JP3754419B2 - 鋼管杭 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼管杭に係り、特に初期沈下量を抑制させた鋼管杭に関する。
【0002】
【従来の技術】
杭基礎工事の最も基本的な施工方法は、ドロップハンマを用いて杭を直接叩いて打ち込むものであるが、この打撃工法は騒音公害として大きな社会問題となっているため、騒音を抑えた各種の杭工法が開発されている。その代表的なものとして、鋼管杭を地中に捩じ込んで埋設する捩り込み鋼管杭工法が提案されている。
【0003】
この工法は、例えば木造2階建て或いは3階建て住宅等の比較的軽量(必要とされる地耐力5tf/m2以下)な建物を、将来地盤沈下を起すような軟弱な地盤を含んでいるような宅地地盤上に建築する場合の地盤補強工法として採用される。特に、地表面より比較的浅部(-5.0m〜15m付近)に強固な地盤(支持層)があり、その上部全体が軟弱地盤あるいは腐食土を含んでいるような場合に、前記工法が採用される場合が多い。
【0004】
この工法に用いられる鋼管杭は、一般的に、市販の鋼管の先端部の外周に螺旋状の掘削羽根(螺旋翼ともいう)を設けて構成されている(例えば特開平7−292666号公報参照)。この鋼管杭は、所定の荷重を掛けつつオーガーモータで回転駆動されることにより、支持層に到達するまで地中に捩じ込んで埋設(打設)される。この鋼管杭においては、支持層からの支持圧力(反力)を主に掘削羽根の下面で受け止めることにより建物の荷重が支え、その沈下を防止するようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−292666号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記鋼管杭においては、掘削羽根による掘削で支持層が荒らされると共に、掘削羽根が螺旋状に傾斜してるため、荒らされた支持層部分の沈みや掘削羽根の螺旋状の傾斜による滑りにより初期沈下量が大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記事情を考慮してなされたもので、初期沈下量を小さくすることができる鋼管杭を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち、請求項1の発明は、鋼管の先端近くの外周に支持圧を受けるための環状の鍔部を設け、該鍔部の上面及び下面に一端が鋼管の外周面に接し他端が鍔部の周縁部まで延びた板状の切削刃を周方向に適宜間隔で複数設け、前記上面の切削刃の向きが前記下面の切削刃の向きとは反対とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の鋼管杭において、前記切削刃の他端が前記鍔部の周縁部よりも外側に若干突出していることを特徴とする。
【0011】
請求項の発明は、請求項1記載の鋼管杭において、前記鋼管の先端部が端板で閉塞され、該端板の下面に三角刃が突設されていることを特徴とする。
【0012】
請求項の発明は、請求項1記載の鋼管杭において、前記鋼管の先端部には該鋼管よりも肉厚の厚い先端管部が設けられ、該先端管部の先端部に土砂を先端管部の内部に導入して圧密閉塞するためのテーパー部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を添付図面に基いて詳述する。図1は本発明の実施の形態に係る鋼管杭を示す図で、(a)は側面図、(b)は(a)の右側から見た側面図、(c)は(a)の下方から見た図、図2は鋼管杭の先端部を示す図で、(a)は断面図、(b)は(a)の下方から見た図、図3は(a)は支持層到達部で鋼管杭を逆回転させた時の下の切削刃の作用を示す上方から見た図、(b)は上の切削刃の作用を示す上方から見た図である。
【0014】
図1において、1は鋼管杭で、2はこの鋼管杭1を構成する鋼管である。この鋼管2の先端近くの外周には、支持圧を受けるための環状好ましくは円環状の鍔部3が設けられている。鍔部3の外径は、図示例では例えば鋼管2の外径の略2倍程度とされている。そして、前記鍔部3の少なくとも下面3aには、一端が鋼管2の外周面に接し他端が鍔部3の周縁部まで延びた板状の切削刃4が周方向に適宜間隔で複数例えば2〜4枚程度、図示例では2枚設けられている。具体的には、切削刃4の一端(基端)の一側面(先端から見て左側面)が鋼管2の外周面に接しており、切削刃4の他端(先端)4aが鋼管2の接線方向へ延びている。
【0015】
実施例の場合、鍔部3の上面3bにも、一端が鋼管2の外周面に接し他端が鍔部3の周縁部まで延びた板状の切削刃5が周方向に適宜間隔で複数例えば2〜4枚程度、図示例では2枚設けられている。切削刃4,5は、鋼管2と同じ材質例えば鋼板により形成されている。切削刃4,5は、略直角三角形に形成され、すなわち鋼管2に接する側の一端から鍔部3の周縁部側の他端にかけて漸次高さが減少するようにテーパー6が形成されている。これにより、回転掘削時の貫入抵抗ないしトルクの軽減が図られている。
