(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
本実施形態に係る開閉器システム(回路遮断器)100は、分電盤システム(以下、単に「分電盤」ともいう)9に設けられる分岐ブレーカ3として、実現されている。
開閉器システム100は、図1に示すように、接点部C1と、引き外し部14と、位相検出部131と、処理部12と、を備えている。
接点部C1は、交流電源200の両端にそれぞれ接続される一対の電路L1,L1に、設けられる。引き外し部14は、接点部C1を閉極状態から開極状態へ移行させる引き外し動作を行う。位相検出部131は、一対の電路L1,L1間に印加される電圧の位相を検出する。処理部12は、位相検出部131の検出結果に基づいて、引き外し部14を制御する。
本実施形態の開閉器システム100では、処理部12は、一対の電路L1,L1間に印加される電圧の位相に基づいて、引き外し部14を制御する。そのため、開閉器システム100によれば、引き外し部14の動作(例えば、引き外し動作の動作タイミング等)の精度の向上を図ることが可能となる。
また、本実施形態の開閉器システム100では、処理部12は、イベントが発生すると、開閉器システム100の動作を試験する動作試験を行うよう構成されている。処理部12は、動作試験において、位相検出部131の検出結果に基づいて引き外し部14を制御する。処理部12は、動作試験において、位相検出部131の検出結果に基づいて、引き外し部14が引き外し動作を行わないように引き外し部14を制御する。
開閉器システム100の動作試験としては、交流電源200からの電流を引き外し部14に流し、かつ、この電流によって引き外し部14が引き外し動作を実行しない、という条件で行われるのが好ましい試験があり得る。処理部12は、上述のように、位相検出部131の検出結果すなわち検出された交流電圧VACの位相に基づいて、引き外し部14を制御する。そのため、例えば、処理部12が、検出された位相に基づいて、引き外し部14に流れる電流が引き外し部14に引き外し動作を引き起こさせないタイミングで引き外し部14に電流を流すように制御を行うことで、このような動作試験を容易に実現できる。
なお、本開示でいう「イベント」は、例えば、動作試験の実行指令を含む試験信号S3を受信することを含み得る。試験信号S3は、スマートフォン等の情報端末61(言い換えれば、開閉器システム100とは異なる外部システム8)からの外部信号(試験開始信号)に応じて、送信され得る。試験開始信号の送信処理は、例えば情報端末61に専用のアプリケーションをインストールすることにより、実行可能となる。或いは、試験信号S3は、開閉器システム100に備え付けのテストボタン17を使用者が押すことにより、送信され得る。また、本開示でいう「イベント」は、例えば処理部12に設けられているタイマ127が、所定の時刻を計時することを含み得る。
(2)詳細
以下、本実施形態の開閉器システム100及び開閉器システム100を備える分電盤9について、図1~図6を参照して、より詳細に説明する。以下の説明では、特に断りがない限り、図3の上下左右を分電盤9の上下左右と規定する。
(2.1)分電盤
まず、分電盤9について図2、図3を用いて説明する。分電盤9は、図2、図3に示すように、主幹ブレーカ2と、複数の分岐ブレーカ3(開閉器システム100)と、計測アダプタ4と、検知部5と、これらを収容する分電盤用キャビネット(以下、「キャビネット」と略する)90と、を備えている。本実施形態では、分電盤9は、一例として戸建住宅に設置される場合を例示するが、この例に限らない。つまり、分電盤9は、設置可能な施設であれば、例えば集合住宅の各住戸、事務所、店舗、工場、及び病院等の施設に設置されてもよい。
図3に示すように、キャビネット90は、前面が開口した箱状のボディ91と、ボディ91の開口を塞ぐカバー92と、を備えている。キャビネット90は、造営材(例えば建物の壁)に取り付けられる。なお、キャビネット90は、壁に設けられた取付孔に一部又は全体が埋め込まれた状態で取り付けられてもよい。キャビネット90は、例えば、平均的な身長の子供では手が届かないような高さ位置であって、平均的な身長の大人であれば操作が可能なような高さ位置に設けられる。
また、キャビネット90は、キャビネット90が壁に取り付けられた状態でカバー92の前面921を覆う蓋体93をさらに備える。蓋体93は、閉位置と開位置との間で移動可能な状態でカバー92に取り付けられる。閉位置は、カバー92の前面921を覆う位置である。開位置は、カバー92の前面921の少なくとも一部を覆わない位置(図3において二点鎖線で示す位置)である。なお、蓋体93は、ある方向からカバー92を見た場合にカバー92の前面921の一部を覆っていればよく、本実施形態では、閉位置にある蓋体93は、カバー92を前方から見た場合にカバー92の前面921のほぼ全体を覆っている。
キャビネット90の内部には、主幹ブレーカ2、複数の分岐ブレーカ3、計測アダプタ4、及び検知部5が収容されている。主幹ブレーカ2、複数の分岐ブレーカ3、計測アダプタ4、及び検知部5は、ボディ91に直接又は取付用の部品等を介して取り付けられている。なお、カバー92には、主幹ブレーカ2、複数の分岐ブレーカ3、及び計測アダプタ4の一部を露出する露出孔が設けられている。また、分電盤9は、キャビネット90内に収容されるバックアップ電源、感震ブレーカ、連系ブレーカ等を更に備えていてもよい。
主幹ブレーカ2は、キャビネット90の内部に配置されている。主幹ブレーカ2は、一次側端子201と、二次側端子202とを備えている。本実施形態の分電盤9では配電方式として単相三線式を想定しているので、主幹ブレーカ2の一次側端子201には、交流電源200としての系統電源(商用電源)の単相三線式の引き込み線が電気的に接続される。また、主幹ブレーカ2の二次側端子202には、第1電圧極(L1相)の導電バー、第2電圧極(L2相)の導電バー、及び中性極(N相)の導電バーが接続されている。
