以下に説明する実施形態は、本開示の種々の実施形態の一つに過ぎない。本開示の実施形態は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外も含み得る。また、下記の実施形態は、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(実施形態)
(1)概要
本実施形態の分電盤用キャビネット10は、図1~図4に示すように、本体11と、蓋体14とを備える。本体11は、ブレーカ2(例えば主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4等)を収容し(図5参照)、取付位置に取り付けられる。蓋体14は本体11の前面を覆う。蓋体14は、本体11の前面を覆う閉位置(図3及び図4参照)と、本体11の前面の少なくとも一部を覆わない開位置(図1及び図2参照)との間で移動可能である。開位置は、蓋体14が閉位置から、本体11の前面の法線方向L1(図2参照)に対して直交する方向L2に移動した位置である。
本実施形態の分電盤1は、分電盤用キャビネット10と、分電盤用キャビネット10に収容されるブレーカ2と、を含む。
以下の説明では、特に断りがない限り、図1~図4においてX軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向(奥行き方向)、Z軸方向を上下方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを右側、Y軸方向の正の向きを前側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、分電盤用キャビネット10及び分電盤1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
本体11が取り付けられる取付位置は、例えば、分電盤用キャビネット10が設置される建物(戸建て住宅、集合住宅の住戸、テナントビル等)内の部屋の壁100である。なお、取付位置は建物内の部屋の壁100に限定されず、部屋の天井又は床等の造営材でもよい。本体11の前面とは、本体11に収容されたブレーカ2の操作レバーが露出している面であり、取付位置(壁100)と対向する本体11の面(後面)と反対側の面である。また、本体11の前面(つまり、カバ-13の前面130)の法線方向L1に対して直交する方向L2とは、法線方向L1と直角に交差している方向に限定されず、人の目で見てほぼ直交しているとみなせる方向であれば、直交方向から多少(数度程度)ずれていてもよい。
上述のように、蓋体14の開位置(図2において実線で示した位置)は、蓋体14が、蓋体14の閉位置(図2において二点鎖線で示した位置)から、本体11の前面の法線方向L1に対して直交する方向L2に移動した位置である。したがって、蓋体14を開ける場合に蓋体14が他の物体と干渉しにくくなるので、分電盤用キャビネット10の取付位置の周囲にある物体等によって分電盤用キャビネット10の取付位置が制約を受けにくくなる。よって、取付位置の自由度を向上することが可能な分電盤用キャビネット10及び分電盤1を提供できるという利点がある。
(2)詳細
以下、本実施形態に係る分電盤用キャビネット10及び分電盤用キャビネット10を備える分電盤1について図1~図6を参照して説明する。
分電盤1は、図5に示すように、分電盤用キャビネット10と、ブレーカ2と、電流計測装置5と、計測アダプタ6と、を備えている。本実施形態では、ブレーカ2は、主幹ブレーカ3と、複数の分岐ブレーカ4とを含んでいる。なお、分電盤1の分電盤用キャビネット10には少なくともブレーカ2が収容されていればよく、分電盤用キャビネット10が、電流計測装置5及び計測アダプタ6を収容することは必須ではなく、適宜省略が可能である。
分電盤用キャビネット10の本体11は、前面が開口した箱状のボディ12と、ボディ12の開口を塞ぐカバー13と、を備えている。図5においては、カバー13の図示を省略している。分電盤用キャビネット10の本体11は、例えば建物の壁100に設けられた取付孔102内に全体が埋め込まれた状態で取り付けられている。分電盤用キャビネット10の本体11は、例えば、平均的な身長の子供では手が届かないような高さ位置であって、平均的な身長の大人であれば操作が可能なような高さ位置に設けられている。
また、分電盤用キャビネット10は、本体11が壁100に取り付けられた状態での本体11の前面(つまりカバー13の前面130)を覆う蓋体14を更に備える。蓋体14は、閉位置と開位置との間で移動可能な状態で本体11に取り付けられる。閉位置は本体11の前面を覆う位置(図3及び図4に示す位置)であり、開位置は本体11の前面の少なくとも一部を覆わない位置(図1及び図2に示す位置)である。なお、蓋体14は、ある方向から本体11を見た場合に本体11の一部を覆っていればよく、本実施形態では、閉位置にある蓋体14は、本体11を前方から見た場合に本体11の前面の一部を覆っている。
分電盤用キャビネット10の本体11の内部には、主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、電流計測装置5、及び計測アダプタ6が収容されている。主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、電流計測装置5、及び計測アダプタ6は、ボディ12に直接又は取付用の金具等を介して取り付けられている。図5の例では、本体11の内部において、計測アダプタ6、主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4は、左右方向において左からこの順に配置されている。
主幹ブレーカ3は、本体11の内部において、左右方向の中央よりもやや左側の位置に配置されている。なお、本体11内での主幹ブレーカ3の位置は、例えば中央よりも右側等、他の位置であってもよい。主幹ブレーカ3は、一次側端子31と、二次側端子と、を備えている。主幹ブレーカ3は、一次側端子31と二次側端子との間の電路に接続された接点32(図6参照)を備える。主幹ブレーカ3は、接点32をオン又はオフにするための操作レバー33を前面に備えている。また、主幹ブレーカ3は、例えば接点32に漏電電流又は過負荷電流等の過電流が流れる異常状態を検知すると、異常時に接点32を遮断する遮断部34(図6参照)を備えている。
