除く波長域の光が透過光として射出される。こうした構成によれば、波長選択フィルタ20にて、格子領域が1つである場合と比較して反射光の強度を高めつつ反射光に含まれる波長域を拡げること、および、透過光に含まれる波長域を狭めることが可能である。したがって、反射光や透過光として観察される色相の調整の自由度を高めることができる。
[波長選択フィルタの適用例]
第2実施形態の波長選択フィルタ20の構成は、第1実施形態で示した適用例と同様に、波長選択デバイス50に適用されてもよいし、表示体60が備える表示要素に適用されてもよいし、カラーフィルタ70が備える副画素に適用されてもよい。
例えば、2つの共鳴構造部21A,21Bが同一の構造周期Pkを有する構成が適用された場合、波長選択デバイス50においては、反射光の波長選択性がより高められる。また、表示体60においては、表面反射観察にて各表示領域61A,61B,61Cに視認される色の鮮明さや明るさが高められることにより、像の視認性が高められる。また、カラーフィルタ70においては、各副画素71R,71G,71Bにおける色の鮮明さや輝度が高められ、単色性の高い反射光を射出する各副画素71R,71B,71Gを備えた反射型のカラーフィルタ70が実現される。
また例えば、2つの共鳴構造部21A,21Bが互いに異なる構造周期Pkを有する構成が適用された場合、波長選択デバイス50においては、反射光や透過光として観察される色相の調整の自由度が高められる。また、表示体60においては、表面反射観察と裏面透過観察とにおいて視認される像の色相の調整の自由度が高められる。また、カラーフィルタ70としては、透過型のカラーフィルタ、すなわち、カラーフィルタの裏面側からカラーフィルタに光が照射され、観察者が、カラーフィルタの表面側から、カラーフィルタを透過した透過光を見る形態で用いられるカラーフィルタの実現が可能である。
具体的には、緑色用副画素71Gは、第1共鳴構造部21Aにて赤色の波長域の光が強められて裏面側に反射光として射出され、第2共鳴構造部21Bにて青色の波長域の光が強められて裏面側に反射光として射出されるように構成される。こうした構成によれば、カラーフィルタ70の裏面側から白色の入射光を受けたとき、カラーフィルタ70の表面側には、緑色の透過光が射出されるため、カラーフィルタ70の表面側から見て、緑色用副画素71Gには、緑色が視認される。同様に、赤色用副画素71Rは赤色の波長域の透過光を射出し、青色用副画素71Bは青色の波長域の透過光を射出するように構成される。これにより、単色性の高い透過光を射出する各副画素71R,71B,71Gを備えた透過型のカラーフィルタ70が実現される。
[波長選択フィルタの製造方法]
図15および図16を参照して、第2実施形態の波長選択フィルタ20の製造方法について説明する。まず、第2実施形態の波長選択フィルタ20の製造に際しては、第1実施形態と同様に、基材11上に凹凸構造層17と高屈折率層18とが順に形成される。
続いて、図15が示すように、基材11と凹凸構造層17と高屈折率層18とからなる構造体である2つの凹凸構造体22を、高屈折率層18同士が向かい合うように対向させ、図16が示すように、2つの凹凸構造体22の間の領域を低屈折率材料で埋めることによってこれらの凹凸構造体22を接合する。これにより、波長選択フィルタ20が形成される。
図16が示すように、低屈折率材料による埋め込みによって、2つの凹凸構造体22の間に形成される部分が埋込層19である。第1実施形態と同様に、埋込層19を構成する低屈折率材料は、高屈折率層18を構成する高屈折率材料よりも屈折率の低い材料であれば、凹凸構造層17を構成する材料とは異なる材料であってもよい。また、2つの凹凸構造体22において、凹凸構造層17を構成する低屈折率材料や高屈折率層18を構成する高屈折率材料は互いに異なっていてもよい。
なお、2つの凹凸構造体22を対向させた状態において、第2高屈折率部15a同士が向かい合ってもよいし、一方の凹凸構造体22における第1高屈折率部13aと、他方の凹凸構造体22における第2高屈折率部15aとが向かい合ってもよい。あるいは、一方の凹凸構造体22における第1高屈折率部13aは、他方の凹凸構造体22における第1高屈折率部13aの一部および第2高屈折率部15aの一部と向かい合っていてもよい。
