JP7173699B2 - ロック機構付きロボットハンド - Google Patents

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本発明は、複数のフィンガーで複雑形状の物を把持するロック機構付きロボットハンドに関する。
ロボットアームなどの先端に取付けられる把持用ロボットハンドは、一般に複数のフィンガーを有している。フィンガーは通常複数の関節を持ち、関節を中心に回動することで屈曲動作を行い物を把持する。屈曲動作を行わせるのは、モータやシリンダユニット(アクチュエータ)などの駆動源を必要とするが、個々のフィンガーや関節ごとに駆動源を設けると、ロボットハンド全体が大型化且つ重量が増えてしまう。そこで、関節の数より少ない数の駆動源で関節を連動させる劣駆動型ロボットハンドが普及している。
特許文献1には劣駆動型の人間型ハンド(Humanoid Hand)が開示されている。この人間型ハンドは多関節フィンガーを1つのアクチュエータによって屈曲動作させるために、各フィンガーに沿ってワイヤーを組み込み、フィンガーの位置はそのままにしてアクチュエータの駆動でワイヤーを引き込むことで、フィンガーが内側に屈曲する構造になっている。
特許文献2には、関節数を4個としたフィンガーが提案されている。このフィンガーも関節数よりも少ない2つのアクチュエアータによって指に沿って配設したワイヤーを引伸することでフィンガーが屈曲動作する構造になっている。
特許文献3には、掌部に3本のフィンガーが設けられた劣駆動型ロボットハンドが開示されている。この先行技術はワイヤーを用いずにリンク機構でフィンガーが屈曲動作する構造になっている。
特開2003-145474号公報 特開2007-237358号公報 国際公開2001-118646号公報
特許文献1乃至3に開示されるロボットハンドによれば、複雑な形状の物でも複数の指が把持する物の表面に押し付けられるため確実に把持することができる。
上記のロボットハンドをロボットアームの先端部(手首)に取付ける場合には、把持する物の向き等が一定でなくとも複数のフィンガーで把持できるように手首にある程度自由度を持たせる構造が公知である。
自由度を持たせた手首の構造としては球面ジョイントが一般的である。この構造の一例は図6に示すように、掌部(揺動プレート)100に複数のフィンガー101を取付け、掌部100の裏面側に設けたボール部102を設け、このボール部102を手首の先端に設けた受け部103の凹球面に摺動自在に嵌め込んだ構造になっている。
球面ジョイントを介してロボットアームの先端部にロボットハンドを連結した場合、複数のフィンガーで物を確実に掴むことができるのであるが、掴んだ状態で手首部分は自由度があるため、外力が作用するとロボットハンド全体が球面ジョイントを中心として揺動してしまう。
このように物を掴んだ状態でロボットハンド全体が揺動すると、例えば把持した状態で何らかの加工を物に加えようとする場合に対象物が動いてしまい加工が困難になるなどの不利がある。
人間の手に例えると、複数の指で物を掴んだ状態で、手首の部分を固定しないまま部品を取り付けたり、穴明けなどの加工を行うことに等しく、作業が極めて困難となる。
上記の課題を解決するため、本発明に係るロボットハンドは、ロボットアームの先端に球面ジョイント機構を介して取付けられ、前記球面ジョイント機構はボール部とボール部の形状に倣った凹面を有する受け部材を備え、前記ボール部は複数のフィンガーを支持する揺動プレートの裏面に設けられ、前記受け部材はシリンダ内に軸方向に摺動自在に配置され、前記ボール部表面と受け部材の凹面との間にはボールベアリングが配置され、圧力源からの流体(気体または作動油)または駆動源からの機械的力(磁力など)により前記受け部材はボール部側に押出され、この押出し動作により前記ボールベアリングがボール部表面に押付けられ、揺動プレートの動きがロックされる。
前記受け部材をシリンダの軸方向に沿って複数に分割し、前記ボール部に最も近い分割体にはボール部の形状に倣った凹面を形成し、複数の分割体の間には圧力源からの流体が供給される空間を形成した構成とすることができる。
受け部材を複数の分割体に分け、それぞれの間に流体が供給される空間を形成することで、流体が作用する受圧面積が大きくなり、ボール部表面にボールベアリングを押し付ける力が倍化し、確実にロックすることができる。
本発明によれば、ロボットハンドによって把持対象となる物を把持した状態で、ロボットハンドに外力が作用してもロボットハンドは動くことがない。したがって位置決め精度を必要とする工程などに有利である。
