以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る産業車両の油圧システムを示す概略構成図である。図1において、本実施形態の油圧システム1は、産業車両であるフォークリフト2に搭載されている。フォークリフト2は、エンジン3と、このエンジン3の出力軸に取り付けられたトルクコンバータ4とを具備している。
油圧システム1は、オイルタンク5と、油圧ポンプ6と、ステアリングシリンダ7と、ステアリングバルブ8と、リフトシリンダ9と、ティルトシリンダ10と、コントロールバルブ11とを備えている。
オイルタンク5は、作動油を貯留する。油圧ポンプ6は、エンジン3によりトルクコンバータ4を介して駆動される。油圧ポンプ6は、オイルタンク5内に貯留された作動油を吸い込んで吐出する。
ステアリングシリンダ7は、油圧ポンプ6から吐出される作動油により駆動され、作業者によるステアリング操作をアシストする。ステアリングバルブ8は、油圧ポンプ6とステアリングシリンダ7との間に配置され、ステアリングホイール(図示せず)の操作方向に応じて作動油を流れる方向を切り換える。
リフトシリンダ9及びティルトシリンダ10は、油圧ポンプ6から吐出される作動油により駆動される荷役アクチュエータである。リフトシリンダ9は、フォーク(図示せず)を昇降させる。ティルトシリンダ10は、マスト(図示せず)を傾動させる。
コントロールバルブ11は、油圧ポンプ6からリフトシリンダ9及びティルトシリンダ10に供給される作動油を制御する。具体的には、コントロールバルブ11は、リフトレバー(図示せず)の操作方向及び操作量に応じて、油圧ポンプ6とリフトシリンダ9との間で作動油が流れる方向及び流量を制御する。また、コントロールバルブ11は、ティルトレバー(図示せず)の操作方向及び操作量に応じて、油圧ポンプ6とティルトシリンダ10との間で作動油が流れる方向及び流量を制御する。リフトシリンダ9及びコントロールバルブ11とオイルタンク5との間の流路には、リターンフィルタ12が配設されている。
また、油圧システム1は、フォークリフト2にブレーキをかけるブレーキシステム13を備えている。ブレーキシステム13は、ブレーキペダル14と、湿式ブレーキユニット15と、油圧ポンプ16と、アキュムレータ17と、ブレーキバルブ18と、作動油クーラ19と、冷却用流路20と、チャージバルブ21とを備えている。
ブレーキペダル14は、作業者により踏み込み操作されるブレーキ操作具である。湿式ブレーキユニット15は、フォークリフト2の車輪22を制動させる湿式ブレーキディスク23と、この湿式ブレーキディスク23を押圧するブレーキピストン24とを有している。ブレーキピストン24は、作動油により駆動される。
油圧ポンプ16は、油圧ポンプ6と同軸上に配置され、エンジン3によりトルクコンバータ4を介して駆動される。油圧ポンプ16は、オイルタンク5内に貯留された作動油を吸い込んで吐出する。オイルタンク5と油圧ポンプ6,16との間の流路には、油圧ポンプ6,16内にゴミ等が入り込むことを防止するサクションフィルタ25が配設されている。
アキュムレータ17は、油圧ポンプ16から吐出される作動油を蓄圧する。ブレーキバルブ18は、アキュムレータ17とブレーキピストン24との間に配置されている。ブレーキバルブ18は、ブレーキペダル14の操作に応じてアキュムレータ17からブレーキピストン24に供給される作動油を制御する。具体的には、ブレーキバルブ18は、ブレーキペダル14の操作量に応じてアキュムレータ17からブレーキピストン24に供給される作動油の流量及び圧力を制御する。
ブレーキバルブ18は、図2に示されるように、クローズド式のバルブである。ブレーキバルブ18は、アンロード位置18aと中立位置18bと制動位置18cとを切り換える。
アンロード位置18aは、オイルタンク5とブレーキピストン24とを連通させると共に、アキュムレータ17とブレーキピストン24とを遮断する位置である。中立位置18bは、アキュムレータ17及びオイルタンク5とブレーキピストン24とを遮断する位置である。制動位置18cは、アキュムレータ17とブレーキピストン24とを連通させると共に、オイルタンク5とブレーキピストン24とを遮断する位置である。
