JP3216048B2 - ねじ込み式鋼管杭 - Google Patents

ねじ込み式鋼管杭

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JP3216048B2 JP24219398A JP24219398A JP3216048B2 JP 3216048 B2 JP3216048 B2 JP 3216048B2 JP 24219398 A JP24219398 A JP 24219398A JP 24219398 A JP24219398 A JP 24219398A JP 3216048 B2 JP3216048 B2 JP 3216048B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ねじ込み式鋼管杭
に係り、さらに詳しくは、少なくとも鋼管の先端部又は
その近傍に翼を取付けた鋼管杭に回転力を与えることに
より、鋼管杭を地中に埋設するようにしたねじ込み式鋼
管杭に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼管の先端部や側面に翼状板を取付けた
鋼管杭に、地上に設置した機械により回転力を与え、ね
じ作用により鋼管杭を地中に埋設する方法は、従来から
多数提案されており、その一部は小径の杭を対象とした
ものではあるが実用化されている。ここでは、代表的と
思われる発明について、以下に説明する。
【0003】特公平2−62648号公報に記載された
鋼管杭の埋設方法は、鋼管杭本体の下端部に底板を固設
し、この底板に掘削刃を設けると共に、杭本体の下端部
外周面に杭本体の外径のほぼ2倍強の外径を有する翼幅
の大きな杭ねじ込み用の螺旋翼を、ほぼ一巻きにわたり
突設した鋼管杭を、軟弱地盤にねじ込むように回転させ
ながら地中に押圧し、下端部の掘削刃によって杭本体先
端の土砂を掘削軟化させて、杭側面の未掘削土砂中に螺
旋翼を食い込ませて、土の耐力を反力として杭体を回転
推進しつつ、掘削軟化した土砂を杭側面に押出して圧縮
し、無排土で地中に杭体をねじ込んでゆくようにしたも
のである(従来技術1)。
【0004】また、特開平9−324419号公報に記
載されたねじ込み式鋼管杭は、先端部を円周方向に複数
に分割し、この分割された個々の部分に同方向に向って
それぞれレ字状の取付部が形成された鋼管と、外径が上
記鋼管の外径より大きい円形鋼板又は楕円形鋼板を複数
に分割した平板状でほぼ半円状又は扇形状の鋼製板
(翼)とを有し、この鋼製板を鋼管の先端開口部を覆う
ようにして鋼管の先端部に設けたレ字状の取付部にそれ
ぞれ取付けたもので、他の従来技術と大きく異なる点
は、翼を平板状に形成したこと、及び翼を鋼管の外周面
ではなく先端部に取付けたことにある(従来技術2)。
【0005】次に、杭頭部近傍の杭径を拡径した杭(以
下、頭部拡大杭という)に関する従来技術について説明
する。特開昭52−7109号公報に記載された頭部拡
大基礎杭打ち工法は、下杭とその下杭より径の大きい頭
部拡大杭を接合して構成される鋼管杭において、下杭と
頭部拡大杭との継手部に設けた叩打面を打撃して杭を貫
入するようにしたものであり、従来の打撃工法のように
杭の上端を打撃しないで管内の継手部を打撃することに
より、頭部拡大杭に作用する応力を低減し、その肉厚を
低減することを目的している(従来技術3)。
【0006】また、特公昭58−27366号公報に記
載された頭部補強杭造成装置は、頭部拡大方式の場所打
ちコンクリート杭や既成杭の造成方法において、上部の
径が下部より大きいケーシングの中に、上部の径が下部
よりも大きい攪拌掘削用オーガーを挿入して互いに反対
方向に回転させることにより、頭部拡大杭埋込み用のソ
イルセメント柱状体の中に挿入することにより構築され
る。また、上部と下部のケーシングの接合部には、頭部
拡大による貫入抵抗を低減するために、掘削刃を設けて
ケーシング内に土砂を取り込むようにしている(従来技
術4)。
【0007】ねじ込み式鋼管杭は、前述のように、鋼管
