JP4669494B2 - 鋼管杭の施工方法 - Google Patents
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Description
また、地盤にセメントミルクなどの硬化剤を注入して鋼管を埋設する方法や、打撃力を用いて鋼管を埋設する方法なども知られている。
また、地盤にセメントミルクなどの硬化剤を注入して鋼管を埋設する方法では、セメントミルク等に用いるプラントなどの設備が必要であることに加え、セメントミルク等の材料費が余計に掛かってしまうという問題がある。また、打撃力を用いて鋼管を埋設する方法では、騒音・振動などが発生することから、鋼管を埋設できる場所が限られてしまう等の問題がある。
このような鋼管杭の施工方法によれば、鋼管杭が開放した先端部を有する鋼管本体で形成され、鋼管杭の先端縁には下方に突出する掘削用ビットが固定されているだけなので、このような鋼管杭の鋼管本体の先端部が支持層に到達するまで、鋼管杭を地盤に貫入する際には、施工負荷を従来よりも低減させることができる。すなわち、従来の羽根を有する鋼管杭を貫入する場合のように、貫入速度が羽根のピッチにより制限されることがなく、地盤を掘削する部分が開放した鋼管本体の環状部分に取り付けられた掘削用ビットだけなので、従来に比べて鋼管杭の断面積が小さくなり、支持層に到達するまでの貫入速度を上げることができる。なお、掘削用ビットを鋼管本体の外周よりも外側に突出して固定する場合には、掘削用ビットの突出寸法が9mm〜12mmの範囲内であることが好ましい。
また、鋼管本体の先端部を支持層に回転圧入する際に、鋼管本体の先端部の掘削用ビットによって支持層を削孔するので、支持層に鋼管杭を円滑に貫入することができる。つまり、従来の羽根を有する鋼管杭を支持層に回転圧入する場合には、羽根の面積分の支持層をせん断しながら掘削する必要があるが、本発明では、前述のように地盤を掘削する部分が開放した鋼管本体の環状部分だけであるとともに、掘削用ビットを有しているので、施工負荷が大きくならず、鋼管杭の回転圧入負荷を低減することができる。
また、従来のセメントミルクなどの硬化剤を注入する方法のように、セメントミルク用プラント等の設備が不要で、セメントミルク等の材料費も掛からないので、施工コストを下げることができる。また、従来の打撃力を用いて鋼管杭を支持層に埋設する方法のような騒音・振動などの発生を抑えることができるので、低騒音・低振動での施工が可能となる。
ここで、地盤の支持層とは、構造物を十分に支持できて、構造物の沈下の恐れのない地層であるが、構造物の設計者や行政機関が支持層を設定する際には、諸々の条件によって設定する支持層の深さ位置が変動する場合がある。本発明において、支持層への鋼管杭の貫入寸法を鋼管本体の杭径寸法の3倍程度以上としたのは、前述のような支持層の設定のバラツキを考慮したためで、3倍の前後1割程度(つまり2.7倍〜3.3倍)の誤差は、本発明の範囲に含まれる。
ここで、鋼管本体内の少なくとも一部の土(管内土)の排土手段としては、例えば、鉄製の容器であるバケットを鋼管本体内にクレーンで降ろして、管内土をバケットに入れてクレーンで吊り上げることによって管内土を排出する方法(バケット法)でもよい。または、鋼管内に吸気管を挿入して、吸気管を通して管内土を吸い上げることによって排出する方法(エアーリフト法)でもよく、鋼管内にスクリューロッドを挿入して、スクリューの回転によって管内土を排出する方法(スクリューロッド法)でもよい。
このような構成によれば、鋼管杭が支持層に到達するまでは、排土手段を用いて鋼管本体内の少なくとも一部の管内土を排出するので、管内土が堆積することによる先端部の閉塞度を低減することができる。従って、支持層に到達するまで鋼管杭を貫入する際の施工負荷を低減でき、貫入速度を一層高めることができ、円滑に施工を実施できる。
このような構成によれば、支持層を一軸圧縮強度が5N/mm2以上の硬質地盤とすることによって、支持層に鋼管本体の先端部を回転圧入した際に、管内が硬質な土によって閉塞されるので、先端部の閉塞度をより大きくすることができ、より大きな支持力を確保することができる。
図1〜図5は、本発明の実施形態に係る鋼管杭1の施工方法を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態における鋼管杭1の施工方法は、全周旋回機2を使用して鋼管杭1を回転圧入させることによって、鋼管杭1を地盤に貫入するという方法である。
鋼管杭1は、両端が開口された鋼管本体1Aと、この鋼管本体1Aの下方の先端縁に固定された掘削用ビット1Bとを有する。掘削用ビット1Bは、鋼管本体1Aの外周に治具を介してロウ付けやボルト、あるいは鋼管本体1Aに直接溶接で取り付けられている。
掘削用ビット1Bは、鋼管本体1Aの先端縁よりも下方に突出するように形成され、また、鋼管本体1Aの外周面から外側への突出量が9mm〜12mmとなるように形成されている。なお、掘削用ビット1Bは、鋼管本体1Aの周面から内外の両方向へ突出して形成されていてもよい。これによって、地盤Gを乱す面積が大きくなり、鋼管本体1Aを貫入するのに必要な圧入力を小さくすることができる。ただし、内外への突出寸法は、周面摩擦に与える影響を少なくするために、9mm〜12mm以内とすることが望ましい。
