JP7172978B2 - 鋼管、鋼管構造体、鋼管構造体の構築方法 - Google Patents
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Description
しかし、先端にビットを備えた鋼管杭を圧入すると、回転施工する際に先端のビットにより支持地盤が乱され、地耐力が低下し、鋼管杭の支持力性能が低下するという懸念がある。
また、特許文献2のような先端ビットの配置と形状とすることで、掘削能力の向上は期待できると考えられるが、一方で、その強力な掘削の能力のために支持地盤が乱されて地耐力が低下することが特許文献1と同様に懸念される。
先端に切欠き形状部を有し、該切欠き形状部は鋼管が回転する際に地盤を掘削して円形の掘削溝を形成する機能を有することを特徴とするものである。
先端にビットを備えた先行掘削用鋼管により、鉄筋コンクリート、無筋コンクリート又は石材の内、1種以上で構築された、既存の構造物を打ち抜く工程と、
先行掘削用鋼管を引き上げる工程と、
上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の鋼管の上端を把持して地盤中の所定の支持層まで回転圧入する工程とを備えたことを特徴とするものである。
本発明の一実施の形態に係る鋼管1は、回転及び/又は揺動させて地盤を掘り進めながら地盤内に埋設されるものであって、図1、図2に示すように、先端に切欠き形状部3を有し、切欠き形状部3は鋼管1が回転する際に地盤を掘削して円形の掘削溝を形成する機能を有することを特徴とするものである。
また、切欠き形状部3における切り欠きの形状も矩形状に限られない。
さらに、切欠き形状部3の円周方向の長さLの総和(図2に示す例では、L×8)が、鋼管周長の10%以上、70%以下とすることが望ましい。切欠き形状部3の円周方向長さLの総和が、鋼管周長の10%未満の場合、回転圧入施工した際の地盤の掘削能力が十分得られない可能性がある。一方、切欠き形状部3の円周方向長さLの総和が、鋼管周長の70%超の場合、支持地盤を乱すことによる支持力低下を招く恐れがある。
本実施の形態に係る鋼管1は、図3、図4に示すように、切欠き形状部3が形成された鋼管1の先端部を耐摩耗鋼によって形成したものである。図3、図4において、耐摩耗鋼によって形成された部分はグレーに色付けして示している。
先端部に耐摩耗鋼を使用することで、回転及び/又は揺動させながら硬質地盤や地中障害物のある地盤に圧入する際に鋼管1の損傷を防止できる。
また、耐摩耗鋼の加工性、溶接性を考慮すると、表面ブリネル硬さ(JIS Z 2243:2018試験による)が公称値で600以下のものとするのがよい。
本実施の形態に係る鋼管1は、図5に示すように、鋼管先端面における切欠き形状部3以外の部分の全部又は一部に、先端に向かって肉薄となるような傾斜面部5を形成したものである。
図5に示す例では、先端部の内面側及び外面側から厚みの中心に向かって傾斜する一対の傾斜面部5が形成され、先端が尖った断面V字状になっている。
本実施の形態に係る鋼管1は、図6に示すように、切欠き形状部3が形成された先端部を、先端部以外の部位よりも厚肉の厚肉先端部7としたものである。換言すれば、厚肉先端部7の管の内径を厚肉先端部以外の管よりも小さくするとともに、厚肉先端部7の管の外径を厚肉先端部7以外の管よりも大きくしたものである。
このようにすることで、鋼管1の圧入時において掘削した土砂による鋼管1内外からの拘束を低減できる。
このようにすれば、先端で掘削した土砂が鋼管1の外側にスムーズに排出され、土砂による鋼管1の拘束を低減する効果が高まる。
一方、スリット幅は、厚肉先端部7の1ブロック長さに対し、90%以下とすることが望ましい。スリット幅が厚肉先端部7の1ブロック長さに対して90%超の場合、局所的に構造のバランスが悪くなり支持力低下を招く恐れがある。ここで、1ブロック長さとは、厚肉先端部7における隣り合う切欠き形状部3に挟まれた部分の外周長を指す。
また、スリット幅の総和は、厚肉先端部7の外周長に対して10%以上とすることが望ましい。スリット幅の総和が厚肉先端部7の外周長の10%未満の場合、鋼管1の外側に排出される土砂量が十分でなく、鋼管1の拘束の低減効果が小さくなるおそれがある。
