以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
(第1実施形態)
第1実施形態に係るスイッチング電源は、入力電源電圧Vinに対して非常に低い電圧の出力電源電圧Voutを安定して出力することができるという特徴を有する。その主要な構成は、鋸波信号が鋸波底部電位を超えるタイミングと、パルス幅指示電圧信号の電位を超えるタイミングとを、2つのコンパレータによりそれぞれ検出し、これらの2つのタイミング差に基づきパルス幅変調矩形波信号を生成することにより、そのパルス幅変調矩形波信号のパルス幅をフリップフロップの応答速度のオーダーまで縮小することを可能とするというものである。より詳しく、以下に説明する。
図1は、第1実施形態に係るスイッチング電源100の構成例を示す図である。スイッチング電源100は、入力電源から供給される入力電源電圧Vinを制御して、出力電源電圧端子VOUTから出力電源電圧Voutを出力する装置である。本実施形態に係るスイッチング電源100の入力電源電圧Vinと出力電源電圧Voutとの比である降圧比は、例えば10分の1以下となる高い降圧比を有する。
スイッチング電源100は、パルス幅変調器(PWM)1(以下、PWM1と記す場合がある)と、スイッチングドライバ2と、LCローパスフィルタ3と、分圧器4と、基準電圧源5と、エラーアンプ6と、位相補償器(PCMP)7(以下では、PCMP7と記す場合がある)と、クロック発振器(CLK)8(以下では、CLK8と記す場合がある)と、高直線性鋸波発生器9(以下では、鋸波発生器9と記す場合がある)と、鋸波底部電位参照電圧源10とを、備える。高直線性鋸波発生器9は、鋸波電圧検出器90と、鋸波リセット制御回路91と、鋸波発生器92とを、有する。図1には更に、クロック信号Clk、底部電位(ボトム電位)Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、高直線性鋸波信号Saw、フィードバック信号Fb、基準電圧Vref、エラー信号Err、デューティ指示電圧信号Vd、鋸波リセット信号Rst、スイッチング信号Sw、パルス幅変調矩形波信号Pwmpが図示される。なお、本実施形態に係る矩形波信号生成回路200は、パルス幅変調器1と高直線性鋸波発生器9とで構成される。
PWM1には、デューティ指示電圧信号Vd、高直線性鋸波信号Saw、および鋸波同期クロック信号Clkxが入力され、鋸波同期クロック信号Clkxに同期したパルス幅変調矩形波Pwmpを出力する。高直線性鋸波信号Sawは、底部電位Vbtmより高い電位の範囲で高い直線性を有する高直線性の鋸波である。換言すると、底部電位Vbtmは、高直線性鋸波信号Sawの線形特性に基づき設定される。
パルス幅変調矩形波Pwmpは、矩形波である。すなわち、このPWM1は、鋸波同期クロック信号ClkxがHiになるタイミングでパルス幅変調矩形波PwmpをHiにセットし、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位より高くなる瞬間にパルス幅変調矩形波PwmpをLowにリセットする。より詳細な構成は後述(図3)する。なお、本実施形態では、高電位を「Hi」と記し、低電位を「Low」と記すこととする。なお、本実施形態では、鋸波同期クロック信号ClkxがHiになる時点が第1タイミングに対応し、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位より高くなる時点が第2タイミングに対応する。
スイッチングドライバ2は、パルス幅変調信号PwmpをPWM1から入力し、パルス幅変調信号PwmpがHiのときに入力電源とLCローパスフィルタ3とを低抵抗で接続する。一方で、パルス幅変調信号PwmpがLowのときに接地電源とLCローパスフィルタ3とを低抵抗で接続する。すなわち、スイッチングドライバ2は、パルス幅変調矩形波Pwmに基づいて、パルス状波形のスイッチング信号SwをLCローパスフィルタ3に出力する。このように、パルス幅変調信号PwmpのHi期間は、スイッチングドライバ2におけるスイッチング動作のオン時間に対応する。これにより、パルス幅変調信号PwmpのHi期間が短くなるに従い出力電源電圧Voutは低下する。なお、本実施形態に係るスイッチングドライバ2がスイッチング回路部に対応する。
LCローパスフィルタ3は、インダクタ31と平滑キャパシタ32とにより構成される。インダクタ31は一方の端子がスイッチングドライバ2に接続され、他方の端子が出力端子VOUTおよび平滑キャパシタ32の一端に接続される。平滑キャパシタ32の他端は接地電源に接続される。これにより、供給される電位は、平滑キャパシタ32により平滑され、出力電源電圧Voutとして出力される。このように、LCローパスフィルタ3は、スイッチング信号Swを直流に変換して出力電源電圧Voutを出力する。なお、本実施形態に係るLCローパスフィルタ3が平滑回路部に対応する。
分圧器4は、出力電源電圧Voutを分圧し、フィードバック信号Fbを生成する。
基準電圧源5は、基準電圧Vrefを出力する。
エラーアンプ6は、反転差動入力端子に分圧器4が接続され、非反転差動入力端子に基準電圧源5が接続される。すなわち、エラーアンプ6は、反転差動入力端子にフィードバック信号Fbを入力し、非反転差動入力端子に基準電圧Vrefを入力して、両者の電位差を増幅してエラー信号Errを出力する。
PCMP7は、入力端子にエラーアンプ6が接続され、出力端子にPWM1が接続される。これにより、PCMP7は、エラー信号Errを入力し、デューティ指示電圧信号Vdを出力する。なお、本実施形態に係る誤差増幅回路は、分圧器4と、エラーアンプ6と、PCMP7とで構成される。
クロック発振器8は、クロック信号Clkを生成する。クロック信号Clkは一定周期の矩形波信号である。
高直線性鋸波発生器9は、クロック信号Clkに同期した高直線性の鋸波信号Sawを発生する。
鋸波電圧検出器90は、非反転端子に鋸波発生器92が接続され、反転端子にボトム電源が接続される。これにより、鋸波電圧検出器90には、非反転端子に鋸波信号Sawが入力され、反転端子にボトム電源からの底部電位Vbtmが入力される。鋸波電圧検出器90は、鋸波信号Sawの電位が底部電位Vbtmよりも低下したことを検出して、鋸波同期クロック信号ClkxをLowにし、鋸波信号Sawの電位が底部電位Vbtm以上となったことを検出して、鋸波同期クロック信号ClkxをHiにする。鋸波電圧検出器90の詳細は後述する。
鋸波リセット制御回路91は、例えばフリップフロップである。クロック入力端子CKにはクロック信号Clkが入力され、負論理リセット端子Rには、鋸波同期クロック信号Clkxが入力される。鋸波リセット制御回路91は、クロック信号ClkがHiになる瞬間に、その入力端子Dの状態を内部に取り込み保存すると同時に、その状態を出力端子Qから鋸波リセット信号Rstとして出力する。入力端子Dには常にHiの信号が入力される。すなわち、出力端子Qから出力される鋸波リセット信号Rstは、クロック信号ClkがHiになる瞬間に、Hiとなる。一方、鋸波リセット制御回路91は、鋸波同期クロック信号ClkxがLowのとき、内部状態をLowにリセットし、その状態を鋸波リセット信号Rstとして出力する。すなわち、出力端子Qから出力される鋸波リセット信号Rstは、クロック信号ClkがHiになる瞬間に、Hiになり、鋸波同期クロック信号ClkxがLowになる瞬間に、LowとなるHiパルス幅の短い信号である。
鋸波発生器92には、鋸波リセット信号Rstが入力される。鋸波発生器92は、鋸波リセット信号RstがHiに遷移する瞬間に鋸波信号Sawの電位を0Vへ向けて急速に下降させる。その後、鋸波リセット信号RstがLowに遷移すると、鋸波発生器92は、鋸波信号Sawの電位を一定の速度で上昇させる。鋸波発生器92は、鋸波信号Sawを鋸波電圧検出器90の非反転入力端子、およびPWM1に出力する。鋸波発生器92の詳細な構成も後述する。
鋸波底部電位参照電圧源10(以下では、VBTM10と記す場合がある)のマイナス端子は接地電源に接続され、そのプラス端子は鋸波電圧検出器90の反転入力端子に接続される。鋸波底部電位参照電圧源10は本実施例では理想電源で表現されるが、一定電圧の鋸波ボトム電圧信号Vbtmを生成する電圧源であればどのような形式の回路であっても良い。
図2は、第1施形態に係るスイッチング電源100の動作波形図である。縦軸の上から順に、入力電源電圧Vin、出力電源電圧Vout、クロック信号Clk、高直線性鋸波信号Saw、デューティ指示電圧信号Vd、底部電位Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、パルス幅変調矩形波信号Pwmpを示す。横軸は時間である。
すなわち、最上段に実線で入力電源の入力電源電圧Vinを示し、破線で出力電源電圧Voutの電圧波形を示す。
次段にクロック信号Clkの波形を示す。クロック信号Clkは、上述のように一定周期でHiとなる矩形波信号である。
さらに、次段に実線で高直線性鋸波信号Sawを示し、破線でデューティ指示電圧信号Vdを示し、点線で高直線性鋸波信号Sawの底部電位Vbtmを示す。高直線性鋸波信号Sawは、クロック信号ClkがHiに遷移する瞬間に接地電位0Vにリセットされ、その直後から一定速度で電位が上昇する。高直線性鋸波信号Sawの電位が鋸波底部電位Vbtmを上回る交点を□印で示し、さらに、デューティ指示電圧信号Vdの電位を上回る交点を●印で示す。
次段に鋸波同期クロック信号Clkxを示す。鋸波同期クロック信号Clkxは高直線性鋸波信号Sawの電位が底部電位Vbtmより高いとき、つまり、□印のタイミングでHiになり、それ以外のとき、つまり、高直線性鋸波信号Sawの電位が鋸波底部電位Vbtmよりも低い場合にLowになる矩形波信号である。
最下段にパルス幅変調矩形波信号Pwmpを示す。パルス幅変調矩形波信号Pwmpは、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミングでHiになり、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位より高いときに(●印のタイミングで)Lowになる。
入力電源の入力電源電圧Vinは、出力電源電圧Voutの電圧に対して十倍を超える非常に高い状態から、ほぼ倍の電圧に至るまで変化している。一方、出力Voutの電圧は、分圧器4の抵抗分圧比と基準電圧源5が生成する参照電圧Vrefにより設定される一定電圧Voutに保たれている。
このとき、パルス幅変調矩形波信号PwmpのHiパルス幅デューティDは、フィードバック制御ループの働きにより、(1)式に表すように、入力電源電圧Vinに対する出力電源電圧Voutの比とほぼ等しくなる。
図2の波形図では、パルス幅変調矩形波信号PwmpのHiパルス幅デューティDは10%を下回る値からほぼ50%の値になるまで変化する。ここで、図2の波形図の左側、つまり、入力電源電圧Vinが出力電源電圧Voutに対して非常に高い場合に注目する。
最近のスイッチング電源100のスイッチング周波数は数百kHzから数MHzへと高くなる傾向にある。それに伴い、スイッチング動作のオン状態の時間は数十nsから数ns以下へと短くなる。スイッチング電源100では、出力電源電圧Voutの値は、スイッチングドライバ2におけるスイッチング動作のオン時間に応じて変更される。このため、入力電源電圧Vinが出力電源電圧Voutに対して非常に高いとき、スイッチングドライバ2における数ns以下のオン時間のスイッチング動作を安定して行うことができるかが重要となる。
鋸波信号Sawの電位上昇が始まった直後の直線性は、寄生容量などの影響により、良好とは言えない。図2に示す本実施例の鋸波信号Sawにおいても、底部電位Vbtmより下の領域では、その波形が鈍っており、電圧の上昇速度は一定ではない。しかし、本実施係るスイッチング電源100によれば、その部分の鋸波を使用せず、鋸波信号Sawの電位が底部電位Vbtmより高くなり、その直線性が充分に良くなった後に使用する。これにより、数ns以下の短いオン時間のスイッチング動作を安定して行うことが可能となる。
鋸波信号Sawの直線性が良い状態とは、鋸波信号の上昇タイミングと鋸波同期クロック信号ClkxのHi遷移タイミングが一致し、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移した後の鋸波信号Sawの電圧上昇速度が一定であることを意味する。本実施例では鋸波同期クロック信号ClkxのHi遷移タイミングと高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdを上回るタイミングの差を用いてパルス幅変調矩形波Pwmpを生成する。これにより、直線性が良好でない鋸波信号の範囲を隠ぺいして、非常に細いパルス幅変調矩形波Pwmpの生成制御を安定して行うことが可能となる。
直線性が悪い鋸波信号を用いてパルス幅変調矩形波Pwmpを生成すると、出力電源電圧Voutが不安定になる。たとえば、鋸波信号Sawの電位が上昇を開始する前に鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移すると、短時間のパルスが消失したり、一周期Hi状態に固着したりするなどの不具合が生じる。
また、鋸波信号Sawの上昇速度が一定でない場合、スイッチングパルス幅が周期的に変動するなどという不具合が生じる。
一方、その底部電位Vbtmの電圧精度とその上昇速度の精度はあまり重要ではない。鋸波信号Sawの底部電位Vbtmが想定の値から多少ずれていても、エラーアンプ6のエラー信号Errの電圧がフィードバック制御ループの働きにより自動的に調整され、出力電源電圧Voutに対する変動は抑制されるためである。
また、鋸波信号Sawの電圧の上昇速度が想定値から多少ずれていても、負荷変動に対する応答時間がそれに比例して変動するが、出力電源電圧Voutに現れる影響は軽微である。
図3は、高直線性鋸波発生器9とPWM1との詳細な構成例を示す図である。