揺動プレートに複数のフィンガーを備えたロボットハンドでは、把持対象となる物の形状に合わせて揺動プレートが揺動(馴染み動作)して、各フィンガーが確実に物を把持する。一方、この馴染み動作によって複数のフィンガーが物を確実に保持していても、外力によってロボットハンド全体が動いてしまう。従来は馴染み動作とロックとはトレードオフの関係にあったが、本発明によりこれらの両方を可能にした。
本発明に係るロボットハンドの全体斜視図 同ロボットハンドの要部断面図 同ロボットハンドのフィンガーの動きを説明した図 同ロボットハンドの馴染み動作を説明した図 同ロボットハンドの動作を順を追って説明した図 従来の球面ジョイント機構を示す断面図
図中1はロボットアームの先端に設けられるベースプレートであり、このベースプレート1には3本の支柱2が設けられ、この支柱2にシリンダ部3が摺動自在に支持され、ベースプレート1に固定したアクチュエータ4を駆動することでシリンダ部3が支柱2に沿って図中で上下動する。
シリンダ部3は上方が解放され、内部に受け部材5が収納されている。この受け部材5は本実施例ではシリンダ部3の軸方向に沿って5分割され、各分割体の間には圧気源からのエアが供給される空間7が形成されている。
前記受け部材5の分割体のうち最も上方の分割体5aの上面は半球面8とされ、この半球面8に倣った形状のボール部9が揺動プレート10の下面に取付けられ、このボール部9は前記半球面8との間にボールベアリング11を介して半球面8内に回動可能に嵌り込むことで球面ジョイントが構成される。更に嵌り込んだ状態でキャップ12により抜けが防止されている。
前記3本の支柱2の先端部(上端部)には突き当てプレート13が固定され、また前記揺動プレート10には、本実施例の場合、3本のフィンガー14、15、16が設けられている。各フィンガー14、15、16は揺動プレート10に設けられたモータ6によって動作せしめられる。尚、3本のフィンガー14、15、16は同一構造であるので、1本のフィンガーについて以下に説明する。
フィンガーは上方に向かってコ字状をなす基部リンク20の上端に第1リンク21の中間部が回動自在に取付けられ、この第1リンク21の一端は前記支柱2の先端部に固定された突き当てプレート13に連結リンク17を介して連結されている。
前記第1リンク21の一端には平行リンクの一方を構成する第2リンク22の基端部が枢支され、第1リンク21の他端には平行リンクの他方を構成する第3リンク23の基端部が枢支されている。
第3リンク23の先端には三角プレート24の一隅部が連結され、この三角プレート24にはL字リンク25が回動自在に取り付けられ、このL字リンク25の一端に前記第2リンク22の先端部が連結されている。
前記三角プレート24の先端隅部にはボックス部26が枢着され、このボックス部26に指先部27が保持されている。ボックス部26内にはスプリングが内蔵され、指先部27が把持対象物の形状に合わせて回動可能とされている。ボックス部26の前記枢着点から離れた箇所に前記L字リンク25の他端が連結されている。
以上において、アクチュエータ4の伸び動作により球面ジョイントにて支持されている揺動プレート10が上方に移動し、一方突き当てプレート13は動かないため、フィンガー14(15,16)の第1リンク21が図3に示すように、突き当てプレート13の枢着点を中心に時計方向に回動する。尚、アクチュエータ4の縮み動作によって揺動プレート10が上方に移動するようにリンクを組むようにしてもよい。
第1リンク21の時計方向の回動につれて、第2リンク22よりも大きく第3リンク23が全体的に時計方向に回動し、この回動に合わせて三角プレート24が第2リンク22の先端枢着点を中心として時計方向に回動する。
三角プレート24が時計方向に回動すると、指先部27を備えたボックス部26はL字リンク25の動きに連動して三角プレート24との枢着点を中心として時計方向に回動する。このように、アクチュエータ4の伸び動作に連動して、3本のフィンガー14,15,16は各関節が内側に曲がり、対象物を把持する動きを行う。
対象物が複雑な形状をしている場合には、各フィンガー14,15,16が同時に対象物に接触せずに、どれか1本のフィンガーが先に対象物に到達する。この場合、他のフィンガーは対象物に当たっていないので、更にアクチュエータ4は伸び動作を行う。
