以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るブレーキシステムを備えた産業車両としてフォークリフトを示す側面図である。図1において、本実施形態に係る産業車両であるフォークリフト1は、カウンター式の電動フォークリフトである。フォークリフト1は、走行装置2と、この走行装置2の前側に配置され、荷物Wの揚げ降ろしを行う荷役装置3とを具備している。
走行装置2は、車体4と、この車体4の前部に配置された左右2つの駆動輪である前輪5と、車体4の後部に配置された左右2つの操舵輪である後輪6と、前輪5を回転させる走行モータ7と、荷役用の油圧ポンプ(図示せず)を回転駆動させる荷役モータ8と、走行モータ7及び荷役モータ8に電力を供給するバッテリ9とを有している。
荷役装置3は、車体4の前端部に立設されたマスト10と、このマスト10にリフトブラケット11を介して取り付けられ、荷物Wが積載される1対のフォーク12と、このフォーク12を昇降させるリフトシリンダ13と、マスト10を傾動させるティルトシリンダ14とを有している。
図2は、本発明の第1実施形態に係る産業車両のブレーキシステムを示す概略構成図である。図2において、本実施形態のブレーキシステム15は、フォークリフト1を自動運転させるためにフォークリフト1に搭載されている。なお、フォークリフト1には、自動運転に関するシステムとして、ブレーキシステム15の他に操舵システム及び駆動システム等も搭載されている。
ブレーキシステム15は、作業者がブレーキペダル16(後述)を踏み込むことによってフォークリフト1を停止させる作業と同じ作用を行う。なお、フォークリフト1には、減速時に走行モータ7により行われる回生ブレーキがある。フォークリフト1の自動運転では、回生ブレーキと機械式ブレーキの2つのブレーキが併用されている。フォークリフト1の走行中は、主に回生ブレーキによって減速の制御が行われる。ブレーキペダル16が踏み込まれると、始めは回生ブレーキの制動力を強めることによって減速させ、途中から機械式ブレーキが作動する。本実施形態では、回生ブレーキの制御については詳細説明を省略し、ブレーキペダル16を押すことにより途中から動作する機械式ブレーキを作用させる場面に特化して説明する。
フォークリフト1は、ブレーキペダル16と、ブレーキユニット17とを備えている。ブレーキペダル16は、作業者が運転する時(手動運転時)に作業者により踏み込み操作が行われる踏み込み部16aを有している。作業者により踏み込み部16aが踏み込まれると、ブレーキペダル16が押される。
ブレーキユニット17は、ブレーキペダル16が押されると動作する。ブレーキユニット17は、フォークリフト1の前輪5を制動させるブレーキ装置18と、このブレーキ装置18を作動させるマスターシリンダ19とを有している。
マスターシリンダ19は、シリンダチューブ20と、このシリンダチューブ20内に配置されたピストン21と、このピストン21に固定されたピストンロッド22と、シリンダチューブ20内におけるピストンロッド22の反対側(基端側)に配置されたバネ23とを有している。ピストンロッド22の先端は、ブレーキペダル16の裏面と係合する。ブレーキペダル16が押されると、バネ23の付勢力に抗してピストンロッド22が押され、マスターシリンダ19から作動油が流れ出る。マスターシリンダ19から出た作動油はブレーキ装置18に供給され、ブレーキ装置18が作動する。これにより、前輪5が制動される。
ブレーキシステム15は、ブレーキペダル16を押すことによりブレーキユニット17を動作させて、フォークリフト1にブレーキをかけるシステムである。ブレーキシステム15は、油圧シリンダ24と、ブレーキ用の油圧ポンプ25と、アキュムレータ26と、第1電磁切換弁27と、第1流量制御弁28と、第2流量制御弁29と、第2電磁切換弁30とを備えている。
油圧シリンダ24は、フォークリフト1の車体4に固定されている。油圧シリンダ24は、作動油により駆動され、ブレーキペダル16を押圧する。油圧シリンダ24は、シリンダチューブ31と、このシリンダチューブ31内に配置されたピストン32と、このピストン32に固定されたピストンロッド33と、シリンダチューブ31内におけるピストンロッド33側(先端側)に配置されたバネ34とを有している。ピストンロッド33の先端は、ブレーキペダル16の表面の中央部に当接している。
