JP3031246B2 - ねじ込み式鋼管杭 - Google Patents

ねじ込み式鋼管杭

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JP3031246B2
JP3031246B2 JP8143897A JP14389796A JP3031246B2 JP 3031246 B2 JP3031246 B2 JP 3031246B2 JP 8143897 A JP8143897 A JP 8143897A JP 14389796 A JP14389796 A JP 14389796A JP 3031246 B2 JP3031246 B2 JP 3031246B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ねじ込み式鋼管杭
に係り、さらに詳しくは、鋼管の先端部に螺旋状板を取
付けた鋼管杭に回転力を与えることにより、無排土で地
中に埋設することのできるねじ込み式鋼管杭に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】鋼管の先端部や側面に螺旋翼などを取付
けた鋼管杭に、地上に設置した駆動装置により回転力を
与えることにより、ねじの作用で地中に埋設するように
したねじ込み式鋼管杭は従来から多数提案されており、
その一部は小径の杭を対象としたものではあるが実用化
されている。以下、従来のこの種ねじ込み式鋼管杭の一
例について説明する。
【0003】特公平2−62648号公報に記載された
鋼管杭の埋設工法は、鋼管製の杭本体の下端に底板を固
設し、該底板に掘削刃を設けると共に、杭本体の下端部
外周面に杭本体の外径のほぼ2倍強の外径を有する翼幅
の大きな杭ネジ込み用の螺旋翼を、ほぼ一巻きにわたり
突設した鋼管杭を、軟弱地盤にネジ込むように回転させ
ながら地中に押圧し、下端の掘削刃によって杭本体先端
の土砂を掘削軟化させて、杭側面の未掘削土砂中に螺旋
翼を食い込ませて、土の耐力を反力として杭体を回転推
進しつつ、掘削軟化した土砂を杭側面に押出し圧縮し、
無排土で地中に杭体をネジ込んでゆくようにしたもので
ある(従来技術1)。
【0004】また、特開平7−292666号公報に記
載された鋼管杭は、一枚の長さが半巻きで、外径が杭本
体の1.5〜3倍程度である一対のラセン翼を、鋼管杭
の下端部外周面の同じ高さ位置でラセン方向を同じにし
て互いに相対的に複数枚不連続に固定したものである
(従来技術2)。
【0005】さらに、特開昭61−98818号公報に
記載された回転圧入式鋼管杭は、鋼製円筒体の下部に、
上下方向に延長する押込用傾斜前面を有する刃を設ける
と共に、その傾斜前面の下端部から円筒体回転方向の後
方に向って斜めに上昇する傾斜ブレードを固定して環状
のドリルヘッドを構成し、そのドリルヘッドの上端部に
鋼管杭の下端部を取付けたものである(従来技術3)。
これら従来技術1〜3に示す螺旋翼又は傾斜ブレード
は、施工に際してねじとして機能すると共に、大きな地
盤支持力を得るための支持体として機能も備えている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来技術1及び2の鋼
管杭は、工事完了後上載建造物の重量や地震により鉛直
力が作用すると、螺旋翼には翼面下の地盤から強い反力
を受ける。その結果、螺旋翼の付け根部分に大きな曲げ
モーメントが生じ、螺旋翼が鋼管の外周面に強固に固着
されているために、この曲げモーメントが鋼管に伝達さ
れて大きな曲げ応力が発生する。この曲げ応力は、従来
技術2の明細書に記載されているように、鋼管の外径が
100〜200mm程度の小さい鋼管杭であれば実用上
大きな問題にはならない。しかし、広く使用されている
外径が500〜600mmの鋼管杭では、設計上大きな
