JP7187652B2 - ニオブ酸水溶液 - Google Patents

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Description

本発明は、ニオブ乃至ニオブ酸を含有する水溶液(「ニオブ酸水溶液」とも称する)に関する。
ニオブは、それ自体は銀白色であるが、表面に不動態酸化被膜を作ると、美しい七色に輝く特性を有している。また、比較的軽量で、且つ、多くの化学物質に対して耐性も有している。また、融点が高く(468℃)、蒸気圧が低く、弾性率が高く、熱安定性が高く、熱膨張率が低く、あらゆる元素の中で最高の超伝導転移温度を有している。さらに、低温でも容易に成形できる上、生体適合性が高いという特性も有している。
このようにニオブは様々な特性を有しているため、ニオブ乃至ニオブ酸の用途は多岐にわたっている。例えば、コイン投入口、コーティング用耐食性蒸着ボート、ダイヤモンド製造のるつぼ、インプラント材料、超伝導ケーブルや磁石の材料などに利用されている。最近では、ニオブ酸リチウムの単結晶が非線形光学材料として利用され、ニオブ酸カリウムが非鉛系圧電セラミクスの候補として研究開発され、ニオブ酸が固体酸性を示すことから、触媒としての研究もなされている。
このようなニオブ乃至ニオブ酸を溶液化することができれば、コーティングによって様々な材料に上記特性を付加することができ、ニオブ乃至ニオブ酸の用途をさらに広げることができる。しかし、ニオブ乃至ニオブ酸を、水や酸等を用いて溶液化させることは容易なことではなかった。
従来から、ニオブ溶液を製造する方法としては、ニオブ粉末や酸化ニオブを出発原料として、フッ化水素酸により溶解処理したり、二硫酸カリウム等を添加して溶融処理したりすることが実施されている程度であった。
ニオブ乃至ニオブ酸を含有する溶液に関する発明として、例えば特許文献1において、出発原料として塩化ニオブを用い、該塩化ニオブを蒸留により精製し、次いで、塩化物を含まない形態の結晶を得た後、該結晶を溶解して溶液化することで、不純物の少ない高純度のニオブ溶液を得る方法が開示されている。具体的には、塩化ニオブを塩素ガスの存在下で蒸留し、ナトリウム、アルミニウム、タンタル及び鉄を実質的に含有しない塩化ニオブを得る工程、得られた塩化ニオブと水とを混合してニオブ酸を含有するスラリーを得る工程、得られたスラリーから固形分を分離した後、当該固形分を水で洗浄する工程、洗浄後の固形分を0~50℃の温度条件下にて乾燥する工程、及び乾燥後の固形分と、錯化剤を含有する水溶液と、を混合する工程を備えることを特徴とする高純度ニオブ溶液の製造方法が開示されている。
特許文献2は、複雑なシュウ酸錯化塩を合成し、常温(20℃)で5.2Nb%(Nb25で7.4%)水へ溶解する水溶性Nbを開示している。すなわち、新規なニオブ化合物として、アンモニウム(ビスアクオオキソビスオキサラト)ニオベート(NH4)[Nb(O)(C242(H2O)2]およびその水和物を開示すると共に、その製造方法として、水酸化ニオブとシュウ酸とを水中に溶解する工程、アンモニアを添加する工程、反応混合物を冷却する工程を有する製造方法を開示している。
また、特許文献3は、微粒化したニオブ酸化合物を水へ分散させたニオブゾルを開示している。すなわち、100℃で10時間乾燥させたときのアンモニアとニオブ酸が、NH3/Nb25(モル比)=0.5~1.5の範囲で、実質的に有機酸を含まないニオブ酸アンモニウムゾルを開示すると共に、その製造方法として、フッ酸、又は、フッ酸と硫酸の混酸にニオブ化合物を溶解させた水溶液と、アンモニア水溶液とを、pHを8以上に維持しつつ混合、反応させてニオブ酸アンモニウムの微粒子を含有する分散液を得、該分散液をろ過洗浄する工程を有する製造方法を開示している。
また、特許文献4は、ニオブ酸アンモニウムゾルをアミン化合物の存在下で加熱してアンモニアを除去するか、若しくは、無機酸を混合したニオブ酸アンモニウムゾルを洗浄してアンモニアを除去した後、アミン化合物の存在下で加熱する工程を含むニオブ酸ゾルの製造方法を開示している。
特開2012-87085号公報 特表2009-509985号公報(特許第5222143号) 特開2011-190115号公報(特許第5441264号) 特開2015-81220号公報
水を用いてニオブ乃至ニオブ酸を溶解して水溶液とすることができれば、工業的に有用である。従来は、例えば前記特許文献3に開示されているようなゾル状態のもの、若しくは、ニオブ乃至ニオブ酸の水溶液と言っても、前記特許文献2に開示されているようにシュウ酸などでニオブ乃至ニオブ酸を錯体化させたものであった。しかし、錯化させるために用いるシュウ酸などがニオブの純度を下げてしまう問題があった。
本発明の目的は、水への分散性が高く、水に対する溶解性が良好なニオブ酸水溶液並びにその製造方法を提供することにある。
本発明は、ニオブをNb25換算で0.1~40質量%含有し、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定において1.0nm以上の粒子が検出されないことを特徴とするニオブ酸水溶液を提案する。