複数の分岐ブレーカ3(開閉器システム100)は、中性極の導電バーの上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。各分岐ブレーカ3は、一対の一次側端子301と、一対の二次側端子302とを備えている。分岐ブレーカ3には100V用と200V用がある。100V用の分岐ブレーカ3が備える一対の一次側端子301は、第1電圧極の導電バー及び第2電圧極の導電バーのうちの一方と、中性極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。200V用の分岐ブレーカ3が備える一対の一次側端子301は、第1電圧極の導電バーと、第2電圧極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。また、分岐ブレーカ3の二次側端子302には、対応する配線が電気的に接続される。各分岐ブレーカ3の二次側端子302に接続された配線には、例えば照明器具や空調機器、テレビ受像器、給湯設備等の機器、又は壁スイッチ等の配線器具が負荷B1として1つ以上接続される。
検知部5は、複数の分岐ブレーカ3の各々に接続された負荷B1に流れる電流を検知するように構成されている。検知部5は、例えば、基板と、複数のコイル51と、を有している。基板は、左右方向に長い板状である。基板には、複数の孔が形成されている。複数の孔には、導電バーから延びて分岐ブレーカ3の一次側端子に接続される端子がそれぞれ挿入される。コイル51は、例えばロゴスキコイルであり、基板の孔の周りに形成されている。本実施形態では、検知部5は、複数のコイル51の各々に誘起される電流を計測することにより、複数の分岐ブレーカ3の各々に接続された負荷B1を流れる電流を検知する。
計測アダプタ4は、キャビネット90の内部に配置されている。計測アダプタ4は、分電盤9内の主幹ブレーカ2及び分岐ブレーカ3の少なくとも一方を通過する電力を計測する計測機能、及びキャビネット90の外部に配置された機器と通信する通信機能を有している。
より詳しくは、本実施形態の計測アダプタ4は、主幹検知部及び検知部5と、電気的に接続されている。ここに、主幹検知部は、例えばカレントトランス(CT)からなる電流センサを備えており、主幹ブレーカ2に流れる電流を計測する。そして、計測アダプタ4は、検知部5及び主幹検知部が計測した電流の値のそれぞれを電力値に変換する機能(計測機能)を有している。
また、計測アダプタ4は、例えばスマートフォン等の情報端末61との間で通信する機能(通信機能)を有している。情報端末61は、スマートフォンの他に、例えばデスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータ、タブレット端末、又はスマートスピーカなどを含み得る。
また、計測アダプタ4は、コントローラ62との間で通信する機能(通信機能)を有している。コントローラ62は、HEMS(Home Energy Management System)に対応する機器(以下、HEMS対応機器という)の制御を行うように構成されている。ここに、HEMS対応機器は、例えばスマートメータ、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池、電気自動車、エアコン、照明器具、給湯装置、冷蔵庫、又はテレビ受像機等を含む。なお、HEMS対応機器は、これらの機器に限定されない。
計測アダプタ4とコントローラ62(又は情報端末61)との間の通信方式は、例えば920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信であってもよい。また、計測アダプタ4とコントローラ62(又は情報端末61)との間の通信方式は、有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、計測アダプタ4とコントローラ62(又は情報端末61)との間の通信における通信プロトコルは、例えばEthernet(登録商標)、ECHONET Lite(登録商標)等を用いてもよい。本実施形態では、計測アダプタ4と情報端末61との間の通信方式は、例えばインターネット等のネットワークN1を介した無線通信である。
本実施形態の分電盤9では、計測アダプタ4は、検知部5が計測した複数の負荷B1の各々の電流値を検知部5から受け取る。さらに、計測アダプタ4は、主幹検知部が計測した電流値を主幹検知部から受け取る。計測アダプタ4は、検知部5及び主幹検知部が計測した電流値のそれぞれを電力値(瞬時電力値)に変換する。計測アダプタ4は、収集した瞬時電力のデータを所定時間に亘って積算した電力量のデータを演算する機能を有している。したがって、計測アダプタ4と通信するコントローラ62は、複数の負荷B1の各々での瞬時電力や電力量に基づいてHEMS対応機器を制御することができる。
また、計測アダプタ4は、太陽光発電装置、蓄電装置、及び電気自動車に電気的に接続される電力変換装置(パワーコンディショナ)のうちの少なくとも1つとの間で通信する機能(通信機能)を有している。なお、電力変換装置は、分電盤9から電気自動車への単方向充電を行うための電力変換の他、双方向に電力変換を行うことで電気自動車の蓄電池の充電と放電との両方に用いられる構成であってもよい。計測アダプタ4と太陽光発電装置、蓄電装置、及び電力変換装置との間の通信方式は、例えばRS-485等の通信規格に準拠した有線通信である。
(2.2)開閉器システム
次に、開閉器システム100(分岐ブレーカ3)の構成について、図1を用いて説明する。
開閉器システム100は、図1に示すように、一対の一次側端子101,101と、一対の二次側端子102,102と、一対の接点部C1,C1と、操作ハンドル111と、を備えている。また、開閉器システム100は、電源部16と、処理部12と、電圧検出部13と、電流検出部15と、電流センサ151と、引き外し部14と、テストボタン17と、提示部18と、通信部19と、を備えている。引き外し部14は、スイッチSW0と、トリップコイルA1と、開閉機構11と、を含んでいる。開閉器システム100の各構成要素は、ここでは、分岐ブレーカ3の筐体の内部に設けられる。
一対の一次側端子101,101は、交流電源200の両端にそれぞれ接続される。一対の二次側端子102,102は、負荷B1の両端にそれぞれ接続される。また、開閉器システム100は、一対の一次側端子101,101と一対の二次側端子102,102とをそれぞれ接続する一対の電路(以下、「主電路」ともいう)L1,L1と、一対の主電路L1,L1間に跨がって設けられる副電路L2と、を備えている。なお、本開示において、「一次側端子」等の「端子」は、電線を接続するための部品(端子)でなくてもよく、例えば、電子部品のリード、回路基板に含まれる導体の一部、又は電線の一部であってもよい。
