JP7174483B2 - シリカの精製方法、およびシリカ粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液との中和によって生成したシリカの精製方法、およびシリカ粒子に関する。
シリカは、高純度石英ガラスの製造、吸湿剤などの原料となり、用途によっては高純度な製品が必要となる。シリカの製造方法には、四塩化ケイ素(ガス)やテトラエトキシシラン(液体)などの高純度材料を元に製造する方法や、水ガラスなどのケイ酸アルカリ水溶液を原料とし、鉱酸によりゲル化あるいは析出沈殿させる方法がある。前者は高純度なシリカが得られるが原料コストが高い。後者の原料は安価であるが、酸性下にあるシリカがアルカリ金属や正電荷のイオンを取り込みやすいことから、洗浄にコストを要するという課題があった。
特許文献1には、シリカ合成の際に四塩化ケイ素を使用することで高純度なシリカ水溶液を得、更に陽イオン交換処理を行うことによって高純度なゲル状シリカを得る方法が記載されている。
また、特許文献2には、シリカヒドロゲルに対してキレート剤及び鉱酸からなる洗浄液で洗浄することで、酸性下におけるキレート剤の効果で金属イオンを除去し、高純度化する方法が記載されている。
また、特許文献3には、安価な水ガラス(ケイ酸アルカリ水溶液)を元に、これに限外ろ過、陽イオン交換、キレートイオン交換処理を行ってケイ酸水溶液を高純度化することで、これを元に高純度なシリカゾルを得る方法が記載されている。
特開2015-020916号公報 特開2003-146646号公報 特開2017-036209号公報
特許文献1~3は、いずれもケイ酸アルカリ水溶液を酸で処理してシリカ固形物を得ると共に不純物を除去するものであるが、特許文献1は原料に四塩化ケイ素を用いることから原料が高価である。特許文献2は、各元素が5ppm以下、実施例ではTi濃度が1ppm程度のものが得られているが、用途によっては純度が十分でない。特許文献3は、原料溶液に対し、限外ろ過、イオン交換、キレートイオン交換と多段階の精製処理を行っており、精製コストが比較的高くなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、水ガラスなどの不純物となる金属元素が含まれ得る原料からも、比較的簡便な方法で、除去対象の金属元素の濃度が十分に低減された高純度なシリカを精製することができる精製方法、およびシリカ粒子を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明のシリカの精製方法は、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液との中和によって生成したシリカを精製する方法であって、浸漬槽に生成した前記シリカを収容し、前記シリカの集合およびその間隙によって形成されるシリカ層を、pHが1.0以下であり、鉱酸を含み、錯形成剤を添加した水溶液に浸漬する工程と、前記水溶液を、前記シリカ層に対する流速が0.01cm/min以上0.2cm/min以下の範囲で、通水量が前記シリカ層の存在する範囲の前記浸漬槽の体積の1.0倍以上となる所定の量、通水させる工程と、を含むことを特徴としている。
このように、ケイ酸アルカリ水溶液の中和によって得られたシリカ粒子に対して、除去対象の金属元素と錯体を形成する薬剤(錯形成剤)を含む強酸性の水溶液に浸漬した状態で、水溶液を低速で通水することで水溶液がゆっくりと置換され、除去対象の金属の濃度を十分に低減する精製が可能となる。
(2)また、本発明のシリカの精製方法は、前記水溶液を通水させる工程において、前記通水量を1.5倍以上の所定の量、通水させることを特徴としている。これにより、除去対象の金属の濃度をより低減する精製が可能となる。
(3)また、本発明のシリカの精製方法において、前記水溶液を通水させる工程は、4時間以上継続して実施されることを特徴としている。これにより、除去対象の金属の濃度を十分に低減する精製が可能となる。
(4)また、本発明のシリカの精製方法において、前記錯形成剤は、過酸化水素であることを特徴としている。これにより、Tiの濃度を十分に低減する精製が可能となる。
(5)また、本発明のシリカの精製方法において、前記錯形成剤は、EDTA-2Naであることを特徴としている。これにより、Cuの濃度を十分に低減する精製が可能となる。