杭に回動力を与えることにより、先端部又はその近傍に
取付けた翼のねじ作用で鋼管杭を地盤に埋設するように
したものであり、低振動、無排土で施工できると共に、
広い翼の面積を利用して大きな先端支持力を得ることが
できるという特徴を持つ。現在実用化されているねじ込
み式鋼管杭は、上記の従来技術1,2のみであるが、前
者は鋼管の外径が300mm未満のものに、また後者は
300〜600mmの範囲で適用されており、両者とも
通常の鋼管杭の1.5〜2.0倍程度の大きな先端支持
力が確保される鋼管杭として設計されている。
【0008】現在国内で使用されている鋼管杭の約半数
は700mm以上の大径鋼管杭が占めていることを考慮
すると、ねじ込み式鋼管杭の適用範囲が狭いことがわか
る。ねじ込み式鋼管杭が大径鋼管杭に適用されていない
のは、鋼管杭を回転する駆動トルクが非常に大きくなる
ためである。
【0009】発明者らの試験によると、鋼管杭の支持層
への貫入中に発生する回転抵抗の75〜85%は翼付近
で発生しており、その抵抗は翼の面積にほぼ比例するこ
とがわかった。すなわち、翼の外径のほぼ2乗に比例す
る。そのため、鋼管杭の外径が大きくなると(したがっ
て翼の径も大きくなる)、現在、一般的に使用できる施
工機械では能力が不足すると共に、鋼管杭の許容ねじり
モーメントを超える場合が多くなる。このため、鋼管杭
の先端部に大きな穴をあけてトルクを大幅に低減しない
限り、700mm以上の大径鋼管杭にはねじ込み式鋼管
杭を適用することができないが、先端部に大きな穴をあ
けると先端支持力が低下してしまう。
【0010】前述のように、ねじ込み式鋼管杭は翼によ
る投影面積の増大により先端支持力が増加する。このた
め、上部工の基礎杭として供用する場合、翼のない通常
の鋼管杭に比べてその設置数を減らすか、又は鋼管の外
径を縮小することができる。しかしながら、水平力に対
する抗力は、鋼管杭の数を減らした分不足することにな
り、水平力を保証しようとすると設置数を減少すること
ができないので、上記の効果が期待できないことにな
る。
【0011】一方、鋼管の外径を縮小すると、水平力に
ついてはその分耐力が減少するので、これに対応するた
め鋼管杭の肉厚を増加しても、鋼材の重量が増加したわ
りには曲げ耐力増加の効果は小さい。このため、上部工
から大きい水平力や曲げモーメントを受けるような場合
は、鋼管杭の肉厚を増大に増加せざるを得ず、鋼管の外
径を縮小した効果が減じられる。
【0012】小径の鋼管杭はその断面積のわりには剛性
と断面係数が小さい。例えば、外径600mm、肉厚9
mmの鋼管杭の断面積は、外径800mm、肉厚9mm
の鋼管杭の断面積の74%であるのに対し、断面二次モ
ーメントは42%、断面係数は56%にすぎない。この
ため、地震時に上部工から大きな水平力や曲げモーメン
トを受けた場合、小径の鋼管杭では杭頭部付近の水平変
位や曲げ応力度が大きくなりすぎるため、この面からも
鋼管杭の外径を縮小することには問題があった。
【0013】ところで、上部工からの大きな水平力や曲
げモーメントに対して経済的に対応するために、杭頭部
近傍の杭径を拡径するという考え(頭部拡大杭)は数十
年前から提案されており、既に場所打ちコンクリート杭
では広く実用化されている。しかし、既成杭の分野では
杭頭拡大杭は実用化されていない。特に、鋼管杭の分野
では、過去に数度試験的に採用されたことはあるが、最
近は皆無である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】このように頭部拡大杭
が実用化されていない理由は、主としてその施工方法に
問題がある。鋼管杭の施工方法として一般に用いられて
いる方法を大別すると、打ち込み工法、中掘工法、プレ
ーボーリング工法の3種類である。これらの工法に頭部
拡大杭を適用する場合について以下に延べる。
【0015】20年ほど前に打ち込み工法で鋼管杭を施
工したときに採用された頭部拡大杭の下部鋼管と上部鋼
管との接続部の構造を図13に示す。この頭部拡大杭1