油圧ポンプ25は、駆動モータ35により駆動される。油圧ポンプ25は、タンク36内に貯留された作動油を吸い込んで吐出する。油圧ポンプ25の吐出口25aとタンク36との間には、リリーフ弁37が配置されている。
アキュムレータ26は、油圧ポンプ25から吐出される作動油を蓄圧する。アキュムレータ26は、作動油を供給する油圧源を構成する。油圧ポンプ25の吐出口25aとアキュムレータ26との間には、油圧ポンプ25側からアキュムレータ26側への作動油の流れのみを許容するチェック弁38が配置されている。
第1電磁切換弁27は、アキュムレータ26及びタンク36と油圧シリンダ24との間に配置されている。第1電磁切換弁27は、作動油が漏れにくいノンリーク型の3ウェイバルブである。第1電磁切換弁27は、アキュムレータ26からの作動油を油圧シリンダ24に供給する供給位置27aと、油圧シリンダ24からの作動油をタンク36に戻す戻り位置27bとの何れかに切り換えられる。
供給位置27aは、アキュムレータ26から油圧シリンダ24への作動油の供給を許容すると共に、油圧シリンダ24からタンク36への作動油の戻りを遮断する位置である。戻り位置27bは、油圧シリンダ24からタンク36への作動油の戻りを許容すると共に、アキュムレータ26から油圧シリンダ24への作動油の供給を遮断する位置である。
第1電磁切換弁27の供給位置27a側には、バネ39が設けられている。第1電磁切換弁27の戻り位置27b側には、ソレノイド操作部40(第1ソレノイド操作部)が設けられている。ソレノイド操作部40は、コンタクタ41を介してフォークリフト1の主電源42と接続されている。ソレノイド操作部40が通電されると、第1電磁切換弁27の位置が戻り位置27bとなる。ソレノイド操作部40の通電が解除されると、バネ39により第1電磁切換弁27の位置が供給位置27aとなる。
第1流量制御弁28及び第2流量制御弁29は、第1電磁切換弁27と油圧シリンダ24との間に並列に配置されている。第1流量制御弁28及び第2流量制御弁29は、アキュムレータ26から油圧シリンダ24に供給される作動油の流量をそれぞれ制御する。第1流量制御弁28及び第2流量制御弁29は、同じ構造を有するスローリターンチェック弁である。
第1流量制御弁28は、通常停止用の流量制御弁である。通常停止とは、フォークリフト1の自動運転制御に応じたフォークリフト1の停止である。第2流量制御弁29は、非常停止用の流量制御弁である。非常停止は、電源の遮断等によるフォークリフト1の緊急停止である。なお、通常停止及び非常停止については、後でも詳述する。
第1流量制御弁28は、可変絞り弁43を有する主流路44と、可変絞り弁43をバイパスするように主流路44に接続されたバイパス流路45とを有している。第1電磁切換弁27からの作動油は、可変絞り弁43を油圧シリンダ24に向かって流れる。バイパス流路45には、油圧シリンダ24側から第1電磁切換弁27側への作動油の流れのみを許容するチェック弁46が配設されている。
第2流量制御弁29は、可変絞り弁47を有する主流路48と、可変絞り弁47をバイパスするように主流路48に接続されたバイパス流路49とを有している。第1電磁切換弁27からの作動油は、可変絞り弁47を油圧シリンダ24に向かって流れる。バイパス流路49には、油圧シリンダ24側から第1電磁切換弁27側への作動油の流れのみを許容するチェック弁50が配設されている。
可変絞り弁47の絞り開度は、可変絞り弁43の絞り開度よりも小さくなっている。従って、第2流量制御弁29の開度は、第1流量制御弁28の開度よりも小さくなっている。なお、可変絞り弁43,47の絞り開度の調整は、それぞれ調整ネジ(図示せず)により行うことができる。可変絞り弁43,47の開度は、フォークリフト1が走行する路面特性や取り扱う荷物の特徴(形状及び重さ等)に合わせて微調整可能としている。これにより、フォークリフト1の減速度を微調整することが可能となる。