本実施形態の分電盤1では、配電方式として単相三線式を想定しているので、主幹ブレーカ3の一次側端子31には、系統電源(商用電源)の単相三線式の引込線200が電気的に接続される。本実施形態では、ボディ12に配置された接続端子124に引込線200が電気的に接続されており、接続端子124と主幹ブレーカ3の一次側端子31との間は配線部材125を介して電気的に接続されている(図5参照)。なお、分電盤用キャビネット10に接続端子124及び配線部材125が備えられていることは必須ではなく、引込線200が主幹ブレーカ3の一次側端子31に直接接続されていてもよい。
また、主幹ブレーカ3の二次側端子には、第1電圧極(L1相)の導電バー、第2電圧極(L2相)の導電バー、及び中性極(N相)の導電バーが接続されている。各導電バーは、導電部材により左右方向に長い長尺板状に形成されており、本体11の内部において、上下方向の中央であって主幹ブレーカ3の右側の位置に配置されている。
複数の分岐ブレーカ4は、各導電バーの上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、図5に示すように、各導電バーの上側には、12個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。また、各導電バーの下側には、12個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。
各分岐ブレーカ4は、一対の一次側端子と、一対の二次側端子と、を備えている。各分岐ブレーカ4は、一次側端子と二次側端子との間に電気的に接続される接点を有している。各分岐ブレーカ4の前面には、接点をオン又はオフにするための操作レバー41が設けられている。
分岐ブレーカ4には、100V用と200V用とがある。100V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バー及び第2電圧極の導電バーのうちの一方と、中性極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。200V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バーと、第2電圧極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。また、分岐ブレーカ4の二次側端子には、対応する配線が電気的に接続される。各分岐ブレーカ4の二次側端子に接続された配線には、例えば、照明器具、空調機器、テレビ受像器、給湯設備等の機器、コンセント(アウトレット)7(図6参照)又は壁スイッチ等の配線器具が負荷として1つ以上接続される。
ここで、図5に示すように、ブレーカ2を収容するボディ12の底壁には、底壁を前後方向に貫通する貫通孔121が設けられており、本体11の外部から貫通孔121を通して本体11の内部に導入された電線がブレーカ2等に電気的に接続される。また、ボディ12の上部の周壁122には、周壁122を上下方向に貫通する貫通孔123が設けられている。換言すると、本体11は、ブレーカ2に接続される電線を、前後方向と交差する一方向(本実施形態では上下方向)に沿って本体11の外部から内部に導入させるための電線挿入口となる貫通孔123を有している。なお、電線挿入口は、ボディ12の下部の周壁122に設けられてもよいし、ボディ12の右側部又は左側部の周壁122に設けられていてもよいし、周壁122の複数箇所に電線挿入口が設けられていてもよい。
本実施形態の分電盤用キャビネット10は、取付孔102内に本体11の全体が埋め込まれた状態で壁100に取り付けられているので、本体11の後部のみが壁100に埋め込まれている場合に比べて、本体11の後側の空間が狭くなる。本実施形態では、ボディ12の上部の周壁122に貫通孔123が設けられているので、図5に示すように、本体11の上側から、貫通孔123を通して、本体11の内部に引込線200を挿入することができる。したがって、ボディ12の後側の空間が狭い場合でも、施工業者等は、分電盤1に収納されたブレーカ2等に電線を接続する作業を容易に行うことができる。
また、本実施形態の分電盤用キャビネット10は、接続端子124と、配線部材125とを更に備えている(図5参照)。接続端子124には、本体11の外部から導入される電線(引込線200)が電気的に接続される。配線部材125は、本体11(具体的にはボディ12)に配置されて、接続端子124とブレーカ2(図5の例では主幹ブレーカ3)との間を電気的に接続する。配線部材125は、導電部材により幅寸法が一定の板状に形成されている。接続端子124とブレーカ2との間が配線部材125を介して電気的に接続されているので、ブレーカ2に接続される電線を本体11の内部で曲げるためのスペースを確保する必要がない、という利点がある。本実施形態では、配線部材125は、接続端子124と主幹ブレーカ3との間を電気的に接続しているが、本体11には、接続端子と分岐ブレーカ4との間を電気的に接続する配線部材が配置されてもよい。なお、分電盤用キャビネット10が、接続端子124と配線部材125とを備えることは必須ではなく、本体11の外部から本体11の内部に導入された電線がブレーカ2(主幹ブレーカ3又は分岐ブレーカ4)に直接接続されてもよい。
電流計測装置5は、複数の分岐ブレーカ4の各々に接続された負荷に流れる電流を計測するように構成されている。電流計測装置5は、例えば、基板と、複数のコイルと、を有している。基板は、左右方向に長い板状である。基板には、複数の孔が形成されている。複数の孔には、導電バーから延びて分岐ブレーカ4の一次側端子に接続される端子がそれぞれ挿入される。コイルは、例えばロゴスキコイルであり、基板の孔の周りに形成されている。本実施形態では、電流計測装置5は、複数の分岐ブレーカ4の各々に流れる電流を計測する。なお、電流計測装置5はロゴスキコイルを有するものに限定されず、例えば、変流器(カレントトランス)、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗等のセンサを有するものでもよい。