問題となる。
【0007】螺旋翼の外径は、従来技術1及び2におい
ては、施工上あるいは支持力上、鋼管径の2倍程度がよ
いとされている。ここで、鋼管径200mmの鋼管杭
と、600mmの鋼管杭とを比較する。いま、それぞれ
の螺旋翼の外径を鋼管径の2倍である400mm、12
00mmとすると、螺旋翼の幅((螺旋翼外径−鋼管外
径)/2)は、それぞれ100mm、300mmとな
る。螺旋翼に作用する単位面積当りの地盤反力が同じと
すると、螺旋翼の付け根に作用する単位周長当りの曲げ
モーメントは、螺旋翼の幅のほぼ2乗に比例するので、
外径600mmの鋼管杭では、外径200mmの鋼管杭
に比べて約9倍の大きさになり、このため、螺旋翼は大
変厚い鋼板が要求される。
【0008】また、螺旋翼で大きな地盤支持力を得るた
めには、鋼管と螺旋翼の結合部は螺旋翼と同等以上の強
度が要求される。そのため、図12に示すように、螺旋
翼22に開先加工23を施して全断面溶け込み溶接24
により強固に結合することが必要であり、厚さが大きく
なると溶接費用が非常に高くなる。
【0009】一方、螺旋翼の付け根付近の鋼管には、前
述のように螺旋翼から曲げモーメントが伝達され、曲げ
応力が発生する。鋼管に伝達される曲げモーメントは外
径寸法によって異なるが、螺旋翼の付け根部の曲げモー
メントの5〜10割程度の値になる。例えば、外径60
0mmの鋼管の場合、設計上40mm以上の厚さが必要
な螺旋翼の曲げモーメント値の5〜10割の曲げモーメ
ントが付け根付近の鋼管に作用する。外径600mmの
鋼管杭の場合、一般に使用されている肉厚は9〜12m
m程度であり、螺旋翼の曲げモーメントによって生ずる
鋼管の曲げ応力は、設計許容曲げ応力を大きく超過する
ことになる。これに対処するため、螺旋翼の付け根付近
の鋼管の厚さを、一般の厚さの2〜3倍に増やすことも
考えられるが、そのためにはコストが著しく増加し、実
用上設計不可能にならざるを得ない。
【0010】また、従来技術1及び2は、大きな地盤支
持力を得るために、鋼管の先端部に底板を取付ける必要
があり、そのためには、鋼管の先端部と底板を強固に溶
接結合しなければならず、そのコストも少なくない。ま
た、底板には地盤を掘削する作用がないため、別途掘削
刃を設ける必要がある。
【0011】従来技術3は、鋼製円筒体の先端部に蓋が
ないため大きな地盤支持力を得ることができないという
大きな問題をもっている。また、傾斜ブレードの幅が狭
く、鋼製円筒体の先端部の内外に僅かに突出する構造の
ため、傾斜ブレードを大きな地盤支持力の支持体として
期待することはできない。さらに、従来技術3は、傾斜
ブレード付き鋼製円筒体を製作してからこれを鋼管の先
端部に固着するため、コストの増嵩は避けられない。
【0012】本発明は、上記従来技術の問題に鑑みて、
以下の課題を解決することを目的としたものである。 (1)螺旋状板を利用して大きな地盤支持力が得られる
こと。 (2)螺旋状板から伝達される曲げモーメントにより、
鋼管に過大な曲げ応力を発生させないこと。 (3)鋼管杭を強固な地層までねじ込みにより埋設でき
ること。
【0013】
【課題を解決するための手段】(1)本発明に係るねじ
込み式鋼管杭は、先端部を螺旋状に切り欠いた鋼管と、
直径が鋼管の直径より大きいほぼ円形の鋼板を鋼管の先
端部の下面形状に対応した形状に曲げ加工した螺旋状板
とを有し、この螺旋状板を鋼管の先端部の下面に低強度
溶接手段により取付けたものである。
【0014】(2)また、本発明に係るねじ込み式鋼管
杭は、先端部を螺旋状に切り欠いた鋼管と、直径が鋼管
の直径より大きいほぼ円形の鋼板を鋼管の先端部の下面
形状に対応した形状に曲げ加工した螺旋状板とを有し、
該螺旋状板を前記鋼管の先端部の下面にヒンジ手段によ
り取付けたものである。
【0015】(3)上記(1)又は(2)のねじ込み式