第2電磁切換弁30は、第1電磁切換弁27と第1流量制御弁28及び第2流量制御弁29との間に配置されている。第2電磁切換弁30は、第1電磁切換弁27と同様にノンリーク型の3ウェイバルブである。
第2電磁切換弁30は、第1電磁切換弁27と第1流量制御弁28との間における作動油の流れを許容すると共に、第1電磁切換弁27と第2流量制御弁29との間における作動油の流れを遮断する第1許容位置30aと、第1電磁切換弁27と第2流量制御弁29との間における作動油の流れを許容すると共に、第1電磁切換弁27と第1流量制御弁28との間における作動油の流れを遮断する第2許容位置30bとの何れかに切り換えられる。
第2電磁切換弁30の第2許容位置30b側には、バネ51が設けられている。第2電磁切換弁30の第1許容位置30a側には、ソレノイド操作部52(第2ソレノイド操作部)が設けられている。ソレノイド操作部52は、コンタクタ41を介して主電源42と接続されている。ソレノイド操作部52が通電されると、第2電磁切換弁30の位置が第1許容位置30aとなる。ソレノイド操作部52の通電が解除されると、バネ51により第2電磁切換弁30の位置が第2許容位置30bとなる。
第1電磁切換弁27のソレノイド操作部40とコンタクタ41との間には、バルブリレー53が接続されている。バルブリレー53は、主電源42から出力される電力のスイッチングを行う第1スイッチ部である。
バルブリレー53は、フォークリフト1の自動運転を制御する自動運転コントローラ54から出力されるON/OFF信号によって制御される。自動運転コントローラ54は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。自動運転コントローラ54からON信号が出力されると、バルブリレー53がON状態(閉状態)となり、ソレノイド操作部40が通電される。自動運転コントローラ54からOFF信号が出力されると、バルブリレー53がOFF状態(開状態)となり、ソレノイド操作部40の通電が解除される。
コンタクタ41には、非常停止回路55が接続されている。コンタクタ41は、非常停止回路55に非常停止信号が入力されると、主電源42から出力される電力を強制的に遮断する。フォークリフト1または作業者の無線携帯端末に設けられた非常停止ボタン56が操作されると、非常停止ボタン56から非常停止回路55に非常停止の指令が入力される。また、自動運転コントローラ54から非常停止回路55に非常停止の指令が入力されることもある。
上記の駆動モータ35は、コンタクタ41を介して主電源42と接続されている。駆動モータ35とコンタクタ41との間には、ポンプリレー57が接続されている。ポンプリレー57は、主電源42から出力される電力のスイッチングを行う。
なお、主電源42及びコンタクタ41は、フォークリフト1全体の電力に関わるものである。主電源42からの電力は、コンタクタ41を介して走行モータ7及び荷役モータ8(図1参照)、図示しないフォークリフト1のコントローラ、自動運転のためのセンサ及び操舵を行うためのシステム等のブレーキシステム15以外のシステムにも供給される。
また、ブレーキシステム15は、圧力センサ58と、リレー制御器59とを備えている。圧力センサ58は、アキュムレータ26の圧力を検出する。圧力センサ58は、例えば油圧ポンプ25の吐出口25aとアキュムレータ26とを接続する流路60の圧力を検出する。
リレー制御器59は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。リレー制御器59は、圧力センサ58の検出値に基づいてポンプリレー57を制御する。
具体的には、リレー制御器59は、アキュムレータ26の圧力が下限設定圧以下であるときは、ポンプリレー57をON状態(閉状態)とするように制御する。すると、駆動モータ35が通電されるため、油圧ポンプ25が起動し、油圧ポンプ25から吐出された作動油がアキュムレータ26に供給されて蓄圧される。なお、下限設定圧は、予め実験等により決められている。