計測アダプタ6は、本体11の内部において、主幹ブレーカ3の左側に配置されている。計測アダプタ6は、分電盤1内の主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の少なくとも一方を通過する電力を計測する計測機能、及び本体11の外部に配置された機器と通信する通信機能を有している。
より詳しくは、本実施形態の計測アダプタ6は、主幹ブレーカ3に流れる電流を計測する主幹電流計測装置、及び電流計測装置5と電気的に接続されている。ここに、主幹電流計測装置は、例えばカレントトランス(CT)からなる電流センサを備えている。そして、計測アダプタ6は、電流計測装置5及び主幹電流計測装置が計測した電流の値に基づいて電力値を演算する機能(計測機能)を有している。
また、計測アダプタ6は、HEMS(Home Energy Management System)に対応する機器(以下、HEMS対応機器という)の制御又は監視を行うように構成されたコントローラとの間で通信する機能(通信機能)を有している。コントローラは、本体11の外部に配置された機器である。ここに、HEMS対応機器は、例えばスマートメータ、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池、電気自動車、エアコン、照明器具、給湯装置、冷蔵庫、又はテレビ受像機等を含む。なお、HEMS対応機器は、これらの機器に限定されない。
計測アダプタ6とコントローラとの間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。計測アダプタ6とコントローラとの間の通信方式は、有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、計測アダプタ6とコントローラとの間の通信における通信プロトコルは、例えば、Ethernet(登録商標)、ECHONET Lite(登録商標)等である。
本実施形態の分電盤1では、計測アダプタ6は、電流計測装置5が計測した複数の分岐ブレーカ4の各々に流れる電流値を、電流計測装置5から受け取る。さらに、計測アダプタ6は、主幹電流計測装置が計測した電流値を主幹電流計測装置から受け取る。計測アダプタ6は、電流計測装置5、及び主幹電流計測装置が計測した電流値のそれぞれを電力値(瞬時電力値)に変換する。計測アダプタ6は、収集した瞬時電力のデータを所定時間に亘って積算した電力量のデータを演算する機能を有している。したがって、計測アダプタ6と通信するコントローラは、複数の分岐ブレーカ4に接続された複数の負荷の各々での瞬時電力や電力量に基づいてHEMS対応機器を制御又は監視することができる。
また、計測アダプタ6は、太陽光発電装置、蓄電装置、及び電気自動車に電気的に接続される電力変換装置のうちの少なくとも1つとの間で通信する機能(通信機能)を有している。なお、電力変換装置は、分電盤1から電気自動車への単方向充電を行うための電力変換の他、双方向に電力変換を行うことで電気自動車の蓄電池の充電と放電との両方に用いられる構成であってもよい。
また、計測アダプタ6は、ガスメータと水道メータとの少なくとも一方との通信機能を有している。計測アダプタ6と太陽光発電装置、蓄電装置、及び電力変換装置との間の通信方式は、例えば、RS-485等の通信規格に準拠した有線通信である。計測アダプタ6とガスメータ、水道メータとの間の通信方式は、有線通信に限らず、無線通信であってもよい。なお、計測アダプタ6は、例えば、貯湯型の給湯装置(エコキュート(登録商標))等と通信可能であってもよい。
本体11は、壁100の取付孔102に本体11の全体が埋め込まれた状態で、壁100に取り付けられる。本体11は、例えば挟み金具を用いて、石膏ボードのような壁100を挟むことによって、壁100に固定されている。なお、本体11は、建物の躯体等に固定されたボルトを用いて壁100に固定されてもよい。
ボディ12の開口は、後面が開口した箱状のカバー13によって覆われている。カバー13には、主幹ブレーカ3の操作レバー33を露出させるための窓孔131と、分岐ブレーカ4の操作レバー41を露出させるための窓孔132と、計測アダプタ6の操作ボタンを露出させるための窓孔133とが設けられている。したがって、ボディ12の開口にカバー13が取り付けられた状態では、カバー13の窓孔131,132,133から主幹ブレーカ3の操作レバー33、分岐ブレーカ4の操作レバー41、及び計測アダプタ6の操作ボタンが露出している。
分電盤用キャビネット10の本体11には、本体11の前面を覆う蓋体14(図1~図4参照)が取り付けられている。
蓋体14は矩形の板状であり、上下方向に移動可能なように、本体11に取り付けられている。壁100には、蓋体14が入り込む凹部103が取付孔102の下側に設けられている。取付孔102及び凹部103には、蓋体14の左右の端部が挿入されるガイド溝104が上下方向に沿って形成されている。蓋体14の前面141の上部には取っ手142が設けられている。図2及び図4は概略図であり、図2及び図4では、取っ手14の前端が壁100の表面101よりも前方に突出しているように図示されているが、実際には、取っ手14の前端が壁100の表面101から前方に突出しないように取っ手14が形成されている。カバー13の前面130には、上下方向に沿って延びる一対のガイド溝134が左右両側にそれぞれ形成されている。蓋体14の後面には、一対のガイド溝134にそれぞれ挿入される一対の突起143が設けられている。したがって、蓋体14は、突起143がガイド溝134に挿入され、蓋体14の左右の端部がガイド溝104に挿入された状態で、上下方向に移動可能な状態で本体11に取り付けられている。
