JP5413336B2 - 鋼管杭の製造方法および杭の施工方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の鋼管杭では、先端の斜め刃部によって地盤に貫入しやすくなっているとともに、斜め刃部が地盤から受ける抵抗を斜め蓋部でバランスさせることによって、鋼管杭を地盤に真っ直ぐに貫入させる、つまり鋼管杭の直進性が高められるようになっている。
また、縮径部のテーパ面部が鋼管杭の貫入方向(鋼管本体の軸方向)と傾斜していることから、テーパ面部の貫入方向への投影面積分だけ杭先端面積を大きくすることができ、鋼管杭の先端支持力を増大させることができる。さらに、地盤に貫入する際にテーパ面部が土砂を外側に押し拡げながら下降することで、鋼管杭周辺の地盤が押し固められることとなり、鋼管杭の周面摩擦力を高めることができ、先端支持力と合わせて鋼管杭の支持力を向上させることができる。
ここで、例えば、軸直交平面に沿った先端開口を有した鋼管杭を支持層が傾斜した地盤に貫入する場合(あるいは支持層は水平でも斜杭として施工する場合)において、鋼管杭が所定の貫入方向から傾斜してしまう、つまり傾斜した支持層の低い側に杭先端が逃げるように傾斜してしまうことがある。このような鋼管杭の傾斜が生じた場合には、傾斜とは反対方向に鋼管杭を傾けて貫入するような施工方法が用いられるものの、鋼管杭の傾斜を矯正することは容易ではなく、直進性の確保が困難な場合があった。
このような回転圧入施工時における鋼管杭の傾斜に対する施工方法を本発明の鋼管杭に適用した場合には、先端開口端縁が軸傾斜面に沿って形成されていることから、鋼管杭を傾斜と反対方向に傾けても先端開口端縁のうちの最も杭先端寄りの部分(最先端部)が支持層の高い側に当たりやすくでき、この最先端部で支持層の高い側を掘削することによって、支持層の低い側に杭先端が逃げることが防止できる。従って、支持層が傾斜した地盤に貫入する場合であっても、鋼管杭の傾斜を容易かつ確実に矯正することができ、その直進性を向上させることができる。
このような構成によれば、地盤のボーリング調査等によって予め支持層の傾斜角度が確認されている場合において、その傾斜角度に応じて軸傾斜面の勾配を適宜に設定して先端開口端縁を形成することで、回転圧入施工時の鋼管杭の傾斜を矯正しやすくして直進性を向上させることができる。
このような構成によれば、先端開口端縁のうちの最も杭先端寄りの位置(最先端部)に掘削ビットを固定することで、この掘削ビットによって傾斜した支持層の高い側を確実に掘削することができ、鋼管杭の傾斜をより確実に矯正することができる。
このような構成によれば、螺旋状の羽根や傾斜板からの掘進力が得られることから、回転圧入する際の押し下げ力を軽減させることができ、過大な施工装置を用いなくても確実に鋼管杭を地盤に貫入させることができる。
このような本発明によれば、縮径部を形成する縮径部用鋼板が円弧辺と径部辺と弦部辺とを有することから、一枚の鋼板から複数の縮径部用鋼板を切り出す際に、一の縮径部用鋼板の円弧辺と他の縮径部用鋼板の弦部辺とが隣り合うようにすることで、複数の縮径部用鋼板を密に配置することができ、鋼板の無駄を削減して製造コストをさらに抑制することができる。
このような本発明によれば、前述したように、縮径部の先端開口端縁が貫入方向と傾斜して形成されていることから、鋼管杭を傾けても先端開口端縁の最先端部を支持層の高い側に当てて掘削することができ、支持層の低い側に杭先端が逃げて傾斜することが防止できることから、鋼管杭の傾斜を容易かつ確実に矯正して直進性を向上させることができる。
このような本発明によれば、縮径部の先端開口端縁の最先端部を支持層などの地層の高い側に当てて半回転程度の往復回転をさせ、地層の高い側を掘削することで、地層の低い側に杭先端が逃げて傾斜することが防止でき、鋼管杭の傾斜を防いで直進性を向上させることができる。さらに、貫入途中の鋼管杭を地盤内部で上下させなくてもよいことから、地盤を乱すことが防止でき、施工後の杭の支持力を確実に発揮させることができる。