リレー制御器59は、アキュムレータ26の圧力が上限設定圧以上であるときは、ポンプリレー57をOFF状態(開状態)とするように制御する。すると、駆動モータ35の通電が解除されるため、油圧ポンプ25の動作が停止し、油圧ポンプ25からアキュムレータ26に作動油が供給されなくなる。なお、上限設定圧は、下限設定圧よりも大きい値であり、予め実験等により決められている。
以上のようなブレーキシステム15においては、上述したように、第2流量制御弁29の可変絞り弁47の絞り開度は、第1流量制御弁28の可変絞り弁43の絞り開度よりも小さくなるように設定されている。
フォークリフト1の自動運転時に、自動運転コントローラ54からバルブリレー53にOFF信号が出力されると、バルブリレー53がOFF状態となり、第1電磁切換弁27のソレノイド操作部40が通電されないため、第1電磁切換弁27の位置は供給位置27aである。また、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52は通電されるため、第2電磁切換弁30の位置は第1許容位置30aである。
すると、アキュムレータ26に蓄圧された作動油が第1電磁切換弁27、第2電磁切換弁30及び第1流量制御弁28の可変絞り弁43を通って油圧シリンダ24に供給され、油圧シリンダ24のピストンロッド33がバネ34の付勢力に抗してブレーキペダル16を押す。ブレーキペダル16が押されると、ブレーキペダル16がマスターシリンダ19のピストンロッド22をバネ23の付勢力に抗して押すため、マスターシリンダ19からブレーキ装置18に作動油が供給され、ブレーキ装置18が作動する。これにより、フォークリフト1は、機械式ブレーキがかかった状態となり、減速及び停止する。
このとき、第1流量制御弁28の可変絞り弁43の絞り開度が大きいため、第1流量制御弁28を流れる作動油の流量が多く、油圧シリンダ24のピストンロッド33の動作速度が高い。従って、回生によるブレーキに加えて機械式ブレーキの作用が加わるため、フォークリフト1の減速度が高くなり、フォークリフト1が直ちに停止するようになる。これにより、例えば坂道においてフォークリフト1が停止した後に、フォークリフト1を停止状態に保持することができる。また、走行モータ7による回生ブレーキのみでは、フォークリフト1が目標停止位置に止まりきれない可能性が生じた場合に、機械式ブレーキの作用を加えることにより、フォークリフト1を目標停止位置に停止させることができる。
なお、上記のように坂道の停止状態を維持するために使用する機械式ブレーキや、目標位置に停止させるために使用する機械式ブレーキによる停止を、非常停止と区別するために通常停止と定義する。
自動運転コントローラ54からバルブリレー53にON信号が出力されると、バルブリレー53がON状態となり、第1電磁切換弁27のソレノイド操作部40が通電されるため、第1電磁切換弁27の位置が供給位置27aから戻り位置27bに切り換わる。また、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52は通電されるため、第2電磁切換弁30の位置は第1許容位置30aである。
すると、油圧シリンダ24の作動油が第1流量制御弁28のチェック弁46、第2電磁切換弁30及び第1電磁切換弁27を通ってタンク36に戻る。従って、油圧シリンダ24のピストンロッド33によるブレーキペダル16の押圧が解除され、ブレーキペダル16によるマスターシリンダ19のピストンロッド22の押圧が解除されるため、マスターシリンダ19からブレーキ装置18に作動油が供給されず、ブレーキ装置18が作動しない。これにより、フォークリフト1は、機械式ブレーキが解除された状態となる。
また、フォークリフト1の走行中に異常等が発生することで、例えば非常停止ボタン56が操作されると、コンタクタ41により主電源42が遮断される。従って、第1電磁切換弁27のソレノイド操作部40の通電が強制的に解除されるため、第1電磁切換弁27の位置は供給位置27aである。また、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52の通電が強制的に解除されるため、第2電磁切換弁30の位置が第1許容位置30aから第2許容位置30bに切り換わる。