高直線性鋸波発生器9の鋸波電圧検出器90は、鋸波底部電位検出コンパレータ98(以下では、コンパレータ98と呼ぶ場合がある)と、鋸波同期クロック遅延回路(delay)911と、を有する。また、鋸波発生器92は、鋸波充電用定電流源94と、鋸波電位上昇速度調整容量95と、鋸波信号リセット用N型MOSトランジスタ96とを有する。また、PWM1は、鋸波パルス幅指示電圧コンパレータ11(以下では、PWMコンパレータ11またはコンパレータ11と呼ぶ場合がある)とパルス生成用フリップフロップ12(以下では、フリップフロップ12と呼ぶ場合がある)とを有する。なお、本実施形態に係るパルス生成用フリップフロップ12が、第1パルス幅変調矩形波信号生成回路に対応し、本実施形態に係る鋸波底部電位検出コンパレータ98が第1検出器に対応し、本実施形態に係る鋸波パルス幅指示電圧コンパレータ11が第2検出器に対応する。
図3には更に、クロック信号Clk、底部電位(ボトム電位)Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、高直線性鋸波信号Saw、定電流Isaw、鋸波充電電流制御信号Sisaw、デューティ指示電圧信号Vd、鋸波リセット信号Rst、PWMリセット信号Rn、が図示される。なお、鋸波底部電位参照電圧源10、および鋸波電圧検出器90は、高直線性鋸波発生器9の外部に設けてもよい。
鋸波充電用定電流源94は、鋸波充電電流制御信号Sisawの制御を受けて、定電流Isawを出力する。鋸波電位上昇速度調整容量95の一方の端子に鋸波充電用定電流源94が接続され、他方の端子に接地電源が接続される。
鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ96は、鋸波リセット信号RstがHiのとき、ソース端子とドレイン端子間が導通状態となる。一方で、鋸波リセット信号RstがLowのとき、ソース端子とドレイン端子間が非導通状態となる。
鋸波同期クロック遅延回路(delay)911の出力の鋸波同期クロック信号ClkxがLowのとき、鋸波リセット信号RstがLowとなるので、容量値Csawの鋸波電位上昇速度調整容量95は、鋸波充電用定電流源94が流す充電電流Isawにより充電される。これにより、鋸波信号Sawの電位Vsawは(2)式に示すように一定の速度dVsaw/dtで上昇する。
鋸波リセット信号RstがHiのとき、鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ96は、鋸波電位上昇速度調整容量95を放電する。これにより、鋸波信号Sawの電位は接地電源電位0Vへ向けて急速に降下する。
鋸波底部電位検出コンパレータ98の反転入力端子に鋸波ボトム電圧信号Vbtmが入力され、その非反転入力端子に鋸波信号Sawが入力される。鋸波底部電位検出コンパレータ98の出力端子から鋸波同期クロック遅延回路911を介して、鋸波同期クロック出力信号Clkxが出力される。この鋸波底部電位検出コンパレータ98は、上述のように、鋸波信号Sawの電位が鋸波ボトム電圧信号Vbtmの電位Vbtmより低いとき、鋸波同期クロック信号ClkxをLowにし、それ以外のときHiにする。
鋸波リセット制御回路91は、上述のように、鋸波同期クロック信号ClkxがLowになるのを受けて、鋸波リセット信号RstをLowにする。つまり、鋸波同期クロック信号ClkxがLowになると、鋸波電位上昇速度調整容量95が放電され、その電位が鋸波底部電位Vbtmより低くなり、鋸波信号Sawの電位降下は自動的に停止する。ただし、鋸波底部電位検出コンパレータ98および、鋸波同期クロック遅延回路911で生じる遅延により、鋸波信号Sawの電位はほぼ接地電位0Vまで降下する。
PWMコンパレータ11の非反転入力端子にパルス幅指示電圧信号Vdが入力され、その反転入力端子に鋸波信号Sawが入力される。PWMコンパレータ11は、鋸波信号Sawの電位がパルス幅指示電圧信号Vdの電位より低いときに、その出力であるPWMリセット信号RnをHiにし、それ以外のときLowにする。すなわち、PWMリセット信号RnがLowに遷移するタイミングが第2タイミングに対応する。
パルス生成用フリップフロップ12のクロック入力端子CKには鋸波同期クロック信号Clkxが入力され、その負論理リセット端子RにはPWMコンパレータ11が出力するPWMリセット信号Rnが入力される。パルス生成用フリップフロップ12は、鋸波同期クロック信号ClkxがHiになる瞬間に、その入力端子Dの状態を内部に取り込み保存すると同時に、その状態を出力端子Qに出力する。入力端子Dには常にHiの信号が入力される。すなわち、鋸波同期クロック信号ClkxがHiになる瞬間に、出力端子Qから出力されるパルス幅変調矩形波信号PwmpはHiとなる。
一方、パルス生成用フリップフロップ12は、PWMリセット信号RnがLowのとき、内部状態をLowにリセットし、その状態を出力する。すなわち、出力端子Qから出力されるパルス幅変調矩形波信号PwmpはLowとなる。このように、パルス生成用フリップフロップ12は、鋸波底部電位検出コンパレータ98が検出する鋸波信号Sawの電位が鋸波ボトム電圧Vbtmの電位を超えるタイミングに応じた第1タイミングと、PWMコンパレータ11が検出する鋸波信号Sawの電位が第1パルス幅指示電圧信号Vdの電位を超えるタイミングに応じた第2タイミングとの時間差に基づくパルス幅変調矩形波信号Pwmpを生成する。
また、PWMリセット信号RnがLowのとき、パルス生成用フリップフロップ12はその内部状態をLowにリセットする。このリセット動作は非同期であり、前述の取り込み動作より優先する。つまり、パルス生成用フリップフロップ12は、パルス幅指示電圧信号Vdの電位が鋸波ボトム信号Vbtmの電位より低いとき、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移しても、これを無視して、パルス幅変調矩形波信号PwmpをLowに保持する。
一般的なスイッチング電源ではクロック信号とリセット信号を非同期RSラッチに入力して、パルス幅変調矩形波Pwmpを生成する。そのとき、クロック信号とリセット信号のタイミングが微妙にずれると、パルス幅変調矩形波Pwmpが生成されずに、逆に、一周期Hiに保持されるなどの不具合が生じる。
また、一般的なスイッチング電源では、一つのコンパレータにより、鋸波信号Sawの電位とパルス幅指示電圧信号Vdを比較し、パルス幅変調矩形波信号Pwmpを生成する。このため、コンパレータの応答速度には限界があり、入力信号の数十ns以下という一瞬の動作に応答できない。例えば、鋸波信号Sawの電位がパルス幅指示電圧信号Vdの電位より一瞬だけ低くなるような条件では、PWMコンパレータが応答できず、PWMリセット信号RnはLowに固着する。
このように、一般的なスイッチング電源では、パルス幅変調矩形波信号Pwmpの最小パルス幅はコンパレータの応答速度に制限されて数十nsとなる。それ以下のパルス幅のパルス幅変調矩形波信号Pwmpを出そうとすると、パルス幅変調矩形波信号PwmpはLowに固着する。これでは、安定した電圧の電源を出力することが困難となってしまう。
これに対して本実施形態に係るスイッチング電源100では、PWMコンパレータ11と鋸波底部電位検出コンパレータ98の2つのコンパレータを用いることにした。PWMコンパレータ11は、鋸波信号Sawの電位がパルス幅指示電圧信号Vdの電位を超えるタイミングを検出して、PWMリセット信号Rnを出力する。一方、鋸波底部電位検出コンパレータ98は、鋸波信号Sawの電位が底部電位Vbtmの電位を超えるタイミングを検出し、鋸波同期クロック信号Clkxを出力する。ここで、PWMリセット信号Rnと鋸波同期クロック信号Clkxの状態がスイッチングサイクル毎に必ず遷移することが特徴である。
また、PWMコンパレータ11と鋸波底部電位検出コンパレータ98に同じ特性の回路を用いることとした。より具体的には、PWMコンパレータ11と鋸波底部電位検出コンパレータ98とには、信号応答時間が同等な回路を用いる。これにより、鋸波底部電位検出コンパレータ98より生じる鋸波信号Sawの電位が鋸波ボトム信号Vbtmの電位を超えるタイミングを検出するときに生じる遅延と、PWMコンパレータ11により生じる鋸波信号Sawの電位がパルス幅指示電圧信号Vdの電位を超えるタイミングを検出するときに生じる遅延が等しくなる。このため、2つのタイミングの時間差を得ることにより2つの検出遅延を相殺することができる。特に、パルス幅指示電圧信号Vdの電位と鋸波ボトム信号Btmの電位がほぼ等しいとき、PWMリセット信号Rnと鋸波同期クロック信号Clkxのタイミング差は非常に小さくなるが、その非常に細いパルス幅のパルス幅変調矩形波信号Pwmpであっても(たとえ0.1ns以下のパルス幅でも)、生成可能となる。
このように、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのパルス幅の限界は、パルス生成用フリップフロップ12の応答速度により制限される。パルス生成用フリップフロップ12の信号応答時間は1ns未満であり、コンパレータに比べて数十倍速い。このため、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのパルス幅の限界は、コンパレータの信号応答時間に制限される一般的なスイッチング電源と比較し、数十分の1まで短縮される。
以上説明したように、本実施形態に係るスイッチング電源100は、鋸波底部電位検出コンパレータ98が鋸波信号Sawの電位が鋸波ボトム信号Vbtmの電位を超えるタイミングに応じた第1タイミングを検出し、PWMコンパレータ11が鋸波信号Sawの電位がパルス幅指示電圧信号Vdの電位を超えるタイミングに応じた第2タイミングを検出して、これらのタイミング差に基づき、パルス生成用フリップフロップ12がパルス幅変調矩形波信号Pwmpを生成することとした。これにより、鋸波信号Sawの直線性が安定した範囲を使用可能となると共に、これらのタイミング差に基づくパルス幅変調矩形波信号PwmpのHiパルスの幅をパルス生成用フリップフロップ12における応答速度オーダーの範囲まで安定して短縮できる。このように、短パルス幅の変調矩形波信号Pwmpを安定して生成することにより、出力電源電圧Voutが入力電源電圧Vinに対して10分の1以下という、高い降圧比の降圧用のスイッチング電源を提供することができる。
さらに、パルス幅指示電圧信号Vdの電位が鋸波ボトム信号Vbtmの電位より低いとき、パルス生成用フリップフロップ12は、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移しても無視して、パルス幅変調矩形波信号PwmpをLowに保持することとした。これにより、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのデューティは0となり、出力電源電圧Voutを0Vに保つことが可能となる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係るスイッチング電源100は、入力電源電圧Vinに対してほぼ等しくなるような高い電圧の出力電源電圧Voutを安定して出力することが可能な降圧スイッチング電源である。その主要な構成は以下のものである。高直線性鋸波生成回路9が互いの位相が180度異なるクロック信号Clkに対して倍周期の第1鋸波信号と第2鋸波信号とを生成し、コンパレータ11が、一方の鋸波信号に対してパルス幅指示電圧信号の電位Vdを超えるタイミングを検知し、コンパレータ98が、2つの鋸波信号を切り替えるタイミングとして、他方の鋸波信号に対して鋸波底部電位Vbtmを超えるタイミングを検知する。これにより、パルス幅変調矩形波信号Pwmpの最大幅を生成する際のLowパルス幅(電位Vdを超えるタイミングと2つの鋸波信号を切り替えるタイミングとの差)をフリップフロップ12における応答速度のオーダーまで安定して減少させようとしたものである。以下では、第1実施形態に係るスイッチング電源100と相違する点に関して説明する。
図4は、第2実施形態に係るスイッチング電源100の構成例を示す図である。第2実施形態に係るスイッチング電源100は、PWM1とスイッチングドライバ2と、LCローパスフィルタ3と、分圧器4と、基準電圧源5と、エラーアンプ6と、位相補償器7と、クロック発振器8と、高直線性鋸波発生器9と、を備える。
高直線性鋸波発生器9は、鋸波電圧検出器90aと、鋸波リセット制御回路91aと、第1鋸波発生器92aと、第2鋸波発生器92bと、鋸波選択器912とを有する。図4には更に、クロック信号Clk、鋸波同期クロック信号Clkx、第1鋸波信号Saw0、第2鋸波信号Saw1、第1鋸波リセット信号Rst0、第2鋸波リセット信号Rst1、高直線性鋸波信号Saw、デューティ指示電圧信号Vd、鋸波位相信号Phip、鋸波選択信号Phipx、第1鋸波リセット信号Rst0、第2鋸波リセット信号Rst1、スイッチング信号Sw、パルス幅変調矩形波信号Pwmp、基準電圧Vref、およびエラー信号Errが図示される。なお、本実施形態に係る第1鋸波発生器92aが、第1鋸波生成回路に対応し、第2鋸波発生器92bが第2鋸波生成回路に対応する。
鋸波電圧検出器90aは、鋸波同期クロック信号Clkxを出力する。鋸波同期クロック信号Clkxは、クロック信号Clkを分周して得られる鋸波位相信号Phipにより選択される第1鋸波信号Saw0、または第2鋸波信号Saw1の電位が鋸波底部電位Vbtmより高くなった瞬間にHiに遷移し、クロック信号ClkがHiに遷移する瞬間にLowに遷移する。また、鋸波電圧検出器90aは、鋸波選択信号Phipxを出力する。鋸波選択信号Phipxは、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミングでHi状態とLow状態とに交互に遷移する、クロック信号Clkに対して倍周期の矩形波信号となる。
鋸波リセット制御回路91aは、CLK8に接続され、クロック信号Clkを分周して得られる鋸波位相信号Phipと、第1鋸波リセット信号Rst0と、第1鋸波リセット信号Rst0に対して位相が180°遅れた第2鋸波リセット信号Rst1とを、生成する。
第1鋸波発生器92aは、第1鋸波リセット信号Rst0に基づき、クロック信号Clkの倍周期の第1鋸波信号Saw0を生成する。第2鋸波発生器92bは、第2鋸波リセット信号Rst1に基づき、第1鋸波信号Saw0に対して位相が180°遅れた第2鋸波信号Saw1を生成する。