【0016】
前記切削刃4,5は、鍔部3の下面3aまたは上面3bに垂直に起立した状態で、前記鋼管2を挟んで対称的に配置されている。また、鍔部3が鋼管杭1の掘進の抵抗となるのを抑制すべく、鍔部3よりも若干大きい径で地盤を掘削するために、鍔部3の下面3aの切削刃4の他端4aは、鍔部3の周縁部よりも外側に若干突出している。鍔部3は鋼管2に溶接で取付けられ、切削刃4,5は鍔部3及び鋼管2に溶接で固定されている。
【0017】
更に、鍔部3の上面3bの切削刃5の向きが下面3aの切削刃4の向きとは反対とされている。すなわち、下面の切削刃4はその一端(基端)の一側面(先端から見て左側面)が鋼管2の外周面に接っしているのに対し、上面の切削刃5はその一端(基端)の他側面(先端から見て右側面)が鋼管2の外周面に接っしており、上下の切削刃4,5の向きが逆になっている。鋼管杭1を地中に捩じ込んで打設する場合は、鋼管杭1を図1の矢印方向(時計方向)、図3(a)の場合、矢印とは反対方向(反時計方向)に回転(正回転)させる。これにより下面3aの切削刃4で掘削された土砂は径方向外方へ押し遣られる。鋼管杭1が支持層に到達したら、図3(a),(b)に示すように鋼管杭1を矢印方向へ逆回転させることにより下面の切削刃4で鍔部3の内方へ土砂を押し固めると共に上面の切削刃5で掘削土砂を掘削孔の孔壁に押しつけて崩れないように圧密する。また、鋼管杭1を引き抜く場合には、図3(b)に示すように鋼管杭1を矢印方向へ逆回転させつつ引き上げることにより上面3bの切削刃5で土砂を径方向外方へ押し遣りつつ鋼管杭1を容易に引き抜くことができる。
【0018】
前記鋼管2の先端部は、支持圧を受けるために図2にも示すように円形の端板7で閉塞されている。また、鋼管杭1の回転掘進時の芯ずれを防止するために端板7の下面にはその頂点を鋼管2の軸心線上に一致させた2等辺三角形状の三角刃8が突設されている。前記端板7は、鋼管2の内径または外径と同じ直径の円板状に形成されており、鋼管2の下端部に溶接で取付けられている。前記三角刃8は、端板7の下面に垂直に起立した状態で溶接固定されている。なお、鋼管杭1としては、前記端板7に鋼管2内を通して圧送される固化剤例えばセメントミルクを地中に吐出するための吐出孔9を設けると共にこの吐出孔9を外側から開閉可能に覆う逆止弁10を設け、軟弱な地盤の土質を改良強化し得るようにしても良い。
【0019】
次に、以上の構成からなる鋼管杭の作用を述べる。鋼管杭1は、図示しない作業機に昇降可能に装備された回転駆動装置(オーガーモータ)に上端部が保持され、地盤に向けて垂直の起立状態とされ、回転駆動装置等の重量物による所定の荷重が加えられつつ回転駆動装置によって図1(c)の矢印方向に回転駆動される。この鋼管杭1の回転による三角刃8及び鍔部3の下面3aの切削刃4の回転によって地盤が切削ないし掘削され、掘削された土砂は切削刃4によって径方向外方へ押し遣られつつ圧密されて孔壁に押し付けられる。
【0020】
こうして鋼管杭1を地中に捩じ込んで行き、鋼管杭1の上端部に鋼管2を順次溶接により継ぎ足しつつ鋼管杭1の先端部が支持層に到達するまで掘削作業を続ける。鋼管杭1の先端部が支持層に到達したなら、鋼管杭1を逆方向に適宜回転させて、図3(a)に示すように鍔部3の下面3aの切削刃4で鍔部3の下方の土砂を内側へ寄せ集めて圧密すると共に、図3(b)に示すように鍔部3の上面3bの切削刃5で鍔部3の上方の土砂を外側へ押し遣って圧密すればよい。このようにして、鋼管杭1の打設(埋設)が終了する。
【0021】
前記鋼管杭1によれば、鋼管2の先端近くの外周に支持圧を受けるための環状の鍔部3を設け、該鍔部3の少なくとも下面3aに一端が鋼管2の外周面に接し他端が鍔部3の周縁部まで延びた板状の切削刃4を周方向に適宜間隔で複数設けてなるため、支持層からの支持圧を平面的に鍔部3の下面全体で受けることができ、螺旋状に配置した掘削羽根でを支持圧を受ける従来の鋼管杭に比して、初期沈下量を小さくすることができる。この場合、前記切削刃4の他端4aが前記鍔部3の周縁部よりも外側に若干突出しているため、鍔部3が引っ掛ること無く円滑に地盤を掘進することができる。
【0022】
また、前記鍔部3の上面3bにも一端が鋼管2の外周面に接し他端が鍔部3の周縁部まで延びた板状の切削刃5が周方向に適宜間隔で複数設けられており、前記上面3bの切削刃5の向きが前記下面3aの切削刃4の向きとは反対とされているため、鋼管杭1を正回転させて掘削し、支持層に到達したら鋼管杭1を逆回転させることにより下面3aの切削刃4により鍔部3の内方へ土砂を押し固めることができると共に上面3bの切削刃5により掘削土砂を掘削孔の孔壁に押しつけて崩れないように圧密することができ、また、鋼管杭1を引き抜く場合には、鋼管杭1を逆回転させつつ引き上げることにより上面3bの切削刃5により土砂を孔壁側へ押し遣りつつ鋼管杭1を容易に引き抜くことができる。更に、前記鋼管2の先端部が端板7で閉塞され、該端板7の下面に三角刃8が突設されているため、前記端板7の下面で支持層からの支持圧を受けることができると共に、三角刃8によって芯ずれを無くして地中を真っ直ぐ掘進することができる。