すると、アキュムレータ26に蓄圧された作動油が第1電磁切換弁27、第2電磁切換弁30及び第2流量制御弁29の可変絞り弁47を通って油圧シリンダ24に供給され、油圧シリンダ24のピストンロッド33がブレーキペダル16を押す。これにより、フォークリフト1は、上述したように機械式ブレーキがかかった状態となり、減速及び停止する。
このとき、第2流量制御弁29の可変絞り弁47の絞り開度が小さいため、第2流量制御弁29を流れる作動油の流量が少なく、油圧シリンダ24のピストンロッド33の動作速度が低い。従って、機械式ブレーキの作用が小さくなるため、フォークリフト1の減速度が低くなり、フォークリフト1がゆっくり停止するようになる。これにより、フォーク12に荷物Wが積載されている状態でも、荷物Wが殆ど動くことなくフォークリフト1を安定して停止させることができる。ただし、機械式ブレーキの作用によって、回生ブレーキのみによるブレーキに比較してフォークリフト1を迅速に停止させることができる。
なお、非常停止ボタン56が操作されることで緊急的に停止するために使用する機械式ブレーキや、フォークリフト1が異常を検知して緊急的に停止するために使用する機械式ブレーキによる停止を、緊急停止とする。
以上のように本実施形態にあっては、フォークリフト1の通常停止時には、バルブリレー53を開くと、第1電磁切換弁27のソレノイド操作部40の通電が解除されることで、第1電磁切換弁27の位置が供給位置27aとなると共に、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52が通電されることで、第2電磁切換弁30の位置が第1許容位置30aとなる。このため、アキュムレータ26からの作動油が第1流量制御弁28を通って油圧シリンダ24に供給され、油圧シリンダ24によりブレーキペダル16が押圧されることで、フォークリフト1に機械式ブレーキがかかる。一方、フォークリフト1の非常停止時には、主電源42が遮断されるため、第1電磁切換弁27のソレノイド操作部40の通電が解除されることで、第1電磁切換弁27の位置が供給位置27aとなると共に、主電源42が遮断されるため、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52の通電が解除されることで、第2電磁切換弁30の位置が第2許容位置30bとなる。このため、アキュムレータ26からの作動油が第2流量制御弁29を通って油圧シリンダ24に供給され、油圧シリンダ24によりブレーキペダル16が押圧されることで、フォークリフト1に機械式ブレーキがかかる。
ここで、第2流量制御弁29の開度を第1流量制御弁28の開度よりも小さくすることにより、第2流量制御弁29を流れる作動油の流量が第1流量制御弁28を流れる作動油の流量よりも少なくなる。従って、作動油が第2流量制御弁29を流れる非常停止時には、作動油が第1流量制御弁28を流れる通常停止時に比べて、油圧シリンダ24の動作速度が低くなるため、フォークリフト1の減速度が低くなる。これにより、非常停止時には、通常停止時よりもフォークリフト1をゆっくり停止させることができる。その結果、非常停止時に、荷物Wが積載されたフォークリフト1を安定して停止させることができる。
また、本実施形態では、通常停止時には、アキュムレータ26からの作動油が第2流量制御弁29を通らずに第1流量制御弁28を通って油圧シリンダ24に供給され、非常停止時には、アキュムレータ26からの作動油が第1流量制御弁28を通らずに第2流量制御弁29を通って油圧シリンダ24に供給されることになる。従って、通常停止時及び非常停止時の機械式ブレーキのかかり具合の調整が行いやすくなる。
また、本実施形態では、第1電磁切換弁27及び第2電磁切換弁30として3ウェイバルブを使用するので、第1電磁切換弁27及び第2電磁切換弁30の部品点数が1つずつで済む。従って、第1電磁切換弁27及び第2電磁切換弁30の構成を単純化することができる。
図3は、図2に示されたブレーキシステムの変形例を示す概略構成図である。図3において、本変形例のブレーキシステム15は、上記の第1実施形態における第1電磁切換弁27及び第2電磁切換弁30に代えて、第1電磁切換弁70及び第2電磁切換弁71を備えている。
