(実施形態1)
本実施形態の分電盤は、いわゆる住宅用分電盤であって、図2に示すように、主幹ブレーカ1と、当該主幹ブレーカ1の二次側に接続され主幹ブレーカ1を経由して得た電力を所定の直流電力に変換する電力変換装置3および当該電力変換装置3により異なる電位が与えられた平行する3本以上(本実施形態では4本)の導電バー4を備えた直流配電部2と、直流配電部2の導電バー4に電気的に接続された分岐ブレーカ6とがキャビネット7内に収納されている。
ここで、キャビネット7は、例えば、前面が開口された直方体の箱状のボックス(図示せず)を備え、このボックスには、上述した主幹ブレーカ1、直流配電部2、および複数の分岐ブレーカ6が収納される。そして、これらが収納されたボックスには、中蓋(図示せず)や、ボックスの前面開口を開閉するドア(図示せず)などが取り付けられ、これによってキャビネット7が構成される。このようなキャビネット7は従来周知のものを採用することができる。
主幹ブレーカ1は、電力系統(一例としては商用電源などの交流電源)ACに接続された一次側(入力側)の接続端子(図示せず)と、電力変換装置3に接続されたニ次側(出力側)の接続端子(図示せず)とを備えている。この他、主幹ブレーカ1は、一次側の接続端子と二次側の接続端子との間に挿入された機械接点部などの開閉部(図示せず)を、手動操作用の操作ハンドル(図示せず)の操作に応じて開閉機構や、一次側の接続端子と二次側の接続端子との間に過電流(短絡電流や過負荷電流)が流れた際に開閉部を釈放させる引外し機構などを備えている。このような主幹ブレーカ1は従来周知のものであるから、詳細な説明は省略する。
導電バー4は、金属材料(特に銅などの導電性が良好な金属材料が好ましい)により長尺板状に形成されている。4本の導電バー4は、所定間隔で平行するとともに、分岐ブレーカ6と接触される接触面となる厚み方向における一面(図1(b)における上面)が同一平面上に位置する形に配置されている。なお、以下の説明では、4本の導電バー4を区別するために、必要に応じて、導電バー4を符号4A〜4Dで表す。
電力変換装置3は、主幹ブレーカ1を経由して得られた電力(本実施形態の場合、交流電力)を元にして、直流電源を生成するAC/DCコンバータからなり、4本の導電バー4A〜4Dに、それぞれ異なる電位を与える。本実施形態では、電力変換装置3は、導電バー4Aに36Vの電位を、導電バー4Bに12Vの電位を、導電バー4Cにグラウンド電位(0Vの電位)を、導電バー4Dに−12Vの電位をそれぞれ与える。本実施形態の分電盤では、導電バー4A,4Bが高電位側、導電バー4C,4Dが低電位側として用いられる。
分岐ブレーカ6は、図1および図4に示すように、絶縁性を有する樹脂材料(一例としてはフェノール樹脂)により形成された樹脂成形品からなる器体60を備えている。なお、以下の説明では、説明の簡略化のために、器体60の高さ方向(図1(b)における上下方向)を器体60の上下方向として説明する。
この器体60には、分岐ブレーカ6をキャビネット7内に固定することで導電バー4に電気的に接続される一次側接続部61が具備されている。
一次側接続部61は、図1(b)に示すように、一対の接続具62を有している。接続具62は、金属材料により弧状に形成されている。この接続具62の両端部それぞれには、導電バー4と接触接続される接触子63が形成されている。ここで、一方の接続具62(以下、必要に応じて符号62Hで表す)の一方の接触子63は導電バー4Aに、他方の接触子63は導電バー4Bに対応しており、他方の接続具62(以下、必要に応じて符号62Lで表す)の一方の接触子63は導電バー4Cに、他方の接触子63は導電バー4Dに対応している。したがって、接続具62Hが高電位側となり、接続具62Lが低電位側となる。
このような接続具62の中央部には、接続具62の厚み方向に突出する軸部62aが設けられている。接続具62は、その厚み方向(図1(b)における紙面の法線方向)を、器体60の幅方向(図1(a)における左右方向)に沿わせた状態で、器体60に枢着され、軸部62aを回転中心として回動する。接続具62が回動した際には、一方の接触子63が上方向に移動するとともに他方の接触子63が下方向に移動する。つまり、接続具62は、一対の接触子63の移動方向が互いに逆方向となる形で器体60に回動自在に取り付けられている。
ところで、接続具62の各接触子63は、器体60の下面に形成された開孔部60aより器体60外に突出される。さらに、接続具62は、一対のコイルばねSによって付勢されており、外力が作用していなければ、コイルばねSのばね力によって、器体60からの接触子63の突出量が両接触子63間で等しくなる位置(均衡位置)に保持される。