鋸波選択器912は、鋸波選択信号Phipxの状態がLowのとき、第1鋸波信号Saw0を選択し、逆にHiのとき第2鋸波信号Saw1を選択して、高直線性鋸波信号Sawとして出力する。すなわち、鋸波選択器912は、高直線性鋸波信号Sawの電位が底部電位Vbtmの電位を超える第1タイミングにおいて第1鋸波信号Saw0および第2鋸波信号Saw1の線形の範囲を切り替えて選択して、クロック信号Clkと同じ周期の高直線性鋸波信号Sawを出力する。なお、本実施形態に係る鋸波選択器912が、第2選択器に対応する。
図5は、第2実施形態に係るスイッチング電源100の動作波形図である。縦軸の上から順に、入力電源電圧Vin、出力電源電圧Vout、クロック信号Clk、トップ電圧Vtop、高直線性鋸波信号Saw、デューティ指示電圧信号Vd、底部電位Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、パルス幅変調矩形波信号Pwmpを示す。横軸は時間である。
すなわち、最上段に実線で入力電源電圧Vinの電圧波形を示し、破線で出力電源電圧Voutの電圧波形を示す。次段にクロック信号Clkの波形を示す。
さらに、次段に、点線でトップ電圧Vtopを示し、実線で高直線性鋸波信号Sawを示し、破線でデューティ指示電圧信号Vdを示し、点線で高直線性鋸波信号Sawの底部電位Vbtmを示す。次段に、実線で鋸波同期クロック信号Clkxを示す。そして、最下段にパルス幅変調矩形波信号Pwmpを示す。
入力電源の入力電源電圧Vinは、出力電源電圧Voutに対して倍の電圧から、ほぼ同じ電圧になるまで変化する。一方、出力電源電圧Voutは、分圧器4の抵抗分圧比と基準電圧源5が生成する参照電圧Vrefにより設定される一定電圧Voutに保たれる。
ここで、パルス幅変調矩形波信号PwmpのHiパルス幅デューティDは、フィードバック制御ループの働きにより、(1)式に示すように、入力電源の入力電源電圧Vinに対する出力電源電圧Voutの比とほぼ等しくなる。したがって、パルス幅変調矩形波信号PwmpのHiパルス幅デューティDは例えば50%からほぼ100%まで変化する。
鋸波信号Sawの電圧は、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミングで鋸波トップ電位Vtopから底部電位Vbtmに瞬時にリセットされ、その直後から一定速度で上昇する。
入力電源電圧Vinが出力電源電圧Voutとほぼ等しくなるまで低下するときに、安定した出力電源電圧Voutを出力するには、鋸波信号Sawがリセットされるタイミングと鋸波同期クロック信号ClkxのHi遷移タイミングが一致している必要がある。さらに、鋸波トップ電位Vtop近傍において鋸波信号の電圧上昇速度が一定である必要がある。
図5の波形図の右側に近付くほど、つまり、入力電源の入力電源電圧Vinが降下するにしたがって、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのデューティが大きくなる。入力電源電圧Vinと出力電源電圧Voutとがほぼ等しい状態では、スイッチング動作のオフ状態の期間は数十nsから数ns以下へと短くなり、最終的には100%のデューティとなる。ここで、鋸波信号のリセットタイミングと鋸波同期クロック信号Clkxの同期がずれると、パルスが消失したり(デューティが0%になる現象)、パルス幅が不安定になったり(不定期に変動する現象)する。いずれの場合も、出力電源電圧Voutが不安定になり、重大な問題となる。
一方、鋸波信号Sawにおけるトップ電圧Vtopの電圧精度および鋸波信号Sawにおける上昇速度の平均値の精度が出力電源電圧Voutの安定性に与える影響は小さい。トップ電圧Vtopが多少想定の値からずれていても、エラーアンプ6のエラー信号Errの電圧はフィードバック制御ループの働きにより自動的に調整され、出力電源電圧Voutに対する変動は抑制されるためである。また、鋸波信号Sawの電圧Vsawの上昇速度の平均値が想定値から多少ずれていても、負荷変動に対する応答時間が変動する程度であり、出力電源電圧Voutに現れる影響は軽微である。
図6は、第2実施形態に係る高直線性鋸波発生器9とPWM1の詳細な構成例を示す図である。
高直線性鋸波発生器9は、鋸波電圧検出器90aと、鋸波リセット制御回路91aと、第1鋸波発生器92aと、第2鋸波発生器92bと、鋸波選択器912とを備える。なお、鋸波電圧検出器90aは高直線性鋸波発生器9の外部に設けてもよい。
鋸波電圧検出器90aは、鋸波底部電位検出コンパレータ98と、鋸波底部電位検出用鋸波選択器99と、鋸波選択信号フリップフロップ910と、鋸波同期クロック遅延回路911とを有する。
鋸波リセット制御回路91aは、クロック入力信号分周器915と、鋸波リセット信号発生器916と、第1鋸波リセット信号発生器9160と、第2鋸波リセット信号発生器9161とを有する。
第1鋸波発生器92aは、第1鋸波充電用定電流源940と、第1鋸波電位上昇速度調整容量950と、第1鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ960とを有する。
第2鋸波発生器92bは、第2鋸波充電用定電流源941と、第2鋸波電位上昇速度調整容量951と、第2鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ961とを有する。図6には更に、定電流Isaw、鋸波充電電流制御信号Sisaw、第1鋸波リセット信号Rst0、第2鋸波リセット信号Rst1、第1鋸波信号Saw0、第2鋸波信号Saw1、高直線性鋸波信号Saw、デューティ指示電圧信号Vd、PWMリセット信号Rn、鋸波位相信号Phip、鋸波選択信号Phipx、鋸波リセット信号Rst、クロック信号Clk、底部電位Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、定電流Isaw、鋸波充電電流制御信号Sisaw、およびPWMリセット信号Rn、が図示される。
まず、鋸波リセット制御回路91aの詳細を説明する。
クロック入力信号分周器915は、例えばフリップフロップであり、クロック入力端子CKにクロック信号Clkが入力され、入力端子Dに自らが出力する鋸波位相信号Phipの反転信号が入力される。クロック入力信号分周器915は、クロック信号ClkがHiになる瞬間に自らが出力する鋸波位相信号Phipの反転状態を内部へ取り込み、保持すると共に、鋸波位相信号Phipをその状態に変更する。これにより、鋸波位相信号Phipは、クロック信号Clkの二分周の矩形波となる。
鋸波リセット信号発生器916は、例えばフリップフロップであり、クロック入力端子CKにクロック信号Clkが入力され、負論理リセット端子Rに鋸波同期クロック遅延回路911が出力する鋸波同期クロック信号Clkxが入力され、入力端子Dには常にHiの信号が入力される。鋸波リセット信号発生器916は、クロック信号ClkがHiになる瞬間に、その内部状態をHiにセットし、鋸波リセット信号RstをHiとして出力する。また、鋸波リセット信号発生器916は、鋸波同期クロック信号ClkxがLowのときに、内部状態をLowにリセットするとともに、鋸波リセット信号RstをLowとして出力する。
第1鋸波リセット信号発生器9160は、鋸波位相信号PhipがLowのとき、鋸波リセット信号Rstの状態を第1鋸波リセット信号Rst0として出力する。同様に、第2鋸波リセット信号発生器9161は、鋸波位相信号PhipがHiのとき、鋸波リセット信号Rstの状態を第2鋸波リセット信号Rst1として出力する。すなわち、鋸波位相信号PhipがLowのとき、第1リセット信号Rst0は、鋸波リセット信号Rstの状態に従って、LowからHiへ、そして再びLowへと変化する。または、鋸波位相信号PhipがHiのとき、第2リセット信号Rst1は、鋸波リセット信号Rstの状態に従って、LowからHiへ、そして再びLowへと変化する。
次に、鋸波電圧検出器90aの詳細を説明する。鋸波電圧検出器90aは、鋸波位相信号Phipにより選択される第1鋸波信号Saw0または第2鋸波信号Saw1の電位が、底部電位Vbtmよりも高くなる第1タイミングを検出し、鋸波同期クロック信号Clkxと鋸波選択信号Phipxとを出力する。
鋸波底部電位検出用鋸波選択器99は、一方の入力端子に第1鋸波信号Saw0が入力され、他方の入力端子に第2鋸波信号Saw1が入力される。鋸波位相信号PhipがLowのとき第1鋸波信号Saw0を選択し、逆にHiのとき第2鋸波信号Saw1を選択して、鋸波底部電位検出コンパレータ98の非反転入力端子に出力する。ここで、鋸波位相信号Phipはクロック信号Clkの二分周信号であり、クロック信号ClkがHiに遷移するタイミングでその状態が遷移する。すなわち、この鋸波底部電位検出用鋸波選択器99は、第1鋸波信号Saw0または第2鋸波信号Saw1を交互に選択して出力する。
鋸波底部電位検出コンパレータ98は、非反転入力端子に入力される第1鋸波信号Saw0または第2鋸波信号Saw1の電位が反転入力端子に入力される底部電位Vbtmより高いときにHiを出力し、それ以外のときLowを出力する。すなわち、鋸波底部電位検出コンパレータ98の出力信号は、第1鋸波信号Saw0または第2鋸波信号Saw1の電位が底部電位Vbtmを超えたときHiに遷移するタイミング信号となる。このタイミング信号は、鋸波選択信号フリップフロップ910のクロック入力端子CKと鋸波同期クロック遅延回路911に入力される。
鋸波同期クロック遅延回路911は、鋸波選択信号フリップフロップ910および後述の鋸波選択器912で生じる遅延を補償して、鋸波同期クロック信号Clkxを出力する。鋸波同期クロック信号Clkxは、フリップフロップ12のクロック端子CKに入力され、その動作の起点となる。換言すると、鋸波同期クロック遅延回路911は、底部電位Vbtmよりも高直線鋸波信号Sawが高くなる時点である第1タイミングと、高直線性鋸波信号Sawがパルス幅指示電圧信号Vdの電位を超える時点である第2タイミングと、の時間間隔を調整し、回路経路の応答速度の違いを相殺する。
鋸波選択信号フリップフロップ910は、そのクロック入力端子CKに鋸波底部電位検出コンパレータ98が出力するタイミング信号が入力される。鋸波選択信号フリップフロップ910は、このタイミング信号がHiに遷移する瞬間に、データ入力端子Dに入力される鋸波位相信号Phipの状態を内部に取り込み、その状態をデータ出力端子Qから鋸波選択信号Phipxとして出力する。これにより、上述したように、鋸波選択信号Phipxは、第1鋸波信号Saw0または第2鋸波信号Saw1の電位が底部電位Vbtmより高くなるタイミングにおいてその状態が遷移する、クロック信号Clkに対して二分周の矩形波信号となる。
次に、第1鋸波発生器92aと、第2鋸波発生器92bとの詳細を説明する。
第1鋸波発生器92aと、第2鋸波発生器92bとは、それぞれ、第1鋸波リセット信号Rst0および第2鋸波リセット信号Rst1を受け、クロック信号Clkに対して二分周となり、互いに180°位相が異なる第1鋸波信号Saw0および第2鋸波信号Saw1を出力する。
第1鋸波充電用定電流源940は、鋸波充電電流制御信号Sisawの制御を受けて、一定の充電電流Isawを出力する。第1鋸波電位上昇速度調整容量950の一方の端子に第1鋸波充電用定電流源940が接続され、他方の端子に接地電源が接続される。
第1鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ960は、第1鋸波リセット信号Rst0がゲートに入力される。第1鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ960は、第1鋸波リセット信号Rst0がHiのとき、ソース端子とドレイン端子間が導通状態となる。一方で、第1鋸波リセット信号Rst0がLowのとき、ソース端子とドレイン端子間が非導通状態となる。
第1リセット信号Rst0がHiのときに、第1鋸波電位上昇速度調整容量950を放電し、鋸波信号Sawの電位を接地電源電位0Vへ向けて急速に降下させ、接地電源電位0Vにリセットする。一方で、第1リセット信号Rst0がLowのときに、第1鋸波電位上昇速度調整容量950は、第1鋸波充電用定電流源940が流す充電電流Isawにより充電される。第1鋸波電位上昇速度調整容量950の電位が第1鋸波信号Saw0として鋸波選択器912に出力される。第1鋸波信号Saw0の電位上昇速度は、第1鋸波電位上昇速度調整容量950の容量Csawと充電電流Isawの値により設定可能である。
第2鋸波発生器92bも第1鋸波発生器92aと同様の構成である。第2鋸波充電用定電流源941は、鋸波充電電流制御信号Sisawの制御を受けて、充電電流Isawを出力する。第2鋸波電位上昇速度調整容量951の一方の端子に第2鋸波充電用定電流源941が接続され、他方の端子に接地電源が接続される。
第2鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ961は、第2鋸波リセット信号Rst1がゲートに接続される。第2鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ961は、第2鋸波リセット信号Rst1がHiのとき、ソース端子とドレイン端子間が導通状態となる。一方で、第2鋸波リセット信号Rst1がLowのとき、ソース端子とドレイン端子間が非導通状態となる。
第2リセット信号Rst1がHiのときに、第2鋸波電位上昇速度調整容量951を放電し、鋸波信号Sawの電位を接地電源電位0Vへ向けて急速に降下させ、接地電源電位0Vにリセットする。一方で、第2リセット信号Rst1がLowのときに、第2鋸波電位上昇速度調整容量951は、第2鋸波充電用定電流源941が流す充電電流Isawにより充電される。第2鋸波電位上昇速度調整容量951の電位が第2鋸波信号Saw1として鋸波選択器912に出力される。第2鋸波信号Saw1の電位上昇速度は、第2鋸波電位上昇速度調整容量951の容量Csawと充電電流Isawの値により設定可能である。なお、第1および第2リセット信号Rst0およびRst1がLowになると、第1および第2鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ960または961はリセット動作を終了する。リセット動作の終了後に鋸波底部電位検出コンパレータ98で生じる遅延のため、リセットされる第1または第2鋸波信号Saw0またはSaw1の電位はほぼ接地電位0Vに達する。