例えば、2つの凹凸構造体22として、凸部17aの周期が同一である凹凸構造体22を接合することによって、2つの共鳴構造部21A,21Bが同一の構造周期Pkを有する波長選択フィルタ20が形成できる。また例えば、2つの凹凸構造体22として、凸部17aの周期が互いに異なる凹凸構造体22を接合することによって、2つの共鳴構造部21A,21Bが互いに異なる構造周期Pkを有する波長選択フィルタ20が形成できる。
なお、波長選択フィルタ20は、第1方向に並ぶ3以上の共鳴構造部21を備えていてもよい。波長選択フィルタ20が複数の共鳴構造部21を備える構成において、これらの共鳴構造部21における構造周期Pkが同一であれば、共鳴構造部21の数が多いほど、反射光の強度は高められる。また、複数の共鳴構造部21に、構造周期Pkが同一である共鳴構造部21と、構造周期Pkが互いに異なる共鳴構造部21とが含まれてもよい。こうした構成によれば、波長選択フィルタ20から出射される反射光や透過光の色の細かな調整も可能となる。
3以上の共鳴構造部21を備える波長選択フィルタ20の製造に際しては、凹凸構造体22の基材11と凹凸構造層17とが、凹凸構造層17から基材11を剥離可能な材料から形成される。そして、2つの凹凸構造体22が低屈折率材料によって接合されたのち、一方の基材11が剥離され、露出された凹凸構造層17と他の凹凸構造体22とがさらに低屈折率材料を挟んで接合されることが繰り返されることによって、6以上のサブ波長格子を有する波長選択フィルタ20が形成される。
以上、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(5)の効果に加えて、下記の効果が得られる。
(6)波長選択フィルタ20が、第1方向に並ぶ複数の共鳴構造部21を備える構成によれば、波長選択フィルタ10が4つ以上の格子領域13,15を備えるため、波長選択フィルタ20の波長選択性をさらに高めることや、反射光と透過光とに含まれる波長域の調整の自由度を高めることが可能である。
(7)複数の共鳴構造部21において構造周期Pkが等しい構成によれば、各共鳴構造部21の格子領域13,15で共鳴を起こす光の波長域が近くなる。したがって、各共鳴構造部21の各格子領域13,15で強められた近しい波長域の光が反射光として射出されるため、反射光において特定の範囲の波長域の強度がより大きくなり、反射光の波長選択性がより高められる。
(8)第1共鳴構造部21Aと第2共鳴構造部21Bとで、光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が一致する構成によれば、4つの格子領域13,15において、光学膜厚のばらつきが小さくなり、すなわち、各格子領域13,15において共鳴を起こす光の波長域がより近くなる。したがって、反射光の波長選択性がより高められる。
(9)第1共鳴構造部21Aの構造周期Pkと、第2共鳴構造部21Bの構造周期Pkとが互いに異なる構成によれば、第1共鳴構造部21Aの各格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域と、第2共鳴構造部21Bの各格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域とは、互いに異なる。したがって、波長選択フィルタ20にて、格子領域が1つである場合と比較して反射光の強度を高めつつ反射光に含まれる波長域を拡げること、および、透過光に含まれる波長域を狭めることが可能である。それゆえ、反射光や透過光として観察される色相の調整の自由度を高めることができる。
(10)波長選択フィルタ20は、2つの凹凸構造体22を、高屈折率層18同士が向かい合うように対向させ、2つの凹凸構造体22の間の領域を低屈折率材料で埋めることによって形成される。これによれば、複数の共鳴構造部21を備える波長選択フィルタ20を容易に形成することができる。
[変形例]