上述したように、一次側接続部61は、直流配電部2の4本の導電バー4A〜4Dと一対一で対応する複数(本実施形態では4つ)の接触子63を有している。なお、以下の説明では、複数の接触子63を区別するために、必要に応じて、導電バー4A〜4Dそれぞれに対応する接触子63それぞれを符号63A〜63Dで表す。
また、器体60には、負荷などを接続するための二次側接続部64が具備されており、この二次側接続部64は、例えば負荷の高電位側に接続された電線が結合される端子65(以下、必要に応じて符号65Hで表す)と、負荷の低電位側に接続された電線が結合される端子65(以下、必要に応じて符号65Lで表す)とを有している。このような端子65としては、例えば、器体60に設けられた電線挿入孔(図示せず)より器体60内に挿入された電線を保持する速結端子などの電線接続端子や、器体60の外面に露設されたねじ端子などがある。なお、二次側接続部64は周知の構成を採用できるから詳細な説明は省略する。
二次側接続部64の端子65Hと一次側接続部61の接続具62Hとの間、および二次側接続部62の端子65Lと一次側接続部61の接続具62Lとの間それぞれには、機械接点部66が挿入されている。つまり、二次側接続部64は、機械接点部66を介して一次側接続部61に接続されている。そのため、分岐ブレーカ6より供給される直流電源の電圧は、高電位側の導電バー4A,4Bのいずれか一方と低電位側の導電バー4C,4Dのいずれか一方との電位差によって決定され、本実施形態の場合は、48V、36V、24V、12Vの4種類の電圧の直流電源が供給可能となっている。
また、器体60には、器体60に変位自在(本実施形態では回動自在)に取り付けられた手動操作用の操作ハンドル67aを有し当該操作ハンドル67aの操作に応じて各機械接点部66を開閉する開閉機構部67と、一次側接続部61と二次側接続部64との間に過電流が流れた際に各機械接点部66を釈放させる引外し装置68とが収納されている。
機械接点部66は、器体60に対して固定される固定接点66aと、当該固定接点66aに接離する可動接点66bとを備えており、器体60の長手方向(図1(b)における左右方向)において接続具62間に位置するように器体60に収納されている。
開閉機構部67は、二次側接続部64の端子65が電気的に接続されるとともに各機械接点部66の固定接点66aが固着された一対の固定端子板67bと、一次側接続部61の接続具62に電気的に接続されるとともに可動接点66bが固着された一対の可動接触子67cとその他、ばね材(図示せず)や、係止部材(図示せず)などを機械的に結合することによって構成されており、手動操作用の操作ハンドル67aの操作に応じて各機械接点部66の開閉を行うことができるようになっている。なお、可動接触子67cと接続具62とは編組線67dによって電気的に接続されている(ただし、図1(b)では接続具62Lに接続された編組線67dを省略している)。
引外し装置68は、過電流を検出した際に、開閉機構部67により機械接点部66を強制的に開放させるものであって、例えば、筒状のコイルボビン、コイルボビンの外周面に巻装されたコイル、コイルボビン内の軸方向一端側に設けられた固定鉄芯、コイルボビン内の軸方向他端側に軸方向にスライド移動自在に設けられた可動鉄芯(プランジャ)、固定鉄芯と可動鉄芯との間に介装されるコイルスプリングからなる復帰ばねなどを備えた電動トリップ装置や、バイメタルなどを備えている。このような引外し装置68では、短絡電流が流れた際に、可動鉄芯が固定鉄芯側に移動し、これによって機械接点部66の可動接点を固定接点から引外したり、過負荷電流が流れた際に、バイメタルが曲がり、これによって機械接点部66の可動接点66bを固定接点66aから引外したりするようになっている。なお、上述した開閉機構部67や、引外し装置68は、従来周知のものを採用できるから詳細な説明は省略する。
ところで、直流配電部2は、上述した電力変換装置3と4本の導電バー4との他に、図1(a),(b)に示すように、分岐ブレーカ6との間に配置されて導電バー4を覆う(4本の導電バー4A〜4Dを包括的に覆う)絶縁材料製のカバー5を備えている。
このカバー5において各導電バー4A〜4Dと対向する部位には、図3(a),(b)に示すように、一の分岐ブレーカ6の4つの接触子63それぞれが個別に挿通可能な複数(図示例では4つ)の窓孔50が、導電バー4の長手方向に沿って所定間隔で形成されている。なお、以下の説明では、複数の窓孔50を区別するために、必要に応じて、導電バー4Aそれぞれに対応する窓孔50それぞれを符号50A〜50Dで表す。
このようなカバー5には、窓孔50を開閉するシャッタ8が、窓孔50毎に設けられている。
