JP2000213644A - Ｈｓｔ車両のエンスト防止装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ＨＳＴ車両のエンスト防止装置において、制
動時等にエンストを防止する。 【解決手段】 油圧ポンプから油圧モータへ供給される
作動油量を可変制御して油圧モータの回転速度を変化さ
せるＨＳＴ２０を備える車両において、エンスト予測手
段としてブレーキペダル６５の踏み込み量が所定値を越
えるとＯＮになるリミットスイッチ６６を備え、エンジ
ンストール域を検出した場合にアンロードバルブ４２を
介して油圧ポンプの吐出圧を逃がしてエンストを防止す
るコントローラ１０を備える。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、無段変速機として
油圧により作動するＨＳＴ（Ｈｙｄｒｏ Ｓｔａｔｉｃ
Ｔｒａｎｓｍｉｓｓｉｏｎ）を搭載したＨＳＴ車両の
エンスト防止装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来のフォークリフトや作業車等に搭載
されるＨＳＴは、エンジンに駆動される油圧ポンプと、
車輪を駆動する油圧モータとを備え、油圧ポンプの吐出
量をアクセルペダル等の操作量に応じてサーボ機構を介
して増減し、油圧ポンプに対する油圧モータの変速比を
無段階に変化させる。つまり、油圧ポンプの吐出量を減
らすことにより車両を減速させ、油圧ポンプの吐出量を
零とすることにより車両を停止させるようになってい
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、フォークリ
フト等の車両にあっては、本来駐車時に用いられるブレ
ーキを車両の走行中に作動させて急停車させ、特に車軸
がロックした場合や、微速走行時に作動させて車両の位
置決めをする場合がある。

【０００４】しかしながら、このようなブレーキを作動
させて車両を減速させる制動時、油圧ポンプの吐出量を
サーボ機構を介して減少させる動きが遅れ、エンジンの
負荷が過大になってエンジンが停止してしまう、いわゆ
るエンストを起こす可能性がある。

【０００５】本発明は上記の問題点を鑑みてなされたも
のであり、ＨＳＴ車両のエンスト防止装置において、制
動時等にエンストを防止することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】第１の発明は、エンジン
に駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される
作動油により回転して車輪を駆動する油圧モータとを備
え、油圧ポンプから油圧モータへ供給される作動油量を
可変制御して油圧モータの回転速度を変化させるＨＳＴ
車両に適用する。

【０００７】そして、油圧ポンプの吐出圧を逃がすアン
ロード手段と、エンジンの負荷が過大になってエンスト
を起こす可能性があるエンジンストール域を検出するエ
ンスト予測手段と、エンジンストール域を検出した場合
にアンロード手段を介して油圧ポンプの吐出圧を逃がし
てエンストを防止する制御手段とを備えるものとした。

【０００８】第２の発明は、第１の発明において、エン
スト予測手段としてブレーキペダルの踏み込み量が所定
値を越えることを検出するリミットスイッチを備えるも
のとした。

【０００９】第３の発明は、第１の発明において、エン
スト予測手段はエンジン回転数に応じてエンジンストー
ル域を判定するものとした。

【００１０】第４の発明は、第１から第３のいずれか一
つの発明において、アンロード手段として、油圧ポンプ
の吐出圧を逃がすパイロット式リリーフバルブと、リリ
ーフバルブを閉弁方向に付勢する圧力を逃がすアンロー
ドバルブとを備えるものとした。

【００１１】

【発明の作用および効果】第１の発明において、エンジ
ンストール域にアンロード手段を介して油圧ポンプの吐
出圧を逃がすことにより、エンジンの負荷が軽減され、
エンストを防止できる。

【００１２】これにより、エンストを防止するために油
圧ポンプの吐出量を制御するサーボ機構の応答性を高め
る必要がなく、サーボ機構の大型化が避けられる。

【００１３】第２の発明において、リミットスイッチを
介してブレーキペダルの踏み込み量が所定値を越える制
動時をエンジンストール域として検出することにより、
実際にエンジン回転数が落ち込む前にエンジンストール
域を検出することができ、エンストを防止する制御応答
性を高められる。