ここで、分電盤1のユーザ(例えば建物の使用者)が蓋体14の取っ手142を持って蓋体14を可動範囲の上端まで移動させると、例えば蓋体14の突起143が、ガイド溝134内の突起135に引っ掛かることで、蓋体14が可動範囲の上端に移動した状態で保持される。図3及び図4は蓋体14が可動範囲の上端に移動している状態を示し、蓋体14が可動範囲の上端に移動している状態では、蓋体14によって本体11の前面の全体が覆われている。つまり、蓋体14が可動範囲の上端に移動したときの位置が、蓋体14が本体11の前面を覆う閉位置となる。
ここで、蓋体14に設けられた突起143は、例えば取っ手142の上面に設けられたボタンが下向きに押されると、前方に移動するように構成されている。蓋体14が閉位置に保持されている状態で、ユーザが取っ手142に設けられたボタンを下向きに押すと、突起143が前方に移動し、蓋体14の突起143が突起135と引っ掛かっている状態が解除されるので、蓋体14が自重によって下側へと移動する。これにより、蓋体14の左右の端部がガイド溝104にガイドされるとともに、突起143がガイド溝134にガイドされながら、蓋体14は下向きに移動する。ここで、蓋体14が急速に落下しないように、摩擦力等で蓋体14の落下速度を減速させるブレーキが設けられていてもよい。図1及び図2は蓋体14が可動範囲の下端に移動している状態を示し、蓋体14が可動範囲の下端に移動している状態では、蓋体14は、前方から見て本体11の前面の一部しか覆っておらず、本体11の前面の略全体が露出している。つまり、蓋体14が可動範囲の下端に移動したときの位置が、蓋体14が本体11の前面の少なくとも一部を覆わない開位置となる。蓋体14が開位置に移動している状態では、主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の操作レバー33,41、及び計測アダプタ6の操作ボタン等が露出しているので、ユーザは操作レバー33,41及び計測アダプタ6の操作ボタン等を操作することができる。
また、本実施形態の分電盤用キャビネット10は、主幹ブレーカ3の遮断部34が接点32を遮断すると、蓋体14を閉位置から開位置に移動させる開閉部71(図6参照)を、更に収容している。開閉部71は、主幹ブレーカ3の一次側から動作に必要な電力を得ている。開閉部71は、例えば主幹ブレーカ3の一次側端子31の電圧と二次側端子の電圧とを監視し、一次側端子31に交流電圧が印加されている状態で二次側端子の電圧がゼロになると、遮断部34が接点32を遮断したと判断する。ここで、カバー13のガイド溝134に設けられた突起135は前後方向に移動可能である。開閉部71は、遮断部34が接点32を遮断したと判断すると、例えばソレノイド等のアクチュエータを用いて、蓋体14の突起143が突起135と引っ掛かっている状態が解除される位置まで、突起135を後側に移動させる。例えば、蓋体14が閉位置にある状態で、主幹ブレーカ3の遮断部34が接点32を遮断すると、開閉部71が突起135を後側に移動させて、蓋体14の突起143が突起135と引っ掛かっている状態を解除する。これにより、蓋体14が自重によって閉位置から開位置に移動し、本体11の前面に配置された主幹ブレーカ3の操作レバー33及び分岐ブレーカ4の操作レバー41が露出する。よって、ユーザは、主幹ブレーカ3の操作レバー33がオフ位置に移動している状態を確認できる。なお、開閉部71は、ソレノイド等のアクチュエータを有するものに限定されず、ばね等を利用した機構でもよく、適宜変更が可能である。
なお、各分岐ブレーカ4も、漏電電流又は過負荷電流等の過電流が流れる異常時に接点を遮断する遮断部を備えている。開閉部71は、例えば、電流計測装置5が計測した各分岐ブレーカ4の電流値に基づいて分岐ブレーカ4の接点が遮断されたことを検知できる。したがって、開閉部71は、いずれかの分岐ブレーカ4の遮断部が接点を遮断したことを検知すると、蓋体14を閉位置から開位置に移動させてもよい。
また、開閉部71は、主幹ブレーカ3又は分岐ブレーカ4の接点がオンになることをトリガとして、モータ等のアクチュエータで蓋体14を開位置から閉位置に移動させてもよい。
上述のように、本実施形態では、蓋体14は、開位置と閉位置との間で上下方向に沿って平行に移動している。つまり、蓋体14の開位置は、蓋体14が閉位置から、本体11の前面(つまり、カバー13の前面130)の法線方向L1に対して直交する方向L2に移動した位置となっている。そして、蓋体14の開位置は、閉位置から前側に出ていない。したがって、蓋体14が、壁100の室内側にある物体と干渉しにくくなり、壁100の室内側にある物体によって蓋体14の開閉動作が妨げられにくくなる。また、蓋体14は、壁100の表面101よりも前側に位置していないので、壁100の室内側の空間の利用形態によって分電盤用キャビネット10の設置場所が制約を受けにくくなり、分電盤用キャビネット10の設置場所の自由度が向上するという利点がある。
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
上記実施形態では、分電盤用キャビネット10は、壁100の取付孔102に本体11の全体が埋め込まれた状態で壁100に取り付けられているが、取付孔102に本体11の後部のみが埋め込まれた状態で壁100に取り付けられてもよい。また、分電盤用キャビネット10は、本体11の全体を壁100から露出させた状態で壁100に取り付けられていてもよい。
(3.1)変形例1
変形例1の分電盤用キャビネット10は、図7~図10に示すように、ロール状のシャッター構造を有する蓋体14Aを備える点で上記実施形態と相違する。なお、上記実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