シャッタ8は、図5(a),(b)に示すように、絶縁性を有する樹脂材料からなる樹脂成形品であって、窓孔50を閉塞できる大きさの矩形板状に形成されている。このシャッタ8における導電バー4側とは反対側(図5(b)における上側)には、シャッタ8の開閉操作を容易に行うための摘み8aが一体に突設してある。また、シャッタ8には、シャッタ8が窓孔50を閉じる(閉塞する)位置(閉位置)、または窓孔50を開ける(開放する)位置(開位置)にシャッタ8を仮固定するための係止片8bが一体に突設されている。
このようなシャッタ8は、カバー5における導電バー4側に設けられたシャッタ保持部51とカバー5との間に収納されている。シャッタ保持部51において窓孔50と対向する部位には、窓孔50とほぼ同サイズの開口51aが設けられている。また、カバー5における導電バー4側の面(図4(b)における下面)には、シャッタ8の係止片8bが入り込むことでシャッタ8を仮保持する係止凹所52,53が形成されている。なお、係止凹所52は、シャッタ8を上記閉位置に仮固定するためのものであり、係止凹所53は、シャッタ8を上記開位置に仮固定するためのものである。
つまり、直流配電部2には、一次側接続部61の複数の接触子63のなかから選択された2つの接触子63以外の接触子63と導電バー4との間を絶縁する接続防止部となるシャッタ8が設けられている。なお、図1(b)ではシャッタ保持部51の図示を省略し、図3(b)ではシャッタ8およびシャッタ保持部51の図示を省略している。
さらに、直流配電部2には、永久磁石よりなる磁石9が設けられている。磁石9は、カバー5における分岐ブレーカ6との対向面(図1(b)における上面)に、窓孔50B,50C間に位置する形に設けられている。そのため、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定した際には、図1(b)に示すように、磁石9は、分岐ブレーカ6の機械接点部66と器体60の高さ方向において重なる位置に位置し、これによって、機械接点部66におけるアーク放電を磁石9で引き伸ばすことができるようになる。つまり、本実施形態の分電盤では、直流配電部2と分岐ブレーカ6との間には、機械接点部66におけるアーク放電の消弧用の磁石9が配置されている。
本実施形態の分電盤は上述したように構成されており、直流配電部2の導電バー4に分岐ブレーカ6の一次側接続部61を接続するにあたっては、分岐ブレーカ6の一次側接続部61に接続する導電バー4をシャッタ8の開閉により選択した後に、分岐ブレーカ6をキャビネット7内に固定すればよい。
例えば、分岐ブレーカ6を36Vの直流電源に用いる場合には、36Vの導電バー4Aと0Vの導電バー4Cに対応するシャッタ8A,8Cを開け、12Vの導電バー4Bと−12Vの導電バー4Dに対応するシャッタ8B,8Dを閉じた後に(図3(a)における右側の窓孔50A〜50D参照)、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定する。このとき、分岐ブレーカ6を直流配電部2に近接させた際には、分岐ブレーカ6の接触子63B,63Dは、それぞれシャッタ8B,8Dに当接するので、さらに分岐ブレーカ6を直流配電部2に近接させることによって、高電位側の接続具62Hは、接触子63Bが上方向(導電バー4Bより離間する方向)に移動するとともに接触子63Aが下方向(導電バー4Aに接近する方向)に移動する形に回動し、低電位側の接続具62Lは、接触子63Dが上方向(導電バー4Dより離間する方向)に移動するとともに接触子63Cが下方向(導電バー4Cに接近する方向)に移動する形に回動する。そして、接触子63A,63Cがそれぞれ導電バー63A,63Cに接触した際には、接触子63B,63Dがそれぞれシャッタ8B,8Dに当接していることによって、各接続具62の回動が抑制されているから、各接触子63A,63Cは、対応する導電バー4A,4Cに所定の接圧で接触する。
このようにシャッタ8を開閉することによって、分岐ブレーカ6の4つの接触子63A〜63Dより選択した2つの接触子63A,63Cのみが導電バー4に接続されて、二次側接続部64の端子65間に36Vの電圧が印加可能(36Vの直流電源が供給可能)となる。