本実施形態では、開閉器システム100(分岐ブレーカ3)は100V用であって、一対の一次側端子101,101のうちの一方(図1の左側)が電圧極(第1電圧極又は第2電圧極)の導電バーに接続され、他方(図1の右側)が中性極の導電バーに接続されている、と想定する。以下、一対の主電路L1,L1を区別する場合、電圧極の導電バーに接続される一次側端子101と接続されている主電路L1を「主電路L101」、中性極の導電バーに接続される一次側端子101と接続されている主電路L1を「主電路L102」ともいう。なお、開閉器システム100(分岐ブレーカ3)は、200V用であってもよい。
一対の主電路L1,L1には、一対の接点部C1,C1がそれぞれ設けられている。一対の主電路L1,L1の各々は、一次側端子101と接点部C1とをつなぐ電源側電路L11と、接点部C1と二次側端子102とをつなぐ負荷側電路L12と、を含む。
各接点部C1は、固定接点と、固定接点に対して接触又は離間する可動接点と、を有している。各接点部C1は、可動接触子に固定された可動接点が物理的に移動することで、可動接点が固定接点に接触した閉極(オン)状態と、可動接点が固定接点から離間した開極(オフ)状態と、の間で切り換えられる。一対の接点部C1,C1の可動接触子は、共通であってもよいし別々であってもよい。なお、以下では、一対の接点部C1,C1の少なくとも一方が閉極状態から開極状態へ変化することを、「開閉器システム100が遮断される」或いは「主電路L1が遮断される」ともいう。
副電路L2は、一方の主電路L1(L101)の電源側電路L11と、他方の主電路L1(L102)の負荷側電路L12と、の間に接続されている。副電路L2には、スイッチSW0と、トリップコイルA1と、が設けられている。言い換えれば、スイッチSW0とトリップコイルA1との直列回路が、一対の主電路L1,L1間、より詳細には一方の主電路L101の電源側電路L11と他方の主電路L102の負荷側電路L12との間に、接続されている。ここでは、上記直列回路のうちのスイッチSW0が、主電路L101の電源側電路L11に接続されている。また、上記直列回路のうちのトリップコイルA1が、主電路L102の負荷側電路L12に接続されている。
スイッチSW0は、ここではa接点(常開接点)であって、例えばサイリスタ等の半導体素子である。スイッチSW0のオンオフは、処理部12によって制御される。ここでは、スイッチSW0は、処理部12からスイッチSW0の制御端子へ制御信号S0が送信されると、オンする。
トリップコイルA1は、一対の接点部C1,C1の閉極状態において、スイッチSW0がオンされると、交流電源200から電流が供給されて励磁される。なお、トリップコイルA1は、スイッチSW0がオンされかつ主電路L102の接点部C1が閉極状態の場合にのみ、交流電源200から電流が供給される。つまり、トリップコイルA1は、主電路L102の接点部C1が閉極状態でなければ、処理部12がスイッチSW0に制御信号S0を送信してスイッチSW0をオンしたとしても、通電されない。
操作ハンドル111は、使用者が一対の接点部C1,C1を開極又は閉極させるための操作部である。操作ハンドル111は、使用者の操作を受け付ける。操作ハンドル111は、使用者が操作可能なレバー(操作摘み)を筐体の外部に突出させた状態で、筐体に回転可能に支持される。操作ハンドル111は、一対の接点部C1,C1を閉極させるオン位置と、一対の接点部C1,C1を開極させるオフ位置との間で回転可能となっている。
開閉機構11は、操作ハンドル111への開操作(オフ操作)又は閉操作(オン操作)に応じて、一対の接点部C1,C1の両方を一緒に、開極又は閉極させる。開閉機構11は、複数のリンク部材を含んでいる。複数のリンク部材は、操作ハンドル111と一対の接点部C1,C1の可動接触子とを連結し、操作ハンドル111の回転動作に伴って可動接触子を移動させる。
また、開閉機構11は、トリップコイルA1に流れる電流Itがトリップ条件を満たすと、一対の接点部C1,C1を開極させるよう構成されている。すなわち、引き外し部14は、トリップコイルA1に流れる電流Itがトリップ条件を満たすと、引き外し動作を行う。トリップ条件は、ここでは、トリップコイルA1に流れる電流Itの電流値が、電流閾値Th1以上となることである。
開閉機構11は、例えば可動鉄心を備えている。可動鉄心は、トリップ条件を満たす電流ItがトリップコイルA1に流れたときに、トリップコイルA1の励磁により生じる磁束によって、動かされる。開閉機構11は、可動鉄心の移動に応じて一対の接点部C1,C1の可動接触子を移動させて、一対の接点部C1,C1を開極させる。
なお、トリップコイルA1に電流Itが流れたとしても、この電流Itがトリップ条件を満たさない場合、開閉機構11は、一対の接点部C1,C1の閉極状態を維持する。
開閉機構11の具体的な構造は、周知の構成を採用できるので、詳細な説明は省略する。
電源部16は、一方の主電路L1(L101)の電源側電路L11と他方の主電路L1(L102)の電源側電路L11との間に、接続されている。電源部16は、例えばAC/DCコンバータ、又は三端子レギュレータ等の適宜の回路を備えており、一対の一次側端子101,101を介して交流電源200から供給される電力を所定の電力に変換することで、動作電力を生成する。
電源部16は、一対の接点部C1,C1の開閉にかかわらず、一対の一次側端子101,101と接続される。言い換えれば、電源部16は、一対の接点部C1,C1のうちの一方又は両方が開極状態である、すなわち開閉器システム100が遮断されていたとしても、交流電源200から電力の供給を受けて動作電力の生成が可能である。電源部16で生成された動作電力は、処理部12、提示部18、通信部19等に供給される。