ブレーキペダル14が踏み込み操作されていない状態では、ブレーキバルブ18はアンロード位置18aにある。ブレーキペダル14が踏み込み操作されると、ブレーキペダル14の踏み込み量に応じてブレーキバルブ18がアンロード位置18aから中立位置18bまたは制動位置18cに切り換えられる。なお、ブレーキペダル14の通常の踏み込み操作量では、ブレーキバルブ18は制動位置18cに切り換えられる。
作動油クーラ19は、油圧ポンプ16から吐出される作動油を冷却する。冷却用流路20は、湿式ブレーキユニット15を通るようにチャージバルブ21とオイルタンク5とを接続している。冷却用流路20は、油圧ポンプ16からの作動油が作動油クーラ19に向けて流れると共に、作動油クーラ19により冷却された作動油が湿式ブレーキユニット15に向けて流れる流路である。作動油クーラ19は、冷却用流路20におけるチャージバルブ21と湿式ブレーキユニット15との間に配設されている。作動油クーラ19により冷却された作動油が湿式ブレーキユニット15に供給されることで、湿式ブレーキディスク23が冷却される。湿式ブレーキディスク23が冷却された後の作動油は、オイルタンク5に戻る。
冷却用流路20における湿式ブレーキユニット15とオイルタンク5との間には、リターンフィルタ26が配設されている。また、作動油クーラ19とオイルタンク5との間の流路には、リリーフ弁27が配設されている。冷却用流路20におけるチャージバルブ21と作動油クーラ19との間の部分とオイルタンク5との間の流路には、リリーフ弁28が配設されている。
チャージバルブ21は、油圧ポンプ16と湿式ブレーキユニット15及びアキュムレータ17との間に配置されている。チャージバルブ21は、蓄圧油路21aと冷却油路21bとを切り換える切換弁である。蓄圧油路21aは、油圧ポンプ16からアキュムレータ17への作動油の供給を許容すると共に、油圧ポンプ16から冷却用流路20への作動油の供給を遮断する第1油路である。冷却油路21bは、アキュムレータ17の圧力が予め決められた設定圧以上になると、油圧ポンプ16から冷却用流路20への作動油の供給を許容する第2油路である。設定圧は、例えばアキュムレータ17内の作動油が満杯になるような圧力である。
チャージバルブ21は、図2に示されるように、ハウジング30と、このハウジング30内に配置されたスプール31とを有している。ハウジング30には、油圧ポンプ16と接続されたポンプポート32と、アキュムレータ17と接続されたACCポート33と、作動油クーラ19と接続されたクーラポート34とが設けられている。
ポンプポート32とクーラポート34とは、流路35を介して接続されている。スプール31は、流路35に配設されている。流路35におけるポンプポート32とスプール31との間の部分とACCポート33とは、流路36を介して接続されている。流路36には、ポンプポート32側からACCポート33側への作動油の流れのみを許容するチェック弁37が配設されている。また、ポンプポート32とクーラポート34とは、流路38を介して接続されている。流路38には、ポンプポート32の圧力が過大になると開くリリーフ弁39が配設されている。
スプール31は、ACCポート33の圧力(アキュムレータ17の圧力)に応じて開位置と閉位置とを切り換える。スプール31の一方側には、バネ40が設けられている。スプール31の他方側には、パイロット操作部41が設けられている。パイロット操作部41とACCポート33とは、パイロットライン42を介して接続されている。パイロットライン42には、アキュムレータ17の圧力に相当するパイロット圧が与えられる。
パイロット圧がバネ40の付勢力以下であるときは、スプール31は閉位置(図示)にあり、ポンプポート32からクーラポート34への作動油の流れが遮断される。このため、油圧ポンプ16から吐出された作動油は、作動油クーラ19に供給されずに、アキュムレータ17のみに供給される。パイロット圧がバネ40の付勢力に打ち勝つと、スプール31が閉位置から開位置に切り換わり、ポンプポート32からクーラポート34への作動油の流れが許容される。このため、油圧ポンプ16から吐出された作動油は、アキュムレータ17及び作動油クーラ19に供給される。このとき、油圧ポンプ16からの作動油は、アキュムレータ17に対して優先して供給される。そして、その作動油の余剰分が作動油クーラ19に供給される。