鋼管杭において、螺旋状板の両端部の食い違いによって
形成された開口部のうち鋼管に囲まれた部分を閉塞部材
によって閉塞した。
【0016】
【発明の実施の形態】実施形態1 図1は本発明に係るねじ込み式鋼管杭の実施形態1の斜
視図、図2はその平面図である。図において、1はねじ
込み式鋼管杭(以下単に鋼管杭という)、2はこの鋼管
杭1を構成する鋼管、10は鋼管2の先端部に取付けら
れた螺旋状板である。
【0017】鋼管2の先端部には、図2に示すように、
螺旋状に切り欠かれた取付部3が設けられており、この
取付部3を形成する段部3aの高さhは、鋼管杭1を埋
設する地盤の状態、鋼管2の外径などによって異なる
が、一般にh=0.2〜0.8D(Dは鋼管2の外径)
程度であることが望ましい。螺旋状板10は、図3に示
すように、鋼管2の外径Dより大きい外径D1 (例え
ば、D1 =2D)の円形鋼板又は楕円形鋼板の中心を通
る線の一部を切断し、鋼管2の取付部3の下面形状に対
応した形状に曲げ加工して構成したものである。なお、
螺旋状板10の大きさは、鋼管杭1を埋設する地盤の状
態、鋼管2の外径などによって異なるが、一般に鋼管2
の外径の1.5〜3倍程度が望ましい。このような螺旋
状板10は、鋼管2の先端部の取付部3の下面に当接さ
れ、溶接等により鋼管2に取付けられる。
【0018】なお、この螺旋状板10は、図4に示すよ
うに、円形鋼板又は楕円形鋼板の中心部に穴10aを設
け、この穴10aから外周部まで切断すれば、螺旋状板
10の曲げ加工が容易で、より正確な形状に形成するこ
とができる。なお、この穴10aは、曲げ加工終了後鋼
板等で閉塞することが望ましい。また、螺旋状板10
は、円形鋼板又は楕円形鋼板を複数の片に分割し、それ
ぞれの片を曲げ加工したのち各片を溶接により接合して
鋼管2の先端部に取付けてもよく、あるいはそれぞれの
片を曲げ加工して鋼管2の先端部に取付けたのち、隣接
する片を溶接により接合してもよい。螺旋状板10を分
割すると曲げ加工が容易になると共に、取付部3への溶
接結合が非常に容易になる。
【0019】上記のように構成した鋼管杭1は、例えば
図12に示すように、ベースマシン20に搭載したオー
ガー21に連結され、オーガー21によって回転されて
螺旋状板10のねじ作用により地中にねじ込まれ、埋設
される。このとき、螺旋状板10の曲げ加工によって形
成された食い違い部の開口部11が小さいため、鋼管2
内には土砂はほとんど侵入しない。
【0020】実施形態2 本実施形態は、実施形態1において、螺旋状板10の両
端部の食い違いによって形成された開口部11のうち、
鋼管2に囲まれた部分を、図5に示すように、鋼板等か
らなる閉塞部材12によって閉塞し、併せて螺旋状板1
0の両端部を剛接合したものである。
【0021】上記のように構成した実施形態1に係る鋼
管杭1は、螺旋状板10が鋼管1の下部開口部の大部分
を閉塞すると共に、鋼管2の外周面から大きく突出して
いるため、地中へのねじ込み施工時には、螺旋状板10
が下方の地盤に食い込んで鋼管杭1を地中にねじ込む機
能と、鋼管2の下方の土砂を食い違い部で掘削して鋼管
2の周囲に押出し、かつこれを圧縮する機能との両機能
を備えている。また、施工後において、上載建造物等に
よる鉛直荷重を支持する杭として機能するときは、螺旋
状板10は、鋼管2の下端開口部を閉塞する底板として
の部分と、鋼管2の外周から突出した部分とを合わせた
全面積が支持体として機能し、大きな地盤支持力を得る
ことができる。
【0022】このように、螺旋状板10は、鋼管2の外
周に突出して地盤へ食い込む機能と、鋼管先端部の開口
部を閉塞する底板としての機能との両機能を備えてい
る。先端部を閉塞した鋼管杭の地盤支持力は、閉塞面積
に比例することが知られており、よって、例えば、螺旋