本発明はまた、下記3工程を有することを特徴とするニオブ酸水溶液の製造方法を提案する。
(1)ニオブをNb25換算で1~100g/L含有するフッ化ニオブ水溶液を、アンモニア濃度10~30質量%のアンモニア水溶液に添加して反応させニオブ含有沈殿物を得る工程
(2)前記工程で得られたニオブ含有沈殿物からフッ素を除去する工程
(3)フッ素除去して得られたニオブ含有沈殿物をスラリーとし、アミン及びアンモニアから選択される少なくとも1種を添加して反応させる工程
本発明が提案するニオブ酸水溶液は、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定において1.0nm以上の粒子が検出されない水溶液であるから、少なくとも、水への分散性が高く、水に対する溶解性が良好である。
そして、本発明が提案するニオブ酸水溶液は、このようにニオブ酸が水に溶解して、ニオブ乃至ニオブ酸が粒子として存在しない水溶液であるから、光の反射乃至散乱が少なくて光学特性が高いばかりではなく、ニオブ乃至ニオブ酸としての反応性を高めることができる。
実施例4で得られたニオブ酸水溶液を用いて、NaOHとの反応性試験を行って得られた沈殿物のXRDパターンである。 比較例3で得られたニオブ酸水溶液を用いて、NaOHとの反応性試験を行って得られた沈殿物のXRDパターンである。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本ニオブ酸水溶液>
本発明の実施形態の一例に係るニオブ酸水溶液(「本ニオブ酸水溶液」)は、ニオブ乃至ニオブ酸を含有し、且つ、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定において1.0nm以上の粒子が検出されない溶液である。
本ニオブ酸水溶液は、ニオブ乃至ニオブ酸を含有していることは確認できているが、それがどのような状態で存在しているかについては調査中である。ただし、技術的に証明できている訳ではないが、本ニオブ酸水溶液においてニオブ酸は、アミン乃至アンモニアとイオン結合した状態のイオンとして水中に存在しているものと推測することができる。
本ニオブ酸水溶液には、陰イオンとして水酸化物イオンは存在する一方、フッ化物イオンおよび塩化物イオンなどのハロゲン化物イオンはほとんど存在せず、アミン乃至アンモニアは陽イオンとして存在すると考えられるため、ニオブはNbOのような陰イオンとして存在していると考えられる。
本ニオブ酸水溶液は、ニオブをNb25換算で0.1~40質量%含有するのが好ましく、中でも0.5質量%以上、その中でも1質量%以上の割合で含有するのがさらに好ましい一方、中でも30質量%以下、その中でも20質量%以下の割合で含有するのがさらに好ましい。
なお、本ニオブ酸水溶液におけるニオブ乃至ニオブ酸は、必ずしもNb25状態で存在するものではない。ニオブ乃至ニオブ酸の含有量を、Nb25換算で示しているのは、Nb濃度を示す際の慣例に基づくものである。
本ニオブ酸水溶液は、アミン及びアンモニアから選択される少なくとも1種に由来する成分を含有するのが好ましい。
技術的に証明できている訳ではないが、アミン又はアンモニアがニオブ酸とイオン結合することで、水に対する溶解性を高めることができるものと推察することができる。
本ニオブ酸水溶液は、動的光散乱法を用いて粒子径分布を測定した際、1.0nm以上の粒子が検出されない溶液であり、好ましくは0.6nm以上の粒子が検出されない溶液である。言い換えれば、完全に溶解している状態の溶液である。よって、当該溶液中のニオブ酸塩は全てが水溶性であり、明らかにゾルとは異なるものである。
なお、本発明では、ニオブ酸を含有しており、且つ、動的光散乱法で測定した際、1.0nm以上の粒子が検出されない状態の液を「ニオブ酸水溶液」と称する。
動的光散乱法とは、懸濁溶液などの溶液にレーザー光などの光を照射し、ブラウン運動する粒子群からの光散乱強度を測定し、その強度の時間的変動から粒子径と分布を求める方法である。この際、測定は、JIS Z 8828:2019「粒子径解析-動的光散乱法」に準拠して実施する。
本発明において「粒子径分布を測定した際、1.0nm以上の粒子が検出される」とは、動的光散乱法によって粒子径を測定した際、信頼できる値の粒子径を測定できる場合において、1.0nm以上の粒子が検出される場合を意味し、「1.0nm以上の粒子が検出されない」とは、動的光散乱法によって粒子径を測定した際、信頼できる測定値の粒子径が1.0nm未満であるか、若しくは、デタラメな数値が表示されるなど、信頼できる値の粒子径を測定できない場合を意味する。
例えばニオブ酸を含有するゾルの場合は、コロイド粒子が液体中に分散している状態であり、コロイド粒子の粒径は1.0nm以上であるから、粒子径分布を測定した際、1.0nm以上の粒子が検出されることになる。これに対し、ニオブ酸に由来する物質が水にイオンとなって溶解している場合には、動的光散乱法を用いて粒子径を測定した際、1.0nm以上の粒子は検出されないこととなる。
