JP7215470B2 - 鋼管、鋼管構造体、鋼管構造体の構築方法 - Google Patents
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Description
しかし、既設構造物を打ち抜くと、打ち抜きによってくり抜かれた構造物が鋼管内に残存して閉塞を引き起こすため、その後の回転圧入において掘削土砂が鋼管内に取り込まれず、圧入に必要な押し込み力と回転トルクが増大する。
また、ウォータージェットによって施工中にスラリー化した土砂が鋼管の周りに生じるため、水中での施工においては濁りが生じるリスクがある。
また、該鋼管によって構築された鋼管構造体、該鋼管構造体の構築方法を得ることを目的としている。
鋼管本体部の先端に設けられると共に前記鋼管本体部の周方向に螺旋状に延出して地盤をほぐす地盤ほぐし部材を有し、
該地盤ほぐし部材は、鋼管本体部内側への張り出し幅が9.5mm以上600mm以下であり、かつ鋼管本体部外側への張り出し幅が鋼管本体部外径の0.05倍以下になるよう設けられていることを特徴とするものである。
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の鋼管の上端を把持して地盤中に回転貫入させることを特徴とするものである。
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の鋼管の地盤中への回転貫入中に、回転を維持したまま時折鋼管を引き抜く工程を挟み、貫入と引き抜きを繰返しながら徐々に地盤を掘り進めることを特徴とするものである。
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の鋼管の地盤中への回転貫入中に、時折逆回転させながら鋼管を引き抜く工程を挟み、貫入と引き抜きを繰返しながら徐々に地盤を掘り進めることを特徴とするものである。
先端にビットを備えた先行掘削用鋼管により、鉄筋コンクリート、無筋コンクリート又は石材の内、1種以上で構築された既存の構造物を打ち抜く工程と、
先行掘削用鋼管を引き上げる工程と、
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の鋼管の上端を把持して地盤中の所定の位置まで回転貫入する工程とを備えたことを特徴とするものである。
本発明の実施の形態1に係る鋼管1は、回転させて地盤を掘り進めながら地盤内に埋設されるものであって、図1に示すように、鋼管本体部3の先端に設けられると共に鋼管本体部3の周方向に螺旋状に延出して地盤をほぐす地盤ほぐし部材5を有している。
地盤ほぐし部材5は、鋼管本体部3内側への張り出し幅a(図2(b)参照)が9.5mm以上600mm以下であり、かつ鋼管本体部3外側への張り出し幅が鋼管本体部外径の0.05倍以下になるよう設けられている。
なお、図1に示す例は、鋼管本体部3外側への張り出し幅が0mmの例である。
張り出し幅aが、鋼管1を埋設する地盤の土粒子径よりも狭いと、地盤ほぐし部材5でほぐしていない地盤部分と鋼管本体部3内面との間に土粒子が引っ掛かり、鋼管1内閉塞の原因となる可能性がある。
逆に、張り出し幅aが広すぎると、地盤ほぐし部材5の内側部分で閉塞が生じる可能性が高まる。
地盤のD95粒径の最大を300mmと想定したのは、地盤材料の工学的分類方法(JGS 0051:2009)に記載の地盤材料の粒径区分にもとづき、D95粒径が巨石(300mmよりも大きい土粒子)に分類される地盤が存在する場合、鋼管1を埋設する前にアースオーガ等で石を破砕するなどの事前処理を行うことが多いためである。
(1)ボーリング柱状図の1mごとに粒度分布を測定してD95粒径を調べ、それらのD95粒径の最大値を採用する方法。
(2)ボーリング柱状図の地層ごとに粒度分布を測定してD95粒径を調べ、それらのD95粒径の最大値を採用する方法。
(3)ボーリングサンプルから粒径の大きな層を目視で判断し、粒度分布を測定してD95粒径を調べる方法。
地盤ほぐし部材5の外側への張り出し幅が鋼管本体部外径の0.05倍超になる、すなわち地盤ほぐし部材5の外径が鋼管本体部3の外径の1.1倍以上になると、回転圧入時および回転引抜き時の抵抗が大きくなるからである。
さらに、地盤ほぐし部材5が鋼管本体部3の周方向に螺旋状に延出していることにより、土が鋼管本体部3内で閉塞するのを防止できる。
図3(a)は、鋼管本体部3の先端に内側に張り出す張出し部材6があるが、この張出し部材6が螺旋状になっておらず、張出し部材6の先端位置が同じ場合(図中「先端が傾斜していない場合」と表記)であり、図3(b)は本実施の形態の鋼管1であり、螺旋状になった地盤ほぐし部材5を有するもの(「先端が傾斜した場合」と表記)を示している。