蓋体14Aは、巻取部146によって巻き取り又は繰り出されるシャッター部材144を含む。蓋体14Aは複数のシャッター部材144を有している。複数のシャッター部材144の各々は、合成樹脂材料又は金属材料により、左右方向に長い長方形の板状に形成されている。複数のシャッター部材144の各々は、左右方向の寸法が取付孔102の左右方向の寸法よりもやや短い寸法に設定されている。複数のシャッター部材144は、折り曲げ可能な状態で互いに連結されている。複数のシャッター部材144のうち、蓋体14Aが閉位置に移動した状態で最下端に位置するシャッター部材144の下端部には、前方に突出する突起145(図8及び図10参照)が設けられている。また、取付孔102の左側及び右側の内面にはガイド溝が上下方向に沿って設けられている。シャッター部材144の左側及び右側の端部は、取付孔102の左側及び右側の内面にそれぞれ設けられたガイド溝に挿入されており、シャッター部材144はガイド溝に沿って上下動する。
巻取部146は、複数のシャッター部材144を巻き取るためのドラムを有している。巻取部146はドラムを回転させることによって、シャッター部材144の巻き取り又は繰り出しを行う。巻取部146がシャッター部材144を繰り出すことによって蓋体14Aが閉位置に移動し、巻取部146がシャッター部材144を巻き取ることによって蓋体14Aが開位置に移動する。
ここで、図9及び図10に示すように蓋体14Aが閉位置にある状態では、本体11の前面が蓋体14Aによって覆われており、分電盤1のユーザは、外部から本体11の前面に配置された主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の状態を目視で確認することはできない。また、本体11の前面が蓋体14Aによって覆われているので、分電盤1のユーザは、本体11の前面に配置された主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の操作レバー33、41を操作することはできない。
蓋体14Aが閉位置にある状態で、分電盤1のユーザが、最下端のシャッター部材144の突起145を上向きに押すと、複数のシャッター部材144は左右の端部がガイド溝にガイドされながら上側に移動する。これにより、巻取部146によって複数のシャッター部材144が巻き取られ、最下端のシャッター部材144が取付孔102の上端付近まで移動すると、蓋体14Aが閉位置から開位置に移動した状態となる。なお、巻取部146は、シャッター部材144の巻き取り又は繰り出しが止まると、その位置でシャッター部材144が止まるように構成されている。
一方、図7及び図8に示すように蓋体14Aが開位置にある状態で、分電盤1のユーザが、最下端のシャッター部材144の突起145を下向きに引くと、巻取部146からシャッター部材144が繰り出される。巻取部146から繰り出されたシャッター部材144は、左右の端部がガイド溝にガイドされながら下側に移動し、最下端のシャッター部材144が取付孔102の下端部付近に達すると、蓋体14Aが開位置から閉位置に移動した状態となる。
なお、本変形例において巻取部146が、ドラムを回転させる電動モータ等を備え、ユーザの操作に応じてコントローラが電動モータの回転を制御することで、蓋体14Aを電動で開閉させてもよい。
(3.2)変形例2
変形例2の分電盤用キャビネット10では、図11及び図12に示すように、ブラインド方式の蓋体14Bを備える点で上記実施形態及び変形例1と相違する。なお、上記実施形態又は変形例1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
蓋体14Bは、板状に形成された複数の蓋部材147(いわゆるスラット)を含む。複数の蓋部材147が本体11の前面と平行な方向において重ねられることによって蓋体14Bが開位置に移動し、複数の蓋部材147が本体11の前面に沿って並べられることによって蓋体14Bが閉位置に移動する。ここで、本体11の前面と平行な方向とは、本体11の前面と完全に平行である方向に限定されず、人の目で見てほぼ平行とみなせる方向であれば、数度程度の角度で交差していてもよい。
複数の蓋部材147の各々は、合成樹脂材料又は金属材料により、左右方向に長い長方形の板状に形成されている。複数の蓋部材147の各々は、左右方向の寸法が取付孔102の左右方向の寸法よりもやや短い寸法に設定されている。複数の蓋部材147は、各蓋部材147の向きを変えたり、各蓋部材147を上昇又は下降させたりするための昇降コード148を介して互いに連結されている。
図12に示すように蓋体14Bが閉位置にある状態では、本体11の前面が蓋体14Bによって覆われており、分電盤1のユーザは、外部から本体11の前面に配置された主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の状態を目視で確認することはできない。また、本体11の前面が蓋体14Bによって覆われているので、分電盤1のユーザは、本体11の前面に配置された主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の操作レバー33、41を操作することはできない。
蓋体14Bが閉位置にある状態では、複数の蓋部材147の厚み方向が本体11の前面の法線方向と平行になり、複数の蓋部材147の幅方向が本体11の前面の法線方向と直交するように、複数の蓋部材147は本体11の前面に沿って並べられている。
蓋体14Bが閉位置にある状態で、分電盤1のユーザが昇降コード148を一方向に引っ張ると、複数の蓋部材147の厚み方向が本体11の前面の法線方向と直交するように、複数の蓋部材147の向きが変えられる。分電盤1のユーザが昇降コード148を一方向に引き続けると、複数の蓋部材147が上昇していき、複数の蓋部材147が、取付孔102の上部において、厚み方向に重ねられた状態となる(図11参照)。このとき、複数の蓋部材147は本体11の前面と平行な方向において重ねられた状態となり、蓋体14Bが開位置に移動した状態となる。
一方、蓋体14Bが開位置にある状態で、分電盤1のユーザが昇降コード148を反対方向に引っ張ると、複数の蓋部材147が下降する。ユーザが昇降コード148を反対方向に引き続け、複数の蓋部材147が最下点まで下降すると、複数の蓋部材147の厚み方向が本体11の前面の法線方向と平行になるように、複数の蓋部材147の向きが変えられる(図12参照)。このとき、複数の蓋部材147は本体11の前面に沿って並べられた状態となり、蓋体14Bが閉位置に移動した状態となる。