なお、上記動的光散乱法の測定条件に関しては、ニオブの濃度が濃い程、測定可能な粒子を含む可能性が高くなるため、Nb25換算で10.0質量%以上の濃度でニオブを含む状態に調整して測定するのが好ましい。
(その他の成分)
本ニオブ酸水溶液は、動的光散乱法を用いて粒子径分布を測定した際、1.0nm以上の粒子が検出されないという特徴を妨げなければ、ニオブ乃至ニオブ酸以外の成分を含有していてもよい。
(水酸化ナトリウム水溶液との反応性)
本ニオブ酸水溶液は、ニオブをNb25換算で10g当たり1g含有する濃度に調整したニオブ酸水溶液(25℃)20gに、3質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(25℃)20gを、1分間かけて攪拌しながら添加した後、液温5℃を20時間保持するように静置すると、Na8Nb619・13H2Oの沈殿が生成することを特徴とするものである。
よって、本ニオブ酸水溶液は、アルカリ金属塩との反応性が高く、上記のように水酸化ナトリウム水溶液と反応させると、Na8Nb619・13H2Oの沈殿が生成するものであると言うことができる。
通常、ニオブ酸水和物(Na8Nb619・13H2O)を得るためには、水酸化Nbと水酸化ナトリウム水溶液とを混合して80℃以上に加熱して反応させる必要があるなど、簡単に作成することは難しい。しかし、本ニオブ酸水溶液は、アルカリ金属塩との反応性が高いため、水酸化ナトリウム水溶液と混合して反応させて冷却するだけで、ニオブ酸水和物(Na8Nb619・13H2O)を得ることができる。
なお、生成した沈殿が、Na8Nb619・13H2Oの沈殿であることの確認は、例えば次のようなX線回折測定(XRD)による同定によって行うことができる。但し、この方法に限定するものではない。
すなわち、生成した前記沈殿を、下記条件にてX線回折測定により測定し、ICDDカードNo,00-014-0370のXRDパターンと照らし合わせて、Na8Nb619・13H2Oであるか否か同定することができる。
この際のX線回折測定条件は、次のようであればよい。
・装置:MiniFlexII(株式会社リガク製)
・測定範囲(2θ):5~90°
・サンプリング幅:0.02°
・スキャンスピード:2.0°/min
・X線:CuKα線
・電圧:30kV
・電流:15mA
・発散スリット:1.25°
・散乱スリット:1.25°
・受光スリット:0.3mm
<本製造方法>
次に、本ニオブ酸水溶液の好適な製造方法(「本製造方法」と称する)について説明する。
本製造方法の一例として、フッ化ニオブ水溶液を、所定濃度のアンモニア水溶液中に添加してニオブ含有沈殿物を得(「逆中和工程」と称する)、当該ニオブ含有沈殿物からフッ素を除去し(「F洗浄工程」と称する)、フッ素除去して得られたニオブ含有沈殿物をスラリーとし、アミン及びアンモニアから選択される少なくとも1種を添加して反応させて本ニオブ酸水溶液を得る(「水溶化工程」と称する)という製造方法を挙げることができる。但し、本ニオブ酸水溶液の製造方法は、このような製造方法に限定されるものではない。
本製造方法は、上記工程を備えていれば、他の工程若しくは他の処理を追加することは適宜可能である。
(逆中和工程)
逆中和工程では、フッ化ニオブ水溶液を、所定濃度のアンモニア水溶液中に添加してニオブ含有沈殿物を得るのが好ましい。すなわち、逆中和するのが好ましい。
アンモニア水溶液をフッ化ニオブ水溶液に添加して中和する正中和ではなく、フッ化ニオブ水溶液をアンモニア水溶に添加して中和する逆中和を行うことが好ましい。
逆中和することによって、ニオブ酸の構造が水に溶けやすい構造になると推測している。
フッ化ニオブ水溶液は、ニオブ乃至ニオブ酸化物をフッ酸(HF)と反応させてフッ化ニオブ(H2NbF7)とし、これを水に溶解して作製することができる。
そしてこのフッ化ニオブ水溶液は、水(例えば純水)を加えて、ニオブをNb25換算で1~100g/L含有するように調製するのが好ましい。この際、ニオブ濃度が1g/L以上であれば、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物になるので、フッ化ニオブ水溶液のニオブ濃度は、Nb25換算で1g/L以上であるがより好ましく、生産性を考えた場合、中でも10g/L以上、その中でも20g/L以上であるのがさらに好ましい。他方、ニオブ濃度が100g/L以下であれば、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物になるので、より確実に水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるがより好ましく、中でも80g/L以下、その中でも70g/L以下であるのがさらに好ましい。
フッ化ニオブ水溶液のpHは、ニオブ乃至ニオブ酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であるのが好ましく、中でも1以下であるのがさらに好ましい。
他方、上記アンモニア水溶液は、アンモニア濃度が10~30質量%であることが好ましい。