は、下部鋼管2と上部鋼管3との間に複数の接合部材9
を縦方向に配置して接合したものである。この接合構造
は、打込み施工時に接合部材9間の間隙を土砂が通過す
るように意図したものであるが、実際には土砂が間隙に
詰まって貫入抵抗が非常に大きくなり、打ち込みに苦労
した。
【0016】また、従来技術3の頭部拡大基礎杭打込み
工法は、下杭と頭部拡大杭との継手部を管内で打撃する
ようにしたものであるが、頭部拡大杭に発生する打撃応
力度を通常の打込み工法より低減しても、継手部に発生
する貫入抵抗は減少しない。したがって、打込みに困難
を伴うことは前述の技術と同じである。
【0017】また、従来技術4は、管内に挿入するオー
ガーの径は下部鋼管の径より小さいため、接続部に発生
する貫入抵抗は前二者の技術と同じである。一方、中掘
工法の圧入力は打ち込みによる衝撃力に比べて数分の1
と小さい。このため、頭部拡大杭に中掘工法を適用する
ことはほとんど無理に近い。オーガーを下部鋼管の先端
から突き出してから上部鋼管の径と同じ程度にオーガー
径を拡大することは機械的には可能であるが、下部鋼管
の面積よりも大きな面積の土砂を掘削攪拌するために支
持力が低減してしまう。
【0018】また、頭部拡大杭にプレボーリング工法を
適用することは技術的には容易であり、既成コンクリー
ト杭の分野で一部使用されたことがある。しかし、造成
コストが高くなるという問題がある。前述の従来技術3
はその1例であるが、あらかじめ上下で径の異なるケー
シングと掘削用オーガーを組み合わせて、頭部拡大杭用
のソイルセレント柱状体を造成してから杭本体を挿入す
る2段構えの工法であるため、打ち込み工法や中掘工法
に比べて工事費用が高くなる。
【0019】以上述べたように、一般に行われている杭
打ち工法を頭部拡大杭に適用することは、施工上及びコ
スト上問題がある。また、図13に示した下部鋼管と上
部鋼管の接合構造や、従来技術3の接合構造は、上部鋼
管から下部鋼管への応力の伝達がスムーズでなく、杭体
に局部的な応力を発生し易いという問題がある。
【0020】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたもので、ねじ込み式鋼管杭と頭部拡大杭の特長を
兼ね備えた次のようなねじ込み式鋼管杭を得ることを目
的としたものである。 (1)低振動、無排土施工が可能で、かつ大きな先端支
持力が得られるねじ込み式鋼管杭の適用範囲を大径鋼管
杭まで拡大すること。 (2)上部工から大きな水平力や曲げモーメントが作用
する基礎杭に対して、経済的な設計が可能な頭部拡大鋼
管杭を、設計施工上無理なく低コストでねじ込み式鋼管
杭に適用できるようにすること。 (3)拡径部近傍の杭体に応力集中が発生しない構造に
すると共に、拡径部のコストを低くできること。
【0021】
【課題を解決するための手段】少なくとも先端部又はそ
の近傍に翼を有する下部鋼管と、該下部鋼管より大径で
該下部鋼管の上端部に接合された上部鋼管とからなり、
前記下部鋼管と前記上部鋼管とをテーパー鋼管によって
接続すると共に、前記上部鋼管の外径を前記翼の外径以
下に形成したものである。
【0022】また、上記のねじ込み式鋼管杭の上部鋼管
の外径を、下部鋼管の外径の1.15〜1.6倍の範囲
とし、また、上部鋼管の外径を、翼の外径の60〜90
%の範囲としたものである。
【0023】
【0024】
【発明の実施の形態】[実施の形態1]図1は本発明の
実施の形態1の説明図である。図において、1は頭部を
拡大したねじ込み式鋼管杭(以下、単に鋼管杭という)
で、下部鋼管2と、下部鋼管2より大径の上部鋼管3と
からなっており、下部鋼管2の先端部には翼10が設け
られている。
【0025】下部鋼管2は通常の鋼管杭用の鋼管(例え
ば、外径600mm以下)からなり、先端部には、図2
に示すように(図2では説明を容易にするために、下部
鋼管2の上下を逆にしてある)、円周方向を段差部4
a,4bにより2分割し、一方の段差部4aの下端部か