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・各格子領域13,15において、格子構造の周期は、二次元格子が延びる方向によって異なっていてもよい。こうした構成によれば、二次元格子が延びる方向によって共鳴を起こす波長域を異ならせて、反射光に含まれる波長域や偏光に対する応答性を調整することが可能である。
・上記実施形態では、凹凸構造層17の凹凸構造が、互いに離間した複数の凸部17aと、これらの凸部17aの間で連続している単一の凹部17bとから構成されている。これに代えて、凹凸構造層17の凹凸構造は、互いに離間した複数の凹部と、これらの凹部の間で連続している単一の凸部とから構成されてもよい。すなわち、凹凸構造層17の凹凸構造は、凸部もしくは凹部である複数の凹凸要素が互いに離間しつつ二次元格子状に並ぶことにより形成されていればよい。
[実施例]
上述した波長選択フィルタおよびその製造方法について、具体的な実施例を用いて説明する。
<波長選択フィルタの製造>
まず、光ナノインプリント法で用いる凹版であるモールドを用意した。具体的には、光ナノインプリント法において照射する光として、365nmの波長の光を用いたため、この波長の光を透過する合成石英をモールドの材料として用いた。モールドの形成に際しては、まず、合成石英基板の表面に、Crからなる膜をスパッタリング法により成膜し、電子線リソグラフィ法によって電子線レジストパターンをCr膜上に形成した。使用したレジストはポジ型であり、膜厚は150nmとした。電子線により描画したパターンは、一辺が3cmの正方形領域内に、一辺が210nmの正方形を正方格子状に周期300nmで配置したパターンであり、電子線を描画した領域は上記正方形の内側領域である。次に、塩素と酸素との混合ガスに高周波を印加して発生させたプラズマにより、レジストから露出した領域のCr膜をエッチングした。続いて、六弗化エタンガスに高周波を印加して発生させたプラズマによりレジストおよびCr膜から露出した領域の合成石英基板をエッチングした。これによりエッチングした合成石英基板の深さは200nmであった。残存したレジストおよびCr膜を除去し、離型剤としてオプツールHD-1100(ダイキン工業製)を塗布して、正方形が正方格子状に並ぶ格子パターンが正方形領域内に形成されたモールドを得た。
次に、上記モールド上の格子パターンが形成された正方形領域内に紫外線硬化性樹脂を塗工し、易接着処理が施されたポリエチレンテレフタラートフィルムでモールド表面を覆った。紫外線硬化性樹脂が上記正方形領域内の全面に広がるようにローラーを用いて延ばし、365nmの紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂を硬化した後、モールドからポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離した。これにより、表面に格子パターンが形成された紫外線硬化性樹脂からなる凹凸構造層とポリエチレンテレフタラートフィルムである基材との積層体を得た。上記工程を繰り返し、凹凸構造層と基材との積層体を2つ作製した。なお、365nmの紫外線の照射量は50mJ/cm2とした。
次に、上記2つの積層体の表面に真空蒸着法を用いて膜厚100nmのTiO2膜を成膜することにより、TiO2からなる高屈折率層を形成した。続いて、2つの積層体のうちの、一方の積層体の表面の格子パターンが位置する領域に紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工された紫外線硬化性樹脂に他方の積層体の表面が接し、かつ、格子パターンが位置する領域が重なるように2つの積層体を向かい合わせた。紫外線硬化性樹脂が格子パターンの位置する領域内の全面に広がるようにローラーを用いて延ばし、365nmの紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂を硬化して埋込層を形成した。これにより、実施例の波長選択フィルタを得た。なお、365nmの紫外線の照射量は50mJ/cm2とした。
<波長選択フィルタの評価>
実施例の波長選択フィルタの反射分光測定を実施したところ、450nm程度に中心波長を有する反射スペクトルが観測された。