鋸波選択器912は、鋸波選択信号Phipxの状態がLowのとき、第1鋸波信号Saw0を選択し、逆にHiのとき第2鋸波信号Saw1を選択して、高直線性鋸波信号Sawとして出力する。すなわち、鋸波選択器912は、コンパレータ98が検出する第1鋸波信号Saw0、または第2鋸波信号Saw1の電位が底部電位Vbtmより高くなるタイミングにおいて、選択する鋸波信号を交互に変えて出力する。これにより、鋸波選択器912が出力する高直線性鋸波信号Sawは、電圧上昇速度が一定である高直線性の信号となる。
次に、PWM1の詳細を説明する。
PWM1には、高直線性鋸波信号Sawと、鋸波同期クロック信号Clkxと、パルス幅指示電圧信号Vdとが入力される。PWM1は、パルス幅指示電圧信号Vdに応じたパルス幅変調矩形波信号Pwmpを出力する。
PWMコンパレータ11には、非反転入力端子にパルス幅指示電圧信号Vdが入力され、反転入力端子に高直線性鋸波信号Sawが入力される。PWMコンパレータ11は、パルス幅指示電圧信号Vdの電位に対して、高直線性鋸波信号Sawの電位が低いときにHiとなり、それ以外のときにLowとなるPWMリセット信号Rnをパルス生成用フリップフロップ12に出力する。すなわち、PWMコンパレータ11は、高直線性鋸波信号Sawがパルス幅指示電圧信号Vdの電位を超える第2タイミングを検出し、PWMリセット信号Rnを生成する。なお、PWMコンパレータ11は、パルス幅指示電圧信号Vdの電位がトップ電圧Vtopの電位より高いとき、PWMリセット信号RnをHiに維持する。
パルス生成用フリップフロップ12には、そのクロック入力端子CKに鋸波同期クロック信号Clkxが入力され、負論理リセット端子RにPWMコンパレータ11が出力するPWMリセット信号Rnが入力され、データ端子Dには常にHi状態の信号が入力される。パルス生成用フリップフロップ12は、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移する瞬間に、その内部状態をHiにセットして、その状態をデータ出力端子Qからパルス幅変調矩形波信号Pwmpとして出力する。
また、パルス生成用フリップフロップ12は、PWMリセット信号RnがLowのとき内部状態をLowにリセットして、その状態をパルス幅変調矩形波信号に出力する。これにより、パルス幅変調矩形波信号PwmpのHiパルス幅は、パルス幅指示電圧信号Vdの電位に応じて変化する。ここで、パルス幅指示電圧信号Vdの電位がトップ電圧Vtopの電位より高いとき、PWMリセット信号Rnの状態がHiに維持されて、Lowにならない。したがって、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのデューティは100%となる。
本実施形態では、高直線性鋸波信号Sawを鋸波選択器912による切り替え動作により生成する。鋸波選択器912は単純なMOSトランジスタによるトランスファースイッチで構成することが可能である。その動作は、第1および第2鋸波信号リセットN型MOSトランジスタ960および961で、第1および第2鋸波電位上昇速度調整容量950および951を放電してリセットする動作に比べて、高速である。
鋸波選択器912による切り替え動作で生成された高直線性鋸波信号Sawの直線性は、特にVtop近傍において、高い。したがって、パルス幅指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopとほぼ同じ電位のとき、PWMコンパレータ11は非常に短いLowパルス幅(例えば1ns以下のLowパルス幅)のPWMリセット信号Rnを出力することが可能となる。
また、上述のように、鋸波同期クロック信号ClkxがHiへ遷移するタイミングは、PWMコンパレータ11と同じ電気特性を持つ鋸波底部電位検出コンパレータ98により生成されるため、両者で生じる遅延が相殺され、タイミングのずれが抑えられる。さらに、鋸波同期クロック遅延回路911によりタイミング余裕の調整が可能である。
図7は、第2実施形態に係るスイッチング電源100の動作波形図である。縦軸の上から順に、クロック信号Clk、鋸波位相信号Phip、第1鋸波リセット信号Rst0、第2鋸波リセット信号Rst1,トップ電圧Vtop、第1鋸波信号Saw0、第2鋸波信号Saw1、底部電位Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、トップ電圧Vtop、高直線性鋸波信号Saw、デューティ指示電圧信号Vd、底部電位Vbtm、PWMリセット信号Rn、パルス幅変調矩形波信号Pwmpを示す。横軸は時間である。
すなわち、最上段にクロック信号Clkを示す。クロック信号Clkは一定周期の矩形波信号であり、そのHi遷移タイミングに同期して以下の信号が動作する。
次段に鋸波位相信号Phipを示す。鋸波位相信号Phipはクロック信号ClkがHiになる瞬間にその状態が遷移する分周信号である。
次段に実線で第1鋸波リセット信号Rst0を示し、破線で第2鋸波リセット信号Rst1を示す。第1鋸波リセット信号Rst0および第2鋸波リセット信号Rst1はクロック信号ClkのHi遷移タイミングで交互にHiに遷移するパルス信号である。
次段に実線で第1鋸波信号Saw0を示し、破線で第2鋸波信号Saw1を示し、点線で鋸波ボトム電圧信号を示し、第1鋸波信号Saw0の電位または第2鋸波信号Saw1の電位が鋸波底部電位Vbtmを下回る交点を×印で示し、上回る交点を□印で示す。
第1鋸波信号Saw0は、第1鋸波リセット信号Rst0がHiのときに接地電源電位にリセットされる。同様に、第2鋸波信号Saw1は、第2鋸波リセット信号Rst1がHiのときに接地電源電位にリセットされる。
この第1および第2鋸波リセット信号Rst0およびRst1は、それぞれ第1および第2鋸波信号Saw0およびSaw1の電位が鋸波ボトム電圧信号Vbtmの電位以下となったことが検出されると、Lowになる。このとき、鋸波底部電位検出コンパレータ98および鋸波同期クロック遅延回路911による遅延により、鋸波信号の電位はほぼ接地電源電位0Vとなる。第1および第2鋸波リセット信号Rst0およびRst1がLowの期間、それぞれ第1および第2鋸波信号Saw0およびSaw1の電位は一定速度で上昇する。
次段に、鋸波同期クロック信号Clkxを示す。鋸波位相信号PhipがLowのとき、第1鋸波信号Saw0の電位が鋸波ボトム電圧Vbtmより高くなったときに(□印のタイミングで)Hiとなり、第1鋸波信号Saw0の電位が鋸波トップ電圧Vtopより高くなったときに(×印のタイミングで)Lowとなる。同様に、鋸波位相信号PhipがHiのとき、第2鋸波信号Saw1の電位が鋸波ボトム電圧信号Vbtmの電位より高くなったときに(□印のタイミングで)Hiとなり、第2鋸波信号Saw1の電位が鋸波トップ電圧Vtopより高くなったときに(×印のタイミングで)Lowとなる。
次段に鋸波選択信号Phipxを示す。鋸波選択信号Phipxは、鋸波同期クロック信号がHiに遷移するタイミングで、鋸波位相信号Phipの状態を鋸波選択信号フリップフロップ910の内部に取り込み、その状態を保持して、その状態を出力することにより生成される。
次段に高直線性鋸波信号Sawを実線で示し、デューティ指示電圧信号Vdを破線で示し、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位より高くなる交点を●印で示す。高直線性鋸波信号Sawは、鋸波選択信号PhipxがLowのとき第1鋸波信号Saw0を選択し、鋸波選択信号PhipxがHiのとき第2鋸波信号Saw1を選択して生成される。
次段にPWMリセット信号Rnを示す。PWMリセット信号Rnは、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位より高いとき、つまり、●印のタイミングでLowになり、それ以外のとき、つまり、高直線性鋸波信号SawがリセットされるタイミングでHiになる。
最下段にパルス幅変調信号Pwmpを示す。パルス幅変調信号Pwmpは、鋸波同期クロック信号ClkxがHiになるタイミングでHiになり、PWMリセット信号RnがLowのときLowとなる。ここで、図7の右端で示されるように、デューティ指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopより高いとき、PWMリセット信号RnはLowにならない。この場合、パルス幅変調信号PwmpはHi状態に保持される。このように、本実施例では100%デューティに近い太いパルス幅のパルス幅変調矩形波信号Pwmpを生成することが可能となる。より具体的には、フリップフロップが応答する限界まで、パルス幅変調矩形波信号PwmpのLowパルス幅を細くすることが可能である。
以上説明したように、本実施形態に係るスイッチング電源100は、入力電源電圧が出力電源電圧とほぼ等しくなるまで低下しても、安定した出力電源を出力する。
(第3実施形態)
第3実施形態に係るスイッチング電源100は、パルス幅変調矩形波信号Pwmpの状態に応じて、高直線性鋸波発生器9が出力する高直線性鋸波信号の振幅範囲を変更することにより、Hiパルス幅デューティD((2)式)を0~100パーセントまでより安定して変化させようとしたものである。以下では、第2実施形態に係るスイッチング電源100と相違する点に関して説明する。
図8は、第3実施形態に係るスイッチング電源100の構成例を示す図である。図8に示すように、パルス変調器1が出力するパルス幅変調矩形波信号Pwmpを鋸波電圧検出器90bへフィードバックする点で、図4で示す第2実施形態に係るスイッチング電源100と相違する。
より具体的には、鋸波電圧検出器90bは、パルス幅変調矩形波信号Pwmpの状態に応じて、鋸波選択切り出し信号Phipxxの状態が遷移するタイミングを変更する。これにより、高直線性鋸波発生器9が出力する高直線性鋸波信号Sawの振幅範囲を変更する。
図9は、第3実施形態に係るスイッチング電源100の動作波形図である。縦軸の上から順に、入力電源電圧Vin、出力電源電圧Vout、入力電源電圧Vin、出力電源電圧Vout、クロック信号Clk、鋸波選択切り出し信号Phipxx、トップ電圧Vtop、第1鋸波信号Saw0、高直線性鋸波信号Saw、デューティ指示電圧信号Vd、底部電位Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、パルス幅変調矩形波信号Pwmpを示す。横軸は時間である。
すなわち、最上段の実線で入力電源の電圧Vinの変化の様子を示し、破線で出力電源の電圧Voutを示す。このように、第3実施形態に係るスイッチング電源100は、入力電源電圧Vinが、出力電源電圧Voutの電圧に対して、十倍を超えるような高い状態から、ほぼ等しい状態に変化しても、安定した出力電源Voutを出力することが可能である。
次段の実線で入力電源の電圧Vinを示し、破線で出力電源の電圧Voutの変化の様子を示す。このように、第3実施形態に係るスイッチング電源100は、出力電源電圧Voutを0Vからほぼ入力電源と等しい電圧まで変化させて出力することが可能である。
次段にクロック信号Clkを示す。クロック信号Clkは一定周期の矩形波信号である。
次段に、鋸波選択切り出し信号Phipxxを示す。鋸波選択切り出し信号Phipxxは、後述するパルス幅変調矩形波信号PwmpのHiデューティが所定値より小さいときには、クロック信号ClkがHi遷移タイミングで状態が変化する二分周矩形波信号であり、パルス幅変調矩形波信号PwmpのHiデューティが所定値以上のときには、高直線性鋸波信号Sawがリセットされるタイミングで状態が変化する二分周矩形波信号となる。
次段に、高直線性鋸波信号Sawを実線で示す。高直線性鋸波信号Sawは、図示されない二つの鋸波信号Saw0またはSaw1を鋸波選択切り出し信号Phipxxにより選択的に切り出して生成される。その段に破線でデューティ指示電圧信号Vdを示し、高直線性鋸波信号Sawがデューティ指示電圧信号Vdに対して高電位になる交点に●印をつけ、鋸波底部電位Vbtmとの交点もしくはそのリセットタイミングに□印を付ける。
次段に鋸波同期クロック信号Clkxを示す。鋸波同期クロック信号Clkxは、前出の□印のタイミングでHiに遷移し、クロック信号ClkのHi遷移タイミングでLowに遷移する矩形波信号である。
最下段にパルス幅変調矩形波信号Pwmpを示す。パルス幅変調矩形波信号Pwmpは、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミング(図中の□印のタイミング)でHiに遷移し、デューティ指示電圧信号Vdの電位を高直線性鋸波信号Sawの電位が高くなるタイミング(図中の●印のタイミング)でLowに遷移する。ここで、図中左端の状態のように、デューティ指示電圧信号Vdの電位が底部電位Vbtmより低い場合には、パルス幅変調矩形波信号Pwmpは生成されず、Low保持となる。そして、デューティ指示電圧信号Vdの電位が底部電位Vbtmを僅かに上回ると、パルス幅変調矩形波信号Pwmpは非常に細いHiパルス幅の矩形波信号となる。
逆に、図中右端の状態のように、デューティ指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopより高い場合には、パルス幅変調矩形波信号Pwmpは100%デューティの矩形波信号、つまり、Hi保持となる。また、デューティ指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopより僅かに低くなると、パルス幅変調矩形波信号Pwmpは一瞬だけLowとなるデューティが100%に近い矩形波信号となる。
図10は、第3実施形態に係る高直線性鋸波発生器9とPWM1の詳細な構成例を示す図である。図10に示すように、鋸波電圧検出器90bの構成が第2実施形態に係る、鋸波電圧検出器90aと相違する。すなわち、鋸波電圧検出器90bは、太いパルス幅判定用遅延回路917と、太いパルス幅判定用フリップフロップ918と、鋸波選択タイミング切り替えスイッチ919とを更に備える点で鋸波電圧検出器90aと相違する。図10には、更に太いパルス判定鋸波同期クロック信号Clkxx、太いパルス幅判定信号Widepが図示されている点で図6と相違する。
太いパルス幅判定用遅延回路917は、鋸波同期クロック信号Clkxを受け、鋸波底部電位検出コンパレータ98およびPWMコンパレータ11の応答時間より長い遅延を付加して、太いパルス判定鋸波同期クロック信号Clkxxを出力する。