ら他方の段差部4bの上端部に連続する傾斜面とし、ま
た、段差部4aの上端部から段差部4bの下端部に連続
する傾斜面として、これら傾斜面により互いに同方向に
向うレ字状の翼10の取付部5a,5bが設けられてい
る。
【0026】段差部4a,4bの高さhは、鋼管杭1を
埋設する地盤の状態、鋼管杭1の外径、翼10の状態な
どによって異なるが、一般に、h=(0.1〜0.4D
1 )/2(D1 は下部鋼管2の外径)程度であることが
望ましい。この高さhが(0.1D1 )/2未満の場合
は鋼管杭1の1回転当りの貫入量が低下し、また、
(0.4D1 )/2を超えると1回転当りの貫入量が大
きくなりすぎるため、鋼管杭1を回転するためのトルク
が過大になり、さらに、翼10で掘削軟化する土砂の深
さが大きくなるため、支持力が低下することがある。
【0027】翼10は、図2に示すように、下部鋼管2
の外径D1 より大きい外径D3 の円形鋼板又は楕円形鋼
板を中央から2分割した平板状の鋼製翼11a,11b
によって構成したものである。なお、鋼製翼11a,1
1bからなる翼10の大きさ(外径D3 )は、一般に、
下部鋼管2の外径D1 の1.4〜2.1倍程度が望まし
い。
【0028】上記のような鋼製翼11a,11bは、下
部鋼管2の先端開口部を覆うようにして取付部5a,5
b上に載置され、溶接等により互いに反対方向に傾斜し
て取付けられ、翼10を構成する。なお、両鋼製板11
a,11bの食い違いによって生じる開口部は、例え
ば、閉塞板によって閉塞してもよい。
【0029】なお、鋼製翼11a,11bは、図4に示
すように、下部鋼管2の先端部に1つの段差部4を設
け、この段差部4の下端部から1周して上端部に達する
レ字状(螺旋状)の取付部5を設け、この取付部5に互
いに反対方向に傾斜させて鋼製翼11a,11bを取付
けてもよい。なお、この場合の段差部4の高さh1 は、
0.1〜0.4D1 (D1 は下部鋼管2の外径)程度が
望ましい。
【0030】上部鋼管3の外径D2 は、設計上及び施工
上、下部鋼管2の外径D1 の1.15〜1.6倍の範囲
とすることが望ましい。1.15倍より小さいと、拡径
したメリットよりも拡径のための加工費の方が大きくな
り、また、1.6倍以上にしてもそれ以上の設計上のメ
リットは得られない。また、上部鋼管3の外径D2 は、
翼10の外径の60〜90%程度とするこが望ましい。
60%以下になると設計上のメリットよりも加工費の方
が大きくなり、90%以上になると施工時に上部鋼管3
の貫入抵抗が大きくなるおそれがあるので90%以内と
することが望ましいが、翼10の外径程度としてもよ
い。
【0031】さらに、上部鋼管3の長さL1 は、1/β
〜2/βの範囲が望ましい。ここに、βは上部鋼管杭3
と地盤の硬さから決まる特性値である。上部鋼管3の長
さL1 が1/βより短いと大きな曲げモーメントが下部
鋼管2に伝達されてしまい、また2/βより長いと不経
済になる。一般に、上部鋼管3の長さは4〜10m程度
である。
【0032】上記のような下部鋼管2と上部鋼管3は、
例えば図5に示すように、外径が上部鋼管3の外径と等
しく、中心部に下部鋼管2の外径とほぼ等しい穴6aが
設けられたドーナツ状の接続部材6を用い、上部鋼管3
の下端部に接続部材6を溶接して接合すると共に、下部
鋼管2の上端部を接続部材6の穴6aに嵌入して溶接に
より接合することにより、両者は一体に接続される。
【0033】上記のように構成した鋼管杭1は、例えば
図6に示すように、その杭頭部がベースマシン21に搭
載された電動モータ22に連結され、電動モータ22に
より回転されて鋼製翼11a,11bのねじ作用により
地中にねじ込まれ、埋設される。このとき、鋼製翼11
a,11bの食い違い部に開口部が存在するときは、鋼
管杭1内に僅かな土砂が侵入し、開口部が閉塞されてい
るときは、鋼管杭1内に土砂は侵入しない。なお、鋼管
杭1の外径が大きい場合は、地上近くで鋼管杭1の胴部
に直接回転力を与えてもよく、また、下部鋼管2は複数