電圧検出部13は、接点部C1の閉極状態において一対の電路L1,L1間に印加される電圧を検出する。電圧検出部13は、接点部C1の閉極状態において、交流電源200からの交流電圧VACを検出する。具体的には、電圧検出部13は、一対の入力端子を備えている。電圧検出部13における一対の入力端子の一方は、一方の主電路L1(L101)の電源側電路L11に接続され、一対の入力端子の他方は、他方の主電路L1(L102)の負荷側電路L12に接続されている。すなわち、電圧検出部13の一対の入力端子は、交流電源200(一対の一次側端子101,101)と接点部C1との直列回路の両端間に接続されている。そのため、接点部C1の開極状態においては電圧検出部13で電圧が検出されず、一方、接点部C1の開極状態においては電圧検出部13で電圧が検出される。電圧検出部13は、検出した電圧に応じた電圧信号S1を、処理部12に送信する。
電圧検出部13から送信される電圧信号S1は、検出した電圧(交流電圧VAC)の位相の情報を含んでいる。すなわち、電圧検出部13は、一対の電路L1,L1間に印加される電圧の位相を検出する位相検出部131を、兼ねている。
電流検出部15は、一対の主電路L1,L1に流れる電流を検出する。電流検出部15は、一対の主電路L1,L1のうちの一方の主電路L1(L101)に流れる電流を検出する。電流検出部15は、主電路L101における電源側電路L11に流れる電流を検出する。電流検出部15は、電源側電路L11において、電源側電路L11と副電路L2との接続点と、一次側端子101と、の間の電路に流れる電流を検出する。ここでは、主電路L101の電源側電路L11に電流センサ151が設けられており、電流検出部15は、電流センサ151からの信号に基づいて主電路L1を流れる電流を検出する。電流センサ151は、例えば、ロゴスキコイル、カレントトランス、磁気抵抗(MR)素子、ホール素子等である。電流検出部15は、検出した電流に対応する電流信号S2を、処理部12へ送信する。
通信部19は、計測アダプタ4と通信する機能を有している。通信部19と計測アダプタ4との通信方式は、例えば有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信である。通信部19は、外部システム8としての計測アダプタ4から送信される外部信号を、受信する。また、通信部19は、計測アダプタ4を中継器として、外部システム8としての情報端末61又はコントローラ62から送信される外部信号を受信する。また、通信部19は、計測アダプタ4と通信することにより、計測アダプタ4が有する情報(例えば、電力値など)を取得する。また、通信部19は、計測アダプタ4を中継器としてコントローラ62と通信することにより、コントローラ62が有する情報(例えば、HEMS対応機器の使用状況など)を取得する。通信部19は、例えば無線通信機能によって、外部システム8としての情報端末61又はコントローラ62等と、直接通信してもよい。
テストボタン17は、使用者からの操作を受け付ける。使用者によりテストボタン17が押操作されると、処理部12に試験信号S3が送信される。
処理部12は、電源部16で生成された動作電力により動作する。上述のように、電源部16は、一対の接点部C1,C1の開閉にかかわらず、動作電力の生成が可能である。そのため、処理部12も、一対の接点部C1,C1の開閉にかかわらず、電源部16から動作電力の供給を受けて動作が可能である。
処理部12は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが処理部12として機能する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
処理部12は、図1に示すように、通信制御部121、状態判定部122、異常検出部123、試験処理部124、開閉制御部125、提示制御部126、及びタイマ127を備えている。なお、通信制御部121、状態判定部122、異常検出部123、試験処理部124、開閉制御部125、提示制御部126、及びタイマ127は、必ずしも実体のある構成を示しているわけではなく、処理部12によって実現される機能を示している。
通信制御部121は、通信部19の動作を制御する。通信制御部121は、通信部19を制御して、外部システム8からの外部信号を受信させる。通信部19が受信する外部信号としては、例えば、開閉器システム100に動作試験を実行させるための試験開始信号がある。通信部19は、外部信号として試験開始信号を受信すると、処理部12へ試験信号S3を送信する。
状態判定部122は、一対の接点部C1,C1の状態(開極状態又は閉極状態)を判定する。
状態判定部122は、電圧検出部13の検出結果に基づいて、一対の接点部C1,C1の状態を判定する。具体的には、状態判定部122は、電圧検出部13から電圧信号S1を受信している間は、一対の接点部C1,C1が閉極状態である、と判定する。状態判定部122は、電圧検出部13から電圧信号S1を受信していない場合(電圧信号S1で示される電圧が、所定の閾値電圧未満の場合)は、一対の接点部C1,C1が開極状態である、と判定する。処理部12は、状態判定部122の判定結果(電圧信号S1の有無)に基づいて、一対の接点部C1,C1が閉極状態から開極状態へと変化したこと、言い換えれば開閉器システム100が遮断されたことを、検出可能である。
異常検出部123は、開閉器システム100に関する異常の発生を検出する。
異常検出部123で検出される異常は、主電路L1に過電流(短絡電流、過負荷電流等)が流れることを含む。すなわち、異常検出部123は、開閉器システム100に関する異常として、主電路L1に流れる過電流(短絡電流、過負荷電流等)を検出する。異常検出部123は、ここでは、電流検出部15からの電流信号S2で示される電流値と閾値とを比較することで、主電路L1に流れる過電流を検出する。
また、異常検出部123で検出される異常は、一対の二次側端子102,102と負荷Bとの間に接続されている配線でアークが発生することを含む。すなわち、異常検出部123は、開閉器システム100に関する異常として、一対の二次側端子102,102に接続されている配線で発生するアークを検出する。異常検出部123は、例えば、アーク短絡保護遮断器(AFCI:Arc Fault Circuit Interrupter)と同様の技術により、配線でアークが発生しているか否かを判定する。アーク短絡保護遮断器では、電子回路を使用して、配線で発生するアークに特有の電流特性及び電圧特性を認識し、配線で発生するアークを検知できる。これと同様の原理により、処理部12は、配線でアークが発生しているか否かを判定する。