第1電磁切換弁70は、アキュムレータ26と油圧シリンダ24との間に配置された開閉弁72と、タンク36と油圧シリンダ24との間に配置された開閉弁73とを有している。開閉弁72,73は、ノンリーク型の電磁弁である。
開閉弁72は、アキュムレータ26から油圧シリンダ24への作動油の供給を許容する開位置72aと、アキュムレータ26から油圧シリンダ24への作動油の供給を遮断する閉位置72bとの何れかに切り換えられる。開閉弁73は、油圧シリンダ24からタンク36への作動油の戻りを許容する開位置73aと、油圧シリンダ24からタンク36への作動油の戻りを遮断する閉位置73bとの何れかに切り換えられる。
開閉弁72の開位置72a及び開閉弁73の閉位置73bは、第1電磁切換弁70においてアキュムレータ26からの作動油を油圧シリンダ24に供給する供給位置を構成している。開閉弁72の閉位置72b及び開閉弁73の開位置73aは、第1電磁切換弁70において油圧シリンダ24からの作動油をタンク36に戻す戻り位置を構成している。
開閉弁72の開位置72a側には、バネ74が設けられている。開閉弁72の閉位置72b側には、ソレノイド操作部75が設けられている。ソレノイド操作部75は、バルブリレー53及びコンタクタ41を介して主電源42と接続されている。ソレノイド操作部75が通電されると、開閉弁72の位置が閉位置72bとなる。ソレノイド操作部75の通電が解除されると、バネ74により開閉弁72の位置が開位置72aとなる。
開閉弁73の閉位置73b側には、バネ76が設けられている。開閉弁73の開位置73a側には、ソレノイド操作部77が設けられている。ソレノイド操作部77は、バルブリレー53及びコンタクタ41を介して主電源42と接続されている。ソレノイド操作部77が通電されると、開閉弁73の位置が開位置73aとなる。ソレノイド操作部77の通電が解除されると、バネ76により開閉弁73の位置が閉位置73bとなる。
ソレノイド操作部75,77は、第1電磁切換弁70の第1ソレノイド操作部を構成している。
第2電磁切換弁71は、第1電磁切換弁70と第1流量制御弁28との間に配置された開閉弁78と、第1電磁切換弁70と第2流量制御弁29との間に配置された開閉弁79とを有している。開閉弁78,79は、ノンリーク型の電磁弁である。
開閉弁78は、第1電磁切換弁70と第1流量制御弁28との間における作動油の流れを許容する開位置78aと、第1電磁切換弁70と第1流量制御弁28との間における作動油の流れを遮断する閉位置78bとの何れかに切り換えられる。開閉弁79は、第1電磁切換弁70と第2流量制御弁29との間における作動油の流れを許容する開位置79aと、第1電磁切換弁70と第2流量制御弁29との間における作動油の流れを遮断する閉位置79bとの何れかに切り換えられる。
開閉弁78の開位置78a及び開閉弁79の閉位置79bは、第2電磁切換弁71において第1電磁切換弁70と第1流量制御弁28との間における作動油の流れを許容すると共に第1電磁切換弁70と第2流量制御弁29との間における作動油の流れを遮断する第1許容位置を構成している。開閉弁78の閉位置78b及び開閉弁79の開位置79aは、第2電磁切換弁71において第1電磁切換弁70と第2流量制御弁29との間における作動油の流れを許容すると共に第1電磁切換弁70と第1流量制御弁28との間における作動油の流れを遮断する第2許容位置を構成している。
開閉弁78の閉位置78b側には、バネ80が設けられている。開閉弁78の開位置78a側には、ソレノイド操作部81が設けられている。ソレノイド操作部81は、コンタクタ41を介して主電源42と接続されている。ソレノイド操作部81が通電されると、開閉弁78の位置が開位置78aとなる。ソレノイド操作部81の通電が解除されると、バネ80により開閉弁78の位置が閉位置78bとなる。
開閉弁79の開位置79a側には、バネ82が設けられている。開閉弁79の閉位置79b側には、ソレノイド操作部83が設けられている。ソレノイド操作部83は、コンタクタ41を介して主電源42と接続されている。ソレノイド操作部83が通電されると、開閉弁79の位置が閉位置79bとなる。ソレノイド操作部83の通電が解除されると、バネ82により開閉弁79の位置が開位置79aとなる。