【００１４】第３の発明において、エンジン回転数が落
ち込むエンジンストール域を直接検出して、エンストを
防止できる。

【００１５】第４の発明において、パイロット式のリリ
ーフバルブにポンプ吐出圧の圧力上昇を抑えて各機器の
破損を防止するリリーフ機能と、エンジンストール域に
ポンプ吐出圧を逃がしてエンストを防止するアンロード
機能の両方を持たせることにより、これらの油圧回路を
構成する部品数を削減して構造の簡素化がはかれる。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付
図面に基づいて説明する。

【００１７】まず、図１に本発明が適用可能なＨＳＴの
一例を示す。フォークリフトの無段変速機として設けら
れるＨＳＴ２０は、入力軸２１によって回転駆動される
可変容量油圧ポンプ１と、出力軸２２を回転駆動する油
圧モータ２と、両者を結ぶメイン通路３，４を備え、作
動油が油圧ポンプ１と油圧モータ２の間をメイン通路
３，４を介して循環することにより、油圧ポンプ１の回
転が油圧モータ２に伝達される。入力軸２１はエンジン
５によって回転駆動され、出力軸２２の回転はデファレ
ンシャルギア８を介して左右の車輪２３に伝達される。

【００１８】図２に示すように、油圧ポンプ１は斜板２
５の傾転角度に応じて吐出量および吐出方向を可変とす
る斜板ポンプ等が用いられ、サーボ機構６を介して斜板
角度が調節される。サーボ機構６は、コントローラ１０
から送られる斜板角度指令信号ＸＰｒが大きくなると、
油圧ポンプ１の斜板角度を大きく調節する。これによ
り、油圧ポンプ１は１回転当たり吐出量が増え、入力軸
２１の回転速度に対する出力軸２２の回転速度が上昇し
て変速比が上がり、車速が高まる。斜板２５が中立位置
にある場合、油圧ポンプ１は作動油の吸い込みも吐出も
行わず、油圧モータ２の回転を停止させ、車両を停止さ
せる。

【００１９】エンジン５は、コントローラ１０から送ら
れるスロットル開度指令信号ＳＯｒに応じて図示しない
吸気スロットルバルブの開度が調節されることにより吸
入空気量が変化し、その発生出力が制御される。

【００２０】コントローラ１０は、各種設定器９として
設けられるアクセルペダル、荷役操作レバー等の操作量
に応じて出力される各種設定信号を入力するとともに、
エンジン回転数センサ７から送られるエンジン回転数信
号ＮＥを入力して、エンジン５にスロットル開度指令信
号ＳＯｒを出力するとともに、サーボ機構６に斜板角度
指令信号ＸＰｒを出力する。

【００２１】しかしながら、車輪２３を制動するブレー
キを作動させて車両を急減速させるような場合、サーボ
機構６を介して斜板２５の傾転角度を中立位置に戻す動
きが遅れるため、エンジンの負荷が過大になってエンス
トを起こす可能性がある。

【００２２】これに対処して本発明は、油圧ポンプ１の
吐出圧を逃がすアンロード手段と、エンジンの負荷が過
大になりエンストを起こす可能性があるエンジンストー
ル域を検出するエンスト予測手段と、エンジンストール
域を検出した場合にアンロード手段を介して油圧ポンプ
１の吐出圧を逃がしてエンストを防止するエンスト防止
制御手段とを備えることを要旨とする。以下、その具体
的な例につき図３以下に示したＨＳＴの実施形態を説明
する。

【００２３】図３、図４に示すように、各メイン通路
３，４には高圧リリーフバルブ３１がそれぞれ介装され
る。各リリーフバルブ３１は、各メイン通路３，４の圧
力を所定値以上に上昇すると開弁することにより、それ
以上の圧力上昇を抑えて各機器の破損を防止するように
なっている。

【００２４】各メイン通路３，４を結ぶメイン連通路１
１が配設され、各リリーフバルブ３１はメイン連通路１
１を互いに対向して開閉する。バランスタイプのリリー
フバルブ３１はポペット式のパイロットバルブ３２を介
して開閉する。