以上のようなブレーキシステム13を備えた油圧システム1において、アキュムレータ17の圧力が設定値以下であるときは、チャージバルブ21は蓄圧油路21a(ACCポート33側の油路)に切り換えられた状態となっている。このため、油圧ポンプ16からの作動油は、チャージバルブ21を通ってアキュムレータ17に供給されて蓄圧される。
そして、アキュムレータ17の圧力が設定値よりも高くなると、チャージバルブ21が蓄圧油路21aから冷却油路21b(クーラポート34側の油路)に切り換えられる。すると、油圧ポンプ16からの作動油は、アキュムレータ17に優先して供給される。そして、アキュムレータ17への作動油の蓄圧が完了すると、油圧ポンプ16からの作動油は、チャージバルブ21を通って作動油クーラ19に供給される。
ここで、ブレーキペダル14が操作されると、ブレーキバルブ18がアンロード位置18aから制動位置18cに切り換えられることで、アキュムレータ17に蓄圧された作動油がブレーキピストン24に供給され、湿式ブレーキディスク23により車輪22が制動する。また、作動油クーラ19により冷却された作動油が冷却用流路20を流れて湿式ブレーキユニット15に供給されることで、湿式ブレーキディスク23が冷却される。
湿式ブレーキユニット15が使用されると、アキュムレータ17に蓄圧された作動油が消費されるため、アキュムレータ17の圧力が低下する。そして、アキュムレータ17の圧力が設定値以下になると、チャージバルブ21が冷却油路21bから蓄圧油路21aに切り換えられ、再びアキュムレータ17に作動油が蓄圧される。
図3は、比較例としての産業車両の油圧システムを示す概略構成図である。図3において、本比較例の油圧システム100は、上記の油圧ポンプ6、ステアリングシリンダ7、ステアリングバルブ8、リフトシリンダ9、ティルトシリンダ10及びコントロールバルブ11と、上記のブレーキペダル14、湿式ブレーキユニット15、油圧ポンプ16及びブレーキバルブ18と、主オイルタンク101とを備えている。ブレーキバルブ18と主オイルタンク101との間の流路には、作動油を冷却する作動油クーラ102が配設されている。
また、油圧システム100は、湿式ブレーキユニット15を冷却する冷却ユニット103を備えている。冷却ユニット103は、冷却用オイルタンク104と、冷却用油圧ポンプ105と、冷却用流路106と、作動油クーラ107とを有している。
冷却用油圧ポンプ105は、冷却用オイルタンク104内に貯留された作動油を吸い込んで吐出する。冷却用流路106は、湿式ブレーキユニット15を通るように冷却用油圧ポンプ105と冷却用オイルタンク104とを接続する。作動油クーラ107は、冷却用流路106に配設され、冷却用油圧ポンプ105から吐出された作動油を冷却する。作動油クーラ107により冷却された作動油が湿式ブレーキユニット15に供給されることで、湿式ブレーキディスク23が冷却される。
しかしながら、本比較例の油圧システム100では、専用の冷却用オイルタンク104、冷却用油圧ポンプ105及び作動油クーラ107が必要となる。特に冷却用オイルタンク104は、サイズが大きい。このため、油圧システム100の部品点数及び部品搭載スペースが増大し、結果的にフォークリフトの体格の大型化につながる。
一方、本実施形態では、ブレーキペダル14が操作されると、ブレーキバルブ18によって湿式ブレーキユニット15に作動油が供給され、湿式ブレーキユニット15が動作する。また、チャージバルブ21が冷却油路21bに切り換えられると、油圧ポンプ16からの作動油が冷却用流路20に供給される。このとき、作動油クーラ19により冷却された作動油が冷却用流路20を流れて湿式ブレーキユニット15に供給されることで、湿式ブレーキユニット15が冷却される。このようにチャージバルブ21を備えることにより、専用の冷却用オイルタンク104及び冷却用油圧ポンプ105が不要となり、オイルタンクが1つのオイルタンク5として共通化されると共に、油圧ポンプの数が必要最小限で済む。また、作動油クーラ102も不要となる。これにより、油圧システム1の部品点数及び部品搭載スペースが削減される。その結果、フォークリフト2の体格を小型化することができる。