太いパルス幅判定用フリップフロップ918は、そのクロック入力端子CKに太いパルス判定鋸波同期クロック信号Clkxxが入力され、データ端子Dにパルス幅変調矩形波信号Pwmpが入力される。太いパルス幅判定用フリップフロップ918は、太いパルス判定鋸波同期クロック信号ClkxxがHiに遷移するタイミングでパルス幅変調矩形波信号Pwmpの状態を内部に取り込み、その状態を太いパルス幅判定信号Widepとして出力する。これにより、デューティ指示電圧信号Vdの電位が底部電位Vbtmよりも所定値以上に高い状態とき、太いパルス幅判定信号WidepをHiとし、それ以外のときはLowとする。すなわち、矩形波信号のパルス幅が太いとき太いパルス幅判定信号WidepがHiなり、矩形波信号のパルス幅が細いとき太いパルス幅判定信号WidepがLowなる。
鋸波選択タイミング切り替えスイッチ919の選択端子には、太いパルス幅判定信号Widepが入力される。鋸波選択タイミング切り替えスイッチ919は、太いパルス幅判定信号WidepがHiのとき鋸波選択信号フリップフロップ910が出力する鋸波選択信号Phipxを選択し、鋸波選択切り出し信号Phipxxとして鋸波選択器912に出力する。一方で、太いパルス幅判定信号WidepがLowのときクロック入力信号分周器915が出力する鋸波位相信号Phipを選択して鋸波選択切り出し信号Phipxxとして鋸波選択器912に出力する。
これにより、鋸波選択器912は、クロック信号Clkの周期に応じて第1鋸波信号Saw0および第2鋸波信号Saw1の範囲を切り替えて、高直線性鋸波信号Sawとして出力する。より詳細には、鋸波選択器912は、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのパルス幅が所定値未満である場合(太いパルス幅判定信号WidepがLow)には、鋸波ボトム電圧Vbtm以下の信号成分を含む範囲の第1鋸波信号Saw0または第2鋸波信号Saw1を選択し、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのパルス幅が所定値以上である場合(太いパルス幅判定信号WidepがHi)には、鋸波ボトム電圧Vbtmから鋸波ボトム電圧Vbtmまでの範囲の第1鋸波信号Saw0または第2鋸波信号Saw1を選択する。
図11は、第3実施形態に係るスイッチング電源100の詳細な動作波形図である。縦軸の上から順に、クロック信号Clk、鋸波位相信号Phip、第1鋸波リセット信号Rst0、第2鋸波リセット信号Rst1,トップ電圧Vtop、第1鋸波信号Saw0、第2鋸波信号Saw1、底部電位Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、鋸波選択信号Phipx、鋸波選択切り出し信号Phipxx、トップ電圧Vtop、高直線性鋸波信号Saw、デューティ指示電圧信号Vd、底部電位Vbtm、PWMリセット信号Rn、パルス幅変調矩形波信号Pwmp、パルス幅判定信号Widepを示す。横軸は時間である。
すなわち、最上段に示されるクロック信号Clkから、上から六段目に示される鋸波選択信号Phipxまでの波形は、第2実施例の動作波形図(図7)と同じなので、説明を省略する。
次段に鋸波選択切り出し信号Phipxxを示す。鋸波選択切り出し信号Phipxxは、後述する太いパルス幅判定信号WidepがLowのとき鋸波位相信号Phipと同じタイミングで遷移する矩形波信号となり、太いパルス幅判定信号WidepがHiのとき鋸波選択信号Phipxと同じタイミングで遷移する矩形波信号となる。
次段に実線で高直線性鋸波信号Sawを示し、破線でデューティ指示電圧信号Vdを示す。さらに、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位を上回る交点を●印で示し、逆に下回り交点を×印で示す。また、高直線性鋸波信号Sawの電位が鋸波底部電位Vbtmを下回る交点を□印で示す。
高直線性鋸波信号Sawは、鋸波選択切り出し信号PhipxxがLowのとき第1鋸波信号Saw0を選択して切り出した波形となり、鋸波選択切り出し信号PhipxxがHiのとき第2鋸波信号Saw1を選択して切り出した波形となる。これにより、パルス変調矩形波信号PWMpのパルス幅が細いとき、すなわち太いパルス幅判定信号WidepがLowのとき、高直線性鋸波信号Sawは、その電位が接地電源電圧0Vから上昇し、鋸波トップ電位Vtopに達する手前で再び接地電源電圧0Vにリセットされる鋸波信号となる。一方で、パルス変調矩形波信号PWMpのパルス幅が太いとき、すなわち太いパルス幅判定信号WidepがHiのとき、高直線性鋸波信号Sawは、その電位が底部電位Vbtmから一定速度で上昇し、鋸波トップ電位Vtopに達すると再び底部電位Vbtmにリセットされる鋸波信号となる。ただし、いずれの場合も、高直線性鋸波信号Sawの電位が底部電位Vbtmを上回るタイミングは鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミングと一致する。つまり、□印の周期は一定である。
次段にPWMリセット信号Rnを示す。PWMリセット信号Rnは、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位より下回ったときに、×印のタイミングでHiとなり、それ以外のときに、●印のタイミングでLowになる。ここで、太いパルス幅判定信号WidepがLowのとき、高直線性鋸波信号Sawに底部電位Vbtm以下の信号成分が含まれるため、デューティ指示電圧信号Vdが底部電位Vbtm近傍、または、それ以下の電位であっても、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位を上回るタイミングを安定して検出することが可能で、PWMリセット信号Rnが必ず生成される。一方、太いパルス幅判定信号WidepがHiのとき、高直線性鋸波信号Sawの最高電位が鋸波トップ電位Vtopになる。したがって、デューティ指示電圧信号Vdが鋸波トップ電位Vtopを若干下回ると、非常に細いLowパルスのPWMリセット信号Rnが生成され、逆に、デューティ指示電圧信号Vdが鋸波トップ電位Vtopを上回ると、Lowパルスが消滅し、PWMリセット信号RnはHiに保持される。
次段にパルス幅変調矩形波信号Pwmpを示す。パルス幅変調矩形波信号Pwmpは、鋸波同期クロック信号ClkxがHiになるタイミングでHiにセットされ、PWMリセット信号RnがLowのときLowにリセットされる。ここで、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移する周期は一定に保たれるので、パルス幅変調矩形波信号PwmpがHiに遷移する周期も一定に保たれる。一方、PWMリセット信号RnがLowに遷移するタイミングは、デューティ指示電圧信号Vdの電位に応じて変化する。つまり、デューティ指示電圧信号Vdの電位に応じてパルス幅変調矩形波信号Pwmpのパルス幅が変化する。
また、図11の動作波形図の左端に示されるように、デューティ指示電圧信号Vdの電位が底部電位Vbtmを下回ると、□印と●印のタイミングが逆転して、●印が先に現れる。つまり、PWMリセット信号RnがLow状態のときに鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移する。このとき、パルス生成用フリップフロップ12はクロック入力端子CKの遷移により、リセット端子Rの入力を優先するので、パルス幅変調矩形波信号PwmpはLowに保持される。しかし、デューティ指示電圧信号Vdの電位が底部電位Vbtmより僅かに高くなり、一瞬でも●印より先に□印が現れると、その期間に対応する非常に短いHiパルス幅のパルス幅変調矩形波信号Pwmpが出力される。
このように、太いパルス幅判定信号WidepがLowのとき、高直線性鋸波信号Sawに底部電位Vbtm以下の信号成分が含まれるため、非常に細いパルス幅変調矩形波信号Pwmpを生成することができ、高い降圧比の出力電源電圧Voutを安定して出力することができる。また、パルス幅指示電圧信号Vdの電位が鋸波ボトム信号Vbtmの電位以下である場合には、パルス幅変調矩形波信号PwmpをLowに保持することも可能であり、出力電源電圧Voutを0Vに保持することも可能である。
逆に、図11の動作波形図の右端に示されるように、入力電源電圧Vinと出力電源電圧Voutがほぼ等しくなるような条件では、太いパルス幅判定信号WidepがHiとなり、高直線性鋸波信号Sawの最高電位が鋸波トップ電位Vtopになる。これにより、デューティ指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopに近づくと、Lowになる時間が非常に短いパルス幅変調矩形波信号Pwmpが生成される。
また、デューティ指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopを上回ると●印が消滅すし、PWMリセット信号RnがLowにならなくなる。そのため、パルス幅変調矩形波信号PwmpはHiに保持され、そのデューティは100%になる。
最下段に、太いパルス幅判定信号Widepを示す。太いパルス幅判定用フリップフロップ918は、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移してから太いパルス幅判定用遅延回路917により付加される遅延の後の△印のタイミングで、パルス幅変調矩形波信号Pwmpの状態をラッチして太いパルス幅判定信号Widepを生成する。すなわち、△印のタイミングでパルス幅変調矩形波信号PwmpがHiに留まっている場合、パルス幅が太い状態と判定して、太いパルス幅判定信号WidepはHiとなる。一方で、△印のタイミングでパルス幅変調矩形波信号Pwmpが既にLowにリセットされる場合、パルス幅が細い状態と判定して、太いパルス幅判定信号WidepはLowとなる。
以上説明したように、本実施形態に係るスイッチング電源100は、太いパルス幅判定用フリップフロップ918が判定するパルス幅変調矩形波信号Pwmpの幅に応じて、高直線性鋸波信号Sawの振幅を切り替えることとした。これにより、太いパルス幅判定信号WidepがLowのとき、高直線性鋸波信号Sawは底部電位Vbtm以下の信号成分を有する。これにより、パルス幅指示電圧信号Vdが鋸波ボトム信号Vbtmの電位とほぼ同じ低い電位のとき、非常に細いパルス幅のパルス幅変調矩形波信号Pwmpを安定して生成することができる。さらに、パルス幅指示電圧信号Vdの電位が鋸波ボトム信号Vbtmの電位以下である場合には、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのデューティは0%になる。
一方で、太いパルス幅判定信号WidepがHiのとき、高直線性鋸波信号Sawの最高電位が鋸波トップ電位Vtopとなるように、高直線性鋸波信号Sawを切り出す範囲を変更する。これにより、デューティ指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopより僅かに低いとき、非常に細いLowパルス幅のPWMリセット信号Rnが生成される。パルス生成用フリップフロップ12はこの非常に細いLowパルス幅のPWMリセット信号Rnに反応して、パルス幅変調矩形波信号PwmpをLowにし、僅かな時間後に次の鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するのを受けて、パルス幅変調矩形波信号Pwmpを再びHiにセットする。ここで、クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミングと高直線性鋸波信号Sawを鋸波トップ電位Vtopから鋸波ボトム電位Vbtmへリセットするタイミングは、遅延回路911により一致するように調整されている。したがって、100%デューティに近い太いパルス幅のパルス幅変調矩形波信号Pwmpを安定して生成することができる。さらに、デューティ指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopを上回ると、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのデューティは100%になる。
このように、本実施例によれば、パルス幅変調矩形波信号Pwmpのデューティは0%から100%に至るまでの連続的な制御が可能となる。したがって、出力電源電圧に対して、ほぼ等しい電圧から10倍を超えるような高い電圧までの広い範囲の入力電源において、安定に動作する降圧スイッチング電源を提供することができる。または、0Vから入力電源電圧とほぼ等しい電圧までの広い範囲の電圧の出力電源を安定して出力する降圧スイッチング電源を提供することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態に係るスイッチング電源100は、鋸波電圧検出器90cに鋸波トップ電圧調整機能と、第1鋸波信号Saw0の波形と第2鋸波信号Saw1の波形を一致させる自動調整機能とが追加される点で、第3実施形態に係るスイッチング電源100と相違する。以下では、第3実施形態に係るスイッチング電源100と相違する点に関して説明する。
図12は、第4実施形態に係る高直線性鋸波発生器9とPWM1の詳細な構成例を示す図である。
図12に示すように、鋸波電圧検出器90cの構成が図10で示す第3実施形態に係る鋸波電圧検出器90bと相違する。より具体的には、鋸波電圧検出器90cは、鋸波トップ電位検出用鋸波選択器920と、鋸波トップ電位検出コンパレータ921と、鋸波トップ電位参照電圧源922と、鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器923と、第1鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器9240と、第2鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器9241と、を更に備える。図10には更に、第1鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw0、第2鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw1、鋸波トップ電位Vtop、鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch、第1電位上昇速度抑制パルス信号Dch0n、第2電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nが図示されている。なお、本実施形態に係る第1鋸波発生器92aと、第2鋸波発生器92bと、が調整部に対応する。