また、分岐ブレーカ6を12Vの直流電源に用いる場合には、シャッタ8B,8Cを開け、シャッタ8A,8Dを閉じた後に(図3(a)における中央の窓孔50A〜50D参照)、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定すればよく、これによって、分岐ブレーカ6の4つの接触子63A〜63Dより選択した2つの接触子63B,63Cのみが導電バー4に接続されて、12Vの直流電源が供給可能となる。また、分岐ブレーカ6を24Vの直流電源に用いる場合には、シャッタ8B,8Dを開け、シャッタ8A,8Cを閉じた後に(図3(a)における左側の窓孔50A〜50D参照)、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定すればよく、これによって、分岐ブレーカ6の4つの接触子63A〜63Dより選択した2つの接触子63B,63Dのみが導電バー4に接続されて、24Vの直流電源が供給可能となる。また、分岐ブレーカ6を48Vの直流電源に用いる場合には、シャッタ8A,8Dを開け、シャッタ8B,8Cを閉じた後に、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定すればよく、これによって、分岐ブレーカ6の4つの接触子63A〜63Dより選択した2つの接触子63A,63Dのみが導電バー4に接続されて、48Vの直流電源が供給可能となる。
以上述べたように本実施形態の分電盤によれば、分岐ブレーカ6より供給できる直流電源の電圧は、一次側接続部61の複数の接触子63のなかから選択された2つの接触子63が接続される導電バー4間の電位差によって決定され、一次側接続部61においてどの接触子63を導電バー4と接続するかは、接続防止部によって選択することができるから、簡単な構成で分岐ブレーカ6より負荷などに供給する直流電源の電圧を容易に変更することができる。特に、上記接続防止部は、カバー5の窓孔50を開閉するシャッタ8であるので、接触子63と接続する導電バー4をシャッタの開閉によって選択することができるから、供給する直流電源の電圧の変更をさらに容易に行うことができる。
また、一次側接続部61は、両端部それぞれに接触子63が形成された弧状の接続具62を備え、接続具62は、接触子63の移動方向が互いに逆方向となる形で器体60に回動自在に取り付けられているので、分岐ブレーカ6をキャビネット7内に固定する際に、接続具62の一方の接触子63がシャッタ8に当接すると、接続具62は、一方の接触子63が導電バー4から離れる方向に移動するとともに、他方の接触子63が導電バー4に接近する方向に移動するように回動するから、他方の接触子63と導電バー4との接続信頼性の向上が図れる。
また、直流配電部2と分岐ブレーカ6との間には、機械接点部66におけるアーク放電の消弧用の磁石9が配置されているから、分岐ブレーカ6の機械接点部66におけるアーク放電を素早く消弧することができる。
なお、本実施形態の分電盤はあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲を本実施形態の構成に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更してもよい。例えば、直流配電部2の導電バー4の数を増減させ、これに対応して分岐ブレーカ6の構成を変更してもよい。また、本実施形態の場合、主幹ブレーカ1を経由して得られる電力が交流電力であるから、電力変換装置3としてAC/DCコンバータを利用しているが、主幹ブレーカ1を経由して得られる電力が直流電力(つまり、電力系統の電力が直流電力)である場合には、DC/DCコンバータを利用すればよい。要は、電力変換装置3の構成は、入力電力の種類に応じて設計変更すればよい。
(実施形態2)
本実施形態の分電盤は、図6(a),(b)に示すように、直流配電部2のカバー5の構成と、分岐ブレーカ6の構成とが実施形態1と異なっている。なお、その他の構成については実施形態1と同様であるから図示および説明を省略する。
本実施形態における分岐ブレーカ6は、主として一次側接続部61の構成が実施形態1と異なっている。本実施形態における一次側接続部61においては、接続具62(62H,62L)は金属材料より板状に形成されており、各接続具62には、金属材料により砲弾状に形成された接触子63が一対ずつ設けられている。接触子63は、導電性を有したコイルばねからなる接触ばねCSにより接続具62に取り付けられている。なお、接触子63は図示しないガイドなどによって、所定方向(図6(a)における上下方向)に沿って移動する(換言すれば所定経路を移動する)ように器体60に収納される。
本実施形態における器体60には、開孔部60aの代わりに、一次側接続部61の複数の接触子63A〜63Dを個別に器体60外部に突出させる臨ませる複数の矩形状の窓孔69が形成されている。ここで、接触ばねCSの自然長は、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定した際に、接触子63を導電バー4に所定の接圧で弾接させることができる長さに設定されている。また、接触ばねCSは接触子63が器体60内に位置するまで縮むことができるように設計されている。したがって、本実施形態における分岐ブレーカ6においては、接触子63は、器体60に設けた窓孔69より器体60内外を移動自在に設けられている。なお、以下の説明では、複数の窓孔69を区別するために、必要に応じて、接触子63A〜63Dそれぞれに対応する窓孔69それぞれを符号69A〜69Dで表す。