また、本実施形態では、アキュムレータ17の圧力が設定圧よりも低いときは、チャージバルブ21が蓄圧油路21aに切り換えられ、油圧ポンプ16からの作動油がアキュムレータ17に蓄圧される。アキュムレータ17の圧力が設定圧以上になると、チャージバルブ21が冷却油路21bに切り換えられ、アキュムレータ17への作動油の蓄圧が完了する。また、ブレーキペダル14が操作されると、ブレーキバルブ18によってアキュムレータ17から湿式ブレーキユニット15に作動油が供給され、湿式ブレーキユニット15が動作する。このようにアキュムレータ17を使用するので、油圧ポンプ16の負荷が低減される。
また、本実施形態では、作動油クーラ19は、冷却用流路20におけるチャージバルブ21と湿式ブレーキユニット15との間に配設されている。従って、作動油クーラ19により冷却された直後の作動油が湿式ブレーキユニット15に供給されるため、湿式ブレーキユニット15を効率良く冷却することができる。
図4は、本発明の第2実施形態に係る産業車両の油圧システムを示す概略構成図である。図4において、本実施形態の油圧システム1は、ブレーキシステム13Aを備えている。ブレーキシステム13Aは、上記の第1実施形態におけるチャージバルブ21に代えて、電磁切換弁50を備えている。
また、ブレーキシステム13Aは、電磁切換弁50と冷却用流路20における作動油クーラ19と湿式ブレーキユニット15との間の部分とを接続し、作動油クーラ19を迂回する迂回流路51を備えている。冷却用流路20における作動油クーラ19と迂回流路51との間には、作動油クーラ19側から湿式ブレーキユニット15側への作動油の流れのみを許容するチェック弁52が配設されている。
電磁切換弁50は、油圧ポンプ16と湿式ブレーキユニット15及びアキュムレータ17との間に配置されている。電磁切換弁50は、蓄圧油路50aとクーラ経由油路50bとクーラ迂回油路50cとを切り換える3方向の切換弁である。
蓄圧油路50aは、油圧ポンプ16からアキュムレータ17への作動油の供給を許容すると共に、油圧ポンプ16から作動油クーラ19及び迂回流路51への作動油の供給を遮断する第1油路である。つまり、蓄圧油路50aは、油圧ポンプ16から冷却用流路20への作動油の供給を遮断する油路である。
クーラ経由油路50bは、油圧ポンプ16から作動油クーラ19への作動油の供給を許容すると共に、油圧ポンプ16からアキュムレータ17及び迂回流路51への作動油の供給を遮断する第2油路である。つまり、クーラ経由油路50bは、油圧ポンプ16から冷却用流路20への作動油の供給を許容する油路である。
クーラ迂回油路50cは、油圧ポンプ16から迂回流路51への作動油の供給を許容すると共に、油圧ポンプ16からアキュムレータ17及び作動油クーラ19への作動油の供給を遮断する第3油路である。
また、ブレーキシステム13Aは、温度センサ53と、圧力センサ54と、コントローラ55とを備えている。
温度センサ53は、オイルタンク5内に貯留された作動油の温度を検出する温度検出部である。温度センサ53としては、熱電対等が使用される。なお、温度センサ53は、オイルタンク5と接続された流路を流れる作動油の温度を検出してもよい。圧力センサ54は、アキュムレータ17の圧力を検出する圧力検出部である。
コントローラ55は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ55は、温度センサ53及び圧力センサ54の検出値に基づいて、電磁切換弁50を制御する制御部である。
図5は、コントローラ55により実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。図5において、コントローラ55は、まず温度センサ53及び圧力センサ54の検出値を取得する(手順S101)。