また、本実施形態に係る第1鋸波発生器92aは、第1鋸波電位上昇速度抑制P型MOSトランジスタ9250と、第1鋸波電位上昇速度向上N型MOSトランジスタ9260と、第1鋸波電位上昇速度変更抵抗9270と、第1鋸波電位上昇速度保持容量9280とを、更に備える。
本実施形態に係る第2鋸波発生器92bは、第2鋸波電位上昇速度抑制P型MOSトランジスタ9251と、第2鋸波電位上昇速度向上N型MOSトランジスタ9261と、第2鋸波電位上昇速度変更抵抗9271と、第2鋸波電位上昇速度保持容量9281とを、更に備える。
まず、鋸波電圧検出器90cの詳細な構成を説明する。
鋸波トップ電位検出用鋸波選択器920は、選択信号端子に鋸波位相信号Phipが入力される。鋸波トップ電位検出用鋸波選択器920は、鋸波位相信号PhipがHiのとき、第1鋸波信号Saw1を選択し、逆にLowのとき第2鋸波信号鵜Saw0を選択して、出力する。
鋸波トップ電位検出コンパレータ921は、その非反転入力端子に鋸波トップ電位検出用鋸波選択器920により選択された第1鋸波信号Saw0または第2鋸波信号Saw1が入力され、反転入力端子に鋸波トップ電位参照電圧源922が生成する鋸波トップ電位Vtopが入力される。鋸波トップ電位検出コンパレータ921は、選択された第1鋸波信号Saw0、または第2鋸波信号Saw1が鋸波トップ電位Vtopより高いときに、鋸波トップ電位検出信号TpをHiとして出力し、それ以外のとき鋸波トップ電位検出信号TpをLowとして出力する。
鋸波底部電位検出コンパレータ98は、その非反転入力端子に鋸波底部電位検出用鋸波選択器99により選択された第1鋸波信号Saw0、または第2鋸波信号Saw1が入力され、反転入力端子に鋸波底部電位参照電圧源97が生成する底部電位Vbtmが入力される。鋸波底部電位検出コンパレータ98は、選択された第1鋸波信号Saw0または第2鋸波信号Saw1が底部電位Vbtmより高いときに、鋸波トップ電位検出信号BpをHiとして出力し、それ以外のとき鋸波底部電位検出信号BpをLowとして出力する。
鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器923は、鋸波トップ電位検出信号TpのHi遷移を受けて、鋸波電位上昇速度抑制パルス信号DchpをHiとして出力し、鋸波底部電位検出信号BpのHi遷移を受けて、鋸波電位上昇速度抑制パルス信号DchpをLowとして出力する。鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器923は二つのフリップフロップ923a、bにより構成される。
フリップフロップ923aのクロック入力端子CKには、鋸波トップ電位検出信号Tpが入力され、信号端子Dには、常にHi状態の信号が入力され、リセット端子RNにはフリップフロップ923bの出力信号が入力される。一方のフリップフロップ923bのクロック入力端子CKには、鋸波底部電位検出コンパレータ98が出力する鋸波底部電位検出信号Bpが入力され、信号端子Dには、常にHi状態の信号が入力され、リセット端子RNには鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dchpが反転入力される。
これにより、鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器923は、入力信号のHi遷移を受けて動作する高速RSラッチとなる。すなわち、鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器923は、鋸波トップ電位検出信号TpのHi遷移から鋸波底部電位検出信号BpのHi遷移までの僅かなタイミングの差を検出して、非常に細いHiパルス幅の鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dchpを生成することが可能となる。
第1鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器9240には、鋸波位相信号Phipと、鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dchpとが入力される。第1鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器9240は、鋸波位相信号PhipがHiのとき鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dchpを反転して、第1電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nを出力し、鋸波位相信号PhipがLowのとき第1電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nをHiに保持する。
第2鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器9241は、鋸波位相信号Phipが反転入力され、鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dchpが入力される。第2鋸波電位上昇速度抑制パルス生成器9241は、鋸波位相信号PhipがLowのとき鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dchpを反転して、第2電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nを出力し、鋸波位相信号PhipがHiのとき第2電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nをHiに保持する。
第1鋸波電位上昇速度抑制P型MOSトランジスタ9250は、そのゲート端子に第1電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nが反転入力される。第1鋸波電位上昇速度抑制P型MOSトランジスタ9250は、第1電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nがLowのときに導通状態となり、ドレイン端子に接続される第1鋸波電位上昇速度変更抵抗9270を介して、第1鋸波電位上昇速度保持容量9280の電荷をソース端子に接続される電源電位に放電する。
一方で、第1鋸波電位上昇速度向上N型MOSトランジスタ9260は、そのゲート端子に第1鋸波リセット信号Rst0が入力される。第1鋸波電位上昇速度向上N型MOSトランジスタ9260は、第1鋸波リセット信号Rst0がHiのときに導通状態となり、ドレイン端子に接続される第1鋸波上昇速度変更抵抗9270を介して、第1鋸波電位上昇速度保持容量9280の電荷をソース端子に接続される接地電源電位0Vから充電する。
第1電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nのLow期間と第1鋸波リセット信号Rst0のHi期間はそれぞれが非常に短く構成される。その短いパルス期間に応じて、第1鋸波電位上昇速度保持容量9280に蓄えられる電荷量を調整し、第1鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw0の電位を制御する。
同様に、第2鋸波電位上昇速度抑制P型MOSトランジスタ9251は、そのゲート端子に第2電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nが反転入力される。第2鋸波電位上昇速度抑制P型MOSトランジスタ9251は、第2電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nがLowのときに導通状態となり、ドレイン端子に接続される第2鋸波電位上昇速度変更抵抗9271を介して、第2鋸波電位上昇速度保持容量9281の電荷をソース端子に接続される電源電位に放電する。
一方で、第2鋸波電位上昇速度向上N型MOSトランジスタ9261は、そのゲート端子に第2鋸波リセット信号Rst1が入力される。第2鋸波リセット信号Rst1がHiのときに導通状態となり、ドレイン端子に接続される第2鋸波上昇速度変更抵抗9272を介して、第2鋸波電位上昇速度保持容量9281の電荷をソース端子に接続される接地電源電位0Vから充電する。
第2電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nのLow期間と第2鋸波リセット信号Rst1のHi期間はそれぞれが非常に短く構成される。その短いパルス期間に応じて、第2鋸波電位上昇速度保持容量9281に蓄えられる電荷量を調整して、第2鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw1の電位を制御する。
第1鋸波リセット信号Rst0と第2鋸波リセット信号Rst1はクロック信号ClkがHiに遷移するタイミングで交互にHiになるパルス信号である。そのHiパルス幅は非常に短く、互いに等しい。一方で、第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nは、第1鋸波信号Saw0の電位が鋸波トップ電位Vtopより高くなったときにLowにセットされ、第2鋸波信号Saw1の電位が底部電位Vbtmより高くなったときにHiにリセットされる反転パルス信号である。同様に、第2鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nは、第2鋸波信号Saw1の電位が鋸波トップ電位Vtopより高くなったときにLowにセットされ、第1鋸波信号Saw0の電位が底部電位Vbtmより高くなったときにHiにリセットされる反転パルス信号である。
したがって、第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nと第2鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nは、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移する直前のタイミングで交互にLowになるパルス信号であり、そのパルス幅は第1鋸波信号Saw0の最高電位および第2鋸波信号Saw1の最高電位に応じて独立に変化する。
例えば、第1鋸波信号Saw0の電位上昇速度が遅く、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミングで第1鋸波信号Saw0の電位が鋸波トップ電位Vtopに達していない場合、第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nはHiに保持され、Low期間が現れない。逆に、第1鋸波信号Saw0の電位上昇速度が速く、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミングで第1鋸波信号Saw0の電位が鋸波トップ電位Vtopに既に達している場合には、第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nは第1鋸波信号Saw0の電位が鋸波トップ電位Vtopに達したタイミングでLowにセットされ、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミングでHiにリセットされるパルス信号となる。
第1鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw0の電位と第2鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw1の電位は、それぞれ第1鋸波リセット信号Rst0と第2鋸波リセット信号Rst1を受けて、徐々に降下する。その制御を受けて、第1鋸波信号Saw0の鋸波電位上昇速度と第2鋸波信号Saw1の鋸波電位上昇速度は互いに同じ割合で増加する。
一方で、第1鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw0の電位と第2鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw1の電位は、それぞれ第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nまたは第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nを受けて、徐々に上昇する。その制御を受けて、第1鋸波信号Saw0の鋸波電位上昇速度と第2鋸波信号Saw1の鋸波電位上昇速度は減少するが、それぞれの鋸波上昇速度が速いほど大きく減速する。この動作により、第1鋸波電位上昇速度と第2鋸波上昇速度は互いに同じ速さに自動的に調整される。このように、第1鋸波発生器92aと、第2鋸波発生器92bとは、鋸波選択器912が出力する鋸波信号Sawが所定のトップ電圧Vtopに達するタイミングと最大値に達するタイミングとの差が一定値になるように、第1鋸波信号Saw0および第2鋸波信号Saw1の上昇速度を調整する機能を有する。
図13は、第4実施形態に係るスイッチング電源100の動作波形図である。縦軸の上から順に、クロック信号Clk、鋸波位相信号Phip、第1鋸波リセット信号Rst0、第2鋸波リセット信号Rst1,トップ電圧Vtop、第2鋸波信号Saw1、第1鋸波信号Saw0、底部電位Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、第1電位上昇速度抑制パルス信号Dch0n、第2電位上昇速度抑制パルス信号Dch1n、鋸波選択信号Phipx、鋸波選択切り出し信号Phipxx、トップ電圧Vtop、デューティ指示電圧信号Vd、高直線性鋸波信号Saw、底部電位Vbtm、PWMリセット信号Rn、パルス幅変調矩形波信号Pwmpを示す。横軸は時間である。