一方、鋼管1の内側の土は、鋼管内壁との摩擦によって鋼管1と共に下方に移動する。そのため、鋼管1の内側先端部では、掘削によって上方に移動する土と鋼管1と共に下方に移動する土が衝突することで土の締め固まりが発生し、当該部位で土による閉塞が生ずる。
土による閉塞が生ずると、押し込み抵抗が大きくなり、鋼管1の打設効率が低下する。
そのため、土の閉塞による弊害を抑制することができる。
この場合、先端にビット11を有する従来例の鋼管13の場合には、図4に示すように、鋼管13内部の先端部で土の締め固まりが生じ、引き抜きの際に締め固まった土が蓋のような状態になって鋼管13と共に引き上げられる現象が生じ、除荷することができなくなる。
なお、引抜き時には、鋼管1の回転を維持したままでもよいし、鋼管1の回転を一度止めて、逆回転させてもよい。
この場合、各地盤ほぐし部材5の下側先端は鉛直方向の高さが揃っているのが好ましい。これによって、掘削時に地盤ほぐし部材5の先端に作用する荷重が分散され、地盤ほぐし部材5に対する負荷が小さくなり、地盤ほぐし部材5の板厚等を薄くできるからである。
地盤ほぐし部材5が2本のときは、鋼管1の先端は二重螺旋形状に、地盤ほぐし部材5が3本のとき鋼管1の先端は三重螺旋形状に、地盤ほぐし部材5が4本のとき鋼管1の先端は四重螺旋形状になる。
なお、地盤ほぐし部材5が5本以上になると、1本あたりの螺旋の傾斜角度が小さくなって、回転圧入中に鋼管1内で土が締め固まるリスクが大きくなる。そのため、地盤ほぐし部材5は1~4本が望ましい。
もっとも、地盤ほぐし部材5の累計長さが、鋼管1全周のうち少なくとも10%以上であることが望ましい。これは、10%を下回ると、地盤ほぐし部材5による効果が極端に小さくなるおそれがあるためである。
土の取込み時の推進力(回転によって地盤ほぐし部材5の張り出し部上を土が移動することで、鋼管に下向きの力がかかる)による圧入補助を期待するのであれば、地盤ほぐし部材5の累計長さは、鋼管1全周のうち少なくとも50%以上であることが望ましい。これは、50%を下回ると、地盤ほぐし部材5の張り出し部上に乗った土が、推進力を発揮する前に地盤ほぐし部材5から落ちてしまうためである。
これは、地盤の掘削においては、傾斜角度γと削り角度βとすくい角度α(90°からβとγを引いた角度)(図9参照)のバランスが重要なためである。傾斜角度γが5°未満になると地盤ほぐし部材5の摩耗が生じやすくなり、削り角度βが60°未満になると地盤ほぐし部材5の先端が割れやすくなり、すくい角度αが10°より小さくなると局所的に破壊させてほぐした地盤が鋼管1内に入りづらくなる。これらの制約を満たす角度に設定することで、地盤の掘削効率を向上させることができる。
なお、使用する耐摩耗鋼の表面ブリネル硬さ(JIS Z 2243:2018試験による)が公称値で340(±30)以上のものを用いることが望ましい。
なお、図10に示したものは、地盤ほぐし部材5のみを耐摩耗鋼によって形成したものであったが、鋼管本体部3自体をその全長に亘って耐摩耗鋼によって形成してもよい。
また、地盤ほぐし部材5の全体を耐摩耗鋼で形成してもよいし、地盤ほぐし部材5の一部、例えば下端側の先端から所定の長さのように地盤との接触多い部分のみを耐摩耗鋼で形成するようにしてもよい。
本実施の形態に係る鋼管15は、図11に示すように、実施の形態1の構成に加えて、鋼管本体部3の内面に、螺旋形状の連続的な凸条17が設けられていることを特徴とするものである。
凸条17の形成方法は、鋼管本体部3内面を螺旋形状に連続的に切削する方法でもよいし、鋼管本体部3内面に螺旋形状の棒鋼を溶接する方法でもよいし、予め凸条17が形成された鋼板を管形状に加工するようにしてもよい。
凸条17の幅b(内面側への突出幅)は、管内閉塞防止の観点から、地盤ほぐし部材5の鋼管本体部3内側への張り出し幅aよりも小さいことが望ましい。
また、螺旋の傾斜角度δは1~45°程度が望ましい。これは、傾斜角度が大きすぎると、凸条17のピッチCが広くなることで、鋼管15内の掘削土砂を上方に運ぶ効果が低減される可能性があるためである。
また、鋼管1、15を隣接させて複数地中に埋設してこれらを接続することで矢板壁のような鋼管構造体を構成することができる。
・施工事例1(図12参照)
<目的>
N値が50以上の領域(硬質地盤)が支持層以外にも存在する地盤に対し、支持力を期待する鋼管杭を構築する。
手順1:先端部に地盤ほぐし部材5を有する鋼管1を鋼管杭圧入装置19によって回転させて地盤を掘り進めながら圧入する(図12(a)参照)。
手順2:直径の1倍以上の深さまで鋼管1を支持層に根入れする(図12(b)参照)。