なお、本変形例において、昇降コード148の巻き取り又は繰り出しを行う電動モータを備え、ユーザの操作に応じてコントローラが電動モータの回転を制御することで、蓋体14Bを電動で開閉させてもよい。
(3.3)変形例3
変形例3の分電盤用キャビネット10では、図13及び図14に示すように、カーテン方式の蓋体14Cを備える点で上記実施形態及び変形例1、2と相違する。なお、上記実施形態又は変形例1、2と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
蓋体14Cは、レール149に吊り下げられた幕150を含む。幕150は、レール149に沿って、開位置と閉位置との間で移動可能である。
レール149は、壁100の取付孔102の上部に取り付けられている。なお、レール149は、本体11の前面の上部に取り付けられていてもよい。
レール149には、レール149の長手方向に沿って移動可能な複数のランナーが取り付けられている。レール149には左右一対の幕150が吊り下げられている。左右の幕150の各々は、合成樹脂又は天然繊維で形成された布状である。左右の幕150の各々は、複数のランナーを介してレール149に吊り下げられており、レール149の長手方向(左右方向)に沿って移動可能である。
図14に示すように蓋体14Cが閉位置にある状態では、本体11の前面が左右の幕150によって覆われており、分電盤1のユーザは、外部から本体11の前面に配置された主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の状態を目視で確認することはできない。また、本体11の前面が蓋体14Cによって覆われているので、分電盤1のユーザは、本体11の前面に配置された主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の操作レバー33、41を操作することはできない。
蓋体14Cが閉位置にある状態で、分電盤1のユーザが左側の幕150を左側に引き、右側の幕150を右側に引くと、図13に示すように、幕150によって本体11の前面が覆われていない状態となり、蓋体14Cが開位置に移動した状態となる。なお、分電盤1のユーザが、左側の幕150及び右側の幕150のうちの一方を開くと、一方の幕150の動きに連動して、他方の幕150が開くように構成されていてもよい。
また、蓋体14Cが開位置にある状態で、分電盤1のユーザが左側の幕150を右側に引き、右側の幕150を左側に引くと、図14に示すように、2枚の幕150によって本体11の前面が覆われた状態となり、蓋体14Cが閉位置に移動した状態となる。これにより、蓋体14Cによって本体11の前面(つまり、カバー13の前面130)が覆われた状態となり、本体11の前面に配置された主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、及び計測アダプタ6の前面を隠すことができる。
なお、本変形例において、幕150の開閉を電動で行う電動モータを備え、ユーザの操作に応じてコントローラが電動モータの回転を制御することで、蓋体14Cを電動で開閉させてもよい。
(3.4)変形例4
変形例4の分電盤用キャビネット10は、図15A及び図15Bに示すように、移動機構81を更に備える点で上記実施形態及び変形例1~3と相違する。移動機構81は、蓋体14を、閉位置から本体11の前面の法線方向L3における片側(例えば前側)に移動させながら、本体11の前面の法線方向L1と直交する方向L4に移動させる。なお、上記実施形態又は変形例1~3と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
変形例4の分電盤用キャビネット10では、蓋体14の後面の左右にはそれぞれ一対のリンク151,152が取り付けられている。リンク151,152の一端は、蓋体14に対して回転可能な状態で取り付けられている。リンク151,152の他端には軸が設けられており、リンク151,152の他端に設けられた軸は、壁100の取付孔102の内面に設けられたガイド溝107に挿入されている。ガイド溝107の上側部分及び下側部分はそれぞれ上下方向に沿って延びている。ガイド溝107の下側部分は、ガイド溝107の上側部分よりも前方に位置しており、ガイド溝107の下側部分と上側部分との間は上下方向に対して斜めに延びる中間部分によって繋げられている。ここにおいて、蓋体14に設けられたリンク151,152と、壁100に設けられたガイド溝107とで移動機構81が構成されている。
図15Aは、蓋体14が閉位置にある状態を示している。蓋体14が閉位置にある状態では、例えばリンク151の軸が取付孔102の内面に設けられた突起と引っ掛かることで、蓋体14が閉位置に保持されている。蓋体14を閉位置から開位置に移動させる場合、ユーザは、例えば取っ手142に設けられたボタンを押すことで、リンク151の軸を突起から離れる方向に移動させ、リンク151の軸と突起とが引っ掛かっている状態を解除する。これにより、蓋体14が閉位置で保持された状態が解除され、リンク151,152の軸がガイド溝107によってガイドされながら、蓋体14が自重で下方(図15Bの矢印D1の方向)に移動する。そして、図15Bに示すように、リンク151,152の軸がガイド溝107の下端まで移動すると、蓋体14が開位置に移動した状態となり、本体11の前面のほぼ全体が蓋体14によって覆われていない状態となる。すなわち、蓋体14が開位置に移動した状態では、本体11の前面のほぼ全体が露出した状態となる。
一方、蓋体14を開位置から閉位置に移動させる場合、ユーザは、開位置にある蓋体14の取っ手142を持って蓋体14を上側に持ち上げる。蓋体14はリンク151,152の軸がガイド溝107にガイドされながら上方へ移動する。リンク151の軸がガイド溝107の上端まで移動すると、リンク151の軸が、取付孔102の内面に設けられた突起に引っ掛かることで、蓋体14が閉位置に移動した状態で保持される。