すなわち、最上段にクロック信号Clkを示す。クロック信号Clkは一定周期の矩形波信号であり、そのHi遷移タイミングに同期して以下の信号が動作する。
次段に鋸波位相信号Phipを示す。鋸波位相信号Phipはクロック信号ClkがHiになる瞬間にその状態が遷移する分周信号である。
次段に実線で第1鋸波リセット信号Rst0を示し、破線で第2鋸波リセット信号Rst1を示す。第1鋸波リセット信号Rst0および第2鋸波リセット信号Rst1はクロック信号ClkのHi遷移タイミングで交互にHiに遷移する。
次段に実線で第1鋸波信号Saw0を示し、破線で第2鋸波信号Saw1を示し、点線で鋸波ボトム電圧信号を示す。また、第1鋸波信号Saw0の電位または第2鋸波信号Saw1の電位が鋸波底部電位Vbtmを下回る交点を×印で示し、上回る交点を□印で示す。
第1鋸波信号Saw0は、第1鋸波リセット信号Rst0がHiのときに接地電源電位にリセットされる。同様に、第2鋸波信号Saw1は、第2鋸波リセット信号Rst1がHiのときに接地電源電位にリセットされる。この第1鋸波リセット信号Rst0および第2鋸波リセット信号Rst1はそれぞれ第1鋸波信号Saw0および第2鋸波信号Saw1の電位が鋸波ボトム電圧信号Vbtmの電位以下になったことを検出して、自動的にLowになる。
このとき、鋸波底部電位検出コンパレータ98および鋸波同期クロック遅延回路911により生じる遅延により、鋸波信号の電位はほぼ接地電源電位0Vとなる。第1鋸波リセット信号Rst0および第2鋸波リセット信号Rst1がLowの期間、第1鋸波信号Saw0および第2鋸波信号Saw1それぞれの電位は一定速度で上昇する。
次段に、鋸波同期クロック信号Clkxを示す。鋸波位相信号PhipがLowのとき、第1鋸波信号Saw0の電位が鋸波ボトム電圧信号Vbtmの電位より高くなったときに(□印のタイミングで)Hiとなり、それ以外のときに(×印のタイミングで)Lowになる。同様に、鋸波位相信号PhipがHiのとき、第2鋸波信号Saw1の電位が鋸波ボトム電圧信号Vbtmの電位より高くなったときに(□印のタイミングで)Hiとなり、それ以外のときに(×印のタイミングで)Lowになる。
ここで、図13の左側、動作の初期段階を見ると、第1鋸波信号Saw0の電位上昇速度が想定より遅く、逆に、第2鋸波信号Saw1の電位上昇速度が想定より速くなっている。図中、第1鋸波信号Saw0および第2鋸波信号Saw1が鋸波トップ電位Vtopより高くなる交点に○印を付ける。すると、第1鋸波信号Saw0の電位上昇速度は想定より遅いため、鋸波トップ電位Vtopに達する前に接地電位0Vにリセットされ、しばらく○印が現れない。逆に、第2鋸波信号Saw1の電位上昇速度が想定より速いため、想定より早いタイミングで○印が現れ、その後も第2鋸波信号Saw1の電位が上昇し、鋸波トップ電位Vtopより高くなる。
次段に第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nを示し、更に次段に第2鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nを示す。第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nは、第1鋸波信号Saw0の電位が鋸波トップ電位Vtopより高くなる○印のタイミングで、Lowにセットされ、第2鋸波信号Saw1の電位が底部電位Vbtmより高くなる□印のタイミングで、Hiにリセットされる。同様に、第2鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nは、第2鋸波信号Saw1の電位が鋸波トップ電位Vtopより高くなる○印のタイミングで、Lowにセットされ、第1鋸波信号Saw0の電位が底部電位Vbtmより高くなる□印のタイミングで、Hiにリセットされる。
ここで、図13の左側、動作の初期段階では、第1鋸波信号Saw0の電位上昇速度が遅く、鋸波トップ電位Vtopに達しない、もしくは、高くなったとしても、その○印のタイミングが□印より遅れて現れるため、第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nが生成されない。逆に、第2鋸波信号Saw0の電位上昇速度が早く、想定より早く鋸波トップ電位Vtopに達するため、太いLowパルス幅の第2鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nが生成される。
第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nが生成されないので、第1鋸波リセット信号Rst0の作用だけを受けるため、第1鋸波電位上昇速度が上がる。この動作を繰り返して、やがて、第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nのパルス幅が第1鋸波リセット信号Rst0のパルス幅と同じになり、第1鋸波上昇速度が安定する。逆に、太い第2鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nの作用が第2鋸波リセット信号Rst1の作用を上回るため、第2鋸波電位上昇速度が下がる。この動作を繰り返して、やがて、第2鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nのパルス幅が第2鋸波リセット信号Rst1のパルス幅と同じになり、第2鋸波上昇速度が安定する。第1鋸波上昇速度と第2鋸波上昇速度は共通の回路を交互に使用して調整される。したがって、第1鋸波信号Saw0と第2鋸波信号Saw1の波形は完全に一致するように、自動的に調整される。
次段に鋸波選択信号Phipxと鋸波選択切り出し信号Phipxxを示す。鋸波選択信号Phipxは、鋸波同期クロック信号がHiに遷移するタイミングで、鋸波位相信号Phipの状態を鋸波選択信号フリップフロップ910の内部に取り込み、その状態を保持して、その状態を出力することにより生成される。鋸波選択切り出し信号Phipxxは同じタイミングで動作するため、鋸波選択信号Phipxと波形が重なっている。
次段に高直線性鋸波信号Sawを実線で示し、デューティ指示電圧信号Vdを破線で示す。また、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位より高くなる交点を●印で示す。高直線性鋸波信号Sawは、鋸波選択切り出し信号PhipxxがLowのとき第1鋸波信号Saw0を選択し、鋸波選択切り出し信号PhipxxがHiのとき第2鋸波信号Saw1を選択して生成される。
次段にPWMリセット信号Rnを示す。PWMリセット信号Rnは、高直線性鋸波信号Sawの電位がデューティ指示電圧信号Vdの電位より高いとき、つまり、●印のタイミングでLowになり、それ以外のとき、つまり、高直線性鋸波信号SawがリセットされるタイミングでHiになる。
最下段にパルス幅変調信号PWMpを示す。パルス幅変調信号PWMpは、鋸波同期クロック信号ClkxがHiになるタイミングでHiになり、PWMリセット信号RnがLowのときLowとなる。ここで、図13の左側の初期状態では、第1鋸波信号Saw0の電位上昇速度と第2鋸波信号Saw0の電位上昇速度が一致していない。その影響により、パルス幅変調信号PWMpがクロック信号Clkの半分の周波数で動作する、もしくは、太いパルス幅と細いパルス幅が交互に出現するという不具合が発生している。しかし、スイッチング動作を繰り返す内に、やがて、第1鋸波信号Saw0の電位上昇速度と第2鋸波信号Saw0の電位上昇速度は完全に一致するように自動的に調整され、安定したパルス幅のパルス幅変調信号PWMpが生成されるようになる。
以上説明したように、本実施形態に係るスイッチング電源100は、第1鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw0の電位と第2鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw1の電位とを、それぞれ第1鋸波リセット信号Rst0と第2鋸波リセット信号Rst1により所定の割合で降下させ、第1鋸波信号Saw0の鋸波電位上昇速度と第2鋸波信号Saw1の鋸波電位上昇速度とを同じ割合で増加させることとした。一方で、第1鋸波信号Saw0の鋸波電位上昇速度が想定より速すぎる場合、第1鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch0nを生成して、第1鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw0の電位を上げて、第1鋸波信号Saw0の鋸波電位上昇速度を減速する。同様に、第2鋸波信号Saw1の鋸波電位上昇速度が想定より速すぎる場合、第2鋸波電位上昇速度抑制パルス信号Dch1nを生成して、第2鋸波電位上昇速度制御信号Sisaw1の電位を上げて、第2鋸波信号Saw1の鋸波電位上昇速度を減速する。
これらの動作により、第1鋸波電位上昇速度と第2鋸波上昇速度は互いに同じ速さに自動的に調整される。これにより、クロック信号Clkの周期と一致し、且つ振幅が所望の電圧範囲となる高直線性の鋸波信号を生成することができる。本実施形態のスイッチング電源によれば、例えば第3実施形態のスイッチング電源に比べて、より安定して動作するスイッチング電源を提供することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態に係るスイッチング電源100は、入力電源電圧に対して、より低い電圧の出力電源を、逆に、より高い電圧の出力電源をも生成可能な昇降圧スイッチング電源に関するものである。その構成は、パルス変調器1、鋸波選択器912、およびスイッチングドライバ2が昇圧用と降圧用の二系統用意される点で第4実施形態に係るスイッチング電源100と相違する。以下では、第4実施形態に係るスイッチング電源100と相違する点に関して説明する。
図14は、第5実施形態に係るスイッチング電源100の構成例を示す図である。
降圧系統は、降圧PWM(PWM)1bkと、降圧スイッチングプレドライバ21と、降圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ22と、降圧非同期パワーダイオード23と鋸波選択器912aを備える。
一方、昇圧系統は、昇圧PWM(PWM)1btと、昇圧スイッチングプレドライバ24と、昇圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ25と、昇圧非同期パワーダイオード26とを備える。また、図15には、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkp、昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtp、昇圧スイッチングゲート信号Gbkp、昇圧スイッチングゲート信号Gbtp、昇圧デューティ指示電圧信号Vdbt、昇圧高直線性鋸波信号Sawbt、および降圧高直線性鋸波信号Sawbkが更に図示されている。なお、本実施形態に係る昇圧デューティ指示電圧信号Vdbtが、第2パルス幅指示電圧信号に対応し、昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpが第2パルス幅変調矩形波信号に対応する。なお、本実施形態に係る降圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ22が第1スイッチング素子に対応し、昇圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ25が第2スイッチング素子に対応する。
また、降圧系統と昇圧系統の間には新たに昇降圧デューティ指示ギャップ電圧源10aが設けられる。降圧PWM1bkは、降圧デューティ指示電圧信号Vdに従って、鋸波同期クロック信号Clkxに同期した降圧パルス幅変調矩形波信号PwmbkpのHiパルス幅を変調して出力する。
同様に、降圧PWM1btは、昇圧デューティ指示電圧信号Vdbtに従って、鋸波同期クロック信号Clkxに同期した昇圧パルス幅変調矩形波信号PwmbtpのHiパルス幅を変調して出力する。
昇降圧デューティ指示ギャップ電圧源10aは、降圧デューティ指示電圧信号Vdに対して昇降圧ギャップ電圧Vgap(不図示)分の電圧を下降させた昇圧デューティ指示電圧信号Vdbtを生成する。なお、昇降圧デューティ指示ギャップ電圧源10aは理想電圧源を用いて図示されるが、昇降圧ギャップ電圧Vgapの電位差を与えられるのであれば、どのような構成の回路であっても良い。
降圧スイッチングプレドライバ21は、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkpを受け、降圧スイッチングゲート信号Gbkpを出力する。
降圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ22のゲート端子に降圧スイッチングゲート信号Gbkpが入力され、ソース端子に降圧スイッチングノードSWBKが接続され、ドレイン端子に入力電源が接続される。降圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ22は、そのゲート端子の電位がそのソース端子の電位より高いとときにソース端子とドレイン端子の間の抵抗が非常に低いオン状態となり、それ以外のときにソース端子とドレイン端子の間の抵抗が非常に高いオフ状態となる。
降圧パルス幅変調矩形波信号PwmbkpがLowのとき降圧スイッチングゲート信号Gbkpの電位は降圧スイッチングノードSwbkの電位と等しくなる。一方で、降圧パルス幅変調矩形波信号PwmbkpがHiのとき降圧スイッチングゲート信号Gbkpの電位は降圧スイッチングノードSwbkの電位より高くなる。すなわち、降圧スイッチングノードSwbkは、降圧パルス幅変調矩形波信号PwmbkpがHiのときに入力電源に電気的に接続され、それ以外のときに開放される。