ソレノイド操作部81,83は、第2電磁切換弁71の第2ソレノイド操作部を構成している。
以上において、通常停止時には、バルブリレー53がOFF状態となることで、開閉弁72のソレノイド操作部75及び開閉弁73のソレノイド操作部77の通電が解除されると共に、開閉弁78のソレノイド操作部81及び開閉弁79のソレノイド操作部83が通電される。このため、開閉弁72の位置が開位置72aとなり、開閉弁73の位置が閉位置73bとなり、開閉弁78の位置が開位置78aとなり、開閉弁79の位置が閉位置79bとなる。すると、アキュムレータ26に蓄圧された作動油が開閉弁72、開閉弁78及び第1流量制御弁28の可変絞り弁43を通って油圧シリンダ24に供給される。このため、フォークリフト1は、上述したように直ちに機械式ブレーキがかかった状態となる。
その状態から、バルブリレー53がON状態となることで、開閉弁72のソレノイド操作部75及び開閉弁73のソレノイド操作部77が通電されると、開閉弁72の位置が開位置72aから閉位置72bに切り換わり、開閉弁73の位置が閉位置73bから開位置73aに切り換わる。すると、油圧シリンダ24の作動油が第1流量制御弁28のチェック弁46、開閉弁78及び開閉弁73を通ってタンク36に戻る。このため、フォークリフト1は、上述したように機械式ブレーキが解除された状態となる。
一方、非常停止時には、主電源42が遮断されるため、開閉弁72のソレノイド操作部75及び開閉弁73のソレノイド操作部77の通電が解除されると共に、開閉弁78のソレノイド操作部81及び開閉弁79のソレノイド操作部83の通電が解除される。このため、開閉弁72の位置が開位置72aとなり、開閉弁73の位置が閉位置73bとなり、開閉弁78の位置が開位置78aから閉位置78bに切り換わり、開閉弁79の位置が閉位置79bから開位置79aに切り換わる。すると、アキュムレータ26に蓄圧された作動油が開閉弁72、開閉弁79及び第2流量制御弁29の可変絞り弁47を通って油圧シリンダ24に供給される。このため、フォークリフト1は、上述したようにゆっくり機械式ブレーキがかかった状態となる。
本変形例においては、第1電磁切換弁70を構成する開閉弁72,73及び第2電磁切換弁71を構成する開閉弁78,79として、通常の安価な電磁弁が使用可能となる。従って、第1電磁切換弁70及び第2電磁切換弁71のコストを抑えることができる。
図4は、本発明の第2実施形態に係る産業車両のブレーキシステムを示す概略構成図である。図4において、本実施形態のブレーキシステム15は、上記の第1実施形態における構成に加え、荷重センサ90及びバルブリレー91を備えている。
荷重センサ90は、フォークリフト1のフォーク12に積載された荷物Wの荷重(フォークリフト1の積荷荷重)を検出する荷重検出部である。荷重センサ90としては、例えばリフトシリンダ13の圧力を検出する圧力センサが用いられる。
バルブリレー91は、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52とコンタクタ41との間に接続されている。バルブリレー91は、主電源42から出力される電力のスイッチングを行う第2スイッチ部である。バルブリレー91は、自動運転コントローラ54によって制御される。自動運転コントローラ54は、荷重センサ90の検出値に基づいてバルブリレー91を制御する制御部を構成する。
図5は、自動運転コントローラ54により実行されるバルブリレー91の制御処理手順を示すフローチャートである。図5において、自動運転コントローラ54は、まず荷重センサ90の検出値を取得する(手順S101)。
そして、自動運転コントローラ54は、荷重センサ90により検出されたフォークリフト1の積荷荷重が閾値以上であるかどうかを判断する(手順S102)。このとき、閾値は、フォーク12に荷物Wが積載されているかどうかを判断するための値でもよいし、或いはフォーク12に所定重量以上の荷物Wが積載されているかどうかを判断するための値でもよい。