異常検出部123は、開閉器システム100に関する異常の発生を検出すると、遮断制御を実行する。遮断制御において、異常検出部123は、開閉制御部125から遮断信号S10を送信させる。
試験処理部124は、イベントが発生したか否かを判定する。
上述のように、「イベント」は、通信部19が、外部システム8からの外部信号(試験開始信号)に応じて試験信号S3を送信することを含み得る。また、「イベント」は、開閉器システム100に備え付けのテストボタン17への操作により、試験信号S3が送信されることを含み得る。例えば、処理部12と電圧源との間をつなぐ電路に常開接点が設けられており、テストボタン17が押されると、この常開接点がオンされて、電圧源から処理部12へ試験信号S3としての電圧が印加される。また、「イベント」は、処理部12に設けられているタイマ127が、所定の時刻を計時することを含み得る。
試験処理部124は、イベントが発生したと判定すると、開閉器システム100の動作を試験する動作試験を実行する。動作試験において、試験処理部124は、開閉制御部125から疑似信号S20を送信させる。
開閉制御部125は、スイッチSW0のオンオフを制御する。具体的には、開閉制御部125は、スイッチSW0の制御端子へ制御信号S0を送信することで、スイッチSW0をオンさせる。上述のように、スイッチSW0はサイリスタであるため、開閉制御部125は、制御信号S0として、サイリスタをターンオンするためのゲート信号を送信する。
開閉制御部125が送信する制御信号S0としては、引き外し部14に引き外し動作を行わせて遮断制御を実行させるための遮断信号S10と、開閉器システム100の動作試験を行うための疑似信号S20と、がある。
上述のように、開閉器システム100に関する異常の発生を異常検出部123が検出した場合、開閉制御部125は、遮断信号S10を送信する(遮断制御)。遮断信号S10は、トリップコイルA1に流れる電流Itがトリップ条件を満たすような制御信号S0である。トリップコイルA1に流れる電流Itがトリップ条件を満たすとは、ここでは、トリップコイルA1に流れる電流Itの電流値が、電流閾値Th1以上となる期間があることである。
上述のように、トリップコイルA1は、副電路L2に設けられている。そして、主電路L1(L102)の接点部C1が閉極されかつスイッチSW0がオンされると、トリップコイルA1には、交流電源200からの交流電圧VACが印加されて、印加電圧に応じた電流Itが流れる。
そこで、開閉制御部125は、遮断信号S10として、交流電源200からの交流電圧VACのゼロクロス点の直後(t0:図4A参照)にスイッチSW0がオンとなる信号を送信する。具体的には、開閉制御部125は、タイミング決定部1251を備えている。タイミング決定部1251は、位相検出部131で検出される電圧(交流電源200の交流電圧VAC)の位相に基づいて、開閉制御部125が制御信号S0を送信するタイミングを決定する。ここでは、タイミング決定部1251は、交流電圧VACのゼロクロス点の直後に、開閉制御部125から遮断信号S10を送信させる。ここで、スイッチSW0はサイリスタであるため、遮断信号S10によりオンされた後、次のゼロクロス点でターンオフされる。そのため、トリップコイルA1には、交流電圧VACの約半周期分の電圧が印加される。これにより、トリップコイルA1に流れる電流Itには、電流閾値Th1以上となる期間が存在することとなる(図4B参照)。そのため、トリップコイルA1に流れる電流Itがトリップ条件を満たすこととなり、開閉機構11が一対の接点部C1,C1を開極させて、主電路L1が遮断される。
一方、イベントが発生したと試験処理部124が判定した場合、開閉制御部125は、疑似信号S20を送信する。疑似信号S20は、トリップコイルA1に流れる電流Itがトリップ条件を満たさないような制御信号S0である。トリップコイルA1に流れる電流Itがトリップ条件を満たさないとは、ここでは、トリップコイルA1に流れる電流Itの電流値が、常に電流閾値Th1未満となることである。
開閉制御部125は、疑似信号S20として、交流電源200からの交流電圧VACの極大点よりも後であってゼロクロス点の直前(t1:図5A参照)にスイッチSW0がオンとなる信号を送信する。具体的には、開閉制御部125のタイミング決定部1251は、位相検出部131で検出される電圧(交流電源200の交流電圧VAC)の位相に基づいて、交流電圧VACのゼロクロス点の直前に、開閉制御部125から疑似信号S20を送信させる。これにより、トリップコイルA1には、交流電圧VACの極大値よりも小さな電圧が印加される。そのため、トリップコイルA1に流れる電流Itには、電流閾値Th1以上となる期間が存在しないこととなる(図5B参照)。これにより、トリップコイルA1に流れる電流Itはトリップ条件を満たさず、開閉機構11が一対の接点部C1,C1を開極させず、主電路L1の導通が維持される。
要するに、開閉制御部125は、動作試験において、位相検出部131の検出結果に基づいて、トリップコイルA1に流れる電流Itがトリップ条件を満たさないようにスイッチSW0を制御する。また、開閉制御部125は、トリップコイルA1に流れる電流Itの電流値が電流閾値Th1未満となるように、スイッチSW0をオンするタイミングとオフするタイミングとの少なくとも一方(ここでは、スイッチSW0をオンするタイミング)を制御する。
試験処理部124は、動作試験において、スイッチSW0をオンしたときに電流検出部15で電流が検出されるか否かに基づいて、開閉器システム100の異常の有無を判定する。動作試験においては、交流電源200から、一対の主電路L1の一方L101の電源側電路L11、副電路L2(スイッチSW0及びトリップコイルA1)、一対の主電路L1の他方L102の負荷側電路L12、接点部C1、一対の主電路L1の他方L102の電源側電路L11の経路(或いはその逆)で、電流が流れる。動作試験においては、トリップコイルA1に流れる電流Itがトリップ条件を満たさないため、接点部C1の閉極状態が維持され、そのため上記の経路も維持される。そして、処理部12は、疑似信号S20の送信時点t1から次のゼロクロス点までの期間に、電流検出部15から電流信号S2を受信できたか否かを判定する。処理部12は、この判定結果に基づいて、処理部12が疑似信号S20を正常に送信できるか否か(開閉制御部125の異常の有無)、制御信号S0に応じてスイッチSW0が正常にオンされるか否か(スイッチSW0の異常の有無)、電流センサ151が正常に電流を検出できるか否か(電流センサ151の異常の有無)、及び電流検出部15が正常に電流信号S2を送信できるか否か(電流検出部15の異常の有無)を、判定できる。すなわち、これらのうちのいずれかに異常があれば、処理部12は、電流検出部15から電流信号S2を受信できない。そのため、処理部12は、開閉器システム100の異常の有無を判定することができる。