すると、図4に示すように、既に対象物に当たっているフィンガーはこれ以上曲がらないので、その反動として揺動プレート10の当該フィンガーを取り付けている箇所が下方に他の部分が上方となるように揺動プレート10が傾動する。
上記傾動により、対象物を把持していなかった他のフィンガーは更に屈曲し、対象物に当接する。このようにして揺動プレート10が傾動することで、対象物の形状に合わせて馴染み動作を行うことになり、3本のフィンガーで複雑な形状の対象物であっても確実に把持することができる。
以上の場合、揺動プレート10が傾動することで馴染み動作を行うことができたのであるが、3本のフィンガーで対処物を強固に把持した後も揺動プレート10が傾動可の状態であると、外力が作用した場合に容易に揺動プレート10が傾動し、把持した対象物の位置が定まらない。対象物に何らかの加工などを行う場合には把持した対象物が動かないようにする必要がある。
そこで、本発明にあっては、圧気源6からエアを受け部材5を構成する各分割体の間に形成された空間7に送り込む。空間7にエアが送り込まれると、受け部材5を構成する分割体の間隔が大きくなり、最も上方の分割体5aの半球面8によってボールベアリング11がボール部9の表面に押し付けられ、揺動プレート10が傾動できなくなり、ロック状態となる。
ここで、実際例では受け部材5を5つの分割体で構成し、各分割体の間に形成した空間にエアを送り込むようしている。これは受圧面積を大きくすることでボールベアリング11をボール部9に押し付ける力を大きくして、強固なロック状態を得るためである。したがって、必ずしも強固なロック状態を必要としない場合には、受け部材5は1つでもよい。
以上のロボットハンドの動きを図5を参照して説明する。先ず、図5(a)ではアクチュエータ4が縮んで3本のフィンガー14、15、16が開いた状態にある。この後、アクチュエータ4の伸びに応じ前記したように3本のフィンガー14、15、16が徐々に内側に屈曲する。
3本のフィンガー14、15、16が徐々に内側に屈曲し、そのうちの1本が図5(b)に示すように突き当てプレート13上に載置されているか、或は当接している対象物にフィンガー14が当たる。この時他のフィンガー15、16はまだ対象物に当接していない。このため、揺動プレート10が傾動する馴染み動作を行い、次のフィンガー15が対象物に当たる。更に図5(c)に示すように、揺動プレート10が傾動して3本目のフィンガー16が対象物にあたり、3本のフィンガーの屈曲動作によって対象物を確実に把持する。
この後、前記した動作でボールベアリング11を強くボール部9の表面に押し付け揺動プレート10の動きが阻止される。
図示例では劣駆動型のロボットハンドについて説明したが、本発明に係るロボットハンドは、劣駆動型に限らない。また、フィンガー部の本数も3本に限定されない。更に受け部材を動作させる流体としてエアを示したが、作動油や機械的或は電磁的な力を利用してもよい。
1…ベースプレート、2…支柱、3…シリンダ部、4…アクチュエータ、5…
受け部材、5a…最上部の分割体、6…モータ、7…空間、8…半球面、9…ボール部、10…揺動プレート、11…ボールベアリング、12…キャップ、13…突き当てプレート、14、15、16…フィンガー、17…連結リンク、20…基部リンク、21…第1リンク、22…第2リンク、23…第3リンク、24…三角プレート、25…L字リンク、26…ボックス部、27…指先部。

Claims (2)

  1. ロボットアームの先端に球面ジョイント機構を介して取付けられるロボットハンドであって、前記球面ジョイント機構はボール部とボール部の形状に倣った凹面を有する受け部材を備え、前記ボール部は複数のフィンガーを支持する揺動プレートの裏面に設けられ、前記受け部材はシリンダ内に軸方向に摺動自在に配置され、前記ボール部表面と受け部材の凹面との間にはボールベアリングが配置され、圧力源からの流体または駆動源からの機械的力により受け部材はボール部側に押出され、この押出し動作により前記ボールベアリングがボール部表面に押付けられ、前記揺動プレートの動きがロックされることを特徴とするロボットハンド。
  2. 請求項1に記載のロボットハンドにおいて、前記受け部材はシリンダの軸方向に沿って複数に分割され、前記ボール部に最も近い分割体にはボール部の形状に倣った凹面が形成され、複数の分割体の間には圧力源からの流体が供給される空間が形成されていることを特徴とするロボットハンド。




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