の鋼管を接続した接続杭であってもよい。
【0034】ねじ込み式鋼管杭は、前述のように翼のね
じ作用により無排土で地中に貫入されるものであり、翼
の下方にあった土砂は翼により掘削軟化され、翼の間隙
を通過して鋼管杭1の外周に移動し、圧縮される(図1
の20参照)。このとき、鋼管杭1の先端部の一部又は
全部が開放されている場合は、一部の土砂が鋼管杭1内
に取り込まれる。
【0035】鋼管杭1の外周に移動した土砂は、施工中
は攪乱されて間もないため、かつ、圧縮されて間隙水圧
が上昇しているため、鋼管杭1の外周面との間に大きな
摩擦抵抗が生じないので、鋼管杭1をスムーズに貫入す
ることができる。しかし、時間の経過に伴い、土粒子結
合力の回復と円隙水圧の低下によって土砂のせん断抵抗
が回復し、基礎杭としての供用時に大きな周面摩擦力が
発揮する。
【0036】前述のように、ねじ込み式鋼管杭は、翼に
よりその外径相当分の範囲の鋼管杭外周の土砂が攪乱さ
れて施工中は軟化しているため、本発明のように、上部
鋼管3の外径D2 が翼10の外径D3 以下であれば、施
工時に拡径による地盤の抵抗は小さく、打ち込み杭方式
や中掘り圧入杭方式の頭部拡大鋼管杭の場合のように、
施工能率の極端な低下や施工困難に陥ることがなく、地
盤中にスムーズにねじ込むことができる。この場合、上
部鋼管3の外径D2 が翼10の外径D3 の90%以上に
なると、上部鋼管2は、一度攪乱されたとはいえ土砂を
相当圧縮して貫入することになるため、貫入抵抗が大き
くなるので、上部鋼管3の外径D2 は翼10の外径D2
の90%以下であることが望ましい。
【0037】上記のように構成した本実施形態に係る鋼
管杭1は、これを基礎杭としての使用時に、翼10は先
端地盤反力を受ける受圧体として機能するため、大きな
先端支持力を得ることができる。この場合、上部鋼管3
の外径D2 を下部鋼管2の外径D1 の1.15〜1.6
倍程度とし、翼10の外径D3 を下部鋼管2の外径D1
の1.4〜2.1倍程度とすると、耐荷重性能上バラン
スをよくすることができる。また、下部鋼管2は、上部
工から伝達される水平力や曲げモーメントの影響をほと
んど受けないため、鉛直荷重が大きくても充分大きな耐
荷力を発揮することができる。
【0038】本実施の形態は、上部鋼管3の外径D2
翼10の外径D3 以下にしたことにより、鋼管杭1のね
じ込み貫入のための駆動トルクを小さくすることがで
き、頭部を拡大したねじ込み式鋼管杭の貫入をスムーズ
に施工することができる。
【0039】また、上部鋼管3の外径D2 を下部鋼管2
の外径D1 の1.15〜1.6倍程度とすることによ
り、鋼管杭1の杭頭部近傍に発生する大きな曲げモーメ
ントに対応することができ、地震時の曲げ応力度と水平
変位量を抑制することができる。さらに、上記のように
構成することにより、経済的な頭部拡大ねじ込み式鋼管
杭を実用化することができる。
【0040】さらに、本発明は、頭部拡大杭とねじ込み
式鋼管杭とを一定の条件に基づいて組合わせたことによ
り、理想的な基礎杭を得ることができた。すなわち、頭
部拡大杭の設計上の利点を生かしながらねじ込み杭方式
を採用することにより、頭部拡大式鋼管杭の施工上の課
題を解消すると共に、低振動、無排土施工で大きな先端
支持力が得られるというねじ込み式鋼管杭の利点を生か
し、従来困難とされていた全長に亘って大径の鋼管杭の
施工上の問題を克服することができたのである。
【0041】[実施の形態2]図7は本発明の実施の形
態2の説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分に
はこれと同じ符号を付し、説明を省略する。本実施の形
態は、下部鋼管2と上部鋼管3を逆截頭円錐状で短尺の
テーパー鋼管7により接合したもので、テーパー鋼管7
の下端部の外径を下部鋼管2の外径D1 と等しく、ま
た、上端部の外径を上部鋼管3の外径D2 と等しく形成
し、これらを溶接により接合したものである。このテー
パー鋼管7の長さL2 は、下部鋼管2の外径D1 の0.