昇圧スイッチングプレドライバ24は、昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpが入力され、昇圧スイッチングゲート信号Gbtpを出力する。
昇圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ25のゲート端子に昇圧スイッチングゲート信号Gbtpが入力され、ソース端子に接地電源が接続され、ドレイン端子に昇圧スイッチングノードSWBTが接続される。
昇圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ25は、ゲート端子の電位がそのソース端子の電位より高いとときにソース端子とドレイン端子の間の抵抗が非常に低いオン状態となり、それ以外のときにソース端子とドレイン端子の間の抵抗が非常に高いオフ状態となる。
昇圧パルス幅変調矩形波信号PwmbtpがLowのとき昇圧スイッチングゲート信号Gbkpの電位は0Vとなり、昇圧パルス幅変調矩形波信号PwmbtpがHiのとき昇圧スイッチングゲート信号Gbtpの電位はHiとなる。すなわち、昇圧スイッチングノードSWBTは、昇圧パルス幅変調矩形波信号PwmbtpがHiのときに接地電源0Vに電気的に接続され、それ以外のときに開放される。降圧スイッチングノードSWBKと昇圧スイッチングノードSWBTは電流チョークインダクタ31を介して接続される。
降圧非同期パワーダイオード23のカソード端子に降圧スイッチングノードSWBKが接続され、アノード端子に接地電源が接続される。また、昇圧非同期パワーダイオード26のカソード端子に出力電源電圧Voutが接続され、アノード端子に昇圧スイッチングノードSWBTが接続される。
電流チョークインダクタ31に流れる電流は前述の降圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ22と昇圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタのオンオフ動作により整えられ、入力電源から出力電源電圧Voutが出力される。
出力電源電圧Voutには平滑キャパシタ32が接続されており、その電圧はフィードバック制御ループの働きにより、基準電圧源5基準電圧源5の電位Vrefにより設定される所定の値に保たれる。
降圧PWM1bkには、高直線性鋸波信号Sawbk、Sawbtと、これら高直線性鋸波信号Sawbk、Sawbtに同期する鋸波同期クロック信号Clkxが入力される。同様に、昇圧PWM1btには、高直線性鋸波信号Sawbk、Sawbtと、これら高直線性鋸波信号Sawbk、Sawbtに同期する鋸波同期クロック信号Clkxが入力される。
鋸波選択器912aには、降圧鋸波選択切り出し信号Phibkpxxが入力される。鋸波選択器912aは、降圧鋸波選択切り出し信号PhibkpxxがLowのとき第1鋸波信号Saw0を切り出して降圧高直線性鋸波信号Sawbkとして出力し、降圧鋸波選択切り出し信号PhibkpxxがHiのとき第2鋸波信号Saw1を切り出して降圧高直線性鋸波信号Sawbkとして出力する。
同様に、昇圧鋸波選択器912bには、昇圧鋸波選択切り出し信号Phibtpxxが入力される。昇圧鋸波選択切り出し信号PhibtpxxがLowのとき第1鋸波信号Saw0を切り出して昇圧高直線性鋸波信号Sawbtとして出力し、昇圧鋸波選択切り出し信号PhibtpxxがHiのとき第2鋸波信号Saw1を切り出して昇圧高直線性鋸波信号Sawbtとして出力する。
鋸波電圧検出器90dは、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkpおよび昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpの状態を監視して、降圧鋸波選択切り出し信号Phibkpxxおよび昇圧鋸波選択切り出し信号Phibtpxxを出力する。
図15は、第5実施形態に係るスイッチング電源100の動作波形図である。縦軸の上から順に、入力電源電圧Vin、出力電源電圧Vout、入力電源電圧Vin、出力電源電圧Vout、クロック信号Clk、降圧鋸波選択切り出し信号Phibkpxx、昇圧鋸波選択切り出し信号Phibtpxx、トップ電圧Vtop、降圧高直線性鋸波信号Sawbk、底部電位Vbtm、トップ電圧Vtop、昇圧高直線性鋸波信号Sawbt、底部電位Vbtm、鋸波同期クロック信号Clkx、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkp、昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpを示す。横軸は時間である。
すなわち、最上段の実線で入力電源の入力電源電圧Vinの変化の様子を示し、破線で出力電源電圧Voutの電圧を示す。このように、入力電源の入力電源電圧Vinが、出力電源電圧Voutの電圧に対して、十倍を超えるような高い状態から、半分を下回るほど低い状態に変化する。または、次段の実線で示すように一定電圧Vinの入力電源に対して、出力電源電圧Voutを0Vから二倍を超えるような高い電圧まで変化させて出力する。
次段に、クロック信号Clkを示す。実線で示すようにクロック信号Clkは一定周期の矩形波信号である。
次段に、降圧鋸波選択切り出し信号Phibkpxxを示す。降圧鋸波選択切り出し信号Phibkpxxは、後述する降圧パルス幅変調矩形波信号PwmbkpのHiデューティがある値より小さいときには、クロック信号ClkがHi遷移タイミングで状態が変化する二分周矩形波信号である。また、降圧鋸波選択切り出し信号Phibkpxxは、降圧パルス幅変調矩形波信号PwmbkpのHiデューティがある値より大きいときには、後述する降圧高直線性鋸波信号Sawbkがリセットされるタイミングで状態が変化する二分周矩形波信号である。
次段に、昇圧鋸波選択切り出し信号Phibtpxxを示す。昇圧鋸波選択切り出し信号Phibtpxxは、後述する昇圧パルス幅変調矩形波信号PwmbtpのHiデューティがある値より小さいときには、クロック信号ClkpがHi遷移タイミングで状態が変化する二分周矩形波信号である。また、昇圧鋸波選択切り出し信号Pwmbtpは、昇圧パルス幅変調矩形波信号PwmbtpのHiデューティがある値より大きいときには、後述する昇圧高直線性鋸波信号Sawbtがリセットされるタイミングで状態が変化する二分周矩形波信号である。
次段に実線で降圧高直線性鋸波信号Sawbkを示し、破線で降圧デューティ指示電圧信号Vdを示し、降圧高直線性鋸波信号Sawbkが降圧デューティ指示電圧信号Vdに対して高電位になる交点に●印をつけ、鋸波底部電位Vbtmとの交点もしくはそのリセットタイミングに□印を付ける。降圧高直線性鋸波信号Sawbkは、図示されない二つの鋸波信号Saw0またはSaw1を降圧鋸波選択切り出し信号Phibkpxxにより選択的に切り出して生成される。
次段に実線で降圧高直線性鋸波信号Sawbkを示し、破線で降圧デューティ指示電圧信号Vdを示し、降圧高直線性鋸波信号Sawbkが降圧デューティ指示電圧信号Vdに対して高電位になる交点に●印をつけ、鋸波底部電位Vbtmとの交点もしくはそのリセットタイミングに□印を付ける。昇圧高直線性鋸波信号Sawbtは、図示されない二つの鋸波信号Saw0またはSaw1を昇圧鋸波選択切り出し信号Phibtpxxにより選択的に切り出して生成される。
次段に鋸波同期クロック信号Clkxを示す。鋸波同期クロック信号Clkxは、前出の□印のタイミングでHiに遷移し、クロック信号ClkのHi遷移タイミングでLowに遷移する矩形波信号である。
次段に降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkpを示す。降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkpは、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミング(図中の□印のタイミング)でHiに遷移し、降圧デューティ指示電圧信号Vdの電位より降圧高直線性鋸波信号Sawbkの電位が高くなるタイミング(図中の●印のタイミング)でLowに遷移する。ここで、図中左端の状態のように、デューティ指示電圧信号Vdの電位が底部電位Vbtmより低い場合には、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkpは生成されず、Low保持となる。そして、降圧デューティ指示電圧信号Vdの電位が底部電位Vbtmを僅かに上回ると、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkpは非常に細いHiパルス幅の矩形波信号となる。
逆に、図中右端の状態のように、降圧デューティ指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopより高い場合には、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkpは100%デューティの矩形波信号、つまり、Hi保持となる。また、降圧デューティ指示電圧信号Vdの電位が鋸波トップ電位Vtopより僅かに低いときには、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmpは一瞬だけLowとなるデューティが100%に近い矩形波信号となる。
同様に、最下段に次段に昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpを示す。昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpは、鋸波同期クロック信号ClkxがHiに遷移するタイミング(図中の□印のタイミング)でHiに遷移し、昇圧デューティ指示電圧信号Vdbtの電位より昇圧高直線性鋸波信号Sawbtの電位が高くなるタイミング(図中の●印のタイミング)でLowに遷移する。ここで、図中左端の状態のように、昇圧デューティ指示電圧信号Vdbtの電位が底部電位Vbtmより低い場合には、昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpは生成されず、Low保持となる。そして、昇圧デューティ指示電圧信号Vdbtの電位が底部電位Vbtmを僅かに上回ると、昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpは非常に細いHiパルス幅の矩形波信号となる。
さらに、昇圧デューティ指示電圧信号Vdbtの電位が上昇すると、それに従って昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpは100%のデューティは増大するする。
図16は、第5実施形態に係る高直線性鋸波発生器9と、降圧PWM1bkと、昇圧PWM1btとの詳細な構成例を示す図である。図16には、太い降圧パルス幅判定信号Widebkp、太い昇圧パルス幅判定信号Widebkt、昇圧デューティ指示電圧信号Vdbt、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkp、昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpが更に図示されている。
降圧PWM1bkは、降圧PWMコンパレータ11bkと降圧パルス生成用フリップフロップ12bkにより構成される。
同様に、昇圧PWM1btは昇圧PWMコンパレータ11btと昇圧パルス生成用フリップフロップ12btにより構成される。両者の構成と動作は第4実施形態のPWM1と同様なので、説明を省略する。本実施形態に係る昇圧PWMコンパレータ11btが第3検出器に対応し、昇圧パルス生成用フリップフロップ12btが第2パルス幅変調矩形波信号生成回路に対応する。
高直線性鋸波発生器9には、降圧鋸波発生系と昇圧鋸波発生系の二系統の回路が搭載される。降圧鋸波発生系は、降圧太いパルス幅判定用フリップフロップ918bkと降圧鋸波選択タイミング切り替えスイッチ919bkと鋸波選択器912aから構成される。
同様に、昇圧鋸波発生系は、昇圧太いパルス幅判定用フリップフロップ918btと昇圧鋸波選択タイミング切り替えスイッチ919btと昇圧鋸波選択器912btから構成される。両者の構成と動作は第4実施形態の太いパルス幅判定用フリップフロップ918、鋸波選択タイミング切り替えスイッチ919、鋸波選択器912と同様なので、説明を省略する
昇降圧スイッチング電源の場合、入出力電源の電位関係が変動すると、降圧スイッチングパルス幅と昇圧スイッチングパルス幅が0%から100%の間で変化する。パルスが消える間際、または、フル稼働になる間際の変化がスムーズであることが重要である。
パルス幅が急激に変化するようでは、出力電源電圧が急激に変化したり、周期的に変動したり、などという不具合が発生する。その対策として、パルス幅の変化量を例えば10%から90%までの間に制限するなどという手段があるが、入出力電源の電圧比率が大きい場合、不要なスイッチング動作を伴うことになり、変換電力効率が悪化する。
以上のように本実施形態によれば、高直線性鋸波信号Sawの振幅を切り替え、降圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ22を制御する降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkpと、昇圧スイッチングドライバN型MOSトランジスタ25を制御する昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpとを生成することとした。これにより、降圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbkpと昇圧パルス幅変調矩形波信号Pwmbtpとをそれぞれ独立に、デューティを0%から100%に至るまでの広い範囲で連続的に制御することが可能となる。このため、昇圧動作、昇降圧動作、降圧動作をスムーズに切り替えることが可能となる。このように、入出力電源の電位関係が変動する場合にも、変換電力効率が高く、安定して動作する昇降圧スイッチング電源を提供することができる。