逆中和に用いるアンモニア水溶液のアンモニア濃度を10質量%以上とすることで、Nbが溶け残ることを無くし、ニオブ乃至ニオブ酸を水に完全に溶けるようにさせることができる。他方、アンモニア水溶液のアンモニア濃度が30質量%以下であれば、アンモニアの飽和水溶液付近だから好ましい。
かかる観点から、アンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%以上であるのが好ましく、中でも15質量%以上、中でも20質量%以上、その中でも25質量%以上であるのがさらに好ましい。他方、30質量%以下であるのが好ましく、中でも29質量%以下、その中でも28質量%以下であるのがさらに好ましい。
逆中和工程では、アンモニア水溶液に対するフッ化ニオブ水溶液の添加量(NH3/Nb25モル比)を95~500とするのが好ましく、中でも100以上或いは450以下、その中でも110以上或いは400以下とするのがさらに好ましい。
また、アンモニア水溶液に対するフッ化ニオブ水溶液の添加量(NH3/HFモル比)に関しては、アミンや薄いアンモニア水に溶けるニオブ酸化合物が生成する観点から、3.0以上とするのが好ましく、中でも4.0以上、その中でも5.0以上とするのがさらに好ましい。他方、コスト低減の観点からは、100以下とするのが好ましく、中でも50以下、その中でも40以下とするのがさらに好ましい。
なお、フッ化ニオブ水溶液及びアンモニア水溶液ともに常温でよい。
逆中和工程では、前記フッ化ニオブ水溶液を前記アンモニア水溶液に添加する際、1分以内に中和反応させるのが好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に前記フッ化ニオブ水溶液を加えるのではなく、例えば一気に投入するなど、1分以内の時間で投入して中和反応させるのが好ましい。
この際、前記フッ化ニオブ水溶液の添加時間は、1分以内とするのが好ましく、中でも30秒以内、その中でも10秒以内とするのがさらに好ましい。
(F洗浄工程)
前記中和反応で得られた液、すなわちニオブ含有沈殿物には、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去するのが好ましい。
フッ素化合物の除去方法は任意である。例えば、アンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法のほか、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。
F洗浄工程は、常温で行えばよく、それぞれの温度調整は特に必要ない。
(水溶化工程)
次に、前記工程でフッ素除去して得られたニオブ含有沈殿物をスラリーとし、このスラリーにアミン及びアンモニア水から選択される少なくとも1種を添加して反応させることによって、本ニオブ酸水溶液を得ることができる。
ニオブ含有沈殿物をスラリーとするためには、純水などの分散媒に加えて分散させればよい。
水溶化工程は、常温で行えばよく、それぞれの温度調整は特に必要ない。
添加するアミンは、アルキルアミン、コリン([(CHNCHCHOH])、水酸化コリン([(CHNCHCHOH]OH)などを好ましく例示することができる。
上記アルキルアミンとしては、アルキル基を1~4個有するものが使用可能である。アルキル基を2~4個有する場合、2~4個のアルキル基は全部同じものでもよいし、また、異なるなるものを含んでいてもよい。アルキルアミンのアルキル基としては、溶解性の観点から、アルキル基の炭素数1~6のものが好ましく、中でも4以下、その中でも3以下、さらにその中でも2以下のものが好ましい。
上記アルキルアミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、n-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、トリn-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、ジiso-プロピルアミン、トリiso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、ジiso-ブチルアミン、トリiso-ブチルアミンおよびtert-ブチルアミン、n-ペンタアミン、n-ヘキサアミンなどを挙げることができる。
中でも、溶解性の点からは、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミンおよび水酸化テトラエチルアンモニウムが好ましく、中でもメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウムがさらに好ましい。とりわけ、メチルアミンが最も好ましい。
アンモニア水を使用する場合は、溶解性の観点から、ニオブ含有沈殿物スラリー中のNH濃度が7質量%以下になるように添加するのが好ましく、6質量%以下になるように添加するのがさらに好ましく、5質量%以下になるように添加するのが特に好ましい。また、同様な観点から、ニオブ含有沈殿物スラリー中のNH濃度が0.2質量%以上になるように添加するのが好ましく、0.5質量%以上になるように添加するのがさらに好ましく、1質量%以上になるように添加するのが特に好ましい。