また、本実施形態における器体60には、窓孔69を開閉するシャッタ8が、窓孔69毎に設けられている。本実施形態におけるシャッタ8は、実施形態1と同様に、絶縁性を有する樹脂材料からなる樹脂成形品であって、窓孔69を閉塞できる大きさの矩形板状に形成されている。このシャッタ8には、図6(b)に示すように、シャッタ8の開閉操作を容易に行うための円形状の摘み8aが一体に突設してあり、器体60には、摘み8aを外部に露出させる長孔60bが窓孔69毎に設けられており、摘み8aはシャッタ8の移動に伴って長孔60b内をその長手方向に沿って移動する。
本実施形態におけるシャッタ8は、窓孔69を閉じる(閉塞する)位置(閉位置)と、窓孔69を開ける(開放する)位置(開位置)との間を移動自在に器体60に収納されており、シャッタ8が上記閉位置に位置しているときは、接触子63が器体60外部に突出しないために当該接触子63は導電バー4に接触できず、シャッタ8が上記開位置に位置しているときは、接触子63が器体60外部に突出して導電バー4に接触可能となる。なお、シャッタ8を上記閉位置と上記開位置との間で移動自在に取り付ける方法としては、上記実施形態1のカバー5における構成と同様のものを採用することができるから、詳細な説明は省略する。
したがって本実施形態では、分岐ブレーカ6に、一次側接続部61の複数の接触子63のなかから選択された2つの接触子63以外の接触子63と導電バー4との間を絶縁する接続防止部となるシャッタ8が設けられている。
また、本実施形態における分岐ブレーカ6には、磁石9が設けられている。磁石9は、器体60におけるカバー5との対向面(図6(a)における下面)に、窓孔69B,69C間に位置する形に設けられている。そのため、磁石9は、分岐ブレーカ6の機械接点部66と器体60の高さ方向において重なる位置に位置し、これによって、機械接点部66におけるアーク放電を磁石9で引き伸ばすことができるようになる。つまり、本実施形態の分電盤においても、直流配電部2と分岐ブレーカ6との間に、機械接点部66におけるアーク放電の消弧用の磁石9が配置されている。なお、分岐ブレーカ6のその他の構成は、実施形態1と同様であるから同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態におけるカバー5は、シャッタ保持部51などシャッタ8に関する構成を備えていない点で実施形態1と異なっている。つまり、本実施形態では、分岐ブレーカ6にシャッタ8を設けたので、カバー5にはシャッタ8を設けていない。
本実施形態の分電盤は上述したように構成されており、直流配電部2の導電バー4に分岐ブレーカ6の一次側接続部61を接続するにあたっては、直流配電部2の導電バー4に接続する接触子63をシャッタ8の開閉により選択した後に、分岐ブレーカ6をキャビネット7内に固定すればよい。
例えば、分岐ブレーカ6を12Vの直流電源に用いる場合には、12Vの導電バー4Bに対応する接触子63Bと0Vの導電バー4Cに対応する接触子63Cとがそれぞれ臨む窓孔69B,69Cのシャッタ8B,8Cを開け、36Vの導電バー4Aに対応する接触子63Aと−12Vの導電バー4Dに対応する接触子63Dとがそれぞれ臨む窓孔69A,69Dのシャッタ8A,8Dを閉じた後に(図6(a)参照)、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定する。このとき、シャッタ8を閉じた窓孔69からは、接触子63が器体60外部に突出せず、シャッタ8が開いた窓孔69に対応する接触子63のみが導電バー4と接触可能となるから、接触子63B,63Cのみが対応する導電バー4B,4Cに所定の接圧で接触する。
このように、シャッタ8を開閉することによって、分岐ブレーカ6の4つの接触子63A〜63Dより選択した2つの接触子63A,63Cのみが導電バー4に接続されて、二次側接続部64の端子65間に12Vの電圧が印加可能(12Vの直流電源を供給可能)となる。
また、分岐ブレーカ6を36Vの直流電源に用いる場合には、シャッタ8A,8Cを開け、シャッタ8B,8Dを閉じた後に、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定すればよく、これによって、分岐ブレーカ6の4つの接触子63A〜63Dより選択した2つの接触子63A,63Cのみが導電バー4に接続されて、36Vの直流電源が供給可能となる。また、分岐ブレーカ6を24Vの直流電源に用いる場合には、シャッタ8B,8Dを開け、シャッタ8A,8Cを閉じた後に、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定すればよく、これによって、分岐ブレーカ6の4つの接触子63A〜63Dより選択した2つの接触子63B,63Dのみが導電バー4に接続されて、24Vの直流電源が供給可能となる。また、分岐ブレーカ6を48Vの直流電源に用いる場合には、シャッタ8A,8Dを開け、シャッタ8B,8Cを閉じた後に、分岐ブレーカ6をキャビネット7に固定すればよく、これによって、分岐ブレーカ6の4つの接触子63A〜63Dより選択した2つの接触子63A,63Dのみが導電バー4に接続されて、48Vの直流電源が供給可能となる。