状板10の外径を鋼管2の外径の2倍にすると、螺旋状
板10の面積は、これがない場合の4倍の面積となり、
非常に大きな地盤支持力が得られる。
【0023】また、実施形態2に示すように、螺旋状板
10の両端部の食い違いによって形成された開口部11
のうち鋼管2に囲まれた部分を、閉塞板12で閉塞する
ことにより、鋼管2内への土砂の侵入を防止できるの
で、鋼管杭1の先端部の下方にあるすべての土砂は、鋼
管杭1の側方に押し出しされ、圧縮されて密度の高い土
砂になるため、鋼管杭1の周面摩擦による地盤支持力を
大きくすることができる。また、閉塞板12は螺旋状板
10の上下端を連結するため、螺旋状板10の剛性を高
める機能も有する。
【0024】ところで、螺旋状板10によって大きな地
盤反力を受けるためには、螺旋状板10は高い剛性が要
求される。例えば、鋼管2の外径が500mm、螺旋状
板10の外径が1000mmの場合、螺旋状板10に
は、地盤反力により大きな曲げモーメントが発生するた
め、設計上、厚さ40mm程度の鋼板を用いることが要
求され、この曲げモーメントは鋼管2に伝達されて大き
な曲げ応力が生ずることになる。
【0025】しかしながら、螺旋状板10は、図6に示
すように、鋼管2の先端部の内側から外側に亘って連続
している。このため、螺旋状板10の外側の部分に作用
する地盤反力により発生した曲げモーメントM1 ,M4
と、内側の部分に発生した曲げモーメントM2 ,M3
鋼管2の先端部で互いに打消し合い、結果として、螺旋
状板10の取付部3の近傍の鋼管2には、両者の差の小
さい曲げモーメントM1 −M2 及びM4 −M3 が伝達さ
れるだけなので、鋼管2には過大な曲げ応力は発生しな
い。また、実施形態2に示すように、螺旋状板10の両
端部を閉塞板12で剛接合した場合は、螺旋モーメント
を打消し合ってバランスするため、鋼管2との接合部に
は曲げモーメントはさらに減少する。
【0026】一方、鋼管2の外径と螺旋状板10の外径
との関係や地盤反力の分布状態によっては、鋼管2の内
側と外側の螺旋状板10に加えられる曲げモーメントに
大きなアンバランスが生じ、この曲げモーメントの差の
曲げモーメントが鋼管2に加えられて、鋼管2に大きな
曲げ応力が発生することも考えられる。さらに、螺旋状
板10に加えられる曲げモーメントが前述のように打消
し合った場合でも、螺旋状板10が比較的薄肉のとき
は、全体が曲げ変形することも考えられる。このような
場合は、鋼管2と螺旋状板10の接合部には、二次的な
曲げモーメントが作用する。
【0027】このような場合には、図7に示すように、
鋼管2の先端部(取付部3)に、例えば隅肉溶接の如く
全断面に溶け込まない簡略な溶接13、あるいは鋼管2
の材質よりも降伏強度の小さい溶接材料を用いた全断面
溶け込み溶接(以下両者を合わせて低強度溶接手段とい
う)により螺旋状板10を取付け、鋼管2の曲げ応力が
許容値に達する前に故意に溶接部を降伏させてしまい、
鋼管2にそれ以上の曲げモーメントが伝達されないよう
にしてもよい。
【0028】溶接材料などの鋼材は、図8に示すよう
に、降伏後も相当変形するまで破壊を生じないという性
質があり、そのため、螺旋状板10は、溶接部の降伏後
においても鋼管2の先端部から脱落することはない。ま
た、溶接部が降伏しても、螺旋状板10は、地盤反力を
受ける支持体として健全に機能することができる。
【0029】また、上述の溶接に代えて、図9に示すよ
うに、鋼管2の外周面の下端部に、ブロック状の複数の
鋼片15を溶接して取付けると共に、螺旋状板10の上
面に、これら各鋼片15に対向し、かつその周囲を取り
囲むようにコ字状の鋼板16を溶接して配置し、鋼板1
6を鋼片15にそれぞれ嵌合して(以下ヒンジ手段14
という)、螺旋状板10を鋼管2の先端部に取付けるよ
うにしてもよい。