以上のように、移動機構81は、蓋体14を閉位置から前側に移動させながら、壁100の表面101に沿って移動させることで開位置に移動させているので、閉位置における蓋体14の位置を、開位置における蓋体14の位置よりも後側に設定できる。したがって、蓋体14が開位置にある状態で、蓋体14が壁100の前側にある物体と干渉しにくくなり、壁100の前側にある物体によって蓋体14の動きが妨げられる可能性を低減できる。
なお、変形例4では、移動機構81が、蓋体14のリンク151,152と、壁100に設けられたガイド溝107とで構成されているが、移動機構81の構成は一例であり、適宜変更が可能である。
(3.5)変形例5
変形例5の分電盤用キャビネット10は、図16に示すように、ユーザによる操作部70の操作に応じて、蓋体14を閉位置から開位置に移動させる開閉部71を、更に収容する点で上記実施形態及び変形例1~4と相違する。なお、上記実施形態又は変形例1~4と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
操作部70は、例えば蓋体14の前面に配置された操作ボタン等である。操作部70は、ユーザによる操作を受け付けると操作信号を開閉部71に出力する。なお、操作部70は操作ボタンに限定されず、ユーザのタッチ操作を受け付ける感圧式又は静電容量式のタッチセンサ等でもよい。
開閉部71は、蓋体14が閉位置にある状態で、遮断部34が接点32を遮断するか、又は、操作部70から操作信号が入力されると、蓋体14を閉位置から開位置に移動させる。開閉部71が、蓋体14を開ける機構は上記の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
本変形例では、ユーザが操作部70を操作すると、開閉部71が蓋体14を閉位置から開位置に移動させているので、蓋体14を開ける作業を簡単に行うことができる。
(3.6)変形例6
変形例6の分電盤用キャビネット10では、図17に示すように、本体11が報知制御部74を更に収容する点で、上記実施形態及び変形例1~5と相違する。ブレーカ2(主幹ブレーカ3)は異常時に接点32を遮断する遮断部34を有している。報知制御部74は、遮断部34が接点32を遮断すると、報知部75に報知動作を行わせる。なお、上記実施形態又は変形例1~5と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
報知部75は、光で報知動作を行う表示ランプと、音で報知動作を行うスピーカとの少なくとも一方を備える。変形例3では、報知部75は、光と音の一方のみで報知動作を行うが、光と音との少なくとも一方で報知動作を行えばよく、ユーザの視覚又は聴覚に訴えて報知動作を行うことができる。なお、報知部75は光と音の両方で報知動作を行ってもよく、光で報知動作を行う表示ランプと、音で報知動作を行うスピーカとを両方ともに備えてもよい。
報知制御部74は、遮断部34が接点32を遮断すると、報知部75に報知動作を行わせているので、分電盤1の近くにいないユーザも異常が発生したことを知ることができ、また蓋体14が閉じた状態でも異常が発生したことを知ることができる。
(3.7)変形例7
変形例7の分電盤用キャビネット10では、図18に示すように、本体11が通信部76と通信制御部77とを更に収容する点で、上記実施形態及び変形例1~6と相違する。ブレーカ2(主幹ブレーカ3)は異常時に接点32を遮断する遮断部34を有している。通信部76は外部システム8と通信する。遮断部34が接点32を遮断すると、通信制御部77は通信部76から外部システム8へ通知信号を送信させる。なお、上記実施形態又は変形例1~6と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
外部システム8は、例えばHEMS対応機器の制御又は監視を行うように構成されたコントローラである。
通信部76と外部システム8との間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。通信部76と外部システム8との間の通信方式は、有線LAN(Local Area Network)の通信規格に準拠した有線通信であってもよいし、電力線搬送通信方式の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、通信部76と外部システム8との間の通信における通信プロトコルは、例えば、Ethernet(登録商標)、ECHONET Lite(登録商標)等を用いてもよい。
通信制御部77は、遮断部34が接点32を遮断すると、通信部76から外部システム8へ通知信号を送信させている。したがって、遮断部34が接点32を遮断した場合に、外部システム8は通信部76から送信された通知信号を受信でき、通知信号に基づいて分電盤1で異常が発生したことを把握できる。よって、外部システム8は、異常が発生したことの報知動作、又は異常に対する対応処理(例えば、HEMS対応機器を停止させる処理等)を行うことができる。
なお、本変形例において、外部システム8は、HEMS対応機器の制御又は監視を行うコントローラに限定されず、分電盤1のユーザが使用するスマートフォン、タブレットコンピュータ等の携帯情報端末でもよいし、建物の外部に設けられたサーバ等でもよい。
(3.8)その他の変形例
上記実施形態及び変形例1-7における分電盤用キャビネット10は、例えば、開閉部71、報知制御部74、通信制御部77等に、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、開閉部71、報知制御部74、通信制御部77等の機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の分電盤用キャビネット(10)は、本体(11)と蓋体(14)とを備える。本体(11)は、ブレーカ(2)を収容し、取付位置に取り付けられる。蓋体(14)は本体(11)の前面を覆う。蓋体(14)は、前面を覆う閉位置と、前面の少なくとも一部を覆わない開位置との間で移動可能である。開位置は、蓋体(14)が閉位置から、前面の法線方向に対して直交する方向に移動した位置である。