(6)また、本発明のシリカ粒子は、Ti濃度が100ppb以下、平均粒径が500μm以上3000μm以下であることを特徴としている。本発明の精製方法は、ケイ酸アルカリ水溶液の中和によって得られたシリカ粒子の精製に好適に使用され、錯形成剤が過酸化水素である場合、Ti濃度を十分に低減させることができるため、このようにTi濃度が低く粒径の大きなシリカ粒子を製造できる。
本発明のシリカの精製方法は、水ガラスなどの低品位な原料からも、比較的簡便な方法で、除去対象の金属元素の濃度が、例えば100ppb以下であるような高純度なシリカを得ることができる。
試料および比較例の精製に使用した精製装置の概念図である。 (a)、(b)いずれも精製装置の変形例を示す概念図である。 試料1から12および比較例1、2の通水速度、置換回数および測定されたTiの濃度を示す表である。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液との中和によって生成したシリカ粒子を、除去対象の金属元素と錯体を形成する薬剤(錯形成剤)を含む強酸性の水溶液(洗浄液)に浸漬した状態で、洗浄液をシリカ層に対して低速で通水させ、置換させることで、除去対象の金属元素の濃度が十分に低減されたシリカ粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。以下に、本発明の実施形態について説明する。
シリカは、二酸化珪素(SiO)または二酸化珪素によって構成される物質の総称である。シリカは、石英、クリストバライトなどの結晶質シリカと、シリカフューム、シリカゲルなどの非晶質シリカに大別される。シリカの構造は、シリカゲルのような多孔質のものも石英のようなソリッドのものもある。
本発明において、精製対象となるシリカは、水ガラスなどのケイ酸アルカリ水溶液を原料とし、鉱酸によりゲル化あるいは析出沈殿させる方法により製造されたものである。このような方法により製造されたシリカは、原料由来の不純物を含むため、高純度なシリカとして使用するためには、精製、洗浄を行う必要がある。
しかし、シリカは水を保持する性質があり、また酸性下ではシリカ表面のシラノール基(Si-OH)から水素が乖離して負に帯電(Si-O)するため、ケイ酸アルカリ水溶液あるいは酸性溶液に由来する金属イオンがシリカ表面に保持され、水での洗浄を行っても残留しやすい。
このような製造方法で金属不純物の少ないシリカを得るためには、原料となるケイ酸アルカリ水溶液を高純度原料から調製する方法(特許文献1)、ケイ酸アルカリ水溶液からイオン交換処理などにより金属不純物を除去する方法(特許文献3)などが考えられるが、原料の精製工程を要し、高コストである。これに対して本発明の方法では、シリカ粒子を生成させるための酸性水溶液での処理の延長でシリカの精製ができ、金属不純物の濃度として数百ppbという高い純度まで精製することができる。
[シリカの精製方法]
本発明のシリカの精製方法は、以下のとおりである。まず、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の中和によって生成したシリカを鉱酸を含有させたまま浸漬槽に収容し、シリカの集合およびその間隙によって形成されるシリカ層を洗浄液となる水溶液に浸漬する。浸漬槽は、洗浄液またはイオン交換水を通水させたときにシリカ層全体がまんべんなく通水される構造であればどのような形状であってもよい。洗浄液の詳細は後述する。
洗浄対象のシリカは、平均粒径3000μm以下、最大粒径10000μm以下であることが好ましい。このように最大粒径を小さくすることで、粗大なシリカ粒子の内部に不純物となる金属イオンが残存する可能性を小さくできる。最大粒径がこれより大きい粒子は、精製、洗浄前に取り除いてもよいし、粉砕してもよい。また、シリカ粒子の平均粒径が所望の値より大きかった場合は、精製、洗浄後に粉砕することが好ましい。
浸漬槽を有する精製装置としては、例えば、図1、図2(a)、(b)のような精製装置を使用することができる。図1は、後述する試料および比較例の精製に使用した精製装置の概念図である。図1の精製装置1は、管状容器3にシリカ粒子を充填して、シリカ粒子の両端をガラスウール5または多孔質のセラミック板で押さえてシリカ層として固定したものである。管状容器3の一方から洗浄水を通水し、他方から排出する。また、図2(a)および(b)は、いずれも精製装置の変形例を示す概念図である。図2(a)および(b)の精製装置1は、上面が開放された容器7にシリカ粒子を充填してシリカ層としたものである。図2(a)の精製装置1は、容器7の下端のボールバルブ9から洗浄液を排出しつつ、容器7の開放側のローラーポンプ11から洗浄液を供給し通水する。また、図2(b)の精製装置1は、容器7の下端のローラーポンプ11から洗浄液を供給し通水すると、容器7上端の開放側から自然に洗浄液が排出される。