【0030】このようにして螺旋状板10が取付けられ
た鋼管杭1は、鉛直力とせん断力は伝達できる構造であ
るため、ねじ込みによる鋼管杭1の埋設施工性及び上載
建造物完成後の支持機能上なんら問題はない。一方、螺
旋状板10に生じた曲げモーメントは、鋼管2には伝達
されないので、鋼管2に曲げ応力が発生することはな
い。
【0031】図10は、鋼管杭1を地中にねじ込んで埋
設する際、螺旋状板10の端部が変形するのを防止する
ため、螺旋状板10の回転方向側の端部に、補強用鋼板
17を取付けたものである。また、図11は、鋼管杭1
のねじ込み効率を向上するために、螺旋状板10の回転
方向側の端部に、螺旋状板10の掘削を補助するための
掘削刃18を取付けたものである。なお、これら補強用
鋼板17及び掘削刃18は、本発明に必須のものではな
い。
【0032】図12は本発明に係る鋼管杭1を地中に埋
設する場合の施工試験の一例を示すもので、鋼管杭1を
構成する鋼管2の寸法は、外径:500mm、肉厚:1
2mm、長さ:15mであり、先端部に設けた段部3a
の高さhをh=0.25Dとした。また、螺旋状板10
は外径:1000mm、厚さ:40mmの円形鋼板を曲
げ加工したものを用い、鋼管2の取付部3への結合は、
隅肉溶接による低強度溶接手段によった。鋼管杭1の回
転力は、ベースマシン20に搭載したオーガー21によ
り杭頭に伝達した。試験場所の地盤は、地表から深さ1
3mまでがN値:20、それ以深はN値:50の強固な
砂質地盤である。この施工試験の結果、鋼管杭1は短時
間でスムーズに所定の深さまで埋設することができた。
【0033】このように、本発明に係る鋼管杭は、鋼管
杭1に回転力を与えてねじ込みにより地中に埋設する
際、螺旋状板10の鋼管2の外周面より外側の部分は、
ねじの作用と同様に螺旋状板10の上面側の地盤からの
反力により、鋼管杭1を下方へ推進させる機能を備えて
いる。また、鋼管の内側の部分は、従来技術に示された
底板と異なり螺旋状板10の端部が食い違って配置され
ているため、鋼管先端部の下方の地盤を掘削する機能を
有する。さらに、鋼管杭1は螺旋状板10の全面積によ
る大きな支持力を得ることができる。また、鋼管杭1の
下方にあるすべての土砂は鋼管2の側方に押し出されて
圧縮され、密度の高い土砂となり、鋼管杭1は螺旋状板
10の支持力に加えて周面摩擦による大きな支持力が得
られる。
【0034】以上の説明から明らかなように、本発明に
よれば、以下に記載する理由により、鋼管杭先端部の加
工費、したがって、鋼管杭の製造費を大幅に低減するこ
とができる。 (1)螺旋状板10は、鋼管杭1を推進させるためのね
じとしての機能と、底板としての機能の両機能を備えて
いるので、従来のようにこれらを別々に設ける必要がな
く、このため、材料費及び取付費を低減することができ
る。 (2)鋼管先端部と螺旋状板10との結合は、隅肉溶接
の如き部分溶接でも行えるので、コストの大きな部分を
占めていた溶接費用を大幅に低減することができる。
【0035】
【発明の効果】本発明に係るねじ込み式鋼管杭は、先端
部を螺旋状に切り欠いた鋼管と、直径が鋼管の直径より
大きいほぼ円形の鋼板を鋼管の先端部の下面形状に対応
した形状に曲げ加工した螺旋状板とを有し、この螺旋状
板を鋼管の先端部の下面に低強度溶接手段又はヒンジ手
段により取付けて、螺旋状板に鋼管杭を地中に推進させ
るねじ込み機能と、鋼管の下部開口部を閉塞する底板と
しての機能との両機能を持たせたので、鋼管杭を強固な
地盤まで容易にねじ込んで埋設することができ、また、
大きな地盤支持力を得ることができる。さらに、螺旋状
板に作用する曲げモーメントは、鋼管の内外で互いに打
消されて鋼管には両者の差の曲げモーメントが伝達され
るだけなので、鋼管に大きな曲げ応力が生ずることはな
い。また、先端部の構造が簡単なので、鋼管杭の製造費