さらに、切欠き形状部3の円周方向の長さLの総和とスリット幅の総和との合計長さは、厚肉先端部7より上部の鋼管周長に対して70%以下とすることが望ましい。切欠き形状部3の円周方向の長さLの総和とスリット幅の総和との合計長さが、厚肉先端部7の外周長の70%超の場合、支持地盤を乱すことによる支持力低下を招く恐れがある。
このようにすれば、鋼管先端部を冷却して切欠き形状部3の摩耗を遅らせることができるとともに、鋼管先端部で掘削した土砂の移動がよりスムーズになる。なお、冷却用の液体としては、水、掘削液等であり、気体としては空気が挙げられ、液体と気体の混合流体であってもよい。
本実施の形態で吐出する流体は、冷却するだけで土砂を吹き飛ばす必要がないため、ノズル部15からの吐出圧力が0.2MPa未満とすることが望ましい。
厚肉先端部7を鋼管1に溶接する場合の態様としては、図9に示すように、厚肉先端部7を閉じた円環状の管でなく、周方向の一か所が開いたC字形状の構造とし、開いた部分(図9の破線円で囲んだ部分)をスリット9として利用するようにしてもよい。
図10は先端にビット17を設けた鋼管19による地盤の掘削状況の説明図である。図10に示すように、ビット17を地盤に当接させ(図10(a)参照)、鋼管19を回転圧入すると、先端のビット17によって掘削された土砂が鋼管19の内側及び外側に移動する(図10(b)参照)。この状態で回転圧入を進めると、内面側及び外面側からの鋼管19の拘束圧が増加して、回転圧入が難しくなる(図10(c)参照)。そこで、鋼管19の内面及び外面の土砂をウォータージェットによって除去して回転圧入を継続するようにするが、その場合には、鋼管19の回転圧入完了時における鋼管周面の水平地盤ばねの低下により水平抵抗の確保が難しくなる(図10(d)参照)。
本実施の形態では、鋼管1を回転圧入すると厚肉先端部7によって掘削された土砂が鋼管1の内側及び外側に移動する(図11(b)参照)。このとき、厚肉先端部7の上方の通常の厚みの鋼管部分には、地盤との間に隙間が生じているので、鋼管1の内側及び外側に移動した土砂が鋼管1の内面及び外面に沿って移動しやすく、拘束圧の増加が抑制される(図11(c)参照)。そのため、先端にビット17を設けた場合のように、ウォータージェットを用いることなく回転圧入を継続することができ(図11(d)参照)、回転圧入の完了時には、図12に示すように、鋼管周面の水平地盤ばねが低下することなく、水平抵抗を確保できる。
実施の形態1~4は、鋼管1の先端に切欠き形状部3を有する鋼管1について説明したが、このような鋼管1の上端を把持して地盤に回転及び/又は揺動させて掘り進めながら地盤内に埋設することで、例えば鋼管杭のような鋼管構造体を構成することができる。
また、鋼管1を隣接させて複数地中に埋設してこれらを接続することで矢板壁のような鋼管構造体を構成することができる。
先端にビット17を備えた先行掘削用鋼管(以下、「ビット付き先行掘削鋼管25」(図15参照)と呼ぶ)により、鉄筋コンクリート、無筋コンクリート又は石材の内、1種以上で構築された、既存の構造物を打ち抜く工程と、
先行掘削用鋼管を引き上げる工程と、
実施の形態1~4の鋼管1の上端を把持して地盤中の所定の支持層まで回転及び/又は揺動により圧入する工程とを備える。
また、ビット付き先行掘削鋼管25の外径に対し、後行の鋼管外径を小さくするとともに、打設した後行の鋼管1の周囲にセメントミルク等を注入し地盤抵抗力を増大させてもよい。
羽形状は、羽外径が先端ビット付き先行掘削鋼管25の外径以下とすれば、後行の鋼管杭の施工がスムーズとなる。一方、十分な支持力増大効果を得るためには、羽外径が後行の鋼管杭の外径の10%以上大きいことが望ましい。
・施工事例1(図13参照)
<目的>
N値が50以上の領域(硬質地盤)が支持層以外にも存在する地盤に対し、支持力を期待する鋼管杭を打設する。
手順1:先端部に切欠き形状部3を有する鋼管1を鋼管杭圧入装置21によって回転または揺動させて地盤を掘り進めながら圧入する(図13(a)参照)。
手順2:直径の1倍以上の深さまで鋼管杭を支持層に根入れする(図13(b)参照)。
<目的>
直径50cm以上の石材が敷き詰められたマウンド上のコンクリート製のケーソンに隣接した鋼管杭列を築造する。