5〜1.5倍程度が望ましく、また、テーパーの角度θ
は、20°以下が望ましい。
【0042】本実施の形態に係る鋼管杭1の施工方法、
作用、効果は、実施の形態1の場合とほぼ同様である
が、下部鋼管2と上部鋼管3との間がテーパー鋼管7に
より連続的に変化するため、施工にあたって掘削軟化さ
れた土砂がその周囲を滑らかに移動するため貫入抵抗が
小さく、鋼管杭1をよりスムーズに貫入することができ
る。また、図13で説明した従来技術に比べて鉛直荷重
が上部鋼管3から下部鋼管2へスムーズに伝達され、鋼
管杭1に応力集中がしにくくなる。
【0043】[実施の形態3]図8は本発明の実施の形
態3の説明図である。なお、実施の形態1,2と同じ部
分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。本実施
の形態は、実施の形態2において、上部鋼管3とテーパ
ー鋼管7との接合を工場で行い、下部鋼管2とテーパー
鋼管7との接合を施工現場で行うようにしたものであ
る。
【0044】すなわち、上部鋼管3とテーパー鋼管7と
の接合にあたっては、例えば図9に示すように、上部鋼
管3の下端部外周を斜めに切除し、下端部外周が斜めに
切除されたテーパー鋼管7の上端部との間に開先を形成
し、工場において溶接により両者を接合する。そして、
下部鋼管2とテーパー鋼管7が接合された上部鋼管3を
施工現場に輸送する。
【0045】施工現場では、先ず、先端部に翼10が取
付けられた下部鋼管2をベースマシン21の電動モータ
22に連結し、回転力を与えて地盤中に貫入させ、上部
を地上に残した状態で電動モータ22を取外す。つい
で、テーパー鋼管7が接合された上部鋼管3をクレーン
等で吊り下げてテーパー鋼管7を下部鋼管2上に載置
し、両者を溶接により接合する。そして、上部鋼管3を
ベースマシン21の電動モータ22に連結して回転力を
与え、上部鋼管3が接続された鋼管杭1を地盤中にねじ
込んで埋設する。この場合、鋼管杭1が大径のときは地
上において直接鋼管杭1の胴部に回転力を与えてもよ
い。
【0046】下部鋼管2と上部鋼管3に接合されたテー
パー鋼管7との接合にあたっては、図9に示すように、
下部鋼管2の上端部とテーパー鋼管7の下端部の内側に
裏当て金8を取付け、外周面に形成された開先を溶接し
て両者を接合する。なお、下部鋼管2が継ぎ鋼管である
場合は、施工現場で上下の鋼管2a,2bを溶接により
接合する。
【0047】上記のように構成した本実施の形態におい
ては、下部鋼管2、テーパー鋼管6及び上部鋼管3の溶
接接合をすべて工場で行う場合に比べて、溶接個所数を
1個所減らすことができる。また、テーパー鋼管7を介
して外径の異なる鋼管を工場で溶接接合する場合は、鋼
管を高さの異なるターニングローラ上に設置して作業を
行う必要があるが、一般にはこのような設備を有する工
場は少なく、その上コストが高くなる。本実施の形態で
は、下部鋼管2を地盤中に埋設してテーパー鋼管6を直
接現場で溶接接合するようにしたので、溶接作業が簡単
でコストを低減することができる。
【0048】鋼管杭をトラック等に載せて輸送する場
合、外径の異なる鋼管は荷台に積載しにくいため、積込
みや運搬コストが高くなるが、本実施の形態において
は、上部鋼管3の下端部に上部鋼管3より径の小さい短
尺のテーパー鋼管7を接合したものなので、一定径の鋼
管杭の場合と同様に積載することができる。また、テー
パー鋼管7のテーパー角度θを20°以内としたことに
より、同径鋼管の現場溶接の場合とほぼ同じ作業条件で
現場溶接を行うことができ、同等の溶接品質を得ること
ができる。
【0049】[比較例]外径500mm、肉厚9mm、
長さ8mの上杭、外径500mm、肉厚9mmで長さ1
3mの中杭及び下杭からなり、下杭の先端部に外径10
00mm、肉厚40mmの円形鋼板を2分割した鋼製翼
が交差して取付けた翼を設けてなる全長34mの通常の
ねじ込み式鋼管杭(以下、鋼管杭Aという)と、外径7
00mm、肉厚9mm、長さ7.5mの上部鋼管、この
上部鋼管の下端部に工場で溶接接合した長さ0.5mの