アミンを使用する場合は、溶解性の観点から、ニオブ含有沈殿物スラリー中のアミン濃度が15質量%以下になるように添加するのが好ましく、12質量%以下になるように添加するのがさらに好ましく、10質量%以下になるように添加するのが特に好ましい。また、同様な観点から、ニオブ含有沈殿物スラリー中のアミン濃度が0.5質量%以上になるように添加するのが好ましく、1.0質量%以上になるように添加するのがさらに好ましく、1.5質量%以上になるように添加するのが特に好ましい。
アミンを添加した後、必要に応じて攪拌して反応を促進するのが好ましい。
<用途>
本ニオブ酸水溶液は、例えば各種コーティング液として利用することができる。
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
本発明について、以下の実施例により更に説明する。但し、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液200mLを、アンモニア水(NH3濃度25質量%)1Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=177.9、NH3/HFモル比=12.2)、反応液(pH11)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後ジメチルアミン濃度7.2質量%になるように、50%ジメチルアミン水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で24.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを48時間攪拌して、ニオブ酸水溶液(サンプル)を得た。
ニオブ酸水溶液(サンプル)は、pH11だった。また、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定したところ、粒子径は測定できなかった。すなわち、粒子径1.0nm以上の粒子は検出されなかった。
(実施例2)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を1830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で50g/L含有する(Nb25=4.69質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液400mLを、アンモニア水(NH3濃度25質量%)1Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=177.9、NH3/HFモル比=12.2)、反応液(pH12)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後ジメチルアミン濃度2.0質量%になるように、50%ジメチルアミン水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを48時間攪拌して、ニオブ酸水溶液(サンプル)を得た。
ニオブ酸水溶液(サンプル)は、pH11だった。また、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定したところ、粒子径は測定できなかった。すなわち、粒子径1.0nm以上の粒子は検出されなかった。
(実施例3)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液200mLを、アンモニア水(NH3濃度25質量%)2Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=355.7、NH3/HFモル比=24.3)、反応液(pH11)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後ジメチルアミン濃度2.0質量%になるように、50%ジメチルアミン水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを48時間攪拌して、ニオブ酸水溶液(サンプル)を得た。
ニオブ酸水溶液(サンプル)は、pH11だった。また、(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定したところ、粒子径は測定できなかった。すなわち、粒子径1.0nm以上の粒子は検出されなかった。
(実施例4)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を9800mL添加することによって、ニオブをNb25換算で10.3g/L含有する(Nb25=1質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液2Lを、アンモニア水(NH3濃度25質量%)2Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=345.4、NH3/HFモル比=23.6)、反応液(pH12)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後メチルアミン濃度1.0質量%になるように、40%メチルアミン水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを48時間攪拌して、ニオブ酸水溶液(サンプル)を得た。