このように、処理部12は、引き外し部14に引き外し動作(開閉器システム100の遮断)を行わせることなく、開閉器システム100の異常の有無を判定可能である。
なお、試験処理部124は、一対の二次側端子102,102に負荷B1が接続されている場合には、イベントが発生したとしても、動作試験を行わないことが好ましい。すなわち、一対の接点部C1,C1が閉極状態であり、かつ一対の二次側端子102,102に負荷B1が接続されて負荷B1に電流が供給されていると、スイッチSW0のオンオフによらず、主電路L1には負荷B1への電流が流れている。そのため、試験処理部124は、電流検出部15からの電流信号の有無に基づいてスイッチSW0等の異常の有無を判定することが、できなくなる。そこで、試験処理部124は、例えば、スイッチSW0がオフされている状態において電流検出部15から電流信号S2を受信している場合には、負荷B1が接続されていると判断して、イベントが発生したとしても動作試験を行わなくてもよい。
提示制御部126は、提示部18の動作を制御する。提示部18は、処理部12による判定結果を提示する。提示部18の動作用の電力は、電源部16から供給される。上述のように、電源部16は、一対の接点部C1,C1の状態(開極状態、閉極状態)にかかわらず電力の生成が可能であるため、提示部18も、一対の接点部C1,C1の状態にかかわらず動作が可能である。
提示部18は、例えばLEDを備えている。提示部18におけるLEDは、分岐ブレーカ3の筐体において、キャビネット90のカバー92の露出孔から露出する位置に設けられている。すなわち、提示部18は、使用者が蓋体93を開けて分電盤9を正面から見たときに、視認可能な位置にある。LEDは、例えば、点灯することで開閉器システム100に関する異常の存在を報知し、消灯することで異常がないことを報知し得る。
なお、提示部18は、例えば、文字列及び/又は画像を表示可能な表示装置を備えていてもよい。表示装置は、例えば、分岐ブレーカ3の筐体において、キャビネット90のカバー92の露出孔から露出する位置に設けられる。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を備えていてもよい。提示部18は、表示装置に、電流検出部15の状態を表示させてもよい。
或いは、提示部18は、スピーカ等の、音情報を出力可能な音出力装置を備えていてもよい。この場合、提示制御部126は、例えば、開閉器システム100に関する異常が検出された場合に提示部18からビープ音を出力させてもよい。
また、処理部12(通信制御部121)は、通信部19から、開閉器システム100とは異なる外部システム8に、処理部12による判定結果を送信させてもよい。すなわち、開閉器システム100は、開閉器システム100とは異なる外部システム8に、処理部12による判定結果を送信する送信部(通信部19)を備え得る。
(2.3)動作
以下、本実施形態の開閉器システム100の処理部12の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。
開閉器システム100の一対の一次側端子101,101が交流電源200に接続されると、電源部16は、交流電源200からの電力を用いて動作電力を生成し、動作電力を処理部12へ供給する。処理部12は、電源部16から供給される動作電力により起動し(ST1)、動作を開始する。上述のように、電源部16は、主電路L1における電源側電路L11に接続されているため、一対の接点部C1,C1が開極状態であるか閉極状態であるかにかかわらず動作電力の生成が可能である。そのため、処理部12は、一対の接点部C1,C1が開極状態であるか閉極状態であるかにかかわらず、起動される。
処理部12は、起動されると、電圧検出部13から電圧信号S1を受信しているか否かを判定する(ST2)。
電圧信号S1がない場合(ST2:No)、処理部12(状態判定部122)は、一対の接点部C1,C1が開極されていると判定する。処理部12は、電圧信号S1を検出するまで、動作を継続する。
一方、電圧信号S1がある場合(ST2:Yes)、処理部12(状態判定部122)は、一対の接点部C1,C1が閉極されていると判定する。そして、処理部12(異常検出部123)は、開閉器システム100に異常があるか否かを判定する(ST3)。ここでは、処理部12(異常検出部123)は、電流検出部15からの電流信号S2に基づいて、開閉器システム100に異常(過電流、配線のアーク等)があるか否かを判定する。
異常検出部123により異常が検出されると(ST3:Yes)、処理部12(開閉制御部125)は、遮断信号S10を送信する。ここで、処理部12(開閉制御部125)は、タイミング決定部1251によって遮断信号S10の送信タイミングを適切に決定(ST4)した上で、引き外し部14へ遮断信号S10を送信する(ST5)。スイッチSW0へ遮断信号S10が送信されると、スイッチSW0がオンされてトリップコイルA1に電流Itが流れ、開閉機構11が動作して開閉器システム100が遮断される。
工程ST3において異常が検出されない場合(ST3:No)、処理部12(試験処理部124)は、イベントが発生したか否かを判定する(ST6)。
イベントが発生していない場合(ST6:No)、処理部12は、工程ST2へ戻って動作を継続する。
イベントが発生した場合(ST6:Yes)、処理部12(開閉制御部125)は、疑似信号S20を送信する。ここで、処理部12(開閉制御部125)は、タイミング決定部1251によって疑似信号S20の送信タイミングを適切に決定(ST7)した上で、引き外し部14へ疑似信号S20を送信し(ST8)、開閉器システム100の動作試験を行う(ST9)。動作試験の終了後、処理部12は、提示部18を制御してLEDを点灯させたり、通信部19を制御して外部システム8へ信号を送信させたりすることで、試験結果を通知する(ST10)。その後、処理部12は、工程ST2へ戻って動作を継続する。