【００２５】つまり、メイン通路３の圧力が所定値を越
えて上昇した場合、メイン通路３の圧力は左側のリリー
フバルブ３１の背後室３６を経てパイロットバルブ３２
に作用し、パイロットバルブ３２の受圧面に働く力がパ
イロットスプリング３５の付勢力に打ち勝つと、少量の
パイロット流量がメイン連通路１１を経て右側のリリー
フバルブ３１を押し開きメイン通路４に流れる。このパ
イロット流量により、オリフィス３４で圧力降下が起こ
り、背後室３６の圧力はメイン通路３より低下する。パ
イロット流量の増加によりこの圧力差が大きくなると、
リリーフスプリング３５を抗してリリーフバルブ３１が
図中左方向に移動して、メイン連通路１１を開く。これ
により、大量の作動油がメイン連通路１１を経て右側の
リリーフバルブ３１を押し開きメイン通路４に流れ、メ
イン通路３の圧力上昇が抑えられる。また、左側のリリ
ーフバルブ３１も同様にしてメイン通路４の圧力上昇を
抑える。

【００２６】図中１２は、チャージポンプであり、チャ
ージポンプ１２の吐出される作動油はチャージ通路１３
を介してメイン連通路１１に導かれ、逆止弁として働く
各リリーフバルブ３１を経て各メイン通路３，４に供給
される。余った作動油は、低圧リリーフバルブ１４を経
てケース１５内に供給され、油圧ポンプ１および油圧モ
ータ２を冷却してからタンク１６に戻される。

【００２７】図３に示すように、油圧ポンプ１の吐出圧
を逃がすアンロード手段として、各リリーフバルブ３１
の背後室３６とチャージ通路１３を結ぶアンロード通路
４１と、アンロード通路４１を開閉するスプール式アン
ロードバルブ４２と、アンロードバルブ４２の駆動圧を
制御する電磁弁４３等を備える。

【００２８】図５に示すように、アンロードバルブ４２
は、シャトルバルブ（高圧選択弁）４４を介して各リリ
ーフバルブ３１の背後室３６に連通するポート４５と、
チャージ通路１３が接続されるポート４６と、両ポート
４５と４６の連通、遮断を切り換えるスプール４７と、
リターンスプリング４８に抗してスプール４７を連通ポ
ジションに切り換えるプランジャ４９と、スプール４７
を遮断ポジションに保持するリターンスプリング４８
と、プランジャ４９をスプール４７に押し付けるスプリ
ング５０等を備える。プランジャ４９の背後室５２はポ
ート５３を介してタンク１６に連通し、プランジャ４９
の高圧室５４はポート５５を介して電磁弁４３に連通す
る。アンロードバルブ４２は、高圧室５４に電磁弁４３
からチャージ圧が導かれることにより、プランジャ４９
がリターンスプリング４８に抗してスプール４７をポー
ト４５と４６を連通するポジションに切り換えて、アン
ロード通路４１を開通させる。

【００２９】図６に示すように、電磁弁４３は通路４７
を介してアンロードバルブ４２の駆動圧室５４に連通す
るポート５７と、通路５８を介してタンク１６に連通す
るポート５９と、チャージ通路１３が接続されるポート
６０と、ポート５７に連通するポート５９と６０の開口
面積を変化させるスプール６１と、スプール６１を駆動
するソレノイド６２等を備えて、ポート５７に導かれる
圧力を制御する圧力制御弁である。なお、電磁弁４３は
スプール６１の摺動位置によってポート５７がポート５
９と６０に選択的に連通するＯＮ・ＯＦＦ切換弁を用い
てもよい。

【００３０】エンスト予測手段として、ブレーキペダル
６５の踏み込み量が所定値を越えるとＯＮになるリミッ
トスイッチ６６を備える。

【００３１】ブレーキペダル６５は車輪２３を制動する
図示しないブレーキ装置の作動を操作するもので、その
踏み込み量に応じて制動力が発生するようになってい
る。

【００３２】リミットスイッチ６６がＯＮになるブレー
キペダル６５の踏み込み量は、サーボ機構６を介して斜
板２５を中立位置に戻す作動が遅れてエンストを起こす
可能性がある急制動時を検出するように設定される。

【００３３】エンスト防止制御手段として、コントロー
ラ１０はリミットスイッチ６６がＯＮになった場合に、
電磁弁４３を通電してアンロード通路４１を開通させる
ポジションに切り換える制御を行う。

【００３４】以上のように構成されて、次に作用につい
て説明する。

【００３５】通常走行時に、コントローラ１０は、アク
セルペダル等の操作量に応じて、エンジン５にスロット
ル開度指令信号ＳＯｒを出力してエンジン５の発生出力
を調節するとともに、サーボ機構６に斜板角度指令信号
ＸＰｒを出力してＨＳＴ２０の変速比を調節することに
より、車速を制御する。