テーパー鋼管、及び外径500mm、肉厚9mmで長さ
13mの中杭と下杭からなる下部鋼管からなり、下杭の
先端部に鋼管杭Aと同じ翼が取付けられた本発明に係る
ねじ込み式鋼管杭(以下、鋼管杭Bという)とを準備し
た。
【0050】そして、上部がN値5〜10の砂地盤、中
間部がN値5〜15のシルトと砂の互層地盤、下部がN
値50以上の砂礫地盤からなる地盤に、鋼管杭AとBの
杭頭部をそれぞれベースマシンに搭載した電動モータに
連結し、回転した。これにより、両者は地盤中にねじ込
まれ、スムーズに支持層まで貫入した。施工に要した時
間は、通常の鋼管杭Aが3.7時間、本発明に係る鋼管
杭Bが3.9時間で、両者の間にほとんど差異はなかっ
た。なお、上部鋼管の下端部に接合したテーパー鋼管と
下部鋼管を構成する中杭との溶接の作業性は、同径の鋼
管の溶接接合と同じであった。
【0051】[実施の形態4]本実施の形態は、下部鋼
管2の下端部又はその近傍に設けた翼10の他の例を示
すものである。実施の形態1〜3では、下部鋼管2の先
端部に平板状の鋼製翼11a,11bを取付けて翼10
を構成した場合を示したが、本例においては、図10
(a)に示すように、平板状の鋼製翼11a,11bに
代えて螺旋状の鋼製翼12を取付けて翼10を構成した
ものである。なお、下部鋼管2の先端部には、図4で説
明した螺旋状の取付部5が形成されている。
【0052】すなわち、図10(b)に示すように、外
径D3 (D3 は下部鋼管2の外径D1 の1.4〜2.1
倍程度、以下同様)の円形鋼板の中心部に穴13を設
け、この穴13から外周部までの一か所を切断して、下
部鋼管2の先端部に設けた取付部5に対応した形状に曲
げ加工して1個の螺旋状の鋼製翼12を形成し、この鋼
製翼12を下部鋼管2の取付部5に溶接接合して翼10
を構成したものである。
【0053】また、図11の例は、図11(b)に示す
ように、外径D3 の円形鋼板の中心部に、下部鋼管2の
外径D1 とほぼ等しい径D4 の穴15を設け、これを2
分割して平板状の鋼製翼14a,14bを形成し、この
鋼製板14a,14bを、図11(a)に示すように、
下部鋼管2の外周に溶接によりピッチP(図4の段差部
4の高さh1 に相当)の連続した螺旋状に取付けて翼1
0を構成したものである。なお、16は下部鋼管2の先
端開口部を閉塞する閉塞板であるが、これは省略しても
よく、また穴があいたドーナツ板を取付けてもよい。
【0054】図12の例は、図12(b)に示すよう
に、図11(b)に示す円形鋼板の穴15から外周部ま
での1か所を切断してピッチP(図4の段差部4の高さ
1 に相当)の螺旋状に曲げ加工して1個の鋼製翼17
を形成し、この鋼製翼17を図12(a)に示すよう
に、下部鋼管2の外周に溶接により取付けて翼10を構
成したものである。
【0055】以上本発明の実施の形態について説明した
が、本発明はこれに限定するものではなく、図示しない
が、例えば、次のような実施の形態がある。 (1)上記の説明では、下部鋼管2の先端部又は先端部
近傍の外周に2個の半円状の鋼製翼11a,11bを取
付けて翼10を構成した場合を示したが、下部鋼管2の
先端部に3つ又はそれ以上のレ字状の取付部を設け、こ
の取付部又は外周に円形鋼板を3分割又はそれ以上に分
割した扇形状の鋼製翼を取付けるようにしてもよく、あ
るいは螺旋状の鋼製翼を複数に分割して下部鋼管2の先
端部又は外周に取付けてもよい。
【0056】(2)また、翼10を下部鋼管2の先端部
又はその近傍に設けた場合を示したが、さらにその上方
にも翼を設けて複数段に構成してもよい。 (3)さらに、実施の形態1〜4では、翼10を構成す
る複数の鋼製翼の内角の総和が360°の場合を示した
が、これら内角の総和が320°〜400°の範囲にな
るように構成してもよい。
【0057】
【発明の効果】本発明に係るねじ込み式鋼管杭は、少な
くとも先端部又はその近傍に翼を有する下部鋼管と、こ
の下部鋼管より大径で下部鋼管の上端部に接合された上
部鋼管とからなり、前記上部鋼管の外径を前記翼の外形