このように、本実施形態の開閉器システム100では、処理部12(開閉制御部125)は、位相検出部131の検出結果に基づいて、引き外し部14を制御する。そのため、引き外し部14の動作の精度の向上を図ることが可能となる。
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る処理部12と同様の機能は、開閉器システム100の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
一態様に係る制御方法は、開閉器システム100の制御方法である。開閉器システム100は、接点部C1と、引き外し部14と、位相検出部131と、を備える。接点部C1は、交流電源200の両端にそれぞれ接続される一対の電路L1,L1に、設けられる。引き外し部14は、接点部C1を閉極状態から開極状態へ移行させる引き外し動作を行う。位相検出部131は、一対の電路L1,L1間に印加される電圧の位相を検出する。この制御方法は、位相検出部131の検出結果に基づいて引き外し部14を制御することを含む。一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、開閉器システム100の制御方法を実行させる。プログラムは、コンピュータ可読な非一時的記憶媒体に記録され得る。
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
本開示における開閉器システム100の処理部12は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における処理部12としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(UltraLarge Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
また、開閉器システム100における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは開閉器システム100に必須の構成ではなく、開閉器システム100の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。例えば、提示部18等は、開閉器システム100の筐体とは別に設けられた筐体に、設けられていてもよい。さらに、開閉器システム100の少なくとも一部の機能、例えば、処理部12の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、開閉器システム100の複数の機能が1つの筐体内に集約されていてもよい。
一変形例において、開閉器システム100は、処理部12とは独立して動作して主電路L1を遮断する第2引き外し部を備えていてもよい。第2引き外し部は、例えば、主電路L1に設けられるバイメタル板を備えた熱動式引き外し装置、又は、主電路L1に設けられる主回路コイルと主回路コイルで発生する磁束に応じて移動するピンとを備える電磁式引き外し装置を備えていてもよい。
一変形例において、位相検出部131は、電圧検出部13とは独立した構成であってもよい。位相検出部131は、例えば、ダイオードの順方向電圧を用いて交流電圧VACのゼロクロス点を検出する構成であってもよい。
一変形例において、スイッチSW0は、サイリスタでなくてもよく、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の他の半導体素子でもよく、機械的な接点装置(電磁継電器)等であってもよい。
一変形例において、開閉制御部125は、スイッチSW0をオンするタイミングに代えて或いは加えて、スイッチSW0をオフするタイミングを制御してもよい。
一変形例において、開閉制御部125は、動作試験において、ゼロクロス点の直前からゼロクロス点までスイッチSW0をオンさせる構成に限られない。例えば、開閉制御部125は、ゼロクロス点からゼロクロス点の直後まで(すなわち、ゼロクロス点から短時間だけ)スイッチSW0をオンさせる構成であってもよい。
一変形例において、引き外し部14が有極性の場合、開閉制御部125は、動作試験において、引き外し部14が引き外し動作を行わない向きの電流をトリップコイルA1へ流してもよい。すなわち、引き外し部14が極性を有している場合、トリップコイルA1へ流れる電流の向きが、引き外し動作を行う電流の向きと逆向きであれば、引き外し部14は引き外し動作を行わない。そこで、開閉制御部125は、トリップコイルA1に流れる電流の向きが逆向きとなるタイミングで、疑似信号S20を送信すればよい。要するに、処理部12(開閉制御部125)は、動作試験において、位相検出部131の検出結果に基づいて、トリップコイルA1に流れる電流Itの向きが引き外し部14が引き外し動作を行う電流の向きと逆向きとなるように、スイッチSW0をオンするタイミングとオフするタイミングとの少なくとも一方を制御すればよい。
一変形例において、開閉器システム100は、分岐ブレーカ3でなくてもよい。開閉器システム100は、例えば主幹ブレーカ2として実現されてもよい。
一変形例において、開閉器システム100は、副電路L2に設けられる保護素子を備えていてもよい。保護素子は、例えばバリスタであってもよい。
一変形例において、処理部12(開閉制御部125)は、遮断制御において位相検出部131の検出結果によらずに遮断信号S10を送信してもよい。すなわち、処理部12は、動作試験においてのみ、位相検出部131の検出結果に基づいて引き外し部14を制御してもよい。
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る開閉器システム(100)は、接点部(C1)と、引き外し部(14)と、位相検出部(131)と、処理部(12)と、を備える。接点部(C1)は、交流電源(200)の両端にそれぞれ接続される一対の電路(L1,L1)に設けられる。引き外し部(14)は、接点部(C1)を閉極状態から開極状態へ移行させる引き外し動作を行う。位相検出部(131)は、一対の電路(L1,L1)間に印加される電圧の位相を検出する。処理部(12)は、位相検出部(131)の検出結果に基づいて引き外し部(14)を制御する。