ニオブ酸水溶液(サンプル)は、pH11だった。また、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定したところ、粒子径は測定できなかった。すなわち、粒子径1.0nm以上の粒子は検出されなかった。
(実施例5)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液200mLを、アンモニア水(NH3濃度25質量%)2Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=355.7、NH3/HFモル比=24.3)、反応液(pH11)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後トリエチルアミン濃度3.0質量%になるように、>99%トリエチルアミン水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを20日間撹拌して、ニオブ酸水溶液(サンプル)を得た。
ニオブ酸水溶液(サンプル)は、pH11だった。また、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定したところ、粒子径は測定できなかった。すなわち、粒子径1.0nm以上の粒子は検出されなかった。
(実施例6)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液200mLを、アンモニア水(NH3濃度25質量%)2Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=355.7、NH3/HFモル比=24.3)、反応液(pH11)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ25%アンモニア水と純水を添加し、Nb25固形分濃度で1.5質量%、アンモニア濃度2.5質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを、48時間攪拌して、ニオブ酸水溶液(サンプル)を得た。
ニオブ酸水溶液(サンプル)は、pH11だった。また、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定したところ、粒子径は測定できなかった。すなわち、粒子径1.0nm以上の粒子は検出されなかった。
(実施例7)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液200mLを、アンモニア水(NH3濃度25質量%)2Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=355.7、NH3/HFモル比=24.3)、反応液(pH11)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)濃度10.0質量%になるように、25%TMAH水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを5日間撹拌して、ニオブ酸水溶液(サンプル)を得た。
ニオブ酸水溶液(サンプル)は、pH11だった。また、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定したところ、粒子径は測定できなかった。すなわち、粒子径1.0nm以上の粒子は検出されなかった。
(実施例8)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液200mLを、アンモニア水(NH3濃度25質量%)2Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=355.7、NH3/HFモル比=24.3)、反応液(pH11)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後コリン濃度10.0質量%になるように、50%コリン水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを5日間撹拌して、ニオブ酸水溶液(サンプル)を得た。
ニオブ酸水溶液(サンプル)は、pH11だった。また、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定したところ、粒子径は測定できなかった。すなわち、粒子径1.0nm以上の粒子は検出されなかった。