続いて、コントローラ55は、まず温度センサ53の検出値に基づいて、作動油の温度が予め決められた規定温度以下であるかどうかを判断する(手順S102)。規定温度は、例えば10℃である。コントローラ55は、作動油の温度が規定温度以下であると判断したときは、圧力センサ54の検出値に基づいて、アキュムレータ17の圧力が予め決められた規定圧以下であるかどうかを判断する(手順S103)。規定圧は、例えばアキュムレータ17内の作動油が満杯になるような圧力である。
コントローラ55は、アキュムレータ17の圧力が規定圧以下であると判断したときは、電磁切換弁50を蓄圧油路50aに切り換えるように制御する(手順S104)。コントローラ55は、アキュムレータ17の圧力が規定圧よりも高いと判断したときは、電磁切換弁50をクーラ迂回油路50cに切り換えるように制御する(手順S105)。
コントローラ55は、手順S102で作動油の温度が規定温度よりも高いと判断したときは、圧力センサ54の検出値に基づいて、アキュムレータ17の圧力が規定圧以下であるかどうかを判断する(手順S106)。ここでの規定圧は、上記の手順S103と同様である。
コントローラ55は、アキュムレータ17の圧力が規定圧以下であると判断したときは、電磁切換弁50を蓄圧油路50aに切り換えるように制御する(手順S104)。コントローラ55は、アキュムレータ17の圧力が規定圧よりも高いと判断したときは、電磁切換弁50をクーラ経由油路50bに切り換えるように制御する(手順S107)。
以上のように本実施形態では、アキュムレータ17の圧力が規定圧以下であるときは、電磁切換弁50が蓄圧油路50aに切り換えられ、油圧ポンプ16からの作動油がアキュムレータ17に蓄圧される。アキュムレータ17の圧力が規定圧よりも高くなると、電磁切換弁50がクーラ経由油路50bまたはクーラ迂回油路50cに切り換えられ、アキュムレータ17への作動油の蓄圧が完了する。また、ブレーキペダル14が操作されると、ブレーキバルブ18によってアキュムレータ17から湿式ブレーキユニット15に作動油が供給され、湿式ブレーキユニット15が動作する。このようにアキュムレータ17を使用するので、油圧ポンプ16の負荷が低減される。
ところで、作動油の動粘度は、図6に示されるように、作動油の温度が低くなるほど高くなる。従って、作動油の低温時には、作動油の動粘度が高くなるため、フォークリフト2のエンストが発生しやすくなったり、リフトシリンダ9及びティルトシリンダ10による荷役速度が低下しやすくなる。
これに対し本実施形態では、作動油の温度が規定温度以下であると共に、アキュムレータ17の圧力が規定圧よりも高いときは、電磁切換弁50がクーラ迂回油路50cに切り換えられる。このため、油圧ポンプ16からの作動油は、作動油クーラ19を通過せずに、迂回流路51を流れて湿式ブレーキユニット15に供給される。従って、油圧ポンプ16からの作動油は、作動油クーラ19により冷却されない。これにより、作動油の低温時には、作動油が早期に温まるようになるため、リフトシリンダ9及びティルトシリンダ10によって通常の荷役動作の実施が可能となるまでの時間が短縮される。その結果、作業効率を向上させることができる。また、フォークリフト2のエンストを回避することができる。
なお、本実施形態では、3方向の電磁切換弁50と冷却用流路20とが作動油クーラ19を迂回する迂回流路51を介して接続されているが、特にその形態には限られず、冷却用流路20に迂回流路51が接続されていなくてもよい。この場合には、2方向の電磁切換弁を使用してもよい。
図7は、本発明の第3実施形態に係る産業車両の油圧システムを示す概略構成図である。図7において、本実施形態の油圧システム1は、ブレーキシステム13Bを備えている。ブレーキシステム13Bは、上記の第1実施形態におけるチャージバルブ21に加えて、電磁切換弁60を備えている。電磁切換弁60は、チャージバルブ21と湿式ブレーキユニット15との間に配置されている。また、ブレーキシステム13Bは、上記の第2実施形態と同様に、作動油クーラ19を迂回する迂回流路51と、冷却用流路20に配設されたチェック弁52とを備えている。