この態様によれば、引き外し動作の動作タイミング等、引き外し部14の動作の精度の向上を図ることが可能となる。
第2の態様の開閉器システム(100)では、第1の態様において、処理部(12)は、イベントが発生すると、開閉器システム(100)の動作を試験する動作試験を実行する。処理部(12)は、動作試験において、位相検出部(131)の検出結果に基づいて引き外し部(14)を制御する。
この態様によれば、動作試験において、引き外し部14の動作の精度の向上を図ることが可能となる。
第3の態様の開閉器システム(100)では、第2の態様において、引き外し部(14)は、一対の電路(L1,L1)間に接続される、トリップコイル(A1)とスイッチ(SW0)との直列回路を備える。処理部(12)は、スイッチ(SW0)のオンオフを制御する。引き外し部(14)は、スイッチ(SW0)がオンされた状態でトリップコイル(A1)に流れる電流がトリップ条件を満たすと、引き外し動作を行う。
この態様によれば、処理部(12)がスイッチ(SW0)をオンすることで、一対の電路(L1,L1)間に流れる電流をトリップコイル(A1)へ供給して、引き外し部(14)に引き外し動作を行わせることができる。
第4の態様の開閉器システム(100)では、第3の態様において、処理部(12)は、動作試験において、位相検出部(131)の検出結果に基づいて、トリップコイル(A1)に流れる電流がトリップ条件を満たさないようにスイッチ(SW0)を制御する。
この態様によれば、引き外し部(14)に引き外し動作を行わせないような動作試験を実行することが可能となる。
第5の態様の開閉器システム(100)では、第4の態様において、トリップ条件は、トリップコイル(A1)に流れる電流(It)の電流値が、電流閾値(Th1)以上となることである。処理部(12)は、動作試験において、位相検出部(131)の検出結果に基づいて、トリップコイル(A1)に流れる電流(It)の電流値が電流閾値(Th1)未満となるように、スイッチ(SW0)をオンするタイミングとオフするタイミングとの少なくとも一方を制御する。
この態様によれば、スイッチ(SW0)を制御することで、動作試験を行うことが可能となる。
第6の態様の開閉器システム(100)は、第3~第5のいずれか1つの態様において、一対の電路(L1,L1)に流れる電流を検出する電流検出部(15)を更に備える。処理部(12)は、動作試験において、スイッチ(SW0)をオンしたときに電流検出部(15)で電流が検出されるか否かに基づいて、開閉器システム(100)の異常の有無を判定する。
この態様によれば、電流検出部(15)による電流検出処理に関する異常の有無を判定することが可能となる。
第7の態様の開閉器システム(100)は、第6の態様において、処理部(12)による判定結果を提示する提示部(18)を、更に備える。
この態様によれば、処理部(12)による判定結果を使用者に提示することが可能となる。
第8の態様の開閉器システム(100)は、第6又は第7の態様において、送信部(通信部19)を更に備える。送信部は、開閉器システム(100)とは異なる外部システム(8)に、処理部(12)による判定結果を送信する。
この態様によれば、外部システム(8)に、処理部(12)による判定結果を通知することが可能となる。
第9の態様の開閉器システム(100)では、第2~第8のいずれか1つの態様において、イベントは、動作試験の実行指令を含む試験信号(S3)を受信することを含む。
試験信号(S3)は、例えば、テストボタン(17)が押されることで送信される。この態様によれば、使用者の意思により開閉器システム(100)の動作試験を実行することができるので、利便性が向上する。
第10の態様の開閉器システム(100)では、第9の態様において、試験信号(S3)は、開閉器システム(100)とは異なる外部システム(8)からの外部信号に応じて送信される。
この態様によれば、開閉器システム(100)のある場所から離れた場所において、使用者の意思により開閉器システム(100)の動作試験を実行することができるので、利便性が向上する。
第11の態様の開閉器システム(100)では、第2~第10のいずれか1つの態様において、イベントは、タイマ(127)が所定の時刻を計時することを含む。
この態様によれば、使用者が自ら開閉器システム(100)の動作試験を行わなくて済むので、利便性が向上する。
第12の態様の開閉器システム(100)は、第1~第11のいずれか1つの態様にお
いて、電圧検出部(13)を備える。電圧検出部(13)は、接点部(C1)の閉極状態において一対の電路(L1,L1)間に印加される電圧を検出する。電圧検出部(13)は、位相検出部(131)を兼ねている。
この態様によれば、位相を検出するための専用の位相検出部が不要となる。
第13の態様の分電盤システム(9)は、第1~第12のいずれか1つの態様の開閉器システム(100)と、開閉器システム(100)を収容する分電盤用キャビネット(90)と、を備える。
この態様によれば、引き外し動作の動作タイミング等、引き外し部14の動作の精度の向上を図ることが可能となる。
第14の態様の制御方法は、開閉器システム(100)の制御方法である。開閉器システム(100)は、接点部(C1)と、引き外し部(14)と、位相検出部(131)と、を備える。接点部(C1)は、交流電源(200)の両端にそれぞれ接続される一対の電路(L1,L1)に設けられる。引き外し部(14)は、接点部(C1)を閉極状態から開極状態へ移行させる引き外し動作を行う。位相検出部(131)は、一対の電路(L1,L1)間に印加される電圧の位相を検出する。制御方法は、位相検出部(131)の検出結果に基づいて引き外し部(14)を制御することを含む。
この態様によれば、引き外し動作の動作タイミング等、引き外し部14の動作の精度の向上を図ることが可能となる。
第15の態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、第14の態様の制御方法を実行させるためのプログラムである。
この態様によれば、引き外し動作の動作タイミング等、引き外し部14の動作の精度の向上を図ることが可能となる。
第2~第13の態様に係る構成は、開閉器システム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。