【0023】
図4は鋼管杭の先端部の他の例を示す断面図である。本実施例において、前記実施例と同一部分は同一参照符号を付して説明を省略する。この鋼管杭1は、鋼管2の先端部に該鋼管2よりも肉厚の厚い先端管部11を設けている。この先端管部11の先端部には、土砂を先端管部11の内部に導入して圧密閉塞するためのテーパー部12が設けられている。先端管部11の外径は、鋼管2の外径と略同一とされている。
【0024】
前記先端管部11の先端近くの外周には支持圧を受けるための環状の鍔部3が設けられ、この鍔部3の少なくとも下面3a、図示例では上下両面3a,3bには、一端が鋼管3の外周面に接し他端が鍔部3の周縁部まで延びた板状の切削刃4,5が周方向に適宜間隔で複数設けられている。また、先端管部11の先端部には、半角刃が溶接で取付けられている。このように構成された鋼管杭によっても前記実施例と同様の効果が得られる。また、特に、この鋼管杭1によれば、鋼管2の先端部には該鋼管よりも肉厚の厚い先端管部11が設けられ、この先端管部11の先端部に土砂を先端管部の内部に導入して圧密閉塞するためのテーパー部が設けられているため、容易に鋼管の先端部を土砂で圧密閉塞することができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0027】
(1)請求項1の発明によれば、鋼管の先端近くの外周に支持圧を受けるための環状の鍔部を設け、該鍔部の上面及び下面に一端が鋼管の外周面に接し他端が鍔部の周縁部まで延びた板状の切削刃を周方向に適宜間隔で複数設け、前記上面の切削刃の向きが前記下面の切削刃の向きとは反対とされているため、支持圧を平面的に鍔部の下面全体で受けることができ初期沈下量を小さくすることができ、鋼管杭を正回転させて掘削し、支持層に到達したら鋼管杭を逆回転させることにより下面の切削刃により鍔部の内方へ土砂を押し固めることができると共に上面の切削刃により掘削土砂を掘削孔の孔壁に押しつけて崩れないように圧密することができ、また、鋼管杭を引き抜く場合には、鋼管杭を逆回転させつつ引き上げることにより鋼管杭を容易に引き抜くことができる
【0028】
(2)請求項2の発明によれば、前記切削刃の他端が前記鍔部の周縁部よりも外側に若干突出しているため、鍔部が引っ掛ること無く円滑に地盤を掘進することができる。
【0030】
)請求項の発明によれば、前記鋼管の先端部が端板で閉塞され、該端板の下面に三角刃が突設されているため、前記端板の下面で支持圧を受けることができると共に、三角刃によって芯ずれを無くして地中を真っ直ぐ掘進することができる。
【0031】
)請求項の発明によれば、前記鋼管の先端部には該鋼管よりも肉厚の厚い先端管部が設けられ、該先端管部の先端部に土砂を先端管部の内部に導入して圧密閉塞するためのテーパー部が設けられているため、容易に鋼管の先端部を土砂で圧密閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋼管杭を示す図で、(a)は側面図、(b)は(a)の右側から見た側面図、(c)は(a)の下方から見た図である。
【図2】鋼管杭の先端部を示す図で、(a)は断面図、(b)は(a)の下方から見た図である。
【図3】(a)は支持層到達部で鋼管杭を逆回転させた時の下の切削刃の作用を示す上方から見た図、(b)は上の切削刃の作用を示す上方から見た図である。
【図4】鋼管杭の先端部の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鋼管杭
2 鋼管
3 鍔部
4 切削刃
5 切削刃
7 端板
8 三角刃
11 先端管部
12 テーパー部

Claims (4)

  1. 鋼管の先端近くの外周に支持圧を受けるための環状の鍔部を設け、該鍔部の上面及び下面に一端が鋼管の外周面に接し他端が鍔部の周縁部まで延びた板状の切削刃を周方向に適宜間隔で複数設け、前記上面の切削刃の向きが前記下面の切削刃の向きとは反対とされていることを特徴とする鋼管杭。
  2. 前記切削刃の他端が前記鍔部の周縁部よりも外側に若干突出していることを特徴とする請求項1記載の鋼管杭。
  3. 前記鋼管の先端部が端板で閉塞され、該端板の下面に三角刃が突設されていることを特徴とする請求項1記載の鋼管杭。
  4. 前記鋼管の先端部には該鋼管よりも肉厚の厚い先端管部が設けられ、該先端管部の先端部に土砂を先端管部の内部に導入して圧密閉塞するためのテーパー部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の鋼管杭。
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