図1〜図3において、本実施形態の鋼管杭1は、回転圧入装置2によって回転圧入されることで地盤Gに貫入されるものであり、長尺円筒状の鋼管本体11と、この鋼管本体11の先端部に設けられて杭先端に向かって縮径する縮径部12とを備えて構成され、縮径部12の先端部には、複数(例えば、4個)の掘削ビット13が固定されている。これらの掘削ビット13のうち、1つは後述する縮径部12の最先端部124に固定されている。また、回転圧入装置2は、適宜な架台に設けられて鋼管杭1を回転させるとともに下方に押し下げる回転圧入部21と、架台を上下移動自在に支持する複数(例えば、4箇所)のジャッキ部22と、架台に載置されて鋼管杭1への押し下げ力を生じさせるカウンターウェイト23とを有して構成されている。このような回転圧入装置2は、複数のジャッキ部22を個別に伸縮させることで架台に傾斜を付与し、鋼管杭1の貫入方向を鉛直方向に対して適宜に傾斜させることができるようになっている。
ここで、地盤Gは、砂や粘土やシルトなどから構成される比較的軟質な表層地盤G1と、砂礫層や岩盤などで構成されて硬質な支持層G2とを有して構成され、本施工方法では、鋼管杭1の先端を所定の長さ(例えば、杭の外径R1の5倍程度の長さ)だけ支持層G2に貫入させるものとする。また、支持層G2は水平面に対して任意の傾斜を有しており、図4、図5において、図の左側を支持層G2の高い側とし、図の右側を支持層G2の低い側として以下説明する。
このような鋼管杭1Aの先端が支持層G2に到達し、図6中の二点鎖線で示すように支持層G2の低い側へ鋼管杭1Aが傾斜した場合に、前述と同様に、ジャッキ部22を調節して鋼管杭1Aを逆方向へ傾けたとしても、図7に示すように、先端開口端縁122Aの最先端部124Aが支持層G2の低い側に当接して掘削してしまう可能性があるため、支持層G2の高い側を確実に掘削することができず、鋼管杭1Aの傾斜を矯正することが困難になってしまう。
鋼管杭1の製造手順としては、鋼管本体11と縮径部12とを別々に製造してから、鋼管本体11の先端に縮径部12の接合側端縁121を溶接接合して製造する。縮径部12の製造手順としては、図8(A)に示すような形状の縮径部用鋼板3を準備し、この縮径部用鋼板3を曲げ加工して側端縁同士を溶接接合し、図8(B)に示すような環状の縮径部12を製造する。縮径部用鋼板3は、接合側端縁121を形成する扇形の円弧辺31と、この円弧辺31の両端から扇形の径方向(円の中心)に向かって延びて一対の径部辺(側端縁)32と、これら一対の径部辺32の端部同士を直線的に結んで先端開口端縁122を形成する弦部辺33とを有して形成されている。なお、図8(A)において、二点鎖線で示す部分は、前述した比較例の鋼管杭1Aにおける縮径部12Aを形成する場合の縮径部用鋼板3Aを示し、その弦部辺33Aは、円弧辺31と同心円であって縮径部12Aの先端開口端縁122Aを形成するものである。
すなわち、鋼管杭1の先端に縮径部12を形成したことで、その先端開口から鋼管杭1内部に入り込む土砂の量を抑制することができ、管内閉塞を防止することにより鋼管杭1の貫入抵抗を低減して施工性を向上させることができる。さらに、縮径部12のテーパ面部123をZ方向に投影した投影面積分だけ杭先端面積が大きくなることで、鋼管杭1の先端支持力を増大させることができるとともに、テーパ面部123が押し拡げた周辺地盤が押し固められることで、鋼管本体11の周面摩擦力を高めることもでき、鋼管杭1の支持力を向上させることができる。また、縮径部12の先端開口端縁122が貫入方向(Z方向)と傾斜して形成されていることから、支持層G2が傾斜したような地盤Gに貫入する場合に、鋼管杭1を傾けても先端開口端縁122の最先端部124が支持層G2の高い側を確実に掘削することで、鋼管杭1の傾斜を容易かつ確実に矯正して直進性を向上させることができる。
例えば、前記実施形態においては、支持層G2が水平面に対して傾斜した地盤Gに鋼管杭1を回転圧入する場合を説明したが、このような地盤に限らず、比較的硬質な中間層が傾斜したような地盤であって、その中間層を鋼管杭1で貫通する場合にも本発明の鋼管杭1およびその施工方法は有効に機能する。さらに、水平面に対して略平行な支持層G2や中間層を有した地盤であっても、鋼管杭1を斜め方向に貫入させる斜杭の場合にも本発明の鋼管杭1およびその施工方法は有効に機能し、所定の貫入方向に向かう直進性が確保できるようになっている。