以下に形成したので、地盤にねじ込み貫入するための駆
動トルクを小さくすることができ、頭部を拡大したねじ
込み式鋼管杭の貫入をスムーズに施工することができ
る。また、下部鋼管と上部鋼管とをテーパー鋼管によっ
て接続したので、施工にあたって掘削軟化された土砂が
滑らかに移動するため貫入抵抗が小さく、スムーズに貫
入することができる。さらに、鉛直荷重が上部鋼管から
下部鋼管へスムーズに伝達される。
【0058】また、上記の上部鋼管の外径を、下部鋼管
の外径の1.15〜1.6倍の範囲としたので、杭頭部
近傍に発生する大きな曲げモーメントに対応することが
でき、また、地震時における曲げ応力度と水平変位量を
抑制することができる。さらに、上部鋼管を上記のよう
な大きさに形成することにより、頭部を拡大した経済的
なねじ込み式鋼管杭を得ることができる。
【0059】また、上部鋼管の外径を、翼の外径の60
〜90%の範囲としたので、上部鋼管が翼の回転によっ
て掘削軟化された土砂内にスムーズに貫入され、ねじ込
み式鋼管杭を地盤中に容易に建て込むことができる。
【0060】
【0061】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の説明図である。
【図2】図1の下部鋼管の下端部に設けた翼の取付部の
説明図である。
【図3】翼の製造を示す説明図である。
【図4】翼の取付部の他の例を示す説明図である。
【図5】下部鋼管と上部鋼管の接続例を示す説明図であ
る。
【図6】実施の形態1の鋼管杭の施工説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態3の説明図である。
【図9】実施の形態3の下部鋼管と上部鋼管の接続例を
示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態4の説明図である。
【図11】実施の形態4の他の例の説明図である。
【図12】実施の形態4の他の例の説明図である。
【図13】従来の頭部拡大鋼管杭の要部の説明図であ
る。
【符号の説明】
1 ねじ込み式鋼管杭(鋼管杭) 2 下部鋼管 3 上部鋼管 5,5a,5b 翼の取付部 6 接続部材 7 テーパー鋼管 10 翼 11a,11b,14a,14b 鋼製翼 12,17 螺旋翼 21 ベースマシン 22 電動モータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 島岡 久壽 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 林 正宏 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 岡本 隆 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平9−324419(JP,A) 特開 昭61−254718(JP,A) 実開 昭62−185742(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E02D 5/56

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも先端部又はその近傍に翼を有
    する下部鋼管と、該下部鋼管より大径で該下部鋼管の上
    端部に接合された上部鋼管とからなり、前記下部鋼管と
    前記上部鋼管とをテーパー鋼管によって接続すると共
    に、前記上部鋼管の外径を前記翼の外径以下に形成した
    ことを特徴とするねじ込み式鋼管杭。
  2. 【請求項2】 上部鋼管の外径を、下部鋼管の外径の
    1.15〜1.6倍の範囲としたことを特徴とする請求
    項1記載のねじ込み式鋼管杭。
  3. 【請求項3】 上部鋼管の外径を、翼の外径の60〜9
    0%の範囲としたことを特徴とする請求項1又は2記載
    のねじ込み式鋼管杭。
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