以上述べたように本実施形態の分電盤によれば、分岐ブレーカ6より供給できる直流電源の電圧は、一次側接続部61の複数の接触子63のなかから選択された2つの接触子63が接続される導電バー4間の電位差によって決定され、一次側接続部61においてどの接触子63を導電バー4と接続するかは、接続防止部によって選択することができるから、簡単な構成で分岐ブレーカ6より負荷などに供給する直流電源の電圧を容易に変更することができる。特に、上記接続防止部は、器体60の窓孔69を開閉するシャッタ8であるので、導電バー4と接続する接触子63をシャッタ8の開閉によって選択することができるから、供給する直流電源の電圧の変更をさらに容易に行うことができる。また、直流配電部2と分岐ブレーカ6との間には、機械接点部66におけるアーク放電の消弧用の磁石9が配置されているから、分岐ブレーカ6の機械接点部66におけるアーク放電を素早く消弧することができる。
ところで、本実施形態および上記実施形態1の分電盤は、例えば図7に示すような直流配電システムに適用することができる。なお、図7では、直流配電システムを設置する建物として戸建て住宅の家屋を想定して説明しているが、集合住宅に適用してもよい。
図7に示す家屋Hには、直流電力を出力する直流電力供給部101と、直流電力により駆動される負荷としての直流機器102とが設けられ、直流電力供給部101の出力端部に接続した直流供給線路Wdcを通して直流機器102に直流電力が供給される。直流電力供給部101と直流機器102との間には、直流供給線路Wdcに流れる電流を監視し、異常を検知したときに直流給電線路Wdc上で直流電力供給部101から直流機器102への給電を制限ないし遮断する前述の直流ブレーカ114が設けられる。
直流供給線路Wdcは、直流電力の給電路であるとともに通信路としても兼用されており、高周波の搬送波を用いてデータを伝送する通信信号を直流電圧に重畳することにより直流供給線路Wdcに接続された機器間での通信を可能にしている。この技術は、交流電力を供給する電力線において交流電圧に通信信号を重畳させる電力線搬送技術と類似した技術である。
直流供給線路Wdcは、直流電力供給部101を介して宅内サーバ116に接続される。宅内サーバ116は、宅内の通信網(以下、「宅内網」という)を構築する主装置であり、宅内網において直流機器102が構築するサブシステムなどと通信を行う。
図示例では、サブシステムとして、パーソナルコンピュータ、無線アクセスポイント、ルータ、IP電話機のような情報系の直流機器102からなる情報機器システムK101、照明器具のような照明系の直流機器102からなる照明システムK102,K105、来客対応や侵入者の監視などを行う直流機器102からなるインターホンシステムK103、火災感知器のような警報系の直流機器102からなる住警器システムK104などがある。各サブシステムは、自立分散システムを構成しており、サブシステム単独でも動作が可能になっている。
上述した直流ブレーカ114は、サブシステムに関連付けて設けられており、図示例では、情報機器システムK101、照明システムK102およびインターホンシステムK103、住警器システムK104、照明システムK105に関連付けて4個の直流ブレーカ114を設けている。1台の直流ブレーカ114に複数個のサブシステムを関連付ける場合には、サブシステムごとに直流供給線路Wdcの系統を分割する接続ボックス121が設けられる。図示例においては、照明システムK102とインターホンシステムK103との間に接続ボックス121が設けられている。
情報機器システムK101としては、壁コンセントあるいは床コンセントの形態で家屋Hに先行配置(家屋Hの建築時に施工)される直流コンセント131に接続される直流機器102からなる情報機器システムK101が設けられる。
照明システムK102、K105としては、家屋Hに先行配置される照明器具(直流機器102)からなる照明システムK102と、天井に先行配置される引掛シーリング132に接続する照明器具(直流機器102)からなる照明システムK105とが設けられる。引掛シーリング132には、家屋Hの内装施工時に施工業者が照明器具を取り付けるか、または家人自身が照明器具を取り付ける。