【００３６】エンストを起こす可能性がある急制動時
に、ブレーキペダル６５の踏み込み量が所定値を越える
のに伴ってリミットスイッチ６６がＯＮになると、コン
トローラ１０は電磁弁４３を通電してアンロード通路４
１を開通させる。これにより、アンロード通路４１はシ
ャトルバルブ４４を介して各リリーフバルブ３１のうち
高圧が導かれる方の背後室３３にチャージ圧が導かれ、
背後室３６の圧力がメイン通路３または４より低下し、
各リリーフバルブ３１が即座に開弁する。こうして急制
動時にサーボ機構６を介して斜板２５の傾転角度を中立
位置に戻す動きが遅れても、リリーフバルブ３１が強制
的に開弁されることにより、メイン通路３または４の圧
力上昇が抑えられ、エンジンの負荷が過大になってエン
ストが起きることを防止できる。

【００３７】パイロット式のリリーフバルブ３１にポン
プ吐出圧の圧力上昇を抑えて各機器の破損を防止するリ
リーフ機能と、エンジンストール域にポンプ吐出圧を逃
がしてエンストを防止するアンロード機能の両方を持た
せることにより、これらの油圧回路を構成する部品数を
削減して構造の簡素化がはかれる。

【００３８】なお、エンジンストール域にポンプ吐出圧
を逃がすバルブを、リリーフバルブ３１と独立して設け
てもよい。

【００３９】コントローラ１０は、エンスト予測手段と
して、エンジン回転数センサ７から送られるエンジン回
転数信号ＮＥが所定値を越えて低下する運転状態をエン
ジンストール域と判定してもよい。

【００４０】また、実際のエンジン回転数ＮＥとエンジ
ン５への出力指令信号に応じて予め設定された目標のエ
ンジン回転数ＮＥＭの偏差が所定値を超えて大きくなる
運転状態を、エンジンストール域と判定してもよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用されるＨＳＴのシステム図。

【図２】同じくＨＳＴの油圧回路図。

【図３】本発明の実施の形態を示すＨＳＴのシステム
図。

【図４】同じくリリーフバルブ等の断面図。

【図５】同じくアンロードバルブの断面図。

【図６】同じく電磁弁の断面図。

【符号の説明】

１ 油圧ポンプ ２ 油圧モータ ３ メイン通路 ４ メイン通路 ５ エンジン ６ サーボ機構 ７ エンジン回転数センサ ９ 各種設定器 １０ コントローラ ３１ リリーフバルブ ４１ アンロード通路 ４２ アンロードバルブ ４３ 電磁弁 ６５ ブレーキペダル ６６ リミットスイッチ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジンに駆動される油圧ポンプと、 前記油圧ポンプから吐出される作動油により回転して車
   輪を駆動する油圧モータとを備え、 前記油圧ポンプから前記油圧モータへ供給される作動油
   量を可変制御して油圧モータの回転速度を変化させるＨ
   ＳＴ車両において、 前記油圧ポンプの吐出圧を逃がすアンロード手段と、 前記エンジンの負荷が過大になってエンストを起こす可
   能性があるエンジンストール域を検出するエンスト予測
   手段と、 前記エンジンストール域を検出した場合に前記アンロー
   ド手段を介して前記油圧ポンプの吐出圧を逃がしてエン
   ストを防止する制御手段と、 を備えたことを特徴とするＨＳＴ車両のエンスト防止装
   置。
2. 【請求項２】前記エンスト予測手段としてブレーキペダ
   ルの踏み込み量が所定値を越えることを検出するリミッ
   トスイッチを備えたことを特徴とする請求項１に記載の
   ＨＳＴ車両のエンスト防止装置。
3. 【請求項３】前記エンスト予測手段はエンジン回転数に
   応じてエンジンストール域を判定することを特徴とする
   請求項１に記載のＨＳＴ車両のエンスト防止装置。
4. 【請求項４】前記アンロード手段として、 前記油圧ポンプの吐出圧を逃がすパイロット式リリーフ
   バルブと、 前記リリーフバルブを閉弁方向に付勢する圧力を逃がす
   アンロードバルブと、 を備えたことを特徴とする請求項１から３のいずれか一
   つに記載のＨＳＴ車両のエンスト防止装置。