次に、洗浄液をシリカ層に対して所定の範囲の速度で通水し、シリカ層の周囲、間隙にある洗浄液を新たな洗浄液と徐々に置換する。洗浄液を通水する工程は、洗浄液のシリカ層に対する相対速度(通水速度)が0.01~0.2cm/minの範囲となるように制御する。洗浄液のシリカ層に対する相対速度は、所定の範囲内にあれば、通水する工程中で一定であっても変化してもよい。洗浄液のシリカ層に対する相対速度の計算方法は後述する。
洗浄液のシリカ層に対する相対速度が0.01cm/minより小さいと、精製時間が長くなり非効率である。また、除去対象の金属元素の濃度を低減させる効果が小さくなる場合がある。洗浄液のシリカ層に対する相対速度が0.2cm/minより大きいと、除去対象の金属元素の濃度を低減させる効果が小さくなる場合がある。なお、洗浄液を通水するとは、洗浄液に浸されたシリカ層に新たな洗浄液を所定の相対速度となるように供給し、元の洗浄液と入れ替えることをいう。洗浄液の排水は、供給した量と同量行うことが好ましい。
洗浄液の通水は、通水量がシリカ層の存在する範囲の浸漬槽の体積の1.0倍以上となる所定の量、通水させる。洗浄液をこのような量通水することで、使用する洗浄液の量が少量であっても除去対象の金属元素の濃度を十分に低減させることができる。また、洗浄液の通水は、通水量がシリカ層の存在する範囲の浸漬槽の体積の1.5倍以上の所定の量、通水させることが好ましい。なお、通水量を置換回数で定義してもよい。例えば、通水量がシリカ層の存在する範囲の浸漬槽の体積の1.0倍であることと置換回数が1.0回であることは同じことを表す。置換回数の定義については後述する。
洗浄液の通水は、4時間以上継続して実施することが好ましい。このように時間をかけて通水することで、除去対象の金属の濃度を十分に低減する精製が可能となる。通水時間の上限は、通水量と通水速度との関係で定まるため、特に設定する必要はないが、効率を考えると72時間以下であることが好ましい。また、洗浄液の通水の途中で通水を中断する場合もトータルの通水時間が4時間以上となるように通水することが好ましい。
所定の量の洗浄液を通水した後、イオン交換水を通水して洗浄する。イオン交換水を通水する速度は、どのようなものであってもよい。イオン交換水の通水は、出口側の水の電気伝導度が0.2mS/m以下となるまで行うことが好ましい。イオン交換水は、電気伝導度が5.0mS/m以下であることが好ましい。
次に、浸漬槽の洗浄液を排出し、シリカを取り出す。そして、シリカを乾燥させる。シリカを乾燥させる方法、温度および時間はどのようなものであってもよい。例えば、熱風循環式乾燥機、流動床式乾燥機を用いることができ、乾燥温度は120℃以上であることが好ましい。
[洗浄液]
洗浄液は、鉱酸を含むpHが1.0以下の水溶液である。鉱酸は、どのようなものであってもよく、シリカの生成に使用した鉱酸と同一であっても異なっていてもよい。例えば、硫酸、硝酸、塩酸などを使用できる。使用する鉱酸の種類によって、濃度は適切な範囲にする。例えば、硫酸の場合、20wt%以上45wt%以下とすることができる。
洗浄液は、錯形成剤を添加した水溶液である。錯形成剤は、除去対象の金属元素を含む金属元素と錯体を形成する。そのため、錯形成剤は、除去対象の金属元素によって変更してもよい。例えば、過酸化水素、EDTA-2Naなどを使用できる。使用する錯形成剤の種類によって、濃度は適切な範囲にする。
例えば、過酸化水素の濃度は、0.03wt%以上1.0wt%以下であることが好ましい。過酸化水素の濃度は、0.03wt%より小さいと除去対象の金属濃度を低減させる効果が小さくなる。また、1.0wt%より大きくしても除去対象の金属濃度を低減させる効果はあまり大きくならないので、相対的なコストが大きくなる。
また、例えば、EDTA-2Naの濃度は、0.03wt%以上1.0wt%以下であることが好ましい。EDTA-2Naの濃度は、0.03wt%より小さいと除去対象の金属濃度を低減させる効果が小さくなる。また、1.0wt%より大きくしても除去対象の金属濃度を低減させる効果はあまり大きくならないので、相対的なコストが大きくなる。また、EDTA-2Naは、廃液から除去する必要があるため、1.0wt%より大きくすると除去のコストが大きくなる。