(実施例9)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液200mLを、アンモニア水(NH3濃度25質量%)2Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=355.7、NH3/HFモル比=24.3)、反応液(pH11)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後トリメチルアミン濃度10.0質量%になるように、27%トリメチルアミン水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを5日間撹拌して、ニオブ酸水溶液(サンプル)を得た。
ニオブ酸水溶液(サンプル)は、pH11だった。また、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定したところ、粒子径は測定できなかった。すなわち、粒子径1.0nm以上の粒子は検出されなかった。
(比較例1)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液200mLへ、アンモニア水(NH3濃度25質量%)200mLを、60分間かけて添加して(NH3/Nb25モル比=355.7、NH3/HFモル比=24.3)、反応液(pH11)を得た(正中和)。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、5Cろ紙を用いヌッチェろ過により、フリーフッ素量が100ppm以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後ジメチルアミン濃度2.0質量%になるように、50%ジメチルアミン水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを48時間攪拌したが、得られた液に透明性はなく、白濁したスラリーであった。
このスラリーは、pH11だった。また、この溶液を100倍に純水で希釈し、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ含有液(サンプル)の粒子径を測定したところ、体積平均粒径は282nmだった。
(比較例2)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液80mLを、アンモニア水(NH3濃度5質量%)390mLに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=34.7、NH3/HFモル比=2.4)、反応液(pH9)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、前記反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、フリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーに、ジメチルアミン濃度2.0質量%になるように、50%ジメチルアミン水溶液を添加し、48時間攪拌した。得られた液に透明性はなく、白濁したスラリーであった。
このスラリーは、pH11だった。また、この溶液を100倍に純水で希釈し、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ含有液(サンプル)の粒子径を測定したところ、体積平均粒径290nmだった。
(比較例3)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を19600mL添加することによって、ニオブをNb25換算で5.1g/L含有する(Nb25=0.5質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。
このフッ化ニオブ水溶液9Lをアンモニア水(NH3濃度1質量%)5Lへ60分間かけて添加して(NH3/Nb25モル比=15.5、NH3/HFモル比=1.1)、反応液(pH8)を得た(逆中和)。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
次に、このスラリーをろ過装置(マイクローザUF:型式ACP-0013D;旭化成(株)製)を用いてスラリーのフリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄してフッ素除去したニオブ含有沈殿を得た。
次に、前記フッ素除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb25濃度を算出した。スラリーへ純水を添加し、その後ジメチルアミン濃度2.0質量%になるように、50%ジメチルアミン水溶液を添加して、Nb25固形分濃度で10.0質量%のスラリーに調製した。
このスラリーを48時間攪拌した。得られた液に透明性はなく、白濁したスラリーであった。
このスラリーは、pH11だった。また、この溶液を100倍に純水で希釈し、動的光散乱法(ELSZ-2000S_大塚電子製)によりニオブ含有液(サンプル)の粒子径を測定したところ、体積平均粒径が293nmだった。