照明システムK102を構成する直流機器102である照明器具に対する制御の指示は、赤外線リモコン装置を用いて与えるほか、直流供給線路Wdcに接続されたスイッチ141から通信信号を用いて与えることができる。すなわち、スイッチ141は直流機器102とともに通信の機能を有している。また、スイッチ141の操作によらず、宅内網の別の直流機器102あるいは宅内サーバ116から通信信号により制御の指示がなされることもある。照明器具への指示には、点灯、消灯、調光、点滅点灯などがある。
上述した直流コンセント131、引掛シーリング132には、任意の直流機器102を接続することができ、接続された直流機器102に直流電力を出力するから、以下では直流コンセント131、引掛シーリング132を区別する必要がない場合には「直流アウトレット」と呼ぶ。
これらの直流アウトレットは、直流機器102に直接設けた接触子(図示せず)または接続線を介して設けた接触子(図示せず)が差し込まれる差込式の接続口が器体に開口し、接続口に差し込まれた接触子に直接接触する接触子受けが器体に保持された構造を有している。すなわち、直流アウトレットは接触式で給電を行う。直流アウトレットに接続された直流機器102が通信機能を有する場合には、直流供給線路Wdcを通して通信信号を伝送することが可能になる。直流機器102だけではなく直流アウトレットにも通信機能が設けられている。
宅内サーバ116は、宅内網に接続されるだけではなく、インターネットを構築する広域網NTに接続される接続口を有している。宅内サーバ116が広域網NTに接続されている場合には、広域網NTに接続されたコンピュータサーバであるセンタサーバ200によるサービスを享受することができる。
センタサーバ200が提供するサービスには、広域網NTを通して宅内網に接続された機器(主として直流機器102であるが通信機能を有した他の機器も含む)の監視や制御を可能にするサービスがある。このサービスにより、パーソナルコンピュータ、インターネットTV、移動体電話機などのブラウザ機能を備える通信端末(図示せず)を用いて宅内網に接続された機器の監視や制御が可能になる。
宅内サーバ116は、広域網NTに接続されたセンタサーバ200との間の通信と、宅内網に接続された機器との間の通信との両方の機能を備え、宅内網の機器に関する識別情報(ここでは、IPアドレスを用いるものとする)の取得の機能を備える。
宅内サーバ116は、センタサーバ200との通信機能を用いることにより、広域網NTに接続された通信端末からセンタサーバ200を通して宅内の機器の監視や制御を可能にする。センタサーバ200は、宅内の機器と広域網NT上の通信端末とを仲介する。
通信端末から宅内の機器の監視や制御を行う場合は、監視や制御の要求をセンタサーバ200に記憶させ、宅内の機器は定期的に片方向のポーリング通信を行うことにより、通信端末からの監視や制御の要求を受信する。この動作により、通信端末から宅内の機器の監視や制御が可能になる。
また、宅内の機器において火災検知など通信端末に通知すべきイベントが生じたときには、宅内の機器からセンタサーバ200に通知し、センタサーバ200から通信端末に対して電子メールによる通知を行う。
宅内サーバ116における宅内網との通信機能のうち重要な機能は、宅内網を構成する機器の検出と管理である。宅内サーバ116では、UPnP(Universal Plug and Play)を応用して宅内網に接続された機器を自動的に検出する。宅内サーバ116はブラウザ機能を有する表示器117を備え、検出した機器の一覧を表示器117に表示する。この表示器117はタッチパネル式もしくは操作部が付設された構成を有し、表示器117の画面に表示された選択肢から所望の内容を選択する操作が可能になっている。したがって、宅内サーバ116の利用者(施工業者あるいは家人)は、表示器117の画面上で機器の監視ないし制御が可能になる。表示器117は宅内サーバ116とは分離して設けてもよい。
宅内サーバ116では、機器の接続に関する情報を管理しており、宅内網に接続された機器の種類や機能とアドレスとを把握する。したがって、宅内網の機器を連動動作させることができる。機器の接続に関する情報は上述のように自動的に検出されるが、機器を連動動作させるには、機器自身が保有する属性により自動的に関係付けを行うほか、宅内サーバ116にパーソナルコンピュータのような情報端末を接続し、情報端末のブラウザ機能を利用して機器の関係付けを行うこともできる。
機器の連動動作の関係は各機器がそれぞれ保持する。したがって、機器は宅内サーバ116を通すことなく連動動作することができる。各機器について、連動動作の関係付けを行うことにより、たとえば、機器であるスイッチの操作により、機器である照明器具の点灯あるいは消灯の動作を行うことが可能になる。また、連動動作の関係付けはサブシステム内で行うことが多いが、サブシステムを超える関係付けも可能である。