洗浄液を通水している間の洗浄液の温度は、どのようなものであってもよい。例えば、0℃以上40℃以下とすることができる。なお、イオン交換水も同様の範囲にすることができる。
[本発明の精製の原理]
本発明において、精製対象となるシリカは、ケイ酸アルカリ水溶液を酸性溶液に滴下・注入・混合などして生成されたシリカ粒子である。
シリカは水を保持する性質があり、また酸性下ではシリカ表面のシラノール基(Si-OH)から水素が乖離して負に帯電(Si-O)するため、ケイ酸アルカリ水溶液あるいは酸性水溶液に由来する金属イオンがシリカ表面に保持され、水での洗浄を行っても残留しやすい。
本発明のシリカの洗浄方法では、強酸に浸漬することでシラノール基の縮合反応(Si-OH+HO-Si→Si-O-Si+HO)を進行させ、酸性下での負電荷を小さくし、金属イオンをシリカ表面に保持されにくくする。また、錯形成剤は、正電荷の金属イオンと錯体を形成することで、金属イオンをシリカ表面に保持されにくくする。更に、洗浄液を通水させると、金属イオンはシリカから排斥される。
詳細は未解明であるが、洗浄液を通水させる場合においては、流速が高速であるほどナトリウムイオンなどのアルカリ金属のイオンが排出されやすく、低速であるほどアルカリ金属以外の金属イオンが排出されやすくなることが分かった。また、通水しない場合と比較すると、通水する方が金属イオンが排出されやすくなることも分かった。そのため、本発明においては、アルカリ金属以外の金属イオンの残留がより問題となる用途に用いることを想定して、低速での通水を実施することとした。
[精製条件の評価方法について]
(洗浄水の流速の計算)
筒状容器(浸漬槽)の片側から片側へと通水する場合、容器内部のシリカ層に対する相対速度(流速)は下記方法によって求められる。ただし、本発明の洗浄方法は筒状容器での洗浄には限定されず、適用する系ごとにシリカ層と洗浄水の相対速度を計算する。
筒状容器の断面積をS(cm)、単位時間あたりの体積流量をV(cm/min)とする(Vは容器の片側から注水する量、あるいは排水される量を計測する)。この時、洗浄水の流速K(cm/min)は、
K=V/S … (1)
によって計算される。
(置換回数)
任意形状の容器の片側から片側へと通水する場合を考える。容器(浸漬槽)のシリカ層の存在する範囲の体積をA(cm)、体積流量をV(cm/min)、時間をt(min)とする。容器のシリカ層の存在する範囲の体積とは、シリカと空隙を合わせた体積である。ここで、「置換回数N」とは、
N=V×t/A … (2)
とする。すなわち、置換回数とは、通水量が容器のシリカ層の存在する範囲の体積の何倍であったかを示す値である。なお、本発明は洗浄水を低速で連続的に通水し、洗浄水中の物質の拡散があるため、例えば、置換回数が1回であったとしても当初の浸漬した洗浄水が全量置換されているとは限らない。
(シリカの粒径の測定)
シリカの粒径はふるい分級により測定する。シリカがふるい目A(μm)のふるいを全通した場合、すなわち、ふるい上に残ったシリカが視認できない場合、シリカの粒径はAμm以下であるとする。
[錯形成剤として過酸化水素を用いた試料および比較例]
3号ケイ酸ソーダに対し、0.45μmのフィルターによるろ過を行った(ろ過後Ti濃度18000ppb)。濃度35wt%に調整した20℃の希硫酸(Ti濃度250ppb)4.0L(比重1.26g/cm)に対し、硫酸中の過酸化水素濃度が0.1wt%となるよう、35wt%過酸化水素水12.8mL(比重1.13g/cm)を加えた。この硫酸を攪拌しながら、このケイ酸ソーダ540gを、6.0g/sの速度で滴下することによりシリカを析出させた。
(試料1)
この状態のシリカ230gを、硫酸を含有させたまま内径40mmの塩化ビニル管に充填し、両端にガラスウールを充填して保持した。円筒内で充填したシリカの長さは20.8cmであり、シリカの占める体積は261cmであった。この容器に対し、同様に過酸化水素を加えた希硫酸を、1mL/minの速度で8時間通水させた。この時の液の通水速度は0.08cm/minであった。また、通水量は480mLであり、置換回数で1.8回に相当する量であった。