手順1:先端部に切欠き形状部3を有する鋼管1を回転させて石材を破砕しながら圧入する(図14(a)参照)。
手順2:鋼管1を地盤中の所定の深度まで回転圧入させて鋼管杭列を構築する(図14(b)参照)。
手順3:この鋼管杭列から反力を得ながら、上記鋼管杭列に連続して後行の鋼管杭を鋼管杭圧入装置21に取り付けて、鋼管杭を地盤中の所定の深度まで圧入して連続壁を構築する。
<目的>
鉄筋コンクリートで構築された既存の連続壁23を打ち抜いて支持層に根入れされた鋼管杭列の連続壁を構築する。
手順1:先端にビット17を備えたビット付き先行掘削鋼管25を回転圧入させ、既存の連続壁23を打ち抜く(図15(a)参照)。
手順2:一旦、回転圧入したビット付き先行掘削鋼管25を引き上げる(図15(b)参照)。
手順3:ビット付き先行掘削鋼管25を鋼管杭圧入装置21から取外し、先端部に切欠き形状部3を有する後行の鋼管1を鋼管杭圧入装置21に取り付けて、回転圧入を再開する(図15(c)参照)。
手順4:鋼管1を地盤中の所定の支持層まで回転圧入し、連続壁を構築する(図15(d)参照)。
3 切欠き形状部
5 傾斜面部
7 厚肉先端部
9 スリット
11 貫通孔
13 パイプ
15 ノズル部
17 ビット
19 鋼管
21 鋼管杭圧入装置
23 連続壁
25 ビット付き先行掘削鋼管
Claims (9)
- 回転及び/又は揺動させて地盤を掘り進めながら地盤内に埋設される鋼管であって、
先端に切欠き形状部を有し、該切欠き形状部は鋼管が回転する際に地盤を掘削して円形の掘削溝を形成する機能を有し、
前記切欠き形状部が形成された前記鋼管の先端部は、該先端部以外の部位よりも厚肉のC字形状の部材を溶接してなることを特徴とする鋼管。 - 回転及び/又は揺動させて地盤を掘り進めながら地盤内に埋設される鋼管であって、
先端に切欠き形状部を有し、該切欠き形状部は鋼管が回転する際に地盤を掘削して円形の掘削溝を形成する機能を有し、
前記切欠き形状部が形成された前記鋼管の先端部は、該先端部以外の部位よりも厚肉に形成され、厚肉部の外周面に先端から上端に至るスリット及び/又は厚肉部の内周面から外周面に至る斜め上方に向けて延びる貫通孔が形成されていることを特徴とする鋼管。 - 前記切欠き形状部が形成された前記鋼管の先端部は耐摩耗鋼によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管。
- 前記切欠き形状部は前記鋼管の先端面に周方向で所定のピッチで複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼管。
- 前記鋼管先端面における前記切欠き形状部以外の部分の全部又は一部に、先端に向かって薄肉となるような傾斜面部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の鋼管。
- 鋼管の内壁に沿って上端から下方に向かって配設されたパイプと、該パイプの先端であって、鋼管先端部付近に設けられたノズル部とを有し、該ノズル部から冷却用の液体及び/又は気体を吐出するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の鋼管。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の鋼管が地中に単数又は複数埋設され構築されたことを特徴とする鋼管構造体。
- 請求項7に記載の鋼管構造体の構築方法であって、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の鋼管の上端を把持して地盤中に回転貫入させることを特徴とする鋼管構造体の構築方法。 - 請求項7に記載の鋼管構造体の構築方法であって、
先端にビットを備えた先行掘削用鋼管により、鉄筋コンクリート、無筋コンクリート又は石材の内、1種以上で構築された、既存の構造物を打ち抜く工程と、
先行掘削用鋼管を引き上げる工程と、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の鋼管の上端を把持して地盤中の所定の支持層まで回転圧入する工程とを備えたことを特徴とする鋼管構造体の構築方法。
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