自動運転コントローラ54は、フォークリフト1の積荷荷重が閾値以上でない、つまりフォークリフト1の積荷荷重が閾値未満であると判断したときは、バルブリレー91を閉じる(ONする)ように制御する(手順S103)。これにより、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52が通電されるため、第2電磁切換弁30の位置が第1許容位置30aとなる。
自動運転コントローラ54は、フォークリフト1の積荷荷重が閾値以上であると判断したときは、バルブリレー91を開く(OFFする)ように制御する(手順S104)。これにより、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52の通電が解除されるため、第2電磁切換弁30の位置が第1許容位置30aから第2許容位置30bに切り換わる。
このような本実施形態では、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52の通電が解除されるようにバルブリレー91を制御することにより、第2電磁切換弁30が第1許容位置30aから第2許容位置30bに切り換わる。従って、通常停止時でも、アキュムレータ26からの作動油が第2流量制御弁29を通って油圧シリンダ24に供給されるようになるため、フォークリフト1に非常停止時と同等の機械式ブレーキをかけることができる。
また、本実施形態では、フォークリフト1の積荷荷重が閾値以上であるときは、バルブリレー91が開状態となる。従って、第2電磁切換弁30のソレノイド操作部52の通電が解除されるため、第2電磁切換弁30が第1許容位置30aから第2許容位置30bに切り換わる。これにより、通常停止時でも、荷物Wが積載されたフォークリフト1を安定して停止させることができる。
図6は、図4に示されたブレーキシステムの変形例を示す概略構成図である。図6において、本変形例のブレーキシステム15は、上記の第2実施形態における第1電磁切換弁27及び第2電磁切換弁30に代えて、上述した第1電磁切換弁70及び第2電磁切換弁71を備えている。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記の変形例では、第1電磁切換弁70と第2流量制御弁29との間に開閉弁79が配置されているが、そのような開閉弁79は特に無くてもよい。この場合には、通常停止時には、アキュムレータ26からの作動油が第1流量制御弁28及び第2流量制御弁29を通って油圧シリンダ24に供給される。非常停止時には、上記実施形態と同様に、アキュムレータ26からの作動油が第2流量制御弁29を通って油圧シリンダ24に供給される。
また、上記実施形態では、第1流量制御弁28は可変絞り弁43を有し、第2流量制御弁29は可変絞り弁47を有しているが、絞り弁としては、特にそのような可変絞り弁43,47には限られず、減速度の微調整が不要であれば、固定絞り弁であってもよい。
また、上記実施形態では、アキュムレータ26に蓄圧された作動油が油圧シリンダ24に供給されることで、ブレーキペダル16が押圧されているが、そのようなアキュムレータ26は特に無くてもよく、油圧ポンプ25から吐出された作動油を油圧シリンダ24に供給することで、ブレーキペダル16を押圧してもよい。この場合には、油圧ポンプ25が油圧源となる。
また、上記実施形態のブレーキシステム15は、自動運転を行うフォークリフト1に搭載されているが、フォークリフトは、作業者による手動運転と自動運転とが切り替え可能であってもよい。この場合には、油圧シリンダ24は、作業者によるブレーキペダル16の踏み込み動作の妨げにならない箇所に配置される。
また、上記実施形態のブレーキシステム15は、バッテリ9の電力により駆動される電動式のフォークリフト1に搭載されているが、本発明は、エンジンにより駆動されるエンジン式のフォークリフトにも適用可能である。
さらに、上記実施形態のブレーキシステム15は、フォークリフト1に搭載されているが、本発明は、ブレーキペダルが具備されていれば、フォークリフト以外の産業車両(例えばトーイングトラクタ等)にも適用可能である。