先ず、図10に示すように、鋼管杭1を回転圧入により表層地盤G1に回転圧入して杭先端が支持層G2に到達したら、先端開口端縁122のうちの最先端部124を支持層G2の高い側に向ける。ここで、支持層G2の深さ位置は、事前のボーリング調査による柱状図等に基づいて算出してもよいし、鋼管杭1を回転圧入する際の回転圧入装置2に作用する施工反力(回転トルクや圧入力など)を計測するようにしてもよい。次に、支持層G2の高い側に向けた最先端部124の位置を中心に鋼管杭1を略半回転(±90°程度)の範囲で往復回転させ、最先端部124側から先端開口端縁122を支持層G2に貫入させる。次に、図11に示すように、先端開口端縁122の最上端部125が支持層G2に到達したら、鋼管杭1の通常の回転圧入を再開し、先端開口端縁122全体で支持層G2の掘削を継続する。このような施工方法によっても、最先端部124による支持層G2の高い側の掘削を先行することによって、鋼管杭1の先端が支持層G2の低い側に逃げることを防止し、鋼管杭1の直進性が向上できるようになっている。また、鋼管杭1を傾斜させたり地盤G中で上下させたりする必要がないことから、地盤Gを乱すことが防止でき、施工後の杭の支持力を確実に発揮させることができる。
また、縮径部12の先端開口端縁122は、軸傾斜面Fの平面に沿ったものに限らず、先端開口端縁122が3次元曲面に沿った形状であってもよい。
また、本発明の鋼管杭1において掘削ビット13は必須ではなく、適宜に省略してもよいし、掘削ビット13に代えて先端開口端縁122に掘削用の刃などが形成されたものであってもよい。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (3)
- 長尺円筒状の鋼管本体と、この鋼管本体の先端部に設けられて杭先端に向かって縮径する縮径部とを備え、前記縮径部は、前記鋼管本体の軸方向と直交する軸直交平面内にて当該鋼管本体に接合される接合側端縁と、前記鋼管本体の軸方向および前記軸直交平面と傾斜する軸傾斜面に沿うとともに杭先端側に開口する先端開口端縁と、これらの接合側端縁と先端開口端縁とに渡り略円錐面に沿って形成されるテーパ面部とを備えて構成され、回転圧入により地盤に貫入される鋼管杭の製造方法であって、
長尺円筒状の鋼管本体と、平板状の鋼板とを準備し、
前記鋼板から所定形状の縮径部用鋼板を切り出し、切り出した縮径部用鋼板を曲げ加工するとともに、環状となるように一対の側端縁同士を溶接接合して縮径部を製造し、前記鋼管本体の先端部に前記縮径部の接合側端縁を溶接接合する各工程を備え、
前記鋼板から切り出す前記縮径部用鋼板は、
前記接合側端縁を形成する扇形の円弧辺と、この円弧辺の両端から当該扇形の径方向に延びて前記側端縁を形成する一対の径部辺と、これら一対の径部辺の端部同士を結んで前記縮径部の先端開口端縁を形成する弦部辺と、を有して形成されていることを特徴とする鋼管杭の製造方法。 - 長尺円筒状の鋼管本体と、この鋼管本体の先端部に設けられて杭先端に向かって縮径する縮径部とを備え、前記縮径部は、前記鋼管本体の軸方向と直交する軸直交平面内にて当該鋼管本体に接合される接合側端縁と、前記鋼管本体の軸方向および前記軸直交平面と傾斜する軸傾斜面に沿うとともに杭先端側に開口する先端開口端縁と、これらの接合側端縁と先端開口端縁とに渡り略円錐面に沿って形成されるテーパ面部とを備えて構成され、回転圧入により地盤に貫入される鋼管杭を用いた杭の施工方法であって、
前記鋼管杭を回転圧入により支持層が傾斜した地盤に貫入する際に、当該鋼管杭に一方向への傾斜が生じた場合には、一旦鋼管杭を所定量だけ引き上げて前記一方向と逆方向へ傾け、前記先端開口端縁のうちの最先端部を傾斜した前記支持層の高い側に当接させてから、当該鋼管杭の回転圧入を再開することを特徴とする杭の施工方法。 - 長尺円筒状の鋼管本体と、この鋼管本体の先端部に設けられて杭先端に向かって縮径する縮径部とを備え、前記縮径部は、前記鋼管本体の軸方向と直交する軸直交平面内にて当該鋼管本体に接合される接合側端縁と、前記鋼管本体の軸方向および前記軸直交平面と傾斜する軸傾斜面に沿うとともに杭先端側に開口する先端開口端縁と、これらの接合側端縁と先端開口端縁とに渡り略円錐面に沿って形成されるテーパ面部とを備えて構成され、回転圧入により地盤に貫入される鋼管杭を用いた杭の施工方法であって、
前記鋼管杭を回転圧入により地盤に貫入する際に、当該地盤中における傾斜した特定の地層に当該鋼管杭の先端開口端縁の最先端部が当接したら、当該地層の高い側に前記最先端部を向けてから当該最先端部を中心に略半回転の範囲で当該鋼管杭を往復回転させ、前記先端開口端縁の最上端部が地層に到達したら、当該鋼管杭の通常の回転圧入を再開することを特徴とする杭の施工方法。
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