ここで、鋼管杭1を施工する地盤Gとしては、図1に示すように、地表側から砂質や粘土質を多く含んだ比較的軟弱な軟弱層G1と、軟弱層G1の下側に位置して礫や岩盤等で構成され硬質な支持層G2とから構成されているものとする。支持層G2としては、一般的に支持層として用いることが可能なN値30以上の地盤であればよい。なお、地盤Gの一軸圧縮強度が5N/mm2以上の軟岩等で構成された硬質な地層を支持層G2とすれば、後述する鋼管杭1の先端部の閉塞度が上がり、より高い支持力を確保する点で好ましい。
施工手順としては先ず、図2に示すように、クレーンMを用いて鋼管杭1の先端部を全周旋回機2に取り付ける。全周旋回機2には、鋼管杭1を地盤に回転圧入した場合の鋼管杭1の反発力に対抗するために、複数の錘21が積載されている。ここで、本実施形態では、全周旋回機2を使用した施工方法を説明するが、支持層G2に到達するまでの中間地盤の硬度や、支持層G2の硬度・深さに応じて、全周旋回機2に限らず、3点式杭打ち機等を使用してもよい。そして、図1に示すように、全周旋回機2を使用して、鋼管杭1を回転圧入し、鋼管杭1先端の掘削用ビット1Bにより支持層G2までの軟弱層G1を掘削する。
図5には、鋼管杭1が支持層G2に杭径寸法Dの3倍以上貫入した状態が示されている。このように鋼管本体1Aの先端部が支持層G2に貫入され、かつ、掘削用ビット1Bによって削孔された支持層の硬質な土で閉塞されているので、鋼管杭1が確実に支持力を発揮することができる。
(1)すなわち、先端が開口した鋼管杭1を用いて、杭径寸法Dの3倍以上の深さまで、鋼管本体1Aの先端部を支持層G2に回転圧入するので、削孔した支持層G2の土によって先端部の閉塞度が上昇し、閉塞された先端部分の見かけの断面積が大きくなることから、高い支持力を得ることができる。また、鋼管杭1に対して打撃等を行わず、支持層G2に回転圧入させるだけなので、低騒音・低振動とすることができる。
例えば、前記実施形態においては、排土手段としては、バケット3を使用する方法を説明をしたが、本発明では、例えば、スクリュー付きのロッドを使用する方法であってもよく、または、エアリフト装置を使用する方法であってもよい。エアリフト装置を使用する方法では、ロッドの内部を通して鋼管本体1A内部の管内土を吸い上げるエアリフト装置を使用してもよい。このエアリフト装置は、鋼管杭1の地上側の端部に設けられたエアポンプと、このエアポンプに連結された中空筒状のロッドと、ロッドで吸い上げた管内土を外部に排出する排出部とを有して構成されていてもよい。ここで、エアリフト装置の代わりに、鋼管杭1の内部に供給した水とともにロッドの内部を通して管内土を吸い上げる泥水リフト装置であってもよい。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
以下の実施例は、地盤強度が一軸圧縮強度で5N/mm2から20N/mm2以下の範囲で実施した。
先ず、本発明の施工方法による施工負荷の試験結果について説明する。
図6は、鋼管杭1を、支持層G2のような堅固な地盤に回転させながら圧入する試験を行った際の、地盤への貫入寸法の杭径寸法(鋼管本体1Aの外径寸法)に対する倍率と、施工負荷を示す施工トルクおよび圧入力を示している。この試験によれば、鋼管杭1の貫入寸法が杭径寸法の3倍程度で急上昇することが解る。
図7は、模型試験方法を説明する模式図である。図8は、前記模型試験方法における模型鋼管杭5の支持層G2への貫入寸法の杭径寸法に対する倍率と、押抜き抵抗との関係を示すグラフである。
本発明の鋼管杭の管内に取り込まれた土(管内土)による鋼管杭の先端部の閉塞度を調べるために、図7に示すような模型鋼管杭5を用いて、貫入寸法毎に管内土6を押し抜く試験を行った。
本試験結果によると、模型鋼管杭5の貫入寸法と管内土6の高さ寸法(鋼管の長手方向に沿った寸法)は、略等しくなった。このことから、本実施形態の鋼管杭1の貫入寸法と管内土の高さ寸法とが略等しくなることが推定でき、管内土6の高さ寸法が地盤条件によって多少変化することを考慮しても、管内土6の高さ寸法は、鋼管杭1の貫入寸法の90%〜110%程度の範囲内とみなすことができる。
以上の試験結果から、本発明の鋼管杭の施工方法によれば、鋼管杭の支持層G2への貫入寸法を杭径寸法の3倍程度以上としているので、管内土による鋼管杭の閉塞度が上昇し、必要な鋼管杭の支持力を確保することができることが判明した。
Claims (2)
- 先端部が開放した鋼管本体と、この鋼管本体の先端縁よりも下方に突出して固定された掘削用ビットとを有する鋼管杭を地盤に貫入する鋼管杭の施工方法であって、
前記鋼管本体の先端部が前記支持層に到達するまでは、排土手段を用いて前記鋼管本体内の少なくとも一部の土を排出し、かつ当該支持層よりも上方の土を所定高さだけ前記鋼管本体内部に残置し、
前記鋼管本体の外径寸法の3倍程度以上の深さまで、当該鋼管本体の先端部を支持層に回転圧入する際に、削孔した支持層の土を排出せずに、当該支持層の土を前記鋼管本体内部に残置して当該鋼管本体の先端部を閉塞することを特徴とする鋼管杭の施工方法。 - 請求項1に記載の鋼管杭の施工方法において、
前記支持層は、一軸圧縮強度が5N/mm2以上の硬質地盤であることを特徴とする鋼管杭の施工方法。
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