こののち、同じ装置に、イオン交換水(Ti濃度<10ppb、電気伝導度0.12mS/m)を15mL/minの速度で、出口側の水の電気伝導度が0.2mS/m以下となるまで通水した。シリカを円筒容器から回収し、105℃で24時間乾燥させた。このシリカの化学成分を分析したところ、Ti濃度は80ppbであった。なお、洗浄液および廃液の電気伝導度の測定、および、Tiの濃度の測定は、以下の方法で行った。
(Ti濃度の測定方法)
シリカを1mm以下の粒子に解砕し、5gを取る。これを白金製の皿に入れ、硝酸30wt%、フッ化水素酸20wt%となるよう調製した混酸を、汚染のない薬さじで内容物を混合しながらゆっくりとくわえる。皿の中のシリカが視認できなくなったら、200℃のホットプレート上で白金皿を加熱し、内容液を蒸発させる。液体が無くなったら、白金皿を冷ましてから、純水20mL、35%塩酸2mLを加えて120℃で1時間加熱して残渣を溶解させる。これを100mLメスフラスコに移してメスアップする。メスアップした溶液中の元素濃度を、ICP-AESで測定した。
ここで、各試薬及び純水は、測定したい金属の含有量が、シリカ中に含まれる金属の含有量に対して5%以下であるような高純度のものでなくてはならない。金属イオンの濃度は、下記の式3によって示される。
シリカ中濃度(ppb)=溶液中濃度(ppb)×メスアップ時の溶液量(mL)/シリカ粉末量(g) … (3)
(電気伝導度の測定)
洗浄液の電気伝導度は、HORIBA社製ポータブル電気伝導率計ES-71を使用して測定した。
(試料2)
(スケールを大きくした例)
試料1とおなじ方法で作製したシリカ2500gを、通水できる構造の、内径100mmの円筒容器に入れて、両端から多孔質のセラミック板で押さえてシリカ層を固定した。シリカ層の高さは36.0cmであった。ここに、同様の希硫酸を、通水量3mL/minで、24時間にわたって通水した(通水速度0.04cm/min、置換回数1.5回)のち、同様の方法で洗浄した。このシリカのTi濃度は100ppbであった。
(試料3)
(通水速度を遅くした例)
試料1と同じ条件で、通水量を0.2mL/min、通水時間を36時間とした。(通水速度0.016cm/min、置換回数1.6回)
(試料4)
(通水速度を遅くした例2)
試料1と同じ条件で、通水量を0.2mL/min、通水時間を72時間とした。(通水速度0.016cm/min、置換回数3.3回)
(試料5)
(通水速度を速くした例)
試料1と同じ条件で、通水量を2mL/min、通水時間を4時間とした。(通水速度0.16cm/min、置換回数1.8回)
(試料6)
(置換回数を大きくした例)
試料1と同じ条件で、通水量を1mL/min、通水時間を10時間とした。(通水速度0.08cm/min、置換回数2.3回)
(試料7)
(置換回数を大きくした例2)
試料1と同じ条件で、通水量を1mL/min、通水時間を20時間とした。(通水速度0.08cm/min、置換回数4.6回)
(試料8)
(置換回数が少ない例)
試料1と同じ条件で、通水量を1mL/min、通水時間を2時間とした。(通水速度0.08cm/min、置換回数0.5回)
(試料9)
(置換回数が少ない例2)
試料1と同じ条件で、通水量を1mL/min、通水時間を4時間とした。(通水速度0.08cm/min、置換回数0.9回)
(試料10)
(置換回数が少ない例3)
試料1と同じ条件で、通水量を1mL/min、通水時間を6時間とした。(通水速度0.08cm/min、置換回数1.4回)
(試料11)
(通水速度が速い例)
試料1と同じ条件で、通水量を4mL/min、通水時間を8時間とした。(通水速度0.32cm/min、置換回数7.3回)
(試料12)
(通水速度が速い例2)
試料1と同じ条件で、通水量を4mL/min、通水時間を2時間とした。(通水速度0.32cm/min、置換回数1.8回)
(比較例1)
(同じ硫酸量/シリカ量比で、通水ではなく静置処理を行った例)
試料1の方法と同様の方法で作製したシリカ230gをガラス製のビーカーに入れ、希硫酸480mLを加えて、通水せずに8時間静置したのち、同様の方法で洗浄した。このシリカのTi濃度は870ppbであった。
(比較例2)
(過酸化水素を加えない例)
試料1と同じ条件で、硫酸として、過酸化水素水を添加しないものを使用した。(通水速度0.08cm/min、置換回数1.8回)
図3は、試料1から12および比較例1、2の通水速度、置換回数および測定されたTi濃度を示す表である。洗浄液を通水しない比較例1および洗浄液に過酸化水素(錯形成剤)を含まない比較例2に対して、洗浄液に過酸化水素を含み洗浄液を通水した試料1から12は、いずれもTi濃度が小さくなった。このため、洗浄液に錯形成剤を含み通水することが除去対象とする金属濃度を低減するために有効であることが分かった。