この態様によれば、蓋体(14)を開ける場合に、蓋体(14)が、本体(11)の前方にある他の物体と干渉しにくくなる。したがって、分電盤用キャビネット(10)の取付位置の周囲にある物体等によって分電盤用キャビネット(10)の取付位置が制約を受けにくくなり、取付位置の自由度を向上することが可能な分電盤用キャビネット(10)を提供できる。
第2の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1の態様において、開位置が、閉位置から前側に出ていない。
この態様によれば、蓋体(14)を開ける場合に、蓋体(14)が、本体(11)の前方にある他の物体と干渉しにくくなる。
第3の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1又は第2の態様において、蓋体(14A)は、巻取部(146)によって巻き取り又は繰り出されるシャッター部材(144)を含む。巻取部(146)がシャッター部材(144)を繰り出すことによって蓋体(14A)が閉位置に移動し、巻取部(146)がシャッター部材(144)を巻き取ることによって蓋体(14)が開位置に移動する。
この態様によれば、取付位置の自由度を向上することが可能な分電盤用キャビネット(10)を提供できる。
第4の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1又は第2の態様において、蓋体(14B)は、板状に形成された複数の蓋部材(147)を含む。複数の蓋部材(147)が本体(11)の前面と平行な方向において重ねられることによって蓋体(14B)が開位置に移動し、複数の蓋部材(147)が本体(11)の前面に沿って並べられることによって蓋体(14B)が閉位置に移動する。
この態様によれば、取付位置の自由度を向上することが可能な分電盤用キャビネット(10)を提供できる。
第5の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1又は第2の態様において、蓋体(14C)は、レール(149)に吊り下げられた幕(150)を含む。幕(150)は、レール(149)に沿って、開位置と閉位置との間で移動可能である。
この態様によれば、取付位置の自由度を向上することが可能な分電盤用キャビネット(10)を提供できる。
第6の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1の態様において、蓋体(14)を、閉位置から前面の法線方向における片側に移動させながら、前面の法線方向と直交する方向に移動させる移動機構(81)を、更に備える。
この態様によれば、取付位置の自由度を向上することが可能な分電盤用キャビネット(10)を提供できる。
第7の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1~第6の態様において、ユーザによる操作部(70)の操作に応じて、蓋体(14)を閉位置から開位置に移動させる開閉部(71)を、更に収容する。
この態様によれば、取付位置の自由度を向上することが可能な分電盤用キャビネット(10)を提供できる。
第8の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1~第7の態様において、ブレーカ(2)は、異常時に接点(32)を遮断する遮断部(34)を有する。分電盤用キャビネット(10)は、遮断部(34)が接点(32)を遮断すると、蓋体(14)を閉位置から開位置に移動させる開閉部(71)を、更に収容する。
この態様によれば、遮断部(34)が接点(32)を遮断すると、開閉部(71)が蓋体(14)を開位置に移動させることができる。
第9の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1~第8の態様において、ブレーカ(2)は、異常時に接点(32)を遮断する遮断部(34)を有する。分電盤用キャビネット(10)は、遮断部(34)が接点(32)を遮断すると、報知部(75)に報知動作を行わせる報知制御部(74)を、更に収容する。
この態様によれば、遮断部(34)が接点(32)を遮断した場合に、報知制御部(74)が報知部(75)に報知動作を行わせることができる。
第10の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第9の態様において、報知部(75)が光と音との少なくとも一方で報知動作を行う。
この態様によれば、視覚又は聴覚に訴えて報知動作を行うことができる。
第11の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1~第10の態様において、ブレーカ(2)は、異常時に接点(32)を遮断する遮断部(34)を有する。分電盤用キャビネット(10)は、外部システム(8)と通信する通信部(76)と、遮断部(34)が接点(32)を遮断すると、通信部(76)から外部システム(8)へ報知信号を送信させる通信制御部(77)とを、更に収容する。
この態様によれば、遮断部(34)が接点(32)を遮断した場合に、通信部(76)が外部システム(8)に通知信号を送信するので、外部システム(8)において異常に対応するための処理を行うことが可能になる。
第12の態様の分電盤(1)は、第1~11のいずれかの態様の分電盤用キャビネット(10)と、分電盤用キャビネット(10)に収容されるブレーカ(2)と、を含む。
この態様によれば、蓋体(14)を開ける場合に、蓋体(14)が、本体(11)の前方にある他の物体と干渉しにくくなる。したがって、分電盤用キャビネット(10)の取付位置の周囲にある物体等によって分電盤用キャビネット(10)の取付位置が制約を受けにくくなり、取付位置の自由度を向上することが可能な分電盤(1)を提供できる。
第2~第11の態様に係る構成については、分電盤用キャビネット(10)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。