電磁切換弁60は、チャージバルブ21と作動油クーラ19との間に配置された2方向の切換弁である。電磁切換弁60は、クーラ経由油路60aとクーラ迂回油路60bとを切り換える。
クーラ経由油路60aは、油圧ポンプ16から作動油クーラ19への作動油の供給を許容すると共に、油圧ポンプ16から迂回流路51への作動油の供給を遮断する第3油路である。クーラ迂回油路60bは、油圧ポンプ16から迂回流路51への作動油の供給を許容すると共に、油圧ポンプ16から作動油クーラ19への作動油の供給を遮断する第4油路である。
また、ブレーキシステム13Bは、上記の温度センサ53と、コントローラ55Aとを備えている。コントローラ55Aは、温度センサ53の検出値に基づいて、電磁切換弁60を制御する制御部である。
図8は、コントローラ55Aにより実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。図8において、コントローラ55Aは、まず温度センサ53の検出値を取得する(手順S111)。
続いて、コントローラ55Aは、まず温度センサ53の検出値に基づいて、作動油の温度が規定温度以下であるかどうかを判断する(手順S112)。規定温度は、例えば10℃である。
コントローラ55Aは、作動油の温度が規定温度以下であると判断したときは、電磁切換弁60をクーラ迂回油路60bに切り換えるように制御する(手順S113)。コントローラ55Aは、作動油の温度が規定温度よりも高いと判断したときは、電磁切換弁60をクーラ経由油路60aに切り換えるように制御する(手順S114)。
以上のように本実施形態では、作動油の温度が規定温度以下であるときは、電磁切換弁60がクーラ迂回油路60bに切り換えられる。このため、油圧ポンプ16からの作動油は、作動油クーラ19を通過せずに、迂回流路51を流れて湿式ブレーキユニット15に供給される。従って、油圧ポンプ16からの作動油は、作動油クーラ19により冷却されない。これにより、作動油の低温時には、作動油が早期に温まるようになるため、リフトシリンダ9及びティルトシリンダ10によって通常の荷役動作の実施が可能となるまでの時間が短縮される。
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、冷却用流路20における湿式ブレーキユニット15よりも上流側(油圧ポンプ16側)に作動油クーラ19が配設されているが、作動油クーラの配設位置としては、特にそれには限られず、冷却用流路20における湿式ブレーキユニット15とオイルタンク5との間でもよいし、ブレーキバルブ18とオイルタンク5との間の流路等であってもよい。
また、上記実施形態では、チャージバルブ21は、油圧ポンプ16からアキュムレータ17への作動油の供給を常時許容するように構成されているが、特にその形態には限られない。チャージバルブ21は、油圧ポンプ16からアキュムレータ17への作動油の供給を許容すると共に油圧ポンプ16から作動油クーラ19への作動油の供給を遮断する蓄圧油路21aと、油圧ポンプ16から作動油クーラ19への作動油の供給を許容すると共に油圧ポンプ16からアキュムレータ17への作動油の供給を遮断する冷却油路21bとを切り換えてもよい。
また、上記実施形態では、油圧ポンプ16から吐出される作動油を蓄圧するアキュムレータ17が備えられており、ブレーキペダル14が操作されると、ブレーキバルブ18によってアキュムレータ17から湿式ブレーキユニット15に作動油が供給されているが、特にその形態には限られない。例えば、アキュムレータ17が無い場合には、ブレーキペダル14が操作されたときに、ブレーキバルブ18によって油圧ポンプ16から湿式ブレーキユニット15に作動油が供給される構成としてもよい。
また、上記実施形態では、油圧ポンプ6,16がエンジン3により駆動されているが、特にその形態には限られず、油圧ポンプ6,16が電動モータにより駆動されてもよい。また、使用する油圧ポンプの数としては、1つであってもよい。
また、上記実施形態の油圧システム1は、フォークリフト2に搭載されているが、本発明は、荷役を行う荷役アクチュエータが具備されていれば、フォークリフト以外の産業車両にも適用可能である。