試料11は、Ti濃度が比較的低くなっているが、置換回数が多くなっているため効率的ではない。また、試料12は、同じ置換回数で通水速度の小さい試料1および試料5と比較するとTi濃度が高くなっている。これにより、通水速度はあまり高すぎない方がよいことが分かった。
試料8、9、10、1、6、7は、通水速度が同じで置換回数がこの順で大きくなっている。また、Ti濃度は試料7を除いてこの順で小さくなっている。これにより、置換回数は大きい方がよいことが分かった。精製の効率を考えると、置換回数は、1回以上であればよく、1.5回以上であればより好ましい。
試料4は、試料3と通水速度が同じで置換回数が2倍であるが、試料3と比較してTi濃度はあまり低減されていない。また、試料7は、試料6と通水速度が同じで置換回数が2倍であるが、試料6と比較してTi濃度は逆に若干高くなっている。これにより、通水速度が十分に小さいときは、置換回数は大きくしなくてもよいことが分かった。例えば、通水速度が0.01~0.2cm/minのときは、置換回数は5回より大きくする必要はなく、3回でも十分である。
[錯形成剤としてEDTA-2Naを用いた試料および比較例]
(試料A)
試料1と同様の条件で、硫酸に対し、過酸化水素ではなく、EDTA-2Na(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)を0.2wt%添加した洗浄液を用いた(水ガラス中のCu濃度:3800ppb、硫酸中のCu濃度:<10ppb)。精製したシリカのCu濃度を測定したところ、40ppbであった。
(比較例A、比較例B)
また、EDTA-2Naを添加せずに、同様の精製を行ったシリカ(比較例A、比較例2と同じもの)のCu濃度は230ppmであった。また、比較例1のように、EDTA-2Naを添加した洗浄液を、通水せずに浸漬のみ行ったところ、得られたシリカ(比較例B)のCu濃度は90ppmであった。
錯形成剤としてEDTA-2Naを使用した場合、Cu濃度を低減できた。このため、除去対象とする金属に応じて錯形成剤を変更することで、他の金属元素についても、錯形成剤によって表面に金属イオンが保持されるのを防ぎ、ゆっくりと洗浄液を通水させる方法によって、除去対象とする金属濃度を低減する精製が可能であると考えられる。なお、本発明の精製は洗浄水が強酸性であるため、強酸性下でも錯形成能を発揮する錯形成剤を選定する必要がある。
以上の結果から、本発明のシリカの精製方法は、除去対象とする金属濃度を低減させた高純度なシリカを得るために有効であると言える。
1 精製装置
3 管状容器
5 ガラスウール
7 容器
9 ボールバルブ
11 ローラーポンプ

Claims (5)

  1. ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液との中和によって生成したシリカを精製する方法であって、
    浸漬槽に生成した前記シリカを収容し、前記シリカの集合およびその間隙によって形成されるシリカ層を、pHが1.0以下であり、鉱酸を含み、錯形成剤を添加した水溶液に浸漬する工程と、
    前記水溶液を、前記シリカ層に対する相対速度が0.01cm/min以上0.2cm/min以下の範囲で、通水量が前記シリカ層の存在する範囲の前記浸漬槽の体積の1.0倍以上となる所定の量、通水させる工程と、を含むことを特徴とするシリカの精製方法。
  2. 前記水溶液を通水させる工程において、前記通水量を1.5倍以上の所定の量、通水させることを特徴とする請求項1記載のシリカの精製方法。
  3. 前記水溶液を通水させる工程は、4時間以上継続して実施されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシリカの精製方法。
  4. 前記錯形成剤は、過酸化水素であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシリカの精製方法。
  5. 前記錯形成剤は、EDTA-2Naであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシリカの精製方法。
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