を低減することができる。
【0036】また、鋼管の先端部に、低強度溶接手段又
はヒンジ手段によって螺旋状板を取付けるようにしたの
で、螺旋状板から鋼管に伝達される曲げモーメントを抑
制することができ、これにより、鋼管に過大な曲げ応力
が発生するのを防止することができる。このため、大径
(例えば600mm)の鋼管からなるねじ込み式鋼管杭
にも本発明を実施することができる。
【0037】さらに、螺旋状板の両端部の食い違いによ
って形成された開口部のうち、鋼管に囲まれた部分を閉
塞部材で閉塞したので、螺旋状板の剛性を高めると共
に、鋼管杭のねじ込みに際して土砂が鋼管内に侵入する
ことがなく、無排土で地中に埋設することができる。ま
た、鋼管杭の先端部下方にある地盤は螺旋状板の食い違
い部で掘削され、鋼管杭の側方に押し出され圧縮されて
密度の高い土砂になるため、鋼管杭の周面摩擦による地
盤支持力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の斜視図である。
【図2】図1の鋼管の先端部を示す斜視図である。
【図3】図1の螺旋状板の説明図である。
【図4】螺旋状板の他の例の平面図である。
【図5】本発明の実施形態2の斜視図である。
【図6】螺旋状板に加わる地盤反力の説明図である。
【図7】螺旋状板の鋼管への結合例を示す説明図であ
る。
【図8】溶接材料などの鋼材の性質を示す線図である。
【図9】螺旋状板の鋼管への他の結合例を示す説明図で
ある。
【図10】螺旋状板に補強用鋼板を取付けた状態を示す
斜視図である。
【図11】螺旋状板に掘削刃を取付けた状態を示す斜視
図である。
【図12】本発明に係るねじ込み式鋼管杭の施工例を示
す説明図である。
【図13】従来の螺旋翼の鋼管への結合状態を示す説明
図である。
【符号の説明】
1 鋼管杭 2 鋼管 3 取付部 10 螺旋状板 11 開口部 12 閉塞部材 13 低強度溶接(隅肉溶接) 14 ヒンジ手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 正宏 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−326053(JP,A) 特開 昭61−98818(JP,A) 特開 平7−292666(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E02D 5/56 E02D 5/28

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 先端部を螺旋状に切り欠いた鋼管と、 直径が前記鋼管の直径より大きいほぼ円形の鋼板を前記
    鋼管の先端部の下面形状に対応した形状に曲げ加工した
    螺旋状板とを有し、 該螺旋状板を前記鋼管の先端部の下面に低強度溶接手段
    により取付けたことを特徴とするねじ込み式鋼管杭。
  2. 【請求項2】 先端部を螺旋状に切り欠いた鋼管と、 直径が前記鋼管の直径より大きいほぼ円形の鋼板を前記
    鋼管の先端部の下面形状に対応した形状に曲げ加工した
    螺旋状板とを有し、 該螺旋状板を前記鋼管の先端部の下面にヒンジ手段によ
    り取付けたことを特徴とする ねじ込み式鋼管杭。
  3. 【請求項3】 螺旋状板の両端部の食い違いによって形
    成された開口部のうち鋼管に囲まれた部分を閉塞部材で
    閉塞したことを特徴とする請求項1又は2記載のねじ込
    み式鋼管杭。
JP8143897A 1996-06-06 1996-06-06 ねじ込み式鋼管杭 Expired - Lifetime JP3031246B2 (ja)

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