<目的>
直径50cm以上の石材が敷き詰められたマウンド上のコンクリート製のケーソンに隣接した鋼管杭列からなる連続壁を築造する。
手順1:先端部に地盤ほぐし部材5を有する鋼管1を回転させて石材を破砕しながら圧入する(図13(a)参照)。
手順2:鋼管1を地盤中の所定の深度まで回転圧入させて鋼管杭を構築する(図13(b)参照)。
手順3:この鋼管杭から反力を得ながら、上記鋼管杭に連続して後行の鋼管1を鋼管杭圧入装置19に取り付けて、鋼管1を地盤中の所定の深度まで圧入して連続壁を構築する。
<目的>
先端にビット11を備えたビット付き先行掘削鋼管21と併用することで、鉄筋コンクリートで構築された既存の連続壁23を打ち抜いて支持層に根入れされた鋼管杭列の連続壁23を構築する。
手順1:ビット付き先行掘削鋼管21を回転圧入させ、既存の連続壁23を打ち抜く(図14(a)参照)。
手順2:一旦、回転圧入したビット付き先行掘削鋼管21を引き上げる(図14(b)参照)。
手順3:ビット付き先行掘削鋼管21を鋼管杭圧入装置19から取外し、先端部に地盤ほぐし部材5を有する後行の鋼管1を鋼管杭圧入装置19に取り付けて、回転圧入を再開する(図14(c)参照)。
手順4:鋼管1を地盤中の所定の支持層まで回転圧入し、連続壁23を構築する(図14(d)参照)。
なお、ビット付き先行掘削鋼管21による先行掘削の施工範囲は、コンクリートや石材で構築した部分の打ち抜きだけに留まらず、支持力地盤直前まで施工してもよい。
また、ビット付き先行掘削鋼管21の外径に対し、後行の鋼管外径を小さくするとともに、打設した後行の鋼管1の周囲にセメントミルク等を注入し地盤抵抗力を増大させてもよい。
3 鋼管本体部
5 地盤ほぐし部材
6 張出し部材
7 地盤ほぐし部
9 開口部
11 ビット
13 鋼管(従来例)
15 鋼管(実施の形態2)
17 凸条
19 鋼管杭圧入装置
21 ビット付き先行掘削鋼管
23 連続壁
Claims (8)
- 回転させて地盤を掘り進めながら地盤内に埋設される鋼管であって、
鋼管本体部の先端に設けられると共に前記鋼管本体部の周方向に螺旋状に延出して地盤をほぐす地盤ほぐし部材を有し、
該地盤ほぐし部材は、鋼管本体部内側への張り出し幅が9.5mm以上600mm以下であり、かつ鋼管本体部外側への張り出し幅が鋼管本体部外径の0.05倍以下になるよう設けられていることを特徴とする鋼管。 - 前記地盤ほぐし部材は、水平に対して5°以上20°以下の角度で上方に傾斜し、下端面が、60°以上75°以下に傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管。
- 前記鋼管本体部の内面に、螺旋形状の連続的な凸条が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載に鋼管。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の鋼管が地中に単数又は複数埋設されて構築されたことを特徴とする鋼管構造体。
- 請求項4に記載の鋼管構造体の構築方法であって、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼管の上端を把持して地盤中に回転貫入させることを特徴とする鋼管構造体の構築方法。 - 請求項4に記載の鋼管構造体の構築方法であって、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼管の地盤中への回転貫入中に、回転を維持したまま時折鋼管を引き抜く工程を挟み、貫入と引き抜きを繰返しながら徐々に地盤を掘り進めることを特徴とする鋼管構造体の構築方法。 - 請求項4に記載の鋼管構造体の構築方法であって、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼管の地盤中への回転貫入中に、時折逆回転させながら鋼管を引き抜く工程を挟み、貫入と引き抜きを繰返しながら徐々に地盤を掘り進めることを特徴とする鋼管構造体の構築方法。 - 請求項4に記載の鋼管構造体の構築方法であって、
先端にビットを備えた先行掘削用鋼管により、鉄筋コンクリート、無筋コンクリート又は石材の内、1種以上で構築された、既存の構造物を打ち抜く工程と、
先行掘削用鋼管を引き上げる工程と、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼管の上端を把持して地盤中の所定の位置まで回転貫入する工程とを備えたことを特徴とする鋼管構造体の構築方法。
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