ところで、直流電力供給部101は、基本的には、商用電源のように宅外から供給される交流電源ACの電力変換により直流電力を生成する。図示する構成では、交流電源ACは、分電盤110に内器として取り付けられた主幹ブレーカ111を通して、スイッチング電源を含むAC/DCコンバータ112に入力される。AC/DCコンバータ112から出力される直流電力は、協調制御部113を通して各直流ブレーカ114に接続される。
直流電力供給部101には、交流電源ACから電力が供給されない期間(たとえば、商用電源ACの停電期間)に備えて二次電池162が設けられている。また、直流電力を生成する太陽電池161や燃料電池163を併用することも可能になっている。交流電源ACから直流電力を生成するAC/DCコンバータ112を備える主電源に対して、太陽電池161や二次電池162や燃料電池163は分散電源になる。なお、図示例において、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163は出力電圧を制御する回路部を含み、二次電池162は放電だけではなく充電を制御する回路部も含んでいる。
分散電源のうち太陽電池161や燃料電池163は必ずしも設けなくてもよいが、二次電池162は設けるのが望ましい。二次電池162は主電源や他の分散電源により適時充電され、二次電池162の放電は、交流電源ACから電力が供給されない期間だけではなく必要に応じて適時に行われる。二次電池162の充放電や主電源と分散電源との協調は、協調制御部113により行われる。すなわち、協調制御部113は、直流電力供給部101を構成する主電源および分散電源から直流機器102への電力の配分を制御する直流電力制御部として機能する。なお、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163の出力を交流電力に変換し、AC/DCコンバータ112の入力電力として用いる構成を採用してもよい。
直流機器102の駆動電圧は機器に応じた複数種類の電圧から選択されるから、協調制御部113にDC/DCコンバータを設け、主電源および分散電源から得られる直流電圧を必要な電圧に変換するのが望ましい。通常は、1系統のサブシステム(もしくは1台の直流ブレーカ114に接続された直流機器102)に対して1種類の電圧が供給されるが、1系統のサブシステムに対して3線以上を用いて複数種類の電圧を供給するように構成してもよい。あるいはまた、直流供給線路Wdcを2線式とし、線間に印加する電圧を時間経過に伴って変化させる構成を採用することも可能である。DC/DCコンバータは、直流ブレーカと同様に複数に分散して設けてもよい。
上述の構成例では、AC/DCコンバータ112を1個だけ図示しているが、複数個のAC/DCコンバータ112を並設することが可能であり、複数個のAC/DCコンバータ112を設けるときには、負荷の大きさに応じて運転するAC/DCコンバータ112の台数を増減させるのが望ましい。
上述したAC/DCコンバータ112、協調制御部113、直流ブレーカ114、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163には通信機能が設けられており、主電源および分散電源や直流機器102を含む負荷の状態に対処する連携動作を行うことを可能にしている。この通信に用いる通信信号は、直流機器102に用いる通信信号と同様に直流電圧に重畳する形式で伝送する。
上述の例では主幹ブレーカ111から出力された交流電力をAC/DCコンバータ112により直流電力に変換するために、AC/DCコンバータ112を分電盤110内に配置しているが、主幹ブレーカ111の出力側において分電盤110内に設けた分岐ブレーカ(図示せず)で交流供給線路を複数系統に分岐し、各系統の交流供給線路にAC/DCコンバータを設けて系統ごとに直流電力に変換する構成を採用してもよい。
この場合、家屋Hの各階や各部屋を単位として直流電力供給部101を設けることができるから、直流電力供給部101を系統別に管理することができ、しかも、直流電力を利用する直流機器102との間の直流供給線路Wdcの距離が小さくなるから、直流供給線路Wdcでの電圧降下による電力損失を低減させることができる。また、主幹ブレーカ111および分岐ブレーカを分電盤110に収納し、AC/DCコンバータ112と協調制御部113と直流ブレーカ114と宅内サーバ116とを分電盤110とは別の盤に収納してもよい。
このような直流配電システムにおいては、本実施形態および上記実施形態1の分電盤は、図7に示す分電盤110の代わりに採用することができる。