<動的光散乱法測定>
動的光散乱粒度分布測定装置ELSZ-2000S(大塚電子製)を用いて、実施例・比較例で得たニオブ酸水溶液(サンプル)の粒子径を測定した。
なお、使用した動的光散乱粒度分布測定装置の検出限界は0.6nmであったため、測定不能であった場合、表には「<0.6nm」と示した。
また、1.0nm以上の粒子が検出された場合、コロイド粒子「有り」と判断し、1.0nm以上の粒子が検出されなかった場合、コロイド粒子「無し」と判断した。
Figure 0007187652000001
(考察)
実施例1~9で得たニオブ酸水溶液(サンプル)は、動的光散乱法を用いて粒子径を測定した際に少なくとも1.0nm以上の粒子が検出されないものであった。つまり完全溶解しているものであり、少なくともコロイド粒子乃至コロイド粒子よりも大きな粒子を含まないものであることが分かった。よって、実施例1~9で得たニオブ酸水溶液(サンプル)は、ニオブ酸アンモニウムゾルよりも水への分散性が高く、ニオブ酸錯化塩よりも水に対する溶解性が良好である。
<NaOHとの反応性試験>
実施例1-9で得られた各ニオブ酸水溶液(サンプル)のニオブ濃水度がNb25換算で10質量%より高濃度の場合には、純水を加えてニオブ濃度をNb25換算10質量%に希釈し、希釈後のニオブ酸水溶液を反応性試験の試験サンプルとした。他方、ニオブ酸水溶液(サンプル)のニオブ濃度がNb25換算で10質量%以下の場合は、純水による希釈は行わず、そのまま反応性試験の試験サンプルとした。
反応性試験の試験サンプルとしてのニオブ酸水溶液20g(Nb25換算2g)に、3質量%NaOH水溶液(25℃)20gを1分間かけてゆっくり添加しながらマグネティックスターラーにて撹拌したところ、やや白濁した液(25℃)が得られた。この白濁した液(25℃)を冷却器内において、液温5℃を20時間保持するように静置したところ沈殿が生成した。この生成した沈殿を5Cろ紙にてヌッチェろ過し、純水で洗浄した後、真空乾燥炉内において60℃(設定温度)に加熱して15時間真空乾燥させた。乾燥した沈殿をメノウ乳鉢にて粉砕し、得られた粉体についてX線回折測定を実施した。
実施例1-9のいずれで得られたニオブ酸水溶液(サンプル)についても、X線回折測定結果(XRDパターン)から、この沈殿は、ICDDカードNo,00-014-0370のNaNb19・13HOからなるものであると同定された。なお、図1に、実施例4のXRDパターンを代表図として示した。
他方、比較例1~3のニオブ含有液(サンプル)についても同様の試験を実施したが、沈殿は非晶質であり、ICDDカードNo,00-014-0370のNaNb19・13HOとは同定されなかった。なお、図2に、比較例3のXRDパターンを代表図として示した。

Claims (9)

  1. ニオブをNb25換算で0.1~40質量%含有し、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定において1.0nm以上の粒子が検出されず、pHが11であることを特徴とするニオブ酸水溶液。
  2. 動的光散乱法を用いた粒子径分布測定において0.6nm以上の粒子が検出されないことを特徴とする、請求項1に記載のニオブ酸水溶液。
  3. 少なくとも次の(1)~(4)のいずれかを満足し、かつ、ニオブをNb25換算で10g当たり1g含有する濃度に調整したニオブ酸水溶液(25℃)20gに、3質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(25℃)20gを、1分間かけて攪拌しながら添加した後、液温5℃を20時間保持するように静置すると、Na8Nb619・13H2Oの沈殿が生成することを特徴とする、ニオブ酸水溶液。
    (1)ニオブをNb 2 5 換算で0.1~40質量%含有する水溶液である。
    (2)動的光散乱法を用いた粒子径分布測定において1.0nm以上の粒子が検出されない水溶液である。
    (3)アミン及びアンモニアから選択される少なくとも1種に由来する成分を含有する水溶液である。
    (4)pHが11の水溶液である。
  4. 動的光散乱法を用いた粒子径分布測定において0.6nm以上の粒子が検出されないことを特徴とする、請求項3に記載のニオブ酸水溶液。
  5. 請求項1~4の何れか一項に記載のニオブ酸水溶液を用いた、ニオブ酸とアルカリ金属塩との反応物の製造方法。
  6. 請求項1~4の何れか一項に記載のニオブ酸水溶液と、アルカリ金属塩またはその水溶液とを、加熱することなく混合して反応させて冷却することを特徴とする、ニオブ酸とアルカリ金属塩との反応物の製造方法。
  7. 請求項1~4の何れか一項に記載のニオブ酸水溶液を含む、コーティング液。
  8. 請求項1~4の何れか一項に記載のニオブ酸水溶液をコーティングしてなるコーティング物。
  9. 請求項1~4の何れか一項に記載のニオブ酸水溶液を用いた、ニオブ酸化合物のコーティング方法。
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